ルーラーシップ(Rulership)とは、2007年生まれの日本の競走馬・種牡馬である。
馬名は「統治者の支配権」などの意味を持つ、若干偉そうな感じ。
主な勝ち鞍
2010年:鳴尾記念(GIII)
2011年:日経新春杯(GII)、金鯱賞(GII)
2012年:クイーンエリザベス2世カップ(G1)、アメリカジョッキークラブカップ(GII)
オセロお坊ちゃま
父は最強の大王の異名を取るキングカメハメハ、母は90年代最強の女傑にして偉大なる母エアグルーヴ、母の父*トニービンという生産者のノーザンファームが当時実現できるベストの配合の一つを実現した超絶良血馬。内国産馬としてはこれ以上を用意するならば、当時の種牡馬であればディープインパクトかアグネスタキオンあたりに変えて互角だった……と思う。
一口馬主クラブのサンデーレーシングに卸されたのだが、一口450万×40口の総額1億8000万で募集された。パネェ。
入った厩舎は当時既にウオッカやシーザリオを最初から管理し、転厩してきたハットトリックをGⅠ連勝に導いたことでノーザンファームからの信頼を高めていた角居勝彦厩舎。生まれながらのエリートってこういうものなのだろうか。
2009年の12月、有馬記念の裏開催の阪神でデビュー。3馬身半差を付け圧勝。次走は年明けの若駒ステークスへ。このレース、ディープインパクトの圧勝以来、なんかクラシックの登竜門的性質をさらに強めていたため彼も人気になったのだが、モタモタした隙にヒルノダムールが完全に抜け出し、追い込みも及ばず2着に敗退。
この馬、一歩の飛びが大きく直線で何の妨害もなく走ると驚くほど伸びるのだが、そのかわりコーナーワークなど細かい事がやや不得手という弱点があった。この弱点はこの後も彼を苛むことになる。その後、条件戦を圧勝し毎日杯に挑むがまたもたついて伸び切れず5着。ダービー出走をかけたプリンシパルステークスでは一転スカッと伸び4馬身ぶっちぎり圧勝。
しかし本番のダービーではクソスローからの究極の上がり勝負となってしまい、一瞬のキレより長く確実に伸びる性質が強い彼の末脚では分が悪かったか5着。その後、体調を立て直すのに時間がかかり、なかなか復帰できずにいたが鳴尾記念でようやく復帰。1番人気のヒルノダムールを完封し重賞初勝利を遂げ、意気揚々と有馬記念へ向かったが6着に敗れてしまう。…ここまでで気づいたかもしれないが、彼の戦績は勝って負けて勝って負けてが綺麗に繰り返されているのである。
馬券買う立場からすると、なかなかにありがたい馬なのかもしれない。
強いんだか弱いんだか
さて、有馬記念後は日経新春杯に向かうと繰り上がりとは言えJC馬のローズキングダムを歯牙にもかけない豪快な走りで重賞2勝目をマーク。適鞍を求めてドバイ遠征を敢行、シーマクラシックへ出走したがハーツクライや鬼婦人とか天才少年を持っていかないと12fのスペシャリストにボコボコにされるキツイレースだったので欠点の多かった彼は6着完敗。
帰国後、宝塚記念を大目標に据え金鯱賞へ出走。ここではまさかの……後々を考えると恒例行事とも言えるスタート出遅れをぶちかましてしまう。さらに不良馬場で逃げたのは2つ上の皐月賞馬・キャプテントゥーレ。小牧太の手綱でまんまとマイペース逃げを敢行し行き切る態勢だったところに、大外から凄まじい末脚で強襲し見事差し切り勝ち。不良馬場でこの追い込みは驚愕以外の何物でもなかった。
そのため宝塚記念では打倒ブエナビスタ一番手として2番人気となったが、今回は負ける番であり5着。秋は天皇賞(秋)ぶっつけからスタートする予定だったが、爪の不安で結局有馬記念まで自重。その有馬記念では最速の上がりで突っ込むが4着に敗れ、ついでに綺麗な勝ち負けのリズムも崩れた。
2012年はアメリカジョッキークラブカップから始動。不良馬場も物ともしない、飛びの大きさとパワーを両立させた豪脚で圧勝。日経賞でも1番人気に推されたが、勝ち負けのリズムは完全に崩れていなかったかネコパンチににゃー!と逃げ切られ3着。
ここで天皇賞(春)から香港のクイーンエリザベスⅡ世カップに目標をスイッチし香港遠征。初の海外遠征でかつ気性面に問題のある彼ならばスタートでやっちまうリスクもあったが、なんと無難なスタートを決めると前でポジションを確保、スローペースを強気に先行し直線に入ると後続をグングン突き放し4馬身差圧勝。2003年にSARS禍の中遠征したエイシンプレストンが連覇を決めて以来の日本馬による戴冠を成し遂げたのであった。
勝ち負けのリズムから考えれば当然の帰結であったが、常識的に考えればなかなかやれない海外でのGI初制覇をしれっとやってのけた。
やはりこの馬は大器である!とファンが沸き立った。そして、帰国後に向かった宝塚記念で1個下の三冠馬・春は散々やらかして威厳がすっかり地に落ちたオルフェーヴル打倒を目指し出走。僅差の2番人気に推されるが痛恨の出遅れ。 しかし立て直し前々に付け、馬場の良い外から末脚を伸ばすが…荒れた最内から尋常ならざる末脚で突き抜けたオルフェーヴルの前に完敗した。
ただ、出遅れたにも関わらず3着ショウナンマイティ以下は切り捨てており、一流馬の能力は示した。
相手が春天まで色々やらかしていても三冠を取った金髪の鬼神であっただけである。相手が悪いよ相手が!
