リニア中央新幹線とは、東海旅客鉄道(JR東海)が事業主体(計画・建設・営業等)となっている東京-名古屋-大阪間を結ぶ整備計画路線である。上記の名称はメディアが主に用いているが、国土交通省及びJR東海は、この路線の正式名称を「中央新幹線」と一貫して使用している。
JR東海は当初2025年までに東京-名古屋間の開業を目指して建設していく方針だったが、東日本大震災をはじめとする不景気の影響で東海道新幹線の収入が予想以上に落ち込んだ為、2014年時点では2027年の開業を目指していた。
なお、2020年の東京オリンピックに間に合わせてほしいとの意見もあるが、JR東海は前倒しするのは難しいとしている。また、神奈川県~山梨県間のみの部分開業も無いとしている。
全通すれば東京-名古屋間が40分、東京-大阪間が1時間7分で結ばれる予定。なお、東京-大阪間の運賃は1万5050円を想定している。
そして2014年12月17日、前述の通り2027年の開業を目指して着工された。静岡工区で静岡県の同意が得られず2024年4月現在も準備工事を開始できていないため、開業予定の見通しは立っていない。
概要
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路線としての名称は「リニア中央新幹線」「中央リニア/リニア中央エクスプレス」とも。鉄道としての名称は「ジェイアール式マグレブ(JR-Maglev)」とか「超電導リニア」など。
かつてから「中央新幹線」の構想はあったものの、資金など様々な問題があり長らく計画は進まないでいた。しかし、
等の理由により、東海道新幹線のバイパスとしての路線の早期建設の必要性が高まった。
そのため、JR東海は国鉄分割民営化直後から東京分室(現:東京本社)の若手技術陣から葛西敬之への提言により調査検討に着手。期成同盟会のメンバーである愛知県の要請を受け運輸指令所を愛知県内に設置することにし、新幹線鉄道保有機構解体の際にJR東日本・JR西日本・運輸省と運営はJR東海が行うとの合意を取り付けた。あわせて山梨県内に営業線への転用を前提とした実験線を建設し宮崎の実験線よりも営業状態に即した環境で技術開発を行った(この山梨実験線はリニア開発が不調に終わった場合に備え、従来の鉄軌道車両でも登坂可能な勾配40‰に抑えられた)。
そして技術開発と国鉄債務の返済が進み財務上の問題にも目処が立ったことから、2007年12月25日に中央新幹線の東京-名古屋間を国からの支援を受けず税金を一切投入しない全額自己負担(5兆1000億円)で建設する方針を表明。これにより基本計画路線から整備路線に事実上格上げされた。
当初東京-名古屋-大阪間の中間駅は地元自治体が負担するものとしていたが、2011年11月21日にJR東海の全額自己負担に方針を変更した。これにより、建設費は名古屋まで5兆4000億円、大阪まで9兆300億円となった。
現在、財政投融資を活用、独立行政法人の鉄道建設・運輸施設整備支援機構を通じてJR東海に最大で3兆円程度を融資することを政府が検討している。これが成立すれば最大8年程、全体の工期を前倒しできる。
首都圏、中京圏、近畿圏は深さ40m超の大深度地下を通し、首都圏の乗り入れ先を品川駅、中京圏の乗り入れ先を名古屋駅とする構想を発表し、JR東海はJR東日本と東京都に対して東京のターミナル駅を羽田空港への接続が良い品川駅とする方針を伝えている(理由としては東京駅には在来線地下ホームなどで余裕がない為)。
一方の大阪の乗り入れ先に関して、JR東海は東海道・山陽新幹線との接続、特に岡山・広島方面からの乗客を考慮して新大阪駅に設ける方針を示しており、JR西日本も山陽新幹線との乗り換えの利便性確保を求めている。なお、新大阪駅には国鉄時代に既にリニア用(=以前の第2東海道新幹線計画)のスペースが確保されているとも言われている。
2010年10月26日には営業線仕様の「L0系」を発表。2013年度以降に最長12両編成で各種試験を行う予定となっている。
その他の計画・構想は(非公式含む)
- 営業開始時の最高速度は時速500kmだが、将来的には700kmくらいに?
