kamS氏による非東方曲PVの第4作目。
ゴシックメタルバンド、Epicaの「Cry For The Moon」にのせて
紅魔館の面々を描いた作品である。
東方紅魔郷、東方永夜抄、東方儚月抄、東方文花帖を題材に、レミリアの月旅行の物語を描いている。
シーン転換が多いため、ストーリーを追いづらいが、大まかには、
永夜抄EDで語られたレミリアの我侭から始まる宇宙船開発の物語である。
タイトル「月と無慈悲な夜の女王」は、
R・A・ハインラインの古典SF「月は無慈悲な夜の女王」(1969年)が元ネタである。
原題:Moon Is A Harsh Mistress
「月は無慈悲~」は、月世界都市の住民が自由を求めて地球と戦うという物語。
儚月抄で穢れない浄土として描かれる月都は、同作では流刑地とされている。
流刑地とはいえ植民から数世代が経過、月面には治安の良い都市が形成されている。
月は、人間が生きるにはあまりにも過酷(Harsh)な環境であるため、犯罪に対して抑止力が働くのだ。
そんな中、地球によって搾取されてきた月世界市民達は、自由を求めて革命を起こす。
これは幻想卿の住民が月を攻める儚月抄とは真逆のストーリーになる。
儚月抄で王と言えば月都の始祖「月夜見」である。
大げさに言うならば本作は「月都の夜の王」に戦いを挑む「地上の夜の女王」の物語である。
「あの吸血鬼は私が忘れた心を持っている。外の世界の人間も忘れつつある感覚。
・・・苦労を楽しもうとする余裕の心である。」
この一説は儚月抄で紫が語るレミリアの人物評である。
(小説版儚月抄 第五話 「果てしなく低い地上から」より)
儚月抄で紫は、湖面に映る月の境界を操作し、月に攻め込もうとレミリアを誘う。
しかし、レミリアはそれを断り、外の世界のロケットを模倣して、自らの力で月へ向かおうとする。
結果、ロケットの開発は難航。紅魔館の面々は労苦を強いられる事になる。
アポロ計画の幻想入りで漸く完成したロケットも見窄らしさを否めない。
効率を優先する式神の藍などは、レミリアの非合理的な行動が全く理解できない。
しかし、紫には理解できる。
―見窄らしいロケットで、惨めな思いをして旅するから楽しいのだと、
最短の方法で楽をして手に入れた物には何の価値も無いと。
レミリアは多くの人間や妖怪が忘れつつある心を持っている。
それは、苦労を楽しもうとする余裕の心なのだと。
キリスト教によって抑圧された心の解放を訴える「Cry For The Moon」と相まって
レミリアのカリスマ性が一層際立って感じられる。
この俳句は、江戸時代の俳諧師、小林一茶(1763-1828)が詠んだもので、
名月を取ってくれとせがむ子供の無邪気さと、
それを取ってあげることのできない親のもどかしい気持ちを描いた作品である。
一茶は、身の回りにある光景を、庶民的な視点と素朴な言葉で描いた俳人だが、
終生、家族運には恵まれなかった。
幼い頃、義理の母親との軋轢でトラウマを植えつけられた彼は、
その後長期に渡り生活苦を経験、52歳でようやく妻を迎える。
しかし、生まれた4人の子は、全員が幼くして他界。その妻も37歳の若さで亡くなっている。
この句は一茶が56歳の時、実子を前に作られた句と思われるが、
その後の宿運のつたなさを重ねると、より鮮明にその情景が蘇ってくる。
本作で、泣く子は、月に行きたいとダダをこねる紅魔館の主だろう。
そしてそれを見て困るのは、咲夜、パチュリー等、紅魔館の面々だ。
最も、実際に月に行ってしまうあたり破天荒ではあるが、
ある意味では、一茶が求めて得られなかった、強い絆で結ばれたファミリーとも言える。
本作で描かれるレミリアと咲夜が、
主従の関係を超えて親子のように見えるのは気のせいではないのだろう。
Wikipedia 小林一茶
登場時間:0:01~
動画は1969年7月20日、アポロ11号の月面着陸シーンから始まる。
宇宙飛行士は、有名なアームストロング船長ではなく、エドウィン・オルドリン。
元写真では、宇宙服のマスクに月面上の宇宙船と、撮影者であるアームストロングが映っているのだが、
ここでは月面のみが映しだされている。
月面到着時、宇宙飛行士がUFOを目撃したとの噂があり、うどんげの弾幕はそのパロディと思われる。
なお、小説版儚月抄では、驕った人間が月面に旗を立てて、月面戦争になったとあり、
