| 発売日 | 1996年12月26日(PC-98) 1997年12月4日(SS) 2000年12月22日(Windows) 2017年3月16日(PS4・PS Vita) 2019年3月14日(Switch) 2019年10月2日 (Steam) |
|---|---|
| ジャンル | SFADV |
| 企画・脚本 ゲームデザイン |
菅野ひろゆき |
| キャラクターデザイン | 長岡康史(オリジナル版) 凪良(フルリメイク版) |
| 音楽 | 梅本竜 神奈江紀宏 高見龍 ヨナオケイシ 佐藤龍一(SS) |
| 発売元 | élf(PC-98・SS・Windows) MAGES.(PS4・PS Vita・Switch) スパイク・チュンソフト (Steam) |
| レーティング | PC-98,Windows:18歳未満販売禁止 SS:18歳以上推奨 PS4・PS Vita・Switch:CERO:D(17歳以上) |
| 価格(税込) |
9,800円(PC-98) |
この世の果てで恋を唄う少女YU-NO(YU-NO: A Girl Who Chants Love at the Bound of this World)とは、élfから発売されたSFアドベンチャーゲームである。
数多くの名作ADVを世に送り出したゲームクリエイター、菅野ひろゆき(剣乃ゆきひろ)が企画・脚本・ゲームデザインを行った作品。
一般的には『DESIRE背徳の螺旋』『EVE burst error』と並び菅野の代表作とされる(「菅野三部作」とも呼ばれている)。
本作はパラレルワールドを渡り歩き、そこに隠された謎を解き明かすADVである。物語は1995年の日本の架空の街を舞台とした現代編(現世編)と、異世界編(ユーノ編)の二部構成となっている。
物語の中に現実の科学、数学、物理学、哲学、宗教、歴史の深い知識、近親相姦やカニバリズム、家畜を食べることの是非など、プレイヤーの道徳的規範に問いかけ、生命倫理に深く関わるタブーに触れるテーマを織り込んだ、精巧かつ緻密に構成された心揺さぶる感動的な物語と、複雑に分岐するマルチシナリオが展開される『物語の迷宮』とも称された、膨大なテキスト量で描かれた各ストーリーラインを、わかりやすく視覚化し一目で俯瞰することが出来る、『Auto Diverge Mapping System(オート分岐マッピング・システム)』、略して『A.D.M.S(
A.D.M.Sは従来のADVにおいてプレイヤーの感情移入を阻害し、物語世界への没入を妨げる最大の障害となるとされる、主人公とプレイヤーとの視点の乖離という、難題に対してのひとつの回答であり、菅野らによる真のロールプレイングへの挑戦であった。
本作の後世のゲーム、アニメ、漫画、小説作品への影響力は大きく、発売から20年以上が経った今日でも、しばしばADVの最高傑作として名前があがる。
90年代当時もその反響は大きく『墨攻』
などの著作で知られる小説家の酒見賢一や、『動物化するポストモダン』
などの著作で知られる評論家・哲学者の東浩紀
らなどが、本作の構造や世界観を真剣に語って評論した。
本作に惚れ込んだ東は『ゼロ年代のエンターテイメントの予見』『元祖セカイ系』『これからもゲームクリエイターが立ち返るに値する作品』『奇跡のゲームである。そして起源のゲームである。萌えと並行世界に駆動されるマルチストーリー・アドベンチャーゲームの時代は、ここから始まる。ここにぼくたちの愛したもののすべてがある。美少女ゲームとメタフィクションを愛する全てのユーザーが、一度は必ずプレイすべきゲームである。』などと評している。
酒見賢一は著書、文庫版『聖母の部隊
』の後書きをまるごと使い、『この数年の間僕がとくに面白かったSFはYU-NOである。(省略)当然ながらYU-NOはその年の日本SF大賞などにはかすりもしなかったが、僕はこの年の最良の収穫であった思う次第である。(省略)SFでは平行宇宙、パラレルワールドの概念はかなり当たり前なのであるが、いざパラレルワールドの面白さというかその秘密を堂々と書き切れたかとなると成功したSFはあまりないのが実状である。(省略)YU-NOはこの問題に挑戦している。堂々と。しかもかなり成功しているのである。パソコンゲームの可能性をさまざまと見せられたのであった。(省略)YU-NOは、自在に航海し、すべての可能なルートを体験し終えたところから、最後の隠れたルート、この作品の背骨たるルートへ抜けて、本題が始まるという、プレイ時間六十時間オーバー必至の重厚ゲームである。