『GS美神 極楽大作戦!!』(ゴーストスイーパーみかみ ごくらくだいさくせん!!。略称:GS美神)は、椎名高志の漫画。小学館の『週刊少年サンデー』にて1991年30号から1999年41号まで連載された。
『週刊少年サンデー増刊』1991年3月号に掲載された短編読み切り『極楽亡者』を下敷きとしている(単行本1巻に収録)。
テレビアニメ版の題名は「GS美神」、劇場版の題名は原作漫画と同様。
概要
悪霊や妖怪の退治を仕事とするゴーストスイーパー(Ghost Sweeper、以下GS)の美神令子、助手の横島忠夫。己の欲望のまま動く2人と、性格はまともだが幽霊のおキヌを中心とした日常のドタバタや、悪霊・妖怪との戦いを描くオカルトコメディ。
連載後期には、美神と横島の前世から続く因縁を加味したラブコメディや、宿敵との対決の要素も描かれるようになる。
コミックスは全39巻発売されるなど人気・長期連載であった。第38回小学館漫画賞を受賞している。
連載時期はちょうどパソコン通信からインターネットへの移行期間に当たっていて、特にアニメ放映時期にはパソコン通信の隆盛期に合致していたため、Nifty-Serveの掲示板ではアニメの感想や考察などが盛んであった。またインターネットが日本で流行し始めた時期に、個人サイト等で二次創作小説(SS)が掲載される事なども多かった。
登場人物
- 美神令子 (声:鶴ひろみ)
- 主人公?。20歳の若さにも関わらず日本でトップクラスのGS。「神通棍」という霊気を帯びた棍、霊気を一気に爆発させる「破魔札」などのアイテムを駆使する戦闘スタイルで、かなりの実力者。美人でスタイルもいいが金にガメツく、横島が自分の色香に目がくらんでいることを利用して彼を時給250円という違法な低賃金で雇用している。金以外にも問題行為も多いが、情に流されやすい横島・おキヌをGSとして嗜めつつ、次善策を出すなど、プロ意識と柔軟性のある大人でもある。
- 横島忠夫 (声:堀川りょう)
- 煩悩一直線な性格の高校生で、美女と見ればアタックする。当初は霊力を持たないただのアルバイトの荷物持ちだったが、後に開眼し強力な霊能力に目覚めていく。ただし彼の霊力は煩悩を源泉としており、シリアスになりきれない。なぜか人外によくモテる。ある意味、影の主人公?
更に詳しくは単独記事「横島忠夫」を参照。 - おキヌ (声:國府田マリ子)
- 巫女さん姿の幽霊。江戸時代に山に人身御供として捧げられた娘で、本来は山の神となるはずだったが適性が無く、地縛霊としてその土地に縛られるだけになってしまっていた。除霊に来た美神らによって代わりに山の神となる霊を見つけてもらってことで山から解放され、以後は美神の事務所の手伝いをしている。後に生き返り、人間「氷室キヌ」となる。
アニメ版では幽霊のままその生き返りが描かれる原作エピソードまで到達せずに全話数が終了したため、最後まで幽霊のままであった。担当声優の人気が当時非常に高かったことも影響してか、アニメ放映当時に発売されたキャラクターソングCDの売り上げはトップだったともいう。 - 唐巣和宏 (声:曽我部和恭)
- 美神とピートの霊能の師の中年男性。美神とは対照的に善人で、無償で除霊したりもする(そのせいで、満足に食べられず倒れたりも)。若い頃に、除霊のため教会で認められていない異教の術を使ったことで教会から破門されており既に正式な神父ではない。しかしその人柄からか唐巣神父とのあだ名で呼ばれている。しかし、弟子の美神から悪い影響を受けたのか、物語の後半では対空ミサイルを軍事基地からガメたりもしていた。いわく「聖戦」。
- ピエトロ・ド・ブラドー (声:森川智之)
- 愛称はピート。700歳のバンパイア・ハーフで、見た目は横島と同年代程度の青年。父親はかつてヨーロッパを荒らし回った悪逆な大吸血鬼ブラドー伯爵。しかし父親と違い本人は理想に燃える正義感の強い人物で、唐巣神父に弟子入りし、将来はICPOの超常犯罪課に入るために修業中。当初は唐巣神父に学んだ聖なる力を主に使って戦っていたが、雪之丞との戦いを通して吸血鬼の力も同時に使用できるようになった。
