2022 FIFAワールドカップ(2022 FIFA World Cup)とは、2022年11月21日から12月18日にカタールで開催されたFIFAワールドカップである。
概要
2022 FIFAワールドカップ | |
---|---|
期間 | 2022年11月21日~12月18日 |
場所 | カタール |
出場国 | 32ヶ国 |
公式球 | アル・リフラ(アディダス) |
マスコット | ライーブ |
22回目の大会であり、中東では初の開催となる。また、カタールはFIFAワールドカップへの本大会出場経験が無く、選出段階で本大会未出場の国が選出されるのは日韓共催2002 FIFAワールドカップの日本以来であり、開催段階でも本大会未出場なのはカタールが初となる。またこれにより開催国枠で初出場となるのもカタールが初である。さらに開催国が初出場となるのは第2回の1934 FIFAワールドカップのイタリア以来である。
FIFAでは出場国枠の32か国から48か国への拡大が検討されていたが、2019年5月22日に出場枠は現行のままであることが発表された。
ワールドカップはこれまで夏に開催されていたが、カタールでは夏場の気温が50℃以上に達するほどの猛暑となるため開催を懸念する声が浮上していた。当初、カタールの招致委員会側はエアコンスタジアムの建設を計画していたが、コストの問題もあって断念。結局、FIFAは11月下旬から12月にかけての冬開催に変更することを決定。ただ、この時期は特にヨーロッパの各リーグはシーズン真っ只中であり、日程面の大幅な変更を強いられることから反対の声も挙がっていた。
また、インフラ建設のために雇われた移民労働者に対して奴隷的な扱いを強いていたことが問題視されており、実際ワールドカップ招致が決定して以降、少なくとも6500人以上の外国人労働者が死亡していると報じられている。こういった人権問題に対し、各国では抗議の声が相次いでおり、フランスの主要都市ではパブリック・ビューイングを取りやめている。カタールの大会招致を決めた当時のFIFA会長ゼップ・ブラッターは大会直前に「カタール開催は間違いだった」と発言している。
このほか、日本の中継放送に関しても、放映権料の高騰で交渉が難航した結果、前回までのオリンピック同様のNHK・民放共同のジャパンコンソーシアムではなく、NHK・テレビ朝日・フジテレビ、そしてテレビ朝日とサイバーエージェントの合弁会社であるAbemaTVが放映権を取得している。テレビ放送はNHK・テレ朝・フジが分担して放送(一部未放送の試合あり)、ネット配信はABEMAが全試合完全中継を、NHKプラスがテレビとのサイマル配信をそれぞれ行う。
今大会からのルール変更・新技術など
最も大きな変更は、1試合における選手の交代可能人数が、これまでの3人から5人に増えたこと。チームの登録選手の人数も23人から26人に変更となった。これにより、ベンチを含めた選手運用の幅が広がった。ただし交替回数は3回までなので、4人以上交替する場合は一度に2人以上を交替する必要あり。また延長戦に入ると交替人数と交替回数がそれぞれ+1となる。90分の間に交替人数や回数を使い切っていなくても同様。
イエローカードやレッドカードの対象も見直され、フィールドの選手に限らず監督・コーチといったチームスタッフに対しても、侮辱などの反則相当の行為の場合に掲示されることとなった。
新技術では、前々回のブラジル大会で導入されたゴールラインテクノロジー、前回のロシア大会から導入されたビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)に続き、今大会からは半自動オフサイドシステムが導入。今大会の公式ボールは内部に慣性計測装置(IMU)センサーを搭載しており、スタジアムに設置された12台の専用トラッキングカメラと合わせて、ボールの蹴られた位置とその瞬間のフィールド上の選手の位置関係を正確に把握。VARとの組み合わせによって、オフサイドの判定をこれまでより遥かに厳密化した。
また、これに合わせてオフサイドディレイが導入された。これはオフサイドか否かが微妙な状況において、一旦プレーを継続させて、後からオフサイドの判定を下すもの。副審が咄嗟に旗を上げてしまうなどの判定ミスで得点機会を潰してしまうことを防ぐために行われる。なお、オフサイドディレイによって副審がオフサイドの判定を下した後に、VARでそれが覆る場合もある。
地域予選
今大会の出場枠は、ヨーロッパ13枠、南米4.5枠、アジア4.5枠+1(開催国カタールは予選免除)、アフリカ5枠、北中米カリブ海3.5枠、オセアニア0.5枠と3大会連続で同じ枠振りとなった。
2020年に新型コロナウィルスが世界的に拡大した影響によって当初の日程に大きな狂いが生じ、スケジュールの大幅な見直しを余儀なくされた。また、急きょ集中開催となったり、ホームでの開催が困難となり第三国で開催となった試合もあった。
2022年2月に勃発したロシアによるウクライナ侵攻の制裁によってロシアはFIFA主催の大会から出場停止の処分が下される。これによってロシアは、2022年3月の欧州予選プレーオフまで進出していたが不戦敗となった。またウクライナも欧州予選プレーオフに進出しており、こちらは侵攻の影響を受け延期され2022年6月に実施された(結果はプレーオフ2回戦でウェールズ相手に敗退)。
初出場国は開催国のカタールのみとなり、ほとんどがそれなりに見慣れた顔ぶれが揃った中でカナダが9大会ぶりとなる久々の出場となり、ウェールズが1958年大会以来64年ぶりに出場している。
一方、欧州王者のイタリアはまさかの2大会連続で出場権を逃している。グループリーグではスイスの後塵を拝してプレーオフ行きとなり、プレーオフ1回戦では当時FIFAランキング67位の北マケドニアに敗れ(イタリアは6位)敗退となった。他には、スウェーデン、コロンビア、チリ、ナイジェリアなどが予選で敗退している。
また、南米予選4位のエクアドルが国籍を証明する文書を改竄し本来出場資格がない選手を出場させたとチリサッカー連盟から申し立てがあり、エクアドルの本大会出場権が取り消される旨の報道も出たが、FIFAはエクアドルのワールドカップ出場に問題はないという結論を出す。
グループリーグ
(順位は本大会前最後の発表となった2022年10月6日発表のFIFAランキング)
グループA | グループB | グループC | グループD | グループE | グループF | グループG | グループH |