この点には賛否両論あるだろう。ゲームを評価する場合、操作性、シナリオやCG、音楽なども含めた上でのシステムごとの評価となる。一部を切り取ってあそこだけよかったなどということは基本的にあり得ない。全部を含めて一作品なのである。何故かと言えばシステムがそのゲームの世界観を作るものだからである。そしてSFが平行宇宙を扱う場合、突き詰めるべきと思われる根本的問題がある。YU-NOはこれまた見事につきつけていた。「世界の始まりと終わり」「時空の始源」というわけである。「アダムス」が平行宇宙とは何かをゲーム中に具体的に存分に描き出した上でのことであるから必然的説得力がある。主人公(プレイヤー)は愛する女と時空の始まり、時が植物の根のように枝分かれする以前の場所にこの宇宙の全ての根源を求めて向かうのである。これは凄いことです。最近のSFでこのような根本的問題に大上段から切り込んだものなどない。けっこうみみっちいものが多いのだ。僕だっていつかやりたいが、何しろテーマが巨大すぎて腰が引けるところである。もうSFの真骨頂のようなテーマに敢えて真正面から取り組んだSF的哲学的な志の高さには脱帽するしかあるまい。』と評論した。
この他、現代に活躍する多くのクリエーターたちも本作を称賛してはばからない。
一般でも例えば、メディアワークス(現アスキー・メディアワークス)発行のゲーム総合誌であった『電撃王』の「第2回電撃王ゲームソフト大賞」(1997年5月号)において、『サクラ大戦』『ポリスノーツ』『バイオハザード』『鉄拳2』など他の人気作品を抑え、読者投票の平均点が最も高い作品に与えられるヒートアップ賞を受賞するなど、美少女ゲームとしては異例の非常に高い評価を受けた。
本作のテキスト容量は、通常2MBほどで長めであると形容されるADVのテキストの4倍もの分量である8MBにも達し、400字詰め原稿用紙に換算して10,000枚以上、A4用紙に直して6000枚という空前絶後の規模である。
比較の一例として、これも大ボリュームの大作ADVと知られる『Fate/stay night』のテキストは、3MBを超えているが、3MBは小説に換算すると10冊分相当である。ライトノベルは、データに換算すると、だいたい1冊が0.3MBほどだと言われている。源氏物語は400字詰め原稿用紙に換算すると約2400枚相当だといわれている。
このような超巨大なボリュームを誇る本作は、エンディングに至るまでのプレイ時間は平均60時間以上が必要ともいわれ、達成率100%、個別エンディングまで含めると100時間を超すことも珍しくはないという超大作となっている。
つまり本作は世間一般では所詮、アンダーグラウンドの娯楽に過ぎないエロゲー・ギャルゲーに類するジャンルの作品でありながら、今日の日本のゲーム、漫画、アニメ、ライトノベルを核とするサブカルチャーにおいて重要な、ストーリーテリングの源泉ともなった古典であり、美少女ゲームを象徴するレジェンド、不朽の金字塔である。
本作で描かれたギミック、演劇的手法を思わせるメタフィクションを多用した演出、タペストリの如く綿密に編み込まれた物語の光と影の対比の妙は、さながら名作の条件を解き明かす支配方程式となり、後世の作品に大いに参考とされた。
講談社の文芸誌ファウスト
はこれを『ゼロ年代の表現をあらかじめ用意した』とまで04年に評していた。
いわゆる神ゲーであろう。
本作のプロモーションも菅野が担当し、発売の数ヶ月前に先行して各紙に見開きで掲載された、文字情報は今秋発売であること、当時としては長い奇妙なタイトルと「あなたと一緒にこの世の果てまでも・・・。」とあるだけで、宇宙空間で眠る少女の幻想的なキービジュアル
が描かれたシンプルな広告は、本作の内容はまだCGすら秘されており、どのようなゲームであるかも一切秘密とされたものであったのだが、非常に印象的で市場の本作が超大作であろうという期待感を煽った。
キャラクターデザインと原画は『DRAGON QUEST -ダイの大冒険-』などのキャラクターデザインを務めた実力派アニメーターの長岡康史が担当(企画段階では横田守を予定していた)。音楽はFM音源の魔術師、梅本竜がメインで担当している。梅本は当時élf社員であったが、短期間に80曲以上を作曲するという激務から追い詰められ作曲を終わらせぬまま失踪し、消息不明となってしまったが、残りの楽曲はシーズウェアで菅野と組んで作曲をしていた神奈江紀宏と、梅本の同居者で盟友の高見龍を呼び完成させた。
