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これより先は動画の核心に迫る記述が書かれています。 未視聴者はネタバレの可能性がありますので閲覧する場合は注意が必要です。 |
この記事は、ゲーム実況者 軍師ミノル(はぁと)が『ファイアーエムブレム 風花雪月』において
学級や軍の指揮を取った際、志半ばに倒れてしまった者を記録するための記事である。
今作『風花雪月』では、前作『Echoes』の「ミラの歯車」とほぼ同じ、「天刻の拍動」というシステムが採用されている。
これは戦闘パート中に、将棋の「待った」のように、行動を過去の状態に巻き戻せるというお助け機能である。
しかも1マップにつき1回だけではなく数回~十数回、1手だけではなくマップ開始時点から現在の状態まで任意の場所に遡れるという強力な仕様になっている。
そのため、軍師ミノルはこれを活用しつつも、基本1マップにつき1回の使用に留めるなど、適度な縛りを設けてプレイしている。
だが死傷者が出た場合、行動をやり直しているとはいえキャラロストには違いない。なので、天刻の拍動を使用しなかった場合の撤退者・戦死者に加え、キャラロストした際の天刻使用者についても列挙していく。
フォドラの地で新任教師となった軍師ミノル。男につられて金鹿の学級(ヒルシュクラッセ)を受け持った彼だったが、その采配の第一犠牲者もまた男キャラとなった。
教師ミノルはこの時期、模擬戦や賊の討伐を難なく切り抜け、生徒の育成に本格的に着手。その一環として、本来は騎馬職や魔法職に適正のあるローレンツを、なんと籠手を扱う「拳闘士」系の職種で育成することに決めたのである(詳しくはローレンツパンチの記事を参照)。
そんなローレンツが籠手を装備して初出撃したのが、EP.3「霧中の反乱」。ここで金鹿の学級の生徒たちは、数々の軍を指揮してきたミノル先生の采配の洗礼を受けることになる。
このマップは戦場に霧が立ち込める索敵マップだったが、その序盤。ミノルは、ボーナスの取得できる「戦死者の魂」のある最前線のマスに、ローレンツを前進させてしまう。
一歩先は視界の届かない霧の中。プレイヤーフェイズの終了後、それは突如ローレンツを襲った。
霧中より放たれる斧、槍、弓の嵐。合計四人の民兵の待ち伏せを受けたのだ。その攻撃のすべてが彼の身体に突き刺さる。彼の名を呼ぶ新任教師の慟哭。だが多勢に無勢。籠手装備の貴族は、守るべき平民の手にかかり、このシリーズにおける最初の戦死者となってしまった。
だが直後、ミノルは叫ぶ。「ちょ待ってくれ! 待ってくれ! やり直しボタンがあるんだ!」
天刻の拍動の使用を告げる破砕音。そして時は巻き戻る。6ターン目まで状況は進んでいたが、それを一気に4ターン目まで遡ったのだ。
さっそく新要素を活用せざるを得ないミノル先生。しかしその後はつつがなく学級を指揮。敵将のロナートを撃破するに至った。
こうして教師ミノルの学級「ミノルクラッセ」は、学級運営に微妙な不安を抱えつつも、全員で課題をこなしていくことになる。
「皆、すまない……ここまでだ……」
ローレンツに続く二人目の犠牲者は、何を隠そう、主人公にしてミノルクラッセの担任教師であるミノルその人である。
初の死神騎士との邂逅、さらにコナン塔における激戦を、持ち前の軍師力(運師力)で見事にくぐり抜けた教師ミノル。
そんなミノル本人のために天刻がどうして必要となったのか。原因はマップ開始時に遡る。
EP.6「死神の噂」には勝利条件の他に、特殊な敗北条件がある。
勝利条件は「死神騎士の撃破 または死神騎士以外の敵の全滅」。そして敗北条件は「ミノルの敗走 または “25ターン経過” 」。
これを見ていなかったのだ。
敗北条件にターン経過があることなど知るよしもないミノル先生は、いつも通りに進軍。
11ターン目には勝利条件を確認する機会があったが、ここでも敗北条件に気付かない。それどころか、西側から進軍していた盗賊のマリアンヌを東側の宝箱解錠作業に派遣するため、マリアンヌの移動のためだけにターンを消費し始めたのだ。
その移動中、ついに敗北条件に気付くが、時すでに遅し。そして25ターン目、マリアンヌはついに宝箱に辿り着くことなく、ミノルは自らの6%の必殺が発動しなければ負けという小さい小さい可能性に全てを賭けた死神騎士への特攻を余儀なくされ、そして敗れた。
二回目のEP.6「死神の噂」でレオニーもやられた気がするが、別にそんなことはなかった。
第四の撤退者 マリアンヌ
「お役に立てなくて……
本当に……すみません……」
今回のミノルの風花雪月ハード金鹿編における第一部といえば、やはりこれを抜きには語れない。大修道院の誇る伝統行事、別名令和のたけのこ収穫祭……そう、EP.7「鷲獅子の野」、三学級が入り乱れて相争う“グロンダーズ鷲獅子戦”である。
撤退なしのクラシックモードであっても、撤退ありのカジュアルと同じ仕様で進行するマップであるため、ミノルも天刻なしでプレイした。だが、その分強力な他学級の生徒が多数出陣するため、難度は高いといえる。まさに前半の山場である。
そしてやはり、ミノルクラッセからも負傷退場者が出た。その一人目が、マリアンヌである。
もっとも、序盤はミノルたちが優位な状況で進軍していた。手始めにアッシュを撃破し、中央の弓砲台を制圧と、上々の戦果を上げる。
それが覆ったのは、青獅子の学級(ルーヴェンクラッセ)のイングリットが動き始めてからである。
黒鷲の学級(アドラークラッセ)の陣地に単身突撃したイングリットは、ショートスピアからの二回攻撃で帝国兵を次々と撃破。特に級長の従者ヒューベルトなどは、命中率30%の計略を敢行して外した挙句、イングリットの一撃でなすすべなく退場するという醜態を全生徒の前で晒してしまう。
このイングリットの活躍の影響で、青獅子の学級全体の士気が上昇。彼女らのユニットが強化された状態で、第三軍である青獅子の学級のターンが到来。そして王国の獅子たちは、手近なミノルクラッセの生徒たちにも牙を剥いた。
こうして最初の標的となったのがマリアンヌ。「やめろ! 55%だよな? 愛だろ!?」教師の愛は鷲獅子たちの蒼穹に消える。彼女は強化されたソシアルナイト二騎の攻撃を受け、真っ先に撤退することとなった。
第五の撤退者 イグナーツ
「みんな、ごめんなさい……
ボクには荷が重かったみたいです……」
ヒューベルトやマリアンヌが倒れた後、戦場には混沌が立ち込める。
黒鷲の陣地では、黒鷲の級長エーデルガルトとカスパルが青獅子のシルヴァンを倒し、そのエーデルガルトをイングリットが討ち取る乱戦が進行。しかもその戦いの余波で、青獅子の学級の士気がさらに上昇する。一方ミノルクラッセは弓砲台付近に陣取り、突撃してきたフェリクスやアネットに総攻撃を仕掛け、これの撃退に成功。弓砲台の南方ではドゥドゥーとメルセデスが暴れ始め、イングリットは西から南下したクロードに射落とされる。
一連の攻防の中で、大勢はミノルクラッセと青獅子の学級の一騎打ちへと傾くかと思われた。しかし、残った黒鷲の学級の中で一際異彩を放つ戦力の生徒がいた。森に隠れ、回避に特化したペトラである。
教師ミノルはペトラへの攻撃や弓砲台……鼻くそによる狙撃は不可能と断定。先に周囲のリンハルトを排除にかかるが、その瞬間、イグナーツの守りが無防備となる。ブリギットの猟師でもあるペトラは獲物の隙を見逃さなかった。
序盤こそ眼鏡のガキだとかのび太とか言われていたが、この頃にはもうすっかり学級に馴染んでいたイグナーツ。だが、森を捨てたペトラの二回攻撃で、ミノルクラッセ回復の要はあっさりと戦場を去ることになる。
第六の撤退者 レオニー
「くそ……
師匠の名を汚しちまった……」
イグナーツが倒れた頃、南方の戦場では、ドゥドゥー率いるアーマー部隊とメルセデスがミノルクラッセに襲いかかっていた。
