地球防衛軍3の兵器ロケットランチャーとは (チキュウボウエイグンスリーノヘイキロケットランチャーとは) [単語記事]

ここでは地球防衛軍3の兵器のうち「ロケットランチャー」について記述する。

・他の兵器については「地球防衛軍3の兵器（ネタ記事）」の総目録を参照とする。

この記事は高濃度のフィクション成分を含んでいます！
この記事は編集者の妄想の塊です。ネタなので本気にしないでください。

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概要
　当初はRPG-29の採用がほぼ決定していたが、幾つかの製造国（ロシアから正規のライセンスを取得していない国も含む）とロシア連邦が利益配分について対立したため、トライアルにおいて次席に着いていたスウェーデンのサーブ・ボフォース・ダイナミクス社製AT-4が採用された。
　数週間後、EDF先進技術開発研究所がAT-4 を原型にして開発したのは、あらゆるロケット弾を使用可能な多目的ランチャーであった。弾倉の交換によって繰り返し使用可能な発射器は大型化しているが、巻き付けたような形の弾倉はコンパクトであり、かつてのM20スーパーバズーカを彷彿させるスマートな外見に仕上がっている。
　開発にあたっては市街戦での使用が重視され、また多様なロケット弾を使用可能という条件から、発射時のバックブラスト（発射時の反動を相殺するために後方に噴出される燃焼ガス）を解消する必要があった。
　一時は電磁投射機構も検討されたが、複雑化を避けるためにAT-4 のCS 型で使用されている塩水飛散型の発射筒（後部に封入した塩水を飛散させる方式）を改良、発射する度に発射筒後部に速やかに塩水を充填する機構が開発された。使用される塩水は弾倉内のタンクに装填数分の容量が充填されているため、ランチャー本体に水を足す必要はない。
　これによって市街地はもちろん巣内部の洞窟においても発射できるが、誤射や自爆、そして酸欠誘発の恐れがあるため、訓練を受けた隊員のみが使用を許されている（この規定がロケットランチャー専門の巣穴攻略部隊モールチームの結成に繋がった）。
　EDFのロケットランチャーのカテゴリーは、一部を除いて発射器はこの塩水充填式ランチャーで統一されており、使用ロケット弾の違いとオプション装置の有無によって名称で区別されている。
　新たに開発された専用ロケット弾は種類によって威力効果や爆発範囲に違いがあるものの、基本的に徹甲・破砕・焼夷の三効果を兼ね備えている。これは成形炸薬弾頭のモンロー・ノイマン効果によって装甲を貫徹し、弾頭の余剰爆発力を利用して破片と粒弾を飛び散らせ、同時に焼夷剤を発火して周囲を焼き尽くす多目的噴推榴弾であり、バトルマシン“ベガルタ”の極低反動ロケット砲にも採用されている。
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スティングレイ M1
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スティングレイ ST
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スティングレイ M2
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スティングレイ ST2
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スティングレイ M3
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スティングレイ M4
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スティングレイ M99
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スティングレイ MF
　最も生産数が多く、名実ともに標準モデルと言えるスティングレイ・シリーズの最終形態が、このスティングレイ MFである。
　スティングレイ M99と比較すると、先に撃ち出されたM99のロケット弾をMFのロケット弾が追い越す程の高弾速性を有しており、遠距離のガンシップを狙うことも不可能ではない。一説にはオプション装置としてフォーリナーの技術を転用した空間圧縮式加速装置が取り付けられているとも言われているが、M99との外見上の差異は確認できず、実際にMFの発射器を分解してみないことには不明である。
　単発火力評価値は1500と控え目な印象を受けるが、発射速度は毎秒1発と速く、弾倉交換も2秒とかからないため総合的な制圧能力は高い。またモールチームの貴重な戦闘経験（主に自爆事故）が反映された結果、殺傷効果範囲は15メートルに抑えられており、乱戦においても使い勝手は良い。
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ボルケーノ3A
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ボルケーノ3W-Burst
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ボルケーノB10
