「アタシに期待?しないほうがいいよー」
ナイスネイチャ(ウマ娘) とは、Cygamesのメディアミックスプロジェクト『ウマ娘 プリティーダービー』の登場キャラクター。
実在の競走馬、ナイスネイチャをモチーフとするウマ娘である。 CV:前田佳織里
概要
誕生日:4月16日 身長:157cm 体重:増減なし スリーサイズ:B79・W56・H80
下町生まれの高望みしないウマ娘。自分は脇役と考えているため、過度な期待からはやや逃げがち。そのため、いつも好走止まりである。
下町育ちゆえに生活力は高く、料理や洗濯などは手が空いた時に片付ける。
地元のおばちゃんやご老人に愛される名物少女である。
生まれついて物事を斜めに見てしまうちょっぴり卑屈なウマ娘。夢に向かってキラキラしている周りのウマ娘を遠巻きに見ている。言いたいことをスカッと口に出してしまう性分について、女の子としてどうなんだろうと気にすることもあるが、わかっちゃいるけどやめられない。
(リニューアル前)
癖っ毛のツインテールが特徴的なウマ娘。ゲームでのカットインなどでツインテールが顔から離れると人耳がないことがわかりやすい。勝負服は濃い緑のジャンパードレスとブラウス。左足にだけガーターを着けているのは史実で左前脚の故障に苦しんだからだろうか。クリスマスカラーが印象的な胸元のリボンは史実のメンコをモチーフにしており、イニシャルの字体までしっかり再現されていて史実のネイチャファン的にポイントが高い。モデルが牡馬なので右耳にリボンを結っている。アプリ版で勝負服を決めるにあたってのエピソードが観れるが、地味に重い(良い)話なので視聴の際には注意。
何かにつけて自己評価が低く、「素晴らしい素質」という意味の名前に本人は自嘲的だが、素質を引き出してくれるトレーナーとの出会いをひそかに期待しているようだ。
生まれ故郷の商店街の人々に愛されて育ち、トレセン学園入学後も行きつけの商店街の皆さんに気に入られ、商店街の人々がファンクラブも同然の存在になっている。さらには小倉記念出走のために訪れた小倉の商店街の人々までファンにしてしまう商店街キラー。
実家はスナック。おっちゃんおばちゃん老人に囲まれて育ったことでオヤジギャグ慣れしているのか、シンボリルドルフの駄洒落がツボに入ってしまうタイプだったりする。隣でテイオーがすごい顔してるぞ。
疲れるとリアル猫をモフって充電し、スマホで猫動画を眺めて過ごす猫好き。またキラキラした可愛い女の子を見るのも好き。特技は盆踊り。
上記の要素も示すように、卑屈とかでは説明のつかない妙にじじむさい一面を見せる。史実のネイチャが超ご長寿馬だからだろうか。
アニメでの活躍
シーズン1
第6話で初登場。ヒネたところが見られず、「~ぜ」という口調で喋ったりと、ゲームやシーズン2に比べてまだキャラが定まっていなかったようだ。
毎日王冠(GⅡ)ではラストの直線でグラスワンダーを差してサイレンススズカ、エルコンドルパサーに次ぐ3着と善戦する。つづく天皇賞(秋)(GⅠ)にも出走。もちろん史実での両レース(にあたるレース)は走っておらず(とはいえ2年前までは現役だったが。史実での毎日王冠3着はサンライズフラッグ)、賑やかし的な扱い。
サイレンススズカとは近しい仲らしく彼女と絡むシーンで度々出演している。ほかにエイシンフラッシュ、ウイニングチケット、メジロライアンとの交流がみられ、交友関係の広さがうかがえる。
EXTRA(13話)ではトウカイテイオー、ビワハヤヒデとともに走っている場面がある。OPでも一瞬出てくる(こっちにはネイチャはいなかった)1993年有馬記念に準じた一幕。
シーズン2
第1話から登場。チームカノープスのメンバーの1人。
トウカイテイオーの同期であり、彼女の主役然とした輝きを羨んでいる。
(シーズン1での活躍とはさすがに辻褄が合わないので、完全になかったことになっていると思われる)
変人揃いのカノープスのツッコミ枠だが、一緒に迷走して南坂トレーナーにツッコまれることも多い。
第2話では菊花賞での復帰を目指すテイオーに触発され、一念発起して菊花賞を目指す。が、せっかく出走資格を勝ち取ったのに結局テイオーの復帰が間に合わず、肩透かしに。
誰しもが「主役」の不在を意識せずにはいられない中、ネイチャの闘志は燃えていた。
「『テイオーが出ていれば』なんて絶対言わせない!!」
……その思いは皆同じであり、結局4着に終わってしまうのであったが。
第11話ではネイチャ自身も史実通り怪我に悩まされる中で(前話のネイチャたちカノープスの行動の甲斐あって)三度復帰を目指すテイオーに励まされており、その気持ちを素直に伝えた。「ボクが戻れたのはみんながいたから」と言うテイオーに「そういうのは直接伝えといた方がいいよ」と勧めたことが、その後のラブコメ?パートとあげません!に繋がることに。
そして最終話では有馬記念に出走。レース前には1年ぶりの復帰レースになるトウカイテイオーに声を掛け、あくまでライバルとして一線引きつつもテイオーの復帰を祝福する。レースではテイオーの奇跡の復活の陰で史実通りの3年連続3着を達成。1着のテイオー、2着のビワハヤヒデとともにウイニングライブのステージに上がり「ユメヲカケル!」を熱唱し、ゲームのダンスモーションには存在しない投げキッスを披露した。