その意味で、このシーンは月面戦争の発端でもある。
放たれた弾幕は、月の裏側、つまり月都から発射されているように見える。
座薬形状の弾幕がうどんげ固有のものかは定かでないが、
月面戦争までは月にいたことを考えると本人の弾幕であってもおかしくはない。
Wikipedia 月面着陸
紅い月は、悪い事の予兆や、悪い事を企んでる者がいる事の現れと言われている。
その通り、レミリアは月に行こうと思い立ち、紅魔館の面子は大わらわする。
一方、幻想卿の妖怪達は、思い思いに満月の夜を満喫するのであった。
登場時間:0:18~
雰囲気のある背景は、自然物を使った芸術作品で知られている
アンディー・ゴールズワージーの作品が元ネタと思われる。
しかし、kamS氏の背景画は、多くのコメントに見られるように、
些か常軌を逸したクオリティである為、偶然の一致である可能性も高い。
赤い木の出典は、永夜抄のEDテーマ「幽玄の槭樹」の解説だろうか。
"勿論、紅葉も紅い月の光を受けているからである。切ると紅い。" (東方永夜抄 おまけ.txtより)
なお、幹の赤い木として、薔薇科の「博打の木(赤木)」という名前の木があり、
本作で登場するアカギやカイジのネタはそこから連想されたものと思われる。
異国を思わせる平原を渡る蝙蝠を上空からフォローしつつパンアップ、
霧の湖を経て満月を映すカメラワークは、映画のワンシーンを思わせる。
特に説明不要かと思われるが、吸血鬼は蝙蝠に姿を変えられると言われている。
ちなみに、紅魔郷のレミリアは4段階目で大量の蝙蝠を吐き出すが、当たり判定も無く大した意味が無い。
登場時間:1:06~
カリスマ溢れるお姿である。 紅魔郷の設定資料に、
「彼女が他の妖怪に慕われている理由は、その人格ではなく種族に対する畏怖にある」
と書かれているが、儚月抄や本作で描かれている、好奇心に満ちた自由な心、
というのも彼女のカリスマを支える魅力の一つだろう。
Follow Your Common Sense (あなた自身の常識に従いなさい)
と言い放つ自信に満ちた紅い目は、多くの人妖を魅了するに違いない。
登場時間:1:24~
パチュリーに月に行く方法を見つけるよう指示するレミリア。
永夜異変で月に興味を持ったレミリアは、気まぐれに月に行ってみたくなったのだ。
レミリア曰く「さーて、今夜中に月にいけるのかしら?」
紅魔館の頭脳の出番である。
(東方永夜抄 グッドエンディングより)
パチュリーの読んでいる本は、「THE MAN WHO SOLD THE MOON(月を売った男)」で、
「月は無慈悲~」と同じくR・A・ハインラインの著作である。
二編からなる短編小説で、月に行きたい一心で月事業に邁進した事業家の物語。
タイトルの印象とは異なり、センチメンタルなSF作品である。1953年出版。
月面着陸が1969年である事を踏まえると、ロケットの資料としては、ほとんど役に立っていないに違いない。
登場時間:1:27~
少ない資料からロケットの材料を割り出したパチュリー。 図に記載されている材料は次の通り。
材料名 | 出典 |
コマ(ジャイロ) | 文花帖 |
スッポンの生血(液体燃料) | 文花帖・永夜抄ED |
筒(ロケットの胴体代わり) | 文花帖 |
八卦炉(ロケットエンジン) | 文花帖・永夜抄ED |
ガマの油 | 文花帖、チルノがガマに飲み込まれる話か? |
カメラ | 文花帖、射命丸が元ネタ、または、ロケット発射時に写真を撮る報道陣を見てか? |
大麻(おおぬさ) | 不明、ロケット発射時に御払いをする資料でもあったのか? |
ネズミ | 不明、ネズミ→火鼠の皮衣→石綿から連想か? |
背景の書棚にある白い物体は、ムーミンのニョロニョロ。ニョロニョロが登場するのは、
漫画版儚月抄で登場するロケットの造形がムーミンハウスを彷彿とさせる為と思われる。
机の上の機械は古い時代の天体儀である。
登場時間:1:32~
パチュリーに指示されたロケットの材料を集めた咲夜。 (文花帖 「夜を駆ける珍品ハンター現る」 より)
今夜中に月に行きたいというレミリアの要望に応えて、急いで調達したと思われる。
八卦炉は所有者である魔理沙ごと、ガマもチルノを飲み込んだまま無理やり連れてこられている。
パチュリーが示した材料もそうだが、咲夜が集めた材料も微妙におかしい。