教師ミノルはレオニーやローレンツといった面子を前面に押し出し、これに対抗。だが士気の二段階上昇を経た青獅子の残存勢力の抵抗もまた凄まじい。
ミノルクラッセでも強壮を誇るソシアルナイトのレオニーだったが、その弱点は魔防の低さ。そこを複雑な陣形の間隙を縫ったメルセデスの魔法攻撃に突かれ、最後はアーマーの一撃で戦線離脱することとなった。
第七の撤退者 ローレンツ
「崩壊する、崩壊する我が軍が崩壊してしまうー!」指揮を執るミノルは前線で情けない声を上げる。鷲獅子戦におけるミノル先生の苦難は終わらない。
いつの間にか東側から回り込んでいた青獅子のアーマーに高台への侵攻を許し、ベルナデッタも負傷。南方ではレオニーがいなくなった今、素手のローレンツがアーマーの攻撃を一身に受け止めるが、自慢の格闘術もぶ厚い鎧の前には無力。小気味よい金属音がグロンダーズの平原に響く。
自ターンでの計略攻撃にも失敗し、青獅子のアーマーは止まらない。そしてレオニーと同じく連続突撃を受け、ローレンツもまた彼女の後を追った。
第八の撤退者 ヒルダ
力尽きたレオニーやローレンツに代わり、新たな前衛に任命されたのがヒルダだ。だが、特段硬くもないヒルダが駆り出される時点で、既に自軍の被害は甚大といえる。
気付けば、ミノルクラッセの生存メンバーは6人にまで減少していた。学級崩壊である。だが、度重なる戦闘で、青獅子の学級の戦力が残りわずかであるのも事実。
「相手もあと少しなんだそうだ! 相手あと少しだ!」この苦しく長い戦いにも終わりが見えてきた。教師ミノルは自らを、そして生徒たちを鼓舞する。
「魔法が残ってるんだ。メルセデスを殺せ。メルセデスを殺せ!!」
コナン塔で課題協力してもらった恩はどこへ行ったのか。ちょうどメルセデスの隣のマスで、学校行事にも関わらず殺意を剥き出しにする、大人気ない大人がいた。
そこからは一進一退の攻防が続く。ミノルたちは弓砲台周辺のアーマーを減らし、西側ではクロードが禁止されていた火計でペトラを爆砕。しかし敵の計略によりミノルの体内のラファエルが挑発に乗り、ミノルが足止めを食らう。
そんな状況でゲームの外のミノルも混乱したのか、ゲームの中のミノルでメルセデスに攻撃を仕掛けようとして待機を選択。
「間違えて待機した!!」この影響で、攻撃される必要のなかったかもしれないヒルダがメルセデスの標的に。ヒルダもまたここで姿を消した。
「ベルには……ベルにはやっぱり、
無理だったんですうううう……!」
戦力の損失は、それ自体が直接の引き金となり新たな戦力の損失を生む。いつかもあった負のスパイラル、それがグロンダーズでも再現された。
先刻のアーマーの攻撃を受け、負傷していたベルナデッタ。イグナーツが不在の今、回復役のフレンの処置先はミノルを最優先され、その他は放置。その状況で、敵の侵入を防いでいたヒルダがいなくなった。となれば、この結末は必定だったのかもしれない。
壁が消え、水を得た魚のようにアーマーが動き出す。手負いの少女の眼前に鋼の斧が迫る。度重なるアプローチを受けミノルクラッセに転入したベルナデッタは、くしくも本来の自らの陣地でもある弓砲台上にて、その役目を全うした。
第十の撤退者 リシテア
「う……悔しい……
こんなはずじゃなかったんですが……」
ドラクエごっこ、とは何なのか。まずはその定義が必要かもしれない。
うず高く積まれた仲間の犠牲の先に、辛くもメルセデスを退け、アーマー部隊を一掃したミノル同好会。だが彼らの人員は、もはや学級と呼ぶこともおこがましい規模にまで減少していた。
主人公、アーマー、弓使い、魔法使い。これも運命か、伝説のパーティは最後の敵、青獅子の級長ディミトリと女アーマーの元へ一列になり行進する。
だがこれが最後から二番目の失策だった。ついに動き出したディミトリのスレンドスピアが、先頭のミノルを襲う。ミノルは体力の半分以上を奪われたにも関わらず、こちらの攻撃はディミトリにまったく歯が立たない。
絶望的状況。その五文字がどうしようもなく似合いな戦場で、ミノルはついに最後のミスを犯す。あろうことかディミトリの追撃から撤退する道中で、ミノル自らディミトリに攻撃を仕掛けたのだ。
手負いの状況で、加えて敵の目の前で待機状態。フレンがレスキューをすればミノルは助かる。だがその場合、誰がしんがりとなってディミトリの進撃を止めるのか。
「レシテアを……犠牲にするしかねえんだ」
風花雪月イチの魔法職キャラであるにも関わらず、アーマー系の進路を強要されたリシテア(詳しくはアーマーリシテアの記事を参照)。おそらくミノルは彼女には他の生徒と比べても特別な愛情を注いで育成していたであろう。
愛の力で未来の嵐の王は倒される。そんな結末があればどれだけ良かったか。
「死ぬとわかっててリシテアをここに移動させる俺を許してくれ」
以上7名の撤退をもって、グロンダーズ鷲獅子戦はミノルクラッセの優勝に終わった。最終盤の決定打は、模擬演習に英雄の遺産を持ち込みあまつさえ戦技すら使用する恥ずかしい教師の一撃だったという。
戦いの後、あまりの惨憺たる指揮に対し、ミノル先生には祝杯の代わりに滝のような皮肉が浴びせかけられたことは言うまでもない。
「今日のところは、
これくらいにしておきますわね……」
紆余曲折こそあったものの、見事生徒たちをグロンダーズ鷲獅子戦の勝者に導いた教師ミノル。だが、常に死と隣り合わせの実戦は、ミノルに安息の時間を与えてくれない。
フレンは前節からミノルクラッセに転入した生徒である。そして学級の一員として、早速鷲獅子戦でも最後まで生き残る活躍を見せたのは上記の通りだが、速さと守備の低さから敵にかなり狙われやすいことをミノルが知るには時間が必要だったのかもしれない。
EP.8「炎と闇の蠢動」、その本編が始まるまでの月半ばのフリー出撃。レア敵を狩るためブリナック台地に赴いた教師ミノルは、標的「牙の王」の存在に戦慄することになる。
そう、レア敵牙の王とは、障壁を持つ魔獣のこと。コナン塔における激戦で数々の死線をくぐりようやく討ち果たした魔獣を前に、重要度の低いフリーマップでの戦闘ということもありミノルはさっそく天刻の無制限使用を宣言する。
だが、それと同時に、ミノルは全力で行くとも表明していた。故に油断はなかったはずだ。だから誤算があったとすれば、それは牙の王の驚異的な単騎性能だろう。
魔獣の出現するフリーマップでは、自軍と魔獣に同時に敵対する軍として、ごろつきたちも参加する。しかし牙の王は、ごろつきたちによる命中率60%台からの波状攻撃を次々と回避。さらに高い攻速による二回攻撃で敵軍を一掃。
そしてごろつき達を駆逐した魔獣は、ミノル陣営の最後尾にいたフレンにも食らいつく。完全な視界の外からの襲撃に、ミノル先生は驚愕、慟哭、懇願。やめてくれという祈りも虚しく、牙は彼女の柔肌に突き立てられたのである。
軍師の咆哮を伴う、この天刻使用シーンは必見である。part58の21:00を過ぎたあたりになる。
「皆、すまない……ここまでだ……」
その後、ルミール村での戦いにおいて、ついに宿敵死神騎士を初撃破したミノルクラッセ。だが、このEP.9「涙のわけ」の期間は、鷲獅子戦に次ぐ天刻ラッシュの波が到来する。
その第一犠牲者がミノル。またしてもミノルである。舞台はソティスの外伝「赤き谷の冒険譚」。魔獣が多数出現する、コメントでも当初から鬼門だと言われていた難関マップでもある。
もっとも、この回の教師ミノルの頭脳は非常に冴え渡っていた。首尾よくミノルと生徒たちが分断された状況から合流し、増援魔獣軍団の包囲を計略や飛行特攻の駆使で突破。残る魔獣をあと三体にまで追い詰める。
だがこの時、既にミノルは死んでいた。上部の巨狼に天帝の剣を当てたため行動済みで待機状態。過半数は残っているが微妙に減った自身のHP。他の回復役のイグナーツやフレンも行動済み。そこに、巨鳥二体の範囲攻撃「大烈空」が襲いかかる。
