イグノーベル賞とは、世界的権威を持つ、ノーベル賞のパロディ賞である。
概要
有体に言えば才能の無駄遣い大賞、誰得大賞である。1991年に創設された。
企画・運営は、ネタとしか思えない研究を見つけてきては取り上げるサイエンスユーモア雑誌「風変わりな研究の年報」(Annals of Improbable Research)。世界のSF研究会などが数多く協賛する。
本家のノーベル賞と同様の部門とは別に、その時々で様々な部門(美術賞・数学賞など)が追加されることも。
受賞の条件・選考基準は、『いかに人々を笑わせ、そして考えさせてくれたか』。
ただし、日本の「と学会」が取り上げるような、インチキ科学・疑似科学のみを取り上げる、いわば科学版ゴールデンラズベリー賞ではなく、
賞状はコピー用紙のプリント(選考委員のサイン入り)、賞金は原則ゼロと、基本的に安上がり。ただし2015年以降、受賞者に対して賞金として10兆ジンバブエドル(紙幣1枚、約2.5円)が授与されている。
ちなみに、日本人はこの賞の常連。
1992年の医学賞受賞以降、ほぼ毎年選ばれており、2023年現在、計29回受賞している。また2007年以降、17年連続で受賞している。
日本以外ではイギリスも常連で、これについて創設者のマーク・エイブラハムズは「多くの国が奇人変人を蔑視する中、日本とイギリスは誇りにする風潮がある」と評している。英国面ェ……。
これに対し1995年、イギリス政府の主任科学アドバイザー、ロバート・メイは「大衆が真面目な科学研究を笑いものにする恐れがある」とし、今後イギリス人研究者に賞を贈らないように要請。ところが当のイギリス人研究者らは猛反発、以後も「真面目な科学研究」に対する賞の授与は続いている。
授賞式
毎年10月、ハーバード大学で行われる。
ちなみに、旅費も滞在費も自己負担。そしてスピーチでは聴衆から笑いをとることが鉄則。
このスピーチ中に制限時間が近づくと、ぬいぐるみを抱いた8歳の幼女が舞台に上がってきて「もうやめて、退屈なの!」と叫んで妨害してくる。これは「8歳の幼女に罵られるのが最も心的ダメージが大きい」という立派な研究結果に基づくものである。ぅゎょぅι゛ょっょぃ
よって、スピーチを延長したい場合には、プレゼントやお菓子を送るなど、様々な手段で彼女を買収しなければならない。ただし、2016年は開催が夜遅くであったため、幼女の出番は見送られた。ちっ。
スピーチが終わると、観客が一斉に紙飛行機を投げつけるのが恒例行事。
毎年この紙飛行機を掃除していたのは、ハーバード大学教授のロイ・グラウバー博士。「光のコヒーレンスの量子理論への貢献」で2005年にノーベル物理学賞を受賞した、世界的な物理学者である。
またこの授賞式には、本家ノーベル賞を受賞した学者も多く出席している。
なお、受賞者の態度はそれぞれで、激怒して来ない人もいれば、嬉々として堂々と現れる人もいる。往々にして研究者ってのは紙一重の人が多いし、多少はね?
