朝鮮人民軍 単語

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チョウセンジンミングン

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朝鮮人民軍とは、朝鮮民主主義人民共和国北朝鮮)の軍隊である。

概要

朝鮮労働党の規約によれば、この軍隊は「朝鮮労働党革命的武装勢力」であり「すべての軍事生活活動を党の領導の下に行う」とされている。このことから、朝鮮人民軍の立場はアメリカのような「国家の軍隊」ではなく「党の軍隊」となっている

朝鮮人民軍は陸軍海軍空軍戦略軍・特殊作戦軍から構成されている。

旧式装備を数多く装備していることで知られているが、2010年に通常兵器を中心に新装備が数多く登場しているため、決して新兵器の導入を諦めているわけではないようだ。

また、弾道ミサイルは(大多連装ロケットを含む)短距離のものから大陸間弾道ミサイル潜水艦発射弾道ミサイルなどが登場しているが、発射試験も相当な頻度で実施されており、すでに核弾頭を搭載する力を得たと評価されている。

核兵器についても2006年から継続して核実験を実施しており、2017年9月には「水爆実験」を実施したこと北朝鮮自ら表している。回を重ねるごとに爆発力が大きくなっていることから、核兵器についても技術的進歩があるものと考えられている。

兵力は総数128万(うち、陸軍110万)であるが、予備役や社会安全軍(かつての内務軍)、労農衛軍を代表とする民間軍事組織などを考慮すると500万以上にまで膨れ上がる可性がある。

朝鮮人民軍の実態については、北朝鮮特有の閉鎖性や情報不足で詳細なことは判明していないが、近年の軍事演習軍事パレードなどの情報開や衛星画像による分析が進んでいるため、金正日時代と較するとかなりの割合で把握できる事柄が増加した。

以下に書くことは、その大半が米国日本韓国などの政府シンクタンクによる資料や北朝鮮軍事ウォッチャーによる推測・考察によるものである。ただし、記事の特性上、どうしても推測が多くなってしまうことはご容赦願いたい。

近年の朝鮮人民軍について

前述のとおり、朝鮮戦争当時の装備が現役であったり、中には第二次世界大戦で使われた兵器でさえ現役であることもしくない(例:ZiS-3戦車やML-20榴弾など)。これらの旧式兵器の整備状況については不明であるが、近年の演習射撃している様子が開されていることから、少なくとも必要最小限の整備はなされているようだ。このような旧式兵器軍相手にどれほど使い物になるかは不明だが、これらの兵器の使用に関する熟練度や地下トンネルなどの整備された地、新しい兵器と組み合わせて運用した場合は一定の脅威になると思われる(シリアリビア内戦では旧式装備も多く投入されているが、ある程度の効果を上げているので環境や使い方によって効果が生じる場合がある)。また、旧式といえども保有し続けることによって、数字上ではに対する優位性を維持し続けるという効果もある。

冷戦期に導入された兵器改修のものが大部分を占めていると思われるが、一定の力増備についてはある程度の独自改修を施している。また、これも前述のとおり通常兵器でも新装備が登場してきているため、「旧式装備だらけの董品しか保有していない軍隊」から脱却しつつあるようだ。

かつての同盟ソ連や、同じく現在も同盟関係である中華人民共和国から兵器を購入したり供与を受けることはあったが、冷戦終結後や核問題の勃発後は国連による制裁措置や慢性的な外貨不足といった経済的苦により新装備の大々的な導入は行われていない(最後に大規模に兵器を導入したのはカザフスタンから約40機のMiG-21bisを密輸した1999年2011年には中国からICBM用自走発射機に用いるWS51200トラック4台を密輸。)。

2020年現在でも国連の制裁措置をすり抜け武器の売買を継続しているようだが、北朝鮮側で諸外から新装備を入手したという情報把握されていない(ただし、2013年にはキューバからMig-21地対空ミサイルの密輸を試みて失敗した事例もあるため、実際は外から装備の入手に成功したケースが存在することも否定できない)

ただでさえ財政難や国家システム上の弊(例:硬直した組織性や現実離れした命、汚職、物資の横流し、いじめ問題など)、慢性的な食糧・燃料不足のおかげで、はたしてこの軍隊はまともに戦えるのかと極めて疑問視されているが、最近では自然災害COVID-19に関する社会情勢の悪化などで、その懸念は現在ではいっそう増大しつつある。(新装備の登場・普及=戦える・強い ということにはならない)

ただし、2020年前半の時点までは軍事演習を頻繁に行っている状況を踏まえると、一定の戦闘力を維持しているものと思われる。

朝鮮人民軍の装備の変遷

1948年の建当時には北朝鮮遺棄された旧大日本帝国海軍の装備を保有していたようだが、大量に供与されたソ連武器更新される形で朝鮮戦争戦前に退役するか、朝鮮戦争中に喪失したものと思われる。(仮に残存した場合でも、補給や整備の問題からい段階で退役したとみるのが妥当であろう)