---|---|---|---|---|---|---|---|
カタール (50位) |
イングランド(5位) |
アルゼンチン(3位) |
フランス (4位) |
スペイン (7位) |
ベルギー (2位) |
ブラジル (1位) |
ポルトガル (9位) |
オランダ (8位) |
アメリカ (16位) |
メキシコ (13位) |
デンマーク (10位) |
ドイツ (11位) |
クロアチア (12位) |
スイス (15位) |
ウルグアイ (14位) |
セネガル (18位) |
イラン (20位) |
ポーランド (26位) |
チュニジア (30位) |
日本 (24位) |
モロッコ (22位) |
セルビア (21位) |
韓国 (28位) |
エクアドル (44位) |
ウェールズ (19位) |
サウジアラビア(51位) |
オーストラリア(38位) |
コスタリカ (31位) |
カナダ (41位) |
カメルーン (43位) |
ガーナ (61位) |
グループA
順 位 |
国名 | 勝点 | 得失 点差 |
得 点 |
失 点 |
||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | オランダ |
― | ○ 2-0 |
△ 1-1 |
○ 2-0 |
7 | 4 | 5 | 1 |
2 | セネガル |
● 0-2 |
― | ○ 2-1 |
○ 3-1 |
6 | 1 | 5 | 4 |
3 | エクアドル |
△ 1-1 |
● 1-2 |
― | ○ 2-0 |
4 | 1 | 4 | 3 |
4 | カタール |
● 0-2 |
● 1-3 |
● 0-2 |
― | 0 | -6 | 1 | 7 |
【Before】
カタール「開催国最弱とはいわせない」
オランダ「なんだ楽勝じゃん」
セネガル「2位いけるな」
エクアドル「舐められちゃ困る」→ 【After】
カタール「(コメント拒否)」
オランダ「まあここからよ」
セネガル「2位いけたな」
エクアドル「あと一歩だったな」
開催国カタール対エクアドルで開幕。開幕戦はエクアドルが2-0で快勝、W杯で開催国が初戦黒星は史上初となった。
オランダの首位通過は堅く、対抗はセネガル。エクアドルは南米勢ではやや格落ち、カタールは開催国として旋風を起こせるか……という感じのグループ。そして結果だけ見れば、順当に戦前の予想通りの順位になった。
セネガルとの初戦を試合終盤の2得点でなんとか制したオランダは、エクアドル戦でも精彩を欠き辛うじて引き分けに持ち込むのが精一杯だったが、最終戦で危なげなくカタールに貫禄勝ちして終わってみれば1位通過。
大エースのサディオ・マネを欠いてのW杯となり、初戦でオランダに苦杯を喫したセネガルも、2戦目でしっかりカタールを破ると、突破には勝利しかないエクアドル戦を激闘の末に制し、2002年日韓大会以来のベスト16進出を果たした。
大会前は出場資格問題などもあり評価の低かったエクアドルも、開幕戦でカタールに快勝すると、オランダ戦も果敢な攻めで内容では圧倒するなど前評判を覆す戦いぶりを見せる。しかしここで勝ち切れなかったのが響き、セネガルとの第3戦に敗れて無念の敗退となった。
初出場ながら2019年のアジアカップを優勝しアジア王者として大会に臨んだ開催国カタールは、あえなく開催国史上初の3連敗で敗退。世界の壁は高かったが、セネガル戦で初ゴールを挙げ、歴史の第一歩を踏み出した。
グループB
順 位 |
国名 | 勝点 | 得失 点差 |
得 点 |
失 点 |
||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | イングランド |
― | △ 0-0 |
○ 6-2 |
○ 3-0 |
7 | 7 | 9 | 2 |
2 | アメリカ |
△ 0-0 |
― | ○ 1-0 |
△ 1-1 |
5 | 1 | 2 | 1 |
3 | イラン |
● 2-6 |
● 0-1 |
― | ○ 2-0 |
3 | -3 | 4 | 7 |
4 | ウェールズ |
● 0-3 |
△ 1-1 |
● 0-2 |
― | 1 | -5 | 1 | 6 |
【Before】
イングランド「1位通過するよ」
アメリカ「2位いけるな」
イラン「2位いけるな」
ウェールズ「2位いけるな」→ 【After】
イングランド「余裕」
アメリカ「USA!USA!」
イラン「チャンスはあったが」
ウェールズ「次は64年もかからず来たい」
奇しくもサッカーと無関係に因縁ある国々が揃ってしまったグループ。イングランドが大本命、2位争いはアメリカ優位という前評判。ここも結果はおおむね大会前の予想通りという形に落ち着いた。
イングランドは初戦でアジア首位通過のイランを6-2と圧倒。アメリカ戦は攻めきれずスコアレスドローに終わったが、ウェールズに貫禄勝ちして余裕の首位通過。
アメリカはウェールズ戦、イングランド戦とも好ゲームを繰り広げながら勝ちきれずに終わったが、最後のイラン戦で前半の1点を守り抜いて2位通過を確保。
イランは初戦でイングランドにまさかのフルボッコを食らうも、2戦目のウェールズ戦で終盤に相手GKの退場もあり後半アディショナルタイムの2得点で勝利。悲願のベスト16を賭けてアメリカ戦に臨むも、ゴールネットを揺らせず悔しい敗退となった。
64年ぶり2回目の出場となったウェールズは初戦のアメリカ戦こそ引き分けに持ち込んだが、W杯史上初の英国対決を0-3と力負けするなど1分2敗で敗退となった。
グループC
順 位 |
国名 | 勝点 | 得失 点差 |
得 点 |
失 点 |
||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | アルゼンチン |
― | ○ 2-0 |
○ 2-0 |
● 1-2 |
6 | 3 | 5 | 2 |
2 | ポーランド |
● 0-2 |
― | △ 0-0 |
○ 2-0 |
4 | 0 | 2 | 2 |
3 | メキシコ |
● 0-2 |
△ 0-0 |
― | ○ 2-1 |
4 | -1 | 2 | 3 |
4 | サウジアラビア |
○ 2-1 |
● 0-2 |
● 1-2 |
― | 3 | -2 | 3 | 5 |
【Before】
アルゼンチン「1位通過するよ」
メキシコ「2位いけるな」
ポーランド「2位いけるな」
サウジアラビア「まぁ、がんばる」→ 【After】
アルゼンチン「ちょっと危なかった」
メキシコ「あと1点が遠かった…」
