スパイラル〜推理の絆〜とは、原作:城平京 作画:水野英多によって月刊少年ガンガンに掲載されていた漫画作品、及び同作品のテレビアニメである。作者やファンからの通称は「螺旋」。各話のサブタイトルは往年のSF作品から引用されていることが多い。
1999年~2005年の間掲載。エニックスお家騒動で危機に見舞われたガンガンを支えた作品で、少年漫画志向にシフトし始めた同誌にあってもかつてのガンガン系のテイストを維持した。原作者の城平京は本職のミステリ作家であり、本作が漫画原作のデビュー作。水野英多とのコンビはガンガンでも度々あり、そのときはスパイラルコンビとして紹介される。
アニメ版は2002年10月1日より半年間テレビ東京系列で放送された(全25話)。アニメーション制作はJ.C.STAFF。オープニング、エンディングのムービーが特徴的で、ニコニコ上ではMAD素材としても知られている。またエンディング曲の「カクテル」は一部本作を意識した歌詞になっていることもあり、関連動画では当時からのファンのコメントが絶えない。アニメ制作当時はまだ原作の核心が明かされる前だったため後半からオリジナルの展開となり、最終決戦の相手はカノンが務めた。この中途半端な結末のため、原作終了後からフルリメイクを要望する声は絶えない。
作画の水野英多にとって思い入れの強い作品らしく、連載終了から10年以上経った現在でもTwitterで誕生日イラストや1P漫画を掲載することがある。また登場人物の私服は水野がファッション雑誌を片手に似合いそうな服装をセレクトしている。
2019年8月に連載開始から20周年を迎え、それを記念して2020年春にコラボカフェが開催されることとなった。連載を終了して長い時間が経過した作品がコラボカフェ題材に選ばれる例は少なく、それだけ根強いファンが多かったことを示している。
アニメ化前に少年ガンガンのコミックCDコレクションとしてドラマCD化しており、一部のキャストはアニメ化以降も続投している。アニメ化後に発売されたファンブック付属のドラマCDはアニメ版のキャストで収録されている。
概要
主人公鳴海歩の兄(鳴海清隆)が「ブレードチルドレンの謎を追う」という謎の言葉を残した二年後から物語は始まる。物語の初めの頃は推理漫画であったが後にブレードチルドレンと呼ばれる少年少女達と様々な戦いが繰り広げられていく話である。
ガンガンのWEBサイトで外伝小説「名探偵 鳴海清隆」を連載。各話前後編に分かれており、読者への犯人当てクイズとして連載されていた。作者は「読者の大半が前編の時点で真相を見抜き、かつ面白く読めるもの」を意識して書いているため、普通のミステリよりもヒントが分かりやすくなっている。終盤はクイズ企画を行わず、書下ろしの最終話と併せて単行本として発売した。このため、終盤には本編につながる伏線がいくつか配置されている。
外伝として小説版が4巻出ている。1~3巻は本編の幕間として歩の周りで起こった事件や過去の事件の真相を見抜くミステリとしての面が強い。4巻は「名探偵 鳴海清隆」シリーズの完結編として書き下ろしの最終話を収録した。小説版はスパイラルの事前知識がなくても楽しめることを前提に書かれている。また月臣学園の設定や新聞部の実態など、小説版で明らかになる設定もいくつかある。作者の作風ではあるのだが、小説版は猟奇的な表現がされていることが多く、実写ドラマやアニメでも規制を受ける死因や殺害方法がよく使われる。
登場人物
CVはアニメとコミックCDで異なる場合、アニメ版/コミックCD版で表記。
- 鳴海 歩 CV.鈴村健一/石田彰
月臣学園に通う高校一年生。世界的なピアニストであり、警視庁でも名探偵と呼ばれた鳴海清隆の弟。
本来は勉強、運動などの才能に恵まれ、それを研鑽しているのだが、いずれも兄がそのことごとく上を行き、全てを奪われた過去を持つため、兄へのコンプレックスに未だに苦しんでいる。また初恋の女性も清隆に奪われており、2年以上経った今でも初恋を引きずっている。ピアノはその最たるものであり、彼自身権威ある批評家から「天使の指先」の二つ名をつけられた程の腕前だが、兄にはどうやっても敵わないことを痛感している。