ゲームでの扱い
育成ウマ娘:ポインセチア・リボン
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育成ウマ娘:RUN&WIN
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育成目標
- ジュニア級6月:メイクデビューに出走
- クラシック級1月後半:若駒ステークス(OP)で3着以内
- クラシック級8月前半:小倉記念(G3)で3着以内
- クラシック級10月後半:菊花賞(G1)で3着以内
- クラシック級12月後半:有馬記念(G1)で3着以内
- シニア級6月後半:宝塚記念(G1)で3着以内
- シニア級10月後半:天皇賞(秋)(G1)で3着以内
- シニア級12月前半:中日新聞杯(G3)で1着
- シニア級12月後半:有馬記念(G1)で1着
概要
サービス開始時から育成ウマ娘として☆1[ポインセチア・リボン]が登場。☆3まで上げると専用勝負服になる。2022年4月にチア衣裳バージョン[RUN&WIN]が☆3で実装(後述)。
通常版こと[ポインセチア・リボン]の固有スキルは3番手の時に発動という他に類を見ないあまりにもネイチャな条件。文章だけ見ると使いにくそうにも見えるが、実際はどんな形でも終盤で一瞬でも3番手になりさえすれば発動するので、後方からスパートして順位を上げていけばほぼ確実に発動してくれる。差しがメインになるネイチャにとっては非常に強力なスキルであり、継承で先行をAにして先行で育てても安定して発動してくれる有能スキルである。このスキルのせいで逆にブロコレになりにくかったりする。まあ、相手が手強いチーム競技場やチャンピオンズミーティングだと、そもそも3番手に上がることが出来ずに沈むという展開はありがちだが……。
このように逃げ以外なら腐らず、ネイチャは継承相性のいいウマ娘が多いため、良因子を引けた際の他のウマ娘への継承スキルとしても有用。
目標は案の定「3着以内」だらけだが、史実で4着のところまで3着以内になってたりもするし、逆に他では結構ある5着以内がない、普通にG1が多い、と意外に厳しい道のりである。とはいえ、鬼門になりがちな菊花賞にはライバルのトウカイテイオーが不在、中長距離育成最大の難関である天皇賞(春)がない、固有スキルが強い、といった理由により、中長距離ウマ娘の中では特別難しいわけではない。
そして、最後に待ち受けるのは「有馬記念で1着」という、史実への最大の挑戦である。
ちなみに最初の若駒Sではストーリー通りテイオーが尋常でなく強く、序盤すぎて育成で関与できる要素が少ないため、重賞ですらないのに負けて当たり前の難度である。
またネイチャには隠し要素として、目標レース(と隠しイベントがある皐月賞、東京優駿)以外のG1に出走したときに結果が3着だと、ステータスUPとスキルポイント獲得値が通常より増えるというものがある。流石ブロンズコレクターは伊達ではない。
そしてG1で3回3着を取りつつファンランクがレジェンドに到達すると彼女専用の「愛しき名脇役」という二つ名を獲得できるが、前述の固有スキルもあって狙って3着を獲ることは困難であり、その上3着では獲得ファン数稼ぎにも支障が出るため、専用二つ名の中でも取得難易度はかなり高い。
一方、専用特殊実況の条件は「G1に5回以上出走した上で、シニア級有馬記念でG1初勝利」。史実で3年ぶりの勝利を挙げた高松宮杯をモチーフにした、ストーリー的にも感慨深い特殊実況になる。
……のだが、ある程度育成環境が揃ったトレーナーだと普通に育てていればそれ以前にG1でいくらでも勝ててしまうため、敢えて弱い因子やサポートカードを使うなどしてステータス調整をしなければならず、目標レースがある「URAファイナルズ」および「アオハル杯」では間違いなく最難関の特殊実況のひとつになってしまっている。
かえってプレイ開始直後でG1に勝つのも一苦労な初心者のうちの方が聞きやすいのだが、初心者のうちは特殊実況だと気付かずスルーしてしまいがちで、結果、そもそも聞けたという報告すらほとんど存在せず、辛うじて動画がアップされているので存在が証明されているという、おそろしくレアな特殊実況であった。
2022年2月に出走目標及びスケジュール設定が自由なシナリオ「Make a New Track!!~クライマックス開幕~」が実装されたが、検証の結果、G1未出走では聞けないことが判明。それまでにG1で何度も負けている必要がある(必要回数はURA・アオハル育成時のシニア級有馬記念以前の目標G1の数である4回)。幸い、負けるのはG1であれば何でもいいので、適性のない短距離やダートのG1で惨敗しておけば条件を満たせる。そのため聞く難易度自体はだいぶ下がった。育成そのものは犠牲になるが……。