ポーランド「負けても突破は前回学んだ」
サウジアラビア「祝日ひゃっほう!」
リオネル・メッシ最後のW杯となるアルゼンチンが本命、メキシコとポーランドの2位争いでサウジアラビアは草刈場という前評判で迎えたグループ。
ところが初戦のサウジアラビアvsアルゼンチンで、なんとサウジアラビアがオフサイド判定の厳密化を活かした積極的なラインコントロールでアルゼンチンにオフサイドを量産させ、後半のワンチャンスを逃さず2得点で見事逆転勝利。歴史的なジャイアントキリングを達成し、一気に混戦ムードとなった。
初戦の敗戦で窮地に立たされたアルゼンチンだったが、2戦目でメッシがメキシコのゴールをこじ開けると息を吹き返す。メキシコを破ると、3戦目はポーランドが得失点差狙いで無理をしなかったこともあり鮮やかに連勝。終わってみれば順当に1位通過を果たす。
前回大会はエースのレバンドフスキが封じられグループリーグ敗退となったポーランドは、今回も初戦のメキシコ戦でレバンドフスキがPKを防がれスコアレスドローに終わるなど嫌なムードだったが、2戦目のサウジアラビア戦でレバンドフスキが待望の初ゴールを挙げ勝利。アルゼンチンには防戦一方で敗れたものの、得失点差でなんとか2位通過を果たす。
メキシコは初戦、2戦目とノーゴールに終わったのが響き、最終戦のサウジアラビアでは2-0とリードしてもフェアプレーポイントの差でポーランドを上回れず、逆に後半アディショナルタイムに失点してしまい勝負あり。ベスト16進出は7大会連続で途切れた。
初戦で鮮やかにアルゼンチンを破ったサウジアラビアは、主力の離脱が相次いでその後は連敗、結局結果最下位でグループリーグ敗退となってしまったが、アルゼンチン戦の戦いぶりは世界を驚かせ、番狂わせの続く今大会の口火を切る存在となった。
なお、メキシコ×ポーランド戦では、男子のW杯大会で初の女性審判が採用された(ステファニー・フラパールが第4審判)記念すべき試合である。
グループD
順 位 |
国名 | 勝点 | 得失 点差 |
得 点 |
失 点 |
||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | フランス |
― | ○ 4-1 |
● 0-1 |
○ 2-1 |
6 | 4 | 6 | 2 |
2 | オーストラリア |
● 1-4 |
― | ○ 1-0 |
○ 1-0 |
6 | -1 | 3 | 4 |
3 | チュニジア |
○ 1-0 |
● 0-1 |
― | △ 0-0 |
4 | 0 | 1 | 1 |
4 | デンマーク |
● 1-2 |
● 0-2 |
△ 0-0 |
― | 1 | -3 | 1 | 4 |
【Before】
フランス「ジンクス?知らんな」
デンマーク「今回は白黒つける」
チュニジア「豪には勝つとして…」
オーストラリア「またこいつらかよ」→ 【After】
フランス「本番はここから」
デンマーク「\(^o^)/」
チュニジア「オーストラリアめ…」
オーストラリア「これがサッカルーズだ」
なんの因果か前回大会のグループCと4チーム中3チームが同じ顔ぶれとなったグループ。前回覇者フランスが中心だが、バロンドール受賞者カリム・ベンゼマを欠くなど故障者が多くやや不安材料あり。EURO2020ベスト4のデンマークがそれに次ぎ、チュニジアが堅守で2強にどこまで渡り合えるか、オーストラリアは1勝が目標、という感じの前評判。
フランスは前評判通り初戦でオーストラリアを4-1と圧倒。2戦目のデンマーク戦もエムバペの2ゴールで快勝し、20年前に自分たちで始めた「前回大会優勝の欧州チームはグループリーグで敗退する」ジンクスを打ち破って早々に突破決定。チュニジア戦では主力を軒並み休ませた結果敗れたものの1位通過。
フランスに初戦でボコられたオーストラリアは、2戦目でチュニジアの猛攻を凌ぎきって2010年南アフリカ大会以来久々の白星を挙げると、最終戦ではデンマークからカウンターで奪った1点を守り切る番狂わせを起こし、2006年ドイツ大会以来のベスト16進出を果たした。
チュニジアは初戦のデンマーク戦を堅守でスコアレスドローに持ち込むも、オーストラリア戦では先制を許したあと逆に相手の守りを攻めきれず痛恨の黒星。主力を休ませたフランス相手に金星を挙げたが、無念の敗退。
グループE
順 位 |
国名 | 勝点 | 得失 点差 |
得 点 |
失 点 |
||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 日本 |
― | ○ 2-1 |
○ 2-1 |
● 0-1 |
6 | 1 | 4 | 3 |
2 | スペイン |
● 1-2 |
― | △ 1-1 |
○ 7-0 |
4 | 6 | 9 | 3 |
3 | ドイツ |
● 1-2 |
△ 1-1 |
― | ○ 4-2 |
4 | 1 | 6 | 5 |
4 | コスタリカ |
○ 1-0 |
● 0-7 |
● 2-4 |
― | 3 | -8 | 3 | 11 |
【Before】
スペイン「敵はドイツだけだな」
ドイツ「敵はスペインだけだな」
日本「うわあ…」
コスタリカ「うわあ…」→ 【After】
スペイン「日本なんなの(戦慄)」
ドイツ「日本なんなの(絶望)」
日本「日本なんなの(歓喜)」
コスタリカ「日本なんなの(唖然)」
欧州の優勝経験国2国が同じグループに入り、前評判は完全な2強2弱グループ。森保ジャパンは日本国内でもグループリーグ突破はほぼ絶望視されていた。
ところが。初戦のドイツ戦で、防戦一方の前半をなんとかPKだけの最少失点で凌ぐと、後半からシステムを変えて突破力のある選手を投入する森保采配がズバリ的中。後半30分に途中出場の堂安律が同点ゴールを決めて追いつくと、38分にはこれまた途中出場の浅野拓磨が角度のないところからゴールに突き刺し逆転。前半にPKを与えてしまったGK権田修一もファインセーブを連発し、2-1でドイツに逆転勝利するという歴史的なジャイアントキリングを達成。「ドーハの歓喜」と讃えられる。
が、続くコスタリカ戦は一転。攻め込みながら決定力を欠き、カウンターから失点して0-1で敗れるという、ドイツ戦とはまるで別のチームのような凡戦ぶり。最終戦はそのコスタリカに7-0で圧勝したスペイン戦、しかもスペインとドイツが引き分けたため、自力での突破にはスペインへの勝利が必須という、再び絶望的な状況に追い込まれる。