満月が彼女らを少し狂わせているのだろう。
登場時間:1:43~
「月まで届け、不死の煙」は妹紅のテーマ曲。 しかし月に向かっているのは焼肉(焼き鳥)の煙なのであった。
焼いているのは手羽先だろうか。 文花帖の「竹林が焼き鳥のメッカ」が元ネタと思われる。
慧音が几帳面に焼けるのを待っているのは元来の性格からか、満月の日でカリカリしているせいか。
妹紅は満月を見つめて、不安げな表情を浮かべている。 紅い月に何か予感を覚えたのだろうか。
バケツの永遠亭の文字を消して、自分の物にしている妹紅が可愛らしい。
バケツの中の生物は出典不明。蛙か蛇かツチノコか。
(追記)
二人が食べている肉は、しょっくん(食用ガエル)との事。バケツの中の生物も蛙と思われる。
kam'S氏HP Q&Aより
登場時間:1:54~
自分の作った暗闇で周囲が見えず木にぶつかるルーミア。
曰く「しょっちゅう木にぶつかったりするけど、それも闇の風物詩」
日の光は苦手でも月の光は大丈夫なようだ。
紅い月を見て何を思うのか。あるいは何も考えていないのかもしれない。
(文花帖 「白昼堂々、暗闇に潜む魔物」 より)
登場時間:2:08~
秋の夜長を虫と過ごすリグル。
満月といえば秋。秋の虫といえばコオロギだが、リグルのお供はカマドウマである。
手綱が付いているところを見るとペットなのだろう。
カマドウマの古名「竈馬(いとど)」は秋の季語で、古くは割と風流な存在と見なされていた。
かつての日本家屋では日常的な存在であったが、近年の住環境の変化により、駆除対象以外での
日本人との関わりが少なくなっている。
昆虫は進化の系譜が人類とは大きく異なる。 見た目も伴い、昆虫は地球上で進化したものではなく、
隕石に乗って宇宙からやってきた宇宙人である、といった説もある。 カマドウマのような奇怪な造形の
虫を見ると、そう言いたくなる気持ちも解らなくない。
※ 注) 実際は、昆虫はミミズのような環形動物から進化したと言われている。 ただ、最近の分子系統学的な
研究によると、両者は独立して進化したらしく、解明されていない点も多い。
限られた資料と、咲夜が集めた材料で、外の世界のロケットを研究するパチュリー。
永夜抄直後はアポロ計画の詳しい資料が幻想入りしていなかったと思われる。
登場時間:2:12~
黒板にパチュリーの研究の苦労が見て取れる。記載内容は下記の通り。
記載項目 | 説明 |
t=root(c2+(vt)2)/root(c2+v2) | 特殊相対性理論。いわゆるウラシマ効果についての式。 |
Gμν=Rμν-1/2Rgν | 一般相対性理論。時空の歪曲率についての式。 |
dzx/(d+z)+1 | 何らかの軌道を計算する式と思われるが定かでない。 |
Armstrong? | アームストロング船長の事だが、パチュリーは これが何なのか解らなかったようだ。(永夜抄ED) |
Fry Me to the moon!! | スペルミスは永夜抄のレミリアのセリフに由来。 スペルミスをしているという事はレミリアが書いたのだろう。 |
○×ゲーム | 結果は引き分け。暇を持て余した レミリアとフランが邪魔でもしていたのだろうか。 |
その他 | イクさんらしき落書き(Hi!)、鳥居のマーク、(^¬^)など |
背景の写真は、古典物理学の祖アイザック・ニュートンと思われる。 ただし、ニュートンは300年前の
人物であるため、パチュリーの年齢が100歳+αであるとすると辻褄が合わない。
同人物については、見た目から小泉元首相とする説もあるが、因果関係が無く定かでない。
写真の下にある、ピンク色の鎧のような物体は出典不明。
ピンク色の鎧のようなものは、マーベルクミックスに登場するスカーレットウィッチ(紅の魔女)の衣装。
パチュリーと並んで写真に写っている人物は、同じくマーベルコミックスに登場する世界最強の魔女
アガサ・ハークネスで、スカーレットウィッチの師匠に当たる。
衣装と写真の関係から考えて、スカーレットウィッチ=パチュリーという設定があると見て間違いないだろう。
パチュリーが女性の声に合わせて驚いたようにジャンプするのは、研究に四苦八苦している事の表現だろうか。
ジャンプのポーズが、おそ松くんで登場するイヤミのシェーだったり、
元祖ビジュアル系バンドBUCK-TICKのバクチクジャンプ(?)だったりと案外芸達者である。
