この記事では1955年に結党された日本の「自由民主党」を扱っています。それ以外の政党については「自由民主党(曖昧さ回避)」をご覧ください。 |
自由民主党(じゆうみんしゅとう)とは日本の政党である。一般的には略称の自民党で呼ばれている。
なお和訳すると党名が「自由民主党」となる海外の政党[1]についても自民党と呼ぶことがあるが、この場合はそれぞれの国名を頭に付けることが多い。
概要
自由民主党 | |
じゆうみんしゅとう - Liberal Democratic Party |
|
---|---|
基本情報 | |
公用語名称 | 自由民主党 |
国・地域 | 日本 |
本部所在地 | 東京都千代田区 |
成立年月日 | 1955年11月15日 |
解散年月日 | 存続中 |
機関紙 | 「自由民主」 |
国際組織 | 未加盟 |
シンボル | 陰十四菊・ 党歌「われら」 |
公式サイト | jimin.jp |
政党・政治団体テンプレートボックス |
1955年11月、当時勢力を伸ばしつつあった日本社会党に対抗すべく、日本初の統一保守政党として結成された(保守合同)。直接の前身政党は吉田茂率いる[2]「自由党」と鳩山一郎率いる「日本民主党」だが、系譜を辿ると大日本帝国時代の保守二大政党である立憲政友会と立憲民政党に行き着く、非常に古い歴史を持つ政党である。
かつては思想面ではリベラリストから国粋主義者まで、経済面では小さな政府論者から大きな政府論者まで、外交面では親米派から親中派までと、多種多様な人材を揃えた「右の国民政党」として幅広い層に訴求。他党のウイングの狭さや共闘体制の不備にも助けられ、民主主義国家では類い稀な超長期政権を樹立した。結成から今日まで数年間を除き、一貫して与党第一党の地位を占めている。
近年は東アジア情勢の悪化や財政難などに起因して政治・経済両面で右旋回を続けており、自然権思想や近代的立憲主義の否定を盛り込んだ新憲法案(自由民主党憲法改正草案)を打ち出すなど、かつてほどのウイングの広さを持たない、より右派色の強い新保守主義政党としてのカラーを強めている[3]。
1990年代以降は離党者による新党結成が断続的に起きており、公明党・日本共産党・社会民主党以外の国政政党はいずれも多かれ少なかれ元自民党員を内部に抱え、自民党的な価値観を部分的に継承している。また公明党とは1999年10月の連立合意以来、最大のパートナーとして緊密な共闘関係を築いている。
組織
党名
概要の項で触れたように、直接の前身政党である自由党と日本民主党の党名を足して二で割った党名になっている。なお「民主自由党」という党名は日本自由党と民主党幣原派の合流によって1948年に結成された政党(上に挙げた自由党の前身政党)が既に使っていたため、ある意味この党名以外の選択肢はなかったとも言える。
英語名は「Liberal Democratic Party of Japan(LDP)」。現在は衰亡の一途を辿っているものの、2000年頃までは一定の影響力を保持していた党内左派が欧米で言うところの「Liberal」を担っていたので、「おたくはDemocratic(民主的)ではあってもLiberal(自由主義的・リベラル)ではないだろう」というツッコミは野暮である。ちなみに似たような英語名のイギリス自民党は明確なリベラル政党である。
2009年の下野後に党名変更を求める声が上がり、「和魂党」などが候補になったが、結局現状のままとされた。
シンボルマーク
正式な党章は陰十四菊の中央に「自民」の文字をあしらった菊花紋章という、いかにも保守政党らしい代物だが、実際に見かけることはあまりない。
近年は「太陽を見上げる二人の子ども」をイメージしたイラスト(右図)を党のシンボルマークとして使用しており、こちらはポスターやパンフレットなどで見かけることも多い。
ちなみに一時期2ちゃんねるに現れていた「さいたまAA」の元ネタはこのシンボルマークである。
本部・支部
本部は永田町の国有(財務省所有)地上に建設された9階建てのビル「自由民主会館」に置かれている。地代は年間約9000万円と格安だが、これは1964年の東京オリンピックに伴う道路拡張工事のために野党第一党の社会党共々当時の本部から立ち退かされた際に、国が両党に対してのみ割安で国有地を貸し付けたことに起因する。
