この記事は第371回の今週のオススメ記事に選ばれました! 今後も安全輸送の為、交通安全と労災防止に心がけましょう。 |
SCANIA(スカニア)とは、スウェーデンの自動車(商用車)及び産業用ディーゼルエンジンのメーカーである。
ボルボと並び、スウェーデンを代表する自動車メーカーの一つ。バス・トラックの製造を事業の中心としている。元々はスウェーデン資本であったが、いく度かの事業再編を経て現在はVWグループのトラック&バスGmbHの子会社である。また他のトラック・バスメーカーもそうであるが、スカニアもディーゼルエンジンの製造技術を活用し、産業用ディーゼルエンジンの製造を行っている。
特徴としては今日では数少ない、というかもしかしたら大型トラックメーカーとしては今では唯一かもしれない、V8エンジンをラインナップに加えていること。嘗ては色んなメーカーがV8~V10エンジンをトップレンジにもっていたものの、低公害化と燃費向上を進めていく過程で、トップレンジもまた排気量13~16L程度の直6エンジンになっていった。だがスカニアはEuro6に適合させることで、今でもV8エンジンを生産しトップレンジに据えている。世界各地にこのエンジンのファンがおり、V8エンジンはスカニアブランドの象徴として君臨している。
会社の象徴となるロゴにはグリフィン(Griffin)が使われている。これは会社設立の地であるスコーネ地方の紋章が由来。また社名のSCANIAもスコーネ地方のことである。後述するようにSAABと合併していた時代があったことから、SAABは現在でもスカニアと同じグリフィンを使用している。
スカニアの歴史は大きく分けて以下の通り。
スカニアの源流となるのは、19世紀末に創業したSCANIAとVABISという二つの会社である。
まず今でも社名となっているスカニアだが、その創業は1900年。この頃は自転車を作るメーカーだった。SCANIAが意味するのはスウェーデンのスコーネ地方であり、正式名称は「スコーネの機械製作所」といった意味。ダイハツ(大阪の発動機)みたいなもんである。当初は自転車製造が本業だったが、やがて乗用車とトラックを手がけ、そちらが事業の中心となっていく。何となくプジョーと似ている。
もう一つ重要なのがVABIS。こちらはスカニアより9年早い1891年、スウェーデン南部のストックホルム県セーデルテリエ市で創業した。社名は「セーデルテリエの客車製作所」のような意味を略したもの。業種はその名の通り、主に客車を製作する鉄道車両メーカーであった。このVABISもまた自動車の開発と製造を始める。
この二社が1911年に合併し誕生したのがSCANIA-VABIS。現在に至るスカニアの直接の母体となる会社である。
というわけで誕生したSCANIA-VABIS。事業は自動車中心となって行く。当初はまだ乗用車もガソリンエンジンも作っていたが、徐々にトラック・バスを製造する商用車メーカーへとなっていった。
1935年にはスウェーデンにおけるVWの総代理店に(この時から縁があったのか)、1936年にディーゼルエンジンの自社製造の開始、1949年に直噴ディーゼルエンジンの発売と、着々と実力を高めていった。そして1969年、350馬力を発生する14L・V8ディーゼルエンジン発売。今日までのスカニアのアイデンティティとなるV8エンジンの誕生である。
V8エンジンが生まれたのと同じ年、飛行機を作るついでに自動車も作っていたサーブ(SAAB)と合併することになる。
サーブは言わずと知れた航空機メーカーで、第二次大戦後は自動車メーカーとしても発展していた。戦後に競争が激化して行く過程で、スウェーデン資本の両者が合併。SAAB-SCANIAとなりVABISの名称は消えてしまう。
実は今でもサーブが使っているグリフィンは、この合併の際にSCANIA側から持ち込まれたもの(左図参照)。それまではプロペラ双発機を前から見た図案にSAABのロゴがついているものだったのだ(コレ)。
この時代のスカニアは順調に精力を伸ばしながら、V8ターボディーゼルをパワーアップしてパワー厨な欧州トラック野郎の需要を満たすなどしていた。名実共に欧州を代表するメーカーとなっていくのである。
が、そんな時代も1990年代に終わり、また新たな時代を向かるようになる。
1990年、サーブの自動車部門が経営分離され、サーブ・オートモービルとなり独立。米・ゼネラルモーターズ(GM)傘下になる。この流れはスカニア部門にも及び、1995年にサーブとスカニアは各々独立。サーブは航空機及び軍需企業グループとなり、スカニアも商用車メーカーとしてやっていくこととなった。なったのだが、やはり企業規模は大きくは無いので経営安定化をどうするかが課題となった。
最初に動いたのはボルボ(本家の方)だった。1999年、ボルボがスカニア買収のために動き始める。ここでボルボがスカニアを買収すればスウェーデン企業同士の資本提携となり、また互いに大型商用車を作るメーカーであるから競争力も高まる。予定ではドイツのダイムラークライスラー(当時)の二番手ぐらいの位置に付けるはずだった。
「予定」「はずだった」、つまりできなかったのである。スウェーデンが加盟しているEUから物言いがついたのだった。
次に大きな動きがあったのは2006年、VW傘下のMANが議決権の17%を保有する有力株主になる。2007年にはVWが議決権の36.5%を確保する株主に。その後は投資会社から更に株式を獲得し、VWは議決権の70%を確保する筆頭株主になった。VWはMANの議決権の75%を保有する筆頭株主でもあることから、VWはほぼ完全にスカニアを掌握していると言える。ボルボが買収するのはダメだけど、VWなら良いってのは・・・?。
こうして大企業の傘下で経営の安定を図る一方、商品の開発と刷新、段階的に強化される排ガス規制に対応している。
トラック&バスGmbH(有限会社トラック・アンド・バス)は、2015年5月5日にVWが設立した、商用車ブランドの持ち株会社。これまでVWの直接傘下であったMANとスカニアを保有し、グループでの商用車事業を統括する会社。つまりスカニアはMANと共に、VWの孫会社になったわけだ。VWは商用車事業において、世界第一位のダイムラー(メルセデス・ベンツ)、第二位のボルボ(本家の方)を追撃する姿勢を見せており、トラック&バスの設立はその一環。
トラック&バス設立後は、MAN・スカニア共にその独自性は保持しつつも、経営資源の共有及び活用によって競争力を高めるものとされている。オプティクルーズのMANへの供給、そして後述する次世代型ギアボックスの開発がそれにあたるだろう(後述)。
研究・開発拠点 (R&Dセンター) |
セーデルテリエ | VABISの創業地であり、スカニア本社のある聖地。要は本社にR&Dセンターがあるということ。ここには本社工場も所在している。 |
生産拠点 | セーデルテリエ | 本社工場で、世界に二つある最終組立工場の一つ。バスとトラックの最終組み立てのほか、アクスル、変速機、エンジンの組み立ても行っている。 |
ルレオ | 車体フレームとリアアクスルハウジング(車軸を収めるケース)の組み立てを行っている。 ルレオが位置するのはスウェーデン北部。冬になると海が凍り、沖合いの島とは氷上を自転車で移動するらしい。 |