高見は以前、EVE burst errorが完成した時、菅野から高見さんの違った感じの曲も聴きたいと言われたことがあり、それならと作曲して菅野に送った曲が、既に本作で亜由美のテーマ曲に使われていることを、本作の制作に参加して初めて知ったという逸話がある。
菅野は高見に開発中の本作をノーヒントでプレイさせ感覚を掴ませると同時に、足りない曲をリストアップして作曲の依頼を行った。高見はélf社屋に寝泊まりしながら、残された膨大な数の曲の作曲を進めたが、梅本が失踪したとしても、これは彼の仕事であり自分は梅本に曲調を似せたとして、クレジットには自分の名を残さないように述べてPC-98版の完成をもって去ったが、のちに高見が知らぬ間にSS版でクレジットに記載されることになる。
高見の曲は『有馬亜由美』『帝都』『緊張』『Ending』の計4曲であるが、その証言から推察するにその他の曲にも関わったものと思われる。
本作のエンディングだが、高見は大凡の尺を測って、曲のテンポや構成を決定し、菅野がスクリプトを調整しながら「その場で作っていった」旨を高見は述べている。
本作の楽曲は80曲を超えるがこれもADVの楽曲数としては通常の3、4倍ともいわれ異例であった。
また本作の制作には当時黄金期と呼ばれた、まさに全盛時代のélfの最高のスタッフたちが結集し、菅野の壮大な構想を現実のものとした。一例としては後に『うたわれるもの』の脚本で知られることになる菅宗光もスタッフとして制作に参加している。
同社のトップであった蛭田昌人も本作の制作指揮を菅野に全面的に任せ、同社の取締役というその才能を遺憾なく発揮させることが可能な権限を与えていた。
当時のélfは、『同級生シリーズ』や『ドラゴンナイトシリーズ』などのヒット作に恵まれ絶好調の波に乗っており、ファイナルファンタジーで知られる、スクウェアにも並ぶほどの巨大な収益を得て、まさにアダルトゲーム業界の覇者であった。
菅野は通常、ゲーム制作において、シナリオライターとプログラマーは両立出来ないのが常識とされるが、それまではプログラマーも兼任しており、まずストーリーボードを作り、字コンテを起こし、グラフィックの発注を行い、それと並行してプログラムとスクリプトの制作も行い、ゲームの基本的なシステムを構築すると、その箱(アドベンチャーゲーム・エンジン)を動かしながらシナリオを書き、スクリプトコマンドが足りなくなっていくと、また新たなプログラムとスクリプトを作り直しては、シナリオを加筆していくという、非常に煩雑で即興的な並行作業を、尋常とは思えない驚異的なハイペースで行っていたが、しかしélfでは優秀なプログラマーやスタッフの力を借りることが出来たので、シナリオにもこれまで以上の力を傾けることが可能となった。
菅野は以前所属していたシーズウェアでは、ゲーム制作に4ヶ月以上の製作期間を与えられなかったところを、élfではその倍の8ヶ月もの製作期間を与えられたことに喜び、まるで気が遠くなるような制作期間だと思い「今までできなかったことをいっぱいやろう」とシステム面でも、従来の菅野のADVで採用されてきたコマンド選択式の他にも、海外の本格的ADVではみられるが、制作には膨大な手間がかかり開発力のある会社のみが手がけられるとされる「ポイント&クリック式」を採用するなど挑戦的なゲームデザインを行った。
本作はゲームファンの間では国内最高峰のポイント&クリック式ADVであるとも記憶されている。当のélfでさえこの規模のものはその後二度と作ることは叶わなかった。
しかし制作開始から5ヶ月を過ぎた頃、このままでは納期に間に合わないという判断に至り、本来は現代編を20時間から30時間ほどプレイ時間に抑え、現代編は異世界編への大いなるプロローグに過ぎず、異世界編が本編という構想であったのだが、仕方なく現代編を本編とし、異世界編をエピローグとするような大幅な軌道変更を行う決断がされた。
異世界編はA.D.M.Sどころかポイント&クリック式も諦められ、プロローグと同じ一切分岐のないコマンド選択式のビジュアルノベル的なものとなった(SS版でポイント&クリックに直される)。
その為か序盤に散りばめられた一部の伏線が回収されきっておらず、なんとなくは考察可能であるが、明確な答えは提示されていない部分もある。異世界編中でもここでシナリオの分岐があったと思われる痕跡が察せられる箇所がある。また異世界編は15時間ほどと、現代編と比べると短く早足な印象である(それでもこの時期の大抵のADVの規模を凌いでいた。例えば『DESIRE背徳の螺旋』のプレイ時間は10時間ほどである)。