しかし。スペイン戦も前半を何とか0-1の最少失点で凌ぐと、ドイツ戦同様に後半から三笘薫と堂安律を投入。その堂安が後半3分に豪快な同点ゴールを叩き込むと、後半8分には三笘がゴールラインギリギリで拾ったボールを田中碧がゴールに押し込む。肉眼ではラインを割ったようにも見えたが、VARでの判定の結果ほんの僅かだがボールがライン上に残っておりゴール判定、逆転に成功する(三笘の1mm)。その後はスペインが猛攻を仕掛けるが、三笘やこれまた途中出場の冨安健洋が徹底マークで攻撃の起点を的確に潰してスペインの攻めを要所で寸断。1点のリードを守り切り、ドイツ戦に続いてのジャイアントキリングを達成。なんとこのグループで日本がドイツとスペインに勝って1位通過という、世界中の誰も予想しなかったような歴史的快挙を為し遂げた。
スペインは初戦のコスタリカ戦での大勝が結果的に功を奏し、得失点差で2位通過。
初戦で日本にまさかの敗戦を喫したドイツは、最終戦で一度はコスタリカに逆転されながらも4ゴールを挙げて再逆転勝利したが、まさかの2大会連続グループリーグ敗退で大会を去ることに。
コスタリカも最終戦で一度はドイツを逆転し、日本とコスタリカがこのグループを突破する可能性すら生じさせたものの、最後はドイツの猛攻に屈した。
グループF
順 位 |
国名 | 勝点 | 得失 点差 |
得 点 |
失 点 |
||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | モロッコ |
― | △ 0-0 |
○ 2-0 |
○ 2-1 |
7 | 3 | 4 | 1 |
2 | クロアチア |
△ 0-0 |
― | △ 0-0 |
○ 4-1 |
5 | 3 | 4 | 1 |
3 | ベルギー |
● 0-2 |
△ 0-0 |
― | ○ 1-0 |
4 | -1 | 1 | 2 |
4 | カナダ |
● 1-2 |
● 1-4 |
● 0-1 |
― | 0 | -5 | 2 | 7 |
【Before】
ベルギー「ルカク微妙だけどおk」
クロアチア「敵はベルギーだけか」
モロッコ「そうはいくかな」
カナダ「勝ち点は欲しいな」→ 【After】
ベルギー「(゚Д゚)」
クロアチア「まあこんなもんか」
モロッコ「これがモロッコだ」
カナダ「勝ち点はお預けか…」
前回大会準優勝のクロアチアと3位のベルギーが同組となり、前評判はここも2強2弱。クロアチア、ベルギーとも前回大会の主力が残っているぶん高齢化の懸念はあり、カナダはともかくモロッコがどれだけ健闘できるか、という感じのグループ。
しかし大方の予想を裏切り、このグループの主役となったのは大会前にあのハリルホジッチ監督を解任したモロッコだった。初戦で積極的なプレスでクロアチアの攻撃を封殺しスコアレスドローに持ち込むと、ベルギー戦は鋭いカウンターでFIFAランク2位のベルギーを内容でも上回る試合ぶりを見せ2-0で快勝。カナダ戦もハリルホジッチ監督との確執で代表を外れていたが解任で復帰したハキム・ツィエクが先制ゴールを挙げるなど2-1で制し、なんとこのグループで失点はオウンゴールの1点のみでの1位通過を果たす。
優勝候補の一角だったベルギーは初戦のカナダ戦から大苦戦、モロッコにまさかの完敗を喫し国内では暴動騒ぎに。クロアチア戦では後半から復帰したエースのルカクが何度もあった決定機をことごとく決めきれず、まさかのグループリーグ敗退となった。
37歳の前回大会MVPモドリッチ率いるクロアチアは、モロッコ戦、ベルギー戦ともスコアレスドローと、こちらも完勝したカナダ戦以外は実力を発揮し切れたとは言えないものの、負けずにしっかり勝ち点を拾って2位通過。
久々の出場となったカナダは初戦でベルギーを苦しめたが、クロアチアに完敗し連敗であっさり敗退決定。モロッコ戦も後半は主導権を握りながらモロッコの堅守を崩せず、3連敗で敗退となった。
グループG
順 位 |
国名 | 勝点 | 得失 点差 |
得 点 |
失 点 |
||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | ブラジル |
― | ○ 1-0 |
● 0-1 |
○ 2-0 |
6 | 2 | 3 | 1 |
2 | スイス |
● 0-1 |
― | ○ 1-0 |
○ 3-2 |
6 | 1 | 4 | 3 |
3 | カメルーン |
○ 1-0 |
● 0-1 |
― | △ 3-3 |
4 | 0 | 4 | 4 |
4 | セルビア |
● 0-2 |
● 2-3 |
△ 3-3 |
― | 1 | -3 | 5 | 8 |
【Before】
ブラジル「問題なし」
スイス「またブラジルとセルビアか」
セルビア「またブラジルとスイスか」
カメルーン「まぁ、がんばる」→ 【After】
ブラジル「まあおk」
スイス「勝ったけど疲れた」
セルビア「今回も壁は厚かった」
カメルーン「ブラジルに勝ったのに…」
グループD同様、こちらも前回大会に続いてブラジル・スイス・セルビアが同組に。前評判も前回大会同様、ブラジルの1位通過は既定路線、スイスとセルビアの2位争いはスイス優勢という風潮。そして結果もほぼ前回大会同様となった。
ブラジルは初戦のセルビア戦で序盤を凌ぐとエンジンがかかり後半の2得点で貫禄勝ち。初戦でネイマールが負傷するアクシデントがあったものの、スイス戦はお互い引き分けでもOKという展開の中で試合終盤に取った1点で勝ち、あっさりとグループリーグ突破を決めた。
スイスは初戦のカメルーンを堅実に1-0で下すと、ブラジルには0-1で敗れたが、セルビアとの最終戦ではスイスらしからぬラフな打ち合いを制して順当に2位通過。
カメルーンは2戦目のセルビア戦を派手な打ち合いの末に引き分け、最終戦ではターンオーバーとはいえなんとブラジル相手に試合終盤の1点で勝利。2002年日韓大会以来久々の勝利を王国相手の大金星で挙げたが、スイスが勝ったため無念の敗退。
ストイコビッチ監督率いるセルビアはグループ最多の5得点を挙げる攻撃力を見せたが守備も粗く、最後のスイス戦では選手がヒートアップしてしまう場面も目立ち、未勝利で敗退となった。
グループH
順 位 |
国名 | 勝点 | 得失 点差 |
得 点 |
失 点 |
||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | ポルトガル |
― | ● 1-2 |
○ 2-0 |
○ 3-2 |
6 | 2 | 6 | 4 |
2 | 韓国 |
○ 2-1 |
― | △ 0-0 |
● 2-3 |
4 | 0 | 4 | 4 |