主な日本の受賞者
- 神田不二宏・資生堂研究員――1992年、医学賞。
「足のにおいの原因となる化学物質の研究」。
受賞者が資生堂の研究員であることを考えれば当然の研究課題なのだが、「自分の足を臭いと思っている人の足は臭く、思っていない人のは臭くない」というかっ飛んだ結論が、この賞を企画する雑誌に大ウケした。 - 柳生隆視・関西医科大学講師――1997年、生物学賞。
「噛んでいるガムの味で人の脳波は変わるのか」の研究。 - 横井昭宏、真板亜紀――同、経済学賞。
「『たまごっち』の開発により、数百万人の労働時間を仮想ペットの飼育に費やさせた業績」。
横井は玩具メーカー・ウィズ。真板はバンダイ。 - 佐藤慶太、鈴木松美・音響学者、小暮規夫・獣医――2002年、平和賞。
「『バウリンガル』の発明により、犬と人間の間に恒久の平和をもたらした業績」。
バウリンガル自体を疑似科学とみなした節のある受賞。 - 廣瀬幸雄・金沢大学教授――2003年、化学賞。
「ハトに嫌われた銅像の科学的考察」。
兼六園の中にある銅像にハトが寄り付かないことに興味を持ち、調べ上げた末にハト避け合金を開発した。なお、同教授は2009年に「超音波計測による骨密度評価法の育成」で文部科学大臣賞を受賞するなど、まともな評価も受けている一方、コーヒー好きが高じてコーヒーについての講義も行うという変わり者の一面も持っている。 - 山本麻由・国立国際医療センター研究所研究員――2007年、化学賞。
「牛の排泄物からバニラの香り成分『バニリン』を抽出した」。
雑誌内で「人類史上最も用途の不明な研究のひとつ」と“絶賛”された。
また、受賞を祝して、ケンブリッジ市の有名アイスショップが「ヤマモトバニラツイスト」なるバニラアイスを新たに発売。スピーチ中に会場で観客に振る舞われた。
(これに使われているのは、牛糞由来のバニリンではないらしいが……) - 中垣俊之・北海道大学教授、他4名――2008年、認知科学賞。
「真正粘菌にパズルを解く能力があったことの発見」。
漫画『もやしもん』でもとりあげられた研究。粘菌を迷路内に設置し、出口に餌を置くと、最初は全ての通路に管を伸ばすものの、やがて餌への最短経路の管のみ残して、残った管を衰退させる。 - 馬渕清資・北里大学教授、他3名――2014年、物理学賞。
「バナナの皮を踏んでしまった際の、バナナの皮の摩擦係数の計測」。
バナナの皮には小胞ゲルと呼ばれる粘液が詰まった粒があり、踏むとつぶれて約6倍滑りやすくなる。また、皮の内側を下にして踏むとより滑りやすい。
遊んでいると思われないよう、家族にも内緒で研究していた。人工関節の摩擦低減の研究などに活かされるとのこと。 - 東山篤規・立命館大学教授、足立浩平・大阪大学教授――2016年、知覚賞。
「「股のぞき効果」を実験で示した研究に対して」。
天橋立名物「股のぞき」のこと。前かがみになって股の間から後ろ方向にものを見ると、実際より小さく見える事を実験で証明。ステージ上では股のぞきをしてその効果を実感するシュールな姿が見られた。
古来日本における「股のぞき」はこの世ならざるものや未来を見る為のまじないとされ、錯視による効果もあって因習化したとされる。 - 吉澤和徳(北海道大学)、上村佳孝(慶應義塾大学)他2名――2017年、生物学賞。
「洞窟内で雌陰茎、雄膣を持った昆虫の発見」。
2014年、ブラジルの洞窟において性器の形状が雄雌で逆転した新種のチャタテムシが発見。平たく言うと雌が雄に突っ込む。後に平安時代の男女逆転物語「とりかへばや物語」にちなみ、トリカヘチャタテと命名された。 - 堀内朗(日本)――2018年、医学教育賞。
「座位で行う大腸内視鏡検査―自ら試してわかった教訓」。
検査に伴う苦痛や不快感を軽減する方法を模索した結果、座った姿勢のまま内視鏡を挿入すると楽にできることを「実証」した。
堀内氏は内視鏡の専門医で、昭和伊南総合病院(長野県)の消化器病センター長。「地域から大腸がんをなくしたい、その試行錯誤を評価してもらったと思う」とコメントした。
主な海外の受賞者