登場時間:2:19~
剣玉、ルービックキューブ、手品のハット、びっくり箱、手品のステッキ、
アメリカンクラッカー(?)など、昔懐かしの玩具類が収集されている。
参考資料として収集されたと思われるが、明確な理由は定かでない。
登場時間:2:25~
ガマの油は江戸時代「鏡の前におくとタラリタラリと油を流す」という口上で売られていた。
小悪魔がキャバクラ嬢の格好をしているのは雑誌「小悪魔ageha」が元ネタ。
ミッキーマウスとカーネルサンダースが処刑されているのは、
両者が資本主義の象徴であることを考えると意味深い。
登場時間:2:30~
魔理沙が貼り付けられているのは、昔の宇宙飛行士の訓練器具。
魔理沙も月に連れて行くつもりだったのだろうか。
あるいは、単に拷問されている様にも見える。
となりに置いてあるのは中世の拷問器具でアイアンメイデン、洋梨など。
アイアンメイデンはイギリスのヘヴィメタルバンドでもある。
登場時間:2:36~
美鈴が身に着けているのは、アニメ巨人の星で登場する大リーグボール養成ギプス。
大リーグボール打倒ギブス。原作では、中日に入団したアームストロング・オズマが
これを身に着けて特訓。飛雄馬の大リーグボールを打破している。ドアラは中日繋がり。
石仮面は、血液の付着をトリガーとして被っていた者の脳を刺激、吸血鬼へと変貌させる
作者不明の仮面である(JOJO)。
よほど研究資料が不足していたのか、節操無くあらゆる物を研究している様子が伺える。
Wikipedia アームストロング・オズマ
登場時間:2:42~
集めた材料で組み立てたロケット。
地面に魔方陣が描かれていることから魔法で完成させようとしている事が伺える。
シーンが切り替わり紅魔ダンスが始まる。
ストーリーの本筋とは外れて、紅霧異変の様子が描かれている。
紅魔ダンスと呼ばれるのは、紅魔館の5人がKOUMAの文字を表すように踊っているからである。
登場時間:2:48~
内面のカリスマは、着衣で飾らなくても溢れ出てくるものである。
華美な衣装で着飾る小悪魔は一見華やかに見えるが、
その実、流行の奴隷であり、それ故に小悪魔なのだ。
登場時間:2:54~
このシーンは文花帖の紅霧異変のくだりが元ネタと思われる。
紅い霧の中で白い強い光が発せられるのは霊夢達が暴れた時の光。
背景にベルセルクの降魔の儀で現れる紅い手が出てくるが
これは紅い霧がレミリアの指先から出るという文花帖の記載が由来だろう。
(文花帖 「地上に架かる紅い虹と天使の翼」 より)
降魔の儀を紅魔の儀と言い換えれば、ロケット作成魔法の前準備とも言えるが、時系列的には矛盾する。
何故に踊るかは、第一級の謎である。
永夜抄でレミリアのショットに「ナイトダンス」という名前が付いているが邪推の域を出ないだろう。
登場時間:3:05~
墜落してくる隕石をフランが破壊するのは文花帖が元ネタ。(文花帖 「巨大流れ星空中爆発」 より)
文花帖でレミリアは、隕石が第三者の悪意で落とされた事を匂わせているが、事実は定かでない。
綿月依姫の仕業であるとする説もある。
behind the scenes opens reality(人知れず本性が目覚める)
歌詞とのリンクが実に巧妙である。
フランが抱っこしているのは、デッドベアで、アメリカのロックバンド、
グレイトフル・デッドをモチーフにしたテディベアの一種。
タイトルの原作「月は無慈悲~」では、月の住人が地球に向かって貨物コンテナを投擲し攻撃する、
という話があるが、このシーンは、それを彷彿とさせる。
登場時間:3:20~
このチューブは麻雀漫画アカギが元ネタと思われる。
麻雀の天才アカギの偽者(通称ダメギ)が、ある人物と自らの血液を賭けて
勝負するのだが、その時に、このような採血器具が使われている。
ティーカップは金の雰囲気からロイヤルウースターに見えるが定かでない。
登場時間:3:26~
レミリアが血をこぼすのは公式設定。 多くの血をこぼして洋服を真っ赤にしてしまうので
スカーレットデビル(紅い悪魔)と呼ばれている。(紅魔館-おまけ.txtより)
レミリアの特徴的な手つきは原作通り。
時間を止めて世話をする咲夜が甲斐甲斐しい。
柱の上に乗っているのは某人気ゲームのマ○オとク○パである。
ロケットを完成させる為、魔法の儀式を執り行うパチュリー。
