TPPに関する風説とは、環太平洋戦略的経済連携協定(Trans-Pacific Partnership)に関する風説のことである。
2011年はTPPに関する風説の流布が大きなムーブメントとなった年であった。
特に、当大百科のTPPの記事にまでソースが不明確な風説がずっと掲載されていたのは、そのムーブメントの象徴であるといえよう。
しかも、そのTPPの記事が「要出典記事」となされたのにもかかわらず、このソース不明確な点が殆ど改善されなかったのは、まことに嘆かわしいと言わざるを得ない。
とはいえ、それらの風説がまかり通っていたという事実は後年において史実的に価値を持つのではないか?と愚考する。
であるから、それらの風説をTPPの記事からこの記事へと移して保存すべきだと考え、この記事を作成した次第である。
詳しくは、TPPの記事の11/12/23 09:06以前の編集履歴を閲覧されたし。
これらのうち、国会で議論されているのは 『2.市場アクセス(工業)』 『4.市場アクセス(農業)』が大部分で、その他の項目については、国会において議論はほとんどされていない。
『2.市場アクセス(工業)』により、輸出を1年間で0.2~0.3兆円増やしたい経済産業省と車業界・家電業界
VS
『4.市場アクセス(農業)』による、国内農業収益構造の崩壊を防ぎたい農林水産省と農家・農協
※これらはあくまで可能性として挙がっているものである。
ニュージーランド政府「TPPにそれほどのメリットがあるとは考えていない」
各国とも主張したい点と排除したい点が異なっており、当初の広範囲に渡る貿易自由化は達成しづらくなっている。
賛成派の政府関係者(野田総理大臣・藤村修官房長官など)は
「TPPの交渉の席に付くことと、TPPに参加することは別である。交渉が不利になったら離脱すればいい」
としているが、中野剛志准教授は
「交渉参加は国際常識では“婚約”、交渉参加は“結婚”を前提としたお付き合い。“婚約破棄”すると日米関係はグチャグチャ、世界中から信頼を失う」
「一旦交渉に参加したら、国際政治の慣例上(交渉から)出られない。これは国際常識。それなのに、(交渉内容に)何の情報もないまま入るのか?」としている。
実際に過去の様々国際交渉では、ごく僅かな譲歩・変更のみで当初の条文のまま締結されることがほとんどである。
賛成派で交渉のテーブルにつくことと、参加する事を分けている人は、答える必要がある。
藤村修官房長官は、記者会見で「米国議会にかける前の事前の手続きは幾つか常にあるようだ」と述べ、米政府が議会に承認を求める前に一定期間、協議を行うことを認めた。その上で、日本政府の対応について「米国議会、政府のことであり、われわれがどうこう想定することではない」と、事前協議には関与できないと指摘した。 日本が交渉参加を表明した場合、事前協議に加え、米議会の承認を得るまでに少なくとも90日間が必要とされる。(別の会見でも事前協議にどの程度要するか明確な見通しを示していない)
TPPは環太平洋の複数国で行われる国際自由貿易に関する条約であるが、2国間(1対1)で行われる国際自由貿易協定にFTAがある。そのため 『国名+国名FTA』 と呼ばれる。米韓FTAとは米国(アメリカ)・韓国間で締結された自由貿易協定である。
FTAは2国間で交渉が行われるので、TPPに比べてより細かい項目まで「コレはダメ、アレはダメ、それはOK」とすることができる。しかし韓国はこの米韓FTAで、様々な条文に塗りこまれたISD条項により現代の不平等条約とも言われる条項に合意した。(ただし、2011年10月時点で韓国国会での承認はまだ)
民主党の経済連携プロジェクトチームの資料で、ISD条項を入れたいとの旨が示されていた
理由は以下のとおり
「日本がアメリカで損害を受けたらアメリカ政府を訴えて損害賠償をもらばよい。日本が訴えられたら、正々堂々を裁判を受ければいい。」
参加の是非については、基本的に、党内の経済連携プロジェクトチーム内で議論されているが、役員の立場で賛成反対の数を巡り、争われている。樽床伸二・幹事長代行は「両論併記もある」という事を述べている。