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オスカルスハムン | キャブ(運転席部分)を組み立てる。 街があるのはスウェーデン南部。どういう街かと思ってググってみたところ、沸騰水型軽水炉のある街だと言うことは分かった。 |
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スウプスク (ポーランド) |
バスの車体を製作する工場。 この街は東欧の例に漏れず、歴史的に西から東からえらい目に遭ってきた街らしい。 |
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メッペル (オランダ) |
各部品に塗装を施す工場。 メッペルはオランダ東部の街。「教会の塔が燃えていると思ったら、蚊の群れだった」という逸話が名前の由来との事。凄い大群がいて、西日が反射したんだろうか?。 |
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ズヴォレ (オランダ) |
年次報告には「トラックアッセンブリー」と書いてあった。具体的には分からんが、トラックの部品を組み立てているはず。 ズヴォレはメッペルの近くにある街。カール大帝が作ったそうだが、名前は単に「丘」という意味とのこと。オランダの大都会という意味だろうか。 |
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アンジェ (フランス) |
ズヴォレと同じくトラックアッセンブリーの工場。 石器時代には既に人が住んでいたとかいう街。その後はケルト人が住みつき、紀元前1世紀にはユリウス・カエサルがガリア征服のためにやってきて、今日に至る。 |
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サンパウロ (ブラジル) |
南米に二つある生産拠点のひとつで、もう一つの最終組立工場。本社工場と同じものの他、キャブの組み立ても行っている。 サンパウロはブラジルはもとより南半球最大の都市。サンバカーニバルで有名。サンバサンバイェー! |
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トゥクマン (アルゼンチン) |
南米にあるもう一つの生産拠点で、変速機の部品を組み立てている。南米の生産拠点としては老舗であり、2013年には大規模な改修を受けた。社としては、この工場で作られる部品の欧州向けの輸出強化を企図している。 どんな街か知りたかったが、日本語版wikipediaには名前しかいて無かったわ。そこで英語版を見たところ、インカ帝国の外縁部がここだったらしい。 |
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地域対応拠点 (仕向け地適合など) |
サンクトペテルブルク (ロシア) |
帝政ロシアの首都。ソ連時代はレニングラードと呼ばれていた。 |
ドバイ (UAE) |
アラブ首長国連邦の首長国の一つ。ジャスタウェイが1位を取ったドバイデューティーフリーの開催地でもある。かつては真珠の名産地として有名だったが、ミキモトが養殖真珠を売り始めたことから大打撃を受けた。近年は国際金融センターとして急成長し、デッカイビルが建っている。 | |
ヨハネスブルク (南アフリカ) |
「修羅の街」としてコピペで知られる南アフリカの首都。 | |
バンガロール (インド) |
インド南部の大都市で工場が多い。 | |
クアラルンプール (マレーシア) |
マレーシアの首都。国際金融センターとして成長している。 | |
台北 (台湾) |
台湾の首都。可愛い女子高生が多いって聞いた事がある。 | |
釜山 (韓国) |
チョー・ヨンピル、桂銀叔、渥美二郎に愛された街。俺は桂銀叔版のが好き。 | |
物流拠点 (部品などの流通対応) |
セーデルテリエ (スウェーデン) |
物流部門の頭脳にあたるところ。世界中に部品や用品を確実に届けるため、発注システムや拠点の整備計画の立案と実施を取り仕切っている。 |
オフラブベーク (ベルギー) |
スカニア物流網の中核を担う集積拠点である、スカニアパーツセンターが所在。生産されたスカニアの部品や用品は一度ここに集められ、世界80ヶ国・1500ヶ所に発送される。また顧客対応部門などもここに入っている。 オフラブベークは人口1万人の比較的小さな町で、パーツセンターがあるのは流通センターのような地区の中。 |
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ヴィニェード (ブラジル) |
ラテンパーツセンターが所在。ラテンアメリカ地域への部品・用品の配送はここが担当。 | |
シンガポール |
2011年に開設されたアジアパーツセンターが所在。東南アジア地区への部品手配を担当している。 | |
ヨハネスブルク (南アフリカ) |
2014年に開設された南部アフリカパーツセンターがある。名前の通り南部アフリカ地区担当。 | |
ケレタロ (メキシコ) |
中央アメリカパーツセンターが所在している。メキシコ市場向けにバスの部品を供給するところ。 | |
バリクパパン (インドネシア) |
スカニアパーツ・インドネシアがある。同国の鉱山ではスカニアが多用されているとかで、顧客が使用する車両の稼動時間向上の為に作られたそうだ。 |
スカニアの現行車種は以下のもの。
トラックは大きく分けてP、G、R、Sの四車種があり、用意されるエンジンや変速機、キャブサイズなどが異なる。
個別のモデル名は、レンジ名にエンジン出力を表す三桁の数字を組み合わせたもの。例えばPレンジで250馬力エンジンを搭載するモデルはP250となる。
2016年に発表された新型はRレンジのFMCにあたり、新たに床が平面となるSレンジが加えられた。両者の主な違いはキャブ搭載高。今のところ「ノーマル」と「ハイライン」の二種類の屋根が用意されている。新型の屋根は旧型比で10cm高くなっている[5]。
新Rノーマル | 新Rハイライン | Sノーマル | Sハイライン | 旧Rハイライン | 旧Rトップライン | |
外寸全高 | 3720 | 3950 | 3880 | 4000 | 3540 | 3860 |
エンジントンネル | 150(推定) | ← | 平面 | ← |
150 | ← |
※旧型の高さはエアデフレクターを含まない数値だが、新型はソースの都合によりエアデフレクター込みの高さとなっている。
新Rノーマルは旧ハイラインより180mm高い。また新Rハイラインは旧ハイラインより340mm高く、旧トップラインより90mm高い。新型については純粋にキャブのみの全高が不明なので厳密な比較はできないものの、新型ノーマルは旧型ハイライン相当、新型ハイラインは旧型トップライン相当の高さがあるとは言えるだろう。
スペック上は新RハイラインとSハイラインは、高さが50mmしか違わない。実はこの両者ではエアデフレクターの高さが異なる。この差を考慮すると、キャブ本体の設置高の差はノーマルと同じく150~160mm程度はあると思われる[8]。