- 小笠原エミ (声:富沢美智恵)
- 美神のライバルの女性。黒魔術の使い手。GSとして悪霊払いもしているが、警察の依頼で犯罪者を黒魔術で脅し強制的に自首に追い込むという仕事もしている。ギャラさえ払えば犯罪者からの依頼でも受ける美神とは仕事上でよく対立するため、犬猿の仲。昔は犯罪者を呪殺する殺し屋もしていたが、ある出来事をきっかけに殺しはしなくなった(そのいきさつは、彼女を主人公としたスピンオフコミックとして単行本最終巻に掲載された)。「霊体撃滅波」という周囲の悪霊を一掃する強力な必殺技を持つものの、準備動作としてしばらく儀式舞踏を踊らなければならないという難点がある。美形好きで、盛んにピートに言い寄る。
- タイガー・寅吉
- 図体がでかい男だが、影は薄い。テレパス(精神感応能力者)であり、敵にジャングルの幻覚を見せてその中に身を隠したり、自らを虎と化して攻撃したりできる。しかし当初はエミの笛の力を使用しないと暴走して理性を失うという欠点を抱えていた。ちなみに彼の能力を呼びさます時にエミが唱える「虎よ、虎よ!」から始まる呪文は、ウィリアム・ブレイクの詩「虎」の一節(アルフレッド・ベスターのSF小説「虎よ、虎よ!」の序文として中田耕治が和訳したバージョン)である。後に、横島が通う高校に転入してクラスメイトとなる。アニメには登場しない。
- 六道冥子 (声:西原久美子)
- 十二体で一セットになっている式神「十二神将」を受け継ぐ式神使いの名家、六道家の箱入り娘。お嬢様のためか、おっとりして子供っぽい性格で喋り方もゆったりしている。美神令子、小笠原エミの共通の友人の仲良し三人組……だと本人は思っている。十二神将は非常に強力なのだが制御が完全ではなく、冥子が平静を失うと十二神将が暴走状態で十二体すべて一気に開放され、周囲を巻き込んで大きな被害を出してしまう。その上冥子本人のメンタルが弱く、頻繁にそういった事態を引き起こす。そのため、穏和な性格にもかかわらず他のキャラクターから恐れられている節がある。横島がアタックしようとしても十二神将が常に一緒にいるため排除されてしまうなど、隙の多そうな性格に反して割とガードが堅い。
- ドクター・カオス (声:千葉繁)
- 古代の秘術で不死となった大錬金術師。御年1051歳。若いころはブラドー伯爵や海魔セイレーンなどの強力な魔物を圧倒するほどの力を持っていた。通称『ヨーロッパの魔王』。人工的に魂を合成することで現代のコンピューターなど足元にも及ばない性能を持つ人造人間マリアを生み出している。しかし完全な不老不死ではなかったため、作中の現代では老いのために頭脳がかなり衰えている。強い霊力を持った美神令子の肉体と自分の老いた体を取り換える事を画策する悪役として登場したが失敗、そのままレギュラーキャラ化した。
- マリア (声:山崎和佳奈)
- 全盛期のドクター・カオスが作り出した女性型ロボット。外見はカオスの想い人をモデルとして制作されており、一見すると人間にしか見えない。しかし怪力を振るう事ができ、ボディ内部には銃火器も仕込まれている。ロボットであるため会話などにやや無機質なところがあるが、実は単なる人工知能ではなくカオスが合成した「魂」を備えている、カオスの最高傑作。この「魂の合成」は非常に高度な事で、彼女も含め歴史上2例しか成功例が無いと作中で明言されている。最終話では彼女が美神らに抱いていた友情が救いのカギとなった。外伝『GSホームズ 極楽大作戦!!』ではヒロイン役として、シャーロック・ホームズとの関係が描かれる。
- 厄珍 (声:茶風林)