慎重派は、同チーム顧問・山田正彦前農林水産大臣が、「政府に追加資料の提出を求めて議員討議を続けるべきだ」と主張している。
亀井静香代表「国家の基本は防衛と関税自主権だ。関税をゼロにするなんて、できもしない」「『開国すべきものはしている』という立場をとらなければ、経済の外交交渉はでき(ない)」
福島みずほ党首「環太平洋連携協定(TPP)、(ベトナムへの)原発輸出に前のめりの状況は暴走運転だ」
田中康夫代表「APECで参加表明しないことを国会で決議すべきだ」
松木謙公「食料の自給率という問題がある。昨年の3月くらいに、食料・農業・農村基本計画というものを作った。40%の食料自給率を、目標として50%に上げていこうということが決まった。食料の自給率をカロリーベースで量るというのは、良いか悪いかいろいろな議論があるが、一応のものさしということ。それが去年の7月に(参議院)選挙で負けて、その後急にTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)というのが出てくる。これは40%が13%になるような内容。あまりにも違う。」
さらにTPPへはラチェット規定が盛り込まれることも確実視されている。
これは米韓FTAにも盛り込まれている。
ラチェットとは自転車の車輪のように、片方向にしか回転しないラチェットレンチのことである。
つまり国際条約に基づいて、国内法や規制を緩和したら、いかなる理由があろうとも再度規制することができないので・ある。つまり自由化の一方通行にしか法改正を認めない。
農作物だけでなく、保険・医療・金融etc にも盛り込まれる可能性がある。
当然、ISD条項と併用して運用される。
国 民 「こんな話は聞いてない」 「私たちを騙したのね」 「こんなの絶対おかしいよ」
/人◕‿‿◕人\ 「嘘は言ってないよ。」「でも、都合の悪いことは言わないよ。」
/人◕‿‿◕人\ 「だって、聞かれなかったからね。」
/人◕‿‿◕人\ 「きみたちはいつもそうだ。」「君たちは聞こうとも、知ろうともしなかったくせに。騙されたという。」
詳しくは、TPP推進派と反対派のまとめの記事の11/11/25 23:26以前の編集履歴を閲覧されたし。
| No. | 項目 | 関係省庁により公表された試算 | 備考 及び 予想される実例 |
| 1 | 首席交渉官協議 | 試算なし | |
| 2 | 市場アクセス (工業) |
10年間で約2~3兆円のGDP増加が見込める(日経新聞)![]() |
経済産業省・内閣府 震災前の試算 例:日本がアメリカに輸出する車や家電の関税をなくす。(家電5.0%→0%) (自動車2.5%→0%) |
| 3 | 市場アクセス (繊維・衣料品) |
試算なし | |
| 4 | 市場アクセス (農業) |
11兆円の損害を受ける | 農家の戸別保証(バラマキ)に現在の8000億円から3兆円増額が必要 (農林水産省)例:米や農作物の関税を無くす。 BSE(狂牛病)・農薬残留値の検査基準を緩くする(非関税障壁の撤廃) (元に戻すのはラチェット規定があるので、困難) |
| 5 | 原産地規制 | 試算なし | 例:制度が簡素化される事で、事務合理化が進展する。農林水産品で、輸入原材料を用いた場合も、原産品と認める場合、TPP参加国以外から輸入されるおそれがある。 |
| 6 | 貿易円滑化 | 試算なし | 例:我が国が既に採用している、シングルウィンドウ等の先進的な制度が規定される場合は、簡素化が期待出来る。 |
| 7 | WTO・SPS(衛生植物検疫措置の適用に関する)協定 | 試算なし | 例:WTO・SPS協定上の権利義務の変更が求められるおそれがある。例えば,「措置の同等」と「地域主義」について,ルールが一律に適用されるおそれあり,個別案件ごとに科学的根拠に基づいて検討することが難しくなる。 |
| 8 | TBT(貿易の技術的障害) | 試算なし | 例:問題解決が加速化されるメリットがあるが、透明性について日米EPAで規定が無いため、我が国の制度変更が求められるおそれがある。個別分野では、遺伝子組み換え作物の表示の分野で問題が起きるおそれがある。 |
