機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイとは、角川スニーカー文庫より発売された富野由悠季によるガンダムシリーズの小説作品、及びそれを原作とするアニメ作品である。
概要
1989年~1990年に展開された小説。主人公はハサウェイ・ノア。
宇宙世紀100年代を舞台としており、一年戦争時代(宇宙世紀0079年)から続いたアムロやシャア達の物語に一区切りが打たれた作品と言える。
映画『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』の続編的性質を持った作品であり、細かい部分は同作品の初期稿を元に書かれた小説『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア ベルトーチカ・チルドレン』の内容と繋がっている。富野由悠季が執筆した作品である事からアニメ化作品と同様に「サンライズ公式作品」と認識されており、各サンライズ準公式媒体の漫画の年表やゲームに一部設定を変えて登場していた。
ニコニコ動画では、2000年のゲーム化後、2021年のアニメ化より前に投稿されたゲームのプレイ動画や手描きMADが人気を博しており、本作の根強い人気が窺える。
本作は小説版・Gジェネ版・アニメ版で設定やデザインが異なる。
ゲーム『GジェネレーションF』参戦にあたって機体デザインや設定が改変され、このデザインがゲーム媒体や漫画媒体では元となっていた。しかし、アニメ版では小説版とGジェネ版(及びその追補設定)を擦り合わせる形で設定・デザインにさらなる変更を加えている。
ストーリー
宇宙世紀100年代、人類は幾度かの世代を重ね月軌道圏までを生活圏としている、そんな時代。連邦政府高官をはじめとする特権階級は地球への再移住を進める一方、連邦政府は刑事警察機構に統括されるマン・ハンターと呼ばれる武装警察を動員して地球居住者を弾圧、年に数十万人を虐殺していた。
そんな中、マフティー・ナビーユ・エリンを名乗る反地球連邦政府組織は政府に対し、「全地球居住者の宇宙への移民」を要求する声明を発表すると同時に、政府高官をモビルスーツにを使って次々に暗殺していった。
マフティー掃討戦指揮の辞令を受けた連邦軍大佐ケネス・スレッグは、地球降下の為に搭乗したシャトル『ハウンゼン』356便にて、異常な洞察力を披露する少女ギギ・アンダルシアと、植物観察官候補生で猫背の青年ハサウェイ・ノアに出会う。
彼らが乗り合わせたシャトルが、マフティーを騙るオエンベリ軍の一味にハイジャックされたことから物語が始まる。
本作(小説版)と他媒体の宇宙世紀作品の相違点
本小説ではシャアの反乱の後を描いているが、劇場版『逆襲のシャア』ではなく小説『ベルトーチカ・チルドレン』(角川書店刊)の続編となっている。この為ハサウェイがクェス・パラヤを誤って殺めてしまったという設定に基づいて執筆されている。これはまた過去に徳間書店より発売されていた小説版逆襲のシャアが2002年に機動戦士ガンダムハイ・ストリーマーとして正式に復刊した際の富野由悠季氏のインタビューの中でも、劇場版のプロット(徳間小説版のプロット)と閃光のハサウェイは物語的なつながりはないと答えられている。
物語的な繋がりはないのだが、サイバーコミックスやMS SAGAで連載されていたガンダムF90やシルエット・フォーミュラが90年台にデンゲキコミックより単行本として発売された際、付属している宇宙世紀公式年表には閃光のハサウェイの時代の事件が宇宙世紀104年もしくは105年に起きたと記載された。また、2011年に逆襲のシャアがBlu-ray化した際付属のブックレットの年表にもマフティーの事件に関して記載されているので、物語の一部が本伝という扱いになっていた。
後にゲーム『GジェネレーションF』にはキャラクターとMSを再デザインしての登場し、これ以降は公式作品と同等の扱いで多数のゲームに参戦、立体商品化も行われている。
さらに近年はガンダムエース誌上の漫画でもマフティーの反乱に言及し、本作登場MS(メッサー)が端役ながら描かれた例がある。 そして、アニメ版『ガンダムUC』にも本作登場MS(グスタフ・カール)がデザインを変え登場した。
登場人物
主要人物
- ハサウェイ・ノア / マフティー・ナビーユ・エリン
- CV:佐々木望(GジェネFなどゲーム作品)、小野賢章(映画版)
- ブライト・ノアとミライ・ノアの息子。反地球連邦政府組織マフティー・ナビーユエリンのリーダーにして、Ξガンダムのパイロットを務める。
- ギギ・アンダルシア