- 路線距離は約290km
- 全線の6割が地下、短距離の谷間で地表に顔を出す区間もコンクリートのフードで覆う
- リニア車両1両約8億円(通勤電車で約6~7両分、特急電車で約4両分、新幹線で約2両分)、全体の車両コストは約6400億から7200億円
- 1時間当たり10往復運転で必要車両約800両から900両
- 開通後の東海道新幹線はのぞみなどの途中停車駅が増え沿線の利便性が向上する
※但し、JR東海は「ひかり・こだま」体制に戻す可能性にも言及している。 - リニア中央新幹線の運賃は東海道新幹線より数百円から1000円高い程度
- 座席にはグリーン席や自由席を設けず全席指定席とする
- 東名間の途中駅は各県1駅ずつとなる(※静岡市葵区を僅かにかすめるが、そこには駅は作られない)
- 中間駅には窓口(切符を販売するスペース)は設置されない。地上階には改札が1箇所のみ設置され、ホーム階とは階段・エスカレーター・エレベーターで連絡する。また高架駅となる中間駅の高架下には地元負担で店舗が設置される予定
- 車両基地は神奈川県相模原市の関東車両基地と岐阜県中津川市の中部車両基地が設置される。
など。
ルート問題
の3案が提示され、「リニア中央エクスプレス建設促進期成同盟会」はBルートでの建設を支持。地質的に複雑な構造の赤石山脈を貫通するトンネル建設は難しいとされ、建設されるならばBルートが有力とされていた。
しかし2008年10月21日、J距離が短く経済合理性が高いとされる「赤石山脈を貫く直線ルートでの建設は可能」とする地形・地質調査結果が出たため、それに基づき、JR東海はCルートでの建設を目指す方針を固めた。これにより一気にCルートでの建設が有力となった。
これを受け、Cルートでは沿線を路線が通らないことになる長野県の伊那市や諏訪市が、説明を受けなかったとして強硬に反対。ただ、長野県飯田市、そして下伊那郡の経済団体はCルート支持を表明し、県内でも意見が対立した。ああもうめんどくさい
現在は何だかんだありつつも、Cルートで決定されたため上記の動きは収束した……かに思われたが、今度は駅の設置場所を巡って飯田市とJR東海が対立。市民の意見も完全に分かれるという面倒くさい事態に発展した。(※結果は後述)
なお、路線の全貌が明らかになった2013年以降、沿線各都県自治体では公民館・自治会館レベルでの会議で、計画自体への疑問が投げかけられている模様(活発なのが川崎市・町田市・上野原市・静岡市葵区井川地区など)。それら内容は、本記事の読者ご自身で検索・考察していただきたい。
しかし、赤石山脈を通過することで大井川の水量が減少する可能性があるということで静岡県と流域10市町が反発。JR東海が当初は水を全量戻すと言っていたのに後になって全量戻すのは不可能と翻したこともあり、予定通りの2027年開業に必須であった2020年6月までに準備工事を開始することすらできていない状態である(もっとも、豪雨の影響で林道が寸断されており、仮に合意できても工事は不可能だったと思われるが)。JR東海は2020年7月に2027年の開業は困難であると事実上の延期を発表。2021年6月の静岡県知事選挙で現職が勝利したため、いまだに見通しは立っていない状況である。とはいえ静岡の県知事が2024年4月に入社した人たちに向かって「俺達は優秀で特別な存在なのだ!そこらへんで働いてる愚民どもとは違うぞ!」とほざいてバッシングを喰らい「リニア開業延期の目的は果たせたから発言の責任取って6月に辞める!あとは勝手にやってどうぞ!」となったのでリニア推進派/中立派が当選すれば最小限の遅れでリニアが開通する・・・かもしれない。
駅一覧
東京-名古屋間の最終的な駅位置は2013年9月18日発表された。駅名は仮称と既存の駅名を併記する。
なお、上述された通り、山梨県駅~長野県駅間で静岡県を経由するが、この間に駅は設置されない。
駅名 | 接続路線 | 所在地 | ||
---|---|---|---|---|
仮称 | 既存駅 | 会社名 | 路線名 | |
品川駅 | 東海旅客鉄道 (JR東海) |
東海道新幹線 | 東京都港区 | |
東日本旅客鉄道 (JR東日本) |
山手線 | |||
京浜東北線 | ||||
東海道本線 | ||||
横須賀線 | ||||
京浜急行電鉄 | 本線 | |||
神奈川県駅 | 橋本駅 | 東日本旅客鉄道 (JR東日本) |
横浜線 | 神奈川県相模原市緑区 |
相模線 | ||||
京王電鉄 | 相模原線 | |||
山梨県駅 | (新駅) | 接続路線なし (同駅と甲府駅をBRTで接続する計画あり (LRTも可能性の範囲として計画内にある)) |
山梨県甲府市 | |
長野県駅 | (新駅) | 接続路線なし (飯田線への駅設置検討中) |