乏しい戦力で魔獣たちと互角に渡り合った教師ミノルだったが、最後の場面で詰めを見誤り、天刻の使用回数をまた一つ積み重ねる結果となった。
余談だが、「(天刻を)2回目以降使ったら、しらけますとか書いて」の発言があったのは、このマップのクリア後のことである。
ソティスの外伝での天刻の使用は1回で済んだ。だが、難関マップ後の物理的な疲労はミノルの脳に重くのしかかる。
その影響が顕著に現れたのが、上記のマップからの連続プレイとなったローレンツの外伝「金鹿の守る地」である。
この戦いは12ターンの間拠点を守る防衛マップ。だがミノルは敵将アケロンの撃破を目指し、強気に進軍。
それは良かったが、一つだけ致命的なミスを犯していた。自軍2ターン目、防衛地点に1ターンで辿り着く移動力を持つ敵傭兵の存在を見落としていたのである。
敵軍2ターン目、敵軍は一通りの行動を終えた後、件の傭兵がタッチダウン。戦場にはアケロンの高笑いがこだまし、ローレンツは屈辱に涙する。今回の天刻対象は防衛地点となった。
「見立てが甘かったか……
悪いが、手詰まりだ」
一言でいって、ミノルの疲労はピークに達していた。アケロン相手に、一度ならず二度までも敗北を喫したのである。
先ほどの要領で、今度は調子よく攻勢を続けるミノル先生。
「じゃあ無敵のクロードくんで、突撃してもらって余裕なんで」東側を担当するクロードに、運に任せた回避を当て込んで敵陣への単騎特攻を命じる。
「これは無謀じゃない、信頼なんで俺の」クロードは、教師ミノルが全幅の信頼を置くこの学級の級長である。そんな彼と実況者ミノルのカップリング「クロミノ」は、今回のプレイを代表する人気要素でもある。
「なんで大丈夫だと思うと思う? 何となく大丈夫だと思う」だが時に、盲目の愛は理性的な判断を妨げるものである。
「くっそ間違えましたすみません本当に」回避を期待したのに、何故か一つも外れてくれない弓、槍、斧の雨がクロードを襲う。そして以前ローレンツがそうだったように、クロードもまた、ペガサスナイトによる四発目の攻撃でついに膝をついてしまった。
こうしてクロードの初ロストは、ミノルの愛に押し潰される形となった。しらけますの約束が早速履行された瞬間でもある。
第十五の撤退者 リシテア
「う……悔しい……
こんなはずじゃなかったんですが……」
アケロン軍による被害は、なんと防衛地点とクロードだけに留まらなかった。この時期徐々に魔導アーマーとしての強さを確立しつつあったリシテアまでもが、アケロンの毒牙にかかったのである。
「あれ? 敵もう三匹しかいねえじゃん。もう終わったじゃん。勝ちですわ」先刻クロードが倒れた地点を抜け、ついに敵将であるアケロンとの対峙に手をかける教師ミノル。アケロンの手近にいる自軍ユニットは、中央を単騎突破していたメイジリシテア。
とはいえ、ミノルはまだ油断していなかった。攻速でもリシテアはアケロンに勝っていた。圧倒的優位である。だが念には念を入れ、リシテアを森の中に入れてアケロンを待ち伏せることをミノルは画策。そしてリシテアは、平地を選んで待機した。
……疲れていたのだ。疲れていたのである。一旦ここで、などと言いつつ、ミノルはリシテアを森の隣の平地マスで待機させてしまった。しかも敵の攻撃を知らせる警告線が二本もリシテアに集まっている状態で。
さらに、その内の一本の線が敵将アケロンのものであることなど知るよしもない。敵将は動かないものなのだ。動くはずがない。いつぞやの事件などあっただろうか。そして敵フェイズ。
「えっなんでお前動かないって約束したじゃん!!」アケロンはマップ開始からしばらくすると動けるようになる仕様だったのだ。
予期せぬアケロンの移動、計略攻撃。さらにアケロンのスキル「蛇毒」によるHP減少。最後に東側からやってきたアーチャーの弓矢により、鷲獅子戦に続いて再びリシテアは土の苦さを味わうこととなった。
1マップで3天刻。敵将が単独のマップにおいて、この記録は長い間塗り替えられることなく、アケロンは対ミノルクラッセの撃墜王として君臨することになる。
「皆、すまない……ここまでだ……」
またミノルである。この男は一体何回実質的な戦死者リストに名を連ねれば気が済むのか。この時期はまだ問題なく強かったので、少し頼り過ぎている節はあったのかもしれない。
事故はEP.10「女神の行方」期間の外伝「氷炭相容れず」にて起こった。このマップはマヌエラが一人先行し、それを主人公とハンネマンら6人が追いかけるという、出撃人数が少なめのマップ。
必然、普段の感覚で戦力を分散させると、手数が足りなくなる。だがミノルは、初ターンでいきなり自ら「神速の構え」の計略を使用。他の5人全員を東側に派遣し、自身だけがスタート地点に居残ることになる。
そこを襲われたのだ。敵フェイズ、まず一人目の傭兵山賊の削りを受ける。これは難なく二回攻撃ファイアーで撃退。
だが、その後に真打ちたるソードマスター山賊が登場。魔法職に就いているミノルではその攻撃力と速さに追いつけず、強力な二回攻撃をもろに喰らい、一刀のもとに斬り捨てられてしまったのだった。
「こんな強いと思わなかった! 俺だって、俺ミノルだよ?」
なお厳密には、1ターン目ということもあり、ここでは天刻を使わずに敗北を受け入れて初ゲームオーバーしている。
第十七の撤退者 ローレンツ
続く、EP.10「女神の行方」の本編。封じられた森にひそむクロニエとの戦いで、ローレンツは再びミノルに並ぶトップタイのロスト回数を記録することになる。
ただし、第一部も終盤に差し掛かった今のローレンツは既に、拳闘士路線を任命された頃のローレンツではない。素手で敵兵を次々と屠る、立派なファイターに転身を遂げていたのである。
そしてローレンツと並び称されるアーマーリシテアもまた、圧倒的な防御力を手にしていた。その硬さでクロニエの計略や通常攻撃のダメージを0に抑え、追い回してくるクロニエを尻目にいそいそと戦死者の魂を回収するほどの余裕を見せる。
だがプレイヤーの不注意は、キャラクターの成長と無関係に起こるものである。リシテアと遊んでいたクロニエの剣は、観戦などと称して森の付近をうろうろさせられていたローレンツを、突如襲った。ローレンツの立っている位置は、いつのまにかクロニエの攻撃範囲に入っていたのだ。
「やべえローレンツが死ぬ!」もともと耐久力には秀でていないローレンツだったが、ここで運悪くクロニエの15%の必殺が発動。ミノル曰く、女を殴るのが得意なローレンツは、女性ボスに切り刻まれる因果応報の運命を辿った。
以上が、軍師ミノルの風花雪月の第一部における天刻使用者・撤退者である。
この後のミノルクラッセはローレンツとリシテアという二大戦力を中心に、第一部最終マップのガルグ=マクの戦い、そして五年後生徒たちが再集合する第二部前半と、誰一人欠けることなく勝ち続ける快進撃を見せる。
そのため、次の天刻使用は、なんと第二部における最後の外伝のマップまで待つことになる。
第一の他学級戦死者 フェルディナント
他学級戦死者。彼らは、ミノルの仲間ではなく、ミノルクラッセ改めミノル軍と敵対することになった元生徒たちである。だが、軍師ミノルのプレイにおいては重要な存在であるため、一人ずつ触れていく。
もっとも、ミノルが第二部において他学級生徒と敵対するのは、これが初ではない。EP.15「煉獄の谷」における元青獅子の学級のアッシュが、その最初の相手だった。
ミノルは敵軍の中にアッシュの姿を認めるなり「スカウトできるよね?」「カスパル(が必要)とかじゃねえだろうな」、と生存の道を模索。最終的には奥義弓囲みを駆使することで、アッシュを生かしたままマップクリアを迎えた。
だが、EP.16「薔薇色の大河」のフェルディナントはそうはいかない。彼は敵将の一人であり、その全滅が勝利条件なのだ。
