ガリレオ(Galileo)とは、1998年生まれのアイルランドの競走馬・種牡馬である。鹿毛の牡馬。
血統・実力すべてを兼ね備えた、天才としか言いようのない名馬。
通算成績:8戦6勝[6-1-0-1]
主な勝ち鞍
2001年:ダービーステークス(G1)、アイリッシュダービー(G1)、キングジョージVI世&クイーンエリザベスダイヤモンドステークス(G1)、アイリッシュダービートライアルステークス(G3)
表彰
2001年カルティエ賞最優秀3歳牡馬
2008・2010~2020年英愛リーディングサイアー(通算12回)
現役時代
父は当時の不動の欧州リーディングサイアー・Sadler's Wells(サドラーズウェルズ)、母は凱旋門賞を13番人気でぶっこ抜いたUrban Sea(アーバンシー)という、血統からして将来を約束されたような存在として生を受けた。
とはいえ、競走馬として凄いかどうかは別問題なのだが、この馬の場合管理したクールモアの主戦調教師エイダン・オブライエン師が「彼は水の上だって走ることができる」「最も完璧に生まれ出た馬の1頭」と発言するほどの才能を持っていた。
2歳時は1戦のみだったが、その1戦を14馬身ぶっちぎりで圧勝。翌年は英ダービーを最大目標に始動する。
余談ながら、今となっては信じられないが、Sadler's Wells産駒は、ガリレオがクラシックを迎えた2001年シーズンまで、なんと英ダービー未勝利だった。ついでに当時アイルランドで無敵を誇ったオブライエン調教師も英ダービーは未勝利であった。シンジラレナーイ。
それまでのSadler's Wells産駒は、2歳まではダービー最有力候補だったKing's Theatreは春に調子を落として敗れ去り、Opera House(*オペラハウス)はクラシックに間に合わず、King of Kingsはマイルまで、Old Vic(*オールドヴィック)はイギリス調教馬だったが自国のダービーを蹴ってフランスに行きジョッケクルブ賞を勝ち、フランス調教馬だったMontjeuやDream Well(*ドリームウェル)はイギリス遠征せず自国でジョッケクルブ賞を制するという具合にことごとく噛み合わず終いで、ついにはクラシックディスタンスでは自身より成績が芳しくない弟・Fairy Kingに2000年のOath(*オース)で先を越されるという始末であった。
それ故、今年こそジンクスを破る存在としてガリレオに更なる期待がかかった。その期待に応えるかのようにダービー前のリステッド競走とGⅢを簡単に勝利。無敗のままダービーに挑んだ。
ライバルに同じく無敗・キャリア1戦で2000ギニーを勝利したGolanがいたが、涼しい顔して一蹴し3馬身1/2差をつけ勝利。ついにSadler's Wells産駒、及びオブライエン調教師の呪縛を解き放ったのである。
その後、アイリッシュダービーを余裕の手応えで4馬身差つけて快勝し、史上4頭目となる無敗の英愛ダービー馬として古馬との決戦・キングジョージに向かう。ここにはゴドルフィンが春先にドバイでステイゴールドに叩きのめされた古馬代表格Fantastic Light(*ファンタスティックライト)を送り込み、一騎討ちムードとなった。レースは直線叩き合いに持ち込まれたが競り落として2馬身差突き放しガリレオが快勝。英愛ダービー・キングジョージの3競走を無敗で制したのはかのNijinsky以来31年ぶり2頭目という記録であった。
古馬を負かしてキングジョージを取った以上、12f路線にこれ以上こだわっても種牡馬価値は高まらない。そう判断した陣営はスピードを証明すべく10fのGⅠ・アイリッシュチャンピオンステークスに向かう。
しかしここにもFantastic Lightが立ちはだかる。この馬、血統的に12fではなく10fの方が得意というタイプであり、リベンジの機会を虎視眈々と狙っていたのである。
レースはオブライエン師の見立てと裏腹に、ガリレオ側のペースメーカーであるIce Dancerを誰も深追いせず、Fantastic Lightが自陣営のペースメーカーを差し置いて離れた2番手につけるという展開で推移。再び直線の叩き合い、根性比べとなり、ガリレオも類稀な才覚を発揮し10fでも強さを見せたが、この距離ではFantastic Lightも譲らず並んだままゴール。アタマ差だけ、Fantastic Lightが前に出ていた。ついにガリレオの無敗記録は途絶えた。
次走にはベストと思われる12fの凱旋門賞を選ばず、なおも種牡馬価値を高めるためにチャレンジ路線を続行。なんとマイルのGⅠクイーンエリザベスⅡ世ステークスに登録するがこれは回避。
アメリカに渡り、ダート10fの世界一決定戦ブリーダーズカップ・クラシックに出走することを決めた。