この結果に菅野曰く本作の構想は予定の7割の実現にとどまったと述べ非常に悔み、一時は本作を駄作とも厳しく断言したが、ユーザーたちからの様々な好評の声を聞き納得はしなかったが自信を取り戻した。
ユーザーたちにとっては現世編で苦労して、なにか難しいことを達成したら、それが報われたかのように異世界編で、一挙に怒涛の展開に変わり凄い体験をしたと圧倒されるのだが、菅野としては当初の予定とは違ったゲームデザインとなったせいか、生前「わからんな」「俺はそれが駄目だと思っているのだが」と身近な者に述べいた。
本来A.D.M.Sは異世界編にも施され、さらにその異世界には過去・現在・未来があるというように三次元的に拡大されて適用される構想もあったようだ。その構想の一部は菅野の次回作『エクソダスギルティー』に活かされた。
A.D.M.Sは菅野の『ウィザードリィ』などのダンジョンRPG好きが高じて作られたシステムであった。創生期のダンジョンRPGではオートマッピングなどなく、プレイヤーが各自がゲーム画面を方眼紙に写しとってマッピングしてそれを楽しんで行っていたが、やがてユーザたちのニーズが、より簡単に遊べる方が好ましいと変化していくにつれ、自動的に地図を生成していくオートマッピングが導入された経緯がある。
菅野はダンジョンのオートマッピングがあるなら、マルチシナリオにもオートマッピングがあっても良いだろうと思いつき、オートマッピングを骨子にそこにマルチストーリーが一体となる、『最強のマルチストーリーシステム』と銘打ったA.D.M.Sを考案し、複雑に分岐する迷宮のような物語には並行世界を導入する発想に至った。
本作はこのパラレルワールドを冒険するADVとして開発が行われたが、しかしフィクションのこととはいえ、マルチシナリオにおいて本来一度きりである筈の人生の選択を、物語中の主人公が知覚出来ることは不自然である。並行世界の導入によって生じた矛盾については、主人公に「リフレクター・デバイス」というアイテムを与え、プレイヤーが物語を俯瞰して見られるように、主人公へも神の視点を与えることで解消させた。
同時に、人は古来、全てを知っており未来をも予見する知性を神と認識するが、「カオスの矯正」という設定を置き主人公の記憶を消し去ることで、完全なる超越者とは足らしめない工夫も施され、主人公を無限の可能性があるかも知れないが、先の分からぬ現実世界に生きるプレイヤーと同様の立場とさせ、主人公とプレイヤーの視点をシンクロさせた。
元々A.D.M.Sは菅野の前作『XENON【ゼノン】夢幻の肢体』でも導入が試みられていたが、ゼノンに与えられた開発期間はわずか3ヶ月しかなく、マップを組み込むとプログラムを終わらせることが出来ず導入は諦められた経緯があった。菅野は余裕さえあればEVEにもA.D.M.Sを搭載していたとも述べている。
A.D.M.Sの搭載について菅野は、誰かがいつかは思いついてやるだろうと考えていたが、やはりやるなら自分が一番最初にやっておきたいと本作への搭載が決意された。
菅野は『弟切草』を遊び、なぜA.D.M.Sが思いつかないのかと疑問に思っていたという。
このシステムを「アダムス」と呼称するかについては旧約聖書創世記のアダムとイヴの逸話に肖ったものと思われる。イヴはアダムから生まれ、その妻となったが、これは本作の主人公と娘の関係性と一致する。
またオートマッピングによりマルチストーリーの分岐が俯瞰的に視覚化され、異なる並列世界への移動を無制限とすると、ゲームが簡単になりすぎるという問題に対しては、セーブ・ロードを制限する「宝珠システム」を組み込むことで解決した。
余談だが、菅野は生前マルチサイトシステムなど、「○○システム」というのを考え、やたらと命名するのが好きだったそうだ。これにより流行りとなりゲーム雑誌の方でも、些細なことでも記事映えの為に、ここは○○システムと名付けてくださいと他メーカーに対しても要求する傾向となったという。
そして物語の並行世界については、従来のSFでの定番となっていたタイムトラベル物では、歴史を変えるためにはパラドクスが発生し、「自分を殺すためには超大なエネルギーが必要となる」「なにかしら邪魔が入る」という古典的ギミックが絡んできたが、菅野はそこに「歴史は積み重なっていく」「時間を移動するという行為は、歴史のパラグラフのひとつでしかない」という新解釈をあたえ、そのコンセプトで物語を組み立てると矛盾は起こらず、誰かが過去に遡ってなにかを行っても、その行為自体が歴史に積み重なり、分岐が一つできるだけなので、実際には歴史が改変されたわけではなく、こうすれば理論的にタイムパラドクスは起きないと考え、これを『並列世界』と名付け本作の世界観の骨子とした。
