手綱を引き絞られて
彼は落ち着きを取り戻す。
そうだ、はやる気持ちを抑え
自分こそが勝利に値するのだと
疑いを持たず時を待て。
エピファネイア(英:Epiphaneia、香:神威啓示)とは、2010年生まれの日本の競走馬・種牡馬。牡・鹿毛。
2013年の菊花賞・2014年のジャパンカップ馬である。
馬名は西方キリスト教におけるクリスマス十二日後の祝日・「公現祭」のギリシャ語読み。
また、母シーザリオと同じくシェイクスピアの喜劇「十二夜」にもちなんでいる。
主な勝ち鞍
2012年:ラジオNIKKEI杯2歳ステークス(GIII)
2013年:菊花賞(GI)、神戸新聞杯(GII)
2014年:ジャパンカップ(GI)
概要
父シンボリクリスエス、母は前述のシーザリオ、母父スペシャルウィークという血統。
母のシーザリオはハットトリックと並んでキャロットファームの名声を高めた名牝で、マッチョな青毛で見栄えもよく、旺盛な闘争心を持ち繁殖牝馬としても大いに期待され、当初はキングカメハメハを種付けされた。
そうして生まれたトゥエルフスナイト(由来:十二夜)とヴァイオラ(由来:男装の麗人シーザリオの正体である少女より)は母の素晴らしさを受け継いだ風格を持っていたのだが、彼らは致命的に脚が脆く、トゥエルフスナイトはようやく未勝利戦に出走し勝利するもののその後脚を壊し引退、ヴァイオラに至っては蹄葉炎を起こしてデビューすら出来ずに死亡と、あまりに悲しいことになっていたのである…。
彼は生まれながらにして、何かを背負わされてしまう立場となっていたのである。彼の父にシンボリクリスエスが選ばれたのは、シンボリクリスエスが産駒の丈夫さに定評があるということと無縁ではあるまい。同じく脚の脆さに定評のあるレーヴドスカーに付けて生まれたアプレザンレーヴはやっぱり壊れてしまったが。
母と同じく角居厩舎に入厩し、やはり母の主戦騎手であった福永祐一を背に2歳の10月にデビューすると凄まじい瞬発力を繰り出し圧勝。条件戦もすんなり突破すると、クラシックロードの登竜門的存在であるラジオNIKKEI杯2歳ステークス(GIII)でも評判馬のキズナ以下を豪快に差し切り、一躍ダービー候補筆頭となったのであった。
しかし、ここから母譲りの素質がマイナスに振れ始める。クラシックへの始動戦弥生賞(GII)では朝日杯組のコディーノ、リベンジを狙うキズナらと相まみえたのだが、旺盛な闘争心が逃げ馬不在の超スローで全くの裏目になり、今までにないかかり方で前に出すぎ4着に敗れてしまう。
これは直前で主戦騎手であった福永祐一が騎乗停止処分を受け、乗り代わった騎手が今まで福永が仕込んでいたことを無視して乗ったということが大きいといわれるが、なんにせよ、皐月賞に向け暗雲が立ち込め始めた。そんな中迎えた皐月賞(GI)は朝日杯馬ロゴタイプに次ぐ2番人気となった。
レースでは道中旺盛な闘争心故にややかかりながら何とか折り合うが、当時のロゴタイプの圧倒的パフォーマンスに制圧され2着に終わった。
リベンジを誓い向かったダービー(GI)、ここでは主戦騎手福永祐一のダービー制覇やなんやら背負うものがより増え、更に今までおとなしかった脚の脆さも顕在化し、調教師が軽いソエ(骨膜炎)気味、でも大丈夫と発言するくらいには状態は良くなかった。
レースでもうまく折り合いをつけようとするが、また若干掛かり気味になり挙句の果てには3コーナー付近で前の馬の脚に前脚を引っ掛けて一瞬躓くというアクシデントにも見舞われる。
それでも母から受け継いだ旺盛な闘争心、折り合いを妨げたファクターがこのトラブルではプラスに働き、レースを辞めずに諦めることなく駆け、残り100m過ぎでついに先頭に躍り出たが、外から猛烈な末脚で飛んできたかつて何度となく負かしたキズナがかわしていったところがゴール板。またしても2着に敗れてしまった。シルバーコレクターの誕生である。
鞍上の福永祐一は残り僅かでキズナに抜かれた瞬間、うなだれるような仕草を見せた。ダービーというレースの重さと勝つことの難しさを示すシーンであった。抜いたキズナ鞍上の武豊は今回含めて五回も勝ってるとか言わない。