| 9 | 貿易救済措置(セーフガード措置) | 試算なし | 例:アンチダンピング措置が抑制のメリットがある。特定産品別のセーフガードを採用出来る可能性がある。TPP協定交渉参加国の二国間FTAでは,日米EPAと比べてセーフガード措置の発動が制約される内容となっており,同様の内容がTPP協定に盛り込まれることとなる場合には,関税の引き下げによる輸入増加が国内産業に被害を及ぼすのを防ぐためのセーフガード措置を発動できる条件が厳しくなる可能性があり,セーフガード措置も発動しにくくなる。 |
| 10 | 政府調達 | 試算なし | 〈政府調達〉海外企業に開放 日本も参入機会![]() 例:日本のインフラ輸出が期待出来る一方で、中小事業者は、「不透明な価格カルテル(談合)」が困難になるので、悪影響が懸念される。EPAで政府調達を入れていないマレーシアや十分でないベトナム、ブルネイでは新しい要求を出来る。結んでいないオーストラリア、ニュージーランドも同上。しかしP4協定、米豪FTA、米チリFTA、米ペルーFTAのように半分、1/3の水準もある。 |
| 11 | 知的財産権 | 試算なし | 例:ACTAと同じ水準なら、ブルネイ、マレーシア、ベトナムに対して、海賊版取り締まりをはかれる。現行の国内法とTPP参加国との整合性が認められない点では、特許猶予期間・商標登録・著作権登録の期間延長・著作権侵害について刑事手続き化・地理的表示がある。遺伝資源(バイオバイラシ―)について問題が起きる可能性がある。 |
| 12 | 競争政策 | 試算なし | 貿易・投資の自由化について、反トラスト法などの措置。例:ブルネイ、チリ、ベトナム、ニュージーランドでは政策当局間で協力が得られる。シンガポール、マレーシア、オーストラリアでも同様の効果が期待出来る。 |
| 13 | 越境サービス貿易 (クロスボーダー) |
試算なし | サービス貿易に対する無差別待遇、数量規制などのルール策定。 例:WTO・GATSの内国民待遇・最恵国待遇、数量規制・形態制限の禁止。これを越える医師等の個別の資格・免許については議論がなされていない模様。先進国は、技術・サービスについて競争力が高いので、途上国に対して強い。EPAで留保がついていた箇所は、国内法の改正が必要になる可能性も。仮に資格・免許について相互承認が求められる場合も同上。 |
| 14 | サービス (電気通信) |
試算なし | 例:途上国において、反競争的行為の禁止、相互接続の義務化、などが盛り込まれる場合、利益になる。 |
| 15 | サービス (一時入国、商用関係者の移動) |
試算なし | 交渉の対象者は専門家を含む商用関係者。単純労働者は議論対象外。 |
| 16 | サービス (金融) |
試算なし | 無差別原則等の基本ルールに加えて ①投資家・預金者・保険契約者保護のための措置。 ②金融システムの安定性確保のための措置。 が議論されている。 例:外資規制・再保険規制の自由化が盛り込まれた場合、ASEANのTPP交渉協定参加国には、有利になる。しかし、郵政・共済について求められる場合は、注意が必要。 |
| 17 | サービス (電子商取引e-commerce) |
試算なし | 例:現在、デジタル・プロダクトの定義の範囲、電子送信に対する関税をかけないことをどのように規定するかが対象になる。 |
| 18 | 投資 | 試算なし | 内外投資家の無差別原則、投資に関する紛争解決手続等。「国家と投資家の間の紛争解決手続」=投資家と投資受入れ国との間で紛争が起こった場合に、投資家が当該案件を国際仲裁に付託できる手続、が重要な論点になっている模様。 例:投資については、多国間条約がないので、多国間規律の策定につながる議論で、国益を反映出来る可能性。「国家と投資家の間の紛争解決手続」が採用された場合は、外国投資家から国際仲裁が提起される可能性。 |
| 19 | 環境 | 試算なし | 貿易や投資の促進の為に、環境基準を緩和しない。 環境規制を貿易障壁に利用しない事などが論点。 例:漁業補助金やサメの漁獲その他の漁業活動等に係る国内政策との整合性が問題にあがる可能性。 |
