当記事では運営主体であるゼンショーとそのグループ会社についても説明する。
概要
2020年10月時点で国内に1,945店舗を構える日本最大の牛丼チェーン(吉野家は国内1,207店舗、松屋は同965店舗)。またゼンショーホールディングス全体での売上高は2位のすかいらーく、3位の日本マクドナルドを大きく引き離し、外食産業における国内最大手となっている。
吉野家の社員だった小川賢太郎が1982年に事業を始め、全店直営方式で「24時間365日営業」を売り物に事業規模を急拡大。また2005年に同業者の「なか卯」を買収したほか、企業買収によってファミリーレストラン・回転寿司・宅配ピザなどの他業種にも積極的に進出し(いくつかは撤退済)、経営の多角化を進めている。
牛丼チェーン店としては郊外型店舗を主軸としている点が特徴で、テーブル席を設けるなどファミリー層の呼び込みにも力を入れている。また食材の安全性アピールに余念がなく、2004年のBSE問題以来長らくアメリカ産牛肉を使用してこなかったが、2010年末から使用を再開している。他方で中国産食材の使用状況を取材された際に、吉野家・松屋などが具体的に回答するのを尻目に「回答できない」の一点張りで押し通すという一幕も見られた[1]。
各店舗ごとの従業員数を極限まで切り詰めて回しているため、「現代版蟹工船」と謳われるほど過酷な労働環境を従業員に強いる結果となっている。特に客数の少ない時間帯を従業員1人で乗り切らせる「ワンマンオペレーション」(ワンオペ)は従業員への負担が大きいのみならず強盗のリスクも大きく、たびたび問題点を指摘されていた。
2014年に手間のかかる新商品の導入と従業員の大量退職が重なり、一部店舗を緊急閉鎖。このことをきっかけとして劣悪な労働環境に注目が集まり、すき家やゼンショーはブラック企業として社会的な批判を浴びることになった。現在は労働環境の改善に取り組もうとしているものの、ブランドイメージの悪化は拭い去りがたく、また売り上げの減少により創業以来初の赤字を計上するなど、今後の経営には多くの困難が予想されている。
主なグループ店一覧
値段表記はすべて税込で、店内飲食の場合。サイズがあるメニューでは並盛の値段を表記する。
本項目に挙げているもの以外にも、スーパーマーケット・八百屋・花屋・老人ホーム・醤油の醸造所など多種多様な業態を運営している。2021年9月25日現在、ゼンショーのブランド一覧には45種類ものロゴがあるが、伝丸のように類似業態があっても一つしか掲載していないものもあるため、実際にはもっと多くの看板を持っている。
あなたがなんとなく通っていたそのお店も、実はゼンショーグループの一員かもしれない……
すき家
業態 | 店舗数 | 券売機 |
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牛丼・カレー | 1,940(2021年8月) | なし(ごく一部の店舗にあり) |
言わずと知れた主力で、ゼンショーHDの代名詞と言ってもいいだろう。
他牛丼チェーンと違い、上述のように幅広い層をターゲットにした展開を行っている。テーブル席の設置もそうだが、牛丼の種類も多く期間限定を除いても8種類ものトッピング牛丼を提供している。さらにこれらトッピングは他メニューにも組み合わせることが可能で、何通りものトッピングを楽しむことができる。
牛丼・カレーが看板ではあるがそれ以外にも定食や海鮮系の「まぐろたたき丼」、お子様セットである「すきすきセット」、ごはんを豆腐に変えた低カロリーメニュー「牛丼ライト」、さらにプリンなどのデザートも用意しており他のチェーンとは一線を画している。
さらに特徴的なメニューを上げるならば、牛丼の中盛(ごはん少なめ肉大盛)・メガ(特盛よりも多い)というものがある。他チェーンにはないメニュー(※ただし吉野家には後に超特盛が登場している)で、多様な腹具合のニーズにこたえている。さらに裏メニューとしてキング(ご飯が並の2.5倍、具は並の6倍)があり、マニュアルにも記載されている。
1号店は横浜の生麦駅前店で、すき家のどんぶりなどに横濱と書かれているのはそれにちなむもの。全店舗が直営店であり、フランチャイズはない。
主なメニューは、牛丼(400円)、とろ〜り3種のチーズ牛丼(550円)、おんたま(80円)、カレー(480円)。
牛丼チェーンとしての特徴