「なるべく、元クラスメイトを殺したくないという気持ちが強いんで」それでもミノルは、フェルディナントと同じキッホルの紋章を持つセテスを出撃させるなどして、説得の方法を探る。
しかし未来は変えられない。最終的にはミノルも屈し、元生徒を初めて自分自身の手にかけることで戦いを終わらせるのだった。
「私が死のうとも……
ここだけは守り通し……ぐっ……」
そして戦いの後、ミノルは独白する。「これがお前……敵の女だったら、メルセデスさんだったらイングリットだったら。俺にはできねえ」
その悲痛な想像は、次のエピソードで早くも現実のものとなる。
その前に一つの事故があった。舞台はEP.17「鉄血の鷲獅子」期間における、クロードの外伝「砂に眠る神話」である。
前回の天刻使用がpart95のEP.10「女神の行方」であり、今回がpart153。実に7エピソードぶり、58パートぶり、投稿日数にしても47日ぶりと、ここまで非常に調子よく進めてきたことが伺い知れる。
それなら今回はどうして久しぶりに天刻を切るはめになったのか。何を隠そう、その理由とは、完全な不注意である。
このマップの敵将の魔獣は、フレンやセテスと深い関わりを持つ存在である。その戦闘会話も彼女らの正体の核心に触れるものであり、ミノルは自分自身とも戦闘会話があるのではないかと推察。これを試すために攻撃を仕掛けようとする。それは合っていた。
だが、その方法がまずかった。ミノルはターン始めに「神速の構え」を使っていたために、踊り子のフレンによる再行動を必要とした。そのフレンの移動位置が、前ターンに敵増援として現れた、ドラゴンマスターの攻撃範囲に重なっていたのである。
ミノル軍師はそれに気付かなかった。システムの赤線による警告も虚しく、ミノルは敵将への攻撃を敢行。戦技「覇天」による必殺で倒し切れればよかったものの、魔法職育成のせいか力の値が少し足りず、それも叶わない。
そして敵フェイズ。砂漠とはいえ索敵マップでもないのに、ドラゴンマスターの奇襲を受け、ミノルは秘密を知れたばかりのフレンにまた一つ傷をつけてしまった。
「なんかガチで死んで……ガチで死んだじゃん! やめてくれやめてくれなしなしなしなし」
また、第二部からのキャラロスト時のセリフはほぼ全員、ストーリー的には撤退扱いである第一部と違い完全な死亡時のセリフとなっている。
第二の他学級戦死者 シルヴァン
「イグナーーーーーーツ!!!!!!」
ダフネルの烈女もかくやという軍師の絶叫が天と地の境界に響き渡る。
続くEP.17「鉄血の鷲獅子」の本編、五年前の鷲獅子戦を再現するかのように集ったミノル軍、帝国軍、王国軍による三つ巴の戦い“グロンダーズの会戦”。
軍師ミノルが2ターン目の行動を終えた後、それは背後の崖より突如現れた。王国のゴーティエ辺境伯が嫡子シルヴァン、その率いるパラディン部隊である。
後方で支援に徹していたイグナーツは、完全な奇襲にすぐ真後ろを取られる形となった。もし増援即行動のシステムだったならば、即刻イグナーツは眼鏡だけを残して消されていただろう。
シルヴァンとて元生徒だが、敵将はあのエーデルガルトとディミトリ。恐るべき鷲獅子戦の英雄イングリットも既に戦場に現れている。ミノルの決断は早かった。
「うわー、すぐに倒したくねえ。うあー死んじまう。必殺出さないでくれ」
軍師ミノルの意思に反して、ゲームの中のミノルはきっちりと必殺を発動。同じ女好きキャラとして度々発言がシンクロしていたミノルとシルヴァンは、最後は殺し合う関係となって道を違えた。
「なあ、殿下……いい加減……
悪い夢を見るのはよしましょう、よ……」
「せめて……もう少しだけ、長く……
生きたかった……」
フェリクスはシルヴァンの幼馴染である。自らの仲間を殺めた者たちに、彼が強い怒りの念を抱いたとしても何ら不思議ではない。
グロンダーズの会戦中盤。鷲獅子戦に続き今回も弓砲台付近の帝国兵を排除したミノル軍だったが、弓砲台自体は帝国軍のペトラが先んじて再制圧。その特攻を恐れ軍師ミノルは、最前線にいたリシテアの王国軍方面への配置転換を命じる。
特に第二部に突入してからの快進撃は、アーマーリシテアの活躍に依るところが大きい。頑強な守備力と、潤沢な魔力から放たれるボルトアクスの雷光。それは机上の空論と思われた魔導アーマーの実用性を証明する働きだった。
その強さを見込んで、ミノルは対王国軍戦線の森の中にリシテアを派遣する。「この場所の、リシテアが負けると思う?」
たしかにすべての敵が雑兵であれば、これまで通りリシテアは不動の存在でいられたかもしれない。だが、今度ばかりは相手が悪かった。
王国軍の陣営、その最前線にいるのは飛燕の剣士フェリクス。フラルダリウス公ロドリグの一子、その手には自家の神聖武器「モラルタの剣」が握られていた。
しかもディミトリの攻撃力に気を取られていたミノルは、見落としていたのだ。フェリクスもまた、驚異的な実力のユニットであることを。彼の必殺発動率、“77”を。
フェリクスが斬りかかる。一撃目は鎧をものともしない斬り上げ。よろめくリシテア。そして二撃目。必殺だけではない。フラルダリウスの大紋章をも上乗せした致命の斬撃が、甲冑に身を包む薄命の少女に振り下ろされる。
「うああああ強ええ!! やべえ必殺49!! やめてくれえええガッハハ! ふざけんな!!! フェリクスがこんな強いなんて」
いつしかローレンツとリシテアは称えられるようになっていた。ミノルクラッセの双璧、最強の矛と盾、と。だが世界には彼らをも上回る者がいた。それをミノルは、相対した瞬間初めて知ることになる。
第三の他学級戦死者 ディミトリ
「敵将を倒せばいいのか。……俺が。…………そっか。敵将を倒せば終わるのか」
シルヴァンを自らの手で殺めた直後、ミノルは気付きを得る。ペトラを、イングリットを、メルセデスを救うには。自分がエーデルガルトとディミトリだけを倒して、この戦いを終わらせればいいのだと。
「……………………どっ、どうやって?」
帝国軍や王国軍との圧倒的戦力差に動揺しつつも、ミノルは生徒たちの命を救うため“エーデルガルトとディミトリの同時撃破”を決意し、軍を進め始めるのである。
「シルヴァンには申し訳ないけど。敵将を倒せばいいんだよな」
帝国軍の陣地ではクロードが騎乗竜バルバロッサを駆り、ヒューベルトの待ち伏せを一蹴。さらにベルナデッタのアシストを受け、エーデルガルトと相対。自身のHPが1しか残らない状況で、見事級長同士の決闘を制する。残るは王国軍のディミトリだけとなった。
ミノルはディミトリを恐れていた。その生存には喜んだが、鷲獅子戦で最後に立ち塞がった記憶、変わり果てた相貌、70と表示された規格外の攻撃力に、一度は宣言した今回の天刻なしクリアを数分で撤回するほど腰が引けていたのだ。
それでもミノル軍は前に進む。一度はディミトリに怖気づいた。途中、リシテアがやられる幻覚も見た。だがしかし、他に道は無いのである。敵対する彼女らの命を守る方法は、妄執の王子、その猛進を自らの手で退けるのみ。そしてミノル軍はついに前線に現れたディミトリと相対する。
「いや恐ろしすぎるホントに怖ええ」「ちょと待て待て待て。
……お前ら、俺の策にハマったんだよ」
イングリットやフェリクスも前進し、上部と前面からの包囲を受ける。ここで終わらせねば攻守の逆転する状況で、それまで怯えていた軍師は、時は来たと不敵に笑う。
ミノルには秘策があった。ディミトリに速さで引けを取らないユニット。勇者の槍による連続攻撃。軍師ミノルの懐刀、レオニーによる一回限りの突撃である。
もっとも、ミノルは今まで退けてきた他学級生徒2名同様、自分自身の手による決着を望んでいた。しかしレオニーは、初撃からの間髪入れない二の撃ちで、20%の必殺を発動。ディミトリによる必殺13%の抽選を待たずしてこの会戦の趨勢は決するのであった。
「くっ……どこだ、エーデルガルト……
貴様を殺すまで……俺は……!」