| 20 | 労働 | 試算なし | 貿易や投資の促進のために労働基準を緩和すべきでないこと等について定める。 ILO加盟国としての義務の確認、「労働基準の緩和の禁止」等の規定が盛り込まれる場合は、不当な競争によって日本における事業コストが相対的に上昇することを防ぐことが出来る。 |
| 21 | 制度的事項 | 試算なし | 協定の運用等について当事国間で協議等を行う「合同委員会」の設置やその権限等について定める。 |
| 22 | 紛争解決 | 試算なし | 協定の解釈の不一致等による締約国間の紛争を解決する際の手続きについて定める。 |
| 23 | 協力 | 試算なし | 協定の合意事項を履行するための国内体制が不十分な国に、技術支援や人材育成を行うこと等について定める。 |
| 24 | 横断的事項特別部会 | 試算なし | 複数の分野にまたがる規制や規則が、通商上の障害にならないよう、規定を設ける。 |
| 推進派 | 反対派 |
| TPPに入らなければ世界の流れに乗り遅れてしまう。 | TPPには世界GDP2位の中国、9位のインド、EUなどが入っていない。 GDP比でみると日米が9割を占めており、実質二国間のFTA・EPA状態である。 上記より、世界的な経済連携協定とは言いづらい。またTPPはアメリカを中心とするブロック経済の1つともいえるため、貿易自由化と単純にはいえない。 |
| TPPは、ASEAN構成国を含めたFTAAPになり、参加国が増えることで、現在参加していない中国もTPPをベースにしたルール作りを飲まざるを得なくなる。これは高いレベルの自由・法の支配を基盤とする先進国にとって有利である。 | ASEAN構成国の内、タイ・インドネシアが従う事は考えづらい。またAPEC構成国のロシア・中国が上海協力機構を結成しているのも考慮に入れていない。 |
| 自由貿易圏が今後作られていくのは確実であり、参加しなかった場合、日本が自由貿易によるメリットを享受出来なくなる可能性がある。 | TPP以外にもASEANを基にした経済圏や個別のFTA・EPA交渉による貿易が考えられる。 |
| 比較優位・劣位の法則、ヘクシャー・オリーンの定理に則って劣位産業をそのままに保護するのではなく、逆に労働と経営資源の移転を促進、助成するためにも参加すべき。 | 比較優位、ヘクシャーともに前提としている仮定と現実の状況とで大きな乖離があり、机上の空論に近く、主要なマクロ経済の教科書でも自由貿易推進の根拠にはなっていない。 参考文献「自由貿易の罠」 |
| ルールに納得が行かない場合、交渉から離脱すれば良い。 | 下記「TPPの交渉の席につく」参照 |
| 日本は少子化や景気の悪化でこれから内需は減っていく。だからTPPに参加すべきだ。 | 日本のこれらの問題は適切な景気刺激策を取れば大方解決できるものである。景気が悪いから子供が生まれないしデフレが加速する。 |
| アジアの需要を取り込むことができる。 | 通貨戦争と言われるような中で円は高止まりしており、数%関税がなくなったところで輸出を増やすことは難しい。 (例:ウォン安の影響のあるテレビの輸出等の消費財の輸出) そもそも日本の輸出の主力は円高に比較的強い工作機械やシリコンウエハー等の資本財である。 |
| グローバル化をして輸出を増やしていくことが大切であり、そのためにTPPに参加すべきだ。 | グローバリゼーションをいいものであると強調するが、先進国からしてみれば産業の空洞化、賃金の低下等デメリットが大きい。現にアメリカは国内産業の強化による雇用増加を目論んでいる。 また、グローバル化が極限まで進んだ韓国では平均時給でビックマックも買えなくなってしまったことを考慮すべきだ。 |
| 韓国は韓米FTAを締結している。貿易立国である日本も見習うべきだ。 | 米韓FTAは明らかな不平等条約であり、反面教師とすべきものである。 また、日本は輸出が2004年度GDP比13.36%で世界全体で見ても171位であり、韓国の2005年度42.5%、88位と比べても貿易立国とは単純にはいえない。 |