- 牛丼並盛の価格は税抜250円だったが、2014年8月27日から税抜270円に値上がりした。牛肉価格の高騰が理由とされているが、労働環境の改善コストを賄うためとの推測も見られる。その後さらに税込350円に値上がりし松屋の税込320円(沖縄店舗は税込290円)の方が安くなってしまったが、2021年9月28日に松屋が380円に値上げしたことにより再び大手3社では最安値となった。しかし12月23日にすき家が400円に値上げ、再び松屋の方が安くなった。
- 消費税10%への増税時に軽減税率が導入されたが、すき家では税込価格体系を維持。持ち帰り・店内とも同一価格となっている。また有料レジ袋義務化の際も規制対象外のバイオマスプラスチック配合レジ袋を採用し、引き続きレジ袋は無料となっている。
- すき家の公式サイトによると牛肉はアメリカ産・カナダ産を使用(以前はオーストラリア産も使用していた)。また米・レタス・キャベツ・たまご・たまねぎについては国産(一部キャベツは中国産・一部レタスは台湾産)と明記しているものの、それ以外の食材の産地は掲載されておらず不明な点も多い。なおウナギについてはゼンショーの公式サイトで中国産であると明記している。
- 店舗により品揃えが若干異なる。ほとんどの店舗は後払いだが、東十条三丁目店や新中野店などの一部店舗では食券による前払い制となっている(食券導入店舗では券売機で買えないメニューもあるため、そういう場合はレジ対応となる)。また一部の店舗にはドライブスルーがある。
- 大手牛丼チェーン3社の中でいち早くクレジットカードに対応したのがすき家。2018年春に全店導入完了。2022年には銀聯もタッチ決済を含めて対応した。ただしWAONは使えない
- 近年は後払い店舗でもセミセルフ式レジを導入している。注文や食後の伝票渡しまでは従来と同じだが、レジが自動精算機付きでお金の投入口・釣銭返却口などが客側設置となっており店員が現金に触れることなく会計を済ませられる。
- 2008年夏にすき家となか卯で「キン肉マン祭」と銘打ったコラボキャンペーンを開催。それまでキン肉マンの牛丼と言えば吉野家であったため驚きの声が上がった。後に作者のゆでたまごが明かしたところによると、元々はなか卯の牛丼をイメージして作中に登場させたが、アニメ化に際して吉野家からの依頼があったため変更。ところが色々あって吉野家との関係が冷却化したため、なか卯を子会社化したゼンショーと組むことになったという。
- TIGER&BUNNYの劇場版第2作より牛角に代わってロックバイソンのスポンサーとなっている。
- すき「屋」ではない。
なか卯
業態 | 店舗数 | 券売機 |
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丼・うどん | 464(2021年9月) | あり |
「丼ぶりと京風うどん」を看板としている。が、一応牛丼も売っている。
ただ、2010年をもって「牛丼(350円)」の販売は終了しており、以降は「和風牛丼(350円→290円)」を売っている。その後一時期は「牛すき丼(350円)」に差し替えられ、牛丼はすき家に一本化されるのではないかと噂された時期もあったが、今は「和風牛丼(380円)」に戻っている。
大阪・茨木市で創業。なか卯がゼンショーHDに入ったのは2006年のことだが、すき家とはメニュー展開が大きく異なることもあり現時点で統合するなどの話はない。
2020年夏よりようやくすき家と同じくクレジットカード決済が解禁となった(同時に大手QR決済・FeliCa決済も解禁)。
主なメニューは、親子丼(490円)、はいからうどん(290円)、和風牛丼(430円)。
ココス
業態 | 店舗数 |
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洋食ファミレス | 527(2021年9月) |
「おいしくたのしいレストラン」を掲げるファミリーレストラン。もともとはアメリカに展開していた店舗だが、ろびんふっど社(後のココスジャパン)が米ココス(当時はファーウェスト)のライセンスの下で日本国内にココスを展開した。今や日本の方が店舗数が多い。
主なメニューは、ココスのハンバーグ(150g)(649円)、ビーフハンバーグステーキ(759円)。
エルトリート
業態 | 店舗数 |
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メキシコ料理 | 2(2024年10月) |
ココス傘下のメキシコ料理店。スペイン語で小さな牡牛という意味を持つ。1号店は東京都江戸川区の西葛西店。
主なメニューは、ピカディーヨ・クリスピータコス(2個979円)。
ジョリーパスタ・オリーブの丘
業態 | 店舗数 |