また世界観を補強するにあたり、作中で用いられる資料として数十ページにも及ぶ、現実の数学、物理学、哲学、歴史学が駆使された、とてもフィクションのものとは思えないような本格的な論文「世界構成原理に関する一考察」が執筆された。
PC-98版の発売後、菅野らの手によりセガサターンに移植された。
サターン版はグラフィックスが描き直され、声優による音声の追加および、アニメーションムービーの追加(OPムービは激しいネタバレを含み賛否両論ある)と、家庭用に合わせて一部表現の変更が行われ演出が強化された。
PC-98版のスペシャルディスクからの追加シナリオ「それゆけ、セーレス!」が本編に統合され、SPディスクには無い新規のテキストやグラフィックも追加されている。
手に入る宝珠の数が2個追加され攻略難易度の低減が図られた。異世界編は従来のコマンド選択式からポイント&クリック式に変更された。
オープニング・ムービーの曲はヨナオケイシが作曲。梅本が作曲したPC-98版OP曲と共通の演出に対応する役割を果たしつつ、新規の映像にも対応させる意図で作曲された。
サターン版BGMの編曲は、後にエクソダスギルティーのサウンド作曲を手がけることになる、シンガーソングライターの佐藤龍一が行った。
サターン版BGMはPCM音源となっている。詳細はブログを参照されたし。
尚、追加のイベント原画、CDケースの内側にある全12種類あった版権イラストは、長岡康史の他にも本作の追加シナリオ「それゆけ、セーレス!」、DESIREやEVEシリーズ、エクソダスギルティーのキャラクターデザインで知られる、アニメーターの田島直も一部担当している。菅野は「この作品をはじめて遊ばれることになる18歳未満のプレイヤーの皆様には、この作品で得た体験が10年後の人生で役立っていることを願っています。」との言葉を残している。
SS版は18歳以上推奨として発売されたが、これは18歳未満発売禁止作品ではなく、現在の基準でCDROによるレーティングのC~D(15歳以上対象/17歳以上対象)相当である。
当時の広告には「YU-NOは様々な冒険を体験できる、真の意味でロールプレイングなのです。18歳以上推奨という、より自由度の高い世界の中で、プレイヤーであるあなたは、他のゲームでは味わえない数々の体験をするでしょう。甘酸っぱくも切ないシーンに涙を流し、ときにはショッキングな場面に驚き、またあるときは不可解な謎に迷い、卑劣な悪人に対して怒り、肌を重ね合わせた女性にドキドキする・・・。少しだけ大人の冒険がこのゲームにはたっぷりと詰まっています。A.D.M.Sは、様々な可能性をあなたにもたらす、旅の道しるべなのです。美しいCGに臨場感あるBGMと音声、そして多彩なアニメーションが、この壮大なストーリーを演出します。ゲームのなかでユーノはあなたを待っています。」と記されていた。
PC版と異なりあとから修正パッチを配布出来ない家庭用のため、バグを洗い出すデバックには6ヶ月が費やされた。
あまりの膨大なテキスト量のため声優の負担が大きく収録中に交渉があり、声優のギャランティーが上げられることになり、本作がゲームにおける声優の出演料の基準を刷新させる切っ掛けになったという逸話もある。
1997年、セガサターン版の完成をもって、菅野はさらなる理想の開発環境を求めてélfを退社し独立した。
2000年には『エルフ大人の缶詰』という、様々なグッズを詰め合わせた完全限定商品の中に含まれるものとして封入された、élfが過去にリリースした旧作3本を、1枚のCD-ROMにまとめたディスク『élf Classic』として、Windows版(95/98/Me/2000対応)が発売されたが、グラフィックはPC-98版と変わらない16色のままで、サウンドの音質は明らかに劣化し、オリジナルのステレオサウンドからモノラルサウンドに変更。テキストも近親相姦を連想させる部分や、メインヒロインの年齢を*で伏字とした。PC-98版スペシャルディスクの内容の殆どや、セガサターン版で追加された新要素もなく完全版とは言い難かった。
ネット上では伏せ字を本来のテキストに戻すパッチやSS版の声優の音声をWindows版にあてるパッチ、テキストを英語に変えるパッチなどが、個人の手によって配布されているが勿論élf公式のものでは無い。