文花帖で記載されている外の世界の魔法についての失敗談が元ネタと思われる。
登場時間:3:40~
パチュリーの詠唱シーンは1968年に公開された映画「2001年宇宙の旅」が元ネタ。
映画「2001年~」は謎の物体モノリスを巡る人類進化の旅を描いた作品で、冒頭に、
道具を使うことを覚えた類人猿が、骨を空中に投げ放つシーンが描かれている。
大空を舞った骨はシーン転換でロケットに切り替わるのだが、
これは、道具を使うことで生存競争を勝ち抜き進化した類人猿が、
後に人類となりロケットを生み出した事を意味する。
(映画史上最大のジャンプ・カット・シーンと言われている)
パチュリーは魔法で人類進化の過程を再現する事によって、
進化の結晶とも言えるロケットを練成しようとしたのだ。
登場時間:3:46~
原生生物のようなものが多数現れる。 詳細は判明していないが、下記のように推測されている。
物体 | 説明 |
白い目玉のような物体 | 星のカービィのラスボス「ゼロ」、または、 ファミコン「スターラスター」の敵キャラと思われる。 |
白い毛玉のような物体 | ケサランパサラン(?) |
細長い白い物体 | スカイフィッシュ(?) |
その他 | 不明 |
登場時間:3:51~
映画「2001年~」で登場する人工知能HALが登場する。
HALは宇宙船の航行や保全を司る、人類が生み出した究極の道具である。
アイアンメイデンは熾烈な生存競争、白い足は人類進化の足音を意味すると思われるが定かでない。
黒縁の赤い目はHALの象徴である監視カメラ。
咲夜にカメラを調達させたのはHALを作るためだったのだろうか。
カエルは前出のガマの油の練成結果と思われる。
「月は無慈悲~」でイボ蛙似のモートという人物が登場するが関連性は定かでない。
登場時間:3:59~
HALが登場し宇宙船が完成する間近、儀式場はモノリス(黒い石版)に潰される。
文花帖でパチュリーは魔法失敗の原因について「外の世界の魔法は複雑すぎたの」と述懐しており、
本作でも、実力不足を小バカにするように骨が落下してきている。
一方で、モノリスは映画「2001年~」で、神の意思/導きとして描かれている物体であり、
パチュリーの魔法は、神の力によって無理やり失敗させられた様にも見える。
ロケットは生存競争という穢れの果てに生み出された、言わば穢れの結晶である。
穢れを嫌い、神を操る月人が、何らかの干渉を行っていたとしても不思議ではない。
登場時間:4:02~
門はロダン作「地獄の門」。
地獄の門はダンテの「神曲」で登場する地獄の入り口に置かれた門であり、
有名な彫刻「考える人」はこの門の一部として製作されている。
本作では、考える人ではなく、考える悪魔が配置されているのがご愛嬌。
「神曲」は詩人ダンテが過去の大詩人ウェルギリウスに導かれて、
永遠の淑女ベアトリーチェに会いに行く、という物語だが、
地獄編、煉獄編、天国編の3編全てが、星を意味するStella(伊)の語で閉じられている。
月旅行が主題の本作で登場するに相応しい作品である。
美鈴の夢は、荘子の故事「胡蝶の夢」から着想を得ているとの説がある。
~胡蝶の夢 あらすじ~
夢の中で胡蝶となり心地よく舞っていた荘子は
目が覚めて自分が蝶ではなく荘子であることに気づく。
しかし、荘子である私が蝶となったのか、
蝶である私が夢の中で荘子となっているのか、判然としない。
いずれにせよ、荘子と蝶は、形の上でこそ区別はあるが、
主体が自分であるのは変わりなく、これが物の変化というものだ。
~あらすじここまで~
荘子(紀元前369~286頃)の思想は無為自然を基本とし「胡蝶の夢」はそれを端的に表している。
荘子を含む老荘思想は、道教や仏教、禅宗や浄土教、朱子学など、多方面に影響を与えているが、
本来は、あるがままを受け入れるという脱世俗的な思想である。
人間であること、妖怪であることに拘泥しない美鈴の性格は、荘子の思想に通じる物がある。
些事に囚われない鷹揚さは美鈴の魅力の一つであり、余裕の無い現代では得難い豊かさなのかもしれない。
なお、荘子は「何ものにも囚われない自由な生き方が出来る人」を至人と呼び人間の理想像としたが、
常識が無価値とするものの中に新しい価値を見出し、世俗を遊ぶレミリアの姿は至人そのものである。