- ジャック・バンヴェニスト――1991年・1998年、化学賞。
『水が記憶を持つ』などの、いわゆるホメオパシー治療法信者の生き字引的存在であり、世界的科学雑誌「ネイチャー」にしつこく論文を投稿していた“業績”を評価された。 - エドワード・テラー――1991年、平和賞。
水爆の父。核抑止論を生涯にわたって熱心に主張した一人であり、衛星などを利用した防衛機構・『戦略防衛構想』の提唱者でもあった。スタンリー・キューブリックの「博士の異常な愛情」に登場した水爆大好き博士・ストレンジラブのモデル。
受賞理由は、「我々の知る“平和”の意味を根本から変えることに生涯にわたって努力した」から。 - セシル・ヤコブソン医師――1992年、生物学賞。
「人工授精の、簡単で、独力で可能な画期的な方法の開発」。優れた遺伝子を持つ男性の精子による人工授精を望む女性患者に対し、自分の精子を使って人工授精。詐欺罪と偽証罪に問われた。 - ジム・ノールトン、米国国立芸術基金――1992年、美術賞。
ありとあらゆる動物のペニスをスケッチした画集「動物界のペニス」を出版。
さらに同時に受賞した基金は、ノールトンの「飛び出す絵本にしたいから資金援助を!」という申請を通してしまった。 - ジェイムス・F・ノーラン、他2名――1994年、医学賞。
「ジッパーに挟んだペニスの応急処置の研究」。
挟んだところに軟膏を塗り、ファスナーをペンチで壊すべし。 - バーナード・ヴォネガット――1997年、気象学賞
「ニワトリの羽根の千切れ方で竜巻の風速がわかる」という俗説を、実験と計算により検証したことに対して。
結論は「ニワトリの健康状態や空気抵抗、空気衝撃などの影響を考慮すると、正確さに欠ける」。
なお、SF作家のカート・ヴォネガット(Jr.)は実の弟。 - トロイ・ハーツバイス――1998年、安全工学賞。
グリズリーにも負けないパワードスーツ(グリズリースーツ)の開発と、果敢にも自分で実地試験をしたことに対して。
彼はその後も、軍用強化外骨格の発明に励むなどした。 - アタル・ビハーリー・ヴァージペーイ(インド首相)、ナワズ・シャリフ(パキスタン首相)――1998年、平和賞。
「核爆弾の平和的利用の成功」。
これは、両国が「平和的核爆発」とか何とか抜かして核実験を開始したことへの皮肉。 - アーヴィッド・ヴェイトル――1999年、医学賞。
「検尿の際、患者がどんな容器を用いるのかの傾向の研究」。 - ブロンスキー夫婦――1999年、健康管理賞。
「画期的な妊娠補助設備の開発」。
妊婦の乗った分娩台を高速で回転させ、遠心力で胎児を取り出しやすくする。
ちなみに妊婦に7G相当の力が加わる設計だったというが、5G以上の力が加わると人間は失神する。 - ドナテラ・マラッツィーニ、他4名――2000年、化学賞。
「生物学的には、熱烈な恋愛と強迫神経症に違いは発見出来ない」という発見。 - 文鮮明――2000年、経済学賞。
統一教会教祖。集団結婚産業に、安定と経済成長をもたらした。 - エドゥアルド・セグラ、他1名――2002年、衛生学賞。
猫と犬を放り込んで洗える洗濯機の発明。致死率45%。 - ジリアン・クラーク――2004年、公衆衛生賞。
「床に落ちた食べ物への『5秒ルール(3秒ルールなど諸説あり)』の適用の科学的妥当性の検証」。
地域・個人によって秒数はまちまちだが、結論は一瞬でも床に落ちたらアウト。そりゃそうだ。 - トーマス・パーネル、他1名――2005年、物理学賞。
粘性の高い黒タールが垂れる速度を検証するための、非常に根気の要る実験。
パーネルは志半ばで亡くなったため、引き継いだ別の学者が同時に受賞。じょうごの中を流れるタールは、大体9年で一滴落ちるらしいという結論に達した(なお、タールの滴が垂れ落ちる様を目撃した者は未だ一人もいない)。 - エドワード・カスラー、他1名――2005年、化学賞。
「人間はシロップの中と水の中ではどちらがより速く泳げるのか」という疑問への念入りな実験。