この『élf Classic』は、のちにélfファンクラブ会員のみに限定的に通信販売もされたが、ほどなくして販売終了となった。しかし同商品に含まれていた他作品は、のちにリメイク販売がされたが、本作がélfから単体で販売されることはついに無かった。
élfの公式サイトからも本作の存在は抹消され、永い封印の眠りにつくことになる。
本作はメディアミックスとして、まりお金田によるコミカライズ(「Gファンタジー」連載 全1巻)や、神代創による小説化(KSS発売 全4巻)もなされた。
小説版は並列世界を一本道のストーリーに描き直し、一部オリジナル展開が見られ事象の根源には遡らないなどエンディングは大きく異なるが、概ねPC-98版に準拠した設定を守った物語となっている。
1998年から99年にかけてピンクパイナップルから『YU-NO』というタイトルでアダルトアニメ版のOVAも全4巻が発売されたが、内容はゲームでの設定とは大きく異なり、性的要素が盛々で独自設定が多数あり、意味不明な部分も多く当時ファンたちからは黒歴史扱いにされた。
しかしSS版と一部共通の声優を用いたキャラクターの再現度は非常に高く、従来のゲームユーザーを楽しまそうと意図されたのは間違いない。豊富役の某声優の怪演も一部で有名である。
2019年6月28日、全4話をDVD1枚に収録したYU-NOゴールドディスクが発売された。
「VOICES」(第1話・第2話)
作詞 - 六ツ見純代 / 作曲・編曲 - 坂本昌之 / 歌 - 園崎未恵
「FACES」(第3話・第4話)
作詞 - 六ツ見純代 / 作曲・編曲 - 坂本昌之 / 歌 - 園崎未恵
本作はサウンドも秀逸でゲーム音楽史の中でも特筆に値する誉れ高い評価のものであったが、メインの作曲家であった梅本竜は2011年に惜しまれつつも逝去してしてしまった。
フルリメイク版はこの梅本の親友であったMAGES.の浅田誠が梅本の「まだYU-NOでやり残したことがある」という意思を継ぎ、企画・制作総指揮を行い実現されたものである。
本作は上記にあるようにゲーム業界屈指の神ゲーとして名高い作品であったが、菅野の生前、élfとの双方で権利関係の闘争があったのかは不明だが、まるで腫れ物同然の扱いで、2000年に一度Windowsに限定版として移植されたきりであり、現行ハードでは遊べない状態が続いていた。
élfでは版権の所在すら自社にあるかも不明で、開発者たちも既に去り作品を分かる人間が誰も在籍していないこと、菅野も逝去したこともあって、本作の扱いには困っており、過去も18年間もの間に何十社からもの移植の申し出を断って来た経緯だったが、浅田、志倉の迅速な働きにより、他社も版権の取得に動いていた最中、本作の版権はélfからMAGES.へと譲渡される運びとなり、キャラクターデザイ、声優などが一新されたフルリメイク版が制作された。
新たなキャラクターデザインは『アルトネリコ 世界の終わりで詩い続ける少女』などで知られる凪良
が担当した。
サウンドアレンジには生前、梅本の盟友で、オリジナルPC-98版BGMの作曲家の一人であった高見龍と、同じく梅本の盟友で、セガサターン版OP曲の作曲を担当したヨナオケイシがあたった。神奈江紀宏の曲はアレンジ版のBGMでは採用されず、代りにヨナオケイシによって新曲が作曲された。ゲーム中のサウンドはPC-98版オリジナルの物と、アレンジ版の両方が選べる。
PC-98版BGMの完全なるデジタル収録のために高見龍が協力し、エンジニアのせんたろうの手によって、実機の音源基盤の改造と中継回路の制作が行われ、作曲者の梅本竜が作曲を行っていた機種の音源ドライバーの設定、音量バランスに合わせた当時と全く同じサウンドが収録された。
アレンジ版も元の原曲の特徴を活かしながら豪華にする手法がとられオリジナルBGMとかかけ離れたものとはなっていない。
2014年12月28日、『コミックマーケット87』にて詳細を秘して新規プロジェクトであるとして一般に発表され、翌12月29日には、これがフルリメイク版であることが正式に表明された。
2015年9月19日、『東京ゲームショウ2015』にて、PS4/PSVita用ソフトとして、2016年2月18日に発売予定であるとされたが、のちに同年11月17日に延期されることを表明。しかし開発が7割まで進んだ段階で、さらなるクオリティアップが必要との判断に至り、全面的に作り変えられることが決定され、発売予定は2017年春に延期されることになった。
