1998年、ポーランドはセミの大群に包まれた!この未曾有の事態は財団と世界オカルト連合 によってどうにか鎮圧されたものの、世界は『異常』を知ってしまった。
財団と世界オカルト連合は世界の表舞台に立ち、世界の守護者としての地位を築くと、プロメテウス・ラボグループ、アメリカ合衆国とともにメキシコ湾条約を締結。ヴェール崩壊後の新世界秩序として機能していくと見られていた。しかし、これに反発する超常テロリストグループ、カオス・インサージェンシーはメキシコ湾条約締結勢力への批判を本格化。
2001年9月1日から国際連合超常問題特別総会が、国際連合本部ビルで開催された。各国高官、プロメテウス重役、異常領域国家の大使、パラヒューマン人権活動家、世界オカルト連合事務総長D.C.al Fine……彼らが一同に集ったニューヨークを目掛け、カオス・インサージェンシーは5機の銀翼を奪う。
現実は、崩落する。
Phase 2
マンハッタン・クライシス
マンハッタン・クライシスとは、シェアード・ワールド『SCP Foundation』のシリーズハブ(連作)のひとつであり、SCP-1710-JP (ショパン・ゴジラ)を起点とするカノン『1998年』内Phase 2『合衆国の一番長い日』に属する。
通称『銀翼三部作』と呼ばれる3つのオブジェクトを中心に描かれる、超常テロをテーマとした作品群である。
マンハッタン・クライシスは以下の3つのオブジェクト (『銀翼三部作』)、及びこの3記事で語られる『マンハッタン次元崩落テロ事件』を中心として描いていく。
2001年9月11日にマンハッタンで起きた同時多発テロ事件。5機の飛行機がカオス・インサージェンシーによってハイジャックされ、うち3機はワールド・トレード・センターツインタワービルに、1機はアメリカ国防総省本庁舎(ペンタゴン)に着弾。残る1機はシャンクスビルに墜落した。このことからも分かる通り、このマンハッタン・クライシスは我々の世界で言うところの『アメリカ同時多発テロ事件』をなぞっている。
そして、これによってできた異常領域には大量の悪魔と複数の神格が召喚された。これに対して財団、境界線イニシアチブ、世界オカルト連合、更には魔法少女となった避難民や複数の超常組織が作り上げた合体ロボットが立ち向かうというスケールのでかい話になっている。アメリカで起きた事件故に、ジャック・ブライト博士、アルト・クレフ博士といったおなじみの面々も登場する。
登場する超常組織も非常に多く、上記の他にもメカニトやサーキック(ナラカ)、ハーマン・フラー、アンダーソン、ファクトリー、ウィルソンズ、パラウォッチ、第二ハイトス教会、第五教会、蛇の手、異常事件課、サメ殴りセンター、GPエクスプレス、医院、日本生類創研、東弊重工、闇寿司、マナによる慈善財団、恋昏崎新聞社、如来観光、ワンダーテインメント博士、Are We Cool Yet?……などなどとよりどりみどり。もちろん、これらの団体に関係する教義、理念、アノマリー、バックストーリーもガンガン登場する。また、SCP-2910-JPで登場する避難民にして魔法少女のひとり、アリソン・チャオはその名前を知るものならクスリと来るだろう。
ということもあり、全てを拾って解説しているとかえってSCP初学者には理解しにくいことも考えられよう。なんなら上級者でも大分知らない団体・アノマリーも多い。本項では大筋の流れに関係ない部分は省いて解説する。
1998年のイベント・ペルセポネ (詳細はSCP-1710-JP参照)以後、財団、世界オカルト連合、プロメテウス・ラボ、そしてその3組織が拠点を置くアメリカ合衆国政府の4者協議により、北米大陸のアノマリー評価報告システムが速やかに確立。それまで存在した米国南部超常組織協力条約 (SUSEOCT)の拡張としてメキシコ湾条約が締結され、財団、世界オカルト連合の特殊資産が集中する北米全域での衝突の防止やヴェール・プロトコルの段階的廃止のモデルケースとして運用された。