| 日米の安全保障政策についてのこじれ、普天間基地代替施設移設問題があるので、代償が必要。 | 日米の安全保障の強化が目的ならば他にいくらでも手はある。 また、 国防は自国のみでも十分行える状態で、そこに付随しての同盟があるべきである。(例:軍事費の増額、憲法の改正による自衛隊の国軍化) |
| 1.5%(農業)のために98.5%(農業以外の産業)が犠牲になってしまう。 | 問題を矮小化している。農業と工業だけの問題ではない。 むしろたかだかGDPで1%程度輸出を増やすために大多数の国民が犠牲になってしまって良いのか。 |
| 日本に有利なルールにするためにも交渉に早期に参加すべきである。 | 現与党に「外交」ができるとは思えない。ルール作りに参加しても、まともな交渉も出来ず日本に不利な内容になる可能性が高い。(例:世界的公約でCO225%削減、消費税5%UPを宣言) 2006年のP4協定から始まり現在の9カ国に増えるまで、数年がかりの交渉が行われているため、かなりの項目について条項が決定がされているはず。そんな中に今更日本にとって都合の良い項目をねじ込むのは無理である。 |
| 利権構造を外圧によって排除し、経済構造を変えることができる。 | 自国内の問題は自国で解決すべきであり、それを外国に頼るということは主権の放棄に他ならない。 |
| 経済連携協定を結んでいるにも関わらず、工業製品に対して高い関税が残っている場合がある(例えば、ベトナムの二輪車の関税は90%、乗用車の関税は83%である)。このような交渉態度と異なり、我が国がTPPで全ての品目について関税を撤廃するという質の高い協定を結ぶことができることを示せば、通商問題について、対外交渉力を向上させることが可能となる。 | 個々の関税は個別に解決すべきで、全面的な自由貿易は好ましくない。 |
| TPPでは、SPS協定上各国に要求される規律を変更することなく、透明性向上のために手続を細則化することが検討されている。またTBT(貿易の技術的障害に関する)協定については、基準の策定過程において相手国の利害関係者の参加を認めることや、一般からの重要なコメントへの 回答を開示することによる透明性の向上などが議論されている。もちろん、日本政府もTPP参加国からの意見を聴取することになるが、日本企業も貿易相手国の規制に対して意見を述べることが可能となる。これを反映するかどうかは各国の規制当局の判断や裁量によるものであり、意見を容れなければならないというものではない。 | WTO・SPS協定上の権利義務の変更が求められるおそれがある。 例えば,「措置の同等」と病害虫発生国であっても病害虫の発生していない地域において生産されれば輸入出来るとする「地域主義」について,ルールが一律に適用されるおそれがあるが,WTO・SPS協定に従って,個別案件毎に科学的根拠に基づいて慎重に検討することが難しくなる。 |
| アメリカは、TPPに参加しても豪州に対する砂糖の関税だけは維持する(他の国に対しては砂糖の関税は撤廃する)という交渉態度を採り、オーストラリアなどと対立している。 我が国がTPP加盟国全てに対し全ての農産物関税を撤廃するという交渉方針を採れば、TPPの質を高めることに貢献できる。 ガット・ウルグアイ・ ラウンド交渉で、生産者数が多く政治力が強い米だけを関税化の例外として救おうとしたことが、その代償としてのミニマム・アクセスの加重により米産業の衰退を招く一因となってしまったことがある。参加しなければ、TPPにおいても同じ代償を払う事になる。 二国間の経済連携協定交渉において、 農産物の例外扱いを要求すれば、相手国も農産物関税を維持しようとするだろう。日本の農産物輸出にとっては、我が国が米の関税を維持することは、人口減少時代を迎え国内市場が縮小相手国の関税を撤廃し、米の輸出によって農業を振興するという道を阻むことになる。アメリカもEUも多数の経済連携協定を締結しているが、農業補助金は一切変更していない。国内の農業補助金はTPP などの経済連携協定の対象ではない。 |
野菜類や果物ならまだしも米や小麦、豆やとうもろこし等は完全に規模が大きいほど有利で、限られた農地しか持てない日本の農業では太刀打ち出来ない。 |