2017年3月16日に、PS4・PS Vitaにてフルリメイク版が発売。
本作はポイント&クリック式のADVであるが、オリジナル版ではその古典的なルールの通り画面上のオブジェクトを隈なく調べる必要があったが、リメイク版では菅野が『探偵紳士シリーズ』で考案したプルーフターゲットシステムが採用され、画面のどこを調べるべきかクリックするポイントが予め表示されるようになっている。テキストが尽きたクリックポイントも灰色に表示されるようになっており、画面の探索の際にフラグ立てに迷うことが無いように配慮されている。これによりSS版よりも遥かに攻略難易度の低減が施された。
石棺のロジックパズルの回答を表示する機能もオプションで追加。Switch版では更なる操作性の改良が図られ、次にどこに行くべきか、アイテムがどこで得られ、どこで使うべきかナビゲーションするヒント機能もオプションで搭載。これら豊富な補助機能によってプレイ時間は従来の10時間以上短縮されたと言われている。
しかしゲームを進めることには然程関係のない、お遊び的に散りばめられたお巫山戯の小ネタが簡単に見つけやすくなってしまい、ゲーム的な面白みが減ったともいえる。
初回封入特典にはPC-98版を再現した本作がダウンロードして遊べるDLCカードが付き。DL出来る期限は当初、発売日から1年後の2018年3月15日までだったが、この期限以降もDLできるよう変更されており期限はおそらく無期限だと思われる。尚、完全移植ではなく、フルリメイク版と同様の現在の倫理基準と家庭用に合わせた修正が行われている。またSS版で変更された演出や付け加えられたテキスト、PC-98版SPディスクの追加シナリオは、この再現版には加えられていない。
2019年3月14日にはNintendo Switch版が発売。攻初回限定特典には8ビット風アクションゲーム、ファミコレACT『ユーノの大冒険』ダウンロードコード&パッケージセット(説明書付き)が付属。
2019年10月1日より、スパイク・チュンソフトからSteam版が配信。日本語対応で国内での購入も可能である。
Steam版はSwitch版をベースとして開発されたと思われる。Switch版と同様にプロローグからプルーフターゲットシステムで遊ぶことが出来るようになった。演出面も口パク、目パチなどSwitch版よりも僅かであるがさらなる改善が施されている。
リフレクター・デバイスの表示方法が変更されており、「A.D.M.S」ボタンを選択しクリックして画面を切り替え、リフレクター・マップを展開しないと表示されなくなっている。これによりルートの分岐を直前に教える、リフレクター・デバイスのマッピングスイッチのクリスタルの点滅が確認し辛く不便になった。この変更は手間が増えストレスとなった印象である。
配信当初はAMD Radeon CPU搭載のPCで処理落ち、特定部分でのクラッシュが多発したが2度にわたる修正パッチで改善された。だが「Delete」キーでのテキストウィンドウの消去やロジックパズルの回答表示機能が働かないなど、まだバグが残されており修正待ちである。
価格は税抜5480円。2019年10月9日までの早期購入特典は定価の10%割引と、設定資料・イラストが掲載された56ページの電子書籍「オフィシャル・アート・ブック(言語は英語のみのpdf)」。
アートブックは購入しゲームのダウンロードと同時にSteamアプリのあるフォルダにダウンロードされるのだが、バグなのかSteamのアプリやサイト内から閲覧出来ない状態である。
閲覧方法についてはゲームのレビューに紹介しているものがあるので参考にされたし。
ISOに無料アプリ、パズルゲーム『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO2048』
も配信中。
OP主題歌「Recalling」
作詞・歌 - 佐々木恵梨 / 作曲 - 志倉千代丸 / 編曲 - 千葉”naotyu-”直樹
フルリメイク版に合わせ石田総司による主に亜由美ルートを描いたコミカライズ版が、コミッククリアで連載され全2巻が発売中。
主人公・有馬たくやは幼少期に母を亡くし、歴史学者である父も二ヶ月前に事故で亡くしてしまった。全てにおいて活力を失ってしまった高校生最後の夏休み。
ある日、用途不明の丸い鏡とガラス玉のはまった妙な物体が入った小包が届けられる。同梱されていた手紙には父親が生きていると思わせる内容が…?!