この4者のうち、プロメテウス・ラボは1991年のソ連崩壊・冷戦終結の余波で経営難に陥っていた。当時作っていた全長26mはある汎用人型オートマトン・ヘパイストスモデルシリーズは高性能ながらも金食い虫であったためプロジェクトが中止され、試作機であるヘパイストスモデルRX-78-1・-2・-3の3機は倉庫に収蔵されていた。しかし1998年以降、財団と世界オカルト連合はパラテック散逸を危惧しプロメテウス・ラボの再建を図る。折しもヴェール崩壊により第2次パラテック・バブルが起きたため業績は大きく回復。これによって財務整理を行う過程で、この3機は倉庫内から盗難されていたことが発覚したのである。これは後にマーシャル・カーター&ダーク社の構成員がブラックマーケットに流したこと、そしてそのうち1体をマンハッタン-スタテン合同教区にいたメカニトの構成員が、指導者ブマロが予言する対サーキック戦争 [1]用の兵器として購入した。
一方、カオス・インサージェンシーの司令部 (推定)であるデルタコマンドは、コソボ紛争におけるランブイエ和平が世界オカルト連合監督下で成立したことを機にメキシコ湾条約締結勢力への批判を強めた。彼らは、来る2001年9月の国際連合超常問題特別総会に集う各国高官、プロメテウス・ラボ重役、異常領域国家の大使、パラヒューマン人権活動家、そしてメキシコ湾条約のキーパーソンたる世界オカルト連合事務総長D.C. al Fineを狙いテロを画策していた。
この時点で財団と世界オカルト連合は表向きこそ共同で異常に立ち向かおうという協力体制を築いていたものの、それまで敵対してきた2者が3年程度の短い時間で蟠りを解消できるはずもない。特別総会は国連の下部組織たる世界オカルト連合の管轄であることもあり、財団は世界オカルト連合に配慮してマンハッタン島に即時動員可能な機動部隊の展開を制限していた。
そのころ、路地裏のゴミ溜めで少年ジュード・クライヨットはうらぶれていた。彼は指先から雷を放つ能力を持つが、それが故に当時の異常者に理解のない世界では、学校でただいじめられる要因でしかなかった。彼は、ゴミのなかで、新しいチラシを見つけた。マンハッタン区に新しい教会を作る。そのオープンセレモニーでそれぞれの宗派が祈りの儀式を行い、宗派と地域の安寧と発展を祈願すると。
そして、砂漠では少女とフェレットが歩いていた。少女アリソンは図書館の預言に従い、9月11日に何かしらの事件が起きるという予測でこの次元にやってきたのだった。フェレットはアリソンに休息を薦めると、心中でつぶやいていた。『君のいる世界を守りたい』と。……アリソンへの好意とはまた違う何かだったが。
2001年9月11日、カオス・インサージェンシーは、精神同調機器を用いて、アメリカン航空11便、ユナイテッド航空175便、デルタ航空1989便、アメリカン航空77便、ユナイテッド航空93便の5機をハイジャックし、このうち前3機がニューヨーク市に進路を取る。3機は空気力学的に明らかに異常な飛行を行い、赤熱した状態で航跡雲で儀式陣を描き、奇跡論的作用をもたらした。カオス・インサージェンシーは元々おそらくは国連本部ビルを襲撃しようとしていたと思われるが、世界オカルト連合サイドは呪術的迎撃装置を用意しており、国連本部ビルへの到達が困難と悟ったカオス・インサージェンシーは攻撃目標を変更したとみられる。こうして、3機はワールド・トレード・センターツインタワービルに突っ込むと、直後5分で約4.5km2の領域が異常次元に崩落。次元崩落した異常空間は外部からの進入は不可能であり、そこから赤いガスのようなものが市街地に流入し、周辺空間に侵食を開始した。また、アメリカン航空77便はペンタゴンに墜落した。
上述の異常領域内では複数の霊的実体・悪魔実体が出現して破壊活動を行い、市民がパニックを起こす。折しも財団は先程のとおり世界オカルト連合に対する配慮もあり、動かせる機動部隊が少なかった。対する世界オカルト連合も特別総会出席者の護衛と避難で手一杯であったが、聖職者が多く国連本部ビルそのものを霊的な要塞にしようとしていると確認すると、マンハッタンの避難民を国連本部ビルに向かわせる方針を策定した。一方、飲み込まれた異常空間への対処も考えなければならない。多くの人が異常空間に取り残されているのだ。