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イタリア料理ファミレス | ジ296+オ36(2021年9月) |
パスタ・ピッツァを主とするファミリーレストラン。
山口県周南市で創業。もともとは株式会社サンデーサンとしてジョリーパスタの他にファミリーレストランのサンデーサンやフラカッソなどを展開していたが、ゼンショーHDのココスと被ってしまうため現在はもっぱらジョリーパスタの展開が主力になっている。
また、2011年3月にはオリーブの丘という新業態を開始(1号店は西東京市の保谷店)。イタリア料理ファミレスだが比較的低価格となっており、かつてはワンオーダーに289円の追加でピザの食べ放題もできた。
ジョリーパスタの主なメニューは、チーズリゾット(693円)、カルボナーラ(913円)、ピッツァ・マルゲリータ(693円)。オリーブの丘の主なメニューは、アーリオオーリオ・ペペロンチーノ(429円)、カルボナーラ(539円)、ボローニャドリア(539円)、ピッツァ・マルゲリータ(539円)。
華屋与兵衛
業態 | 店舗数 |
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和食ファミレス | 39(2021年9月) |
ファミレスという部類では珍しく和食専門となっており、デザート類もあんみつなど和甘味となっている。1号店は千葉県松戸市の新松戸店。
華屋与兵衛というのは握り寿司の始祖ともされる江戸時代の実在の人物なのだが、この華屋与兵衛という店に与兵衛本人は一切関係ないし、与兵衛が出した店ともかかわりはない。名前詐欺では?
また、ゼンショーHDの一員となってからはメニューの異なる「和食よへい」をオープンしたが、2021年2月末の川越神明店をもって全店舗閉店した。
主なメニューは、華屋寿司(寿司5貫649円)、鴨せいろ(979円)、熟成ひれかつ定食(2枚1,089円)。
ビッグボーイ・ヴィクトリアステーション
業態 | 店舗数 |
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ハンバーグ・ステーキファミレス | ビ195+ヴ32(2021年9月) |
アメリカ発祥で、ハンバーグやステーキなど肉系のメニューを主とするファミリーレストラン。ヴィクトリアステーションは北海道のみに展開しているが、かつて存在した同名のステーキ屋とは関係ないので注意。また、ステーキに特化したステーキビッグボーイ・ステーキヴィクトリアという店もある。
ヴィクトリアステーションは北海道では最も店舗数の多いレストランチェーン(ゼンショー調べ)。
かつてはミルキーウェイという同様の業態があったが、現在は消滅。
主なメニューは、手ごねハンバーグ(748円)、アンガス牛リブアイステーキ(1,518円)。
はま寿司
業態 | 店舗数 |
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回転寿司 | 546(2021年9月) |
一皿100円(税込110円)を掲げる回転寿司店(だが、注文制で回転していない店も多い)。
かつては平日に限り一皿90円(税込99円)を実施していたが、漁獲量減少・食材の高騰を受けて2022年6月に終了した。
珍しいゼンショーHD生え抜きで、2002年に栃木県足利市に1号店を出店。ほぼ全店舗にPepperが導入されている(一部店舗では使用していないことも)。「はま」とはすき家創業地の横浜や、海産物を扱うという意味で浜にかけている。
伝丸・壱鵠堂・天下一・伝蔵・らーめん無双・つけめんでんまる・嵐丸・太源・威風
業態 | 店舗数 |
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ラーメンなど | 伝丸74+壱鵠堂10+その他15(2021年9月) |
ラーメンは類似業態がかなり多い。ここでは代表して伝丸のみ紹介する(ゼンショーのブランド一覧にも伝丸だけが掲載されている)。
北海道味噌ラーメン系の店で、白味噌・赤味噌・濃厚味噌が選べる。ほかにも餃子定食やチャーハンなども取り扱っている。すき家と同様に全店舗にテーブル席が設置されており、グループでも入りやすいラーメン屋となっている。
主なメニューは、濃厚味噌らーめん(690円)、白味噌らーめん(640円)、赤味噌らーめん(640円)、旭川醤油らーめん(640円)。
久兵衛屋
業態 | 店舗数 |
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うどん・そば・しゃぶしゃぶ | 50(2021年9月) |