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ボルケーノ6W
　カスケード2とは別の形でスティングレイの性能を高めようとした派生モデルであり、その名の通り火山の噴火を思わせる同時発射数を誇っている。
　これは発射器の多連装化ではなく、多弾頭ロケット弾の使用によって為されており、カスケードに比べて使用される場面は多かったものの、コストの高さからスティングレイに取って代わることはなかった。
　とくに最終モデルであるボルケーノ6W（Way）は、開発時は強力な面制圧能力を期待されていたが、分裂後に水平扇状に広がることを実現しようとする余り、設計に無理を強いたことで破壊力の低下を招いた。多弾頭ロケット弾から放たれる小型ロケット弾は弾速も威力も低く、数を揃えようにもコストが高かったため、量産化には至らなかったのである。
　同様の問題作としてはボルケーノB（Burst）10が挙げられている。これはカスケード2を越える高連射性を実現するために開発されたもので、毎秒10発近い発射速度を誇るが、それを実現した高速装填機構の機能上の特質によって、発射すると弾倉にある10発全てが強制的に発射されてしまう。
　遠距離では大きな問題にはならなかったが、近距離では突発的な自爆事故に発展するケースが後を絶たず、ほどなく一部の隊員を除いて使用が禁止された。
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カスケード1
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カスケード2
　スティングレイの改良型として開発されたカスケードとボルケーノの両シリーズは、結論から述べると、どちらも満足な結果を残すことができなかった。
　とくに連射性能を特化させたカスケード・シリーズは二種類しか制作されておらず、大戦後に発行された書籍では試作兵器に分類されていることも少なくない。
　事実、生産数は少なく、日本列島戦線におけるカスケード2の配備数は20基に満たなかったと言われている。実戦での評価も「洞窟内でも比較的安全に使用できる」点を除けば、毎秒6発の発射速度をもってしても如何ともし難い威力の低さが問題視された。
　反面、技術面では、特別に設計された塩水充填機構と弾倉、そして故障率の低い高速装填機構が他のシリーズに与えた影響は大きく、近年は評価を見直す動きがある。
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ゴリアス D1
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ゴリアス D2（SMs jB9Y8Mmさん原案・トウフウドン加筆）
　密集して迫る巨大生物の群れを効率良く殲滅できるため、ロケットランチャーは大戦初期から活躍していた武器の一つであり、ヘクトルの出現によって初期の戦術が衰退し（基本的に、防衛拠点を中心に同心円状の迎撃網を構築、濃密な弾幕によって巨大生物を牽制し、足止めしたところに集中的な砲爆撃を加えるというものである。黒蟻型巨大生物が散発的に出現する大戦初期では機能していたが、音もなく三次元的に移動する蜘蛛型巨大生物の登場、そして巣の拡散によって巨大生物が爆発的に増殖し、際限のない波状攻撃に曝されたことで、人類の戦線は後退を余儀なくされた。2017年の初夏、中東地域を蹂躙した巨大生物の大群は周辺地域への侵攻を開始。エジプト・リビア連合軍の壊滅によって北アフリカ戦線は崩壊。大量の難民の流入によってアフリカ大陸の国家は連鎖的に機能を停止し、人類誕生の大地は原始の時代よりも過酷な……文字通りの地獄と化した。故郷を失った難民とともに、EDF 中東方面軍の残存部隊は同じく敗走するイラン軍と合流して南下、難民の流入によって大戦前以上に対立を深めていたパキスタン・インドの両国を説き伏せ、カシミール会戦を敢行した。山岳地帯の地形と急造の要塞を有効に活用して各国軍は果敢に戦ったが……大地を埋め尽し、山脈を覆い隠す巨大生物の大群に呑み込まれ、絶望的な抵抗の末に壊滅した。その間に各地から洋上へと脱出した大小の難民船も、ガンシップの追撃によって全滅したと言われている。同じ頃、南欧の砦であるトルコとギリシアも陥落。どちらも地の利を活かして戦ったが、大量の死骸を積み重ねることを全く厭わない巨大生物の攻勢の前には、いかなる大河も、渓谷も、城塞も、時間稼ぎ以上の役割は望めなかった。古都イスタンブールは巨大生物の大群に踏み荒らされて消滅。同様にアテネも灰塵に帰し、歴史の語り手たる遺跡も多くが失われた。解放後に帰還した人々は、不毛の荒野と化した故郷を……民族の記憶も個人の想い出も何もかも、一切の痕跡を根こそぎ奪い去られた無残な現実を前にして、老いも若きも、誰もが涙を堪えることができなかった。疲れ切った若い母親の細腕の中で、嗚咽を漏らす大人たちを不思議そうに見上げる赤ん坊の、高く澄んだ青空を映す無垢な瞳だけが、まるで宝石のように煌めいていた）、代わって機動遊撃戦が主流となっても、有効な兵器であり続けた。
　その中でも単発式のロケットランチャーであるゴリアス・シリーズは、破壊力と殺傷範囲に優れ、潔いほど簡潔な構造から信頼性が高く、経済性にも優れていた。