そして、これには一刻の猶予もなかった。世界オカルト連合はこの異常空間の拡大を防ぐため、このエリアに核爆弾を叩き込む手続 (ピチカート手順)を検討していた。折しも世界オカルト連合は上層部の意思決定こそ遅れているが、現場レベルでは財団と協力体制を築くことを約束。現地の両組織は、それまで敵対してきた境界線イニシアチブへの非公式な協力要請を行う。
境界線イニシアチブは、ユダヤ教、キリスト教、イスラームといったアブラハムの宗教をベースとした団体であり、教義に基づいてアノマリーの収容・破壊を行う団体である。その上層部たる『法廷』は意思決定が遅れていたが、戦闘部隊"鉄槌計画"善戦指揮官のアンリ・ド・モンフォールは協力を快諾してくれた。
一方、マンハッタンでは境界線イニシアチブの他にもうひとつ、宗教団体が動き出していた。先程述べていたメカニトである。彼らの主要3宗派である壊れたる教会・歯車仕掛正教・マクスウェリズム教会の3派は信徒たちの多くを帰したが、神父たち・敬虔な信徒たち、島南部の住民、そして、少年ジュード・クライヨットが教会に残っていた。
9月12日、カオス・インサージェンシーは多くのパラテクノロジー兵器を持ち出し、大規模攻撃を開始していた。マンハッタン-スタテン合同教区のマクスウェリストたちは、電気を操ることができるジュード少年に、体の良い発電機になってほしいと厚かましく頼んだ。主流派の神父ネイサン・フィルモアはマクスウェリストたちに呆れたが、驚くことにジュード少年はそれに一切異論を言わずに従った。普通このくらいの年の少年が雑な扱いをされたら怒るはずだ。ネイサンはジュード少年になぜ不平不満のひとつ漏らさないのか、と尋ねる。
ジュード少年は、どうせ俺はギークでアノマリーだから、扱いが悪いのなんて仕方がない、と諦念とともに述べる。ネイサン神父は人は皆未完成の個であり、大いなる機械に比べれば総じて微小な部品にすぎないと諭し、彼を地下格納庫に連れて行った。そこには、多くの信徒たちが作業する真ん中に、巨大ロボットが鎮座していた。ジュード少年は、そこでようやく年相応の子供のような目を見せた。
正午にカオス・インサージェンシーは更に大きく攻勢をしかけ、悪魔実体、戦闘員、パラテクノロジー兵器、種々のアノマリーを投入。合同教区にも巨大ロボットやモンゴル騎馬兵が襲いかかる。メカニトたちは鉄壁をせり上がらせると、聖油を実体群に投射し立ち向かう。しかしそこに百足型の巨大実体が現れ、彼らに襲いかかる。
刹那、百足は胴体を掴まれた。先述の巨大ロボットだ。巨大ロボットは百足を連行すると戦闘を開始する。しかし巨大ロボットにサイバネティック強化されたモーリシャスドードーから放たれたビームやカーク・ロンウッド高校のマーチングバンドが襲いかかる。巨大ロボットはマーチングバンドに百足を投げつけ、目の前に現れたIJAMEAの旗をつけた甲冑実体にドードーのビームを当てて体勢を崩すと、剣で斬りつけて倒す。そしてどこかへと飛び去った。
ジュードを乗せて。
9月13日、財団は異常領域内のニューヨーク市民の救出遅延が致命的であるとして、非敵対的要注意団体・要注意人物への協力要請を行った。プロメテウス社、ディア大学 (超常現象を研究する学術機関)、赤斑蛇の手 (蛇の手の韓国支部)、理外学研究所 (通称:理外研。日本の超常基礎研究を担う総合研究所)の個人・団体を招き、共同研究に乗り出した。この頃、異常領域内部との通信が確立されるも、同時にこの通信を妨害せんとするカオス・インサージェンシー工作員との戦闘が16日未明まで続いた。
現地に残っていた財団職員たちが編成した臨時編成機動部隊F-15 ("ニューヨーカー")は、外界との隔絶、空間ヒューム値の低下、周期的なアキヴァ放射の急上昇、カック灰の降灰……これがもたらしたのは多数の魑魅魍魎が跋扈するこの世の地獄だった。そこに手を振りながら箒にまたがる魔法使いのような人影が3人、空を飛び、悪魔の攻撃を避けつつどこかへと向かっている。そして、赤い雲が晴れるとそこには繭のようななにかがあった。繭 (UE-1111)の近くでは、カップケーキが出現し、炸裂した。これは比喩ではない。お菓子のカップケーキが爆発したのである。それも、カップケーキ爆撃と言われるほど大量に。