厳密には、ディミトリを死なせたのはプレイヤー軍ではない。級長は二人とも敗北直後は撤退し、片方のエーデルガルトは帝都に退却する。
だがディミトリについては、その末路がヒルダの口から語られる。
戦いの後、ディミトリは手負いにも関わらず単身でエーデルガルトに追いすがった。しかし最後は力尽き、帝国兵に串刺しにされ、横死したのだと。
生きて再会できたディミトリの衝撃的な最期に、さしものミノルも動揺を隠せなかった。
以前語っていた三人の級長と自分が協力して真の黒幕に立ち向かうという理想の物語は露と消え、五年ぶりの同窓会は、軍師の記憶に血の味を残して終わることとなる。
第四の他学級戦死者 リンハルト
「今回からまじで天刻使わないからな。本気で行くからな。俺の本気を見してやる!」
EP.18「謀略の寵児」の出撃前、ミノルはそうしめやかに意気込みを語る。
この天刻なし宣言は、元は第二部前半における快進撃に裏付けられた自信から、前エピソードの出撃前に呟いていたことだった。そしてディミトリの暴威を乗り越え、軍師ミノルはエンディングまでの天刻不使用クリアを、決意も新たにここで誓う。
その宣言通り、このマップにおけるミノルは慎重居士そのものだった。接敵する場合、ステータスやスキルは逐一確認。逃げる敵将、死神騎士は無理に追わない。こちらに6割超えの必殺率があっても返り討ちの危険がある以上踏み留まる。軍師ミノル史上最大の堅実な戦いといっても過言ではない。
だが天刻を使わないということは、それ以外のあらゆる手を尽くして教え子を守るということ。それは逆に、敵対した元生徒にもう恩情はかけられないことも意味していた。
その犠牲者の一人がリンハルトである。天刻を縛った段階でちょっとでも甘いことは絶対にしないという自身の言葉通り、ミノルは進軍経路にいたリンハルトを容赦なく蹴散らしていった。
最終的にリンハルトに絶命の一撃を与えたのはリシテアだった。世界が違えばその宿痾を取り除けたかもしれない相手に殺されるとは、何とも皮肉な結末である。
「はあ……戦場に駆り出されず、昼寝だけ……
してればいい世の中が、来ないかなあ……」
第五の他学級戦死者 カスパル
リンハルトの命を奪ったミノル軍の魔の手は、彼の親友であるカスパルにも伸びた。ミノルの体からも死の薫りが漂い始める。
とはいえ、カスパルは助けられた命だったのかもしれない。このマップの前半の勝利条件は「敵将の撃破」。だが死神騎士をマップ外に離脱させた場合、勝利条件が「敵の全滅」に切り替わるのだ。
ミノルは下せなかった。クロードに対し、必殺で死神騎士を仕留める可能性がある代わりに、外せばクロードを高確率で失う攻撃の命令を。
そしてクロードによる攻撃を見送った結果、死神騎士は悠々とメリセウス要塞を離脱。死神騎士への追撃戦は対帝国軍の掃討戦に移行する。
この瞬間、カスパルの命運は尽きた。掃討戦の中、敵兵であるカスパルの命もミノル軍によって失われることとなった。
死神騎士への攻撃は、運命の分かれ道だったのかもしれない。天刻を使えた世界の道、天刻を使わない世界の道。
カスパルはミノルと敵対した時、呟いていた。あんたとエーデルガルトなら、きっとわかり合えると思ってた、と。
世界には無限の道がある。もしかすると、ミノルとエーデルガルトが手を取り合う、そんな道もどこかの世界にはあるのだろうか。
「気にすんな……
負けたら死ぬ……そういう喧嘩だろ……?」
「ここで……終わるのか……」
全アドラステア帝国軍兵士が望んでやまない瞬間が来た。エーデルガルトの目の上のたんこぶ、ジョニ顔の悪魔、帝国の侵略を逆に脅かさんとする同盟軍の総大将軍師ミノルが、ついに討ち取られたのである!
ミノル軍師が屍の仲間入りを果たしたのは、EP.19「戦塵の帝都」でのこと。この市街戦を指揮した、皇帝の第一の腹心ヒューベルトによる天才的用兵術を余すところなくご紹介しよう。
ヒューベルト、彼は根に持つ男である。学生時代の年始めの模擬戦、鷲獅子戦、戦乱の幕開けとなったガルグ=マクの戦い、そして先のグロンダーズの会戦。幾度となく、とぼけた教師と対決し、いずれも敗退したヒューベルトだったが、彼は諦めなかった。自軍が負けた理由を徹底的に洗い出し、必ず軍師ミノルを仕留める完璧な二つの策を練り上げたのである。
その一つがミノル軍分断作戦である。鷲獅子戦に代表されるように、ミノルは戦力を分散させると、主力ユニットを欠いた状態で戦う部隊が生まれ結果的に隙を突かれやすい。そこに着目したヒューベルトは、帝都アンヴァルに侵入したミノル軍を二手に分断。もちろんミノルは自らが既にヒューベルトの術中にあることなど知るよしもない。
そしてもう一つが、集中的なミノル狙いの伏兵配置。この頃のミノルは、魔法職運用の役立たなさが極まり、すっかり教え子たちの足を引っ張る存在に成り果てていた。まさに軍の頭脳にして急所。ミノルさえ倒せば敵は総崩れになる。それを見抜いたヒューベルトは、市街の入口に陣取る部隊に命じる。他に構うな。必要なのは軍師ミノルの首級、ただ一つ、と。
こうして戦闘は開始される。だが、戦闘が始まる前までこそがヒューベルトの戦いだったといっていい。意気揚々とミノル軍が市街に足を踏み入れた時こそが、ヒューベルトによるチェックメイトがかかる瞬間だった。
「天刻縛り、天刻縛りプレイ、ついにね悲しいことに死者が出てしまいました。それは、俺だ」
数々の負け戦を持ち前の軍師力で覆してきた軍師ミノル。だがその最後は、自ら盾役となったが為に敵軍1ターン目で、三騎の帝国兵の突撃を受け串刺しにされて横死するという、あまりにも早すぎるあっけないものだった。
この戦いを契機に、帝国軍は勢いを取り戻し、精神的支柱を失った同盟軍は一気に弱体化。帝国は侵略の手を同盟領にも広げ、帝国大勝利……
……とはならず、ミノルが死んだらゲームオーバー。リセットしてやり直し。現実は非情である。帝国史に残るはずだった護国の英雄ヒューベルトの伝説は闇に葬られてしまったのだ。
なお、ミノルは今回もゲームオーバーを受け入れているが、実質的なリセットであるため天刻扱いとしている。
先のミノル死亡から数分後。またしても事件は起きた。
軍師ミノルは天刻不使用を表明するため、初ターンの無駄行動で天刻の残り回数を消費することを毎回の恒例としている。だが、今回は間違って全員を行動終了させてしまった。
すると、もちろん敵軍は動き出す。真っ先に狙われるのは手近な者、特に防御や速さの値が低い回復役である。
イグナーツだ。イグナーツは帝国兵の斧に狙われ、無残にもワンターンキルされてしまったのだ。
悲劇はそれだけではない。イグナーツは死亡セリフをスキップされた挙句、天刻を悪用した軍師ミノルによって自分が死ぬ瞬間に再び戻されてしまったのである。
何度も時は戻され、何度も死ぬイグナーツ。教師が自ら生徒へのいじめに加担していいのか。これが教育現場の現実か。生き地獄であった。いじられキャラここに極まれり。
本番の戦いにおける天刻使用ではないが、一応天刻を使ったので、記録しておく。
第六の他学級戦死者 ヒューベルト
彼にもとうとう年貢の納め時が来た。ミノルに勃起隠し、ヒューデルガルトといったあだ名をつけられ、鷲獅子戦において計略を外したことが理由でエーデルガルトともどもザコキャラ扱いされ、弓の武術大会に出場した時は初戦敗退で笑いを誘い、炎帝の正体が判明した時にはモニカに洗脳されているのではないかと本気で心配されていたヒューベルトも、ついに死者の列に加わることになる。
アンヴァル市街に配置した帝国軍の精鋭たちはことごとく突破され、帝国最強の呼び声高い死神騎士もレオニーとローレンツの連携攻撃でとうとう息絶えた。
もはやヒューベルトの眼前に迫ったミノル軍。これに対し、彼は魔法をサンダーストームに撃ち替え応戦。