ちなみに駐車場も国有(衆議院所有)地上に置かれているが、こちらは地代(本部ビル側と同水準とすると年間約3500万円)を全く支払っていない。自民党は「議員用駐車場であって党の駐車場ではない」と説明しているが、実際には他党の議員は駐車できず、逆に党員であれば街宣車等を駐車することもできるようになっている[4]。
住所は「〒100-8910 東京都千代田区永田町1-11-23」(この郵便番号に対応した住所がここしかないため、郵便番号だけ書いても郵便物は届くとのこと)、電話番号は「03-3581-6211」。
大半の時期を国政与党として過ごした大政党だけあって警備は厳しく、同会館を訪れる際には一般国民はもちろんのこと、党員でさえ正門にて警備員に何処に行くかを尋ねられる。なお非党員は1階の自民党サービスセンター以外を訪問することはできず、それ以外の場所に行こうとすると警備員に追い返されるので注意。なお入館時には警備員から渡された赤いバッチを入場証として服の上に着けなければならない。
本部の下には都道府県単位で都道府県支部連合会(都道府県連)が置かれており、各都道府県から選出された国会議員や当該都道府県の地方議員らによって運営されている。ちなみに昔から規模の小さい自治体の地方議員は自民党と関係があっても公認を受けず保守系無所属で通すことが多いため、地方議員の実数は不明となっている。
執行部
党のトップは総裁と呼ばれ、原則として党所属国会議員および党員・党友による選挙を通じて選ばれる。自民党総裁は与党第一党のトップとして内閣総理大臣を兼ねることが多いため、しばしば総理総裁と呼ばれる。2024年1月10日現在の総裁は岸田文雄(第27代)。
総理総裁は政府・内閣の運営に集中しなければならないため、国会運営や選挙対策など党務全般は実質的な党ナンバー2の幹事長に委ねられる。幹事長は総裁と並ぶ党の顔であり、メディアへの露出も多いため大衆受けを考慮した人選がなされることが多い。2024年1月10日現在の幹事長は茂木敏充(第55代)。
党の意思決定機関として総務会が設置されており、各派閥から選ばれた総務が党の政策や重要事項について審議し、意見の擦り合わせを行っている。この総務会の議長である総務会長は幹事長・政調会長と並ぶ党三役の一角とされる。合意形成に長けた長老議員が任命されることが多い。2024年1月10日現在の総務会長は森山裕(第61代)。
党の具体的な政策を立案する機関として政務調査会が設置されており、分野ごとに分かれた部会や委員会に所属する国会議員・学識経験者らが審議に携わっている。運営を統括する政務調査会長(政調会長)は幹事長・総務会長と共に党三役と呼ばれる。2024年1月10日現在の政調会長は渡海紀三朗(第62代)。
この他にも名目上のナンバー2である副総裁、国会運営に関して他党との交渉を担当する国会対策委員長、参議院議員団を統括する参議院議員会長、選挙対策の責任者として幹事長から権限を委譲された選挙対策委員長などが最高幹部として党の運営を担っている。
派閥
良くも悪くも自民党を象徴してきたのが党内における熾烈な派閥抗争である。思想や人脈で隔てられた派閥同士の主導権を巡る争いは、適度な緊張感と擬似的な政権交代効果をもたらした一方で、当人の経験や資質よりも派閥力学を重視した閣僚起用や派閥運営資金を確保するための不正蓄財が横行するという副作用も生じた。
所属議員は選挙時に派閥からのバックアップを受ける代わりに、党や内閣の重要ポストに派閥のメンバーを送り込むべく、一致団結して行動する。総裁選が民主的に多数決で行われ、しかも国会議員票の占めるウェイトが高いこと、中選挙区制下では同じ自民党の候補者とも競わなければならなかったことから生まれた組織だと言える。
1994年の小選挙区比例代表並立制導入によって派閥の応援があっても党執行部から公認を得られなければ当選は覚束ないという事態になったため、近年は選挙互助会としての機能を失いつつあり、それに伴い派閥の影響力も縮小しつつある。ただ現在でもいずれかの派閥に属する議員が多数を占めており、組閣や党人事にあたって派閥力学を無視することはできないのが実情である。
派閥名 (通称) |
議員数 | 閣僚 | 説明 | ||
---|---|---|---|---|---|
計 | 衆 | 参 | |||
清和政策研究会 (安倍派) |
95 | 58 | 37 | 4 | 日本民主党、さらに遡れば進歩党・民政党を源流に持つ党内右派の盟主。 55年体制では傍流に甘んじたが21世紀に入って党の主導権を掌握した。 |
平成研究会 (茂木派) |