また、攻略面以外に彼女の大きな特徴として挙げられるのが、育成ストーリーにおける恋愛色の強さ。他のウマ娘のストーリーが多少のイチャイチャはありつつも基本的にあくまでウマ娘とトレーナー、選手とコーチとしての信頼関係を軸に描かれているのに対し、ナイスネイチャはトレーナーへの恋愛感情をかなりストレートに表に出すウマ娘(後述する馬場厩務員とのエピソードなどが発想元だろうか)であり、共にレースを戦う中で徐々にトレーナーに惹かれていき、最後には何とか恋を成就しようとして四苦八苦する彼女の姿が描かれる(トレーナーの性別選択を問わず)。
本筋の展開の熱さと並行して進むその王道ラブコメぶりには悶えるプレイヤーが続出。他のウマ娘の検索サジェストが「育成」「4凸」「因子」「ボーボボ」などの攻略に関連したワードで埋まりがちな中、ナイスネイチャだけは育成そっちのけで「ナイスネイチャ かわいい」「ナイスネイチャ 結婚」「ナイスネイチャ 彼女」「ナイスネイチャ ギャルゲー」などが並ぶという珍現象が起きたりしている。人呼んで「ワイフネイチャ」なんて愛称も。
ちなみにストーリー上ではネイチャに自信をつけさせるために皐月賞・ダービーを回避(史実では怪我で回避)してGⅢの小倉記念に挑戦するという流れになるが、展開を無視して皐月賞・ダービーへの出走も可能(専用イベントあり)。両方勝つと二冠ウマ娘が自信をつけるために小倉のGⅢに出るというシュールな展開になる。距離適性的には目標にある菊花賞ともども育成次第で普通に勝てるので(皐月賞・ダービーにはトウカイテイオーが確定出走してくるが、なぜか若駒ステークスより弱体化しており、特に皐月賞はテイオーに負ける方が難しい)、3は3でも三冠ウマ娘の称号をネイチャに与えてあげるのに挑戦してみてもいいだろう。
なお、ハルウララと同じく、ゴール後のウイニングランに特殊演出が入る。
3着以上の時は1着とモーションが同じであり、2着・3着でも1着と同じく笑顔で手を振ってくれる。4着以下の時は他のウマ娘と変わらない。対戦相手として出てくると、負けたのに笑顔で手を振りながら自分のウマ娘の後ろを通過していくネイチャというシュールな光景が見られることもある。
またウイニングライブの歌唱は、全キャラ歌唱の「Make debut!」と「うまぴょい伝説」以外は史実での主なG1勝ち鞍に対応した楽曲が割り当てられているのだが、初期段階においては、史実でG1未勝利のネイチャは短距離・マイルG1の楽曲である「本能スピード」が割り当てられていた。これは短距離G1の高松宮記念(1200m)の前身が、ネイチャの代表的な勝ち鞍であるG2高松宮杯(2000m)であるからと思われるが、適性Cのマイルはともかく、適性Gの短距離である高松宮記念に勝ってネイチャの「本能スピード」を聴くのは至難の業である(継承時に最大因子10個でC→クラシックでの因子継承で適性アップをお祈りしてBが限界)。
その後、2022年3月に有馬記念及び天皇賞(春)・(秋)のウイニングライブ曲である「NEXT FRONTIER」にも歌唱対応。ようやく「有馬記念を勝利してウイニングライブのセンターで歌うネイチャ(もしくは有馬記念3着で歌うネイチャ)」を実現できるようになった。
[RUN&WIN]ナイスネイチャ
2022年4月のストーリーイベント「轟け、エール!トレセン学園応援団」で実装されたチア衣裳バージョン。人呼んで「ナイスネイチア」。ヘソ出し・ポニテ・生耳・チアガールという需要を理解しすぎた圧倒的な可愛さでネイチャ担当トレーナーの貯蓄ジュエルと財布の中身が全力で刈り取られた。俺が、俺たちが需要だ!
汎用勝負服のヘソ出しを恥ずかしがるネイチャにヘソ出しチアガール衣裳を着せるというサイゲの神采配。ちなみにレース中はポンポンは手に持たず腰に提げて走る。ライブでもそのまま。
成長率は通常版のパワー+20%が、スタミナ+10%・パワー+10%に割り振られ、スタミナを確保しやすくなった一方でパワーが伸びにくくなったため、パワーサポートカードの使い方など通常版からサポカ編成をどう弄るかが頭の使いどころ。
固有スキルはレースにおける人気が4番人気以下だった場合に速度が上がる時間が延びるという特殊なもの。単なる速度効果だけなら差し脚質で発動させやすいものの、ガチ育成中においては速度が上がり続ける効果が発動することはほぼないので対人戦・チームレースにて自チームの育成ウマ娘との組み合わせを考えるチャンピオンズミーティングや競技場向けのスキルと言えるだろう。なお史実にて5番人気でありながら1着となった高松宮杯(現・高松宮記念)のレースがあり、このスキルはそれを反映したものだとされている。
所持スキルは1周年バランス調整で評価が爆上がりした「ノンストップガール」を覚醒Lv5で持ってくるのが最大のポイント。デバフも、通常版の「八方にらみ」と「魅惑のささやき」が消えたかわりに今度は「独占力」を覚醒Lv3で持ってくる。相変わらず愛が重バ場ステークス上位人気。
ちなみに育成イベントで歳の離れた弟がいることが判明した。やっぱりナイスねーちゃんじゃないか! 弟なので当然ウマ娘ではないが、実馬のネイチャにはナイスエースという全弟(父も母も同じ弟)がいるので(地方で15戦3勝)、それを拾ったものと思われる。
中日新聞杯=?