世界オカルト連合はピチカート手順の実行をいよいよ以って決定した。世界オカルト連合が提示した人道的配慮による猶予は48時間。9月15日の午前10時までに神格排除ができなければマンハッタンを焦土にすると。クレフ博士は古巣の世界オカルト連合に電話する。「うちの上司がうるさいから」と足掻くことを宣言しつつ、ちょっぴりは助けてくれよと。相手は嘆息しながら、「多少のお目溢しはするけれど、自分でやりきってほしい」と回答した。電話を終えたクレフ博士は突入作戦の立案を指揮。スリー・ポートランドからの違法なポータルを使ってバックドア・ソーホーに侵入し、そこから突入。タウミエルヴィスによって大量生産された聖水で悪魔実体群をどうにかしようなどと決定した。
この頃、合同教区サイドにも、赤々とした怪物 (UE-1110)が襲いかかる。ジュードは巨大ロボットに乗り、UE-1110と必死に戦うが、剣は折れ、瓦礫の投擲も無為に終わる。UE-1110は幼児の笑い声に似た高音を放ちながら衝撃波を放ち、構造物を破壊する。倒れた巨大ロボットは、そのまま左足を吊り上げられたかのように浮遊すると、UE-1110が変形した『手』が左腕、右脚を破壊、ついでそのまま巨大ロボットを振り回すと左脚も外れる。頭も損傷を受けたようだ。
ロボットからジュードが引きずり出されると、ネイサンはジュードを叱る。皆お前を心配してたんだぞ、と。泣きながら謝るジュードをネイサンはハグしつつ許すと、仲間たちに巨大ロボットの修理が可能か尋ねる。そして仲間たちがどこかへいくと、ネイサンはジュードに語る。俺の家族はずっとこのマンハッタンで神父をしてきた。マンハッタンを愛する者として、あんなバケモノにでかい顔はさせない。でも巨大ロボットがない今どうするの、と不安になるジュードに、ネイサンは「諦めないことだ」と語る。
こうしている間にもマンハッタン島は異常領域に侵食され、75%が飲み込まれ、ハドソン川の対岸にも被害が及び始めた。境界線イニシアチブも結界がUE-1110の出現で崩壊したと通達した。このため、財団と世界オカルト連合の連合部隊はセントラル・パークを放棄してコロンビア大学やハーレム地区に後退した。――このことは、合同教区が悪魔や神格の真ん中で孤立することを意味していた。
合同教区に、飛行する人面カラスとIKEA店員のようなバケモノが出現し、ミサイルが飛んでくる。ネイサンは吹き飛ばされ、とある地下階段の前にいた。その階段の奥にあったハッチは次の瞬間上空に吹き飛び、中から黒い剣を持った男が出てきて、周囲の悪魔を切り裂いた。吹き飛ばされたハッチには、"Able"の一言だけが書かれていた――。
財団はついに異常領域内に侵入した。突然走ってくる電車、羽の生えたフライパン、爆撃してくる鳥、目に映る者すべてが珍妙な悪魔たち。しかし珍妙とはいえそれはまさしく脅威そのものだった。財団も何人も殺され、それでも一人でも多く救い出し、街をどうにか守るため決死の行軍を続ける。途中でやってきた境界線イニシアチブのムスリム部隊とも共闘しつつ、先を急ぐ。
その中で、奇妙な生物とともに歩く、ぼろぼろになった少女を見つけた部隊がいた。更に先にも、境界線イニシアチブの部隊員の一人が奇妙なヒト語を話す哺乳類とともに、巨大な獣のような神格 (UE-1109群)と戦っているのを確認した。財団のひとり、ラスベガスからやってきたハウスは彼女たちが魔法使いというには飛行に不慣れな様子を見て取る。彼女たちは傷ついていたが、それでもアリソンという別の魔法使いが現れると、アリソンに治癒され、魔法エネルギーも獲得しより安定した魔術でバケモノに反撃を開始した。
財団の機動部隊員の一人はその「アリソン」の顔を見て、「そういえばサイト-17の面会受付所に来ていたような」と思い出す。誰の家族かもわからないし、そもそもなぜここで魔法使いをやっているのかもわからないが。
| SCP-2910-JP | |
| 基本情報 | |
|---|---|
| OC | Keter |
