ジェンティルドンナとは、2009年生まれの日本の元競走馬(牝・鹿毛)である。2012年・2014年JRA年度代表馬。
日本競馬史上4頭目の牝馬三冠馬であり、GI7冠馬。これから年月が経ってもディープインパクトの代表産駒に数えられるであろう一頭。
主な勝ち鞍
2012年牝馬三冠[桜花賞(GI)・優駿牝馬(GI)・秋華賞(GI)]・ジャパンカップ(GI)・シンザン記念(GIII)
2013年ジャパンカップ(GI)連覇
2014年ドバイシーマクラシック(GI)・有馬記念(GI)
概要
父:ディープインパクト (説明不要レベルの日本の三冠を含むGI7勝の名馬。種牡馬としても大活躍した)
母:ドナブリーニ
この馬はSS系に合わせるべく輸入された英2歳GⅠ勝ち馬で、Winning Post7でもっとも勝ちにくい2歳重賞として一部で有名なGⅡチェリーヒントンステークスを勝っている。
母父:Bertolini(スプリント重賞のジュライSを勝利、Danzigを父に持つ)
馬名はイタリア語で「貴婦人」。姉に、重賞2勝しているドナウブルーがいる。
2歳~桜花賞まで
2011年秋のデビュー戦は1番人気に推されたが不良馬場で逃げ馬を捉え損ね惜しくも2着に敗れた。
その後、未勝利戦勝利。
3歳緒戦のシンザン記念では力強い末脚で、牡馬勢に完勝した。
このレースで重賞初制覇を決め、クラシック路線に名乗りを上げた。
桜花賞
シンザン記念の勝利で、クラシックに向けて賞金はバッチリだったのだが、ここで、熱発を起こしてしまう。
競走馬にとっての熱発は非常に厄介なものであり、ジェンティルドンナは桜花賞直行か?と思われたが、石坂調教師以下ジェンティルドンナ陣営は「本番で納得いくまで仕上げよう」と考え、桜花賞トライアル・チューリップ賞に出走することに決める。
チューリップ賞、結果はハナズゴールの4着。シンザン記念で賞金を積んでいなければ桜花賞がアウトだった可能性が高い。しかし、「本番前に一度使えたということが大きなプラスになったと」石坂調教師は語った。
- そして、桜花賞当日。
1番人気は2歳女王ジョワドヴィーヴルに譲ったものの、多くのファンはシンザン記念の末脚を信じて2番人気に支持された。
レースは、最後の直線でジョワドヴィーヴルが伸びあぐねる中、馬場の真ん中から黄色い帽子のジェンティルドンナがチューリップ賞からコンビを組む岩田康誠の手綱に導かれ、シンザン記念のような末脚を爆発。
ゴール前では内から抜け出しを図ったヴィルシーナとアイムユアーズの2頭と競り合う形となったが、この2頭を競り落とし、GI初制覇を成し遂げる。
オークス
次走はオークス……ではあったが、ここでも問題が発生した。
2週間前のNHKマイルカップでの走行妨害により岩田が騎乗停止となり、急遽ピンチヒッターとして川田将雅が騎乗することになった。
また、姉であるドナウブルーがマイル路線で活躍していたことや、これまで(データ不足とはいえ)ディープインパクト産駒の長距離実績の少なさから桜花賞からさらに人気を落とし3番人気になった。
1番人気はフローラステークスを快勝したミッドサマーフェアで、2番人気がヴィルシーナであった。
あれ?桜花賞馬がなんで桜花賞2着より低評価??と思われそうだが、ヴィルシーナはクイーンカップで東京コースを経験している。東京コース未経験であったことも評価を下げたのかもしれない。
- レースでは川田が中段より後ろにつけて脚をためると、直線で内から抜け出しを図りリベンジを狙うヴィルシーナを大外からあっという間にジェンティルドンナがかわしていき、そのまま5馬身差をつけて圧勝し、二冠牝馬に輝いた。
ちなみに、川田は中央GIこそ3勝ではあるが3勝すべてがクラシックであり、ここぞというところで勝負強いということなのだろう。(川田の獲得GIはキャプテントゥーレの皐月賞、ビッグウィークの菊花賞、そして今回のオークスである)
夏~秋華賞。牝馬三冠達成
夏を休養にあて、秋初戦はローズステークス。
ここでも、直線で前を行っていた馬をあっさりかわすと、ヴィルシーナ以下を問題なく抑え、あっさり完封。
三冠に向けて上々の滑り出しを見せた。
- そして、牝馬三冠がかかった秋華賞。
ここでも過去の二冠達成の実績から1番人気となるが、ジェンティルドンナとの対戦で三回連続で2番手になるという苦杯を嘗めており、ジェンティルドンナへの雪辱を晴らさんと挑むヴィルシーナが2番人気であった。