結果、シロップでも水でも記録に有意な差は現れず、どうも人間の泳ぐ速度に液体の粘性は関係ないという結論に達した。 - ガウリ・ナンダ――2005年、経済学賞。
止めようとすると逃げる目覚まし時計の開発で、多くの人々に生産的な時間を過ごさせた業績に対して。 - アメリカ空軍ライト研究所――2007年、平和賞。
性欲が急激に増大し、相手が同性であろうと性的行為に及ばずに居られなくなる催淫型非殺傷兵器「ゲイ・ボム」の開発。雑誌いわく「そそるような開発」。 - ドナルド・L・アンガー――2009年、医学賞。
指の関節症の原因の解明。
60年間、左手の指を頻繁に鳴らし続け、一方で右手はこの間ただの一度も鳴らさなかったという狂気じみた検証方法をたたえて。 - アレッサンドロ・プルチーノ、他2名――2010年、経営学賞。
昇進させる人をランダムに選んだほうが、組織がより効率的になることを数学的に証明したことに対して。 - アルトゥーラス・ズオカス(リトアニア首都ヴィリニュス市長)――2011年、平和賞。
違法駐車された高級車の問題は、装甲車で轢き潰せば解決するという実証に対して。
自転車走行レーンに違法駐車されたメルセデス・ベンツSクラスを、市長が乗った装甲車BTR-60が踏み潰すというパフォーマンスが行われた。踏み潰されたSクラスはこのために市が用意した。→動画 - ジョセフ・ケラー、レイモンド・ゴールドスタイン、他2名――2012年、物理学賞。
ポニーテールを形作り、動かす力のバランスの計算。
ジョセフ・ケラーは、1999年の物理学賞受賞に続き2度目の受賞。 - パトリシア・ヤン、デイヴィッド・フー、他2名――2015年、物理学賞。
ほぼすべての哺乳類が、約21秒(±13秒)で膀胱を空にするという生物学的原理を実験したことに対して。
パトリシア・ヤン、デイヴィッド・フーは、2019年に2度目の物理学賞を受賞した。 - マーク・ディンゲマンズ、他2名――2015年、文学賞。
“huh?”(え?)という言葉がすべての言語に存在しているらしいことを発見し、そしてその理由を完全には解明していないことに対して。 - フォルクスワーゲン――2016年、化学賞。
排ガス試験時に自動でそれを検知して排ガス量を減らす仕組みを自動車に搭載することによって、自動車の排ガス問題を解決したことに対して。
2015年、フォルクスワーゲンが「ディフィートデバイス」を使用し不正に排ガス量を調整していたこと、実際にはアメリカ合衆国における環境基準の40倍もの有害物質を排出していたことが判明した。
2017年
テーマは「不確実性」。2017年の海外のイグノーベル賞受賞者は全員掲載する。
- マルク=アントワン・ファルダン(フランス)――物理学賞。
「猫は容器の形状に合わせて液体のように形を変えることについて」。
あらゆる場所に収まる猫の振る舞いを「流動体」として物理学的に分析。子猫よりも年をとった猫のほうがより流動性が高いと判明。授賞式会場ではガラスのボウルや花瓶にぴっちり納まった猫の写真がスライドで表示され、大ウケした。 - ミロ・アラン・プハン(スイス、アメリカ)他4名――平和賞。
「『ディジュリドゥ』を定期的に演奏することで、閉塞性睡眠時無呼吸症候群やいびきの治療法になることの実証」。
ディリュリドゥはアボリジニの民族楽器。循環呼吸(鼻から吸いながら口から吐く)で演奏するため、上気道の鍛錬になり、結果イビキなどの改善に結びつくことが分かった。なお、授賞式には患者にしてディジュリドゥ奏者のアレックス・スアレス氏も出席した。 - マシュー・ロックロフ、ナンシー・グリアー(オーストラリア)――経済学賞。
「生きたワニとの接触が与える人のギャンブルに関する意識についての実験」。
ワニ園を訪れた被験者約100人を対象に、ワニに直接触ったあとでスロットゲームをやってもらった結果、ワニを怖がった人は賭けに慎重になった一方、喜んだ人は自分を幸運であると信じ、大きく賭けに出る傾向にあると結論づけられた。 - ジェームズ・ヒースコート(イギリス)――解剖学賞。
「老人の耳が大きいことに関する研究」。