生活能力は登場するキャラクター中随一で、特に料理はプロ級の腕前。小学生の時点でイタリアンのコース料理を作っている(ただおいしいだけでなく、栄養バランスやカロリーまで計算している)。来客やお見舞いなどでは必ず手の込んだお菓子を用意する。小学校低学年の頃から家事を完璧にこなし、毎月家計簿までつけているほど。近所付き合いも完璧で、そのため近所では清隆の評判はよくない。 - 結崎 ひよの CV.浅野真澄/川澄綾子
月臣学園に通う高校二年生。新聞部部長で、学長さえもおびえる程の情報通。第1話の事件で被疑者となった歩に取材を敢行したのが出会いで、以後学園内で行動を共にしている。この経緯と幼く見える外見のためか歩は彼女を先輩扱いしておらず「あんた」と呼んでおり、名前で呼んだことは一度もない(作中全体でも名前を呼んだのは理緒くらいである)。情報収集の弊害故か学園内で黒い噂が絶えず、火澄が来るまで歩が学園で孤立していたのは一緒にいた彼女の存在も大きかった模様。
彼女にかかれば学園生徒の個人情報から警察の捜査資料まで調べられないことはない。
その外見からは想像も付かない類稀なる行動力を発揮する歩の良き(?)パートナー。正体は企業秘密。
第1話で見せた人形劇がエスカレートしたか、アニメでは自身を模したパペットを用いて次回予告担当に。たまに他のキャストも巻き込んだ自由っぷりを見せつけた。CV担当の浅野曰く「玉ねぎみたいに剥いても剥いてもまだまだ中身が出てくる」らしい。 - アイズ・ラザフォード CV.石田彰/佐々木望
クォーターのイギリス人で世界的ピアニスト。自動車のCMに出演しており日本でも知名度が高く、リサイタルのため来日。その後も日本に留まっている。
頭脳明晰、冷静沈着で、ブレード・チルドレンと呼ばれる謎の17歳の少年少女たちのリーダー的存在である。仲間内では誕生日が最も遅い。その外見に似合わず数多の死線をくぐり抜けてきており、彼が放つ威圧感は多くの者を怯ませる。勝利のための努力を人知れず行うタイプであり、亮子に「水中で必死にバタ足しているのにそんな素振りを全く見せない白鳥みたいなヤツ」と評された。
近寄ってきた野良猫になぜか持っていたおやつの煮干しをあげていた。アイズ曰く「そんな日もある」らしい。アニメでは理緒のお見舞いにも煮干しを持参した(普段は理緒の好物である網目模様のメロン)。
有名人という自覚がなく一人で街中を歩いたり、理緒たちの見舞いに訪れているが、その度に自覚を促されている。おまけ漫画で変装として眼鏡をかけたものの効果はまるでなかった。
余談だがCVの石田は一度本作の収録に遅刻しており、現場に入って開口一番で三石に怒られたらしい。 - 浅月 香介 CV.草尾毅
ブレード・チルドレンの中でも行動派。中学時代に教師相手に暴力沙汰を起こして以降行方をくらましている。アイズの指示を受けて動く実行役としての面も持つ。中盤ではカノン対策として月臣学園に転入した。ひよのによると転入試験の成績が相当優秀だったらしく、歩に不正を疑われていた。
その尖った外見とは裏腹に仲間を守る強い意志を秘め、やさしく繊細な心を持っている。ロリコンでシスコン。嘘はつかないが約束は守らない、自他共に認める「いやな奴」だが、これは敵に向けた態度であり、仲間には非常に義理堅く、妹分でもある亮子は特に大切に思っている。平時はいじられキャラになっており、亮子、理緒に振り回されることが多い。眼鏡キャラの宿命か、作画の水野やファンからは「眼鏡が本体」とネタにされることも。 - 竹内 理緒 CV.堀江由衣
幼く可愛い外見とは裏腹に、恐ろしい程の頭のキレと勝利の為には自らの命を省みない激しい一面を持つ。
その実力は数多の戦場を駆け抜けたカノンをして「どこまでも切れる」と言わしめる程。手作り爆弾が得意な破壊と作戦立案専門のブレード・チルドレン。破壊の魔女、爆炎の妖精、爆裂ロリータ(清隆命名)、荒れ野の小妖精など多くの二つ名を持つ。
作中のほとんどの期間を入院して過ごしているため、本来の髪型よりも髪を下ろした状態の方が多い。
原作者曰く「作中で一番芯の通った強い女性」として設定したキャラクターだったが、外見的なデザインについてはうまく固まらず作画に「何とかして…」と投げ、予想以上に何とかしてくれたらしい。作画の水野はピンク髪にしようとしたが、世界観に合わないため見送り灰色の髪にデザインされた。だが結局、キリエの髪色としてピンクが配色されることになった。 - カノン・ヒルベルト CV.野島健児