3 | ウルグアイ |
● 0-2 |
△ 0-0 |
― | ○ 2-0 |
4 | 0 | 2 | 2 |
4 | ガーナ |
● 2-3 |
○ 3-2 |
● 0-2 |
― | 3 | -2 | 5 | 7 |
【Before】
ポルトガル「前回の借りは返す」
ウルグアイ「返り討ちにしてやる」
韓国「ガーナには勝つとして…」
ガーナ「韓国には勝つとして…」→ 【After】
ポルトガル「ウルグアイ乙」
ウルグアイ「ポルトガルのアホー!」
韓国「奇跡は起こすもの」
ガーナ「ウルグアイざまあw」
前回大会ベスト16で激突したポルトガルとウルグアイ、さらにウルグアイとは2010年南アフリカ大会での「神の手/悪魔の手」の因縁があるガーナが同組に。韓国はアジア人初のプレミアリーグ得点王ソン・フンミンが怪我で出場が危ぶまれたこともあり、ここもやはり前評判ではポルトガルとウルグアイの2強が順当に通過を決めると思われた。
前評判通りの結果を出したのはポルトガル。初戦はガーナとの激しい打ち合いを制すると、2戦目では調子の出ないウルグアイを完封してあっさりとグループリーグ通過を決める。
一方、苦しんだのがウルグアイ。初戦の韓国戦は互いに攻め合いながら決め手を欠いてスコアレスドローに終わると、2戦目のポルトガルには完敗。まさかの2戦連続無得点で、グループ最下位で最終戦を迎えることに。
ソン・フンミンがフェイスガードをつけて復帰した韓国は、ウルグアイ相手に引き分けたのは上々ながら、ガーナとの打ち合いに敗れ、ポルトガル戦を残して勝ち点1という絶望的状況。しかもガーナとの試合ではコーナーキックのチャンスを得たと思いきや、このタイミングで試合終了のホイッスル。これを不服とする監督は審判に猛抗議するが、これが暴言とされ史上初となる監督がレッドカードで退場処分になるという罰則を受ける羽目に。
ガーナは2戦続けて3-2という打ち合いで1勝1敗。3チームとも勝たないとグループリーグ突破を自力で決められない状況で最終戦を迎える。とはいえ韓国がポルトガルに勝つ確率は低く、ウルグアイとガーナの勝った方が2位通過になるだろうというのが大方の予想であった。迎えた最終戦、ウルグアイ対ガーナはようやく攻撃陣が目覚めたウルグアイが2-0でリード。なんだかんだ2強で決まりか……と思われたが、スタメンの半分ほどを休ませたポルトガル相手に前半を1-1で終えた韓国が後半は攻勢を強め、後半46分にソンの作ったチャンスからついに逆転。そのまま勝利を決める。この時点でウルグアイは総得点で韓国に負けており、アディショナルタイムであと1点取らなければ敗退の状況に追いつめられる。慌てて3点目を取りに行くが恨み骨髄のガーナに阻まれついに実らず、そのまま試合終了。最も絶望的と思われた韓国が土壇場で大逆転の2位通過を決めた。
グループリーグ総括
ドイツの敗退以外はほぼ無風だった前回大会から一転、今大会のグループリーグはジャイアントキリング・大波乱が相次ぎ、どのグループも混戦となった。3連勝チーム無しは1994年アメリカ大会以来、32チーム制となってからは初。また勝ち点4で敗退したチームが7チームというのもぶっちぎりの史上最多である。
この混戦状況を生んだのは、なんといってもアジア勢の躍進だろう。開催国カタールを含めた出場6チーム中、日本・オーストラリア・韓国の3チームがグループリーグを突破。ドイツとスペインを破った日本を筆頭に、オーストラリアはデンマークを、韓国はポルトガルを下し、敗退したサウジアラビアもアルゼンチンに大金星を挙げ、イランもウェールズを撃破。3連敗で消えたカタールを除く、予選通過組の5チーム全てが欧州か南米の国に勝利するという快挙を達成した。
中東のカタール開催ということもあってかアフリカ勢も躍動。グループリーグで全滅した前回大会から一転、ベルギーを破って1位通過したモロッコと、セネガルの2チームがベスト16入り。敗退したチュニジアとカメルーンも相手が主力を休ませていたとはいえフランスとブラジルに大金星を挙げ、ガーナは因縁のウルグアイを道連れにした。
一方、欧州のリーグ開催期間中の大会ということもあって欧州・南米勢は調整が難しかったのか、前評判の段階ではとりたてて「死の組」のない、強豪国がうまくばらけた組み合わせと見られたにもかかわらず、優勝候補やベスト16常連が次々と敗退。まさかの2大会連続敗退となったドイツ、前回大会3位のベルギー、前回ベスト8のウルグアイ、EURO2020ベスト4のデンマーク、7大会連続ベスト16のメキシコが姿を消すことになった。全グループ、欧州は1チームのみの通過である。
ベスト16の内訳は欧州8、南米2、アジア3、アフリカ2、北中米1。アジアが3チーム突破は史上最多、逆に欧州・南米で合わせて10チームは史上最少。2連勝であっさり突破を決めたフランス、ブラジル、ポルトガルもそれぞれターンオーバーで挑んだ3戦目でチュニジア、カメルーン、韓国に敗れるなど、欧州・南米とそれ以外の地域の実力差が詰まってきていることを感じさせるグループリーグであった。
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↑メキシコ↑デンマーク↑ドイツ↑ベルギー↑ウルグアイ
決勝トーナメント
ラウンド16
ダンフリースの1G2Aの活躍でオランダが平均年齢25歳のアメリカを撃破。
グループリーグでは低調だったオランダだったが、前半10分にダンフリースの折り返しをデパイが合わせて先制。その後、ボールを保持して押し込むアメリカに対し、オランダがカウンターで牽制しつつ試合をコントロール。前半ATには、ダンフリースの折り返しを逆サイドのブリントが押し込み、オランダが追加点。後半も攻め込みながらオランダの堅守を崩せないアメリカだったが、31分にプリシッチのクロスからライトがトリッキーなループシュートを決め、1点を返す。反撃ムードのアメリカだったが、36分オランダの見事に連動したカウンターからダンフリースがダメ押しの3点目が決まり、勝負あり。
調子を上げてきたオランダが、得意のサイドアタックでベスト8入りを果たす。
オーストラリアが健闘するも、"神の子"メッシがアルゼンチンをベスト8に導く。
立ち上がりからボールを保持するアルゼンチンだったが、オーストラリアのプレスに苦しめられペースを握れずにいた。オーストラリアの思惑通りで時間が進む中、試合の流れを変えたのはやはりこの男だった。前半35分メッシが「ここしかない」コースに左足のシュートを決め、アルゼンチンが先制。次第にペースを取り戻したアルゼンチンは、後半12分GKライアンのミスを突いたアルバレスが追加点を奪う。オーストラリアも32分に幸運なオウンゴールで1点を返す。息を吹き返したオーストラリアは猛反撃に出るが、試合巧者のアルゼンチンがこれをいなし続け、逃げ切りに成功。