サイズ以外の新たな特徴は、運転席の位置が従来比で65mm前面窓寄り、20mm外側寄りになっていること[9]。位置をずらした主な理由は、視認性の向上と車内快適性の向上。その為、従来はダッシュボードのステアリングコラム外側に配置されていた灯火類スイッチが、パワーウインドウやミラー調整スイッチと共に運転ドアに設置されている。
キャブサイズは、全幅に関しては基本サイズ2430mmで共通。キャブ全長はショート、セミショート、スリーパーで違いがあるが、Rにショートキャブが設定されていないのを除けば各車種共通となっている。キャブ天井高は低い方からロー、ノーマル、ハイライン、トップラインの四種類。PとGはロー、ノーマル、ハイラインの三種類で、Rはトップラインを含む全種類が選べる。多少の違いはあるものの、ここまでは概ね共通している。
車種で最も異なるのはキャブの搭載高。それによって外寸全高、エンジントンネル高(エンジン上部を被う床面中央部の出っ張り)、トンネルから天井までの高さが大きく異なっている。
Pレンジ | Gレンジ | Rレンジ | |
外寸全高 | 3230 | 3470 | 3540 |
エンジントンネル | 460 | 310 | 150 |
トンネル~天井高 | 1590 | 1740 | 1900 |
室内高 | 1910 | ← | ← |
つまりP→Rになるほどキャブが高い位置に設置される為、全高と地面~床面までの高さが大きくなり、エンジントンネルが減るということ。またタイヤサイズが同一であれば、Rになるほど地面からの高さも大きくなる。
Rレンジのエンジントンネル150mmは小さいように見えるが、昨今登場した他社最新モデルと比べると決して小さいとは言えない。ボルボFHは90mmになっており、メルセデスベンツ・アクトロスやルノー・Tには完全に平面となるキャブもある。そこでスカニアが新たに用意したのが先述のSレンジなのである。
これら完成車の製造の他、バスシャシーの他メーカーへの供給も行われている。供給用シャシーは都市内路線用と中長距離用の両方があり、中でもそれぞれに用意されるFレンジシャシーはフロントエンジンで、悪路での走行を想定したという特徴的なもの。
気筒数 | 型式 | 排気量 | 最高出力 | 最大トルク | 搭載車種 |
直列5気筒 | DC09 | 9.3L | 250hp ~360hp |
1250Nm ~1700Nm |
全車種 |
OC09 (ガス燃料) |
9.3L | 280hp ~340hp |
1350Nm ~1600Nm |
Rレンジ以外っぽい | |
直列6気筒 | DC07 | 7L | 280hp | 1100Nm | Citywideのみ |
DC13 | 12.7L | 370hp ~500hp |
1900Nm ~2550Nm |
Higer A30 Citywide を除く全車種 |
|
V型8気筒 | DC16 | 16.4L | 520hp ~730hp |
2700Nm ~3500Nm |
Rレンジのみ |
現在のエンジン型式は「DC+数字」又は「OC+数字」になっており、数字は排気量を意味する。DCはディーゼルエンジン、OCはLNGやバイオガスを使うガスエンジンを示す。また馬力など仕様の違いにより、各型式の後ろに補助記号が付く。例えば16L・V8だと、520馬力はDC16 101、580馬力はDC16 102、730馬力はDC16 103といった具合。全部表に載せろ?いやー、面倒くさいんで。
オプティクルーズはスカニア独自のAMT。スプリッタ付きMTをベースに変速制御とクラッチを自動化したもので、大重量大馬力にも耐えられる(まぁどこのもそうだが)。リターダやアダプティブクルーズコントロールを装着した場合は、それらの動作と協調した変速制御を行う。
オプティクルーズ車は、通常はアクセルとブレーキの2ペダルでクラッチペダルはついてないが、メーカーオプションで付けることも可能。オプションであることからも分かる通り、オプティクルーズはクラッチを完全自動制御するAMTであり、基本的にはなくても問題はない。クラッチがオプションとして用意されているのは、繊細な操作を要求する顧客向けである。
尚、自動変速機はオプティクルーズの他に、遊星ギアを用いる通常のオートマティックも用意されている。但しATが搭載されるのはPレンジなど出力の小さいモデルであり、大出力モデルはオプティクルーズのみとなっている。
スタンダード、エコノミー、パワー、オフロード、マニューバリングの各パフォーマンスモードを備えており、状況に合わせてドライバーは好きなモードで走ることが可能。モード切替はトグルダイアルをD方向に押すことで行う。
画面表示 | 意味 |
A | 自動変速 |
M | 手動変速 |
AP/MP | パワーモード(自動/手動) |
AO/MO | オフロードモード(自動/手動) |
数字 |
選択中のギア |
N | ニュートラル |
R |
後進 |
○m |
マニューバリングモード |
オプティクルーズの作動状態が表示されるのは、メーターパネル中央のモニター。選択中のパフォーマンスモード、自動/手動変速、選択されているギア段数などが統合的に表示される用になっている[13]。
左表は画面左上に表示されるものの一覧。黒背景に白文字のアルファベットで示されるのは、自動/手動変速とパフォーマンスモード。白い扇形の背景に黒文字で示されるのが、選択中のギアとマニューバリングモードである。
これ以外にもスタンダード、エコノミー、パワー、オフロードの各モードを切替えると、画面中央にモード切替画面が表示され、どのモードを選んでいるのかが分かるようになっている[14]。
操作は右図のようなレバーで行う。左右いずれのハンドル位置であっても、このレバーはステアリングコラム右側に装着されている。レバーにはシフトセレクター、シーケンシャルシフト、リターダ、パフォーマンスモード切替えの各機能が集約されている。
レバーについているトグルダイアルがシフトセレクター。右図の青矢印の方向に動かすことでセレクトする。セレクターがニュートラル位置の時、奥に回すとドライブに入る。そこから更に回すことでパフォーマンスモードの切替を行う。ダイアルをコラム側に押し込みながら手前に回すとリバースに入る。
緑矢印の方向へレバーを手前に引くとシーケンシャルシフトアップ、押すとシフトダウン。ダウン方向に一秒以上押し続けるとマニューバリングモードに入る。
赤矢印方向に動かすとリターダ操作ができる。下げるとリターダが強く効き、上げると弱まる~解除。リターダは排気ブレーキと統合制御がされている。リターダのついていないモデルでは、この方向にレバーを動かすことはできない[15]。
レバー先端のボタンは変速操作の自動/手動切替え、レバー下側のスイッチでブレーキペダル連動リターダの切替えを行う
オプティクルーズは長らくスカニアのみで使用していたが、2016年からはVW傘下の同門であるMANに供給される。搭載されるのはTGXとTGSで、いずれも大型トラックである。またスカニアが持つオプティクルーズ開発能力をグループ全体で活用するため、今後はグループ共通のギアボックス及び駆動系を開発していくことになっている[16]。