アイズ・ラザフォードと幼馴染のブレード・チルドレン。
離反し一年後にブレード・チルドレン全員の抹殺を掲げるハンターとして現れる。
銃器のエキスパートで「翼ある銃(ガン・ウィズ・ウイング)」という異名を持つ。本能に戦いが染み込んでいる戦闘のプロフェッショナル。その能力は例え眠っていても殺意に反応し、反射的に戦闘行動を起こせるほど。その戦闘力の高さ故、自身が殺しに溺れてしまうのを恐れており、そうならないために自分が殺すのはブレード・チルドレンのみだと誓っている。ネコが好きで、特にヒマラヤンがお気に入り。
アニメ化当時原作はカノン編のクライマックスだったため、アニメ版のラスボスとして登場した。
登場当初から人気の高いキャラクターであり、その人気は終盤のとある展開について原作者が単行本のあとがきで真っ先に謝罪した程。 - 高町 亮子 CV.加藤ひとみ
香介の幼馴染のブレード・チルドレン。陸上部に所属し、インターハイ記録を2年連続で更新する実力者。日本陸上の天才少女として注目を浴びている。
相手が誰であろうと殺さないという強い信念のもとに行動し、高い運動能力を持つ。カノン来日の際にその危険をアイズに告げられても「やるくらいならやられる方を選ぶ」と言い放つ程自身が戦うことを嫌っている。そんな彼女だからこそ、カノンをできるだけ傷つけたくないアイズは協力を依頼した。それを断るために学園の運動部で流行っているゲームでの勝負を吹っ掛けたが、事前の調査と練習を怠らなかったアイズに完敗。転入してきた香介と共同戦線を張ることになる。一線を離れていたとはいえその実力は高い。実は月臣学園への入学を望んでいなかったが、学園側の工作により強制的に入学させられている。
お兄ちゃんが大好き。 - 鳴海 まどか CV.三石琴乃
警視庁捜査一課の敏腕刑事であり、歩の義姉で旧姓は羽丘。
歩の兄である清隆と結婚したが清隆が1年足らずで失踪したため、現在は歩と暮らしている。生活能力皆無で、衣食住ともに歩に頼りきりの状態。歩の初恋の人であり、歩にとって最大の弱点でもある。ブレードチルドレンとの戦いでは度々その弱点を突かれたが、カノン戦ではそれを逆手にとって綱渡りの作戦を成功させた。なお本人は歩に好意を寄せられていることを告白されるまで気付いていなかった。
警視庁に入った当初は優秀すぎるのと真面目すぎる勤務態度、更に女性ということで冷遇され、嫌がらせとして当時問題児だった清隆の部下に配属された。そのため結婚前の清隆とは上司部下の関係でもある。上司相手に鉄拳制裁も辞さない(歩にやっても大丈夫という助言をされているのもあるが)。その効果か警視庁内では「鳴海清隆を操縦できる存在」として再評価され、ノンキャリアながら20代で警部補に昇任している(彼女が警察に入る際に掲げていた目標でもあった)。本編の序盤では歩が推理することが主軸のため空回りしてしまうことが多いが、清隆によれば彼女の能力は警視総監賞を膝の高さまで積めるくらい高いらしい。
なお小説版で繰り出す体術はえげつないものが多々あり、仮にも恋人であるはずの清隆に関節技やムエタイ技を叩き込むほどで、名前付きの必殺技もあり、こちらは本編のカノン戦で披露した。
プライベートでは歩曰く「ふざけた性格」。元から地はこちららしいのだが職場では真面目で厳しい刑事を貫いている。清隆が言うには「警察でまどかまでボケに回ったら仕事にならない」らしく、職場でのやり取りは半ば夫婦漫才である。鳴海家では歩というツッコミ役がいるため、羽目を外せるとのこと。
ストーリー展開上話に置いてきぼりになることが度々あり、アニメで出番が少ないときは部下と飲みに行って絡み酒をするシーンが度々描かれた。 - 鳴海 清隆 CV.井上和彦
10代で世界的ピアニスト、20代で警視庁の名探偵と呼ばれた天才。
本編開始の2年前、歩に電話で「ブレード・チルドレンの謎を追う」と言い残し姿を消した。本編ではひたすら裏方に徹しており、最終盤でようやくその素顔を現した。それまでは第1話の扉絵に描かれた後ろ姿だけで表現されており、作画も苦労したらしい。