レース本番、チェリーメドゥーサが大逃げで他の馬が追う展開となり荒れる展開となったが、最後の直線で追い上げ、内側から追い上げてきたヴィルシーナとは写真判定にもつれ込む程の僅差でゴールに飛び込んだ。
写真判定の結果、同タイム(ハナ差)での勝利となり、史上四頭目の牝馬三冠を達成し、全てジェンティルドンナ→ヴィルシーナで決着した。
ジャパンカップ ~三冠馬対決~
牝馬三冠を達成し、自信をつけた陣営はジャパンカップへの参戦を決定する。
2012年のジャパンカップは凱旋門賞からソレミア、天皇賞(秋)からエイシンフラッシュ、フェノーメノ、ルーラーシップ、そして何より牡馬三冠のオルフェーヴルも参戦し、好メンバーが揃った。
このメンバーの中でも牝馬三冠とオークスの勝ちっぷりが評価され三番人気に推される。
外枠と大幅なマイナス体重で心配されたが、レースは斤量差を生かし果敢な先行策に打って出ると折り合い良く道中を進め、最後の直線で追い出しにかかる。外から追い込んで内にささってきたオルフェーヴルと一杯になったビートブラックに挟まれ進路を失いかけるが、牝馬とは思えない豪快な当たりでオルフェーヴルを外へふっ飛ばし進路を作るとラストスパートをかけ先頭に立つ。オルフェーヴルも態勢を立て直し猛然とジェンティルドンナを追いかけ三冠馬同士プライドがぶつかった熾烈な追い比べとなり、わずかハナ差でジェンティルドンナが三冠対決とジャパンカップを制し、牝馬三冠馬として初となる牡馬混合GI制覇を果たした。
G1・4勝、特にジャパンカップの勝利が評価され、3歳牝馬としては史上初となる年度代表馬に選出された。
2013年
ドバイ シーマクラシック
2013年は凱旋門賞挑戦を見据え、海外挑戦となるドバイシーマクラシックへ出走を決断。
放牧に出された後、国内で入念に調教を積み一週前に現地へ乗り込む。休み明け、ぶっつけ本番、長距離輸送を不安視する声もあったが、それを吹き飛ばすように現地の最終追い切りでは慣れない馬場に対応し抜群の動きを見せる。海外の関係者もジャパンカップでオルフェーヴルに勝った事を非常に高く評価されており、ブックメーカーのオッズは一番人気に支持された。
そしてレース本番、ゲートは外目の8番枠からスタート、積極的な逃げ馬がいない中でシャレータが鼻を切り、セントニコラスアビー、そしてジェンティルドンナが続き有力馬で先頭集団が形成される。ただ本馬の道中は内に入れず外を回された上、掛かり気味なのか鞍上の岩田騎手が手綱をずっと抑えた状態でリズムを欠いていた。そしてそのままの大勢で4コーナーから直線へ入る頃、前にいたセントニコラスアビーが先に仕掛け、シャレータを交わし先頭に躍り出るとジェンティルドンナもそれを追う。
直線、セントニコラスアビーを捉えようとラストスパートを仕掛けるが道中リズムを悪くした事が最後の伸びに欠き、日本で見せていた加速力のある末脚が見られず先頭のセントニコラスアビーとの差が詰められない、それでも持ち前の勝負根性で何とか食い下がっていたがそのまま決着、世界の壁の厚さを感じた2着惜敗だった。
勝ったセントニコラスアビーは昨年の凱旋門賞こそフランスの馬場が合わず11着と惨敗していたが、世界中のクラシックディスタンスを転戦しGI三勝、負けたレースでも堅実に着を拾って実績を積み重ねてきた有力馬。
宝塚記念
ドバイからの帰国後は、予定通り宝塚記念に出走。二度目の三冠馬対決となるオルフェーヴル、初対決となる同期の牡馬二冠馬ゴールドシップに、天皇賞(春)を制したフェノーメノを加えた4強決戦が期待された。しかし、オルフェーヴルが肺出血により回避。4歳馬最強決定戦の様相を呈す中、単勝2.4倍の1番人気に支持される。
レース本番では大外の11番枠からジャパンカップと同様に先行し、大逃げを打つシルポート、実質上のペースを作るダノンバラードに続く3番手につけ、同じく先行策をとると想定されていたフェノーメノの機先を制することに成功する。思惑通りの展開であっただろうが、ここで予想外の事態が発生する。いつも通り最後方からレースを進めると思われていたゴールドシップが内田騎手の出鞭と押しに応えて先行し、4番手につけてきたのだ。最後にスタートを出負けしたフェノーメノが5番手についたことによりレースの道中は三強が順に並ぶ形で進んでいった。