スカニアの経営と商品に関わる重要な思想としてモジュール化がある。モジュールとは規格・寸法のことで、製造業においてモジュール化と言った場合には、製品を構成する各部品の接続や組み立て方法を共通規格化することを言う。予め部品規格を定めておいてそれに応じた部品を作れば、低コストで新たな製品を開発したり、製品の仕様を増やせるということ。これはよくレゴブロックに例えられる。レゴは、新たな商品レンジを開発してブロックの種類を増やしても、デュプロのように一見すれば大きさの違うブロックであっても、レゴ同士であれば必ず組み合わせられる。ヘッドライトの透明パーツを外し、そこへミニフィグの頭をつけ、その頭頂部にアンテナをつけることもできる。スカニアもこれと同じ事をしているということ。
モジュール化は単なる部品の共通化とも違う。単なる部品の共通化とは、例えばあるアッセンブリーを一種類にするといったこと。それはそれでコストカットにはなるだろうが、製品の仕様を多様化した時に融通が効くとは限らない。既存のアッセンブリーを使い回せない時は種類を増やす事になり、場合によっては新たに製品を開発するのと変わらない手間が掛かる。新たなアッセンブリーによって、製造工程の変更をを余儀なくされるかもしれない。一方でモジュールが作られていれば、仮にアッセンブリーの種類を増やすにしてもそれに応じた物を作れば良いし、製造工程を変える必要も無い。モジュール化のメリットは、低コストで多様化できる点にあるわけだ。
一方でモジュール化は難しい面もある。身近なモジュール化された製品であるPCを例に取ってみよう。電源やスロット類などは既に仕様が決まっているので、これに応じた部品同士は容易に接続ができる。それによって組み立てが簡素化されており、様々な部品を組み合わせて多様な仕様のPCを組むことができる。ここまではモジュールの恩恵だろう。ところが様々な会社が部品を市場に供給しているため、モジュール同士で競合が発生しまうこともある。例えばPCI Expressのスロットにグラボを挿したら放熱フィンとファンで2段分を占有してしまい、直下のPCIスロットが使えなくなってサウンドカードが挿せなくなる、ということは珍しくはない。モジュール化はされていて多様性もあるが、後述するような標準化がされていないので競合がおきるわけだ。スカニアという同じ会社の製品でこれと同様のことが起きると困る。よってモジュールの仕様を決定していく作業は、非常に重要な作業だろうと推測できる。
日本モジュラーデザイン研究会の日野三十四氏は、雑誌のコラムにおいてスカニアのモジュール思想とそれに基づく取り組みについて、次のように説明している(編集者要約あり)[17]。
なるほど、わからん。だが製品ごとの専用設計に頼ることなく、広範な要求に対応できるような息づかいは感じられた。あとこういうことがあるから、現行のRレンジをTモデルにすることも可能なのだろう。
実際に、モジュール化はどの程度まで部品数を減らすことができるのか。日野氏のレポート『自動車産業のモジュール化の動向と展望 』[18]から、スカニアとボルボ(トラック・バスの方)との比較を引用してみる。
つまりスカニアは商品の種類が同じなら、必要となる部品の種類はボルボの30~50%で済むということ。言い換えれば一種類の部品が、ボルボよりも多くの車種に使われ、且つ必要な性能を満たしていると言うことである。性能の追求だけで考えれば、増えた車種毎に専用部品を開発した方が設計はラクである。一方で単に収益性だけ考えて部品点数を絞っただけでは、品質問題を起こしたり、競合製品より性能や評価が落ちることが考えられる。品質、収益性、多様性を高次元で釣り合わせるのがモジュール思想であり、それ故に根っこのモジュール設計が非常に重要になるのであろう。
ところで上記の記事には、スカニアの親会社であるVWのR&D担当専務と日野氏が、2005年頃に交わした会話についても記されている。それを読むと・・・
フォルクスワーゲン、モジュール化されたプラットフォームMQBを発表
これってそういうことだったのか。日野氏の説明によれば、自力でモジュール化を進めたスカニアは20年かかっている。時間をかけずに追いつくには、大株主の立場を利用して早急に学ぶ必要があったということらしい(飽くまで日野氏の解釈です)。
日野氏の日本モジュラーデザイン研究会が2012年に作成した資料『グローバル大競争を生き残るモジュラーデザイン戦略』[19]によれば2010年のスカニア営業利益率は約16%で、その直近5年で見るとリーマンショックの影響を受けた2009年を除き、概ね10%前後で推移している。これはダイムラーやボルボが6%弱であるのと比べて高めである。つまりスカニアは効率よくお金を稼いでおり、それにモジュール設計が大いに貢献しているとのこと。「最小のコンポーネンツで最大の多様性」によって実際に収益性を高めていると指摘している。
一方で2016年直近の数字を他社と比較するとどうだろうか。2015年暦年又は2016年3月期(日本企業)の年次報告から、各社の営業利益率を見てみよう。スカニアの2015年期営業利益率は10.2%(全セグメント)であった[20]。これに対しボルボグループ工業セグメント(含む重機・産業用エンジン)は7.8%で[21]、ダイムラー(含む乗用車等)は8.8%である[22]。実はボルボもトラックだけなら10.1%なのだが、重機は4.1%、バスは3.7%と利益率は低い。トラックとバスで収益性にかなりの差があるから、トラックとバスは異なるモジュールで作られているのだろう。ダイムラーは比較的収益性が高い高級乗用車を含んではいるが、全体としてはスカニアより低い数値である。
他も見てみると、フォード6.8%[23]、マツダ6.7%[24]、日産6.5%[25]で横並び。トヨタは10.1%で同時期のスカニアと同程度[26]、スバル(含む航空宇宙)は17.5%でかなり高い[27]。トヨタは元々部品の共通化に熱心で利益率は高めだが、昨今はトヨタ式モジュールコンセプトのTENGATNGAを始めており、今後はさらに利益率が向上するかもしれない。スバルは航空宇宙カンパニーも含んだ数字だが、カンパニー別の売上高と営業利益をみると、やはり利益率の高さは自動車によるものである。
日本では少数派のスカニアではあるが、細々と営業が行われてきた。
トラックに関しては、かつて業務提携していた日野自動車、2011年以降は現地法人であるスカニアジャパンが輸入・販売を行っている。バスは2014年頃から採用する動きが出始めており、こちらはスカニアジャパンではなく三井物産のグループ企業である三井物産プラントシステムズが輸入・販売している。
詳細は以下の項目を参照のこと。
販売・整備拠点のうち、千葉県富里市の富里ディーラーと大阪府大阪市住之江区の大阪中央ディーラーは直営店で、また富里ディーラーはPDI(出荷前検査)工場の役割も備えている[28]。
機械にとって重要な部品の供給だが、現体制ではスカニアジャパンで取り扱っている。そのうち9割はベルギーのスカニアパーツセンターから送られてくるもの。残りの1割は日本の保安基準適合に必要な部品で、日本国内のサプライヤーから調達している。ベルギーからの発送は船便が月1回、航空便が週3回となっており、特殊なものでなければ10日前後で客まで届くという[29]。
トラックの販売は、日野スカニア時代とスカニアジャパン時代という二つの時期に分けられる。それぞれで売り方が全く異なるので分けて説明していく。