- GSが使用する破魔札などの霊的アイテムを扱う店「厄珍堂」の主。サングラスをかけた小柄な男性。語尾に「~ある」を付けるなど協和語っぽい言葉遣いを使用しており外国人らしき様子もあったが、本編中で国籍は明らかにされなかった。効果の怪しいアイテムについて客で実験しようとする悪癖があったり、大学受験で不正をするためのアイテムを売りさばく傍らそれを検出するセンサーも売る準備をしていたり(マッチポンプ)と、小悪党なところがある。GS資格試験において解説係を務めるなど一応プロとしての知識は豊富らしい。
- 小竜姫 (声:山崎和佳奈)
- 妙神山にある霊能力者の修行場の管理人をしている竜神。見た目は若い女性。彼女の修行場で修行したGSは短期間にパワーアップを遂げることができる。劇中では、少なくとも美神、横島、エミ、唐巣、雪之丞がここで修業したことが示されている。人間界に居る神族では有数の実力者だが、正面から彼女が戦うと周囲に被害が出る状況であったり、妙神山に括られているためにそこから遠く離れて長期活動することはできない等の事情があったりして、美神らに敵との戦いを託さざるを得ない場面が多い。理性的な人物だが、背中にある「逆鱗」に触れられると竜の姿となって意識と理性が消失し、周囲のすべてを滅ぼすまで止まらなくなる。
- メドーサ (声:川浪葉子)
- 竜神でありながら、犯罪者として天界のブラックリスト入りしている危険人物。見た目は少し年のいったセクシーな女性といったところ。竜王の息子を暗殺しようとするテロリストとして初登場。原作では、その後も何度も登場して美神たちと戦う因縁の敵となる。小竜姫を下すほどの実力を持つが美神の悪口に激昂して乗せられるなど冷静さを欠く面もあり、作中の複数の人物からヒステリックと評されている。一応、頭自体はいい方で、時にはプライドを捨て撤退を選べる有能なキャラなのだが、物語が進むにつれ、美神以上に読み辛い横島の奇行に何度も振り回される羽目になる。
- 伊達雪之丞
- 白竜会というGS道場の門下生だったが、そこがメドーサに乗っ取られた際に力を求めて自分の意思でメドーサの手下となった。しかし、ピートとの戦いに横やりを入れられたことに激怒しメドーサを見限る。その後はGSのブラックリストに載っていたが、後にブラックリストから外すことを条件に美神たちに協力する。メドーサに授けられた、霊力を物質化して鎧として纏う「魔装術」という術を使って戦う。これは元々長時間使うと精神が浸されて魔族化してしまう危険な術だったが、後に修行で克服したようだ。比較的シリアスなキャラだがマザコンの気があり、美神を見て「ママに似ている……美しい」と頬を赤らめたことがある。頭が冴えるときと緩いときの差も激しく、稀に横島以上にお馬鹿な発言をすることも。アニメには登場しない。
- 西条輝彦
- ICPOの超常犯罪課(通称オカルトGメン)に所属している真面目な長髪の男性。美神の母親の弟子で、幼少時の美神にとっては兄のような存在であると同時に片思いの相手でもあった。日本に赴任した際に美神と再会する。美神は西条に好意的であり西条も美神を愛しているが、横島らと居る時の方が美神がありのままの姿で居られることに気づき一歩引く。しかしその後も変わらず横島をライバル視しており、互いに挑発しあう仲。初登場時は、美神も焦るような強力な悪霊を瞬殺するほどの実力をみせた。だがその後は指揮者的な立場での登場が多く、直接の戦闘シーンはあまりない。アニメには登場しない。
- 犬塚シロ
- 人狼の少女。人狼の隠れ里から、シロの父を殺して出奔した仇を追って人間の街にやってきた。隠れ里の人狼たちは侍のような文化を持っており、横島の使う霊波刀をみて自分の未熟な霊波刀と比べた強力さに感じ入り、師匠と仰ぐようになった。当初は幼い少年のような姿だったが、急激に成長し女性らしい姿に変貌した。しかし性格は子供のままであまり変わっていない。アニメには登場しない。
- タマモ
- 九尾の狐「玉藻の前」という伝説にも残る強力な妖怪の転生体。伝説では数々の国を滅ぼした非常に危険な妖怪と伝えられていため、転生直後から日本政府に付け狙われた。実際には転生前の記憶はほとんど無く少女同然だったのだが、それをきっかけに人間を嫌うようになる。だが美神の事務所にシロと共に居候し交流するようになり、徐々に打ち解けはじめる。連載終盤のキャラで出番は多くなくアニメにも登場しない。