レースが動いたのは第3コーナー。フェノーメノが前2頭を捉えるべく仕掛けたのを機に各馬スパートを開始。内からジェンティルドンナ、ゴールドシップ、フェノーメノの順で三強は一団となりコーナーを曲がってゆく。そして、最後の直線。数日前の台風、レース直前までの雨により荒れていた内を嫌った岩田は、外に持ち出すべくゴールドシップを弾こうとしたが、これを読んでいた内田には通じず逆に弾き返される結果に。この時点で勝負は決し、荒れた馬場を苦にせず伸びてゆくゴールドシップに突き放されていく。最後はフェノーメノの追撃を凌いだものの、ダノンバラードを半馬身交わせずに3着。勝ったゴールドシップからは3馬身半離された完敗であった。
ドバイのメイダン競馬場、実質重の阪神競馬場といったパワーの要る馬場で連敗を喫したことにより、両競馬場より馬場が重くなることが想定される凱旋門賞への挑戦は厳しくなったと言える。
天皇賞~ジャパンカップ
秋初戦は古馬中距離路線では最高峰の天皇賞(秋)へステップレースを使わず出走。ゴールドシップ不在ということもあり、一番人気に支持された。
しかしレースでは前半1000m58秒4のハイペースで掛かり気味2番手、直線で先頭に立ったものの後方で機会を伺っていたジャスタウェイに差し切られ4馬身差の2着に敗れた。
レース後に石坂調教師とオーナーが相談し、鞍上をこれまで主戦騎手だった岩田康誠からライアン・ムーアに変更してジャパンカップへ出走となった。
前走で折り合いに苦しみ2着、ゴールドシップも出走するとあり人気を落とすかと思われたが、前年優勝ということもあってか一番人気。
レースは好スタート後に5番手付近で追走。エイシンフラッシュが逃げを打ち、1000m62秒4という超スローペースで折り合いに各馬苦しむ中、ジェンティルドンナはうまく折り合いをつけながら追走。
直線で先頭に立つとゴールドシップが捲り不発で追ってこず、そのままデニムアンドルビーやヒットザターゲット、ルルーシュをねじ伏せ史上初のジャパンカップ連覇達成。
疲労面などもあったのか有馬記念には出走せず、結局この年はジャパンカップの1勝のみに終わったが、ドバイシーマクラシックや天皇賞(秋)でも善戦しておりJRA最優秀4歳以上牝馬に選出された。
2014年
京都記念からドバイシーマクラシック制覇へ
前年同様ドバイシーマクラシックへの挑戦を表明し、遠征前の前哨戦に京都記念を選択。鞍上は福永祐一が務めることに。
単勝1.6倍の圧倒的な一番人気に支持され、 誰もが楽勝だと思っていた。
しかしレースでは好位置につけながらも直線で全くといっていいほど伸びがなく、デビュー以来初めて掲示板を外す6着。
ドバイ遠征を不安視する声も聞かれた。福永のせいとも
ドバイシーマクラシックでは再びライアン・ムーア騎乗での出走になった。
同じく日本から遠征していたデニムアンドルビーと共に好スタート、デニムアンドルビーが先行するのに対してジェンティルドンナは控えようとする。
その時内にいた馬と接触するも、特に影響はなく中団内側に付ける。
直線に向くと先行していたデニムアンドルビーが他の馬に交わされ、その後ろにいたジェンティルドンナが囲まれた状況になってしまう。
しかしそこから他の馬を押しのけるようにして外へ抜け出し、残り120mで先頭へ躍り出たままゴール。
昨年敗れたドバイシーマクラシックを制し、 牝馬としては初のドバイでのG1制覇となった。
宝塚記念
帰国後は宝塚記念への出走を表明。騎手もオークス以来となる川田将雅とのコンビが復活。
昨年はゴールドシップに完敗したものの、 今年こそはと陣営もかなり気合を入れて望んだ。
人気はやはり昨年優勝のゴールドシップ、前走G2勝利・前々走天皇賞(春)2着のウィンバリアシオンに次ぐ3番人気となったが、それでも4.1倍のオッズだった。
スタートはまずまずだったものの、最初の直線でゴールドシップがジェンティルドンナの外に付け、1000m62秒4のスローペースでうまく折り合えず。
外に居たゴールドシップに3コーナーすぎから先行され、そのまま直線へ。
前にいるゴールドシップがロングスパートで先頭に立つものの、ジェンティルドンナは直線でも伸びがなく、過去最悪の9着。
天皇賞~ジャパンカップ
宝塚記念で完敗した後は休養に入り、秋は天皇賞(秋)からの始動。そして今年で引退となることを発表した。鞍上は初騎乗となる戸崎圭太に変更。