なお、シニア級有馬記念の直前には、史実で特に縁のないGⅢ「中日新聞杯」の1着目標が挟まれる。これが史実の何を指すかは2通りの説がある。
1.ネイチャの代表的な勝ち鞍である「高松宮杯」(中京競馬場)に相当するレース説。
トウカイテイオー復活の3年目有馬記念の翌94年、前年のダービー馬ウイニングチケットや後のジャパンカップ馬マーベラスクラウンらを抑え、後述の鳴尾記念以来となる2年7カ月ぶりの勝利(そして生涯最後の勝利)を挙げたレース。高松宮杯は1996年から1200mの短距離GⅠ「高松宮記念」に変わったため、代わりに距離、レース場ともに一致しており、シナリオの展開上都合の良い時期に開催されているこのレースを採用した可能性がある。
旧高松宮杯のグレードや施行条件を引き継いだ本来の意味での後継レースは「金鯱賞」であるが、こちらはシナリオ上開催時期が合わないため、中日新聞杯に振り替えられたとも考えられる。
前述の通りシニア級有馬記念でG1初勝利を挙げた場合、この高松宮杯の勝利をイメージしたアナウンスを聞くことができるが、どうして二つ名といい特殊実況といい条件が面倒なんだろうか。
2.史実より1年遅れの「鳴尾記念」(阪神競馬場)に相当するレース説。
鳴尾記念は当時12月2週開催のGⅡレースで、有馬記念と同じ芝2500mだった。ナイスネイチャは91年、菊花賞の次に有馬記念へのステップレースとしてこのレースに出走し、勝利している。
しかし鳴尾記念は現在、6月開催のGⅢ芝2000mに変更。その為、当時の鳴尾記念と開催時期が一緒で、現在の距離やグレードが一致している中日新聞杯(中京競馬場)が選ばれたものと考えることもできる。
ネイチャの生涯7勝のうち、GⅡの勝利は上記2つと、菊花賞トライアルとして出走した京都新聞杯だが、ゲーム中の目標では、京都新聞杯が現在は日本ダービー前哨戦の5月開催になっていることと、7勝のうち3勝が小倉競馬場ということを踏まえてか、菊花賞の前哨戦枠には京都新聞杯のひとつ前に勝ったGⅢ小倉記念を採用している。
残り2つも上述の通り当時の形では現存しないため、あるいは両者を合体して「高松宮杯と同じ距離・レース場」で「鳴尾記念と同じ開催時期」の両方に該当する中日新聞杯を採用した、と見るべきなのかもしれない。
その後、2022年2月24日の1周年アップデートにて、クラシック級の京都新聞杯と鳴尾記念を勝利した上で、目標レースである小倉記念を勝利すると夏合宿後の9月にスピード・スタミナが33上昇し「末脚」のスキルヒントが得られる隠しイベントが追加。史実とは違った形ではあるが、ネイチャの史実での重賞勝ち鞍の再現が為された。
(ただし京都新聞杯は5月前半・鳴尾記念は6月前半出走になるので、日本ダービーに出走すると3連戦になってしまう。ネイチャの意志を尊重して回避するか、三冠チャレンジ含めてレース疲れのリスク覚悟で挑むかはトレーナー次第である)
余談であるが、中日新聞杯は2007年まで父内国産馬限定競走であったため、父親が輸入種牡馬であったナイスネイチャは史実では出走する資格が無かった。また金鯱賞と中日新聞杯は2012年から2016年まで開催時期が真逆であったため、2017年に両レースの開催時期の交換がされていなければ、おそらくナイスネイチャのここでの目標レースは「金鯱賞」となっていたと思われる。そうであれば、旧高松宮杯と金鯱賞の施行条件引継ぎがあった歴史的背景から、目標レースと史実の違いはあれどここまで頭を悩ませることはなかったであろう。あくまで「たられば」の話であるが。
デバフネイチャ
通常ネイチャの自力習得スキルは、その特徴として、「差しためらい」「ささやき(+「魅惑のささやき」)」「鋭い眼光(+上位の「八方にらみ」)」とデバフが多いという点がある。
1人2枠あるレアスキルが両方デバフというのは2022年4月現在通常ネイチャのみである。
差し専用、射程に捉えれば相手を問わずスタミナを削る効果を持つ「八方にらみ」は今のところネイチャ以外に持っているのはメジロドーベルのみであるため、保有者が4人いる「独占力(速度デバフ)」とは異なる方向で攻めることができる。
史実で妨害が得意……なんてことがあるわけがない(競馬、特に日本競馬では意図的な妨害やそれに類する行為はそもそもありえないことである)ので、なぜこのようなデザインになったのかは謎だが……?
しいて理由を推測するとすれば、ネイチャの代名詞である3年連続有馬記念3着において勝ったのが91年ダイユウサク(14番人気)、92年メジロパーマー(15番人気)、93年トウカイテイオー(中364日)といずれも競馬史に残る大波乱・奇跡と呼んでいいレースであることから、「波乱を呼ぶ」という意味でデバフ持ちという設定なのかもしれない。でも「魅惑のささやき」は中距離用だから有馬じゃ使えないしなあ……。
ちなみに、ネイチャが生涯16戦したG1で1番人気が勝ったのは3回だけ(94年春天・宝塚記念のビワハヤヒデと有馬記念のナリタブライアン)。大波乱は他にも92年秋天のレッツゴーターキン(11番人気、2着ムービースターが5番人気、3着ヤマニングローバルは15番人気で、当時3連単があったら間違いなく高配当記録に名を残したであろう)や、G2だがネイチャの現役最後のレースになった96年アルゼンチン共和国杯のエルウェーウィン(14番人気)がある。
チームレースは3人1組であり、デバフ効果は自チームには及ばない。
つまり、スキルptをつぎ込んでデバフスキルを盛り盛りにしたネイチャをメンバーに加えることにより、相手チームは全員スピードダウンとスタミナ切れを起こして沈んでいく。ネイチャ本人のステータスは中途半端に終わるだろうが、周りを全滅させて味方の2人を1着と2着に送り込めば、結局3着になる。これこそがウマ娘流の史実再現である。ホントか?