　ゴリアス D1に強化を施したゴリアス D2は、その威力（大戦末期に出現したHst級やInf級の巨大生物すら一発で吹き飛ばせる程である）に比べて開発時期が早く、長い射程と安定した弾道からヘクトルに対しても有効な兵器であり、D1 型よりもさらに低い故障率とコストは、使われるのが過酷な戦場である程、高く評価された。
　工業生産力に少なからず余力のあった大戦中期に北米と欧州で大量生産され、EDF陸戦隊はもちろん、各国の軍隊にも配備された。
　その後スティングレイ・シリーズの強化や後継作であるゴリアスZの登場によってD2 型は次第にEDF隊員の手を離れていったが、多くはレジスタンスに支給され、非公式ながら多大な戦果をあげた（それ以外にも、ロシア崩壊の前後に同連邦軍から大量に横流しがあったと言われている。横流し品は露天で放置されるなど、武器として非常に好ましくない扱いを受けていたが、不発弾の発生率は天文学的に低く……皆無と明言しても良い程であったと言われており、逆にゴリアス D2の名を高めることとなった）。
　大戦中期の配備から終戦まで戦い抜いた名砲であり、歳老いた退役軍人をして「孫の名前を忘れても、ゴリアスのことは忘れない」と言わしめる程である。
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ゴリアスZ
　単発で高い威力を誇るゴリアス・シリーズだが、グレネードランチャーの高性能化もあって、カタログスペック上の評価は分かれている。
　もっとも安定した直射弾道を有しており、新兵でも正確な長距離砲撃が行えるため、ゴリアスを装備する部隊は多かった。また弾倉式ではなく一発ごとの装填式であるため故障リスクはほとんどゼロであり、発射器もロケット弾も最低限の機能で事足りるので他のシリーズに比べて非常に安価であった。
　最終形のZ型においては高威力・低コストというコンセプトを築いてスティングレイとの明確な差別化に成功している。複数の射手による波状攻撃で真に高い威力を発揮するため、大戦末期のEDFが人員の払底から精鋭主義に傾いていなければ、主力ロケットランチャーの地位を獲得していたと言われている。
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A1プラズマランチャー
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A2プラズマランチャー
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A3プラズマランチャー
　残骸の研究によってフォーリナーの超技術を獲得しよういう試みは早い段階から各国で行われたが、人類社会そのものを脅かす巨大生物の攻勢を前に大半の研究機関は壊滅し、成果を得られたのは極一部に限られた。
　米国ロスアラモスのEDF先進技術開発研究所もその一つであり、世界各地から集められたサンプルを基に、非常にユニークに富んだ才能の持ち主達が研究を重ね「一に実践、二に実戦、三、四がなくて、五に配備」と揶揄される程のペースで開発を行っていたと言われている。
　もっとも、それらは空間圧縮などの新技術やバウンド素材のような新素材によって性能を高めた既存兵器の強化型であり、純粋かつ画期的な新兵器として注目されていたエネルギー兵器の開発は難航した。
　プラズマランチャーもその一つであり、ヘクトルのプラズマキャノンの模倣によって比較的容易に開発可能だと考えられていたが、EDF上層部から発せられた「個人で携帯可能なサイズで」というオーダーに加え、開発チームが「できなければ別にいい」という言葉（小型化が不可能なら車輛への搭載も考えるという意味だったと関係者は答えている）を“挑戦”と受け取ったために開発計画は複雑化し、混迷を深めることとなった。
　電磁収束などの技術を完全に解明することなく強行された全長20メートル近いプラズマキャノンの小型化は、ほとんど開発チームの意地で成し遂げられ、3段階に渡って試作兵器が完成した。
　最初に登場したA1型は小型化に成功、着弾点から範囲40メートルを焼き尽くす威力を有していたが、超高熱プラズマを収束保持して撃ち出すのがやっとであり、遠距離で使うには着弾に時間がかかり、近距離で使えば爆発に巻き込まれるという代物であった。
　そもそも個人携帯が可能なサイズと重量の装置で、電磁収束したプラズマを安定状態のまま加速して撃ち出すこと自体が容易ではなく、A1型を改良したA2型は意図せずして拡散型となるなど開発は困難を極めた。
　最終型であるA3型で、ようやくヘクトルのプラズマキャノンとほぼ同様の物（曲射弾道を再現しようとして急角度の放物線を描く結果となった）が完成したが……レーザーライフルと同じく専用の大規模エネルギー充填施設が必要であり、製造コストの高さもあってEDF上層部は量産化を断念した。
　幾つかの試作品は陸戦隊に供与され、実戦で使用された。再装填ができないものの、圧倒的な火力を活かした初期制圧兵器に徹すれば実用の範囲内であり、低コスト化できなかったことが悔やまれる兵器である。
　エネルギー兵器に関しては大戦後も各方面で研究が続けており、EDF内部でもオメガチームのような専門性の高い精鋭部隊の設立が計画されていると言われている。一部では飛行装置を備えた強化兵士の存在も囁かれているが、超能力兵器の噂と同じく、想像の域を出ないものである。
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≪ WARNING ≫