- CV:林原めぐみ(GジェネF)、川上とも子(Gジェネ魂・ギレンの野望)、上田麗奈(映画版)
- 今作のヒロインで、民間人。保険会社の創業者でもあるとある大富豪の専属愛人。
その立ち居振る舞いや未来予知、ウソを見抜く洞察力など、ハサウェイにニュータイプであったクェス・パラヤの面影を想起させる。 - ある陣営にいるだけで幸運を次々ともたらすという、とんでもない力を持っており、それが本作においてハサウェイとケネスの勝敗を左右した。
小説版では東洋系・ラテン系の血が混じっているような記述があるが、映画版では純血アングロサクソンの金髪白人として描かれている。 - ケネス・スレッグ
- CV:立木文彦(GジェネF以降)、大塚明夫(サンライズ英雄譚)、諏訪部順一(映画版)
- 地球連邦軍大佐。もとはコロニーと月で新型MS開発の指揮を執っていたが、キンバレー部隊司令着任の辞令が下りたため、地球行きのシャトル『ハウンゼン』に搭乗する。戦場で幾度もハサウェイと激突する度に彼とは不思議な友情を築いていく。
乗馬鞭がトレードマーク。ゲームでは若々しい容姿に反して声が渋い。小説版イラストやゲームでは金髪白人で描かれていたが、映画版では黒髪に浅黒い肌と大幅に変更されている。 - レーン・エイム
- CV:橋本晃一(GジェネF)、水島大宙(Gジェネ魂以降)、斉藤壮馬(映画版)
- 地球連邦軍中尉の強化人間。キンバレー部隊(キルケー部隊)所属のパイロット。開発中からペーネロペーのテストパイロットを務め、ケネスに先んじる形で地球に派遣された。
ゲーム版でのみ、ニュータイプという事になっている
映画版では、原典通り強化人間設定となっており、愛機を「ペネロペー」と呼称するオリジナル設定も追加された。 - ブライト・ノア
- 第十三独立艦隊旗艦ラー・カイラムの艦長。階級は大佐。ケネス准将の後任人事として、キルケー部隊司令就任の辞令を受け、地球に降下してくる。以前から退役願いを出しており、除隊の交換条件として本任務を受諾した。死んでいった部下達の死を無駄にしない為に、政治家になろうと画策している。しかし精神的に疲弊しており、退役後は妻とロンデニオンコロニーで短期間レストランを経営して、市井の生活を学ぼうと考えていた。
- クェス・パラヤ
- CV:川村万梨阿
- シャアの反乱にてハサウェイが出会った少女。故人。『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア ベルトーチカ・チルドレン』の設定に沿い、クェスはハサウェイの手で戦死している。
映画版では、『逆襲のシャア(映画版)』のあとの物語となるため、ハサウェイを守って戦死。死後、クェスの残留思念はハサウェイと共にあり、ハウンゼンやカーゴ・ピサ内で度々会話をしている。
その他登場人物
- かぼちゃマスク
- CV:新祐樹
- シャトル『ハウンゼン』を占拠したハイジャッカーのリーダー。マフティー・ナビーユ・エリンを騙り、乗客を人質として地球連邦軍から軍資金を得ようする。
制圧時の緊張感の中、不用意な言動をしてしまったハイラム・メッシャーとその妻に苛立ち射殺するが、その後ハサウェイとケネスの格闘攻撃によって倒され確保された。 - ハイラム・メッシャー
- CV:川口啓史
- 地球連邦政府の保健衛生大臣。搭乗していたシャトル『ハウンゼン』がマフティー・ナビーユ・エリンを騙るハイジャッカーに占拠された際、不用意にハイジャッカーの一人(かぼちゃマスク)に話かけたことで射殺された。
- タクシー運転手
- CV:本多新也
地球に住んでいるアースノイドの一般市民。マン・ハンターから遠ざかろうとするハサウェイをタクシーに乗せた。その際の会話で出た何気ない一言はハサウェイに衝撃を与えた。 - アムロ・レイ
- CV:古谷徹
- 小説版では、マフティー・ナビーユ・エリンが実はアムロ・レイの生き返りではないかという話に出てくるのみで登場しない。本作は映画『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』封切りの1年後に発売された小説であるが、既に死亡した扱いである。
映画版では、ハサウェイの内に宿る残留思念として登場し、カーゴ・ピサで出撃前のハサウェイにアドバイスを送った。
主な登場兵器
- RX-105 Ξガンダム
- マフティーがアナハイムの工場に発注した新型のガンダム。名称はアムロ・レイが最後に搭乗したνガンダムを引き継ぐ意図で付けられた。読み方は「クスィーガンダム」。
- 機体に装備されたエンジンであるミノフスキー・クラフトにより、大気圏内でも疑似反重力推進による飛行を可能とした。
