ジャパンカップ(Japan Cup)とは各種スポーツの大会名である。
国名を使用することは日本の威信にも関わるため、国内のトップクラスの大会に位置することが多い。
スポーツ以外にも、コンテストやスポーツを題材にしたゲームに使用される場合もある。
この記事では競馬、特に芝のジャパンカップについて記述する。
スポーツ | その他 | |
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ジャパンカップ(競馬)
国際招待GI競走
ジャパンカップ
JAPAN CUP
GI・東京競馬場・芝2400m
2009年ジャパンカップ。
左から、オウケンブルースリ(2着)、レッドディザイア(3着)、ウオッカ(優勝)。
ジャパンカップとは、毎年11月下旬頃に東京競馬場で開催される国際招待GI競走である。略称は「JC」。
沿革
1970年代後半から日本の競馬界で提唱された「海外に通用する強い馬を日本で作り上げる」スローガンの一環として、1981年にクモハタ記念を改名して創設されたレース[1]。施行条件は東京優駿(日本ダービー)や優駿牝馬(オークス)と同じ東京2400mに設定されている。ただし、東京優駿や優駿牝馬が東京2400mとなってから一貫して同条件で開催されている[2]のに対し、JCは2002年に中山2200mで代替開催されたことがある。
日本では1年の総決算として行われる有馬記念がギネスブックにも掲載される世界で最も馬券の売れるレースとして知られているが、レースレーティングによる評価では本競走の方が上で、2018年のランキングでは世界トップ10レースの1つとされている(有馬記念は13位)。日本のGIレースとしては歴史は浅い方に入るものの、成立の由来故か八大競走と同格の扱いを受けており、年末の表彰を受けるために「勝たなければならない競走」の一つとも認識されている。
創立当初は極東での開催ということもあり参戦外国馬の面子は一線級とは言いにくいものだった。しかし、日本国内では一線級の日本馬が、そうした外国の一流とは言い難い馬にすら完敗を喫することもあり、(言い方は悪いが)丁度よい稼ぎ場として来日馬は年々豪華になっていった。何しろ優勝賞金は世界的にも破格、かつ遠征費用はJRA持ちなのである。欧米各国の主要GIが軒並み終了してオフシーズンに入るのも大きかった。80年代後半~90年代にかけては、欧州の凱旋門賞馬、北米のブリーダーズカップターフ馬、オセアニアのメルボルンCやコックスプレートの優勝馬などが続々と参戦。参戦国の数は欧米のトップレースをも上回り「競馬のオリンピック」と称された。1989年にはニュージーランドの牝馬ホーリックスによって、当時の芝2400mの世界レコードタイム2分22秒2が記録されている。
第一回開催における日本勢の敗北(最高順位5着)は「向こう10年は日本馬は勝てないのでは」と当時の日本競馬サークルを悲観させたが、同時に国際競走への意欲を大いに搔き立てることになった。3年後、カツラギエースが死んだふりで押し切り勝ちを決め、その翌年には「皇帝」シンボリルドルフも勝利。しかしそれからしばらくは、ルドルフの息子・トウカイテイオーが勝利するまで長く海外勢の後塵を拝することになる。90年代後半以降は、様々な外国産種牡馬の導入や、調教技術の発達によって、日本馬も外国馬と互角の戦いを見せるようになっていき、そして2001年にはついに日本馬が掲示板を独占するまでになった。東京競馬場が改修された2003年以降、3着以内に入った外国馬は2005年の1着アルカセットと2006年11頭立て3着のウィジャボードのみとなっている。
秋のオールカマー同様に地方所属馬にも創設当初から門戸が開かれている数少ない芝レースでもあり、1985年には船橋所属のロツキータイガーがシンボリルドルフの2着に食らいつく活躍を見せた。2004年には道営所属のコスモバルクがゼンノロブロイの2着とこちらも地方馬最先着タイに入線、経営難にあえいでいたホッカイドウ競馬の立て直しに大きく貢献している。
1999年から世界の超一流レースを集めて順位に応じたポイントの合計で競うワールドレーシングチャンピオンシップの1つとされた(ただし2005年の開催を最後に現在まで開催されていない)。
2002年は東京競馬場改修工事のため中山競馬場芝2200mで開催されている。
2013年にジェンティルドンナが競走馬として初めて連覇を達成した。
2014年はスイスの高級時計メーカーであり、諸外国の主要な国際GIの公式計時を務めているロンジン(LONGINES)と提携、「ジャパン・オータムインターナショナル ロンジン賞」として施行された。
2023年にはロンジンワールドベストレースを受賞した。ロンジンワールドベストレースは年間を通じて最もレースレーティングが高かったレースに贈られる賞なのだが、レースレーティングの計算対象となった上位4頭が全て日本調教馬であったことを考えれば、JRAが提唱してきた「世界に通用する強い馬づくり」が実を結ぶ事となったと言えるだろう。