30歳~93歳の患者206人を対象に耳の長さを測定。その結果、1歳歳をとるごとに年間0.22mmの割合で大きくなっていることが分かった。なお、伸びる理由は成長ではなく引力による。 - ハン・ジウォン(韓国)――流体力学賞。
「コーヒーカップを持ちながら後ろ向きに歩くと、コーヒーのこぼれは少ないという液体の揺れ動きに関する力学的研究」。
コーヒーがこぼれにくい運び方である理由は、慣れてない後ろ歩きではバランスを取るように歩くため。ただし、蹴つまずいて転ぶ可能性がある。なお、受賞者がこの論文を書いたときは高校生だったとのこと。 - フェルナンダ・イトウ(ブラジル)他2名――栄養学賞。
「ケアシチスイコウモリ(吸血コウモリ)が人間の血液を吸っていた初の科学的報告」。
南米の吸血コウモリの糞を調査した結果、人間の血液が含まれていたことが判明。餌となる鳥がいない場合は人間の血を吸う模様。 - ジャン=ピエール・ロワイエ(フランス)他4名――医学賞。
「チーズが嫌いな人に臭いを嗅がせたり、写真を見せたりして、どれだけチーズに嫌悪感を示すかを図るために最新のfMRIで脳を観察」。
チーズが嫌いな人も好きな人同様、脳内の「報酬回路」が刺激されていることが判明。これは欲求が満たされたときに活性化する神経系で、チーズに対する好悪との因果関係は否定された。 - マッテオ・マルティニ(イタリア)他3名――認知科学賞。
「多くの一卵性双生児は写真に写った双子のどちらが自分かを視覚的に識別できないことの実証」。
顔部分だけを丸く切り取った写真を上下逆にした状態で識別した場合、誤答する確率が上がった。 - マリサ・ロペス=テイホン(スペイン)他3名――産婦人科学賞。
「胎児に妊婦のお腹の上から再生された電子音楽よりも、膣内にスピーカーを入れて再生された電子音楽の方が強く反応することの証明」。
2016年に胎教アイテムとして商品化されている。ええ……。
紹介記事によると「音楽に合わせて振動する機能などはありません」とのこと。
2018年
テーマは「HEART」。2018年の海外のイグノーベル賞受賞者も全員掲載する。
- マルク・ミッチェル、デイヴィッド・ワーティンガー(アメリカ)――医学賞。
「ジェットコースターに乗ることで、腎臓・尿路結石を除去することができるという研究」。
シリコンの腎臓模型を作って60回にわたり効果を検証。結果、7割近い確率で腎臓結石が取れることが判明した。ただし、ジェットコースターなら何でもいいわけではなく、ビッグサンダーマウンテンの後部席でないと効果が出ないそうな。 - トマス・ペーション、他2名(スウェーデン)――人類学賞。
「人間がチンパンジーの真似をするのと同頻度かつ同程度に上手に、チンパンジーも人間の真似をするという証拠を集めたことに対して」。
動物園にて、来園者とチンパンジーの行動を4,000件近く観察・記録。そのうちの1割が、相手の真似をすることが判明した。 - ポール・ベッヒャー、他7名――生物学賞。
「ワイン鑑定の専門家がワインの中にハエがいるかどうかを確実に識別できることを証明」。
ワインを注いだグラスの中にメスのショウジョウバエを一匹放って5分間置いたところ、専門家は正確ににおい物質を嗅ぎ分けた。すごい。 - ポーラ・ロマオ(ポルトガル)他2名――解剖学賞。
「人間の唾液に洗剤と同等の働きを持つことを測定」。
唾液に含まれる消化酵素のアミラーゼが、汚れに対して強い効果を発揮する。美術品、とくに絵具類に対する唾液の洗浄能力は有機溶媒よりも優れているとのこと。
この論文は美術品の保全に関する専門誌に掲載されており、「洗剤用合成唾液」の開発によって今後の美術品修復に大きく寄与すると思われる。 - テア・ブラッカー、他3名――文学賞。
「複雑な製品を使う人のほとんどは、その取扱説明書を読まないということを記録したことについて」。
製品の特性上小難しい内容となっている説明書を読むのは全体の1/4。また男性よりも女性、若者、高学歴であるほど読まない傾向にあると発表された。 - ジェームズ・コール――栄養学賞。
「人肉の栄養価は他の食物よりも劣ることについて」。