前年チャレンジして敗れたGiant's Causewayの例もあったが、それでもなお挑戦の道を選んだ。しかし現実はそう甘くはなく土を浴びて闘志が萎えたか、伸びがないまま6着に敗れ去った。
このレースを最後に引退、種牡馬入りした。シーズン前半の期待感からすると若干尻すぼみ感もあったが、未知の世界へチャレンジして行った結果であり、少なくとも残した実績は血統に恥じないものであった。
種牡馬時代
カルティエ賞最優秀3歳牡馬のタイトルを手土産に2002年から種牡馬入りし、2006年までは南半球にもシャトル種牡馬として赴いていた。Montjeuがすでに活躍していて、その兼ね合いもあって最初は今ほど推されてもいなかったが、初年度からRed Rocks(BCターフなど)ら4頭のGⅠ馬を出し、それ以降も2歳戦で圧倒的な強さを見せて三冠挑戦という話もあったTeofilo、*シンコウフォレスト(高松宮記念)の半弟で父仔2代英ダービー制覇を成し遂げたNew Approachが登場。
軽快なスピードも持ち合わせているということで人気が爆発し、その後も欧州競馬史上最強馬に数えられる14戦14勝のFrankelらを出した。
父が種牡馬を引退した2008年に初の英愛リーディングサイアーとなると,2010~2020年まで11年連続の英愛リーディングを獲得、史上最多14回の英愛リーディングを獲得した父Sadler's Wellsに並ぶ歴史的大種牡馬となった。
結果的に孫世代からは活躍馬を出せていないMontjeuとの違いは、スピードや仕上がりの早さもさることながら、牝馬の活躍馬も多いという事が一番であろう。Montjeuの場合、牝馬は重賞勝ちも数える程度で、GⅠ勝ち馬はわずかな数になってしまうが、こちらは牝馬の活躍馬も多い。愛オークス馬Great Heavensや仏二冠牝馬Golden Lilac、シャトル種牡馬時代の産駒で南アフリカ史上初の牝馬三冠を成し遂げたIgugu、コロナ禍の中で英国二冠を達成したLoveなどである。長距離馬が多かったモンジュー産駒と比べて中距離からマイル戦線で活躍する産駒が多いのも特徴。
牝馬はそこまでより好みしないタイプだが母父Danehill(*デインヒル)との相性は特筆すべきものがあり、Frankelもこの組み合わせである。2010年代にはあまりにもこの組み合わせで多くの活躍馬が出たため「またガリデイン配合か」などと言われることも。
さらに彼の息子たちもまた種牡馬として優秀な成績を出しており、父子英ダービー制覇を果たしたNew Aprroachからは史上8組目の英ダービー3代制覇を達成したMasarが、Nathanielからは凱旋門賞連覇・史上初のキングジョージ3連覇などGⅠを11勝した歴史的名牝Enableが出ており、Frankelも初年度から4世代連続でGⅠ勝ち馬を出している。
なお、日本にも産駒が輸入はされているが……ブレイクアセオリーやミッションモードが成績いい方という結果で、重賞では勝負になっていない。
やはり父やMontjeu同様日本には対応していない様子である。母父Danehillの産駒や孫世代ならば……と思ったら、代表産駒Frankelの産駒からソウルスターリングが2016年阪神ジュベナイルフィリーズを優勝し、モズアスコットが2018年安田記念・2020年フェブラリーステークスと日本の芝・ダート両方に対応してしまった。
2020年には無観客で行われた英ダービーで産駒Serpentineが鮮やかな逃げ切り勝ちを収め、これまでのWaxyやSir Peter Teazle、Cylleneなどの産駒のダービー4勝を単独更新する産駒のダービー5勝を記録することになった。
こうして翳る気配すら見えない大活躍を続けていたガリレオであったが、2021年7月10日、左前脚に重度の骨折を負ったことから23歳で安楽死措置が執られた。Loveが4歳初戦のプリンスオブウェールズSを勝利し、Empress Josephineが愛1000ギニーを、Joan of Arcがディアヌ賞を制するなど3歳世代も上々の活躍を見せていた矢先の出来事であった。
既にプライベート種牡馬として供用されていたため正確な種付け料は不明であるが、2021年の種付け料は60万ポンド前後だったそうで、これは日本円にして約9000万円という破格の価格。同年に公式で発表されていた欧州種牡馬最高額のDubawiの種付け料が25万ポンド(約3500万円)であり、日本最高の種牡馬であるディープインパクトの最高額が4000万円であったことを考慮すると凄まじさがよく分かるであろう。
ガリレオが亡くなったのと同じ日、アメリカのベルモントダービーを産駒の1頭であるBolshoi Balletが制して亡き父に捧げる勝利を果たした。