秋初戦の神戸新聞杯(GII)ではダービーまで見せていたかかる面をそれほど見せず2馬身半差の完勝。その後は菊花賞路線に行くことが決まった。
ダービー馬・キズナが凱旋門賞に出走するためこれといったライバルもおらず、最大の不安材料だった折り合い面に著しい進歩が見られたため菊花賞の大本命候補となったが、菊花賞で2着になるとカツラシユウホウ以来のクラシック準三冠馬になるため、ネット上ではある意味2着になることが注目される流れもあった。
1.6倍の圧倒的1番人気に推された本番の菊花賞(GI)では好スタートから3番手と先行策をとる。若干かかる気配もあったが鞍上の福永がうまくなだめるとしっかりと折り合い、4コーナーで逃げる3番人気のバンデを射程圏に捉えると直線では持ったままで先頭に立つ。そこから後続をステッキを使うまでもなくグングン引き離し、最後には2着の5番人気のサトノノブレスを5馬身もぶっちぎる大楽勝で悲願のクラシック3冠目を制した。
この勝利は父シンボリクリスエスと鞍上福永祐一に初の牡馬クラシックタイトル(父シンボリクリスエスはクラシック自体初制覇)をもたらすものであった。
2014年は産経大阪杯(GII)から始動。同い年のダービー馬キズナを抑えて1番人気に押されたが直線あっさりとキズナにかわされ結果は3着。
産経大阪杯の敗戦後、初の海外遠征となるクイーンエリザベスカップ(香港GI)に出走。道中楽な手応えで4コーナーを回りきり直線を迎えたが、後方からきた追い込み勢にかわされその後脚を伸ばすことが出来ず4着。
まあ、香港のエース格であるDesigns On RomeとMilitary Attack、前走ドバイでジャスタウェイにぶっちぎられたが自身もレコードタイムを更新していたVercingetorixが相手だったのでそこまで悲観しなくてもいい負けではあった。
6ヶ月の休み明け出迎えた天皇賞(秋)(GI)、同年皐月賞馬のイスラボニータやドバイシーマクラシックを制したジェンティルドンナなど強豪が揃い、4番人気と少し影に隠れる形となってしまったエピファネイア。
道中はいつもよりも後ろの位置でレースを進め、直線を迎え前を向いたところで少し前が詰まった感じになってしまう。前が開くとしっかりと伸びて来たが、結果として後方から猛烈に追い込んできたスピルバーグが勝利し自身は6着と敗れる。
迎えた11月30日のジャパンカップ(GI)、GI馬12頭という史上最高メンバーが揃い、どの馬が勝ってもおかしくないほどだった。
今回、福永騎手がジャスタウェイに乗るため、鞍上にクリストフ・スミヨン騎手を迎えることとなる。もともとこの馬は騎手との折り合いが付かないことで有名なので初騎乗でどこまでうまくレースを進めることが出来るかが注目された。
レースが始まると前にポジションをとって、そのまま2,3番手でレースを進める。しかしエピファネイアは終始行きたがり、名手スミヨンをもってしてもあふれる闘争心を抑えきれず、一度も息が入ることなくかかり通しで4コーナーを迎える。
4コーナーを回り切ると内に進路を保ったまま直線を迎える。ここからがいつものエピファネイアとは違った。
逃げるタマモベストプレイを馬なりであっさりと抜き去り先頭に立つと右ムチ一発でエンジン全開、後続をグングン突き放し迫る追い込み勢に影をも踏ませぬ4馬身差の圧勝。
デビュー当時から注目され続けた素質が一気に爆発した瞬間だった。そして2着には福永騎手のジャスタウェイが入った。キングヘイローの悲劇再び。
しかし有馬記念(GI)ではスローでわちゃわちゃっとする展開が向かなかったのか5着に敗退。この後休養に入った。
5歳の始動はドバイからとなっていた。ワールドカップとシーマクラシックの両睨みであったが、シーマクラシックは前年ジェンティルドンナが勝っていた事もあったのかドバイワールドカップ(ドバイG1)を選択した。
立派な馬体とキレよりパワーが勝ったタイプであったことから期待されたが、土を浴びて戦意喪失したか、あるいは脚さばきが向かなかったのか最下位に終わった。