これがヒューベルトの悪手だった。サンダーストームの射程は3-10、懐に入り込まれれば反撃すらできない。最後はかつての同学級の生徒であるベルナデッタの鉄の剣で、その命脈を絶たれることになった。
ミノルのプレイ外の出来事になるが、「ククク…」という特徴的なセリフや、上記のような理由からネタキャラ化が進んだヒューベルトは、いつの頃からかヒルマリ(マリヒル)を中心に百合を愛好するキャラクターとしてコメント上に出没するようになる。
そして「ま!」で始まるやたら凶暴なフレンとともに、金鹿の学級の生徒でもないのに絶大な存在感を誇り、リスナーの間でミノルの風花雪月を代表するキャラクターの一人に成長していったのである。
そのため、本編のヒューベルトが死亡した後もコメントには大量のヒューベルトが湧き続け、全然喪失感が無かったとかそうでもないとか。
第七の他学級戦死者 ペトラ
守将ヒューベルトを退け、ついにアンヴァルの宮城内に侵入したミノル軍。このEP.20「交差の結末」は、ミノルがかつての生徒たちと対峙する最後のマップになる。つまりそれは、軍師ミノルにとって最後の試練であり、そして最大の試練にもなることを意味していた。
なぜならば、このマップで待ち構える元生徒はエーデルガルト、ペトラ、ドロテアの三人。ミノルが何度も殺したくない殺したくないと言っていた、女生徒が三人も敵に回っているのである。
エーデルガルトに対する覚悟は既に決めていたミノルだったが、ペトラとドロテアの二人の存在にはさすがに動揺。ペトラの動きを「囲いの矢」や計略で止めるか、それとも倒してしまうか決めかねたまま、戦闘開始する。
ペトラがいるのは明らかに避けられない位置だった。なにしろ、スタート位置からエーデルガルトのいる玉座に繋がる直線上の、扉の前に陣取っているのである。
「これやったら俺、大事な何かを失う気がするぞ」それでもミノルは、ペトラにギリギリまで攻撃せず己との問答を続けた。だが、決断の時は訪れる。
「マジペトラ構ってらんねえよ。やれるもんならやるしかない!!」
前後左右の四方を敵に囲まれた状態。ミノル軍の活路は、ペトラを退けた先の玉座の間にしかなかった。クロードの囲いの矢、次いでレオニーのキラーボウがブリギットの姫を狙う。
「やめろ避けろ!!」ミノルの理性と感情が剥離する。自分の教え子を守るには仕方のない決断だった。レオニーの矢がペトラの体に吸い込まれる。断末魔が、宮城に響いて消える。
「エーデルガルト様……契り、果たせない……
許す、願います……」
第八の他学級戦死者 エーデルガルト
ミノルはついに女生徒を手にかけてしまった。しかしそれ故に、残る女生徒、ドロテアを救いたいという気持ちも強かった。
「上、逃げ切りで! …………逃げ切りで行っていいっすか?」
途中、友軍として現れたドゥドゥーにラストアタックを譲ろうとするも、何故かドゥドゥーが退却を始めるというハプニングもあった。だが持ち場から動かないドロテアとは何とか戦うことなく進軍。
こうしてついに、ミノル軍はエーデルガルトのいる玉座を取り囲む。
初めはモニカに洗脳されているのではないかと心配した。戦争を始めたのが彼女自身の意志であると認めた後は、995年に一人の大馬鹿者と罵った。魔獣を帝国軍の兵器として扱っていることには憤りを感じた。グロンダーズで直接対峙した時には、悪めとまた罵った。
一方、心のどこかではそうでないミノルもいた。三人の級長と手を取り合う未来を夢想した。時にはクロードにも意見した。エーデルガルトと共に歩む道はないのか。
ミノルとローレンツの計略がエーデルガルトを追い詰める。もう彼女の生命力は残り半分もない。クロードは叫ぶ、お前を殺したいわけじゃない。だがエーデルガルトは振り払う。貫く意志は変わらない。
言葉は尽きた。ミノルは最後の指示をクロードに下す。英雄の遺産フェイルノート、その戦技。天より落つる星が皇帝の覇鎧を捉えた。
敗北したエーデルガルト。彼女は勝者たる師の手で、最期を迎えることを望む。こうべを垂れるエーデルガルト。その瞬間、ミノルは叫ぶ。
「指輪を渡せえぇぇ!! ここで! ここしかねぇ、ここしかねえだろ!? 剣じゃなく、指輪を渡せ……!」
軍師ミノルは愛に生きた。その愛は届かなかった。軍師ミノルは指輪を渡そうとしたが、彼の分身は引導を渡してしまった。
だが軍師ミノルは聞いたのだ。エーデルガルトの最後の言葉を。
「二人で……
歩き、たか……」
こうして一連の戦争は終結した。勝ち得たものは大きいが、失ったものも多かった。
軍師ミノルが倒した他学級の元生徒は8名。内、黒鷲の学級が6名。青獅子の学級が2名。
青獅子の学級は大部分を救えたものの、黒鷲の学級はスカウトしたベルナデッタを除いて、ドロテア以外は全滅してしまう結果となった。
だが軍師ミノルにはまだ敵がいた。遠き過去より蘇りし亡霊。闇にうごめく者たちを退けたミノルクラッセは、最後の戦いに臨む。そして最後の出撃前、ミノルは生徒たちの前で誓うのだった。
「絶対に死なせない」
第一の戦死者 リシテア
「大丈夫なはず大丈夫なはず。……っ、あぁっ……! はぁっ……」
「……!? やべえぇ!!!! やめろおおおおおおおおおおおおアッハァアアアア、アア!!!!!!」
音の電気信号への変換の限界を超えたミノルの悲鳴が、ボロボロの振動となって我々の耳に届いた。
上空より飛来した一本の矢。それは損傷した具足に命中し、火花を飛び散らす。瞬間、世界が停止する。少女の断末魔は、軍師の悲鳴によってかき消された。重装の持ち主が地に倒れ伏したことを、ただ乾いた金属音のみが告げる。
「せめて……もう少しだけ、長く……
生きたかった……」
軍師は目の前の光景に絶句し、少しの笑いと短い言葉を継いだ後、怒りをぶちまける。
ついにその時が来てしまった。つちかってきた指揮力と天刻の拍動を駆使して、大修道院の課題を、そして帝国を倒すための戦いを、一人も欠けることなく駆け抜けてきた軍師ミノルとその生徒たち。
あと1エピソード、あと1マップ。ミノル史上初の、全員生存でのクリアを達成したファイアーエムブレムになってもおかしくはなかった。
だが、その未来は閉ざされた。軍師ミノルの自慢の教え子、ミノルクラッセ最強の盾、雷の魔導フォートレス……リシテアの死によって。
闇にうごめく者たちの本拠地シャンバラの崩壊によって封印を解かれた、古の邪王ネメシス。彼の率いる手勢はガルグ=マク大修道院を目指して進軍し、その東の平原にて、迎撃に打って出たミノル軍と激突する。
EP.22「大地の夜明け」。フォドラを過去から解放するため最後の戦いがここに始まった。
マップは平原全体に満遍なく敵兵が配置され、西端に自軍が布陣している構成。このマップを見たミノル軍師は、北からの攻撃に対しては守りを固め、南から進軍し東端の敵将ネメシスを目指す作戦を考案する。
南に弓砲台があったのは幸運だった。飛行弓や魔法の長射程攻撃に加え、弓砲台による遠距離攻撃でヒルダや衣装を新調したミノルも活躍。全員で南側に集まり、それでも攻撃が届くわずかな東側の敵に対するしんがりはリシテアに任せた。
これこそが古代兵たちの卑劣な罠だった。なんと北側の古代兵たちは、森と平地が混在する複雑な地形に陣取り、かつリシテア自身を障害物にすることで、その移動力を実際よりも少なく見せかけた。あたかも攻撃が届かないかのように装ったのである。
詳しく説明しよう。移動力5の勇者古代兵が、平地から回り込めば移動力が6でないと届かない位置。ミノルはそこにリシテアを配置した。だが、森の存在にミノルは惑わされた。勇者古代兵は森の上を直線で突っ切れば、移動力が5でもリシテアの位置に辿り着けたのだ。
通常であればそれでもミノルは気付いただろうが、加えてリシテアの位置で森を突っ切った場合の移動力が増減する配置だったため、気付けなかった。しかも古代兵たちの策略はそれだけではなかった。彼らは縦一列に布陣することで、背後のスナイパー古代兵の存在を隠していたのである!