| 収容場所 | サイト-310 |
| 著者 | O-92_Mallet |
| 作成日 | 2020年4月29日 |
| タグ | 1998 カオス・インサージェンシー ギアーズ博士 クレフ博士 バックドア・ソーホー マンハッタン・クライシス 世界オカルト連合 国外収容 境界線イニシアチブ 壊れた神の教会 恋昏崎新聞社 犀賀派 現実改変 生命 異次元 知性 種族 自我 黒の女王 |
| リンク | SCP-2910-JP
|
| SCPテンプレート | |
SCP-2910-JPとは、シェアード・ワールド『SCP Foundation』に登場するオブジェクト(SCiP)である。
項目名は『魔法少女はマンハッタンの紅き闇を飛ぶ』。
食肉目の種々の小型哺乳類と類似する外見を持つ小動物。ただし自然界のそれらとは体組織構造はことなり、これらの小動物から回収された組織片はすぐに崩壊して灰になってしまう。
これらのSCP-2910-JP実例群はヒト成人と同等程度の知能を有しており、パートナーとなる人間女性とはその女性の母語で会話を行うことが可能である。また、実例群同士であればテレパシーのような能力で会話することもできるようだ。
で、このSCP-2910-JP実例群は何をするのかというと、ヒト女性の個人との間で意思疎通が行われ、一定基準に従う合意が両者間で交わされた場合、対象女性は奇跡論に基づいた超常現象の限定的な制御能力を有する。――なんてくどくど書くより、このニコニコ大百科の読者諸兄らならばこう書いたほうが明瞭であろう――少女と契約して、その少女を魔法少女にする。それがこの妖精たちの能力である。
この『魔法少女』たちの使うことができる魔法は、簡素な儀礼具を用いて使用できるものに限られ、実体を有さないビーム・熱・斥力といったものにカテゴリも絞られる。まあだから、ビーム撃って空を飛ぶくらいしかできないわけだ。その代わり魔法使いなら本来受けるはずの反動はすべてSCP-2910-JPが肩代わりする。
このSCP-2910-JP実例群は簡素な現実改変により少女の衣服を魔法使いらしいそれに仕立て、箒と杖を出現させる。いわゆる『変身』である。また、SCP-2910-JP実例群は自分とそのパートナーとなった少女を一定以下の水準の熱や力学的エネルギーのシャットアウト、視覚・聴覚的な隠蔽作用を施すこともでき、また、契約した少女を自身が死ぬような場面でも身を挺して守ろうとする。
ただし、少女アリソンと組んだフェレットのヘキサだけは、やや他のSCP-2910-JPとは違う傾向があるようだが――。
| SCP-2912-JP | |
| 基本情報 | |
|---|---|
| OC | Safe |
| 収容場所 | N/A |
| 著者 | stengan774 |
| 作成日 | 2020年6月30日 |
| タグ | 1998 クロスリンクキャンペーン コンピュータ マンハッタン・クライシス 乗り物 人間型 体肢 像 儀式 国外収容 場所 変容 宗教 文字入り 時空間 未収容 構造 機械 武器 歴史 磁力 聴覚 自動装置 芸術 記憶媒体 認識災害 軍事通信 金属 電子デバイス 電気 電磁気 |
| リンク | SCP-2912-JP
|
| SCPテンプレート | |
魔法使いの話が盛り上がったところだが、合同教区の方にもいくばくか目を向けたい。ぼろぼろになった巨大ロボットだが、そこにどういうわけか、失ったパーツの補充が来た。――あまりにもトンチキで、あまりにも多くの超常組織たちがマンハッタンの危機に集まり、結果的に補充と化したというべきか。
まず失われた左腕について。9/14の6時頃、魚型悪魔実体の大群と財団の艦船は交戦していた。そこに、突如増援が現れた。彼らは財団の者ではなかった。まず、闇寿司マンハッタン店オーナーが魚型悪魔を素早く3枚おろしにすると、後ろには宴龍が空中に浮かべた高音の油で魚型悪魔を素揚げにしている。アンブローズ・レストランは屋形船を出し、他の漁船から提供された魚型悪魔を客に提供している。後ろには日本生類創研がクロマグロを海中に投げ込み爆発させている。その様子に財団が呆れ返っていたところに、後ろからサメ殴りセンターの戦艦が現れた。