朝鮮戦争ではソ連中国から供与された大量の兵器で武装し戦った。またPPsh-41等の一部銃火器は、朝鮮戦争前から北朝鮮でのライセンス生産が始まった。
朝鮮戦争時に米軍などの外製装備を鹵獲したようだが、これもごく一部を除いて現役にはないようだ。(2013年軍事パレードでは朝鮮少年団がM3短機関銃を持って行進したほか、近年に放送されたテレビドラマでは、M1ガーランドM1カービンM1919重機関銃を撃つアメリカ兵役の朝鮮人俳優が登場している)

朝鮮戦争終結後は内産業の復をしつつ、1960年代初頭までには歩兵の基本装備や対空砲、榴弾産化(ライセンス生産)を達成した。しかし、戦車装甲車レーダーミサイル等の重装備や最新兵器ソ連中国からの供与に頼り切りであった。
ソ連とは1956年フルシチョフによるスターリン批判以降は関係が悪化しており、いつ装備の供与が打ち切られてもおかしくない状況であった。事実1962年ソ連はイデオロギーの違いを理由に北朝鮮への軍事経済的援助の打ち切りを宣言。幸い64年には両国の関係は改善されるも、兵器の供給体制は安定には程遠いものであった。

62年の事件を受け、金日成1962年12月10日朝鮮労働党中央委員会第4期5次全員会議にて、「全人民の武装化」「全土の要塞化」「全軍幹部化」「全軍現代化」の4つのスローガンを元にする「四大軍事路線」を策定する。
このうち前者2つはそのままの意味であり、「全軍幹部化」は全兵士指揮官並の力を持つこと(つまり有事の際は予備役や一般人から徴兵された兵士を率いる指揮官の役を果たすこと)を意味する。
最後の「全軍現代化」は自経済力のみで必要な兵器を生産して軍を近代化させることを意味し、事実上の兵器開発であった。そしてこの四大軍事路線を機に、北朝鮮兵器開発が本格化することとなる。

1970年代頃より兵器開発の効果が現れ始め、1973年には中国製63式装甲兵員輸送車の独自発展であるVTT-3231976年にはT-62ライセンス生産である天馬戦車の配備が開始される。さらに歩兵装備もAKMのライセンス生産である68式小銃や、RPG-7ライセンス生産である7号発射管の生産が行われるなど、70年代末期までには多くの装備の自国生産化を了させた。

続く80年代から90年代初頭にはコピーライセンス生産がどだった自兵器を独自に改良・発展させた装備が開発・配備されることとなった。
また同時期にソ連との関係が良好化したことで、空軍を中心に近代兵器を導入。スカッドミサイル試験的に導入し、北朝鮮独自の弾道ミサイル開発の鏑矢になったとされる。
この時期に改革開放政策を推し進める中国と決別したとされ、以後中国製兵器的に輸入された事実は確認されていない。

90年代半ばからはソ連崩壊とそれに伴う経済の崩壊、いわゆる苦難の行軍によって軍に割ける力が大きく削がれる。さらに残った力も弾道ミサイル核爆弾開発に割かれたため、軍の近代化が事実上停止することになる。

しかし2000年代後半からは力がある程度回復した事により、軍の近代化が再開される。
以前は既存兵器コピーや独自改良が中心だったのに対し、今度は設計を自で行ったとされる兵器開発されることとなる。
特に正恩体制が発足した2010年代からは兵器開発が加速し、2010年代後半には大陸間弾道ミサイルのみならず、新戦車に新小銃戦略潜水艦ミサイルコルベットなどの通常兵器も新開発されることになる。

兵力

朝鮮人民軍(北朝鮮 韓国軍韓国 自衛隊日本
総兵力 128万人 約60万人 約23万人
予備役 約762万人 310万人 約0.9万人
陸上兵員 110万人 約46万人 約15万人(定数)
上兵員 約6万人 約7万人 約4.5万人(定数)
航空兵員 約11万人 約6.5万人 約4.7万人(定数)
戦車 3500両 約2220 約570両
要艦艇 約6隻 約23隻 約66隻
空母
ヘリ空母は除外
0隻 0隻 0隻
潜水艦 25隻 17隻 22隻
作戦 550機 640機 370機
第4世代戦闘機 約18機 約245機 290

陸軍

朝鮮人民軍の中核を構成している。110万の巨大兵力を抱えており、少なくとも10個以上の軍団を有している。部隊の大半は南北の非武装地帯(DMZ)周辺に集中して配備されている。

朝鮮戦争時は米軍が上陸するまで韓国軍を圧倒、一時は釜山まで追い詰めた。
この実績を重視しているためか、近年まで縦深攻撃理論に基づいた電撃戦による期決着を作戦計画として採用し続けていた。(現在は核戦力等の抑止力を使って戦争を回避するよう政府が動いているため、朝鮮人民軍にめられる役割も変わっているのではないかと推測されている)
また米国韓国日本と言った敵軍の作戦行動を妨・遅滞させる的でゲリラ戦にも力を入れており、そのため多種多様な特殊部隊を有する。