帰国後は宝塚記念に向けて調整していたが、母同様に繋靱帯炎を発症。ジャパンカップを勝ったことや血統の良さが奏功し、種牡馬入りが決まった。
ただ、時期が6月だったため種牡馬としての本格始動は来年からになった。
種牡馬としては下表の血統表にもあるようにサンデーサイレンスの血が適度に薄まった血統であり、サンデークロス4×3(いわゆる「奇跡の血量」)の配合が作りやすく繫殖牝馬を選ばないというメリットが買われ、毎年200頭以上の種付けを行う人気種牡馬の一角に躍り出ている。
2020年には初年度産駒のデアリングタクトが無敗で桜花賞・オークス・秋華賞の牝馬三冠を制し、好調な出だしとなった。翌2021年にはエフフォーリアがGI3勝、サークルオブライフも阪神JFを制し、ディープインパクトやキングカメハメハが去った後のリーディングサイアー筆頭としてロードカナロアらと共に台頭している。
産駒の傾向としては、早熟な馬が多く、クラシック競走を目指すという観点からは効率的である一方、古馬での実績がどうしてもやや劣りがち、という問題を抱えている馬が多い。とはいえ、2024年にテンハッピーローズがヴィクトリアマイルを制し、続けてブローザホーンも宝塚記念を制している。古馬になってからのGI勝ちが出たことで今後の評価は変わっていくのかもしれない。
血統表
*シンボリクリスエス 1999 黒鹿毛 |
Kris S. 1977 黒鹿毛 |
Roberto | Hail to Reason |
Bramalea | |||
Sharp Queen | Princequillo | ||
Bridgework | |||
Tee Kay 1991 黒鹿毛 |
Golden Meridian | Seattle Slew | |
Queen Louie | |||
Tri Argo | Tri Jet | ||
Hail Proudly | |||
シーザリオ 2002 青毛 FNo.16-a |
スペシャルウィーク 1995 黒鹿毛 |
*サンデーサイレンス | Halo |
Wishing Well | |||
キャンペンガール | マルゼンスキー | ||
レディーシラオキ | |||
*キロフプリミエール 1990 鹿毛 |
Sadler's Well | Northern Dancer | |
Fairy Bridge | |||
Querida | Habitat | ||
Principia | |||
競走馬の4代血統表 |
クロス:Hail to Reason 4×5(9.38%)
主な産駒
2017年産
- アリストテレス (牡 母 ブルーダイヤモンド 母父 ディープインパクト)
- イズジョーノキセキ (牝 母 キングダンサー 母父 キングカメハメハ)
- デアリングタクト (牝 母 デアリングバード 母父 キングカメハメハ)
2018年産
- エフフォーリア (牡 母 ケイティーズハート 母父 ハーツクライ)
- ジャスティンカフェ (牡 母 カジノブギ 母父 *ワークフォース)
- テンハッピーローズ (牝 母 フェータルローズ 母父 タニノギムレット)
2019年産
- エピファニー (牡 母 ルールブリタニア 母父 ディープインパクト)
- サークルオブライフ (牝 母 シーブリーズライフ 母父 アドマイヤジャパン)
- セルバーグ (牡 母 エナチャン 母父 *キンシャサノキセキ)
- ブローザホーン (牡 母 オートクレール 母父 デュランダル)
2020年産
2021年産
- イフェイオン (牝 母 イチオクノホシ 母父 ゼンノロブロイ)
- ステレンボッシュ (牝 母 ブルークランズ 母父 ルーラーシップ)
- ダノンデサイル (牡 母 *トップデサイル 母父 Congrats)
- ビザンチンドリーム (牡 母 ジャポニカーラ 母父 ジャングルポケット)
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関連項目
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