2002年にスカニアと日野自動車は業務提携を行い、スカニアのトラックを日野にOEM供給することが決定。翌2003年9月25日から「日野スカニア」として販売が始まった[30]。
型式 | 輸入年 | エンジン | 変速機 | レンジ |
R124 LA KL-SHD1 |
2003年~2005年 | DT-12 | MT オプティクルーズ |
4 |
PK-SHD1 | 2005年~2006年 | DT-12 | オプティクルーズ | PRT |
BKG-SHD2 | 2007年~2011年 | DC13 | オプティクルーズ | PRT |
最初に販売された日野スカニアは4レンジと呼ばれる世代で、12LのターボコンパウンドエンジンであるDT12-10(440ps)を搭載したSCANIA124(今のRレンジ相当)がベースのR124LA型及びKL-SHD1型。シャシーは4x2で海コン用、低床、標準の三種類が用意された。ミッションは海コン用が12速マニュアル、他がオプティクルーズ。それ以外の特徴として、サイドミラーが日本で一般的に使用されているものに変更されている。
2005年、日野スカニアとして初のフルモデルチェンジが行われ、PRTレンジ世代となった[33]。PRTとはキャブ形式を表す低床のP、高床のR、ボンネット型のTがモデル名に付いたことが由来。日本に輸入されたのはRキャブの標準ルーフとハイルーフ(ハイライン)の二種類を採用したPK-SHD1型。エンジンは、前者には420psのDT12-14、後者には470psのDT12-15が搭載された。変速機はオプティクルーズのみ。
2007年には新長期規制に適合したBKG-SHD2型の輸入が開始[34]。導入されたのは直6・13L・420psのDC13-11を搭載したR420(汎用)と、直6・13L・470psのDC13-8を搭載したR470(海コン)。シャシーが4x2なのは変わらず、サイドミラーも日本向けのものが採用された。トランスミッションは全てオプティクルーズとなっている。
このように提携下で輸入・販売が続けられていたが、販売台数が日野の採算に合わなかったことから2011年に提携を解消。日野による販売は終了し、以後は日野スカニアの保守点検のみを行っている[35] 。
提携解消に先立つ2010年、スカニアジャパンが設立。スカニア初の日本法人が誕生した。提携解消後はスカニアジャパンがスカニア製品の輸入販売を行っていく。これによって正規販売拠点は激減したものの、スカニアが製造・販売しているものであれば基本的に購入できるようになった。つまり選択肢が広がったと言うことになる。
選択肢が広がった具体例を言えば、キャブタイプの選択肢が増えたのがそれにあたる。キャブは欧州と同じようにLow、Normal、Highline、Toplineの四種類が選べるようになった。右にいくほど屋根が高くなり、頭上空間に余裕ができる。但しトップラインの全高は3860mmもあり、日本の道路運送車両法で定められた一般制限3800mmを超えてしまうため、車高を下げてクリアしなければならない。もっとも、ハイラインでも室内高は1900mmもあるので、「十分な高さがある」とドレージ屋のヒデさんが言ってた。サイドミラーに関しては日本向けのものは採用せず、スカニアオリジナルのものがそのまま使用されている。
キャブだけでなくシャシーも充実している。例えば重量物輸送向けの6x6や8x4セミトラクタの輸入が行われるようになり、特殊輸送を手がける事業者向けの営業が強化された。これは海コンまたは汎用向けのセミトラクタを輸入していた日野時代には無かったもの。現在までにR730の6x6、R580の8x4などが輸入・販売の実績がある。国産メーカーが重トラクタへの対応を縮小していく傾向があるが、それと入れ替わるようにスカニアが特殊輸送関連の注文を受けるようになった。2016年には宇部興産の特大車としてR580 6x4を納入するなど[36]、日本の特殊輸送・重量物輸送分野での存在感は増しつつある。また汎用や海コン用のセミトラクタも引き続き販売されている。
2015年からはセミトラクタに加え、日本では主流である単車(リジットシャシー)の販売も始まった[37]。キャブ長はショートとスリーパー、ルーフ高はロー、ノーマル、ハイラインの三種類、車種はGとR、エンジンは410馬力のDC13のみ。つまりR410とG410の二車種があり、キャブ長やルーフ高さで数種類に別れるわけだ。荷台架装は日本トレクスと日本フルハーフの二社が行う。ホイールはアルコアのアルミが標準だが、スチールホイールにすることも可能。
メディアや事業者向けの宣伝活動も熱心で、試乗会やイベントを積極的に行っている。2012年6月2日~3日にはスウェーデン大使館で行われたイベントにおいて、シャコタンにして一般規制をクリアしたR440トップラインが展示された[38]。
日本ではスカニアのバス販売は行われていなかったが、近年採用する動きがある。但し現在のところ、スカニアジャパンが車両を輸入しているものはない。後述するいずれも車両も、スカニアのシャシーに海外の車体メーカーが架装し、スカニアジャパン以外の事業者が輸入したもの。スカニアジャパンは、それらの車両に対する部品供給を行っている。
2015年から運行を開始する新潟交通のBRT(バス高速輸送システム)の車両としてスカニアの連節バスが採用された。この事業にあたっては、シャシーと駆動系をスカニアが、オーストラリア(コアラの方)のバス車体メーカーであるボルグレンが車体架装を担当。これを三井物産プラントシステムが日本国内で販売する。つまりCitywideなどスカニアの完成車を輸入・販売するのではなく、シャシー供給の方に該当する車両となる[39]。日本のメーカーで例えて言うと、スカニアが日産ディーゼル(現:UDトラックス)、ボルグレンが西日本車体工業[40]のようなもの。スカニアジャパンは、ボルグレンのものも含む部品の保管と供給を行う。
この日本向けの車両開発により、日本の保安基準に収まる部分が多くなっている。これが何を意味するかというと、車両登録に伴う手続きの面倒くささが(相対的に)小さいということ。
ナンバーの交付を受けようとする時、その自動車の仕様が保安基準の規制値を超える場合には、保安基準の緩和という手続きが必要となる。これは「保安基準には適合しませんが、安全に走る事ができます、だからナンバー下さい」という申請を行い、認めてもらうこと。申請をすると、それを受理した国土交通省の各運輸支局が審査を行い、「まぁこれなら登録しても問題ないわ」となるとナンバーを交付してくれる。こうすることで道路を走るために必要な第一関門を突破するわけだが、規格外の車になればなるほど登録までの障壁は理論上高くなる。よって規格外の車両でも、なるべく多くの要素を規格内に収めた方がラクになるのだ、多分。
全長 | 17990mm |
全幅 | 2490mm |
全高 | 3250mm |
定員 | 116名 |
単体重量 | 16430kg |
駆動軸重 | 8230kg |
車両総重量 | 22810kg |
エンジン | DC09 |