54 | 33 | 21 | 3 | 系譜を辿っていくと自由党系佐藤派に辿り着く保守本流の古豪派閥。 民主党などへの人材流出もあって近年は低迷が続く。スタンスは中間右派。 |
志公会 (麻生派) |
54 | 38 | 16 | 4 | 宏池会系の為公会と小派閥の番町政策研究所の合併により発足。 為公会時代の拡大と合併により党内第二派閥まで伸長した。 |
宏池会 (岸田派) |
45 | 33 | 12 | 2 | 自由党系池田派を源流に持ち、多くの総裁を輩出した中道派の名門。 55年体制崩壊後の度重なる分裂で弱体化し、清和会の台頭を許した。 |
志帥会 (二階派) |
34 | 27 | 7 | 2 | 古参の右派派閥・政科研と清和会亀井派による右派ハイブリッド派閥。 政治的には最右派に位置するが経済政策は中道寄り。 |
近未来政治研究会 (森山派) |
7 | 6 | 1 | 0 | 山崎拓が政科研を割って結成した派閥。近年は衰退傾向が著しい。 系譜的には右派だが対北朝鮮宥和派が多いという特色があった。 |
かつて存在した自民党の派閥 | |||||
派閥名 (通称) |
説明 | ||||
為公会 (麻生派) |
源流は加藤紘一に反発して宏池会を割って出たメンバーで結成した大勇会。 反加藤が原点とあって比較的右派色が強かった。 |
||||
番町政策研究所 (山東派) |
改進党系のリベラル集団として鳴らしたが、晩年は右派小派閥に留まった。 為公会との断続的な合併交渉の末、2017年に合流し消滅した。 |
||||
水月会 (石破派) |
石破茂の総裁就任を目指す議員らが結成した「無派閥連絡会」が前身。 2020年以降退会者が続出し派閥存続を断念、議員グループに移行した。 |
かつては平成研究会(前身派閥含む)と宏池会の旧吉田自由党系中道~中道右派派閥が党の主流(保守本流)を担っており、これに党内右派の雄・清和会を加えた三派が三大派閥として拮抗していた。しかし2000年代に入ってからは清和会の一人勝ち状態が続いており、中道勢力は弱体化の一途を辿っている。
この他にも甘利明ら近未来政治研究会の一部議員が結成した「さいこう日本」(甘利派)や、谷垣前総裁の再選を目指したメンバーが宏池会を退会して結成した「有隣会」(谷垣グループ)などが実質的な派閥とみなされることもある。また党外の保守系無所属議員がオブザーバーとして派閥に参加しているケースも見られる。
資金源
政党交付金
自民党本部の最大の収入源は、所属議員数および国政選挙での得票状況に応じて国庫から支給される政党交付金である。2015年は170億4909万円が支給された。
企業・団体献金
次いで大きな収入源は企業や業界団体からの政治献金である。党の政治資金団体である「国民政治協会」に企業・団体から毎年十数億円が献金されているほか、地域・選挙区ごとに設けられた支部への献金、政治資金パーティーのチケット購入、役員個人名義での献金など様々な方法で自民党および所属議員への資金提供が行われている。支部への献金や議員のパー券購入なども含めると献金総額は数十億円を下らないものと見られる。
1993年までは経団連が加盟企業ごとの献金額を決めて斡旋する「経団連方式」が採用されており、自民党に対しては例年100億円以上を献金していた。その後は左派の衰退により自民党支援の動機付けが低下したこと、企業体力の低下や規制などによって献金額は減少傾向にあるものの、未だに収入源として重要な位置付けを保っている。
2014年には経団連が安倍政権との関係強化を図る一環として政治献金呼びかけの再開を発表。具体的な金額の斡旋まではしないとしているものの、自民党に対する経団連の影響力は強まるものと見られている。
献金先や方法が複数あることから個々の企業・団体の献金額を正確に把握することは難しい。自民党が下野していた2010年から2012年までの3年間に国民政治協会に合計3000万円以上の献金を行った法人は以下の21社である。なお3年間で合計1000万円以上の献金を行った法人は81(営利法人80、宗教法人1)に上っている。
順位 | 法人名 | 業種 | 献金額 | |||
---|---|---|---|---|---|---|
3か年合計 | 2012年 | 2011年 | 2010年 | |||
1 | トヨタ自動車 | 輸送用機器 | 154,200,000 | 51,400,000 | 51,400,000 | 51,400,000 |