- 機体を防御するビーム・バリアーを装備している。小説下巻にもなると、進行方向にビームを展開することで大気圏内で初めてMS形態で音速の壁を突破した。他にも、頭部のサイコミュブロック、ファンネル・ミサイルなど先進的機能を備える。
- 小説の後に出たサンライズ準公式設定の本などでは第5世代モビルスーツという扱いになっており、映画版でも採用された。
- ゲーム版やカトキハジメによる立体化では、中巻表紙のカラーリングをベースにしていたが、映画版では小説中巻の口絵に近いカラーリングとなり、異形のMSを強調するデザインになっている。
- RX-104FF ペーネロペー
- キンバレー部隊に配備された新鋭モビルスーツ。機体設計思想そのものにはガンダム系モビルスーツの名残りを残している。Ξガンダムの兄弟機に当たり、ミノフスキー・クラフト及びファンネルミサイルを搭載している。こちらも当然機体を防御するビーム・バリアーを装備しているが、高速飛行時に大気の干渉を拡散させる技術が不完全である。この為高速飛行時には飛行形態に変形する。
2001年にムービックから発売されたカレンダーでは、「RX-104 オデュッセウスガンダム」というガンダムタイプのMSがフィックスドフライトユニットを装備した状態であるという準公式設定が後付けされて、VSシリーズなどの準公式設定のゲームではこの設定が踏襲されている。
2021年に公開された劇場版では、前述の準公式設定が取り込まれ、公式設定へ格上げとなった。
映画版では、機体を推進させる装置がミノフスキー・フライト・ユニットへと変更。こちらではΞガンダムとの差別化のためビーム・バリアーは非搭載という設定になっている。 - Me02R メッサー
- マフティーが使用する量産型モビルスーツ。ジオン軍の設計思想を色濃く残している機種である。単体で飛行はできないのでサブフライトシステム「ギャルセゾン」に搭乗して戦う。
映画版ではブースターバックパックの装着により、短時間の上昇機動が可能。 - FD-03 グスタフ・カール / ドーラ・カール
- キンバレー部隊(キルケー部隊)の主力モビルスーツ。
ジェガン系列の設計思想の延長線上に存在する機体で、基本スペックはガンダムタイプに通じる高さを誇っており、頭部のメーンセンサーの有効半径はνガンダムにも匹敵する。メッサー同様単体飛行能力はなく、サブフライトシステム「ケッサリア」を使用する。
小説版と映画版、及びGジェネ版とアニメ版ガンダムUC(先行量産型)ではそれぞれデザインが異なる。小説版で特徴的だった頭部ツインブレードアンテナと脚部ビームサーベルは、他の媒体ではなくなっている。Gジェネデザイン及び劇場版ではビームライフルとビームサーベルはジェガンと共通のものになっている。
ムック『ガンダムMSグラフィカ』では、重装型と軽装型が存在するという設定が追加。前者をGジェネ版、後者を原作版と解釈した資料もある。 - ムック『ガンダムウェポンズ ニュージェネレーション編』では、グスタフ・カールは厳密には隊長機であり、「ドーラ・カール」と呼ばれる一般機も存在するという設定が追加された。
アニメ版でもこれらの設定が適用されており、映画1作目に登場したのは実はドーラ・カールだった(グスタフ・カールは総称)ということになっている。ちなみにオーバーワールドまでのGジェネに参戦していたのもドーラ・カールである。
作中用語
- マフティー・ナビーユ・エリン
- 反地球連邦政府組織である秘密結社。組織名兼同組織のリーダーの名前もマフティー・ナビーユ・エリンである。作中では「マフティー」、「マフティー・エリン」と略される事も多い。全ての人類を地上から宇宙へ上げることを標榜し、各地でMSによるピンポイントな要人暗殺を繰り返してる。物語開始時点で、暗殺された要人は10人以上。
クワック・サルヴァーを自称する元連邦軍地球方面軍の将軍を発起人とするが、彼の正体は組織内でも謎とされる。 - キンバレー部隊 / キルケー部隊
- 対マフティー掃討戦のために組織された、地球連邦軍部隊。ダバオ空軍基地(現フィリピン・ミンダナオ島)を拠点とし、同空軍基地司令が兼任で指揮を執る。
物語開始時点ではキンバレー・ヘイマン大佐の指揮下にあったが、ケネス大佐の赴任に伴いキルケー部隊と改称された。 - アデレード会議
- オーストラリア大陸のアデレード市で開催が予定されている、地球連邦政府の法案審議会議。出席のため、政府高官が次々と地球へ降下を始めている。
地球居住権に関する重要法案可決が見込まれており、マフティーはこの阻止を画策している。 - シャトル『ハウンゼン』356便