とはいえ、デバフにうつつを抜かしすぎるとネイチャが普通に相手チームに負けてしまうことはザラで、そうなるとスコアの足を引っ張るので、決して簡単な戦法なわけではない。
一方、同じく3人1組のチャンピオンズミーティングは「自分のチームから誰かが1着に入る」ことが勝利条件であり、上位から順位付けをする決勝ラウンドを含めても「自チームのうち最高の着順」以外は一切参照されない。
つまり、「全てを割り切ってデバフを盛り尽くしたデバフ要員」が合理性を増し、結果それを突き詰めたデバフネイチャ(あるいは他のデバフ要員)が脇に控えていることはよくあり、「デバフを食らっても大丈夫なスタミナ」を可能であれば考慮するメタゲームが発生している。
とはいえ、「勝てるウマ娘が3人から2人になる」というデメリットも大きいので、やはり一概に有効なわけではない。
サポートカード
保有スキルは、「差しためらい」「ささやき」「鋭い眼光」という育成通常版と同じデバフを持つ。
「鋭い眼光」を筆頭に差し寄りだが、「臨機応変」「ペースアップ」といった汎用性の高いものもあり、なかなかのラインナップである。
SR[…ただの水滴ですって]
R[トレセン学園]とともに初期実装。友情トレーニング対象はどちらも「根性」。
性能はとりたてて良いところはないがヒントボーナスが高く、ネイチャ以外のデバフ要員を育てる時などヒント目当てにネイチャを採用するなら他のネイチャより優先するに値する。
得意率アップがないという弱点も、根性得意というのもあっていっそメリットと見れる部分もあるだろう。
カード限定のイベントスキルは「別腹タンク」。使い勝手が悪いことで有名なのであまり評価には考慮されない。
SR[むじゃむじゃむじゃき]
2021年3月30日からのストーリーイベント「Brand-new Friend」で、報酬SRとして実装。こちらの友情トレーニング対象は「賢さ」。
こちらはカード限定イベントで「伏兵○」が入手できる。また、イベント1つ目で絆ゲージを+20できる(通常1つのイベントで+5ずつしか上がらない)という破格の選択肢があり(チョロかわ……)、運が良ければかなり早い段階で友情トレーニング発生まで持って行ける。
しかしこちらも得意率アップが一切ないため、友情トレーニング対象の賢さ育成にはあまり向いていない。トレーニング効果アップ×2とやる気効果アップがあるので、優秀なスキル&適度に賢さ以外のトレーニングに散って全体的に効果を底上げしてくれるサポートカード、と考えて使用するのがいいかもしれない。
また、ヒントボーナスがなく、この点は根性版に譲る。
SSR[願いまでは拭わない]
2021年8月20日、ハーフアニバーサリー直前のガチャ更新で育成ウマ娘のエイシンフラッシュ、サポートカードのSRトーセンジョーダンと同時に実装。友情トレーニング対象は「賢さ」。
無凸段階で高めの「トレーニング効果アップ」を有しており、限界突破を重ねていくと最終的には賢さボーナス×2や最高レベルのレースボーナス・高めのファン数ボーナスを所持するようになる上に、カード限定イベントで強力な差し用スキル「乗り換え上手」を確定で入手できるのが大きな魅力。
連続イベントも1回目でやる気1段階UP、2回目では上の選択肢で体力+10、下の選択肢では体力-5で悪いコンディション除去、3回目も体力+10つきと非常にありがたい内容になっている。
なお、ヒントボーナスは一応あるがLv+1・発生率+20%(上昇なし)と控えめな内容。
得意率アップはあるが完凸しても低めの類で賢さ育成にはあまり向いていないが、裏を返せば程よく散らばることで全体的なステの底上げをしてくれる、配布SR版に近い運用ができるという事でもある。
さらにはレース出走数を稼ぐのが重要な「Make a new track!!」においても、完凸であれば賢さサポートで唯一のレースボーナス15%のサポートカードであることが非常に大きな魅力となる。
総じて差し版SSRファインモーションといった性能で、差し育成では非常に強力なサポートカードとして頼りになってくれるだろう。カード自体の汎用性が高いのでレアスキルに目をつぶれば差し以外の育成にも使える。
欠点としては、このサポートカードをネイチャ自身の育成に使えないということぐらいか。トレーナーガチ恋勢のネイチャに「乗り換え上手」は似合わないということだろうか。
楽曲
関連ウマ娘
- トウカイテイオー
- 自分を脇役、モブだと思っているネイチャにとっての「主人公」の象徴。ゲームの育成ストーリーではネイチャの最大のライバルとして立ち塞がる。モチーフ馬は同期のまさしくスターホースであり、史実では合計4回対決しており着順では2勝2敗だが、テイオーが先着した2回(1991年若駒ステークス、1993年有馬記念)は両方1着であるのに対し、ネイチャ先着の2回は4着(1992年天皇賞(秋))と3着(1992年有馬記念)。ストーリー上では序盤の若駒ステークスと目標最終の有馬記念が直接の対決であるが、上記にもある通りトウカイテイオーの勝ち鞍である皐月賞・日本ダービー・大阪杯(当時は産経大阪杯)・ジャパンカップで確定枠として登場する。
- マーベラスサンデー
- ルームメイト。ハイテンションなマーベラスサンデーにいつも振り回されているが、小さくて可愛い女の子が好きなネイチャにとっては好みのタイプらしい。モチーフ馬は4歳下だが、対戦経験がある(1996年天皇賞(秋)。マーベラス4着、ネイチャ10着)。ネイチャは1戦を除いて松永昌博騎手、マーベラスは全戦武豊騎手と鞍上が生涯変わらなかった点も共通点だろうか。
- マヤノトップガン
- ネイチャ好みのキラキラ美少女であり、よくからかって楽しんでいる。モチーフ馬はマーベラスサンデーと同じく4歳下だが、対戦経験がある(1995年有馬記念と1996年天皇賞(秋)の2回)。
- ツインターボ
- イクノディクタス
- マチカネタンホイザ