また、荘子はあらゆる運命を全面的に肯定し従う運命主義者だったと言われている。
荘子自身は人格を持った運命の神を否定しているが、仮にこのシーンの美鈴が荘子をなぞらているとすれば、
彼女が運命の女神であるレミリアに従うのは当然の事と言える。
美鈴の戦法は、ストⅡの小パンチハメ。割と姑息な戦法である。 勝ちポーズはザンギエフのように見える。
紅龍は美鈴のイメージ通りだが、マイセンの陶磁器で好んで描かれる絵柄でもある。
レミリアが観戦しているのは、美鈴の試合を紅魔館の主が見て愉しんでいる、
という求聞史紀の記載が由来だろう。
ここからは儚月抄以降の話と思われる。
儚月抄以降、アポロ計画の詳しい資料が幻想郷入りし、トントン拍子でロケットの開発が進む。
ちなみに、儚月抄は永夜異変から3~5年程後の話である。(小説版儚月抄より)
登場時間:4:27~
咲夜が香霖堂で買い集めてきた資料に目を通すパチュリー。
雑誌は、
「アサヒグラフ(昭和44年8月8日号) アポロ11号月着陸成功」
「LIFE日本語版(1969年) アポロ11号総集編」など。
雑誌の表紙が実物と全く同じ構成なのが憎い。
裏面の「Oh!モーレツ」は昭和44年の丸善石油(現コスモ石油)のTV-CM。
車がビューンと走り抜けて、風圧で小川ローザのスカートがまくれるというCM。
Youtube OHモーレツ
モーレツ社員という言葉もこの前後からだが、
いずれも近年、聞かなくなって久しい言葉である。
ちなみに、咲夜が持っている「奇譚クラブ」はSM雑誌。
2009年1月に「S&Mスナイパー」が休刊となったが、
それにより「奇譚クラブ」から続いてきたSM雑誌の歴史が途絶えた。
アダルト雑誌もネットの普及により幻想入りを余儀なくされている文化の一つだろう。
後に登場するロケットが鎖ではなく縄で縛られているのはこの雑誌の影響と思われる。
パチュリーがティンとくるときの表現は、機動戦士ガンダムのニュータイプと同じである。
ティンときたのはエンジンの3段構造だろう。
ちなみに、機動戦士ガンダムは、月と同じ軌道で、地球から見て月とは正反対の位置にある
スペースコロニー「サイド7」から始まる物語である。
登場時間:4:33~
妖精に指示してロケットの完成を急がせるパチュリー(儚月抄より)。
漫画キャラではなくゲームキャラの妖精が出てくるのが面白い。
登場時間:4:45~
完成したロケットを眺めて満足そうなレミリア。
赤いカーペットは赤道を模している(儚月抄より)。
登場時間:4:49~
ロケットおひろめ会場の様子は漫画版儚月抄から。
飾ってある肖像画は左から、
吸血鬼ドラキュラ … 怪物くん(アニメ)
デューク伯爵 … スターウォーズ(映画)
吸血鬼チャランポラン … 水木しげる(漫画)
デューク伯爵は吸血鬼ではないが、演じるクリストファー・リーが
Mr.ドラキュラと呼ばれている(多数のドラキュラ映画に出演している為)。
偉大な吸血鬼というよりは、人生(?)を謳歌していそうな吸血鬼が選ばれているのがレミリアらしい。
にとりが手にしている酒は、純米酒の天狗舞。燭台は地獄の門のオブジェクトの一部と思われる。
ブラッドカステラがお気に召さなかったのか、ルーミアとミスティアは微妙な顔をしている。
登場時間:4:56~
壇上のレミリアは、機動戦士ガンダムで、将来を嘱望されていたザビ家の末弟ガルマが
戦死した後、長兄のギレンが葬儀会場で行った国威発揚演説のパロディ。
ジーク紅魔館!と言いたくなる所だが、あまりに語呂が悪い。
図面のお月様は花王のマークである。
登場時間:4:59~
「幺樂団の歴史1」(上海アリス幻樂団)のジャケットが元ネタ。
阿求が空けているワインは、ロマネコンティ(1985年)。
市場価格1,000万円を下らない代物だが、
咲夜が短時間で作ったなんちゃってプレミアムの可能性も高い。
登場時間:5:04~
この構図は、壇上のレミリアと同じく機動戦士ガンダムのパロディ。
ガルマ戦死の責任を取らされて罷免されたシャアが、葬儀中継で流れるギレンの問い
(ガルマ・ザビは死んだ、何故だ!)に対して、「坊やだからさ」と呟くシーンが元ネタである。
シャアは場末でストレートのグラスをあおっているが、紫は美味そうな酒を舐めている。
丸氷は場末ではあまりお目にかかれない代物で、溶けにくいため長時間お酒の味を楽しむ事が出来る。