縦一列という陣形が、警告線が薄くて見えにくいという状況も作り出した。そして敵フェイズ、リシテアは本来想定していた敵に加えて勇者古代兵の攻撃も喰らい、最後にスナイパー古代兵が動く。
リシテアは想定外のダメージを受けすぎた。それでも五発の攻撃の内、一発でもかわしていれば攻勢に耐えられただろう。だが最後には運にも見放された。ミノルがいくら見つめても、目の前のリシテアはもう動かない。胸に秘めた誓いは儚くも破れ去った。
「これバグだよな。バグでしょ?」自分のミスが認められないミノル軍師は、なんとビデオ判定による再審を要求。だが上述の理由についに辿り着き、悔しさを口に溜め込んだ後、咆哮。
「くっそオオオオオオオオオオオオ間違えてるううううううううァッハ、ゥッハ!!!」
まるで某裁判ゲームの犯人のような豹変ぶりを見せ、ミノルは憎悪に支配された修羅へと化身。リシテアの敵討ちのため周辺の敵の皆殺しを宣言する。
だが軍師ミノルの弱点の一つは、頭に血が上った際の危機察知能力の低下である。となれば、続けて次の犠牲者が出るのは、時間の問題でしかなかったのかもしれない。
第二の戦死者 イグナーツ
この最終マップでは、邪王ネメシスの他に、彼の配下だったとされる古の十傑の古代兵も敵として参戦する。この十傑古代兵の完全撃破がネメシスの打倒に重要なファクターとなっているため、軍師ミノルはレオニーとクロード、ローレンツを中心に、ブレーダッドやゴーティエやダフネルといった面々を順調に退けていく。
だがその中で、ミノルクラッセに牙を剥いた者もいた。その名は隼の如き高貴なる天馬を駆る女騎士、フラルダリウス。
グロンダーズの会戦で同じ紋章を持つ剣士に苦しめられた軍師ミノルは、最終マップでも再びフラルダリウスの一族によって窮地に陥る。例によって戦力分散で中央に孤立したミノル、イグナーツ、ヒルダの小隊が、ファルコンナイトであるフラルダリウスの強襲を受けたのだ。
ヒルダであればその迎撃も可能かと思われたが、魔法槍インドラの矢による間接攻撃で反撃に失敗。さらに勇者やエピタフの接近にも気付かず、北軍と南軍の行動を終了。ミノルたち三人は、比較的非力な者だけで無傷のファルコンナイトを倒さなければいけない状況に置かれる。
「イグナーツを下げない俺は! もうヒルダが倒せなかったらイグナーツに喰らってもらおうぜ?」「見捨てたわけじゃないって! ただヒルダとイグナーツをもう天秤にかけた時に、思いっきりどがーんってヒルダが下に落ちるだろ?」「天秤のもう勢いでシーソーでぶっ飛んで宇宙まで飛んでいくぐらいの、重みの差があるじゃん」
追い詰められたミノル軍師は宇宙規模の言い訳を展開。ヒルダを守るために、無力なビショップのイグナーツをおとりに仕立て上げたのだ。
ここからが英雄フラルダリウスの真骨頂だった。ミノルの35%の必殺は当たらず、しかも「大盾」でダメージを軽減。さらにイグナーツの回復を受けたヒルダのキラーボウの55%の必殺すら発動することなく、命中率84%の二射目でさえ回避したのだ。
そして敵フェイズ、いち早く動いたフラルダリウスの銀の槍が、イグナーツの心臓に迫る。
「イグナーツ死なないの? なんだ死なねえのかよ」
やけに落胆した軍師ミノルの声。なんとヒルダの所持していたスキル「速さ封じ」が功を奏し、イグナーツは二回攻撃を喰らわず耐え切ったのだ。なんたる悪運。
だがこの直後、こちらも絶命寸前の北軍のセテスを狙っていた敵エピタフの矛先が、突如変更されイグナーツに向けられてしまう。
「あっ、うそだろ? イグナーーーーツーーーー!!!!」
第一部の頃はミノルと一部の視聴者たちから多大なヘイトを一人で集め、第二部に入ってからはヒルマリの間に挟まったりサウナバトルで覚醒したりとイグ様旋風を巻き起こしていたイグナーツ。
彼が絵に描いたフォドラの未来の光景を、その目で見ることは能わなかった。彼はヒルダとセテスの身代わりとなり、自らの理想を戦友たちに託した。だが最強の盾に続き万能回復役をも失ったミノルクラッセの手は、はたしてネメシスの体に届くのだろうか。
「もっと……いろんな、景色を……
見たかったな……」
「地面が見れるじゃないか、
イグナーツ」
第三の戦死者 マリアンヌ
軍師ミノルが金鹿の俺的ヒロインと呼んで憚らず、やはり愛をそそがれて育成されてきたマリアンヌ。だがその最期は、あまりにも無残なものだった。
二人の命をチップにして十傑を殲滅し、とうとうネメシスと対峙するミノルクラッセ。十傑防壁を剥がれてなおラスボスに恥じない防御力を誇るネメシスだったが、ミノルクラッセには彼と互角に渡り合える攻撃力を持つ戦士が、一人だけいた。
その名はローレンツ=ヘルマン=グロスタール。リシテアと双璧を為し数々の魔獣を素手で屠ってきた彼は、最終戦にあたってついに神器キラーナックルを解放。ここまでも高すぎる必殺率で数多の古代兵やシャンバラの残党を沈めてきた。
「ローレンツがいなかったら本当に無理だぞこれ!」「まじでお前しかいねえんだローレンツ頼む」ミノルの期待を一身に背負ったローレンツは、以前自身が望んでいた通りに、英雄の中の英雄の座をかけて敵の首領と相対する。
ローレンツは決して手を抜かなかった。目にもとまらぬ神速の四連掌。初撃はネメシスにかわされたものの、必殺も出した。だが、解放王は、地上に耐え切れる者などいなかったローレンツの絶殺の拳を受け切ったのだ。
「逃げろローレンツ!!!」一部始終を見届けた軍師ミノルは、すぐさまフレンにレスキューを指示。一度目のチャンスを物にし損ねたローレンツは後方に退き、マリアンヌのライブによる治療を受ける。
それこそが、最悪の一手になることも知らずに。
敵将は動かないものである。その思い込みはどこから来たものだろうか。風花雪月においてもミノルは既に一度アケロンに煮え湯を飲まされている。あるいはそれは願望でしかなかったのかもしれない。でなければ、愛するマリアンヌに伸びていたネメシスからの警告線を見逃したことをどう説明できようか。
「動くなんて考えられない!!!!!! なんで動くんだよごいづうううううううううううううううううう! クゥワアアアアアア!!!」
たった一撃。ネメシスによる数秒にも満たない天帝の闇剣の一振りが、マリアンヌの五年間の努力、感情、思い出、生きる望みを失っていた彼女が再び生きようとした意志、そのすべてを奪った。
初めは剣士路線で育てられていたマリアンヌ。エピタフになった頃から完全に剣を捨て、本来の魔法職として必殺を連発し活躍していたが、死ぬ時は一瞬だった。自らが一度目で決められなかったせいで彼女を失ったローレンツ、そしてヒルマリ(マリヒル)推しの全国のヒューベルトの悲しみは到底計り知れるものではない。