2 | 新日鐵住金 | 鉄鋼 | 96,000,000 | 32,000,000 | 32,000,000 | 32,000,000 |
3 | キヤノン | 電気機器 | 75,000,000 | 25,000,000 | 25,000,000 | 25,000,000 |
4 | 住友化学 | 化学 | 65,000,000 | 25,000,000 | 20,000,000 | 20,000,000 |
5 | 日産自動車 | 輸送用機器 | 62,000,000 | 20,500,000 | 20,500,000 | 21,000,000 |
6 | 本田技研工業 | 輸送用機器 | 58,000,000 | 18,000,000 | 20,000,000 | 20,000,000 |
7 | 東京海上日動火災保険 | 保険業 | 52,920,000 | 17,640,000 | 17,640,000 | 17,640,000 |
8 | ダイハツ工業 | 輸送用機器 | 42,975,000 | 13,700,000 | 14,625,000 | 14,650,000 |
9 | 東芝 | 電気機器 | 42,000,000 | 14,000,000 | 14,000,000 | 14,000,000 |
9 | パナソニック | 電気機器 | 42,000,000 | 14,000,000 | 14,000,000 | 14,000,000 |
9 | 日立製作所 | 電気機器 | 42,000,000 | 14,000,000 | 14,000,000 | 14,000,000 |
12 | 日野自動車 | 輸送用機器 | 40,300,000 | 14,500,000 | 12,900,000 | 12,900,000 |
13 | いすゞ自動車 | 輸送用機器 | 37,550,000 | 13,100,000 | 12,225,000 | 12,225,000 |
14 | 日本生命保険 | 保険業 | 37,500,000 | 12,500,000 | 12,500,000 | 12,500,000 |
15 | スズキ | 輸送用機器 | 37,112,500 | 10,350,000 | 11,512,500 | 15,250,000 |
16 | 旭化成 | 化学 | 37,000,000 | 12,000,000 | 12,000,000 | 13,000,000 |
17 | 富士重工業 | 輸送用機器 | 36,100,000 | 13,900,000 | 11,100,000 | 11,100,000 |
18 | 三井住友海上火災保険 | 保険業 | 35,100,000 | 11,900,000 | 11,600,000 | 11,600,000 |
19 | きんでん | 建設業 | 32,000,000 | 9,000,000 | 10,000,000 | 13,000,000 |
19 | 富士通 | 電気機器 | 32,000,000 | 10,000,000 | 10,000,000 | 12,000,000 |
21 | 三菱重工業 | 機械 | 30,000,000 | 10,000,000 | 10,000,000 | 10,000,000 |
また2012年までの3年間に国民政治協会に合計3000万円以上の献金を行った業界団体は以下の10団体である。
順位 | 団体名 | 業種 | 献金額 | |||
---|---|---|---|---|---|---|
3か年合計 | 2012年 | 2011年 | 2010年 | |||
1 | 日本自動車工業会 | 輸送用機器 | 180,900,000 | 60,300,000 | 60,300,000 | 60,300,000 |
2 | 日本電機工業会 | 電気機器 | 150,000,000 | 50,000,000 | 50,000,000 | 50,000,000 |
3 | 日本鉄鋼連盟 | 鉄鋼 | 120,000,000 | 40,000,000 | 40,000,000 | 40,000,000 |
4 | 石油連盟 | 石油・石炭製品 | 60,000,000 | 50,000,000 | 10,000,000 | 0 |
5 | 日本医師連盟 | 医療 | 50,000,000 | 50,000,000 | 0 | 0 |