「鮫だ。殴る。」
彼らが巨大魚型悪魔実体に突き刺したのは、『拳を握りしめた左腕』であった。
あるところで、世界オカルト連合の部隊員が乗り込んでいたオレンジ・スーツ (要はロボット兵器)のなかで、そのスーツのおかげでひどく冷静に、自分がそろそろ死ぬことを理解していた。
しかしそこに、ネオ・サーキックの料理人と、旧日本軍の男に身体を改造された日奉一族の女性、そして「タデウス・シャンク」だった、今は名を失った男 ("何者でもない")の3人が現れると、部隊員を治療して、その後そのオレンジ・スーツを改造して『右脚』に再構成した。
ブライアント公園には、大量のジャンクと日用雑貨、ネジ、ナット類が積み上がっていた。テレパシー能力で意思疎通を行いながら、集団は『左脚』を作ろうとしているのだ。
しかしこれは苦難の連続であった。まず突如として第五教会のクモヒトデたちが大量に出現。集団の構築を邪魔し始める。だがこのクモヒトデたちは、北朝鮮から愛国歌を奏でながら飛んできた冷蔵庫に押しつぶされ、その冷蔵庫も左脚の部品になる。冷蔵庫はあるタイミングで飛来してこなくなる。このタイミングで金正日が死去したこととの関連が後年研究されている。
そこに不明な絶叫、更に第二ハイトス教会の集団がやってくる。しかしそこに、『博士』が作ったとみられるヨーロッパ風の城がエレクトリカル・パレードを奏でながら飛来し、飛行悪魔実体を吸引しながらやがて『We Will Rock You』のリズムに収束しつつ落下。落下地点に蟹脚のような機械仕掛けの脚が生えたオフィスビルが突っ込んできて爆発。
そしてマスクが取り憑いた死体や悪魔の百鬼夜行が、アラガッダを思わせる黄色の空と黒い星を纏ってやってくる。しかしそこに未来から来た如来観光のパッケージ・ツアーの参加者たちが女性ガイドの合図とともにマスク連中を襲い始める。
頭の起源は判然としない。わかっているのは、とある団体の試作小型量子コンピュータが盗難され、それを神格が営業する運送会社が運んだということだけである。
ともあれ、こうして不格好ながら巨大ロボットは再生した。ということで。SCP-2912-JPとは、シェアード・ワールド『SCP Foundation』に登場するオブジェクト(SCiP)である。
項目名は『我らの壊れたる機動精神 ブロークン・ガンダム』。
ロボットは再び大地に立つと、内蔵AI・Birdeveは絶好調であると宣言した。ネイサンはそれを確認すると、目の前にいたジュードに問う。今この巨大ロボット――ガラクタと魔法と人々の尽力で組み上げられた――に乗れるのは、ジュードひとりだけである。そしてこの巨大ロボットが唯一、目の前のUE-1110に対抗できる手段であると。それでもジュード、お前にはトンズラする権利があると。
だがジュードは覚悟を決めていた。それが俺のやりたいことだから。ジュードは、ネイサンに送り出されると、巨大ロボットに乗り込んだ。
UE-1110の前に、雷とともに降り立った巨大ロボットは、高電荷を帯びながら、雷でUE-1110の光条を弾くと、磁力で戦鎚を作り上げ、振り下ろす。UE-1110も負けじと衝撃波でそれを止め、頭部のない上半身だけの巨人になって戦鎚を破壊。そして勝利を確信したかのように、再び幼児の笑い声に似た声をあげる。
だがUE-1110に突如光子ビームが命中し、更に巨大ロボットは回し蹴りをかます。UE-1110は巨大ロボットを再び空中に浮かべようとするが、Birdeveは世界オカルト連合の偽装ミサイルラウンチをハッキングしてミサイルをUE-1110にプレゼント。悲鳴を上げてUE-1110は巨大ロボットを吹き飛ばすが、吹き飛ばされた地点に生えていた『クレオパトラの針』を引き抜いた巨大ロボットはそれを突き刺す。倒れたUE-1110にトドメを刺そうとした時、UE-1110は最期の抵抗としてワープして上空から襲いかかる。――だが悪あがきに過ぎなかった。巨大ロボットは左腕を掲げると、ロケットパンチをお見舞いし、時空現実構造を大きく歪めつつUE-1110を粉砕!