秋は天皇賞(秋)に直行。ローテが嫌われたのか、当年の青葉賞馬で後に春天連覇を達成するのに菊花賞を捨ててやってきたフェノーメノが久しぶりの3歳制覇を期待されてかかなり人気していたせいか、予定された鞍上が前週右肩脱臼し、余計買えない騎手になったことが影響したか2番人気となった。
そしてレースでは思いっきり出遅れ。 最速の末脚で追い上げるが、最内を最速タイの末脚で断ち割ったエイシンフラッシュ、前でしぶとく立ち回ったフェノーメノに遅れた三着に敗れた。しかし、天下の不公平コース府中2000で出遅れ、大外を回って直線ゴボウ抜きした様は実力の高さを伺わせるものであった。
次走はジャパンカップ。オーストラリアの名手クレイグ・ウイリアムズを迎えたが例によって出遅れる。まあこういうのは年齢行ったあとに発症するとまず治らないものである……
直線猛烈に追い上げたものの、はるか前で金色のアイツとうら若き乙女によるどつきあいを傍観するしかなかった。またも三着。ミホシンザン先輩がそっち見てるぞ。
ジャパンカップ後は有馬記念へ。極限の仕上げ、さらに結構鞍上がコロコロ変わる中前走と同じくウイリアムズ騎手を確保、そして念入りにスタート練習をして迎えた一戦は!!!
……うん、もうなんか語るに落ちるレベルのスタートだったので言及しません。動画を見てください。笑っちゃいます。フェラーリかな?
それでも直線では赤い跳ね馬のスーパーカーの如き豪脚を全開にしたが、彼以上の無茶苦茶な末脚を二回仕掛けで引き出したゴールドシップが突き抜けるのを傍観する3着に終わった。ミホシンザン先輩が肩を叩いているぞ。
こうして、ミホシンザン以来の秋GIオール3着という珍記録は達成されたのだった。しかも3戦連続大出遅れのおまけ付きであった……
なにはともあれ、出遅れても3着には突っ込んでくる辺り能力の高さは見せつけた、と言える。出遅れ芸を見せてスリリングなレースを演出する?あたりエンターテイナーとしても一流である。単勝や馬単・三連単の軸にした方からしたらたまったもんじゃないし、牧場及び厩舎サイドはひたすらに頭が痛かったろうが。
まともなスタートであれば秋古馬三冠の可能性も……全部は流石に虫がいいにしろ、一つは取るチャンスは出ていただけに……
2012年シーズンをもって引退。結局、日本ではその余りある才気を十全に発揮することは叶わなかった。なお主戦騎手と言える存在は3歳春あたりの岩田康誠を除くと存在しなかった。香港でGⅠ勝ちを決めたウンベルト・リスポリ(伊)のような短期免許の外国人騎手が多く、免許持ちがいないときは当時のトップレベルの騎手で手隙の騎手に依頼をするノーザンファーム産のトップティア馬にありがちな感じであった。
そのためあんまり人気は出にくい方であったが、個性が強かったり母のファンが付いたりで結構な人気馬であった。
種牡馬としても偶に垣間見える遺伝
サンデーサイレンスを持たない中では間違いなく最高レベルの良血といえる存在であり、種牡馬としての引き合いは生まれた瞬間から約束されていたような存在である。ましてこうも素晴らしい実績を残したとなれば、種牡馬としても成功の可能性は高いと期待されていた。強いていうならば、偉大な父キングカメハメハと思いっきりバッティングすることが大きな不安と言えなくもない…
と思われたが、キンカメは高齢やこれまでの酷使が祟ったか種付け数を絞る事になったため人気がルーラーに集中。通常なら一番凹むと言われる種牡馬生活三年目の2016年にはなんと280頭に種付けを行った。いきなりフルスロットルすぎないかな…
産駒の出来は一年目からずっと評判もよく、2016年にデビューした産駒も次々と勝ち上がり、見事新種牡馬リーディングを獲得。しかし重賞馬は一向に現れずファンが不思議がってたところ、超不良馬場の菊花賞でキセキが快勝。産駒初重賞制覇をクラシックで達成した。2019年には産駒のメールドグラースがオーストラリアG1のコーフィールドカップを制した。
種牡馬リーディングでは2017年:12位→2018年:8位→2019年:5位→2020年:6位→2021年:7位と暫くトップ10入りしている。2019年にはキングカメハメハが死亡したので、後継種牡馬の1頭としてますます期待がかかってい…たのだが同父のロードカナロアが凄い勢いで追いかけてリーディングを抜かしてしまっており、キングカメハメハの後継者争いとしてはロードカナロアに次ぐ2番手に居る。更に現在は早くに世を去りながらもG1馬を複数輩出した姉の忘れ形見・ドゥラメンテ、ダート方面でも重賞馬を出し始めたホッコータルマエが台頭しているため、しばらくは3番手に居座りそうである。やはりこちらでも相手が悪い…