スペックを見ていこう。全幅は2.49m(保安基準2.5m以下)、最大軸重は8.23t(同10.0t以下)など、多くが保安基準内に収まっている。全長はさすがに18mとなり、それ自体が単車として扱われる連節バスとしては保安基準を超えたものとなる。また車両総重量(GVW)が22tを超えているので、もし最遠軸距(前輪と一番後ろの車輪までの長さ)が7m未満の場合は緩和申請が必要になる。ただ正確なデータは編集者は知らない、情報をお待ちしています。GVWは全長によっても変わるが、「セミトレーラ以外の自動車で、長さが十一メートル未満の自動車にあっては二十二トン」とかであり、18mもあるこのバスはむしろ無視して良いレベル。
道路を走るのに必要な関門はもう一つある。それが道路法の規定に基づく車両制限令という政令。道路を徒に傷めかねない自動車が好き勝手に走ると困るので、自由走行が可能な自動車の大きさや重さを制限したものである。車両制限令内であれば許可は不要だが、これを超える自動車で道路を通行しようとする者は、道路管理者(国や自治体)の通行許可を保安基準緩和とは別に受けなければならない。これを特殊車両通行許可という。本車両においては全長(規制値12m以下)は規格外で、道路管理者の指定にもよるがGVW(同25t以下、または20t以下)も規格外になりうる。よってこれらの点については、特殊車両通行許可が必要となる。逆に言えば許可が必要な点もこの二つに限られる、とも言える。
国土交通省自動車局では連節バスを運行しようとする事業者向けに、保安基準の緩和及び特殊車両通行許可を取得する為のガイドラインを用意している[41]。こういうガイドラインができた分だけ、現行制度内でも申請と許可の効率化が図られているということ。
これらの事柄を、既に日本で導入・運行されているメルセデス・ベンツ・シターロの連節バスと比べると。シターロは全幅2.55m、駆動軸重は最大13t[42]。比較すれば、このスカニアのバスは保安基準の緩和を受けなければならないのが全長、最悪でもそれにGVWも加わる程度。つまり車両を登録したり、また道路を走行する上で規格外となる部分のが少ないので手間が少ない(はず)。反面、車体がシターロより小さくなったことで、定員はシターロの156~159人(座席+立ち乗り)に比べ、116人と小さくなっている。よって、一般道部分が少ない或いは全くない本格的なBRTや、乗員数の大きさを重視する場合はシターロやその他欧州規格車が優位。走行区間で一般道部分が多く、定員116人でも十分であればこの車両が優位、と言えるのではないだろうか(と思ったら、西鉄バスが定員130名、軸重11.05tまで拡大したのを投入した)。
スカニアがシャシーを供給し、ボルグレンが架装をする点にも合理性がある。Citywideといったスカニアの完成車のスペックはシターロと似たり寄ったりであり、全長のみならず全幅やなども日本の保安基準を超えることになる[43]。そのままでは競合他社と変わらず、スカニアが選定において有利になることはない。故に日本向け専用車両を架装メーカーが製作する意義がある。またボルグレンは実績のある車体メーカーであり、オーストラリアが地理的に日本に近いことを考えても、この協業は合理的なのではないだろうか。
加えて考慮すべきは、日本では1990年代以降、セミトレーラ/フルトレーラ特例8車種のばら積み緩和と呼ばれる規制緩和が行われていること。2015年時点ではセミトレーラ連結全長は最大で18m、フルトレーラ連結全長も最大で21mまで緩和されており、さらに特例8車種に対応する4x2セミトラクタの駆動軸重も11.5tまで緩和されている[44]。これ自体は飽くまでトレーラ連結車に対するものであって連節バスは関係はないが、より大重量に耐えられる道路整備も順次行われており、今回のようなバスは「セミトレ/フルトレが走行している道路であれば、技術的には無理なく運行できる」ということを意味する(もうちょっと大きくなれば軸重13.0tも簡単に…?)。
ところで。新潟のBRT車両を三井・スカニア・ボルグレンが落札したことについて、市内に住む60代の人が疑問を投げかけている。
市民の関心事であります、BRT構想の連節バス調達の一般競争入札は、「三井物産プラントシステム」が扱う、スウェーデンの「スカニア社」の連節バスに落札したとのこと。私は素人ながら、当入札に疑問を感じております。
市民はBRTの試乗会には他のメーカー(ベンツ等)の連節バスに試乗し、スカニア社のバスには試乗していません。なぜ試乗したメーカーの連節バスを購入しないのか。
今流行りの食品偽装問題と同じように、新潟市が市民を欺いたことになる。なぜ試乗会に「スカニア社」の連節バスを使用しなかったのか、その理由をお聞かせください。
市民はスカニア社なんて見たことも聞いたこともなく、日本では走っていない幻の連節バスです。また、BRTの試乗会に使用したバスのメーカーは、なぜ入札を辞退したのか、誠に不可解です。
BRTの是非について市民の間で大問題になっており、「黒い霧」に覆われた連節バスは必ず重大事故を起こし、運転手並びに関係者は厳しく処罰されることでしょう。
リンク先に新潟市の上品な回答があるものの、これは幾らなんでもムチャクチャな意見ではなかろうか、と思う。例えば試乗会で乗ったシターロと異なる車両を購入した点について言えば、試乗会に呼べるのは既存車両になるのでシターロを借りてきた、購入に際して入札に応じたのが三井物産プラントシステムだった、ということであろう。裏で何かあった、それが明らかになったと言うのでもない限り、異なるメーカーを購入したと言うのは市民を欺いたわけでもなかろう。
上記のような意見が出る背景もある。新潟市BRTには以前から相当な批判と、それに伴う市民の市に対する不信感があった。新たに整備されるバス停などを含むと30億円の巨額プロジェクトになること、BRTと呼ばれるものの専用レーン又は専用道路がないこと、BRTへの乗換えを余儀なくされる郊外からの路線が増えるのでお年寄りには辛い、といったものである。こういった事業そのものへの不信感の巻き添えを喰らい、車両そのものへの不信感も高まったようだ。でもスカニアをけちょんけちょんに貶さんでも…。
西鉄の都心循環BRT用車両として、新潟と同じ車両が導入される事になった[45]。西鉄と福岡市は天神地区再開発計画「天神ビッグバン」を進めており、計画の一環としてパークアンドライドが整備されることになっており、BRTはそれを担うもの。BRTが稼動を始めると天神地区、博多駅、ウォーターフロント地区が循環路線で結ばれるようになる。
車両は基本的には新潟のものと同じ。スカニアの駆動系及びシャシーをベースに、ボルグレンが車体を架装したもので、スタイリングも共通。異なるのは定員と軸重で、定員は130人に、最大軸重も11.05tと、何れも大きくなっている。軸重は保安基準の10tは超えるものの、上記のガイドラインで示された通行許可の11.5t以内に収まっている。軸重は通行許可の重さ条件での算定(通行可能かどうかの計算)に関わる要素なのだが、国交省では駆動軸重11.5tまでは想定している上、特例8車種を牽引する4x2セミトラクタは軸重が11.5tまで緩和されておりということを考えても、駆動軸がエアサスとかになっていれば物理的にも問題ないはず。もう車両制限令の駆動軸重を条件付で11.5tにしても良いんじゃね…
型式 | TDX24 | |
全高 | 3780mm | |
全幅 | 2490mm | |
全長 | 11990mm | |
