佐々木譲(ささき じょう)とは、日本の小説家。本名は同じ字で「ゆずる」と読む。
概要
1950年生まれ、北海道夕張市出身。高卒で上京して職を転々としたあと、1979年にモトクロス小説『鉄騎兵、跳んだ』でオール讀物新人賞を受賞しデビュー。映画化もされたが、その後10年弱はサスペンスやホラー、ハードボイルドなどを書くもののいまいちパッとせず、集英社文庫コバルトシリーズ(後のコバルト文庫)で少女小説を書いたりもしていた。
1988年、第二次世界大戦を舞台にした冒険小説『ベルリン飛行指令』が「このミステリーがすごい!」4位、第100回直木賞候補となりブレイク。翌年発表の『エトロフ発緊急伝』で山本周五郎賞・日本推理作家協会賞・日本冒険小説協会大賞をトリプル受賞し名声を確立した。以降、90年代から00年代前半は第二次大戦を舞台にした冒険小説や、地元北海道を舞台にした歴史小説を中心に発表。1994年には『ストックホルムの密使』で日本冒険小説協会大賞を受賞。2002年には『武揚伝』で新田次郎文学賞を受賞した。
2004年、北海道警裏金事件からインスピレーションを得て、警察小説『うたう警官』を発表(文庫版で『笑う警官』に改題)。これが道警シリーズとしてシリーズ化されるとともに、活動の中心を主に北海道を舞台にした警察小説にシフトし、警察小説ブームを牽引する作家のひとりとなる。なお、道警の不祥事がきっかけで警察小説を書き始めたため、作中での道警の扱いはとことん悪い。
2006年、『制服捜査』で「このミス」2位。2008年、大作『警官の血』で「このミス」1位に輝き、19年ぶりに第138回直木賞にもノミネートされたが受賞は逃す。2010年、わりと地味な短編連作『廃墟に乞う』で第142回直木賞受賞。デビュー30年目での直木賞受賞は白石一郎に次いで歴代2位(当時)の記録であった。
現在は北海道中標津町に在住し、還暦を超えてなおコンスタントに作品を発表している。『隠蔽捜査』シリーズの今野敏とは、同じ新潮社から代表作を出していることもあり、警察小説のツートップ的に並べて紹介されることが多い。
2016年、第20回日本ミステリー文学大賞を受賞。その授賞式で編集者らへ向けて「SFを書きたい」と言い、2019年の『抵抗都市』からは本当にSF(主に改変歴史もの)を書き始めた。本人曰く「佐々木譲5.0」だそうで、1.0がデビュー時の青春小説、2.0が冒険小説・ハードボイルド、3.0が歴史・時代小説、4.0が警察小説ということだそうな。
初期から中期の作品群は一時品切れ・絶版が多かったが、『警官の血』で注目された2008年から、直木賞受賞後の2011年頃にかけて主立った作品が続々と復刊され、現在は多くが新品で入手できる。2021年現在はまた一部の作品が入手し辛くなってきてはいるが……。復刊されていない初期作品はAmazonマーケットプレイスなどで高値がついていることも。
作品リスト(刊行順)
小説
- 鉄騎兵、跳んだ (1980年、文藝春秋→1986年、徳間文庫→2010年、文春文庫)
- 振り返れば地平線 (1982年、CBSソニー出版→1986年、集英社文庫)
→ ラスト・ラン (2009年、ポプラ文庫) - あこがれは上海クルーズ (1984年、集英社文庫コバルトシリーズ→1997年、集英社ノベルス)
- 死の色の封印 (1984年、トクマノベルズ→1989年、徳間文庫)
- 真夜中の遠い彼方 (1984年、大和書房→1987年、集英社文庫→1992年、天山文庫)
→ 新宿のありふれた夜 (1996年、スコラ・ノベルズ[改題]→1997年、角川文庫) - そばにはいつもエンジェル (1984年、集英社文庫コバルトシリーズ→1997年、集英社ノベルス)
- いつか風が見ていた (1985年、CBSソニー出版)