5 | 日本歯科医師連盟 | 医療 | 50,000,000 | 30,000,000 | 20,000,000 | 0 |
7 | 不動産協会 | 不動産業 | 45,000,000 | 15,000,000 | 15,000,000 | 15,000,000 |
8 | 全国信用金庫協会 | 金融業 | 39,000,000 | 13,000,000 | 13,000,000 | 13,000,000 |
9 | 自動車流通政経懇話会 | 輸送用機器 | 30,000,000 | 10,000,000 | 10,000,000 | 10,000,000 |
9 | 日本薬剤師連盟 | 医療 | 30,000,000 | 10,000,000 | 10,000,000 | 10,000,000 |
個人献金・党費
2012年中に行われた国民政治協会への個人献金は約1億2000万円、本部の党費収入は約6億1000万円である。また党友組織「自由国民会議」が集めた会費約1億円が毎年国民政治協会に寄付されている。
ただし個人献金の中には企業献金を行っている経営者が追加的に個人名義で行ったものや、電力会社など政治献金を表沙汰にしたくない企業が役員の個人名義を隠れ蓑にして行ったものも含まれており、純然たる個人による献金・党費の占める割合はあまり大きくないのが実情である。
世襲と自民党
自民党の大きな特色の一つとして世襲議員の比率が高く、かつ党や内閣の中枢に近づくにつれてその比率が更に高まるという点が挙げられる。どうしてこうなったかと言うと、
- 自民党は欧米の近代保守政党に比べると「党」の力が弱く、(特に中選挙区制時代は)選挙に際しても「党」としての支援はさほど充実しているわけではない。そのため所属議員は生き残るために自力で資金力や集票力を蓄えざるを得ず、各議員が「後援会」という形で地元の有力者や業界団体などを抱え込む構造になっている。
- 自民党の一党優位体制が長期間続いていることから、自民党の議員を後援して彼らに対する発言力を持つことは、すなわち行政・立法とのコネクションを形成することに等しい。特に議員が当選を重ねて発言力を増せば利益誘導もより行いやすくなるため、後援者は継続して当該議員個人を支援し続ける。
- 議員が引退するにあたっては、後援者は自分たちの利益代弁者を引き続き務めてくれる人物にその役目を引き継いでもらいたいと考え、議員は自身の政治家としての仕事、あるいは政治家として築き上げた権威を自分一代限りで終わらせたくはないと考えることが多い。そして両者共に納得のいく後継者として真っ先に挙げられるのは、通常その議員の子弟である。なお秘書や系列地方議員、有力後援者の子弟などが後継者になる場合も少なくないが、以前はそうした場合に議員の娘をあてがって婿養子にしてしまうことが多かった。
- こうして出馬した議員の子供・婿養子は最初から鍛え上げられた後援会が存在する上に、後援会を利用することで相続税をかけずに先代議員が蓄積した財産を受け取ることが出来るため、集票力や資金力の点でいわば「強くてニューゲーム」状態で政治家人生を始めることになる。
- 彼らは非世襲の自民党議員に比べて逆風下の選挙でも落選しづらいため、時間が経つにつれて当選回数に差が出始める。当落を繰り返す議員の発言力は通常強くなく、自民党は慣例的に役員ポストや閣僚ポストの割り振りに際して当選回数を重視するため、非世襲議員は中枢ポストに就けないまま引退時期を迎えることになりやすい。
2015年末現在、自民党の所属議員または国政選挙の候補者のうち、尊属に国会議員経験者がいる者は100人を少し超える程度である。これ自体は全所属議員の1/4程度に留まっているが、第3次安倍改造内閣に自民党から出している国務大臣の中では19人中10人、党三役では3人中1人、派閥領袖では8人中5人とそれよりも高い比率になっており、非世襲議員の出世の道は世襲議員のそれよりも細いことを如実に示している。
ちなみに初代総裁の鳩山一郎は世襲議員だったものの[5]、それ以後は第14代総裁の海部俊樹まで非世襲議員の総裁が続いていた。しかし第15代の宮澤喜一以降の11代10人の総裁中では森喜朗を除く10代9人が世襲議員で占められている[6]。また直近の2012年の総裁選に出馬した5候補はいずれも世襲議員だった。
世襲制限の試みと挫折
後援者との癒着関係が深まることで生じる汚職の予防や、非世襲候補・議員の出世チャンスを広げて多様な人材の台頭を促すという観点から、一時期自民党内でも党レベルでの世襲制限を試みたことがあった。