なお、サウジアラビアのキングアブドゥルアジーズ競馬場において、毎年「ジャパンカップ」と名付けられたレースが開催されている。1999年にサウジアラビアロイヤルカップ東京ハイジャンプが行われたことを発端とし、その後幾度か対象レースを変えつつ、現在は2歳GIIIサウジアラビアロイヤルカップと優勝杯の交換を行っている事による。
そしてJC終了後は京都競馬場にてGIII京阪杯が開催され、JCデーは締めくくられる。……が、ダービー・デーと同じく日曜日は年度によるが薄暮開催の金沢・盛岡など、ナイターのばんえい・佐賀・高知といった地方競馬があるので、馬券師達はJCで負けた分を取り戻すべく最後の勝負に出るのである。特に同日はナイター関連の重賞が絡む為、地方馬には負けられない勝負が続く。
ジャパンよいとこ、一度はおいで…
2000年代の後半から、徐々に海外の一流馬が集まりにくい状態になっており、当初の創立目的が有名無実化しつつあることが指摘されている。理由としては以下のような点が挙げられる。
- 受け入れ体制が煩雑だった:来日した外国馬は、まず千葉県・競馬学校で数日間の検疫を受けてから、再び東京競馬場へ移動しなければならず、レース直前に満足な調整を行うことが難しい。敗北した海外陣営のほとんどが敗因に「輸送疲れ」を挙げる原因になっている。
- 帯同馬が出走できるレースが限られている:馬は元来群れで生きる生物であるため、遠征に際してはコンディションを保つパートナーとなる帯同馬を連れて行くのが通例である。当然その分金がかかるので、できるなら帯同馬も別のレースに出走させ、あわよくば遠征代をペイしたいところだが、その出走先がないのだ。
- 国による馬場の違い:パワー重視の荒れた芝コースで行われる欧州とも、スピード重視の乾いたダートコース主体のアメリカとも異なり、JCはスピード重視の整地された芝コースで行われる。日本馬のレベルが低かった過去なら地力で押し切る外国馬も多かったのだが、現在では日本コースへの適性がないとキツイ。
- 日本馬が強くなった:先述の通り。かつては外国で活躍した馬が日本で種牡馬入りする際、ちょうどよいお披露目&引退レースとしてJCに出場することもあったのだが、最近ではそれもなくなった。
- 各国競走の整備による選択肢の増加:米国ブリーダーズカップ、凱旋門賞ウィークエンド、英国チャンピオンズデー、香港国際競走、豪州メルボルンカップやコックスプレートなど、10月以降に開催される自国重賞や国際招待競走が整備され、わざわざ日本に行かなくても、馬に合わせた実績や賞金の上乗せプランが組めるようになった。
アーモンドアイがスーパーレコードを叩き出した2018年度は、掲示板内の馬でも例年であれば勝負になるタイムが出ていた。この高速決着が敬遠されてか、翌2019年はとうとう外国馬なしの開催になってしまった(この年の11月は隣国の香港で民主化デモが激化しており、その煽りを受けた感もあるが)。
2010年代以降のJRAは東京競馬場内に国際検疫厩舎を建設(2022年完成)し、賞金の増額と帯同馬にも開放されたレースを開設して対応に努めている。一方、よくファンから指摘される高速馬場については「国によって違いが出るのが当然」とのスタンスである。よく誤解されがちだが、競馬のコースは「日本がガラパゴス化している」のではなく「世界中でそれぞれ独自のコースが整備されている」のであり、JCだけのために特別な整備を行うのもそれはそれで不条理な話なので、JRAの判断も決して間違いではない。96年から01年ごろまでは欧州陣営からのクレームを受けてレース前に徹底して散水していたが、その程度では無駄だったということか。
- キャピタルステークス(3歳以上リステッド競走芝1600m):2001年より国際競走
- 一般競走(3歳以上2勝クラスダート1400m):2021年より国際競走
- 一般競走(3歳以上2勝クラス芝1600m):22年より国際競走
- シャングリラステークス(3歳以上3勝クラスダート1400m):2021年より国際競走
- ウェルカムステークス(3歳以上3勝クラス芝2000m):2021年より国際競走
2021年はオリエンタル賞(3歳以上2勝クラス芝2000m)も国際競走に指定されていたが、翌2022年は一般競走に変更になった。
世界の主な高額賞金レース(2024年)
2014年当時の1着賞金は2億5000万円と国内最高額、世界でも5番目の高額賞金レースだった。2015年以降はこれに5000万円上積みされて3億円となった。2022年は課題である外国馬誘致対策も兼ね、更に1億円上積みされて4億円となる。
海外ではさらなる高額賞金レースも創設されているものの、現在でも上位に位置している。
※各国の賞金は2024/2/25のもの(レートは2024年1月のもの)[3]
競走名 | 開催国 | 条件 | 1着賞金 |
---|---|---|---|
サウジカップ | ダ1800m | 1000万米ドル(約14.1億円) | |
ドバイワールドカップ | ダ2000m | 696万米ドル(約9.8億円) | |
ジ・エベレスト | 芝1200m | 700万豪ドル(約6.9億円) | |
