この記事は、失踪した記事作成者を調査する中で当局によって発見された手記の写しである。
このたび、記事作成者の行方を調査するに当たり、有力な情報を得るため、当局が公開に踏み切った。
手記を見る限り、記事作成者は精神が錯乱しているものと思われるため、この記述を全て信用してはならない。
概要
クトゥルフ神話(Cthulhu Mythos)とは、米国の怪奇・幻想小説家ハワード・フィリップス・ラヴクラフト(Howard Phillips Lovecraft)の小説群を元にした、架空の神話体系である。
・・・はずである。創作物なので、現実には存在しないはずだ。いや、何でもない。
「遥か太古に外宇宙の彼方より飛来し、この地球に君臨していた旧支配者と呼ばれるおぞましき存在が現代に蘇る」というモチーフを主体としている。大概の作品の主人公は僅かばかりの好奇心や興味から、旧支配者やその眷属たちについての信じ難い真実を目前としてしまい、想像を絶する狂気と絶望の果てに凄惨な最期を迎えることとなる。
神話に冠されたクトゥルフとは、「クトゥルフの呼び声」に描かれる、旧支配者のうちでも代表的な存在で、蛸のような頭部、蝙蝠のような翼、巨大な爪のある手足を持つ軟体動物のような存在として描かれている。
日本では「クトゥルフ神話」の他に、「クトゥルー神話」、「ク・リトル・リトル神話」などの呼称も存在する。これらについては別記事「クトゥルフの日本における表記」を参照されたい。
クトゥルフ神話の成り立ち
米国の作家H.P.ラヴクラフトは、自身の著作に、怪奇小説に独特の雰囲気を与えるため、独自の神話・神名とそれに付帯する土地や書物、アイテムを創作するというアイデアを思いついた。そうした中には、自身の夢に登場したものも含まれる。また同時に、そういった設定と実在の土着神話との関係を(暗に)匂わせるという手法も使用する。この手法は、情報の往来が現在ほど発達していなかった、ラヴクラフトの執筆時期にはマッチしていた。
ラヴクラフトは更に、彼が寄稿していたパルプ雑誌、「ウィアード・テールズ誌」の作家仲間であるフランク・ベルナップ・ロング、クラーク・アシュトン・スミス、ロバート・E・ハワード、ロバート・ブロックら複数の作家たちの間で、共通の固有名詞を共有した。そうした中でクトゥルフ神話の源流となるものが構築されていった。
ラヴクラフト自身はこれらの作品群をまずはアーカム・サイクル(アーカムもの)などと呼んだ後、1930年頃に「Cthulhu & other myth - myth of Cosmic Thing in Nec. which created earth life as joke(クトゥルフその他の神話--戯れに地球上の生物を創造したネクロノミコン中の宇宙的存在にまつわる神話)」という文章を遺している。
ラヴクラフトは存命中に高い評価が得られず、大手出版社からの単行本刊行も企画倒れに終わっているため、出版数は少ない。しかし、時折アンソロジーに収録されたことから英米にコアなファンが存在した。
そして、オーガスト・ダーレスが登場する。
オーガスト・ダーレスについて――クトゥルフ神話の体系化
ダーレスもラヴクラフトと同じく、米国の怪奇作家であり、彼の作品にはラヴクラフトの影響を受けたものも多い。ダーレスによる「ラヴクラフト風の作品」の多くは、神々の対立構造という善悪二元論的解釈と、四元素説をもとにした神々の属性分類など、独自の設定が盛り込まれているのが特徴だった。ダーレスの付け加えた付加設定は「一般人にも理解し易いようにする」のが目的だったというのが定説である。
ラヴクラフトの死後、ダーレスは師とも呼べるラヴクラフトの作品が埋もれたままとなってしまう事を危惧し、また、師に相応の名誉を与えたいとも考えていたようだ。彼は、「アーカム・ハウス(Arkham House)」というラヴクラフトの著作を管理する出版社を設立し、生前はほとんど出版されなかったラヴクラフトの作品の単行本を出版すると共に、新しい作品を書いていった。その中でこれらの作品は「クトゥルフ神話」として体系化されていった。
こうして現在の形を成すようになったのが、世に知られる「クトゥルフ神話」である。
ダーレス後、近年に至るまで
ダーレス没後、とりわけ1970年代、リン・カーターが次々とクトゥルフ神話関連作品を刊行し、ある種のブームを巻き起こした。それ以降、影響を受けた作家が新たな設定を次々に加え、(邪神の解釈などは違うものの)共通の世界観をベースとするシェアード・ワールド的な拡大を続けることとなった。
ラヴクラフト派とダーレス派
前述したように、ラヴクラフトとダーレスは対立していたわけではないが、後継の作家やファンの中にはダーレスの組み込んだ善悪二元論や、属性付けを嫌う者が少なくない。というのもラヴクラフトは、彼が理想とする怪奇物語として