主な活躍は小説版の「名探偵 鳴海清隆」で語られるが、現場を見て部下から少し話を聞くだけで真相にたどり着いてしまう頭脳の持ち主(とある話では冒頭の時点で真相を見抜いている)。ノンキャリアで20代ながら階級は警部(現実の警察では30代後半くらいの階級で、20代で昇任することはまずありえない)。その卓越した能力のため、上層部から特命で事件解決を命令されることもある。ただデスクワークを面倒くさがり、部下であるまどかに自身の報告書含めて全て丸投げ、自身は持ち込んだソファで熟睡している。その勤務態度から部下のまどかに鉄拳制裁を受けるが、上司の権力を使ってどうにかしようという性格でもない。歩はこれを知っていたため、まどかに「思う存分痛めつけて結構です」と助言。まどかは即日実行し、しばらく清隆は絆創膏などが必ずどこかしらに貼られている状態になった。
ピアニストとして荒稼ぎした資金を基に先物取引を成功させ、向こう30年は生活に困らない程の資産を所有している。歩と同居している家は高級マンションで、持っているクレジットカードはプラチナ。失踪後もマンションの名義は清隆のままになっている。
恐らく本編を読み終えてから小説版に手を出すとあまりのギャップに困惑することだろう。アニメ化後のドラマCDでもおちゃらけた清隆とまどかのバカップルぶりを聞くことができる。
先天性無精子症であり、生殖能力を持っていない。
余談だが、CVの井上和彦はアニメでは音響監督を兼任している。 - ミズシロ 火澄
終盤から登場する歩の同居人で月臣学園一年生に転入。一時期ではあるが、歩とともに高校生としての日常を謳歌する。歩とは対照的に明るく人当たりのいい性格で転入から一週間もたたずして学園中の人気者になった(キリエ曰く歩も清隆に性格を曲げられていなければ彼ぐらい目立って当然らしい)。関西弁を喋る。髪色はミントグリーンだが、作画者によると消去法で決まったとのこと。また彼の私服を設定するときに「多分何着ても似合うな」と考えており、そこまで悩むことはなかったらしい。
彼も規格外の能力を持っており、学園のバスケ部レギュラーと試合をすることになったときは火澄と歩以外寄せ集めだったが、歩の指示と火澄のフィジカルで全国クラスの相手に対して終始リードしていた程(部のメンツを心配した歩により後半はバスケ部が勝つように誘導された)。食べ物は焼肉がお気に入りだが、歩と同居しているときは彼によりヘルシーな食事が出されるためあまり食べる機会はない。 - 漫画に登場する前にアニメ化したため、アニメには未登場でCVもいない。
- 土屋 キリエ
ブレードチルドレンを観察する組織「ウォッチャー」のエージェントで、本人曰く「頭もよければ器量もいい27歳」。カノン編終盤から登場。本編終盤では自分の知る情報を全て歩、まどか、ひよのに伝え、また歩や火澄、アイズの情報を基に清隆の目論見を調べている。終盤に発覚する事実のほとんどは彼女が突き止めて明かしている。
元は喫煙者だが未成年の歩たちの周りで喫煙することで悪く思われることを気にしており、棒キャンディを口にする機会が度々ある。また髪色はピンクであり、作風に合わないということで理緒のデザインで見送った色を採用されたことになる。 - 小日向 くるみ
小説版「名探偵 鳴海清隆」の準主人公。日本に名だたる巨大コングロマリット小日向グループの跡取り娘で、14歳でアメリカの大学を卒業している才女。ただ社会勉強も兼ね、日本では高校に通っている。正真正銘のお嬢様ではあるが、自動販売機もコンビニも利用する一般的な感覚も持ち合わせている。
突然グループ総裁の祖父により清隆と結婚し子を産むよう指示され、真っ向から対立。恋愛の自由を勝ち取るため、祖父に課せられた「清隆と同じ事件を捜査して彼より先に解決し、自分がより優秀であることを証明する」試練に打ち勝つべく、警視庁に出入りしている。小説版の狂言回しも担当しており、彼女の語りで物語は進行する。捜査の関係で歩とも顔見知りであり、鳴海兄弟の危うさを本能的に感じ取った。彼女の存在が、当時まだ上司部下の関係だった清隆とまどかを接近させることになる。実際は清隆が先述の通り子を残せない体質だったため祖父の目論見は崩れている。
作中で数少ない、正面から清隆を否定した人物の一人。
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