最後までアルゼンチンを苦しめたオーストラリアだったが、惜しくもここで敗退となった。
フランスのエムバペとポーランドのレバンドフスキ。世界を代表するストライカー同士の対決は、王者の若き怪物が爆発した。
前半はフランスが主導権を握り、ポーランドはプレスをかけながらチャンスを伺う。前半38分、ポーランドの決定機を好守で防いだフランスは、前半終了間際にエムバペのスルーパスをジルーが決めて先制。1-0で折り返す。
後半はポーランドが攻勢に出るが、逆にその裏のスペースを突かれ、後半29分にカウンターからエムバペが右足一閃。ポーランドの心をへし折ると、アディショナルタイムにも豪快なゴールを決めて2ゴール1アシストの大暴れ。前回王者が圧勝でベスト8へ駒を進めた。
いいところなく終わりそうなポーランドは、試合終了間際にPKを獲得。レバンドフスキが一度はこれを止められるも、やり直しとなって二度目は成功。最後に今大会2得点目を決め、ポーランドの英雄は笑顔でエムバペを讃えて大会を去った。
スリーライオンズが決定力の差を見せつけるようにしてアフリカの雄を圧倒した。
前半はセネガルがカウンターを主体にイングランドを脅かす展開。前半31分にはブライユ・ディアが決定機を迎えたが、GKピックフォードのファインセーブに阻まれるなど、流れを掴みながら先制点を奪えない。すると前半38分、セネガル守備陣の隙を突いた縦への突破からのクロスをヘンダーソンがきっちり決めてイングランドが先制。前半47分にはカウンターから完璧にセネガルを崩して前回大会得点王のハリー・ケインが今大会初ゴールを決める。
これで余裕をもったイングランドが後半は試合を支配し、後半12分に3点目を奪って勝負あり。
終わってみればイングランドは枠内シュート4本で3得点。主力を休ませる余裕を見せながら盤石の試合運びで完勝した。セネガルは前半の決定力不足が響き、エースのサディオ・マネ不在が改めて重くのしかかっての敗退となった。
初のベスト8をめざし4度目の決勝トーナメントに挑んだ日本だったが、またしても壁は厚く高かった。
ドイツ戦やスペイン戦とは異なり向こうに一方的にボールを保持される展開ではなく、前半は互いに一進一退という感じの攻防。前半43分、CKからのこぼれ球を前田大然が押し込み、日本は今大会初めて先制点を奪い前半を終える。
しかし後半10分、ペリシッチの強烈なヘッドで同点に追いつかれると、日本は切り札の三笘薫や浅野拓磨を投入して打開を図る。だがクロアチアもしっかり対策を講じてきており、GLのような逆襲の形を作れない。結局その後はクロアチア優勢ながら互いに見せ場は作るも最後の決め手を欠き、延長戦でも決着つかずPK戦へ。
さすがにここでは前回大会で2度のPK戦を勝ち抜いたクロアチアが上手だった。日本はGKリバコビッチに3本を阻止され万事休す。ベスト8の夢はまたしても手からすり抜けていった。
奇跡的なGL突破を果たした韓国だったが、王国の情け容赦のない強さに圧倒された。
試合は開始早々からネイマールが復帰したブラジルがやりたい放題。前半7分、韓国の守備を翻弄してフリーのヴィニシウスが冷静に先制点を奪うと、12分にはネイマールのPKで追加点。もうこの時点でほぼ試合終了に等しいが、22分には完璧なパスワークでリシャルリソンが3点目を決めると、36分にはパケタがクロスをダイレクトに蹴り込んで、あっという間に4-0。面白いようにゴールを重ねていく。
後半は緩めたブラジルに対して韓国がなんとか意地を見せようと攻め込むが、ブラジルの好守に阻まれる。それでも後半31分に途中出場のペク・スンホが強烈なミドルシュートを叩き込んで1点を返したが、反撃もここまで。
ブラジルが盤石の圧勝で王国の貫禄を見せつけ、今大会躍進を見せたアジア勢はあえなくベスト16で全滅となった。
モロッコがグループリーグに続き、堅固な守備で対岸の無敵艦隊に一度もゴールを破らせることなく、初のベスト8進出を果たした。
アラブの利を得たモロッコサポーターの大ブーイングの中、前半からスペインがボールを支配し、ゆったりとしたパスワークで攻撃の機を伺う。しかしモロッコはフィジカルでタイトに寄せていき、スペインになかなかシュートまで持って行かせず、またサイド攻撃で反撃も狙って行く。
時間経過とともにスペインが徐々に押し込んでいくが、モロッコの組織的な守備は崩れない。結局スペインは枠内シュートすらほとんど放てないまま、0-0のまま延長戦でも決着つかずPK戦へ。
前日会見でエンリケ監督が「1000本のPK練習をしてきた」と豪語したスペインだったが、1本目がポストに当たると、2本目と3本目は長年スペインでプレーするモロッコの守護神ヤシン・ブヌに阻止され、なんと一度もPKを決められず。モロッコは冷静に4本中3本を決め、見事に初のベスト8進出を果たした。
6-1。固い守備で知られるスイスを蹂躙したのは、世界的英雄クリスティアーノ・ロナウド……ではなく、その代役で出場した新星だった。
C・ロナウドをスタメンから外して臨んだポルトガル。試合の主役となったのは、その代わりに今大会……どころかポルトガル代表として初先発となったゴンサロ・ラモスである。
前半16分にラモスが強烈なシュートを叩き込んで先制すると、33分にはCKからペペのヘッドで追加点。後半6分にラモスが3点目を叩き込むと、10分にはラファエル・ゲレイロが4点目。スイスは13分にCKから1点を返すが、後半21分、ラモスが冷静に5点目を奪い、今大会第1号のハットトリックを達成。ポルトガルは終了間際にももう1点追加し、終わってみれば6-1。21歳の新星が躍動したポルトガルが大楽勝でベスト8進出を果たした。
スイスは自慢の守備が崩壊して屈辱の大敗。決勝T進出した大会で5回連続ベスト16敗退という悔しい記録が続くこととなった。
準々決勝
不屈のクロアチアが2試合連続のPK戦で優勝候補ブラジルを撃破。ブラジルは2大会連続でベスト8止まりに。
日本戦を120分間戦い抜き、コンディション面が不安視されたクロアチアだったが、モドリッチを中心に試合をコントロール。ブラジルは思ったようにペースを握れないまま前半を終えることになる。
後半、ギアを上げたブラジルは怒涛の猛攻に出るが、クロアチアの守護神リバコビッチが再三のピンチを救い、試合は延長戦に突入。