- アニメでのチームカノープスの仲間。ゲームではカノープスは存在しないが、イベントストーリーや、サポートカードイベントでは親しくしている様子が描かれる。22年2月に育成実装されたタンホイザのシナリオでは、中々勝利が得られず悪戦苦闘しているネイチャの姿が描かれ、クラシック級有馬記念で大いに発奮するネイチャの雄姿も見る事が出来る。またウマ箱2の3巻付録サポカはネイチャとターボのイラストで、イベントもターボとのエピソード。モチーフ馬は全員同時代を走っており(ターボが同期、イクノが1歳上、タンホイザが1歳下)、ネイチャも含め全員GⅠ未勝利ながら善戦マン・個性派として愛された面々。
- ダイタクヘリオス
- SRサポートカードのイラストでヘリオスに絡まれている。モチーフ馬は1歳上で、91年の有馬記念からヘリオスの引退レースとなった92年の有馬記念までに、ネイチャが出走した5レース(他に毎日王冠、天皇賞(秋)、マイルCS)全てで対決しているという縁がある。
- メジロマックイーン
- モチーフ馬は1歳上で、ウマ娘としては同級生ながらデビューが先。育成シナリオではクラシック末期からシニア期に掛けてのライバル枠となっており、史実でも91年の有馬記念で対戦している。レースに対して良くも悪くもテイオーに固執していたネイチャの意識を変える切っ掛け。シナリオ上テイオーが長期離脱している為、事実上のネイチャシナリオのメインライバルと言ってもよい(メジロライアンと共にクラシックの有馬記念及びシニア宝塚記念・有馬記念で確定登場)。
- メジロライアン
- モチーフ馬は1歳上で、ウマ娘としても先輩。史実の対戦経験はマックイーン同様で、育成シナリオにて共にライバルとして登場。マックイーン共々、テイオーと同じ「キラキラ」している存在と見ており、その秘訣を聞きにメジロ家に行ったりしている。ライアンからも自身と違う視点でネイチャの「自分に自信が持てない」事に気づいて何かと助言してくれる良き先輩。ネイチャと適性(中距離・差し)がほぼ同じため、シナリオのシニア級ではネイチャに対しての強力なライバルとして立ちはだかる。
- キングヘイロー
- 2022年4月28日開始のイベント「轟け、エール!トレセン学園応援団」にてキングは応援団長、ネイチャは団員として共演。同日ネイチャの『RUN&WIN』とともに新勝負服『気高き激励の装』が実装。ウマ娘としては同じ中等部。同学年なのかどうかはよくわからない。
ネイチャから見て、やる気が先行して空回りがちのキングを支える女房役と云えるポジションであり、キングから見て自然体で周囲に協力者と応援する人たちが集まるネイチャに敬意を表しており、感謝祭を成功に導くため、助力を乞う。
モチーフ馬としては共にGⅠ戦線で力走するも、中々勝てず歯がゆい思いをした同士かつ「高松宮記念(ナイスネイチャは前身であるGⅡ「高松宮杯」)」を制した者同士。 - キタサンブラック
- アプリ版のキタサンブラックシナリオ及びアニメ3期でライバルとの対比で落ち込むキタサンを自身の経験から励まし、立ち直る切っ掛けを与えた。
モチーフ馬はアプローチは違えど、どちらもファンに愛された優駿同士でかつ、代替種牡馬の産駒(ナイスネイチャはノーザンテーストの代替であるナイスダンサー、キタサンブラックはディープインパクトの全兄ブラックタイドの産駒)やGⅠ3着に縁があり(有馬記念以外でもマイルチャンピオンシップでも経験あり。キタサンブラックは皐月賞・有馬記念・宝塚記念・ジャパンカップ)2年連続で秋古馬三冠(秋シニア三冠)にチャレンジと何気に共通項が多かったりする。
史実
戦績等の詳細は当該記事へ→ナイスネイチャ
歯がゆくて、愛されて ナイスネイチャ
馬場秀輝との出会い
1990年の夏、栗東の松永厩舎に入厩する。
育成牧場[1]ではガキ大将だったナイスネイチャは、松永厩舎でも一際手のかかる存在で、蹴ったり噛みついたり、人を乗せたまま立ち上がって振り落とそうとしたりといったことは日常茶飯事だった。
そんなやんちゃ坊主の担当になった厩務員が馬場秀輝である。
馬を恋人のように扱うのが彼なりの流儀で、ネイチャがどんな悪戯をしても決して怒らずやさしく接し続けた。その甲斐あって、やがてネイチャは以前とは見違えるようにしとやかで落ち着きのある馬に成長した。馬場に対しては特に素直で、「オレとはもう、ほとんど何でも通じてるよ。」と豪語するほどまでに心を交わす仲になっていた。二人は栗東でも噂のカップルで、引き綱なしで仲睦まじく散歩する姿は新聞記事にも取り上げられた程である。一方で馬場が付いていなければウンともスンとも動かなくなってしまい、馬場が引くまでどうにもならないという事もしばしばあった。
善戦と高松宮杯
91年4歳[2]の夏から条件戦を2連勝、さらに重賞を鋭い末脚で2連勝し強さを見せつけていた。夏の上がり馬として挑んだ菊花賞はレオダーバンの4着に沈んだが、続く鳴尾記念(当時GⅡ)では勝利し重賞3勝目をあげた。GⅠの栄冠もそう遠くないだろう、というのがこの頃の厩舎や競馬ファンの評価だった。そう、ここまでは・・・
しかし鳴尾記念以降は、トウカイテイオー、メジロマックイーン、メジロパーマー、ビワハヤヒデといった強豪相手に勝ちきれないレースが続き、2、3、4着を量産していく。”有馬記念3年連続3着”[3]という不滅の珍記録まで達成し、善戦マン、ブロンズコレクターなどと鼻で笑われるようになってしまった。
そんなネイチャが久しぶりに勝ったのが94年の高松宮杯(当時GⅡ 芝2000m)で、実に2年と7か月ぶりの勝ち星だった。当日の中京競馬場には前年の日本ダービーを制したウイニングチケットが目当てであろう6万5千人の観衆が集まっており[4]、勝利したネイチャはGⅠ並みの大喝采を浴びたのである。
しかし以降は引退まで低迷が続き、結局これが現役最後の勝利となった。
栗東のアイドルホース