うどん・そばの比較的高級な業態。しゃぶしゃぶも扱っており、100分食べ放題を1,969円~で楽しめる。ほかにも天ぷらなどの揚げ物やほうとうなども扱っている。
主なメニューは、ざるそば(484円)、ざるうどん(429円)、天丼(649円)、極カレーライス(605円)、まぐろたたき丼(649円)、豚しゃぶ定食(1,309円)。
瀬戸うどん・たもん庵
業態 | 店舗数 |
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うどん・そば | 瀬13+た5(2021年9月) |
うどん・そばの大衆向け業態。どちらもメニュー内容は同じ(公式HPのメニューは同じ写真を使いまわしている)だが、瀬戸うどんよりもたもん庵の方が高価格に設定されている。
主なメニュー(瀬戸うどん/たもん庵 併記でない場合は同額)は、ぶっかけうどん(300円/400円)、釜揚げうどん(320円/420円)、ざるそば(350円/450円)、ざるうどん(300円/400円)、かけうどん(290円)、天丼(520円)、極カレーライス(520円)、まぐろたたき丼(520円)。
焼肉宝島・牛庵・熟成焼肉いちばん・焼肉キャンプ
業態 | 店舗数 |
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焼肉 | 宝32+牛7+熟58+キ3(2022年3月) |
焼肉宝島は「おいしさ・安さ・ボリューム」に力を入れており、牛庵や熟成焼肉いちばんよりも比較的低価格。100分の焼肉食べ放題を2,178円から行っており単品注文もできる。また、サラダとおかわり自由のごはん・スープ・ドリンクがついた1,000円台の定食メニューもある。以前は類似業態の焼肉倶楽部いちばんがあったが、熟成焼肉いちばんに転換された。
牛庵は「ぎゅあん」と読む。比較的高価格帯の店で、100分の焼肉食べ放題を2,838円から(ランチならメニューが絞られるが平日1,958円、土日2,178円から)行っている。もちろん単品注文もできる。
熟成焼肉いちばんは100分の焼肉食べ放題を2,948円から行っている。ここの食べ放題はデザートバーもある。
焼肉キャンプはキャンプをコンセプトにした店で、他とは毛色が異なる。店内は山小屋風で、キャンプ椅子の座席が用意されている。また焼肉以外にも飯盒で炊くごはんやニジマス焼きなども楽しめる。
焼肉宝島の主なメニューは、やわらかハラミ定食(肉120g1,089円)。その他については割愛する。
モリバコーヒー
業態 | 店舗数 |
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カフェ | 14(2021年9月) |
カフェ業態。「すべてのコーヒーをフェアトレードで」がモットー。2021年9月現在、首都圏に13店舗・名古屋に1店舗を展開している。
主なメニューは、キリマンジャロ(300円)、モリバブレンド(Rサイズ270円)。
かつ庵
業態 | 店舗数 |
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とんかつ | 54(2024年10月) |
とんかつなどの揚げ物を中心とした業態。同業他社の「松のや」「かつや」と同じくらいの価格設定になっている。とんかつとしては安価路線。
かつ丼の中盛は、すき家の牛丼中盛と同じく、ごはん少なめ・かつ大きめ。
主なメニューは、熟成ロースかつ定食(80g750円)、熟成ロースかつ丼(550円)、熟成ロースかつカレー(750円)。
ロッテリア・ゼッテリア
業態 | 店舗数 |
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ハンバーガー | ロ279+ゼ11(2024年10月) |
もともとはロッテのファストフード業態として創業したが、2023年4月にゼンショーが買収し子会社化した。
ゼンショー子会社化以降は「ゼッテリア」という新業態も出店している。
労働環境
以下の記述は「すき家」の労働環境改善に関する第三者委員会調査報告書(pdf)に基づく。
- 店舗で勤務したことのある社員のほとんどが24時間連続勤務(「回転」と称される)の経験を持ち、恒常的に月500時間以上労働する者や2週間家に帰れなかった者、3カ月に1回しか休みを取れないという者もいた。またアルバイトでも月400時間から500時間の勤務シフトを強いられているケースが見られた。36協定は形骸化しており、労働基準監督署からの是正勧告をたびたび受けていたが、改善されることはなかった。