「今夜10時に、この物体を持って剣ノ岬(三角山)へ行け」
指示に従いその場へ向かうと、謎の女性が倒れていた。
そこには学園長と謎の転校生の姿も。
瞬間、地響きとともに光に包まれる…。並列世界を駆け巡る旅が、今、始まる。
先ず一般的なビジュアルノベルのような、物語が一切分岐しないルートを進む『プロローグ』から開始され、「見る」「話す」などのコマンドを選択し物語を進めることになる(Switch版、Steam版はプルーフターゲットシステムに変更された)。
たくやがRデバイスを入手するとプロローグは終わり、『現代編(現世編)』へと移行する。現代編ではA.D.M.Sを用い、5人いる主要ヒロインごとに、様々にシナリオが分岐していく並列世界を渡り歩いて行くことになる。A.D.M.Sは分岐する物語の筋道を視覚化し道しるべのように機能する。
目的は各分岐で発生する問題を解決し、そこに隠されている「宝珠」というアイテムを集め、失踪した父親を探し出すことである。
ヒロインたちとの恋愛要素は物語を彩るエピソードとなっている。バッドエンドやヒロインたちとのエピソードを終えると、カオスの矯正の発動により主人公の記憶は消し去られ、現代編のスタート地点の三角山に戻されるため、複数のヒロインたちとの恋愛も、様々な並列世界の中の1エピソードとして自然に受け入れられるようになっている。
画面中のオブジェクトや人物の上にカーソルを移動させると、アイコンの形状が「顔」「靴」などに変化し(フルリメイク版はプルーフターゲットシステムに変更)、たくやはアイコンの形状に応じた行動をとるが、このポイント&クリック方式で、物語が先に進められるようになる条件を探しながら、分岐する各ルートを探索していくことになる。
分岐ポイントは計41箇所。
「どこに移動したか」「特定のアイテムを使ったか」「どの選択肢を選んだか」「過去に何をしたか」によりフラグが立ち分岐する。エンディングは13種類あるが、異世界編に進むみ、ユーノとのエンディングを逢えるためには、この全てを見る必要はなくA.D.M.Sの達成率を100%にする必要もない。
全ての宝珠を揃える頃、分岐した物語は一つに収束し、ファンタジー世界を舞台とした、現代編の回答編にあたり最終章となる『異世界編(ユーノ編)』への移行が可能となる。異世界編ではまたプロローグのような、物語が分岐しないビジュアルノベル形式に戻り、ストーリーは一気にクライマックスへと進み核心へと終着する。
ユーノとのエンディングを終えたのちは現代編に戻ってプレイし、美月と香織を除く3人のヒロインとのエンディングを目指す。これらはオマケ的な小エピソードである。異世界編クリア後は「最強装備」という、全アイテムを所持した状態からのプレイが可能でオールクリアは容易である。
残されたA.D.M.Sのルートを全て踏破し、達成率が100%を達成すると、ある場所で「音楽室」への扉が開放されBGMが聴けるようになる。
プロローグ
(コマンド選択式ADV)
↓
現代編
(マルチストーリー・ザッピングADV)
亜由美ルート 澪ルート 美月ルート 香織ルート 神奈ルート
↓
異世界編
(コマンド選択式ADV)
↓
YU-NOエンド
(究極エンド)
↓
個別ハッピーエンド
(クリア後に現代編に戻って再プレイ)
亜由美エンド 澪エンド 神奈エンド
↓
A.D.M.Sのマップ達成率100%で、
「音楽室」への扉が開放される。
登場人物たちが暮らす太古の謎を秘めた海辺にある街、境町
に住む人々。
(原作を中心に記述。小説版、TVアニメ版も言及しているが、OVA版は声優以外は記述していない。)
Rデバイスの真の力を開放させたたくや。ところが広大に近づくどころか謎の異世界に投げ出されて…
(リメイク版)、長久友紀(TVアニメ版)
この項には本作のネタバレを過分に含んでいるので未プレーでの閲覧には注意が必要である。
現代から400年前、関ヶ原の合戦があり江戸幕府が成立。さらに800年前には源平の合戦があり鎌倉幕府が成立。さらに1200年前には、平安京への遷都。さらに1600年前には倭国大乱があり、巨大古墳が築かれ大和朝廷が確立していく時代になる。さらに400年遡っていくと西洋史でのイエス・キリストの誕生など、歴史を考える時、区切りが分かりやすい。歴史学界の権威であった恩師の学説に真っ向から否定する論文を発表し、所属する学会を追放された広大は、その変革の原因を考証し、証拠は何も無かったが高ノ天原(タカノアマハラ)民族という、この世界の常識では説明不可能な謎の渡来人が関わっていると仮説して、あてのない放浪を続けていた。調査のため境町を訪れた広大は、大学時代の旧知の友人、龍蔵寺幸三の紹介で広大の師の学派とは対立する、幸三の父親が理事長を務める境町学園で研究の場を得た。龍蔵寺の家でタペストリを見せられた広大は狂喜し、剣ノ岬がタペストリの塔を示唆するものであることを看破した。剣ノ岬の調査で知己を得た物理学者の今川由梨香に教えられて出会った、幻の民族の末裔ケイティアの存在により真理を得て仮説はついに立証された。広大はそこでさらなる自分の使命、歴史の真実を探求するという運命を自覚した(そもそも歴史の400年周期説がこの物語の着想の始まりとなったという。そこで菅野は400年ごとに人類に変革を与える存在を設定し、それに基づき本作の構想を練った)。
本作のフルリメイク版を原作にTVアニメ版が制作され2019年4月から放送された。
詳細は別記事「TVアニメ版この世の果てで恋を唄う少女YU-NO」を御覧ください。
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最終更新:2025/12/05(金) 19:00
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