- 宇宙・地球間を往還する民間スペースシャトル。この時代では軍用機を除き、唯一地球への直接降下が可能な船便であり、乗船には相応の地位かコネクションが必要とされる。
- マン・ハンター
- 地上の不法居住者の逮捕と宇宙への強制送還・送致を業務とする武装警察組織。
本作に先立って発表された同著者の小説『ガイア・ギア』にも登場する。
映画版ではRGM-89 ジェガンを対人制圧用に運用しているなど、使用車両がパワーアップしている。
登場ゲーム作品
- SDガンダム GGENERATION-F(初登場作品)
- SDガンダム GGENERATION ギャザービート2
- SDガンダム GGENERATION PORTABLE
- SDガンダム GGENERATION SPIRITS
- SDガンダム GGENERATION WARS
- SDガンダム GGENERATION WORLD
- SDガンダム GGENERATION OVER WORLD
- SDガンダム カプセルファイターオンライン
- ガンダムバトルユニバース(機体はΞガンダムとペーネロペー、キャラクターはマフティー(青年ハサウェイ)のみ)
- ガンダムアサルトサヴァイブ(Ξガンダムとペーネロペーのみ)
- 機動戦士ガンダム ギレンの野望 アクシズの脅威V(メインキャラクター4人と本作の機体全部のみ)
- 機動戦士ガンダム 新ギレンの野望(マフティー(青年ハサウェイ)のみ。Ξガンダムはハサウェイ編のエピローグのみ登場)
- 機動戦士ガンダムVSシリーズ (EXVS以降)
- ガンダムトライエイジビルドMS(第5弾から。主人公とライバルのキャラと機体が登場。)
- SUNRISE WORLD WAR From サンライズ英雄譚(機体はΞガンダムとペーネロペー(没データ)、キャラクターはケネスのみ)
- スーパーロボット大戦V(機体はΞガンダムとペーネロペー、キャラクターは青年ハサウェイとレーンのみの登場)
アニメ版
宇宙世紀の次の100年を描くプロジェクト『UC Next 0100』第二弾作品として、劇場用アニメ三部作の製作が告知された。
ストーリー設定は原作小説と異なり、『逆襲のシャア(映画版)』の続編となる。書籍の解説、ゲームのように、今作では宇宙世紀105年と明確に年代が設定されている。
第一部は2019年冬より劇場公開予定だったが、諸事情により2020年7月23日(木/祝)公開予定、そして新型コロナウィルス感染拡大とそれに伴う緊急事態宣言もあり、2021年5月7日(金)→2021年5月21日(金)→2021年6月11日(金)と公開延期が重ねられていった。最終的に2021年6月11日(金)に公開された。
2021年4月18日には劇場公開に先駆け、ガンダム公式YouTubeチャンネル「ガンダムチャンネル」にて冒頭15分53秒が無料先行公開された。
バンダイナムコGの「ガンダムプロジェクト」の展望「GUNDAM NEXT FUTURE -ROAD TO 2025-」の一環として、TVエディション(全4話)の地上波初放送が決定。2023年1月から3月にかけて『機動戦士ガンダム サンダーボルト』、『機動戦士ガンダムNT』と続けて放送する。
『機動戦士ガンダム 水星の魔女(第1クール目)』の後番組として、MBS・TBS系全国28局ネット 日曜17:00~17:30にて放送開始。
スタッフ
- 企画・製作:サンライズ
- 原作:富野由悠季、矢立肇
- 監督:村瀬修功
- 脚本:むとうやすゆき
- キャラクターデザイン:pablo uchida、恩田尚之、工原しげき
- キャラクターデザイン原案:美樹本晴彦
- メカニカルデザイン:カトキハジメ、山根公利、中谷誠一、玄馬宣彦
- メカニカルデザイン原案:森木靖泰
- 美術監督:中村豪希
- 色彩設計:すずきたかこ
- 撮影監督:脇顯太朗
- CGディレクター:増尾隆幸、藤江智洋
- 編集:今井大介
- 音響演出:笠松広司
- 録音演出:木村絵理子
- 音楽:澤野弘之
漫画
劇場アニメ公開に合わせる形で、「月刊ガンダムエース」2021年6月号より連載開始。
作者はさびしうろあき。
キャラクター/メカニックデザインは劇場版準拠だが、ストーリー設定は同誌で同作者が連載していた『ベルトーチカ・チルドレン』コミカライズの続編となる。
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関連項目
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