| 現在の農産品の高関税は、農家にとっても集約化が起きないので強い農家になることを妨げる。 | コメやこんにゃくなど一部の農産品が突出して高い以外は、EUなどと比較しても日本の関税は取り立てて高いわけではない。 |
| アメリカやEUのように農業生産者に対して直接支払いという補助金を交付して生産量を維持すれば、生産者も不利益を受けない。水資源の保護、洪水の防止など農業が農産物生産以外に果たしている多面的機能も維持できる。 | アメリカやEUは途上国などに余った穀物を売りつけることで稼いでおり、そのようなことをされたせいでメキシコのとうもろこしは今大変な危機にある。日本もそのような倫理上問題のあることをすべきだろうか。 |
| 投資のホスト国というよりホーム国である日本にとっては、「特定措置の履行要求の禁止」は義務の加重ではなく、権利の拡充である。 日本企業が海外で投資をする際に、条件として現地合弁企業への技術移転や投資収益の日本への送金制限を課されないようにする国際ルールなどは、日本自身が積極的に求めていくべき事項である。 日本の海外直接投資残高の40.6%がTPP 参加9カ国に存在するので、それらの投資が保護される利益は大きい。 |
「特例措置」というものがある。現地政府が外資企業に賦課する義務のことで、原材料や部品に一定の比率で現地の国産品を使うことを義務付ける「ローカル・コンテント」が代表的である。 2009年にオバマ大統領が打ち出した「米国再生・再投資法」のバイ・アメリカン条項がある。これは米国の公共事業に使用する資材の一部に米国製品の使用を義務付けるもので、あからさまな保護主義として国際的な非難を浴びている。 その他の「特例措置」としては、マレーシアのブミプトラ政策のように外資系企業の役員や従業員に一定の比率で現地人の採用を義務付けるもの、中国で横行している外資系企業に設立認可の見返りとして先端技術の開示や知的財産権の移転を要求するものなどがある。 「特例措置」の履行要求の禁止で困るのは日本ではなく、むしろ米国やマレーシアである。 |
| アメリカ自身、NAFTA締結後にISD条項によって20件程度提訴されている。その教訓から、ISD条項を修正している。最近アメリカが締結したFTAでは、国家が正当な規制権限を行使した場合に、仲裁裁判で敗訴しないように投資協定の内容を改訂している。また日本は20以上の国とISD条項を結んでおり、それによる不利益を被っていない日本はISD条項を積極的に取り入れるべきである。これは双務条約であるので一方が不利益を被るものではない。またグーグル税など特定業種への規制は法学的には危険とされており、それに歯止めをかけるISD条項は必要である。 | 裁判には多額の無駄な費用がかかる。さらに裁判に必ず勝てるとも限らない。オーストラリアはISD条項に反対している。 |
| 現在のTPP協議では労働に関する規定について、合意が無い。また参加国のシンガポールと参加表明国のマレーシアは、地続きでシンガポールは単純労働者受け入れには厳しい。またブルネイも人口が35万人の小国で単純な移民受け入れは考えづらい。 | 労働力の移動の自由化が起きると、単純労働者が増加し、治安が悪化する。 |
| アメリカでは、労働や環境の基準が低い途上国から安い産品の輸入が行なわれることを、ソーシャル・ダンピング、あるいはエコ・ダンピングと言って非難する。 労働水準の引き下げをアメリカ政府が画策すれば、加盟国が共通の義務を負うというTPPという協定の性格から、アメリカの労働基準も低下するので矛盾する。 |
|
| 投資家や貿易商等のビジネスマンや技術者、専門家を除き、いわゆる単純働者がFTAで取り扱われることはない。労働組合の政治力が強く、またテロ対策を講じなければならないアメリカは単純労働の自由化には反対してきたし、 単純労働者の移動を自由化の対象とするとの情報もない。 | |
| 著作権法が厳しいとされるアメリカでもファンジンと呼ばれる同人文化はあり、一概に犯罪化・即摘発になるとはいえない。 | 著作権法が高いレベルに設定される場合、現在日本が大きく抱える同人市場にとって悪影響になる可能性がある。 |