クレフ博士の隊は、いよいよワールドトレードセンタービルに到着し、中からエレベーターで登ろうとしていた。しかし、まさに航空機テロを受けたビル内で、もはやカック灰の降灰と敵性実体の戦闘により補給も厳しくなっていた。更にカオス・インサージェンシー末端職員は自爆テロを仕出かす始末。クレフ博士は外部からヘリかなんかで支援してくれないのかと問うが、外部の財団機動部隊は「カップケーキ爆撃がすごいのにそれは不可能だ」と回答する。クレフはこのままじゃ不味い、なんとかして外側で盾になってくれる人がいないとと漏らすが、そこに世界オカルト連合の部隊が名乗りをあげる。クライミングなら俺たちに任せてくれと。
彼らはワールドトレードセンタービルの外壁を命綱なしで登り始めた。外壁から登り切ると雑魚を適当にあしらいながらワールドトレードセンタービルの78階に侵入。カオス・インサージェンシーのひとり、悪夢姫という名前の女性と対峙する。彼女は強力な現実改変者であり、そして彼女こそUE-1111を守るために、自身の能力でカップケーキを生成、爆撃していた。ひとり、また一人と世界オカルト連合の隊員を殺害していく。最後の一人になった時、彼女は勝ち誇ったが……この場面で油断した彼女の脳味噌をクレフ博士はぶち撒ける。
だがクレフ博士の本命はカップケーキおばさんではない。UE-1111である。火傷を負い命も限界寸前ながら、財団職員としての覚悟でUE-1111に立ち向かおうとしていた。そんなクレフ博士の前に、一人の魔法少女、アリソンが現れる。仲間の女の子たちが犠牲になる中で、わざわざこのワールドトレードセンタービルに来なければいけない理由をアリソンはヘキサに問う。
ヘキサは、「君の父を救うために、そしてこの世界を救うためにこの男の生命が必要なんだ」とアリソンを諭す。アリソン。クレフ博士は目の前の魔法少女が、自分の友達、チャールズ・ギアーズ博士の愛娘であると理解する。クレフ博士に魔法をかけたアリソンは、「パパはどこにいるの?」と問う。クレフはそれに「生きていればまた会えるさ、お前の親父にも娘は元気だぞって伝えとく」とのみ返し、UE-1111との戦いに向けてタワー内に戻る。
そしてワールドトレードセンタービルの上層階のレストランで、クレフ博士は悪魔と対峙する。クレフは一言、「対価ならジャック・ブライトにつけとけ。やつは間抜けで臆病でおまけに美人に弱い」と答えると、UE-1111との最終決戦に向かう。
――そして、UE-1111とともに、異次元に飛ばされ行方知れずとなった。
ブライト博士は悪魔に地下鉄構内まで招かれていた。悪魔慣れしたハウス研究員らをつれ、やってきた先には、美人の悪魔、イブリースがいた。彼女は語る。繭 (UE-1111)は彼女ら悪魔を神の力で契約を歪めて使役するために産み出されたと。つまるところ、繭そのものは悪魔を産み出すなにかではなく、悪魔を従えるためのパワーソースだったというわけだ。カオス・インサージェンシーに履行もされぬ契約を結ばされ、なんとか解放されたと思えば世界オカルト連合のピチカートがすぐそこに迫っている。彼女は財団に助けを求めていた。死ぬくらいなら牢獄 (=財団収容下)にいたほうがマシだと。
ブライト博士にとっては頭の痛いことに、イブリースと契約したことでクレフ博士はUE-1111を自分もろとも異次元に放逐した。しかしクレフ博士はその領収書はブライト博士にツケている。ブライト博士は契約を履行しなければいけない。イブリースは続ける。身柄の保証と財産の保護、そして悪魔の労働力を提供したいと。「悪魔の労働力はいらない」と話す別の財団職員に、「こちらとしても恭順の意を示しておかないと、世界オカルト連合・境界線イニシアチブは財団を敵視するのでは」と持ちかける。
ハウス研究員は悪魔らしい聡さを称賛しつつも (言ってしまえば労働にかこつけてニューヨークに住みたいと言っているのと同義なので)、「古式ゆかしい契約を一人ひとりやるのは需要に見合わない」と懸念を示したが、イブリースは「人間界の雇用契約制度、連邦法とニューヨーク州法は把握している。対個人ではなく法人契約でも問題はない」と返す。ブライト博士は電話をかけると、サイト-17法務部門のシェルドン・カッツ主席弁護士に繋いでくれと叫ぶ。
| SCP-2911-JP | |
| 基本情報 | |
|---|---|
| OC | Safe |
| 収容場所 | ニューヨーク州マンハッタン |