という思想--「宇宙的恐怖(コズミック・ホラー)」というものを掲げていたことが知られているからである。
これを平易に説明すれば、人間をアリに置き換え、人間社会をアリの巣の中で完結しているような社会と考えればよい。アリには「大気」や「人間の足」という認識はなく、人間が大気を掻き分けてアリを踏みつぶし殺害したという事象はアリからでは理解できず、そこにはアリでも認識できる程度の結果、つまり潰れた同胞の死体が残るのみである。
アリに比する人間、つまり人間に比しての「宇宙的存在」が成す"事象"は、アリのように矮小な人間には理解できず、ただ意志疎通も理解も拒まれる絶対的他者への「宇宙的恐怖(コズミック・ホラー)」のみがそこにある--というような思想が少なからぬラヴクラフト作品の根底にある。
そのためクトゥルフ世界が普及するにつれて、ダーレスが持ち込んだ善悪二元論などの「人間的に解釈できる」要素付けはラヴクラフトの思想とは反するものだとして、嫌悪の対象になることもあった。
(――しかしこれらの作品を作り上げた1920年代当時、ダーレスは熱心なアマチュア作家に過ぎず、ラヴクラフトの世界観の普及というテーマに取り組むのは大分後になってからのことなので、単純に自分が面白いと思って付け加えた設定に過ぎないと考えるのが自然だろう。そして、ラヴクラフトもまたダーレスの作品を高く評価し、「インスマスを覆う影」においてダーレスの旧神にまつわる設定を取り入れた可能性が指摘されている。)
故に、便宜的にではあるが、ラヴクラフトの思想と手法を受け継ぐと自認する、つまり理解できない事象を理解できない恐怖として表現する者をラヴクラフト派、ダーレスの設定を受け容れて理解できない事象を理解できる恐怖として表現する者をダーレス派と呼ぶ事がある。
他の神話との比較
ラヴクラフトの思想、コズミック・ホラーに基づいた考え方は、既存の神話とは大きく異なるものになる。そもそも架空の神話体系であり、小説作品という前提もあるが、クトゥルフ神話においては人間が徹底的に無力であるとされており、それに対して神々は人類では理解することすら困難で、恐怖と絶望、狂気をもたらす存在とされている。他の神話でも邪神に相当する存在や宇宙規模のスケールの神話は多くあるものの、クトゥルフ神話では神と人間の関係性のベクトルが大きく異なるのである。
その一方、科学の発展に伴うキリスト教の否定と完全否定への抵抗という揺らぎが生じていた時代であること、土着神話と絡めて書くこともあった作風から、他の神話に登場する神々をクトゥルフ神話に取り込むといった例は多く見受けられる(エジプト神話など)。しかし、他の神話における彼らとクトゥルフ神話における彼らを完全に同一視できるかという点については疑問が残る。クトゥルフ神話の作風の関係上、既存の神々をクトゥルフ神話の世界観に適応させるのであればある程度の設定変更が必要であるため、神話において語られる設定と違う点が生じるためである。
こういった点から、クトゥルフ神話の神々が他の神話の神々を元に化身を生み出し、結果人間が同一視し信仰したことが仄めかされる作品や、逆に作中でクトゥルフ神話の神々を元に人間が自分たちの神=他の神話の神々を考え、それを崇拝したとする作品もある。つまり同一であると明言しないという場合もあるということだ。神の取り込み元があるとしても、あくまで「クトゥルフ神話における存在(≒)」であることは念頭におく必要がある。
クトゥルフ神話の体系化
実際の「クトゥルー神話の体系化」は、3段階で進んでいった。
第一に、フランシス・T・レイニーが1943年に手がけた『クトゥルー神話小辞典』。「旧支配者(Great Old One)」という用語を、ラヴクラフトやダーレスの用法とは異なる邪神群として位置づけたのは、この『小辞典』をもって嚆矢とする。第二に、リン・カーターが若年時に同人誌に発表した『クトゥルー神話の神々』『クトゥルー神話の魔導書』がある。これらの資料はアーカム・ハウスの本に掲載され、ここで体系化されたクトゥルー神話周辺設定が読者の共通知識として定着していった。そして第三が、1980年代にケイオシアム社から発売された『クトゥルフ神話TRPG(クトゥルフの呼び声)』における設定で、「外なる神(Outer God)」の存在をはじめ、今日的なクトゥルー神話の設定は多くの部分をこのTRPGに拠っている。
国内におけるクトゥルフ神話
国内においても影響を受けた作家は多く、マイナージャンルではあったが、作品の日本語訳を始めとして、クトゥルフ神話の流れを汲んだ小説・漫画等が出版されていた。また特撮系作品に関連を示す声もある。また、コンピューターゲーム等で、ストーリーにこそ直接クトゥルフ神話は絡まないものの、ネクロノミコンなどのアイテムや邪神の眷属など、一部の要素を切り取って用いられているものも見られる。