車両重量 | 15750kg | |
車両総重量 | 18830kg | |
軸数 | 3軸 | |
軸距 | 最遠 | 7000mm |
1~2軸 | 5700mm | |
後2軸 | 1300mm | |
変速機 | オプティクルーズ 12速 |
|
エンジン | DC13 115 410ps/2150Nm |
|
定員 |
定座 | 52 |
車いす | 2 | |
乗員 | 2 | |
車内装備 | wi-fi 解説受信機 |
全高 | 4000mm | |
全幅 | 2550mm | |
全長 | TDX25 | 13150mm |
TDX27 | 14105mm |
事の発端は東京で観光バス事業を行っているはとバスであった。同社は2016年に、スカニアのシャシー・駆動系に、バンホールの車体を架装した2階建てバス『アストロメガ』を導入した[48][49]。車体架装メーカーが違うことからも分かると思うが、このバスが導入された経緯は先述の連節バスとは全く異なり、また現在ヨーロッパで売られているアストロメガとは車体の大きさが異なる。そこには深い事情があった。
はとバスは1980年代から、輸入・国産問わず複数の2階建てバスを運行してきた。2階建てバスは眺望が良く、観光客には人気がある。はとバスにとって、2階建てバスとは必需品とも言える車両なのである。
そんな2階建てバスの代替時期が迫った2009年頃、はとバスは次期車両の調達準備を始める。だが思わぬ壁にぶつかってしまった。バスを製造する国産2社が経営合理化の為に2階建てバスを廃止し、代替車両の問題が生じるようになっていたのだ。当初は国産メーカーに製造を依頼したが結果は変わらず。2011年、已む無く海外からの導入を検討し始め、欧州のバス架装メーカーとの交渉を始めた…ということだが、ここまで読んだバスマニアの人ならこんなことを思うかも知れない。
「あぁ、それでバンホール導入したんでしょ?。昔もアストロメガあったじゃん、問題ないでしょ」
いや、問題はあったのだ。連節バスのところで述べた通り、欧州のメーカーは欧州の規制に最適化しており、日本の法令よりも少し大きいバスを製造している。左下表はアストロメガ欧州仕様、つまり標準のものの車体諸元であるが、全高・全幅・全長の全てが日本の車両制限令を超える大きさである。一方、かつて日本を走っていたアストロメガは日本の車両制限令に適合しており、自由走行が可能だった[50]。当時のヨーロッパのバスは、そこまで大きくなかったのだろうか?。或いは三井物産が輸入・販売を行っていたので纏まった数を発注することが可能であり、日本に最適化された架装が行われていたのかも知れない。
いずれにしても日本で自由走行な可能な車両だからこそ、幾つかの事業者で問題なく導入されていたわけだ。
現状のものをそのまま輸入すれば、諸元は日本の車両制限令を超えてしまう。そこで日本の車両制限令に適合した架装を頼んでみたものの、どのメーカーもはとバス一社では賄えないほどのロット数を要求し、それ無しには日本の車両制限令に適合する車両は作れないという。商社抜きでは到底発注できないロット数。欧州メーカーの事情を考えれば仕方のないことでもある。標準とは異なる仕様のものを少数ロットで生産した場合、メーカーとしては採算ラインが上がってしまうからだ。生産工程が最適化している条件・仕様とは異なる場合、どうしてもこういう問題が起きてしまう。国内メーカーが2階建てバスの生産を断ったのも同じ理由であろう。
かといって欧州仕様のまま導入しようとすれば特殊車両になってしまう。つまり運行にあたっては特殊車両通行許可を取らなければならない。それ自体は可能なことではあるが、特車は通行経路が限定されるという制約がある。これでは柔軟な運用は望めない。毎日決まった道を走る路線バス事業なら問題ないことだが、観光バス事業者は貸切客の要望や季節毎に変わるツアー商品に応じ、様々な経路でバスを運行しなければならない。観光バス事業者にとって、特車バスとは非常に都合の悪いものなのだ。
この状況が変化したのは、交渉相手の一つであるバンホールが条件面で大幅に譲歩したこと。はとバスが発注できる程度にまで必要ロット数を減らした上で、車両制限令適合車の製造を引き受けてくれることになった。こうしてはとバスは、バンホールから車両制限令適合のアストロメガを調達することにした。そしてシャシーと駆動系の選定するにあたり、日本に現地法人があり部品調達が容易なスカニア製を選択。こうしてバンホール+スカニアの2階建てバスが誕生したのである。バンホールの譲歩によるところが大だが、スカニアが現地法人を構えていたことも、導入を後押しすることに繋がった。
その後ははとバスと同じ都内の貸切バス事業者である東京ヤサカ観光バスも車内レイアウトを一部変更した上で同型車を導入。2018年には京成バスが高速路線バス用に導入、更に同年にはツアーバス発祥の高速路線バス事業者であるジャムジャムエクスプレスやJRバスグループのJRバス関東、翌2019年には同グループの西日本JRバスにも導入されるなど、貸切・高速路線問わず国内での勢力を増やし続けている。
初期の頃は全座席4列シート車のみだったが、岩手県北バスの106特急バス向けに部分3列車が登場。2020年には2階の座席を全て3列シートとした仕様が登場し、JRバス関東・西日本JRバス・JR東海バス・中国JRバス・JR四国バス・関東バスが導入している。2階3列車のシートは天龍工業製で、2階にシートを配置しない状態で輸入し、国内で3列シートを取り付ける。
なお貸切・定期観光バス向けはアストロメガ、高速バス向けはInterCityDDの名称がある。(InterCityDDの場合、全席4列シート車はJDV-1、2階3列車はJDV-2のコードが車体に表記される。)
トラック用と産業用のディーゼルエンジンは互いにキャラが被っており、相互に補完することができるものである。トラック用として開発されたエンジンと関連技術を他の産業機械に用いたり、あるいはその逆のことをするというのは、世界的に広く行われている。スカニアもまた、自社が持つ技術を他の産業機械向けに供給している事業者の一つ。発電機、船舶、その他動力を要する機械にスカニアの技術が使われており、日本でもスカニアの技術を搭載した製品が開発されている。
新潟県長岡市に本社を置く大原鉄工所。雪上車を開発している日本で唯一のメーカーであり[51]、世界的に見てもそれほど多くはないとのこと。そんな同社が開発した雪上車の動力部にスカニアのユニットが使われている。
RIZIN(雷神)はゲレンデを整備する雪上車で、車体の前後に整備用のアタッチメントを装着して作業を行うもの。早朝のスキー場で働いているあの車である。RIZINに採用されたのは9LのDC9(350ps)[52]。ゲレンデ整備用の車両は冬しか試験ができないことから、開発には年数がかかりコストが嵩み易い。そこをラジエターと纏めて車体に搭載できるDC9は、開発コストの低減に役立ったそうだ。
SM100Sは南極観測用の雪上車で、日本の観測隊が使用する車両では最大のもの。大原鉄工所は観測隊向けの各種雪上車の手がけている[53]。17号車は数年ぶりに新造されたSM100Sで、2014年に第56次観測隊と共に南極へ送られた[54]。そんな17号車の動力部に採用されたのはDC13[55]。以前はいすゞの6RB1T(280ps)が採用されていた[56]。SM100Sに採用されたDC13の諸元は不明だが、トラック用のDC13で一番パワーの小さいものでも370psなので、そのくらいの出力はあると考えられる(ということは+90ps ?)。