延長前半終了間際、中央を綺麗に崩したネイマールのゴールが決まり、ついにブラジルが先制。誰もがブラジルの勝利を確信したが、"炎の男"たちは諦めていなかった。延長後半12分カウンターから最後はペトコビッチが決め、試合はクロアチアが得意とするPK戦に突入。
日本戦に続きリバコビッチが見事なセービングで流れを作り、2試合連続でヒーローとなる。
激闘を制したクロアチアは2大会連続でのベスト4進出。敗れたブラジルは、2大会連続ベスト8で姿を消すこととなった。
イエローカード17枚が飛び交う喧嘩マッチを制したアルゼンチンが2大会ぶりのベスト4進出。
強豪同士の一戦は、今大会初めて3バックを採用したアルゼンチンの策が嵌り、試合の主導権を握る。すると、前半35分メッシの絶妙なスルーパスからモリーナが決め、アルゼンチンが先制。
後半も試合の流れは変わらず、28分にPKをメッシが冷静に決め、アルゼンチンがリードを広げる。選手交代で息を吹き返したオランダも38分に1点を返す。ここから両チームはヒートアップし始め、マテウ・ラオス主審がカードを乱発。アルゼンチン側の度を過ぎた挑発行為によって乱闘が起こるなど大荒れの展開となる。冷静さを欠いたアルゼンチンに対し、オランダは試合終了間際にトリッキーなFKからヴェグホルストが決め、土壇場で同点に追いつく。
延長戦でも決着は付かず、PK戦に突入。アルゼンチンはGKマルティネスが2人を止める活躍を見せ、ベスト4へと駒を進める。しかし、収まらない両チームは試合後も小競り合いを続け、試合後のインタビューでメッシが激昂するなど後味の悪い試合となってしまった。
ベスト4進出達成でアフリカ、そしてアラブの希望となったモロッコ。ネイマールに続いてクリスティアーノ・ロナウドが大会を去る。
ボールを保持するポルトガルに対し、圧倒的な大声援を受けるモロッコでコンパクトなラインを敷いた組織的な守備で応戦。すると、前半42分カウンターの流れからエン=ネシリが超高打点のヘディングシュートを決め、モロッコが先制。
攻めあぐねるポルトガルは、後半6分に2試合連続でスタメンを外れていたC・ロナウドを投入。サイドを起点に攻勢をかけていくが、主将のサイスが怪我で離脱してもモロッコの守備の集中力は切れず、GKブヌの牙城を崩すことができない。ついにクリーンシートで試合を終えたモロッコはアフリカ勢初のベスト4進出という快挙を成し遂げ、歴史を動かしてみせた。
再三のチャンスを決められなかったポルトガルはベスト8で敗退。試合終了直後、夢破れたC・ロナウドは人目をはばからず号泣した。
優勝候補同士の手に汗握る死闘を制したフランスが連覇へまた一歩近づく。
今大会屈指のタレント軍団同士の対戦は、互いにカウンターでチャンスを作る一進一退の攻防となる。そんな中、前半17分チュアメニのスーパーミドルが決まり、フランスが先制。ここからイングランドの反撃が始まり、エースのケインにボールを集めてゴールを脅かすが、フランスもケインの同僚のGKロリスが何とか凌ぐ。
後半9分イングランドはサカの仕掛けからPKを獲得すると、ケインが冷静に決め同点に追いつく。その後、互いに攻め合うオープンな試合となるが、33分グリーズマンのクロスからジルーがヘディングで決め、フランスが再びリード。一方、イングランドも35分に再びPKを得るが、今度はケインが痛恨の失敗。このまま逃げ切ったフランスが連覇への大きな関門を突破する。
内容ではむしろ上回っていたイングランドだったが、悲願の優勝はまたも夢に消えた。
準決勝
メッシ&アルバレス躍動のアルゼンチンがクロアチアを撃破。二人の10番を付けた英雄の明暗が分かれる。
試合開始から互いに慎重さを崩さずクローズな展開が続くが、前半32分抜け出したアルバレスがGKリバコビッチのファウルを誘い、アルゼンチンがPKを獲得。今大会PK戦で神がかった活躍を見せるリバコビッチを相手にメッシが完璧なコースに決め、アルゼンチンが先制。さらに39分自陣から1人で持ちあがったアルバレスがそのままゴールを決め、アルゼンチンが追加点を奪う。
後半攻勢に出るクロアチアだが、守備を固めたアルゼンチンは隙を見せない。すると24分今大会大きく名を上げたグヴァルディオルとのマッチアップを制したメッシの圧巻のアシストから再びアルバレスが決め、アルゼンチンが決定的な3点目を奪う。最後まで集中を切らさなかったアルゼンチンが盤石の試合運びで2大会ぶりの決勝進出。
ブラジルとの激闘のダメージが大きいクロアチアは最後までギアが上がらないままだった。
最強の矛と盾の対決は、王者フランスが貫録の勝利でモロッコの快進撃を止める。
準決勝までOGのわずか1失点のみという堅守のモロッコに対し、フランスは前半5分に波状攻撃からテオ・エルナンデスがボレーシュートを決め早々と先制する。5バックを採用したプランがあっさりと崩れたモロッコだったが、怪我人の影響で4-3-3に戻したことでペースを取り戻す。以降は両チームが堅守からのカウンターで応戦する一進一退の戦いとなる。
後半は互いに決め手を欠いたまま時間が経過するが、34分エムバペの個人技から投入されたばかりのコロ・ムアニが決め、フランスが追加点を奪い、試合の行方を決めてしまう。観客の大声援を受け、最後まで王者に抵抗したモロッコだったが、これを凌ぎきったフランスがいよいよ連覇に王手をかける。
快進撃はベスト4でストップしたモロッコだったが、最終ラインに怪我人が続出しながらも最後までフランスを苦しめた。
3位決定戦
予想外の快進撃で今大会をおおいに盛り上げた両雄。互いに満身創痍の状況の中、0-0で引き分けたグループリーグ初戦の再戦となった。
堅守でここまで勝ち上がった両チームだったが、メンバーの入れ替えもありオープンな試合展開となる。前半7分FKの流れからグヴァルディオルがダイビングヘッドを決め、クロアチアが先制。一方のモロッコもFKの流れからダリがゴールに押し込み、すぐに同点に追いつく。その後も互いに攻守が入れ替わるスリリングな試合となるが、徐々に地力で勝るクロアチアがペースを握るようになる。42分にはオルシッチが技ありのゴールを決め、クロアチアがリードを奪う。
後半、反撃に出たいモロッコだったが、中盤の要であるアムラバトを最終ラインで起用しなければならない状況になり、ペースを握れない。一方のクロアチアは選手交代を積極的におこないながら終盤は冷静に時間を進めていった。
試合はそのままクロアチアが逃げ切り、1998年に続いて二度目の3位入賞を果たす。
決勝
W杯史上に残る壮絶な死闘を制し、アルゼンチンが36年ぶり3度目の戴冠。〝神の子〟リオネル・メッシが最後のW杯を有終の美で飾った。