- 愛子 (声:伊藤美紀)
- 学校の生徒机の付喪神。セーラー服を着た女学生の姿をしている。学校・授業・青春などへの憧れが強く、何十年も前から生徒を机の中に吸い込んでは、その中の出口のない校舎で洗脳した生徒たちとともに疑似学校生活を続けていた。美神に倒された後、吸い込まれていた生徒たちが「操られていたとはいえ君との学校生活は楽しかった」と許したこともあり改心。横島の通う高校の教師にも受け入れられたため、以後横島のクラスメートとして準レギュラーキャラとなる(アニメでは1回のみ登場)。ちなみに反省した後、「閉じ込めていた生徒たちをそれぞれの時代に戻す」という、時間を操作するような地味にすごい事を行っている。
テレビアニメ
1993年~1994年の毎週日曜朝、テレビ朝日系列にて『GS美神』のタイトルで放送。全45話。
原作ではビル内にあった美神の事務所が一軒家になっているなどの些細な違い以外はほぼ原作準拠設定。一定の人気を博し、ドラマCD、キャラクターソング集などが発売された。
オープニング曲は原田千栄の「GHOST SWEEPER」、エンディング曲は小坂由美子の「BELIEVE ME」。
2016年には全45話をBlu-rayディスク2枚に収録した「アニバーサリー・ブルーレイ」が発売されている[1]。また、2023年にはアニメ化30周年を記念して、上記の「アニバーサリー・ブルーレイ」の内容に後述の劇場版アニメも追加した、「全話いっき見ブルーレイ」が発売されている[2]。
劇場アニメ
1994年8月に公開。題名は原作と同じ「GS美神 極楽大作戦!!」。
織田信長が吸血鬼として現代に復活し美神たちが東京を救うために動く、といったオリジナルストーリー。
ゲーム
『ゴーストスイーパー美神 除霊師はナイスバディ』(1993年・スーパーファミコン用ソフト)、『ゴーストスイーパー美神』(1994年・PCエンジンスーパーCD-ROM²用ソフト)の2作が発売された。
SFC版は横スクロール2Dアクションゲームで、「7つの宝石を集めると願いがかなう」という女神像を入手した美神が宝石を集めるために様々な場所で除霊していく。ステージは原作に登場した話を元にしたものが多い。
PCE版はアドベンチャーゲーム(カードゲーム)で、アドベンチャーゲームパートはCD-ROMの大容量を生かしてアニメ版の声優によるフルボイスとなっていた。3話構成で、1・2話目は原作をもとにしているが、3話目は原作・アニメでは海底に沈んで見つからなかったマリアの妹「テレサ」が登場するオリジナルストーリーとなっている。
どちらもオープニングでアニメ版主題歌「GHOST SWEEPER」が流れる。ソフト容量の都合上、前者はメロディのみだが、後者はしっかりボーカルまで入っている。また後者はアニメ版のアイキャッチ(それぞれのキャラ+タロットカード)まで再現している。
読切・短編
原作の外伝としてシャーロック・ホームズを主人公とした漫画短編『GSホームズ 極楽大作戦!!』が2作あり、それぞれ別の短編集「椎名百貨店超GSホームズ極楽大作戦!!」および「椎名大百貨店」に収録されている。
また2013年には、漫画家有志による東日本大震災へのチャリティー企画に椎名が参加して本作の短編を久しぶりに執筆、そちらはその企画の単行本「ヒーローズ・カムバック」に収録されている。
関連動画
アニメOP・ED
ゲーム
ドラマCD
手描きMAD
その他いろいろ
GS美神RPG
関連静画
関連項目
脚注
- 13
- 10500pt
- ページ番号: 542423
- リビジョン番号: 3242560
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