→ タイム・アタック (1988年、集英社文庫[2編追加]) - 夜を急ぐ者よ (1986年、集英社→1990年、集英社文庫→2009年、ポプラ文庫→2010年、集英社文庫[改訂新版])
- ベイシティ恋急行 (1986年、集英社文庫コバルトシリーズ)
→ 湾岸道路は眠らない (1997年、集英社ノベルス) - 白い殺戮者 (1986年、トクマノベルズ→1991年、徳間文庫)
- 南の風にモーニン (1987年、CBSソニー出版→1991年、集英社文庫)
- 犬どもの栄光 (1987年、集英社→1990年、集英社文庫)
- きみの素敵なサクセス (1987年、集英社文庫)
- ベルリン飛行指令 (1988年、新潮社→1993年、新潮文庫)
- 仮借なき明日 (1989年、集英社→1992年、集英社文庫→2010年、集英社文庫[改訂新版])
- マンハッタンの美徳 (1989年、集英社文庫)
- エトロフ発緊急電 (1989年、新潮社→1994年、新潮文庫→2004年、双葉文庫)
- 五稜郭残党伝 (1991年、集英社→1994年、集英社文庫)
- 愚か者の盟約 (1991年、講談社→1993年、講談社文庫→2009年、ハヤカワ文庫)
- ハロウィンに消えた (1991年、日本経済新聞社→1995年、カドカワノベルズ→1996年、角川文庫)
- サンクスギビング・ママ (1992年、スイッチパブリッシング→1995年、新潮文庫→2008年、扶桑社文庫)
- 夜にその名を呼べば (1992年、早川書房→1995年、ハヤカワ文庫→2008年、ハヤカワ文庫[新装版])
- ネプチューンの迷宮 (1993年、毎日新聞社→1997年、新潮文庫→2001年、徳間文庫→2008年、扶桑社文庫→2011年、ポプラ文庫)
- きょうも舗道にすれちがう (1994年、中央公論新社→2000年、中公文庫)
- 勇士は還らず (1994年、朝日新聞社→1997年、朝日文庫→2011年、文春文庫)
- 雪よ荒野よ (1994年、集英社→1997年、集英社文庫)
- ストックホルムの密使 (1994年、新潮社→1997年、新潮文庫[上下巻])
- 昭南島に蘭ありや (1995年、中央公論新社→1998年、C★NOVELS→2001年、中公文庫[上下巻]→2008年、中公文庫[改版・上下巻])
- 飛ぶ想い (1995年、中央公論新社→2008年、扶桑社文庫)
- 北辰群盗録 (1996年、集英社→1999年、集英社文庫→2009年、徳間文庫→2022年、光文社文庫)
- 総督と呼ばれた男 (1997年、集英社→2000年、集英社文庫[上下巻])
- ワシントン封印工作 (1997年、新潮社→2000年、新潮文庫→2010年、文春文庫)
- ステージドアに踏み出せば (1998年、集英社→2002年、集英社文庫)
- 牙のある時間 (1998年、マガジンハウス→2000年、ハルキ文庫)
- 鷲と虎 (1998年、角川書店→2001年、角川文庫)
- 屈折率 (1999年、講談社→2003年、講談社文庫→2018年、光文社文庫)
- 武揚伝 (2001年、中央公論新社[上下巻]→2003年、中公文庫[全4巻]→2015年、中央公論新社[決定版・上中下巻]→2017年、中公文庫[決定版・上中下巻])
- 黒頭巾旋風録 (2002年、新潮社→2005年、新潮文庫→2011年、徳間文庫)
- 疾駆する夢 (2002年、小学館→2006年、小学館文庫[上下巻])
- 帰らざる荒野 (2003年、集英社→2006年、集英社文庫)
- くろふね (2003年、角川文庫→2008年、角川文庫)
- ユニット (2003年、文藝春秋→2005年、文春文庫→2023年、角川文庫)
- 天下城 (2004年、新潮社[上下巻]→2006年、新潮文庫[上下巻])
