概要
コンピュータRPGとは、プレイするのに複数の人間を必要とする「テーブルトークRPG(TRPG)」などの従来の「ロールプレイングゲーム」を1人のプレイヤーでも遊べるようにゲームマスター(審判・語り部・進行)役をコンピュータに担当させたビデオゲームの設計とその総称である。国内では単にRPGと言えばこのコンピュータRPGを指して呼ばれていることが多いと思われる。TRPGと対比させるため、「CRPG」と略記されることもある。
現在ではコンピュータRPGは様々な形で成長を遂げ、RPGが持つある特徴に特化した「ローグライクゲーム」や「ハクスラ(ハック・アンド・スラッシュ)」、他ジャンルとの融合をした「シミュレーションRPG」「アクションRPG」など多くのサブジャンルが存在している。近年、特に国産タイトルではロールプレイよりもストーリーやキャラクター表現を重視した作品も多く見られるようになり、そのような設計の作品は「JRPG」とも呼ばれている(後述)。
また、近年ではインターネットの普及により、オンラインで複数の人間で旧来のRPGのようにコンピュータRPGを楽しむという先祖返り的な作品も多数現れ、より人気を博していると言えるだろう。
主なサブジャンル
特徴
- レベル / 経験値
- エンカウント / 戦闘
- 探索 / アイテム収集
- キャラクター育成 / ステータス管理
- テキスト / コミュニケーション
- アドベンチャーゲームのようにゲーム内の住人との関わりが重要になる。選択肢や普段の会話でどのような関係になるかも大きく変わる。
歴史
現在知られている限りで最も古いコンピュータRPGは1970年代半ばに開発されており、『Dungeon』『dnd』『pedit5』『m199h』などのいくつかのタイトルが知られている。いずれも学校・研究所等で使用される大規模で高価なコンピューター(メインフレーム)上で動作するものであり、当時プレイできた人間も限られているため「どれが最古のものか」は議論の余地がある。一説によれば「1973年の『Monster Maze』というテキストアドベンチャーゲームがRPG要素を持っており、これが起源かもしれない」という話もあるが、この作品は現存しないため確認が難しい。
これら草創期の作品のうち多くは、1974年に発売された世界初の[1]TRPG『ダンジョンズ&ドラゴンズ(D&D)』や、J・R・R・トールキンのファンタジー小説の影響を受けていたようだ。ちなみに、これらのメインフレーム機で動くRPGには、既に多人数同時プレイ可能なものがいくつか存在していた。
1979年、Apple II用のRPG『Akalabeth』が開発された。これはアメリカ合衆国の高校生「リチャード・ギャリオット」が、学校のメインフレームやApple IIを使用してTRPG仲間の助言を受けながら制作したもので、やはりD&Dやトールキンに強く影響を受けていた。紆余曲折あって本作は市場販売されることになり、予想外の成功を収めた。なお、最初に販売された年が1979年中だったか1980年になってからであったかについては諸説ある。
そして1981年には同じくギャリオットによる続編的作品『ウルティマ』が発売された。フィールドRPGの初期のものである。この『ウルティマ』も人気を集め、その後もシリーズ化されていく。
1980年、やはりアメリカの学生により開発された、UNIX上で動作するダンジョンRPG『ローグ』が発表された。これを元祖とする「ローグライクゲーム」は人気のあるサブジャンルとなっている。
1981年、Apple II用のダンジョンRPG『ウィザードリィ』が発売された。これはシステム面では上記の1970年代のメインフレーム機でのRPG、特に『OUBLIETTE』というゲームにかなり類似したものであり、オリジナリティに溢れるものというわけでもなかった。しかし個人向けパソコン(当時はマイコンと言ったが)であるApple IIでプレイ可能で、さらに非常によくゲームバランスも練られていたこともあり、世界で大ヒットした。日本でも例外ではなく、その後の国産RPGに大きな影響を与えることになる。
1982年(あるいは1983年とも)には光栄マイコンシステム(現在のコーエー)から、PC-8801向けゲーム『ドラゴン&プリンセス』が発売。これが「日本初のコンピュータRPG」と言われることもある。ただしこれは基本画面はテキストのみが表示され行動を入力し、敵とエンカウントしたときのみターン制のSRPGっぽい戦闘画面に切り替わるというもので基本的にはテキストアドベンチャーゲームであり、パッケージには「ファンタジーアドベンチャーゲーム」とジャンル名が記されていた。
1983年、同じく光栄マイコンシステムからPC-8801ゲーム『クフ王の秘密』発売。これはパッケージに「ロールプレイングゲーム」と記載してあり、当時の光栄は同作を国産初のRPGとして広告している。ただしこれも現代から見るとRPGと言い切るにはやや難があるとのこと。同社は同じ1983年に『団地妻の誘惑』というアダルトゲームも発売しており、同作のパッケージにも「アダルトポルノロールプレイングシステム」と言うジャンル名が記されている。だがこちらもRPGというよりアドベンチャーゲームらしい。