- 労働時間当たりの売り上げを管理指標としているため、マネージャーが残業時間を過少申告するようクルーに命令したり、自らサービス残業をするといった事態が日常化している。また売り上げが少ない時間帯に実際には休ませないまま休憩時間を入れたことにして労働時間の圧縮を図り、指標を向上させる手法も多用されている。
- ワンオペ時には休憩がほとんど取れず、トイレにすら行けないこともある。またワンオペ時を狙った強盗事件が多発しており、2011年10月にはワンオペの順次解消が宣言されたものの、実際には解消されなかった。
- 店舗運営に責任を持つ社員は24時間電話に対応することを求められ、実際にたびたび電話があるため、プライベートの大幅な喪失を余儀なくされている。なお電話対応の時間は労働時間に含まれないためタダ働きとなる。
- 過労に起因する居眠り運転で社員が交通事故を起こすことも多く、2012年中だけで7件報告されている。
- 正社員のうち2010年入社組の3年以内離職率は47.6%だったが、翌2011年入社組は58.8%に悪化。また2012年入社組は2年以内離職率が前年までを上回る45.7%となっており、年々離職率が高くなっている。
ちなみに飲食業界におけるブラック企業として双璧を為すワタミと異なり、労働組合「ZEAN」が存在している。ユニオン・ショップ制を採っているため全社員が加入しており、アルバイトも8割近くが加入している。ただZEANは労使協調型の従順な組合のようで、労使協議会で長時間労働解消への申し入れが行われたことはないという。
なおZEAN結成前に残業代不払いを巡って従業員が左派系労組に駆け込み、労使紛争・裁判闘争に発展したことがある。ゼンショー側は労使協議に一切応じず、当該従業員がご飯を勝手に食べたとして刑事告訴するなどあらゆる手段を用いて対抗したが、結局どの紛争もゼンショーの敗訴または敗訴的和解に終わった。 この一連の事件を評価され、ゼンショーは2012年ブラック企業大賞において「ありえないで賞」を受賞した。 |
従業員の声と役員の認識
まったく回っていない現場があり、過労死してもおかしくないようなこの労務環境が現実にあるなかで、世界から飢餓と貧困を撲滅するため、日本一を走り続けるため、世界一を目指すためと、新入社員の数もろくに確保できていない状況で店舗を拡大していくのはもはや大義ではなく驕りであると思う。
意欲も低下、慢性的人員不足でおかしくなりそうです…会社を守っているので私たちのことも守ってください。
同上
第三者委員会委員
「(過重労働問題への対応として)営業時間を短縮するという話は?」
経営幹部A
「ない。考えたこともない。営業時間を短縮したからといって評価が下がるとか、地位が落ちるとか、そういう話ではない。守るべきものとして、24時間365日というのはあり、苦しいからやめるというのは一度も言ったことはない。絶対に閉めない、というのがあり、そこで労働基準監督署とか労働環境を考えたことはない」委員
「部下の仕事に対する姿勢や考え方はどうか?自分と比べても」
経営幹部B
「レベルが低いと思う。エリア・マネージャーはもっと店を好きになってほしい。今きっと嫌いなのだと思う」同上
委員
「ゼンショーホールディングス社取締役会で過労死リスクについて議論したことは?」
経営幹部C
「ない」同上
その後
ゼンショーHDはこれらの問題を受け、2014年4月17日には「『すき家』の職場環境改善に向けた施策について」と題したニュースリリースを発表した。
この発表の中で、
殊に本年2月から3月にかけて、流通産業全体に及ぶ折からの人手不足と、仕込みにこれまで以上の手間を要する新商品の導入にともない、『すき家』従業員の負担増が深刻化した
と、当時の期間限定メニューである牛すき鍋定食の提供開始が従業員の負担増につながり、店舗の一時閉店の遠因になったことを認めている。また、すき家を全国7つに地域分社化して労働環境改善策を講じるとした。
さらに2014年9月30日には「「すき家」の労働環境改善に向けた改革の進捗について」と題したニュースリリースを発表。このリリースでは以下の通り、深夜営業休止を実施するとした内容が発表された。
- 2014年9月30日現在で24時間営業を実施している店舗は1843店舗ある。
- そのうち589店舗は十分な人員を確保し、深夜における勤務体制を確立した上で同年10月1日以降も24時間営業を継続する。
- ワンオペが完全に解消できない店舗の内、87店舗は曜日によって深夜営業を休止する。