旧石器時代の食生活を分析。マンモスなどの方が栄養価がはるかに高かったことが判明し、カロリーの摂取量においてはカニバリズムと通常の食事の間には差がないと発表。なお「デモンストレーション」は検閲が入って強制終了となった。 - フランシスコ・アロンソ、他6名――平和賞。
「非常に多くの人の、自動車運転中に叫んだり暴言を吐く頻度、動機、そしてその効果を測定したことについて」。
密閉空間となる自動車の車内では、他人の目を気にする必要がなくなることから感情が暴走する傾向にある。研究者はこういった感情の発露について「運転の侵略」と名づけ、頻度が高くなると高確率で重大事故につながる可能性を示唆、警告した。 - ジョン・バリー、他2名――生殖医学賞。
「男性器の勃起に関して切手を使った検査の研究について」。
寝る前にtntnに10円切手のシートを巻き付け、朝破れているかどうかで夜間におっきしたかどうかを調べた。もちろん、ふざけているわけではなく、勃起不全の検査と治療を目的とした大真面目な研究である。ちなみに、成人男性だと一晩におっきするのは平均1~5回らしい。 - リンディ・リャン(カナダ)、他5名――経済学賞。
「従業員がブードゥーの人形(呪いの人形)を使って上司に報復することで効果がでるかどうかを調査」。
呪いのブードゥー人形(オンライン仕様)を用意。過去に上司から受けたいやがらせを思い出した被験者が人形にピンを刺したりペンチで手足をねじった結果、「ずっと気分がよくなり、正当性が回復されたように感じた」との結果を得られた。
発表者いわく「前の上司に感謝したい」。何があったんだ。ただし、その後に「呪いをかけるよりも、上司の振る舞いに焦点を当てるべき」としっかりフォローした。
2019年以降
2019年以降は2016年以前と同様に、主な受賞者のみ掲載する。
- フリッツ・シュトラック――2019年、心理学賞。
「ペンを口にくわえると笑顔になり、それが気分を幸せにすると発見したと思いきや、そうではないことの発見」。 - 奚广安など中国の殺し屋5名――2020年、経営学賞。
殺人の依頼を受理し、契約金を受け取った殺し屋が、次々と別の殺し屋により安い契約金で殺人を委託した結果、報酬が見合わなくなり結果として誰も殺人を実行しなかった。なお、最後に委託された5番目の殺し屋はターゲットに協力をもちかけ、死んだふりの写真を撮って依頼者を騙そうとしたが、ターゲットのもとに携帯電話を置き忘れてしまい、それが証拠となって依頼者と殺し屋5人は逮捕された。 - ジャイール・ボルソナーロ(ブラジル大統領)、ボリス・ジョンソン(イギリス首相)、ナレンドラ・モディ(インド首相)、アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(メキシコ大統領)、アレクサンドル・ルカシェンコ(ベラルーシ大統領)、ドナルド・トランプ(アメリカ合衆国大統領)、レジェップ・タイイップ・エルドアン(トルコ大統領)、ウラジーミル・プーチン(ロシア大統領)、グルバングル・ベルディムハメドフ(トルクメニスタン大統領)――2020年、医学教育学賞。
「SARS-CoV-2感染症COVID-19の流行を利用して、政治家が科学者や医師よりも生死への即効性をもつことを世界に教えたことに対して」。
新型コロナウイルス感染症のパンデミックに際して、多くの感染者・犠牲者を出したことへの批判と考えられる。ボルソナーロ大統領は「ちょっとした風邪」、ルカシェンコ大統領は「ウオッカやサウナが効く」などと発言し、国民からの反発の声も見受けられた。なお、アレクサンドル・ルカシェンコ大統領は、2013年の平和賞受賞に続き2度目の受賞。現職のインド首相の受賞も1998年の平和賞に続き2度目である。
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関連リンク
関連項目
誰得であるものを評価する記事
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