最近は製氷機があるようだが、本来はバーテンダーがアイスピックで削って作る。
グラスの中身については、 トリス(昭和30後半から流行)や
電気ブラン(度数の高い古いブランデーもどき)等のコメがあるが定かでない。
満月のクローズアップから永夜抄の再現が始まる。
ここで永夜抄の描写が入るのは、永遠亭側の事情を描く為の導入シーンが必要だった為と思われる。
登場時間:5:16~
リアルリグル(蛍)登場。何故にリアルなのかは第一作目から続く謎である。
永琳については、永遠亭メンバーの中で彼女だけが罪を感じており、その姿が滑稽に見える、
という実に最もらしい説があったのだが、kamS氏のプロフィール記事によると、
永琳女史だけ絵柄を変えている訳ではないとの事。
背景の石は原作の永夜抄でも登場するが、絵柄がやらない夫(またはショボン)になっている。
咲夜がレミリアを肩車しているのは、永夜抄で採用された人妖ペアシステムの表現だろう。
登場時間:5:22~
リアルミスティア(雀)登場。
背景のミスティアは機動戦士ガンダムのララァが元ネタとの説があるが定かでない。
ポーズは内藤ホライゾンか。
登場時間:5:25~
リアル慧音(白沢)登場。
同時に背景にリアルやる夫が流れる。
登場時間:5:30~
リアル霊夢登場。
霊夢のポーズは宮沢りえの褌写真が元ネタと思われる。
宮沢りえについては写真集サンタフェの模様が第7作目のおまけでも登場する。
登場時間:5:35~
永遠亭内部。襖絵が48手になっている。
リアル兎の最後の1匹は「ウィザードリィ」のボーパルバニー。別名首はね兎。
この兎はゲームの序盤で登場するが、プレイヤーの首を切り落として
即死させる能力を持つ上、一度に多数登場するというトラウマ兎である。
また、首はね兎は、映画「モンティ・パイソンのホーリーグレイル」(1975年)に登場する
殺人ウサギが原典であり、本作の隠れたテーマ‘映画'がモチーフのキャラでもある。
登場時間:5:40~
てゐとうどんげのポーズは、賭博破戒録カイジに登場する一条店長の
「当カジノは誰でもウェルカム」のポーズが元ネタと思われる。
第3作目の「御伽話を聞かせてよ」でも採用されている事から
うどんげ愛用のポーズであると推測される。
登場時間:5:42~
襖に描かれているのは鳥獣人物戯画。鳥獣戯画は日本最古の漫画と言われている。
描かれているのは兎と蛙が賭弓を行うシーンだが、元絵に月は描かれていない。
直後に描かれるカットと合わせて推測すると、
この絵は永琳が月の使者として輝夜を迎えに来たシーンにも見えるが、
そのような意味が込められているかは定かでない。
登場時間:5:45~
このシーンはアニメ版「ベルサイユのばら」(1979年)のOPが元ネタである。
ベルサイユのばらは、女に生まれながら男として育てられた、男装の麗人オスカルが主人公の物語。
茨に閉じ込められた薔薇は、軍人として女性の心を押し殺しながら気高く生きるオスカルの姿そのもの。
永琳もまた、輝夜を守護するために何かを犠牲にしているのかもしれない。
なお、ベルサイユのばらで、オスカルは近衛兵としてフランス王妃マリーアントワネットを警護している。
自らの信ずるものに身を投じる姿、裏切りなど、オスカルと永琳の間に類似点は多い。
本家に比べて手の位置が微妙にいやらしいのはご愛嬌。
登場時間:5:47~
永琳と輝夜を中心に5つの難題が描かれている。
永琳が漫画ベルセルクで登場する転生後のグリフィス(フェムト)の衣装をまとっている事から、
このシーンは降魔の儀(蝕)を表現しているように思われる。
降魔の儀とは、選ばれた人間が、自分の最も大事なものを生贄に、天使へと生まれ変わる儀式であり、
ベルセルクでは、鷹の団の団長であるグリフィスが、団員を犠牲にして転生している。
永夜抄の設定にある通り、かつて永琳は、月の使者を殺害、賢者としての地位を捨てている。
永琳は自身の全てだったろう月の一切を犠牲にして輝夜の守護天使へと生まれ変わったのだ。
4匹のクリーチャーはベルセルクで描かれている4天使(見た目は化け物)であると同時に、
輝夜を守護するアイテムでもあり、5人目の守護天使の誕生を祝福しているように見える。
5つの難題はそれぞれ下記の対応になっている。
左上…仏の御石の鉢、左下…竜の頸の玉、右上…火鼠の皮衣、右下…燕の子安貝、中央…蓬莱の枝