内容は「同一選挙区から配偶者または3親等以内の親族が新たに立候補する場合は党として公認しない」というものである。法律で出馬を禁止するのではなく、私的団体である党の公認権を行使しないという形式にすることで憲法への抵触を避けつつ[7]、国替えを促すことで後援会地盤の継承を抑制しようという案であった。また混乱を避けるため既に世襲を済ませた議員への遡及適用はしないものとされた。
この案は2009年総選挙のマニフェストに正式に記載されたが、子弟への世襲を予定しているベテラン議員はもちろんのこと、議員を支える地方組織や後援会などからも反発が相次いだ。そのため2011年に地方組織の公募などを経ることを条件に同一選挙区での世襲候補公認を認める方向に転じた。
公募による審査や党員投票を義務付けることで非世襲候補にもチャンスを与え、同一選挙区からの出馬意欲を促そうとするものだったが、実際には世襲候補の親は支部や都道府県連に影響力を行使できる立場にあるため審査や投票が出来レースと化してしまい、非世襲候補が世襲候補を破って公認を得るような事態は全く起きなかった。
ニコニコ動画と自民党
ニコニコ動画には保守的・右翼的な思想傾向を有するユーザーが多数いるため自民党は比較的高い評価を受けている。特に安倍晋三総裁を筆頭とする党内でも相対的に保守色・右派色の強い議員に対する好意的評価が目立つ。ただし、ネトサポも紛れ込んでいるとみられ、鵜呑みにしては行けない。
公式ニコ割アンケートとして毎月行われている政党支持率調査や国政選挙に際して行われる投票先調査などでは、大手マスメディアの調査や実際の選挙での得票率よりも自民党への支持・投票が多くなる傾向が見られており、ニコニコ動画における自民支持層の分厚さを物語っている。ただし、アニメや漫画を規制しようとする議員が多く、規制を批判するユーザーも多い。
自民党側もこうした傾向を把握し、党や所属議員による公式チャンネルの開設や動画の投稿を積極的に行うことで更なる支持層拡大を目指している。またネット党首討論を行うにあたりニコニコ動画での開催に強いこだわりを見せるなど、党に有利なフィールドであるニコニコ動画を最大限に活用しようとする姿勢が窺える。
なお麻生太郎元総理の長男・将豊がニコニコ動画の運営元であるニワンゴの創設・運営に携わっていたほか、麻生グループの次期総帥である甥・巌がニワンゴの親会社ドワンゴの取締役として現在も経営に参画している。
記事のある自民党関係者
現職国会議員※太字は内閣総理大臣経験者。 |
|||
衆議院議員 |
参議院議員 |
||
元職国会議員・新人候補・地方議員 |
他党移籍者(元職・候補者等含む) |
||
民主党民進党立憲民主党次世代の党希望の党 |
生活の党日本維新の会都民ファーストの会みどりの風参政党諸派・無所属 |
関連チャンネル
党本部
所属議員
関連項目
外部リンク
脚注
- *イギリスのリベラル政党「Liberal Democrats」やドイツのリバタリアン政党「Freie Demokratische Partei」など。
- *ただし合流時の自由党総裁は緒方竹虎である。
- *なおこうした右旋回の動きはアメリカ共和党やフランス共和党など諸外国の保守政党に少なからず共通して見られる傾向でもある。
- *自民、国有地を無償使用…賃料年3500万相当 : 政治 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
- *鳩山一郎は父の邦夫が一郎の政界進出前に衆議院議員・衆議院議長を務めていた。
- *ただし森の父・祖父は2代で約64年間に渡って地元町長を務めた政治家である。
- *国会議員の子弟も当然ながら職業選択の自由(憲法22条1項)を保障されており、立法などによる公的規制をかける場合は一定の合理性が要求されることになる。一般的な職業については特定の場所に限っての規制は比較的認められやすいが、薬局の距離規制のように違憲無効とされた事例も無いわけではなく、しかも選挙への立候補は職業選択であると同時に憲法上別途保障される参政権の行使でもあるため、要求される合理性のハードルは相当高くなることが予想される。要するに違憲無効とされるリスクが高い。
- *「私のホームグラウンドだ」 首相、今夜開催のネット討論に自信 - MSN産経ニュース
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