絶望がミノルを襲う。その瞬間、ミノルは自分たちがネメシスに勝てないことを理解した。理解させられてしまったのだ。
第四の戦死者 ベルナデッタ
軍師ミノルとペガサスナイト。この符号が示す意味を知る者は多いだろう。まさに合縁奇縁というべきか。
この世界でも二人は出会ってしまった。いや、ベルナデッタは元はペガサスナイトではなかった。ミノルがそうあることを望んだのかもしれない。
別れの決まっている物語なら、最初からページをめくらなければ良かったのに。だがその本を手に取ったのは、他ならぬミノル自身だった。
ローレンツは力及ばず、マリアンヌは消し飛んだ。だが、ここでチャンスが生まれていた。マリアンヌが命を賭してネメシスを引きつけたことで、ネメシスの足は初期位置の防御床から離れていた。わずかであるがネメシスに攻撃の通る可能性が生まれたのだ。
軍師ミノルは抜擢した。セテスの計略は届かず、ラファエルの攻撃も一発目がかわされる。だが彼の本命はファルコンナイトのベルナデッタだった。そして命令したのは、舞うが如き三連携、風を支配する天馬と翼竜が織り成す雪月花「トライアングルアタック」。
ネメシスの周りを飛行兵が取り囲む。必殺が出る。ベルナデッタは愛に応えた。ネメシスを一歩後ずさらせる。だがその時、ネメシスの口角が醜く上がる。
画面を縦に切り裂くのは、ネメシスのカットイン。ベルナデッタの必殺に対し、ネメシスもまた必殺を繰り出したのだ。
「クソがああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」
もう数えるのも億劫になるほどの今日何度目かのミノルの絶叫。ミノルが手元を強く叩く。彼の愛した天馬騎士は、断末魔と共に落馬し、鼓動を止めた。
ベルナデッタの必殺率は63%。ネメシスの必殺率は11%。38%どころではない。ミノルは最後の最後で完全に運に見放された。
彼女は、結果的に生徒の中で唯一ミノルのスカウトを承諾した生徒だった。戦闘では、飛行弓の有用性や囲いの矢で元からの金鹿の生徒にも劣らぬ活躍をし、日常では、コミカルな支援会話や引きこもりトークでミノルのプレイを彩った。特に驚異的な力の成長率は、ミノルのベルナデッタだからこそといえるものだった。
「あたしに……できたこと……
もっと……あったかなあ……ごめんね……」
そんなベルの笑顔はもう見られない。
「な、んで……ベル……、っ。……ッ……」あまりにも悲痛なミノルの嗚咽だけが残響となって、彼女のむくろに寄り添う。
だが、ベルナデッタの死は決して無駄などではなかった。彼女の必殺はネメシスの体に確実に届いていた。目減りしたネメシスの体力。それは、ローレンツであれば一回ですべてを終わりにできるほどに減っていたのだ。
「終わったでいいよな。終わったでいいよな」
これまでに道を違えたかつての友たち。勝利を目前にして散っていった仲間たち。その無念を晴らすが如く、再び放たれる四連打。もうローレンツは間違えない。最後の一撃は、必殺。
「よっっしゃああああああああ!!!!!!」
軍師がこの日一番の歓喜の声を上げる。神を屠る星は地に落ちた。
ローレンツパンチが、世界を救った。
クロードとミノルは勝利した。群がる事でしか戦えぬ弱き者たちは、壁を乗り越え、手を取って、心で触れ合い、そして愛に生きて、自分たちの未来を勝ち取ったのだ。
ネメシスとの戦いは、くしくも千年前の再現となり、フォドラに新たな時代の嚆矢となる夜明けをもたらした。
戦後、ミノルは母親と共に決めた想い人に指輪を渡す。こうして、実期間5ヶ月以上にも及んだ長き戦いは、ついに終わりを迎えた。
バルバロッサのクロードは、序盤から射程3攻撃の使い手として大いに活躍した。
グラップラーのローレンツは、常識破りの育成で最後まで勝利に貢献し続けた。
ドラゴンマスターのラファエルは、ベンチウォーム期間を経た後は頼れる壁に成長した。
アサシンのヒルダは、妖刀アシユラやキラーボウの必殺で数々の敵を退けた。
ボウナイトのレオニーは、弓に槍にと器用かつ万能といえる縦横無尽の懐刃だった。
ドラゴンナイトのセテスは、途中加入ながらピンチヒッターとして度々戦力を支えた。
踊り子のフレンは、ライブにリザーブにレスキューに踊りにと八面六臂の聖女だった。
ハンネマン、マヌエラ、アロイス、カトリーヌ、シャミア、ツィリル、アンナも、副官や控えながら物語を彩った。
ニルヴァーナのミノルは、ちょっと終盤は活躍できなかったかもしれない。
ともかく、名軍師ミノル率いるミノルクラッセは、フォドラの地に平和をもたらしたのだ。彼らの名は、死した者たちと共に永く歴史に語り継がれることだろう。
この項目には書き切れなかったが一連の戦い以外にも、コナン塔での激戦、舞踏会でのあれこれ、第一部最終戦の名勝負、第二部冒頭の再会、熱戦サウナバトル、指輪選択会議、何故か戦闘以上に苦しんでいる支援会話鑑賞などなど、様々な見所があった。それを見返してみるのも良いかもしれない。
金鹿と同盟をめぐる物語に終止符を打った軍師ミノルは、次はいかなる世界に飛び立つのか。それは彼のみぞ知るところである。
〜最終結果〜
他学級戦死者 8名
自学級戦死者 4名
自軍生存者 15名
掲示板
42 ななしのよっしん
2022/07/09(土) 23:38:26 ID: cAGvJB591T
詳しく書いてくれたのは凄く嬉しいし有難いんだけど読んでて共感生羞恥がキツい
書いてる時に何か感じないんだろうかこれ
痛々しいところを消すだけで数段見やすくなるのに
プレ垢しか編集できないニコ百だから仕方ないけどさ...
43 ななしのよっしん
2023/04/12(水) 00:50:18 ID: qBc8CexY/2
これに共感性羞恥とか戦死者まとめはつみたん??かわいいね舐めてあげる
44 ななしのよっしん
2024/02/01(木) 15:09:29 ID: AviTdizqA7
魔で育成したせいでハードなのにクソ弱かったミノルベレト先生すき
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最終更新:2025/12/07(日) 04:00
最終更新:2025/12/07(日) 04:00
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