- うたう警官 (2004年、角川春樹事務所)
→ 笑う警官 (2007年、ハルキ文庫[改題]→2024年、ハルキ文庫[新装版]) ★ - 駿女 (2005年、中央公論新社→2008年、中公文庫)
- 制服捜査 (2006年、新潮社→2009年、新潮文庫)
- 警察庁から来た男 (2006年、角川春樹事務所→2008年、ハルキ文庫→2024年、ハルキ文庫[新装版]) ★
- 警官の血 (2007年、新潮社[上下巻]→2010年、新潮文庫[上下巻])
- 警官の紋章 (2008年、角川春樹事務所→2010年、ハルキ文庫→2024年、ハルキ文庫[新装版]) ★
- 暴雪圏 (2009年、新潮社→2011年、新潮文庫)
- 廃墟に乞う (2009年、文藝春秋→2012年、文春文庫)
- 巡査の休日 (2009年、角川春樹事務所→2011年、ハルキ文庫) ★
- 北帰行 (2010年、角川書店→2012年、角川文庫)
- カウントダウン (2010年、毎日新聞社→2013年、新潮文庫)
- 婢伝五稜郭 (2011年、朝日新聞出版→2013年、朝日文庫)
- 密売人 (2011年、角川春樹事務所→2013年、ハルキ文庫) ★
- 警官の条件 (2011年、新潮社→2014年、新潮文庫)
- 地層捜査 (2012年、文藝春秋→2014年、文春文庫)
- 回廊封鎖 (2012年、集英社→2015年、集英社文庫)
- 人質 (2012年、角川春樹事務所→2014年、ハルキ文庫) ★
- 代官山コールドケース (2013年、文藝春秋→2015年、文春文庫)
- 獅子の城塞 (2013年、新潮社→2016年、新潮文庫)
- 憂いなき街 (2014年、角川春樹事務所→2015年、ハルキ文庫) ★
- 砂の街路図 (2015年、小学館→2018年、小学館文庫)
- 犬の掟 (2015年、新潮社)
→ 警官の掟 (2018年、新潮文庫[改題]) - 沈黙法廷 (2016年、新潮社→2019年、新潮文庫)
- 真夏の雷管 道警・大通警察署 (2017年、角川春樹事務所→2019年、ハルキ文庫) ★
- 英龍伝 (2018年、毎日新聞出版→2020年、毎日文庫)
- 抵抗都市 (2019年、集英社→2022年、集英社文庫)
- 図書館の子 (2020年、光文社→2023年、光文社文庫)
- 降るがいい (2020年、河出書房新社→2024年、河出文庫)
- 雪に撃つ 道警・大通警察署 (2020年、角川春樹事務所→2022年、ハルキ文庫) ★
- 帝国の弔砲 (2021年、文藝春秋→2023年、文春文庫)
- 偽装同盟 (2021年、集英社)
- 裂けた明日 (2022年、新潮社)
- 闇の聖域 (2022年、KADOKAWA)
- 樹林の罠 道警・大通警察署 (2022年、角川春樹事務所) ★
- 時を追う者 (2023年、光文社)
- 警官の酒場 (2024年、角川春樹事務所) ★
- 左太夫伝 (2024年、毎日新聞出版)
ノンフィクション・その他
特記のないものはノンフィクション。
- 冒険者カストロ (2002年、集英社→2005年、集英社文庫)
- 幕臣たちと技術立国 江川英龍・中島三郎助・榎本武揚が追った夢 (2006年、集英社新書)
- わが夕張 わがエトロフ ルポ・エッセイ集 (2008年、北海道新聞社)
- 幻影シネマ館 (2008年、マガジンハウス) - 実在しない映画についてのコラム集
- サーカスが燃えた (2020年、角川春樹事務所) - 絵本
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関連項目
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