イマイチ勝ちきれない戦績が日本人の判官びいき精神をくすぐったのか、ネイチャには多くのファンがついた。当時の栗東では1、2を争うアイドルホースで、馬房にはいつも大量の千羽鶴が飾られていた。
毎回負けてるくせに「勝つのはうちの馬やで!」と関係者に吹かしまくる名物厩務員の馬場も人気になって、「男は強気 馬場秀輝」などと競馬場に横断幕まで掲げられたのだが、厩務員の横断幕が出されたのは日本競馬が始まって以来の珍事だった。
松永厩舎はこうしたファンを大切にした。プレゼント用のテレホンカードやブロンズ像を作ったり、競争後はメンコやゼッケンを惜しげもなく配布して積極的に交流を深めた。調教師の松永善晴は頑固でとっつきにくいと業界でも知られた人だったが、ネイチャのファンが厩舎を訪ねてくるようになってからはすっかり角が取れて友好的にファンと接するようになった。その変貌ぶりにはあの杉本清も感心したほどだ。
主戦騎手の松永昌博は「あれだけファンがいるとね。馬に変わらされたんでしょうね。ファンの有難味がわかるというか、ファンあっての競馬だという気持ちになりますよね。」と語っている。
ネイチャの一戦一戦には大勢のファンと共有した嬉しいこと、悔しい気持ちが込められている。今までにない得難い経験だっただろう。こうして厩舎にとってもネイチャは思い入れのある一頭になっていった。
ハッピーエンドを望む
高松宮杯の後は衰えを隠せず一時は引退も検討されていたのだが、松永厩舎は現役を続行させた。
引退した競走馬に待ち受けている現実は厳しい。引退馬のほとんどは殺処分されているのが現状である。たとえGⅠ勝利馬でも繁殖用として振るわなければ処分されることがあるのだから現役時代に結果を残せなかった馬の先行きは暗い。功労馬として天寿を全うできる競争馬はほんの一握り。それが経済動物の宿命だといえばそれまでだが、競馬関係者の全員がそれをよしとしているわけではない。特に馬と一番身近に接する厩舎の関係者は引退後の行く末まで考えている事が多い。
ネイチャの現役続行も厩舎が彼の将来を考えての選択だった。
血統も戦績も微妙なネイチャは、種牡馬になれるかどうかわからない、なれてもその先が・・・というラインである。だからできればGⅠの勲章を手に入れて種牡馬にしたい。それがかなわぬ夢だとしてもせめて走れるうちは現役を出来るだけ長く続けさせてやりたい。それに、重賞をあと1つ勝てば引退式が行える[5]。ネイチャやファンのために引退式はさせてあげたい。
こうした厩舎の想いがあって、残り少ない現役生活にあと1勝を賭けてみようじゃないか、ということになったのである。当初乗り気ではなかった馬主も、直後の京都記念においてネイチャが厩舎の想いに応えるような好走を見せた事で考えを改め、現役続行が決定された。
ただ、馬場の心境は複雑だった。
馬にとって競馬は危険を伴うものであり、競馬場で命を落とすことも珍しくない。
「無事之名馬」と賞されることが多いネイチャだが、彼の現役生活は順風満帆だったとは言い難い。
デビューして4戦目の後、骨膜炎で半年間の放牧を余儀なくされ春のクラシックを棒に振り、5歳に上がってすぐに球節炎と骨膜炎で再び10か月の休養。6歳時には大阪杯レース直後に左第4中脚骨を骨折していたことが判明して半年間戦線を離脱している。8歳の京都記念後に左第2中手骨を、現役最後の年の春には右前管骨をそれぞれ骨折している。何事もなくすんなりいったのは高松宮杯を勝った年くらいで、あとは毎年のように故障に悩まされ続けていた。
家族のように愛情を注いできた馬場にとってネイチャの競走馬生活は心配の連続だった。さらに、ネイチャが京都記念で骨折したタイミングでライスシャワーの事故[6]が重なったことも彼の不安を一層掻き立てた。
「オレが治しちゃったら、こいつはまたレースで走らなくちゃならない。」ネイチャを治療場に通わせていた馬場が親しい同僚に心情を吐露している。全盛期をとうに過ぎたネイチャをこの上さらに走らせることが本当に彼の幸せに繋がるのだろうか。馬場の胸の内では元気なうちは走らせてあげたいという想いと予後不良の懸念がせめぎあい長く思い悩むことになった。
大記録目前にして引退
世代が入れ替わって”古豪”と呼ばれる域に入ってもなお懸命に走っていたネイチャだが勝鞍にはなかなか届かず、96年になると掲示板に入るのもままならなくなった。いよいよ馬体の限界が差し迫っていた。事ここに至って陣営はネイチャの引退を決断する。
とはいえその人気はいまだ健在で、この年もファン投票上位だったネイチャは有馬記念の出走権を獲得していた。出馬すればスピードシンボリやメジロファントムを抜いて6年連続出走という当時としては空前の大記録を打ち立てることになる。
陣営はネイチャのラストランを有馬記念に定めてローテを組んだ。引退式こそ出来ないかもしれないが、せめてこの大きな記録をもって彼の花道を飾って欲しい。その願いはファンも同じで、ネイチャと馬場には6度目の有馬出走を後押しする声援が送られた。
ところがレースの3週間前、馬場が日課の触診中に左前脚に異常を見つける。レントゲン撮影の結果、第二冠骨のヒビ割れと判明。それはレースに出しても支障のない些細な傷だったが、ネイチャの将来を考え苦しい葛藤をしてきた馬場にとってこの状態で走させることは、たとえファンの期待を裏切ることになったとしても、とても認められるものではなかった。
馬場は調教師の松永に出走を回避して引退させるように強く進言し、松永も「(ネイチャのことを誰よりも知っている)お前がそういうのだったら、仕方が無いな」と聞き入れた。松永も調教師の誇りとしてこの偉大な記録を望んでいたはずだが、それを押し殺してでも自分のわがままな訴えを聞き入れてくれたことが、馬場はうれしくて涙が止まらなかったという。
こうしてネイチャは大記録を目の前にしてターフを去ることになった。
ネイチャが栗東を発ち産まれ故郷の渡辺牧場に帰る日。
いつものように馬場がネイチャを牽いて馬運車に乗せようとするが、ネイチャは拒んだ。