オッズは前走で完敗だったものの、 その年の皐月賞馬でダービーも2着のイスラボニータに次ぐ2番人気に支持された。
レースは道中先行し、最後の長い直線でイスラボニータを振りきったものの、その後ろから飛んできたスピルバーグに差し切られ2年連続の2着。
その後陣営は3年連続の制覇がかかるジャパンカップを次のレースとし、結果次第では引退の可能性も示唆した。
得意の府中、騎手もライアン・ムーアに乗り替わりがあったものの1番人気での出走。
レースは前日に雨が降ったせいで良馬場発表ながら若干重めの馬場になっており、スタミナ勝負となり苦戦。
好スタートからいい位置での競馬をするも、菊花賞で不良馬場で圧勝したこともあるエピファネイアに力負けし4着となった。
レース後に陣営は次に出走する有馬記念で引退となることを発表。
有馬記念~有終の美で引退
有馬記念ではジャパンカップ騎乗のライアン・ムーアの短期騎手免許が切れるため、再び戸崎が騎乗することに。
ファン投票では1番人気だったゴールドシップに続く55699票を集めた。
この年の有馬記念は史上初の枠順を公開抽選することになったが、ジェンティルドンナはなんと1番最初に選択権を獲得。2枠4番の好位置での発走となった。
しかしジェンティルドンナは中山では未出走、前走でも敗戦とあり4番人気にまで人気を落とした。
この年の有馬記念はG1馬10頭という豪華なメンバーが揃い、人気上位5頭だけでも
- 1番人気 ゴールドシップ(同年宝塚記念制覇)
- 2番人気 エピファネイア(同年ジャパンカップ制覇)
- 3番人気 ジャスタウェイ(同年ドバイデューティーフリー、安田記念制覇)
- 4番人気 ジェンティルドンナ
- 5番人気 ワンアンドオンリー(同年ダービー馬)
という近年では一番といえるメンバーとなった。そのため各スポーツ紙予想や評論家予想も割れに割れ、4番人気のジェンティルドンナは8.7倍であった。
レースは好スタートから道中3番手追走し直線で一気に抜け出し、ゴールドシップやエピファネイア、トゥザワールドを振りきって優勝。
前年のオルフェーヴルに続いて2年連続で引退レースで優勝となった。
また有馬記念制覇によって、
- 中山競馬場未出走馬としては17年ぶり制覇
- 通算G1勝利数7勝で史上最多タイ(シンボリルドルフ、テイエムオペラオー、ディープインパクト、ウオッカに並ぶ)
※ただし、ジェンティルドンナの1勝は海外G1の勝利、他の4頭はすべて国内G1である。 - 国内G1に限った場合、牝馬による通算G1勝利数6勝は史上最多タイ(ウオッカ、ブエナビスタに並ぶ)
※ただし、ウオッカは他にJpn1時代の東京優駿を勝っている。 - 牝馬では史上初のJRA主要4場(東京・中山・京都・阪神)すべてのG1レース勝利
他の達成馬はテイエムオペラオー、オルフェーヴルのみ。ディープインパクトは阪神のみ未制覇。 - 通算賞金獲得額で歴代2位に(1位はお馴染みテイエムオペラオー)
- 父・ディープインパクトとの親子制覇(どちらも引退レースで優勝、産駒では初制覇)
血統表
ディープインパクト 2002 鹿毛 |
*サンデーサイレンス 1986 青鹿毛 |
Halo | Hail to Reason |
Cosmah | |||
Wishing Well | Understanding | ||
Mountain Flower | |||
*ウインドインハーヘア 1991 鹿毛 |
Alzao | Lyphard | |
Lady Rebecca | |||
Burghclere | Busted | ||
Highclere | |||
*ドナブリーニ 2003 栗毛 F No.16-f |
Bertolini 1996 |
Danzig | Northern Dancer |
Pas de Nom | |||
Aquilegia | Alydar | ||
Courtly Dee | |||
Cal Norma's Lady 1988 |
*リファーズスペシャル | Lyphard | |
My Bupers | |||
June Darling | ジュニアス | ||
Beau Darling |
5代クロス Lyphard 4×4 Northern Dancer 4×5×5
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