長野県飯田市 | |
岐阜県駅 | 美乃坂本駅 | 東海旅客鉄道 (JR東海) |
中央本線 (中央西線) |
岐阜県中津川市 |
名古屋駅 | 東海旅客鉄道 (JR東海) |
東海道新幹線 | 愛知県名古屋市中村区 | |
東海道本線 | ||||
中央本線 | ||||
関西本線 | ||||
名古屋臨海高速鉄道 | あおなみ線 | |||
名古屋市交通局 (名古屋市営地下鉄) |
東山線 | |||
桜通線 | ||||
名古屋鉄道 | 名古屋本線 | |||
近畿日本鉄道 | 名古屋線 |
駅の位置(東京都~愛知県)
2011年6月の発表で、東京都~愛知県の駅の位置候補が発表された(長野県を除く)。駅の形態は基本的に島式ホーム2面4線となる。(⇒詳細)
東京都~愛知県の正式なルートおよび詳細な駅位置は、上記の通り2013年9月18日に発表された。
品川駅(東京都ターミナル駅)
品川駅で確定。港南口直下に南北方向に地下40mの位置に設置される。既存路線とは20分以内に乗り換えができるようにする。
他の候補として東京駅があったが地下が既存の鉄道路線で入り組んでいるとされ、調査は行われなかった。
神奈川県駅
相模原市内。橋本駅(JR横浜線、相模線、京王相模原線)で確定。相原高校が至近にあるため、同校は移転することになる。
相模原駅(JR横浜線)も考えられたが、リニアのルートが在日アメリカ軍相模総合補給廠の真下となってしまい、米軍の同意を得るのは厳しいとの意見から立ち消えとなった。
山梨県駅
峡中地域(甲府市、甲斐市、中央市、中巨摩郡昭和町)が候補の範囲であったが、県は甲府市大津町周辺に設置する方向で調整し、そのまま確定。
至近に中央自動車道があり、スマートインターチェンジの設置が検討される。また、同駅と甲府駅をBRT(途中からはバス専用道)で結ぶ計画があり、LRTも可能性の範囲として計画内にある。
長野県駅
天竜川右岸地域。当初提案していた高森町に、飯田市座光寺地区を含んだ地域である。地元は飯田駅併設を要望していたが、結果としてJR案を容認する形になっている。
飯田市座光寺に設置する可能性が高かったが、遺跡群の関係でJR飯田線の元善光寺駅から南西1kmの飯田市上郷飯沼付近に設置されることになった。JR飯田線では伊那上郷駅~元善光寺駅間となり、新駅の設置が検討されている。
岐阜県駅
中津川市内。位置としては、JR中央本線(中央西線)の美乃坂本駅に近い。
名古屋駅(名古屋市ターミナル駅)
名古屋駅で確定。2017年完成のJRゲートタワー(旧・名古屋ターミナルビル)の地下5・6階層がホームとなることも公表されている。将来の大阪方面への延伸のため、東西方向に設置される。
なお、名鉄名古屋駅・近鉄名古屋駅はリニア開業にあわせて新ターミナルに統合する計画がある。(名鉄名古屋駅の4線化もこれに合わせて行われる。)
駅の位置候補(愛知県以西)
有力候補を記載する。
三重県
2014年1月3日の中日新聞の報道では、亀山市内が有力候補となっている。
奈良県
奈良市付近でほぼ確定。
ルートを見る限りにはJR関西本線(大和路線)の平城山駅が至近にあるが、奈良駅(JR関西本線(大和路線)、桜井線、奈良線、片町線)、近鉄奈良駅・新大宮駅(近鉄奈良線)に設置する可能性もある。ただし、これはあくまでも奈良市に設置された場合の話であり、生駒市(学研都市高山地区)・大和郡山市(JR関西本線(大和路線)と近鉄橿原線の交差地点付近)・天理市(JR桜井線の櫟本駅付近)に設置する動きもある。なお、建設費用の関係から地上駅となる予定。
また、滋賀県や京都府・京都市がリニアの京都駅経由を提言している(しかしJR東海は京都駅経由はあり得ないと何度も発言している)。他、経由地が「奈良市付近」となっている事から奈良市に極めて近い木津(京都府)を推す動きもある(※ちなみに、リニア化される前の中央新幹線では木津駅を経由している)。
2014年1月3日の中日新聞の報道では、奈良・学研都市(生駒市)が有力候補となっている。
大阪府
JR東海側は既存の新幹線との接続を考慮して新大阪駅としているが、橋下徹前大阪府知事率いる「大阪維新の会」は梅田北ヤード(大阪駅北地区)への誘致を挙げていた。しかし、府市と地元財界が新大阪駅とする事で合意した為、新大阪駅でほぼ確定した。
関連動画
※営業化に専念するため現在では試乗会は行われていません。
お絵カキコ
関連項目
関連リンク
- JR東海 中央新幹線
- 環境影響評価法の手続き(JR東海 中央新幹線サイト内)
- JR東海 超電導リニア
- 鉄道総合技術研究所 超電導リニアについて
- 中央新幹線(品川・名古屋間)工事実施計画(その1) の 認可について
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