| TPPの全容について政府は十分な説明を果たしていない。交渉内容の日本語化すら公式には発表されていない。協議内容の秘密主義はACTAの時と似ている。 | |
| エネルギー自給率が低い日本は、貿易に頼る事が前提である。食料自給率を語るのは、その点を無視している。世界全体では農産物が余っており、国内消費分を見ても輸入したものを廃棄している分がある。また一般に先進国は食糧危機の影響があっても買い付けが可能であり、影響を受けるのは農産物輸出国である途上国の国民である。実際パキスタンでは2008年食糧危機が起きた際、農家は輸出をはかり、その後食物を緊急輸入せざるを得なかった。 | 農産物の場合足りなくなったからといって他国にすぐに増産してもらうことは非常に困難であり、「戦略物資」として扱うことができる点も考慮すべきである。よって食料自給率改善は必要である。また、例え食糧危機時に買い付けができたとしてもそれは途上国の国民を苦しめることに他ならない。 |
| 食料自給率はカロリーベースでは約40%と言われているが、金額ベースで見ると、70%以上である。また95年度以降の市場改革による影響があったにも関わらず、自給率は大きく落ち込んではいない。また今後人口減少と高齢化によるカロリー需要の減少が予想される為、農業の雇用を増やすには外へ需要を求める事が必要。 | |
| 各国とも主力の農産物は違っており、単純に輸入障壁を無くしたからといって、日本の場合コメ産業に、影響があるとはいえない。また日本のコメ価格は中国と比べても近年は価格が近づいており、カリフォルニア米よりも4割安い。 | 農家の1戸当たりのヘクタール数は、日本を1とするとアメリカはEUは9倍、アメリカは109倍、オーストラリアは1000倍以上である。このような状態で輸入障壁を無くすと、農家へのダメージが大きい。 |
| 一度大幅な制度変更が起きた場合、その後後戻り不可能な状況になることがある。米国議会で新貿易法・スーパー301条が制定された後、日米構造協議で日本に取り入れられた大店立地法により、地方はシャッター街になり地域共同体は壊れた。環境・教育・医療といった社会的共通資本は壊してはならない。 |
詳しくは、ISD条項の記事の11/12/28 18:05以前の編集履歴を閲覧されたし。
簡単に定義するなら、「ある国の政府が外国企業、外国資本に対してのみ不当な差別を行った場合、当該企業がその差別によって受けた損害について相手国政府に対し賠償を求める際の手続き方法について定めた条約」ということである。
もっと簡単に訳すなら、「自由貿易協定を結んだから、あたしたち外国企業だけいじめないでね!いじめたら賠償請求しちゃうから!!」ということである。 (だいたいあってる)
これはアメリカ・カナダ・メキシコによる北米自由貿易協定(NAFTA:ナフタ)で導入された。
当然、米韓FTAにも導入されている。
ISD条項とは「投資家の紛争解決手続のための条項」であり、以下のような手続きが行われる。
反論:ISD条項は双方向に対して適応される条項であり、別にアメリカの投資家だけが使える条項ではない。例えばアメリカで日本の自動車だけを排斥するような制度が作られたら(こういう「日本の企業だけ」を狙い撃ちにした規制は過去に存在する。「スーパー301条」で検索して見よう)、トヨタやホンダはその事についてアメリカ政府を訴えることが出来る。そもそもISD条項の対象になるのは非関税障壁(外国企業を不当に差別するような制度や法律)に対してであり、「ただアメリカの企業が損をした」だけでは訴えても損害賠償は認められない。
反論:投資家の被害だけでなく、問題になっている制度が当該外国企業だけを差別しているのかどうか(非関税障壁であるかどうか)についても審議を行う。非関税障壁と認められなければ、どんなに当該企業が被害を受けていたとしても、損害賠償は認められない。
反論:原則は非公開だが、当事者双方が合意すれば審議内容を公開することも可能である。
反論:判例そのものに拘束されないが、実際のところ過去の判例を参考にして判例を出していることが多い(そっちの方が文句を言われにくいから)。そもそも、過去の判例に拘束されないという点は日本の裁判だって一緒である。(日本の裁判の判例は以降の判決に対し、一定の拘束力を持ってはいるが、「絶対に従わなければならない」ということではない)