韓国防部は朝鮮人民軍陸軍要装備について、戦車4,300両、装甲車両2,500両、各種大砲8,600門、多連装ロケット5,500門と報告しているが、その大半は冷戦時代にソ連中国から導入したり自で生産した旧式装備が占めていると思われる。ただし、前述のとおり装備の近代化改修や新の導入が進んでいるようだ。

ソ連式の軍隊を参考にしたためか火や多連装ロケットの数が圧倒的に多いのが特徴であり、装甲車などをベースにした自走化もなされている(ただし、近年に世界で流行している装輪式の自走砲は未確認である)
特に「コクサン」自走砲や240mm多連装ロケットはカタロスペック上ではDMZ周辺地帯から発射するとソウル周辺に着弾するとも言われており、一定の脅威となっている。2010年代に入ってからは射程が大幅に延長され、誘導力を付与された300mm多連装ロケットKN-09」などが配備されたため、その脅威度は大幅に増加している。
また後述する空軍が旧式化著しく、制権の確保が望めないことから、各車両に携行式地対空ミサイルを装備するなど、防に力を入れているのも特徴。

一方で兵士の体格問題や規の乱れ、汚職の蔓延、訓練不足、整備不良などのに見えない所での軍の弱体化摘されており、有事の際は戦前の予想通りの戦闘力を発揮できるかが疑問視されている。

特に近年問題となっているのが、若い男性の減少である。苦難の行軍以降、1980年代から摘された栄養不足による民の貧弱な体格問題が一層深刻になっており、さらに出生率の低下や幼児死亡率の増加によって、兵士に適した体格を持つ若い男性が不足している。
朝鮮人民軍は男子徴兵基準を撤し、女子徴兵するなどして兵士数を維持しているものの、結婚適齢期の男女を数年以上軍に拘束して除隊後の保障すらい状況では、出生率の低下を更に招き将来ますます兵士数が減る事が必至となっている。

陸軍の主要な装備

戦車
装甲車・歩兵戦闘車
非装甲車両
自走砲
対空装備
対戦車装備
銃火器

海軍

いわゆる沿海軍であり、外洋での作戦力はほぼ皆無である。そのため、地上及び特殊部隊支援や沿防衛を主任務としている。土の特性上、海軍東海艦隊と西海艦隊に二分されており、全に独立している。

いずれもナジンフリゲートを旗艦としているとみられ(ただし、東海艦隊はアムノク級のコルベットに変更された可性がある)、潜水艦に沿潜水艦であり、工作員浸透用の潜水艦の数も多い。

韓国防部によれば、海軍水上戦闘艦艇430隻、潜水艦艇70隻、上陸艦艇250隻、支援艦艇40隻を保有しているが、いずれも小かつ旧式であり、に前述の主任務を中心としている様子には変わりないようだ。

ただし、北朝鮮自身は艦の旧式化を放置しているわけではなく、ゆっくりではあるが新艦の建造と配備を進めている。

北朝鮮海軍近代化事業

 主要な艦艇

フリゲート・コルベット
駆潜艇・哨戒艇
ミサイル艇
潜水艦
その他装備

このほか、P-4やP-6などの魚雷艇コマル級などのミサイル艇、チョンジン級級艇、チャホ級火力支援艇、ハンテ級揚陸艦、コンバン級ホバークラフトなどの支援艦が多数存在するが、紹介しきれないので割愛する。

空軍

正式名称は「航空軍及び反航空軍」であり、地対空ミサイルも運用している。

北朝鮮が保有する最新の戦闘機MiG-29で、MiG-23も運用していることから一定の脅威にはなっているが、数の上での力はMiG-21MiG-17と言った旧式機が占めている。

国連による制裁などで新機を導入できないため、密輸や部品の産化を図って機体の維持に苦心しているようだ。
かつてはIL-10、Yak-6、Mig-15を基にした産機の開発を試みたものの、技術力不足によるものかいずれも試作のみで終わっている。

また、Mig-21/23/29とAn-2の一部にはMFDを導入したグラスコックピット化や衛星通信アンテナを追加するなどの改修などを施されている(アンテナについてはMD-500もある機体が撃されている)。

北朝鮮軍機といえば機体上部が濃緑色で下部が青色というカラーリングが有名であるが、2014年以降は西側と同様のロービジ塗装に変更されている(MiG-23/29とSu-25のみ)。

今まで北朝鮮には(対地)精密誘導兵器が存在しないと思われていたが、2013年にはスーダンAGP-250衛星誘導式爆弾が輸出されていたことが判明したほか、2020年4月には北朝鮮空軍の順基地でSu-25用と思しきKh-25とKh-29L対地ミサイル金正恩委員長(当時)が視察する状況が開されたため、自軍でも精密誘導兵器を運用していることが判明した。

空軍の主要な装備

戦闘機
 
   攻撃機
 
 
 
 ヘリコプター
地対空ミサイル

このほか、Yak-18やCJ-5/6といった練習機や航空機用の兵装なども存在するが、紹介しきれないので割愛する。

  

※ 戦略軍と特殊作戦軍については後日に追加します(短距離弾道弾は戦略軍で紹介予定です)。

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