ゴールデンイーグル | 芝1500m | 525万豪ドル(約5.1億円) | |
ジャパンカップ | 芝2400m | 5億円 | |
有馬記念 | 芝2500m | 5億円 | |
ドバイシーマクラシック | 芝2410m | 348万米ドル(約4.9億円) | |
凱旋門賞 | 芝2400m | 285.7万ユーロ(約4.5億円) | |
ブリーダーズカップ・クラシック | ダ10ハロン(約2012m) | 312万米ドル(約4.4億円) | |
ケンタッキーダービー | ダ10ハロン(約2012m) | 312万米ドル(約4.3億円) | |
メルボルンカップ | 芝3200m | 440万豪ドル(約4.2億円) | |
ドバイターフ | 芝1800m | 290万米ドル(約4.1億円) | |
香港カップ | 芝2000m | 2016万香ドル(約3.7億円) | |
ブリーダーズカップ・ターフ | 芝12ハロン(約2414m) | 208万米ドル(約2.9億円) | |
東京優駿(日本ダービー) | 芝2400m | 2億円 |
主な前走・前哨戦
出走登録を行った外国馬は基本的に出走可能だが、以下の指定国際競走の上位入賞馬には優先出走権が与えられる。キングジョージ6世&QESと凱旋門賞は2着馬まで、それ以外は優勝馬のみ。
格付はいずれもGIのため省略。
競走名 | 施行競馬場 | 施行距離 | 間隔 |
---|---|---|---|
キングジョージ6世&クイーンエリザベスステークス | アスコット競馬場 | 芝11f211y | 16週 |
凱旋門賞 | パリロンシャン競馬場 | 芝2400m | 8週 |
アイリッシュチャンピオンステークス | レパーズタウン競馬場 | 芝10f | 11週 |
バーデン大賞 | バーデンバーデン競馬場 | 芝2400m | 12週 |
アーリントンミリオンステークス | アーリントン競馬場 | 芝10f | 14週 |
ブリーダーズカップ・ターフ | 開催年により変動 | 芝12f | 4週 |
日本馬はレーティング110(牝馬は106)以上を獲得しているレーティング上位5頭に優先出走権が付与され、それ以降は「通算収得賞金」+「過去1年間の収得賞金」+「過去2年間のGI競走の収得賞金」の総計順に出走可能となる。
主な前哨戦として扱われるのは以下のレースだが、近年は海外遠征してからJCに戻ってくるというケースも増えている。1999年までは菊花賞が天皇賞(秋)よりもあとに開催されていたため菊花賞に出走する3歳馬にとっては厳しいスケジュールだったが[4]、2000年以降は菊花賞からでも参戦がしやすいスケジュールとなっている。
競走名 | 格付 | 施行競馬場 | 施行距離 | 間隔 |
---|---|---|---|---|
京都大賞典 | GII | 京都競馬場 | 芝2400m | 7週 |
秋華賞 | GI | 京都競馬場 | 芝2000m | 6週 |
菊花賞 | GI | 京都競馬場 | 芝3000m | 5週 |
天皇賞(秋) | GI | 東京競馬場 | 芝2000m | 4週 |
アルゼンチン共和国杯 | GII | 東京競馬場 | 芝2500m | 3週 |
歴代優勝馬
関連動画
関連静画
関連項目
古馬王道中長距離GI | |
大阪杯 - 天皇賞(春) - 宝塚記念 - 天皇賞(秋) - ジャパンカップ - 有馬記念 | |
競馬テンプレート |
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十大競走 | |
桜花賞 - 皐月賞 - 優駿牝馬 - 東京優駿 - 菊花賞 - 天皇賞(春) - 天皇賞(秋) - 有馬記念 | |
同格とされた競走 | |
---|---|
ジャパンカップ | |
ジャパンカップ創設後に八大競走に準じるとされた競走 | |
宝塚記念 - エリザベス女王杯 | |
競馬テンプレート |
脚注
- *『昭和56年度競馬番組編成方針等について』の[②重賞競走について]-[1.ジャパンカップ競走の新設について]において「……11月下旬に施行しているクモハタ記念の競走名を改め、ジャパンカップ競走とし、……」とされている。
- *東京優駿の第1回と第2回は東京競馬場の前身の目黒競馬場で開催されている。優駿牝馬は第6回までは関西での開催だった。
- *JRAは年始にフランスギャロが更新するレートで換算(24年は米ドルの場合1ドル=約141.40円)
- *天皇賞(秋)からは中3週だったのに対して菊花賞からは中1~2週だった。これが有馬記念だと古馬はジャパンカップから中3週、3歳馬は菊花賞から中5~6週と3歳馬有利で出走できた。旧日程で唯一日本調教馬として3歳でジャパンカップに優勝したエルコンドルパサーも、中2週の菊花賞からではなく中6週の毎日王冠から出走している。
- *ブエナビスタ(鞍上:クリストフ・スミヨン)1位入線後2着降着による繰り上がり。
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