竜の頸の玉は、スラッシュメタルバンド「POISON」のアルバム「FURTHER DOWN INTO THE ABYSS」の
ジャケットが元ネタだろうか。 グリフィスについては映画の父「D・W・グリフィス」との関連性も指摘されている。
登場時間:5:50~
このシーンはロケット発射時の永遠亭の状況を表していると思われる。
林檎は第1作目や第3作目と同じように月を意味し、咲夜はその皮を剥いて月を侵略しようとしている。
それを取り巻く永遠亭の面子は、
輝夜(あまり心配そうでない)、うどんげ(心配で興味津々)、てゐ(状況を概観)であり、
各々ロケット発射の様子を見守っている(儚月抄より)。
永琳とレミリアが踊っているのは、したり顔の紫が直前で描かれている事を踏まえると、
紫によって踊らされている事を意味するのではないかと思われる。
登場時間:5:55~
道中の安全を祈願して拍手(かしわで)アーメンを行うパチュリー。
ロケットが鎖ではなく縄で縛られているのは前述のSM雑誌の影響と思われる。
登場時間:5:58~
赤頭巾レミリアと、ロケットの推進力として住吉三神を呼ぶ霊夢。
登場時間:6:18~
満月を表すかのような丸い窓から永遠亭の様子を覗く妹紅。
ロケットの発射を見て、永遠の時を同じくする地上で唯一の人間が、
月に帰ってしまうのではないかと心配になったのだ。
輝夜は「私達はもう永遠に地上の民なんだから」と言い、それをこっそり聞いた妹紅は安心する。
月都の兎と通信が出来るという大きな耳をうどんげが外すのは
輝夜の発言と同じような意味、つまり月との決別を意味するのだろう。
(小説版儚月抄 第四話 「不尽の火」 より)
登場時間:6:23~
三日月に剣のマークは、剣で月を守護する綿月依姫のマークであり、ソ連のシンボル(鎌と槌)にも見える。
冷戦時代、ソ連(現ロシア)とアメリカは世界の覇権をめぐって熾烈な宇宙開発競争を行っていた。
宇宙を制することによって指導的立場の優位性を世界に誇示する必要があったのだ。
最終的に、ケネディが推進したアポロ計画が功を奏したアメリカは、ソ連より先に月面着陸を成功させる。
その様子はカラー映像で生中継され、全世界5億人を超える人々によって視聴された。
その後、資本主義は隆盛を極め、社会主義国は衰退の一途を辿る事になる。
登場時間:6:29~
このシーンは世界初のSF映画「月世界旅行」(ジョルジュ・メリエス1902年)のパロディである。
月世界旅行は映画史を語る上で必ず登場する重要な作品の一つだが、
原作の長編小説(ジュール・ヴェルヌ1865年)は政治的風刺の強い小説とされている。
本作でも、月の顔が資本主義の権化とも言えるドナルドの顔になっているのは、見ようによっては、
強烈な風刺と捉えることも出来る。
月面着陸から40年たった現在、
繁栄を謳歌しているはずの資本主義社会は、成長に明らかな翳りを見せている。
市場原理主義がもたらした世界規模の熾烈な競争が、自らの社会を蝕んでいるのだ。
その姿は、月の賢者が言う、穢れそのものにも見える。
太古の昔から続く弱肉強食の原理は、今もなお、地上の世界を支配している。
「農協月へ行く」は1979年発刊の筒井康隆によるSF小説である。
同作は、厚かましいバイタリティを持った農家御一行(ノーキョーさん)が
宇宙船内で迷惑なドンちゃん騒ぎを起こしつつ、月に向かうという話。
更に彼らは、月面で宇宙人と遭遇するも、農民特有の強引なパワーで、
酒を酌み交わし意気投合。友好的に未知との遭遇をやってのけてしまう。
いつの世も逞しい庶民(農民)が最強であることを感じさせる作品であり、
その意味で、映画「7人の侍」も彷彿とさせる強烈な物語である。
マイリストのコメントを見ると、
kamS氏は「農協月へ行く」もネタとして盛り込みたかったようである。
残念ながら、本作でそのシーンが日の目を見ることは無かったが、
第6作目の「月の仕舞」で描かれているレミリアの肉弾戦や
霊夢の粗暴な振る舞いは、同作のコンセプトに近いものを感じさせる。
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最終更新:2024/04/25(木) 12:00
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