1984年、パソコンゲームとしてBPS『ザ・ブラックオニキス』、日本ファルコム『ドラゴンスレイヤー』、ティーアンドイーソフト『ハイドライド』、クリスタルソフト『夢幻の心臓』が相次いで発売された。これらが国産初のRPGらしいRPGと言えるかもしれない。
1985年、任天堂のコンシューマーゲームハード「ファミリーコンピュータ」向けのソフトとして、8月にナムコから『ドルアーガの塔』が、12月にはデービーソフトから『頭脳戦艦ガル』が発売された。この2作はパッケージにRPGと書いてある[2]ため、「ファミコン初のRPG」とされることがある。特に前者は当時のゲーム書籍や雑誌のゲームコーナーでも「ファミコン初のRPG」として紹介されている。[3]
1986年に日本で『ドラゴンクエスト』が発売されると社会現象になるほど大ヒット作になる。ドラゴンクエストは従来のRPG作品より、遊び易く、分かり易かった。さらに音楽やキャラクター・モンスターデザインなども既に実績のある著名人を起用しておりクオリティが非常に高かった。またメイン開発者の一人である堀井雄二が当時大人気だった漫画雑誌「週刊少年ジャンプ」にゲーム記事を持っていたことや、プラットフォームであるファミリーコンピュータが大成功を収めていたこともヒットを後押しした。同作はシリーズ化され、以後も成功を続けていくとともに、日本の「RPG」の基本形となり、時にはパロディ元ともなっていく。
1987年には『ファイナルファンタジー』が発売される。同作シリーズはのちに世界を代表するRPGになるほど大ヒットしストーリー重視、イベントに映画的手法を使うなどが特徴である。
1993年には、徹底的にローグを遊びやすくした『トルネコの大冒険 不思議のダンジョン』が発売されると大人気になり、ローグライクゲームを一般人に広めたきっかけになる。
1996年に『ポケットモンスター』が発売されると、社会現象になるまで爆発的にヒットを飛ばす。このゲームは、現実の友達や仲間とモンスターを集めたり、交換したり、戦わせたりできることがメインで、RPG=一人で遊ぶ物、ではなく、RPG=周りを巻き込んで遊ぶ物、という概念に変えた。
1996年に『ディアブロ』がPCで発売されると大ヒットする。このゲームはMORPGの初の大成功作になる。
1997年に『ウルティマオンライン』が発売されると世界中で大ヒットし、MMORPG初の大成功作品になる。
ディアブロとウルティマオンラインは寝食を忘れてゲームする者が多く見られた。2作品はオンラインゲームの先駆けとなった作品である。
現在もコンピュータゲーム、オンラインゲームにおいてRPGは世界中で人気ジャンルの一つであると言えるだろう。
RPGの主人公は喋らない?
RPGは本来は「主人公=プレイヤー自身」という設計が一般的であった。これは勿論、原点であるTRPGなどに基づいたRPGの原書の形式である(TRPGプレイヤー同士が会話する事は別)。コンピュータRPGの代表作である『ウィザードリィ』『ウルティマ』『ローグ』などは主人公が喋ることは無くそれに準ずるものだった。
国産タイトルの代表作である『ドラゴンクエスト』などもそれに強い影響を得て主人公は喋らない。本作のデザイナーである堀井雄二はこの形が「プレイヤーが最も感情移入しやすい」としている。『MOTHER』を作った糸井重里もこの『ドラゴンクエスト』の設定に影響を受けているため、「主人公はプレイヤーなので絶対に主人公は喋ってはいけない」とこの形式を受け継いでいる。
しかし、同じく国産のRPG『ファイナルファンタジー』は第1作目から主人公が喋り、第2作目以降は、プレイヤーの意志とは関係無しに主人公がストーリーを進める映画的手法を持ちいて好評を得ることになる。この作品以降、日本のRPGは主人公がプレイヤーの意志とは関係無しに喋るものが多く見られるようになったと言われている。こちらに関しては感情移入するキャラを個別にプレイヤーが鑑賞して探す、俯瞰視聴型とも言えるだろう。
後者の設計では、より豪華な物語の演出や豊かなキャラクター像を描くことに優れている一方で、「RPGなのにちっともロールプレイできない」「主人公がプレイヤーではなく、主人公が勝手にストーリーを進める」と言ったような本来のロールプレイから逸脱してしまっているという意見もある。
"ロールプレイ用のキャラクター"と"明確なキャラクター像"の差異の例としては、各プレイヤーが抱く主人公の一人称一つ(「私」「俺」「僕」かだけでも)とってもプレイヤー間で大きく分かれる事が解りやすいだろう。
そのためコミュニティによっては、そのような設計の作品は従来のRPGとは区別し、国産タイトルに多く見られることから「Japanese Role-playing game」「JRPG」という独自のジャンルとして解釈されていることもある。元々は海外のコミュニティで使用されていた俗称であったが、近年では国内でも名称と解釈が定着しつつあり、独立したジャンルとしてゲームが開発された例も見られるようになった。
主なタイトルの一例
関連動画
関連項目
脚注
- *ただし源流と見るべき卓上ゲームが無かったわけではない。
- *ファミコン初RPGの定説を覆す大発見! レトロゲームでピッコピコ/ウェブリブログ
- *FC初RPGはもうコレで決まりだろ。 レトロゲームでピッコピコ/ウェブリブログ
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