試合は前半から、明らかに動きの悪いフランスに対しアルゼンチンが優勢に試合を進める。前半23分、PKをメッシが決めてアルゼンチンが先制すると、36分には鮮やかなカウンターからディマリアが決めて2-0。フランスは前半シュート0という有様で、前半のうちにジルーとデンベレを下げてテュラムとコロ・ムアニを投入するものの、後半に入っても動きは冴えない。このままアルゼンチンが快勝か……と誰もが確信を抱き始めた後半35分、フランスはPKを獲得。これをエムバペがきっちり決めて1点差とすると、その僅か1分後にエムバペが強烈なボレーを叩き込んで、一瞬にして同点。完全にアルゼンチン優位の流れを、フランスの怪物がひっくり返した。これで息を吹き返したフランスが攻勢を強めるが、アルゼンチンも必死に凌いで延長戦へ。
同点のまま迎えた延長後半3分。マルティネスのシュートをフランスGKロリスが弾いたところに詰めていたのはメッシ。こぼれ球を押し込み、アルゼンチンがついに勝ち越す。今度こそメッシの決勝点でアルゼンチンが優勝か――と思いきや、13分、ハンドで再びフランスがPKを獲得。これをエムバペが決めてハットトリック達成、怪物がなおも神の子の前に立ち塞がり、再び3-3の同点。そのまま決着つかず、壮絶な死闘はPK戦にもつれ込んだ。
フランス先攻のPK戦はともに1人目のキッカーとなったエムバペとメッシがきっちりと決めたあと、フランスは2人目がアルゼンチンGKマルティネスに阻止され、3人目は枠の外へ。アルゼンチンは4人全員が冷静に決めて決着。
かくしてアルゼンチンがディエゴ・マラドーナを擁した1986年メキシコ大会以来、36年ぶり3度目の戴冠。世界最高のサッカー選手として数々のタイトルを手にしながら、ただ唯一W杯だけは手に出来ていなかったリオネル・メッシは、最後のW杯と公言した大会でメッシの背中を見て育った選手たちに支えられ、大会MVPのタイトルとともに悲願のジュール・リメ杯を掲げた。
大会まとめ
2022 FIFAワールドカップ 大会結果 | |
---|---|
優勝 | アルゼンチン(3回目) |
準優勝 | フランス |
3位 | クロアチア |
4位 | モロッコ |
個人表彰 | |
大会MVP | リオネル・メッシ |
得点王 | キリアン・エムバペ |
最優秀若手選手 | エンソ・フェルナンデス |
最優秀GK | エミリアーノ・マルティネス |
2008年から2021年までほぼ2人でバロンドールを独占し続けたポルトガルのクリスティアーノ・ロナウド(37)と、アルゼンチンのリオネル・メッシ(35)。それに唯一割って入ったことがあるクロアチアのルカ・モドリッチ(37)を含め、いずれもW杯のタイトルを獲ったことがない世界的スーパースターが年齢的におそらく最後の大会となった今大会。最後に悲願の栄冠を掴み取ったのは〝神の子〟メッシだった。前回大会を制したフランスの怪物・エムバペとの死闘となった決勝戦は、W杯史上に残る名勝負として語り継がれることになるだろう。
波乱続きだったグループリーグから一転、決勝トーナメントは強豪国が強さを見せて順当に勝ち進む展開が多かった。その中でやはり際だったのは、組織的な堅守でスペインとポルトガルを下し、アフリカ勢初のベスト4を為し遂げたモロッコの躍進だろう。クロアチアも前回大会に続いて2試合連続のPK戦を制するタフな戦いぶりで、今大会も3位と大会を盛り上げた。
メッシ、C・ロナウド、ネイマールらがベスト8までで姿を消した前回大会が「個の力よりも組織力」の大会であったとすれば、前回大会では「メッシ頼み」と言われベスト16で敗れたアルゼンチンが、メッシの個の力とチームメイトの支えで栄冠を手にした今大会は、「個の力+組織力」の大会であったと言えるだろうか。
今大会を通しての大きな特徴は、アディショナルタイム計測の厳密化に伴う長時間化だろう。グループリーグのイングランド対イラン前半の14分を筆頭に、7分や8分のアディショナルタイムが標準となり、過去大会より日数の少ない過密日程やカタールの気候、主要リーグ開催期間中の大会ということも含め、選手にとってはタフな大会であったと思われる。
日本国内ではグループリーグ突破が絶望視されていたこともあり大会前は盛り上がりに欠けたが、日本代表がドイツとスペインを撃破する2度の大金星に加え、AbemaTVが全試合完全中継を無料配信で大きなトラブルなく完遂したことも追い風となって日本以外の国の戦いにも注目が集まり、終わってみれば決勝戦まで大いに盛り上がった大会となった。
また、男子のW杯として歴史上初の女性審判員が採用された(主審・副審で各3名)。その中には日本から山下良美が選ばれており、今回の大会における審判員で日本出身は唯一彼女のみで、実際にグループリーグFのカナダ×モロッコ戦で第4審判として初めて務めた。これはFIFAの方針として、性別を問わずに審判員の質を重視しており、様々なサッカー大会で女性が審判として活躍できるようにすることが目標として掲げられている。また、誰もが活躍できる当たり前の世界を目指していることが挙げられる。
ピッチ外では、日本人サポーターによる試合後のゴミ拾いが海外メディアの間で話題となり、FIFAの公式ツイッターでもその様子が取りあげられた。また、日本代表選手がドイツ戦後にロッカールームを清掃している様子も注目された。こうした動きは各国にも波及し、他国のサポーターが試合後にゴミ拾いを始めるようになったり、イラン代表がウェールズ戦後にロッカールームを清掃したりと好影響を及ぼした。ちなみにこうした日本サポーターの動きは前回大会でも見られた。
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関連項目
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- 2014 FIFAワールドカップ
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- 2006 FIFAワールドカップ
- 1998 FIFAワールドカップ
- 1990 FIFAワールドカップ
- 1994 FIFAワールドカップ
- 2018FIFAワールドカップ
- 1982 FIFAワールドカップ
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- 2026 FIFAワールドカップ
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