後継種牡馬は自身の最高傑作といわれるFrankelが種牡馬としても大活躍をして、2021年には自身を超えて英愛リーディングサイアーを獲得。それ以外にも有力後継を多く送り出しており、残された産駒たちはこれからも「天才」の血を広め続けていくことだろう。
2024年には、残された産駒からContentがヨークシャーオークスを勝利し「GI勝利産駒100頭」という大記録を打ち立てている。
兄弟たち
この馬、自身も素晴らしいが兄弟も素晴らしく、全弟のBlack Sam Bellamy(GⅠ2勝)、半弟のSea The Stars(英二冠・凱旋門賞など)ら活躍馬がいる。さらに、半姉に*ラムタラ産駒でクラシック候補になった上に母としても2012年凱旋門賞でオルフェーヴルに次ぐ3着に食い込んだMaster Strokeを出したMelikahもおり、Urban Seaの母としての力を感じずにはいられない。無論、その中でも際立った成績を残したガリレオはやはり天才であろう。Sea The Starsとの比較は評価が別れるところであろうが。
血統表
Sadler's Wells 1981 鹿毛 |
Northern Dancer 1961 鹿毛 |
Nearctic | Nearco |
Lady Angela | |||
Natalma | Native Dancer | ||
Almahmoud | |||
Fairy Bridge 1975 鹿毛 |
Bold Reason | Hail to Reason | |
Lalun | |||
Special | Forli | ||
Thong | |||
Urban Sea 1989 栗毛 FNo.9-h |
Miswaki 1978 栗毛 |
Mr. Prospector | Raise a Native |
Gold Digger | |||
Hopespringseternal | Buckpasser | ||
Rose Bower | |||
Allegretta 1978 栗毛 |
Lombard | Agio | |
Promised Lady | |||
Anatevka | Espresso | ||
Almyra | |||
競走馬の4代血統表 |
クロス: Native Dancer 4×5(9.38%)
主な産駒
- New Approach (2005年産 牡) - 2008年ダービーステークスなどGI5勝
- Frankel (2008年産 牡) - 2011年2000ギニーステークス、2012年英チャンピオンステークスなどGI10勝
- *ハイランドリール (2012年産 牡) - 2016年キングジョージ、BCターフなど
- Found (2012年産 牝) - 2015年BCターフ、2016年凱旋門賞など
- Magical (2015年産 牝) - タタソールズ金杯連覇、愛チャンピオンS連覇など
- Love (2017年産 牝) - 2020年1000ギニーステークス、オークスステークスなど
- Serpentine (2017年産 牡) - 2020年ダービーステークス
関連動画
関連コミュニティ
関連項目
Galileo 1998
|New Approach 2005
||Dawn Approach 2010
|||*ポエティックフレア 2018
|Frankel 2008
||ソウルスターリング 2014
||*モズアスコット 2014
||Alpinista 2017
||Cracksman 2014
|||Ace Impact 2020
||*タニノフランケル 2015
||*アダイヤー 2018
||Hurricane Lane 2018
||グレナディアガーズ 2018
||Mostahdaf 2018
||Inspiral 2019
||Nashwa 2019
||Onesto 2019
||*ウエストオーバー 2019
||Chaldean 2020
||Soul Sister 2020
|Nathaniel 2008
||Enable 2014
||Desert Crown 2019
|*ノーブルミッション 2009
|Intello 2010
||Junko 2019
|Ruler of the World 2010
|Australia 2011
||Broome 2016
|Found 2012
|Gleneagles 2012
|*ハイランドリール 2012
|Churchill 2014
||Vadeni 2019
||Blue Rose Cen 2020
|Rhododendron 2014
|Waldgeist 2014
|Love 2017
|Serpentine 2017
|Magical Lagoon 2019
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