「レース当日に輸送するときなんかは自分から進んで馬運車に乗り込んでいた。乗るのを嫌がったりすることなんていままでに一度もなかった。」と後に馬場は語っているが、もうこの場所には戻れないということをネイチャはわかっていたのかもしれない。
通算41戦7勝(うち重賞4勝)、3着8回。
GⅠ出走16回、34戦連続重賞出走はともに当時のJRA最多記録だった。[7]
3着の申し子としてネタ馬扱いされることの多いネイチャだが、色眼鏡を外して評価をすれば長きにわたってGⅠ戦線で上位争いをしてきた”優駿”であることは間違いない。最終的な獲得賞金ではトウカイテイオーと互角であることもその証左といえる。ただ、度重なる故障で成長を阻害されず充実期にもっと出走できていれば…と想像せずにはいられない惜しい一頭でもある。また、現役時代には3着による払い戻しは複勝[8]のみだったが、1999年に『拡大二連勝複式(通称「ワイド」)』が導入されて以降は2002年に3連複、2004年に3連単[9]が採用されるなど3位も脚光を浴びる馬券が増えている。もしネイチャがこれらの投票券が導入されたあとに走っていたのであれば、競馬業界での評価は違っていただろう。ちなみにワイド馬券導入時の広告塔として起用されたのは、ほかならぬナイスネイチャである。
JRAが2000年に実施した競馬ファン投票企画「20世紀の名馬大投票」では、なんと71位にランクインしている。選出当時、GI未勝利馬で100位以内に入ったのは、ほかにステイゴールド(後にGI制覇)とツインターボの三頭のみだった。
余生
ネイチャは生まれ故郷である北海道浦河町の浦河渡辺牧場に戻った。種牡馬としては大成せず登録は抹消されたが、その後は引退馬協会から支援を受ける「フォスターホース」[10]としてかの地で繋養された。渡辺牧場は家族経営の小さな牧場で、負担は決して少なくなかったが、それでも「一生うちで面倒を見る」と言って迎え入れたのは、彼への感謝と引退してもなお熱心なファンがいたからである(この辺りの事情については同牧場の大百科記事、ひいては書籍『馬の瞳を見つめて』も一読されたい)。
2017年からは引退馬協会の広報部長に就任し、毎年ネイチャの誕生日である4月16から5月16日までの期間にインターネット上で寄付金を募る「ナイスネイチャ・バースデードネーション」が開催された。またドキュメンタリー映画「今日もどこかで馬は生まれる」にもちょこっとだけ出演し、まさかまさかの銀幕デビューを果たしている。
誰よりもネイチャを愛した馬場は1998年に不慮の事故で亡くなり、現役時代を過ごした松永厩舎も松永師の定年と共に解散した。だが、彼らが残した愛情を引き継いだ渡辺牧場スタッフと往年のファン、そして新たな友となった牧場の僚馬・セントミサイルとメテオシャワーたちに支えられ、ネイチャは長き余生を全うした。ネイチャとかつて轡を並べたライバルたちのほとんどは彼より先に逝き、その中にはレオダーバンの様に行方知れず…あるいは廃用になった者も多々いることから考えれば、本当に最初から最後まで人に恵まれた幸運な馬と言えるだろう。
2023年5月30日。引退から26年、35歳となったナイスネイチャは、天国へ先立った者達を追って自らも駆けて行った。その最期はメテオシャワーと牧場スタッフに見送られた安らかなものであったという。
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参考資料
・プーサン 知性派の競馬(Vol.3)(コミュニケーションハウス・ケースリー)
・馬の瞳を見つめて (桜桃書房)
・厩舎へ帰ろう2(エムエイオフィス)
・『優駿』1997年2月号(日本中央競馬会)
・『優駿』2003年8月号(日本中央競馬会)
・週刊100名馬 Vol.41ナイスネイチャ(産経新聞社)
・ナイスネイチャ 世界で一番好きな馬(フジテレビ/ポニーキャニオン)
ほか8点
関連動画
関連静画
関連立体
関連項目
脚注
- *競走馬のサイクルは、大きく生産、育成、競走の三つのステージに分けられるが、その中で騎乗馴致から入厩までの育成を専門に行う牧場を育成牧場という。
- *現在馬齢は満年齢で数えるが、2001年以前は数え歳だったためここでは現役時代に合わせ数え年で表記する。
- *ちなみに4年連続がかかった94年の有馬記念で3着になったのは『レコードブレーカー』ことライスシャワーである。もっともそのときネイチャは5着だったので「ライスがネイチャの3着を阻んだ」というのは正確ではない。
- *中京競馬場において74年のハイセイコーの高松宮杯6万8千人のレコードに次ぐ当時史上2番目の動員数だった。
- *JRAの規定ではGⅠを制した馬、重賞を5勝した馬、特に貢献があったと理事長が認めた馬は引退式を行えることになっている。ネイチャのそれまでの重賞勝利数は4回だった。
- *第36回宝塚記念に出走したライスシャワーがレース途中で転倒し負傷、予後不良と診断され安楽死処分となった。いわゆる”淀の悲劇”。
- *GⅠ出走数は2001年にステイゴールドが、連続重賞出走は2017年にヒットザターゲットが(海外重賞も含めればこっちも2001年にステイゴールドが)更新した。
- *3着までに入る馬を当てる投票法。出走馬が7頭以下の場合は2着まで。
- *3着までに入る2頭の組合せを馬番号で当てるワイド。3着までの馬の組み合わせを馬番号で当てる3連複。3着までの馬の馬番号を着順通りに当てる3連単は的中難度は高いが配当は高くなりやすい。
- *引退馬協会が運営する里親制度。「フォスターホース」にはネイチャのほかにウマ娘にもなったメイショウドトウなどがいるので、気になる方はぜひ同協会のHPを覗いてみよう。グッズ購入で気軽に支援することもできる。
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