産駒は総じて成長力がある一方で、父譲りらしい気難しい所を見せることも多い。上記のキセキはデビュー直後から出遅れ癖があり、一時期マシになったものの現役晩年になってから再度悪化して出るか出ないか分からなくなってしまった。他にもダンビュライトは本馬場入場で何度も暴れた末に放馬してしまい去勢されたり、ホウオウイクセルは3歳春で重賞制覇後に出遅れ癖が付いてしまったり。
なお、キセキを生産した日高の名門・下河辺牧場は種牡馬ルーラーシップをかなり推しており、キセキの他にも全妹ビッグリボンやソウルラッシュ、ドルチェモアを生産したりと人気に一役買っている。
血統表
キングカメハメハ 2001 鹿毛 |
Kingmambo 1990 鹿毛 |
Mr. Prospector | Raise a Native |
Gold Digger | |||
Miesque | Nureyev | ||
Pasadoble | |||
*マンファス 1991 黒鹿毛 |
*ラストタイクーン | *トライマイベスト | |
Mill Princess | |||
Pilot Bird | Blakeney | ||
The Dancer | |||
エアグルーヴ 1993 鹿毛 FNo.8-f |
*トニービン 1983 鹿毛 |
*カンパラ | Kalamoun |
State Pension | |||
Severn Bridge | Hornbeam | ||
Priddy Fair | |||
ダイナカール 1989 鹿毛 |
*ノーザンテースト | Northern Dancer | |
Lady Victoria | |||
シャダイフェザー | *ガーサント | ||
*パロクサイド | |||
競走馬の4代血統表 |
クロス:Northern Dancer 4×5×5(12.50%)
この血統の特徴はなによりサンデーサイレンスの血が入っていないことである。つまりはサンデー系の牝馬と近親交配になりにくいという強みがある。それを言ったらロードカナロアもそうなのだが
主な産駒
2014年産
- エイシンクリック (牡 母 エイシンサンサン 母父 *キャロルハウス)
- 主な勝ち鞍 '22阪神スプリングジャンプ(J・GII)
- キセキ (牡 母 ブリッツフィナーレ 母父 ディープインパクト)
- ダンビュライト (騸 母 タンザナイト 母父 *サンデーサイレンス)
- マイブルーヘブン (牡 母 *ウルトラペガサス 母父 Fusaichi Pegasus)
- 主な勝ち鞍 '19新潟ジャンプステークス(J・GIII)
- ムイトオブリガード (牡 母 ピサノグラフ 母父 *サンデーサイレンス)
- 主な勝ち鞍 '19アルゼンチン共和国杯(GII)
2015年産
- グロンディオーズ (牡 母 シェリール 母父 *サンデーサイレンス)
- 主な勝ち鞍 '21ダイヤモンドステークス(GIII)
- テトラドラクマ (牝 母 リビングプルーフ 母父 *ファルブラヴ)
- メールドグラース (牡 母 グレイシアブルー 母父 *サンデーサイレンス)
- Hush Writer (牡 母 *スターオブサファイア 母父 Tapit)
2016年産
- ディアンドル (牝 母 グリューネワルト 母父 スペシャルウィーク)
- パッシングスルー (牝 母 マイティースルー 母父 *クロフネ)
- フェアリーポルカ (牝 母 フェアリーダンス 母父 アグネスタキオン)
- リオンリオン (牡 母 アゲヒバリ 母父 *クロフネ)
2017年産
2018年産
- ホウオウイクセル (牝 母 メジロオードリー 母父 スペシャルウィーク)
- ソウルラッシュ (牡 母 エターナルブーケ 母父 マンハッタンカフェ)
- ビッグリボン (牝 母 ブリッツフィナーレ 母父 ディープインパクト)
- 主な勝ち鞍 '23マーメイドステークス(GIII)
- ワンダフルタウン (牡 母 シーオブラブ 母父 ディープインパクト)
2020年産
- ドルチェモア (牡 母 アユサン 母父 ディープインパクト)
- 主な勝ち鞍 '22朝日杯フューチュリティステークス(GI)、'22サウジアラビアロイヤルカップ(GIII)
- 2022年JRA賞最優秀2歳牡馬
- フリームファクシ (牡 母 ライツェント 母父 スペシャルウィーク)
- マスクトディーヴァ (牝 母 マスクオフ 母父 ディープインパクト)
2021年産
関連動画
最近の馬なので、他にも色々動画あるんで新馬戦などはタグで辿ってください。
関連コミュニティ
関連項目
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