反論:上訴は出来ないが、結果に不服があれば審議結果の取消を請求したり、再審を請求したりすることはできる。
反論:そもそもISD条項による賠償責任は「当事国の政府が外国企業だけを差別することに対しに外国企業を保護するため」に存在するので、その審議の内容に当事国の法律が適応されないのは「当たり前」である。もし当事国の法律が適応されるのなら、それは「仲裁を受ける一方だけの言い分を聞く」ということであり、これは審議そのものの公平性を欠く行為である。
この条項は治外法権的というそしりを受けている。
反論:ISD条項は外国政府の不当な差別から自国企業を守るために締結されるのだから、「治外法権的」な条項であるのは当然のことである。それにISD条項で行えるのはあくまでも「損害賠償請求」であり、その審議の結果に当事国の法律や制度を変える効力はない。
実例1
当時カナダの国内法では使用禁止されていなかった有害物質MMT含有の石油の輸入を輸入禁止した。しかし、有害性が立証されていなかったので、これは輸入規制だということになり、カナダに輸出したアメリカの石油会社Ethylが損害を被ったとしてアメリカの石油会社がカナダ政府を訴えた。
「投資家を損させた」と判断されたため、カナダ政府が有罪となり、上告がないため
有害物質を規制する法律の撤廃
カナダ政府がアメリカに石油会社に推定1000万ドルの賠償の支払い
が行われた
反論:そもそもこの規制は、MMTという物質が輸入国産問わず一般的な石油に広く含まれている物質であったのに、輸入石油に対してのみMMT含有規制を行い、国産石油に関しては規制を行わないという、典型的な非関税障壁と言える規制だった。そのため同じカナダのアルバータ州政府から「不当な差別法である」という提訴が行われており、カナダの最高裁にて「MMTは毒性が低く、有害物質として規制することはできない」という判断が行われ、違憲判決が出ていた。最高裁にて規制の違憲性が認められた以上、この規制は違憲な規制であると同時に外国企業だけを不当に差別する非関税障壁であり、ISD条項の対象として損害賠償が認められるのは当然のことである。
実例2
政府の許可を取った上で、メキシコの廃棄物会社から廃棄物処理の権利を買い取った。
その後、メキシコが地下水汚染を防ぐため、アメリカの廃棄物会社Metalcladの設置の許可を取り消した
埋め立て許可の取り消しにより、投資家が損をしたと判断されたため
メキシコ政府が、アメリカの埋め立て業者に1670万ドルの支払い
反論:当該会社はメキシコの法制度に基づき、正当な手続を経た上で廃棄物処理事業の許可を一旦得ていた。にもかかわらず、メキシコ政府は「地下水汚染の危険があり、地域住民の賛成が得られていない」という理由で一方的に許可を取り消した。もし地下水汚染の危険があり、住民の賛成を得る必要があるというのなら許可を与える段階であらかじめ告げておくべきことであり、一旦出した許可を後付けの理由で一方的に取り消すのは、例えその取消が正当なものであったとしても「外国企業に対する差別」と捉えられるのは仕方のないことである。要するに、許可を出す際にメキシコ政府側がミスをしたのだから、そのミスによって得た損害に対して賠償を請求して認められたとしても、それが「アメリカが一方的に有利な判決」とは言えないのである。
このような紛争件数が200件を超えている
反論:紛争件数が200件を超えていても、その全てがアメリカ有利の判決を受けたのではない(戦績はほぼ五分五分である)。もし紛争を減らしたいのなら、簡単に企業側が濫用できないような条項を加えれば無用な提訴を減らすことができる(審議にて損害賠償が認められなかった場合、企業側が裁判費用をすべて負担する等)
掲示板
急上昇ワード改
最終更新:2025/12/13(土) 17:00
最終更新:2025/12/13(土) 17:00
ウォッチリストに追加しました!
すでにウォッチリストに
入っています。
追加に失敗しました。
ほめた!
ほめるを取消しました。
ほめるに失敗しました。
ほめるの取消しに失敗しました。