- その他の1167店は全日において深夜営業を休止する。
- 深夜営業休止店舗では機械警備を導入し、防犯体制を強化する。
その後、労働環境を改善することで人手不足を解消、2016年12月には深夜営業を休止している店舗は127店まで縮小し、休止していた約9割の店舗で深夜営業を再開している。
創業者・小川賢太郎
すき家・ゼンショーの生みの親である小川賢太郎は1948年に石川県で生まれた。
都立新宿高校から東京大学に進学し、全共闘の左翼活動家として政治活動に明け暮れたのち中退。底辺からの社会主義革命を目指して港湾労働者(ただし比較的大きな荷役会社の正社員)となり、労働組合を率いて運動を続けていたが、ベトナム戦争終結を機に社会主義に見切りを付け、右派に転向した。
中小企業診断士の資格を得て1978年に吉野家に就職。店舗勤務を経てすぐに本部に回され、銀行との交渉を任されるようになった。1980年に吉野家が事実上倒産すると、大株主の新橋商事が立ち上げた外食企業に企画室長として引き抜かれたものの、次第に意思決定の遅さに不満を覚えるようになっていった。
そこで1982年6月に数人の部下を引き連れて独立、「外食産業世界一になり地上から飢餓と貧困をなくす」という壮大な目標を掲げ、弁当屋を開業した。これがゼンショーの始まりである。後により単純でチェーン展開しやすいとの理由で牛丼屋主体にシフト。この判断は当たり、小川は日本の外食産業のトップへと登り詰めた[2][3]。
フォーブスによると、2014年時点で小川の保有資産は約546億円に上り、日本では長者番付の第48位にランクインしている。かつて社会主義革命による平等な社会の実現と労働者の救済を目指した男が、労働者を収奪するブラック企業の経営者となり巨万の富を築いたという皮肉な物語として、しばしば語り草となっている。
なおブラック企業経営者の代表格としてしばしば名前を挙げられるワタミグループの創業者・渡邉美樹とは経歴上の共通点が多く、どちらも「ブルーカラー労働者(沖仲仕/トラックドライバー)を経て大手外食チェーンで働き(吉野家社員/つぼ八フランチャイズ店長)、その時のノウハウを元手に独立し、壮大な夢や理想(地上から飢餓と貧困をなくす/地球上で一番たくさんのありがとうを集める)を語って拡大路線を突き進み外食産業の成功者となったものの、やがて収奪的な労働環境が明るみに出て社会的な批判を浴びる」という経緯を辿っている。
政治献金
大企業としてはごく当然とも言えるが、政治献金を通じて政界とのパイプを構築している。自民党の政治資金団体である国民政治協会にゼンショーとして2010年には100万円[4]、2011年・2012年には各150万円を寄付した[5][6]。
また経営幹部を介して自民党の村井英樹衆議院議員(埼玉1区選出、当選1回)に積極的な政治献金を行っており、2012年3月に村井が支部長を務める自民党埼玉1区支部に小川社長と夫人の名義で計300万円を寄付したほか[7]、総選挙直前の同年11月には村井の後援会に社長夫妻とゼンショー常務取締役、ゼンショーの100%子会社「はま寿司」社長の4人で計500万円を献金している[8]。
なお村井は2014年8月現在、労働問題などを取り扱う衆議院厚生労働委員会で委員を務めている。
関連動画
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- すき家「もうワンオペやめます」の本気度
関連項目
丼物のファーストフードチェーン店 |
---|
すき家 - 吉野家 - 松屋 - なか卯 - かつや - てんや |
外部リンク
脚注
- *牛丼大手5社を徹底検証! 中国産食品の危険な実態 使用度が高い食材は… (1/2ページ) - 政治・社会 - ZAKZAK
- *ゼンショーが抱く、あまりにも壮大な夢 | インタビュー | 東洋経済オンライン
- *すき家 小川賢太郎社長が語った「外食日本一への道」 ビジネス最前線 東大中退後、吉野家時代を経て33歳で創業 | 経済の死角 | 現代ビジネス [講談社]
- *一般財団法人国民政治協会2010年政治資金収支報告書(pdf)12頁。
- *一般財団法人国民政治協会2011年政治資金収支報告書(pdf)11頁。
- *一般財団法人国民政治協会2012年政治資金収支報告書(pdf)12頁。
- *自由民主党埼玉県第一選挙区支部2012年政治資金収支報告書(pdf)6頁。
- *英友会2012年政治資金収支報告書(pdf)3頁。
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