ここでは日本における広報関連のコラボレーションを取り上げる。
モデル | G410 6x2 単車 |
全長 | 11900mm |
全幅 | 2490mm |
全高 | 3005mm |
車体重量 | 9620kg |
キャブ | G16キャブ ロールーフ |
架装 | 日本フルハーフ製 ウィングカーゴ |
エンジン | DC13 410ps |
変速機 | GRS905R 12+2速 オプティクルーズ |
ジャンプスクエアで連載中の「双星の陰陽師」。2016年4月から、テレビ東京系でアニメの放映が始まった。これに合わせ、スカニアと双星の陰陽師のコラボレーションが行われた。
このコラボキャンペーンの目玉は、G410 6x2 単車をベースに製作されたキャンペーントラック『双星号』。架装されている荷台は日本フルハーフ製で、恐らく普段は試乗・広報車として使われているものだと思われる。双星号とするにあたって、キャブや荷台には作品のイラストが描かれた。また非常に細かいところも気配りがされ、マッドフラップの模様が作中に登場する「霊符」になっている。
双星号の役割は基本的にはアドトレーラ[57]と同じ。違いは、アドトレーラが宣伝用の広告パネル設置台が架装されているのに対し、双星号は普通のウィングカーゴを利用していること。またアドトレーラが運送会社に依頼して走ってもらうものなのに対し、こちらは現地法人とのコラボという違いもある。
双星号はAnimeJapan 2016でのデモ走行、主演声優を乗せての都内でのキャンペーン活動、都内を走行しての広報活動などに使用された。ツイッターをみると、主に秋葉原近辺で走行していたようだ。
企画としては双星号の他、上記にある特説サイトの開設、出演声優のGRIFF IN MAGAZINEへの登場[58]、アニメ公式からのスカニアの紹介、なども行われた。
サーブ・オートモービルは歴史の項目で記した通り、SAAB-SCANIA時代の同門で、1990年代の経営分離によって資本的には無関係になった会社である。経営分離後のサーブオートはGM傘下で事業を続けていたのだが、リーマンショック後の景気悪化に伴いGMの経営が悪化。GMはサーブオートを売却してしまった。これをオランダのスパイカーカーズが買収し、サーブオートは同社傘下で経営再建を模索していたものの業績は改善せず、2011年に経営破綻している。
さて、資本的に両社は無関係になったとは言え、全くの無関係になったわけではなかった。SAAB-SCANIAが分離した後、サーブとグリフィンの商標権は航空・軍需企業のサーブABとスカニアがそれぞれ保有している。サーブ・オートモービルもサーブという商標とグリフィンを使用していたが、サーブ・オート自体は一切の権利を有しておらず、両社から使用許諾を得てのことだった。GM傘下時代はそれで特に問題はなかったのだが、経営破綻後に商標権を巡って一悶着あった。
2011年の経営破綻後、ナショナル・エレクトリックビークル・スウェーデン(NEVS)がサーブオートを買収、サーブ車をベースにした電気自動車の開発及び将来的な販売計画を発表した。これに対しスカニアは「サーブオートを買収した企業がグリフィンを使うのは嫌だ」と商標の使用を拒否、サーブオートはグリフィンが使えなくなってしまった[59]。スカニアがそこまで強い拒否を示したのは、グリフィンをこの会社が使うことにより、その巻き添えで自社のブランドイメージが損なわれることを懸念したためである。仕方ないね。NEVSはこれ以後はグリフィンの使用を取り止めていた[60]。さらにSAABの商標権を有するサーブABもNEVSに対し商標使用を認めない意向を示し、2017年からはSAABの商標も使われないことになった[61]。こうして旧サーブ・オートモービルは名実共にサーブ及びスカニアとは無関係の会社となり、以後はNEVSのブランドで商いをしていくことになる[62]。
さて、NEVSによる買収後の旧サーブオートモービルはどのような道程を辿ってきたのだろうか。電気自動車化計画は進められており、2014年8月20日にはサーブ9-3ベースの電気自動車が公開されている[63]。だが公開直後の8月28日、肝心のNEVSが資金難で破産申請をしてしまった[64]。これについてNEVSは「自動車大手二社と提携交渉中であり、破産申請は単なる時間稼ぎだ」とコメントしている。こんなところで燻ってる俺達じゃないNEVSは事業継続の為、その大手二社との提携を模索し続けており、2014年10月に「アジアの自動車メーカー2社と提携交渉を行っている」と発表した[65]。2015年5月27日、NEVSは中国企業2社との戦略的提携を発表。一つは天津Binhaiハイテク産業開発、もう一つは北京情報研究技術である[66]。この2社との提携以後のNEVSは中国市場での受注を増やしており、リース会社に15万台を販売するほか、国有系企業からも2万台の受注があった[67] 。旧サーブオートのNEVSに幸あれ。
ちなみにスパイカーカーズはサーブの自動車事業を丸ごと売ったわけではなく、既存のサーブ車に部品供給するサーブ部品製造会社は手元に残した。この会社は2013年11月にオリオABへと社名変更している[68]。ただ、親会社のスパイカーカーズが2014年12月に破産申請。その後は破産保護期間を経て、アメリカの電動航空機メーカーであるVolta Volaré社と合併して経営建て直しを行うなど、こちらはこちらで紆余曲折を経ている[69]。
2016年6月、自動車のサーブが商標を使わなくなるというニュースが流れると、「サーブブランド消滅」という解釈のニュースが流れた。上記の記事を読んでもらえれば分かるが、サーブという商標を保有しているのはサーブABであり、ブランドそのものが消えたわけではない。飽くまで自動車メーカーがこれを使えなくなったと言うことである。中には「サーブの商標を売却することも考えられる」という推測を示した報道もあったが[70]、これも自動車メーカーが商標権を保有しているという誤解に基づいたものだろう。
掲示板
16 ななしのよっしん
2017/11/07(火) 00:19:44 ID: SrNLNttVRh
国内でも、ちょっとずつだけど増えてきた感じ
東名を往復する間に、運がよければ1台見られる
かっこいい
17 ななしのよっしん
2017/11/07(火) 03:42:01 ID: mwSYs88iMn
スカニア魂を感じる記事。
スカニアトラックは海外で「公道の王」と呼ばれたこともある。
スカニアの魅力を感じたい君に『Euro Truck Simulator 2』を勧める。
18 ななしのよっしん
2018/03/16(金) 11:19:06 ID: S+2LIK3mXO
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最終更新:2024/12/26(木) 22:00
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