近年の日本でのクトゥルフ神話の知名度を上げる一因となったものにクトゥルフ神話TRPG「クトゥルフの呼び声」がある。矮小な人間である「探索者」たちが、様々な「宇宙的恐怖」に晒されつつも生き残ることを目的として足掻く様を楽しむホラーTRPGとなっている。
さらに、そのシェアワールド的な自由な世界観から二次創作的な広がりを見せ、ゲームやライトノベル、漫画などにもその世界を広げることとなった。今日では幻想・怪奇ものの1つのジャンルとして定着しつつあり、パロディ作品なども親しまれている。
ラヴクラフト最大の誤算
その中でも、これらの暗澹たる異形の者共の存在も、近年の日本のサブカルチャー文化により見出され、あろうことかかわいい、とか萌えとかそういう形容しがたいものに置き換えられて愛されることとなる。日本人に見つかった結果がこれである。どうしてこうなった。
ニコニコ動画におけるクトゥルフ神話
「ニコニコ動画」なるサイトにおいては些かマイナーな存在であり、精々謎の歌声が掲載される程度であったクトゥルフ神話体系であったが・・・
ボーカロイド『巡音ルカ』のスピンオフキャラ「たこルカ」の登場を期に、一気に関連するタグが増加、それに伴って動画や記事も増殖を始めた。これについては、「もっと崇拝されるべき」「クトゥルカ」などに詳しく陳述されている。
また、2011年頃からにわかにクトゥルフ神話TRPGがブームを巻き起こし、数々のCoCリプレイ動画が作られたことで、クトゥルフ神話自体の知名度も高まった。発端は「ゆっくり達のクトゥルフの呼び声TRPG」だと思われる。
2012年には「這いよれ!ニャル子さん」なる名状し難き冒涜的なアニメーションが配信され、何たることか、多くの邪神信仰者を生み出してしまった!ここで初めてクトゥルフ神話の一端に触れた者も多いことだろう。
関連動画
以下に、初心者向けのクトゥルフ神話関連動画を挙げるが、その前に知っておいて欲しい事がある。
“深淵を覗き込むとき、深淵もまた、こちらを覗き見ている” -ニーチェ曰く
動画を見た事で、どのような結果が待ち受けていようとも、記事作成者は一切の責任を負わない。
底知れぬ暗澹たる恐怖を湛えた関連動画
警告したはずだ・・・
それでも、まだ知りたいというのなら、少しばかりの知識を持って行くがよい。
まず、その源泉たる宇宙的恐怖そのものと遭遇しようものなら、あなたの正気は保障できない。
抗する術など、人の身に過ぎない我々の手にはない。
だが、宇宙的恐怖に仕える冒涜的な眷属や、その崇拝者に抗する術は多くはないながらも存在している。
ひとつには、宇宙的恐怖の敵対者、人間にとって比較的友好的であると言われる存在。
“旧神”と呼ばれる存在のシンボルが刻まれた、五芒星形の石を持つ事だ。
石は宇宙的恐怖そのものに対しては無力であるが、眷属や崇拝者を退けるには十分な力を持つ。
だが、覚えておき給え・・・
宇宙的恐怖に抗するには、その恐怖に関する知識が不可欠であるが、知識を深め、より強力で、
より効果的な手段を講じる毎に、貴殿はより、宇宙的恐怖に近づいていく事になる。
理解を絶する恐怖を湛えた冒涜的関連動画
やめろ・・・それ以上近づくなっ!
私には、貴殿らが納得するだけの海産物証拠を提示する準備がある。
だが、それを明示したとして、それが齎すのは、想像するだに悍ましい結果だけだ!
→ラヴクラフト最大の誤算
→いあいあM@STER
→SAN値直葬
口にするのもはばかられる関連商品
密やかに拡がり続ける邪悪なる関連コミュニティ
我々には理解し得ない茫洋たる関連項目
代表的な作家 | 旧支配者 | 外なる神 |
→旧支配者 |
→外なる神 |
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代表的な作品 | その他の種族・眷属 | 旧神 |
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→旧神 |
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作中のアイテム・書物・地名 | 代表的な登場人物 | |
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TRPG関連 | 関連タグ | |
関連リンク
このような手記を残した事で、私にどのような結果が待ち受けているのか、今は知る術とてないが・・・
(手記はここで途切れていた。)
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