| 著者 | islandsmaster |
| 作成日 | 2020年4月28日 |
| タグ | 1998 are-we-cool-yet d.c.アルフィーネ gru-p-部局 ijamea k-クラスシナリオ エバーウッド博士 カオス・インサージェンシー クレフ博士 シェルドン・カッツ ディア大学 バックドア・ソーホー ブライト博士 プロメテウス ペンタグラム ポータル マンハッタン・クライシス ムース管理官 世界オカルト連合 人間型 儀式 国外収容 境界線イニシアチブ 宗教 建造物 歴史 気体 現実改変 理外研 異常事件課 異次元 移動不可能 群れ 自我 赤斑蛇の手 都市 黒の女王 |
| リンク | SCP-2911-JP
|
| SCPテンプレート | |
項目名は『合衆国の一番長い日』。もっとも、SCP-2911-JPの項目名というよりは、SCP-2911-JPにまつわる物語の名前というような気がする。
SCP-2911-JPはニューヨーク州マンハッタンの表面積約3%が基底現実から切り離され崩落する形で産み出された異常次元であり、2011年時点でも次元の接合点について説明はできない。上述の通り、異常領域はどんどん拡張していたものの、現在はSCP-2911-JP指定領域以外のエリアは基底現実に復帰している。ピチカートも回避された。
このSCP-2911-JPとの確立されたポータル (SCP-2911-JP-A)から内部に入ると、SCP-2911-JP-Bに指定された悪魔実体群に出会える。彼らは、身体の一部に角が生えていたり、煙を出したりしているものの見た目は人間に類似しており、一定の対価を示して契約を結ぶことで行動を制御できる。人間みたいにサボったりもしない。上記の通り、この契約というのは悪魔との契約にイメージされる古式ゆかしい怪しげなものではなく、連邦法とニューヨーク州法に基づいているまっとうな雇用契約である。
ニューヨーク市民たちは当初こそこの悪魔に困惑を示していたが、彼らがカオス・インサージェンシーの被害者であるという側面が理解されたこと、契約を遵守し働いていること、リーダー格であるイブリースがグラウンド・ゼロに献花を行ったことなどから悪魔に同情的な声も増え、今やニューヨーク州全域で悪魔は勤勉に働いている。また、彼らの主な食料は硫黄とガスの炎であり、これによって雇用に回されるはずだった税金は医療費と弔問金に回されている。
一方で、財団と世界オカルト連合への国際社会、並びにニューヨーク州マンハッタン住民の信頼が低下した。世界オカルト連合は多数の市民を見殺しにピチカートを強行しようとしたこと、財団はカオス・インサージェンシーが財団の分派であったことが隠蔽しきれなかったことが由来だろう。魔法少女や巨大ロボット、小規模な超常組織を中心とした活躍によりニューヨーク市民が自分たちで団結してテロリストに立ち向かったという物語が広く受け入れられた。
巨大ロボットは財団に収容されず、マンハッタンの観光名所となった『マンハッタンズ・メカニクス』として一般公開され、魔法少女たちの活躍と悪魔実体の受容は国際社会がパラヒューマン/タイプ・ブルー (妖術者)の公民権運動を喚起した。合衆国もこれに乗じて両者にパラヒューマンの部分的権利・義務の策定を要求。結果両者の収容・粛清方針は転換を余儀なくされ、9月20日に両者はハドソン川協定を締結。ワールドトレードセンタービルは財団と世界オカルト連合が分割所有を行い、パラヒューマンの生存と自由意志の存立を擁護することを決定したわけである。
一方でアリソン、ジュード、そしてクレフ博士は以前行方知れずとなっている。アリソンは今もヘキサ――犀賀六巳とともにいるのだろう。ジュードはAI・Birdeveとともに、どこかに消えた。きっとまたいつか、ネイサンと会えるだろう。そしてクレフ博士は、盟友ギアーズ博士に、「お前の娘は生きている。会ったら抱きしめてやれよ」と異次元からメッセージを残し、以後の連絡は途絶えている。
掲示板
掲示板に書き込みがありません。
急上昇ワード改
最終更新:2025/12/13(土) 01:00
最終更新:2025/12/13(土) 01:00
ウォッチリストに追加しました!
すでにウォッチリストに
入っています。
追加に失敗しました。
ほめた!
ほめるを取消しました。
ほめるに失敗しました。
ほめるの取消しに失敗しました。