　・該当項目はEDF機密情報S-3-9クラスに分類されています。
　・該当項目の閲覧にはレベル7以上の資格と生体認証が必要です。
　・正規の手段に基づかない該当項目の閲覧は重大な犯罪行為として厳罰に処されます。
　・30秒以内に全ての認証を完了してください。カウントダウン開始。

　Password-A[＊＊-＊＊-＊＊]……Clear
　Password-B[＊＊＊-＊＊-＊＊＊-＊＊＊] ……Clear
　Password-C[＊＊＊＊＊＊＊＊] ……Clear
　Bio metrics- Ready……Set-Start…………All clear

　
・認証を完了。

・該当項目＜Genocide-Gun＞を開示します。

　・・・
　AD2018.■■■■. 12. PM23:30
　ID：■■■■■■■■■
　Name：■■＝■■■■
「究極の兵器である理由は光と熱で全てを焼き尽くす悪魔の力としか思えないこの威力は誰も想像できないから悪魔の力は絶対に人間には生み出せない力を私だけのものにするためには誰にも教えないためにはどうすればいいのかは分かっているから実行に移すだけだからまずはあいつとこいつを消してしまわなければ計画がばれてしまっては悪魔の力は絶対でなくってしまわないためには私だけのものにしなければ私だけのものではなくなってしまう悪魔の力は何もかも焼き尽くす光と熱は私だけのものだ」
　■■■は拘束されるまで喚き散らしていた。
　試射実験の地獄のような光景よりも、私にとっては衝撃的だった。■■■ が発狂したということは、私や他の同僚も、同じように狂ってしまう可能性があるということだ。
　あの銃にはそういう力があり、私たちはそれに触れてしまっている。
　やはり使ってはならなかったのだ。マザーシップから回収したあの部品を使ってはならなかったのだ。あの箱には邪悪な意思が宿っている。間違い無い。あの銃の中枢部に組み込んだあの箱には悪魔が封じ込められている。
　壊さなければならない。
　あれは、この世にあってはいけないものなのだ。
　誰か、誰に相談すればいいだろう。わからない。頭が痛い。今朝から続いているが、治る気配がない。ドクターに薬を貰わなければ。
　・・・
　AD2019.■■■■■. 7. AM10:43
　ID：■■■■■■■■■■■
　Name：■■■■■＝■■
　先ほどジェノサイドガン開発計画の凍結と研究班の解散が正式に決定された。
　幸い死者こそ出なかったが、優秀な科学者を何人も失ったことは大きな損失だ。フォーリナーが残した超技術の解明は遅々として進んでないというのに。
　いや、問題は試作品をどうするかだ。■■■の連中は■■■■■■の地下倉庫に移せと言っているが、他のサンプルにどんな影響を及ぼすか分かったものではない。あの銃に汚染されてしまうだろう。
　破壊が不可能な以上、宇宙に捨てるか、海溝に沈めるか、考えなければならない。
　あるいは、誰かに託すべきだろうか。マザーシップの怨念に負けない者に。
　それは――

≪ Alert ≫

・警報。非正規接続を確認。強制遮断実行-完了。隔壁閉鎖実行-完了。
・警備班出動確認。室内への鎮静ガス噴射実行………完了。
・・・
ジェノサイドガン（Cv maT 72wBUさん原案・トウフウドン加筆）
　電磁波の整波照射によって一点に熱量を収束伝達し、物体を破壊する――いわゆる光学兵器、軍用レーザーの研究開発はフォーリナー襲来以前から行われており、主にミサイルを迎撃する（誘導装置である先端部のセンサーを欺瞞、あるいは損傷させる）目的で2010年前後には実用化されていたが、あくまでも軍用艦船の防御システムであり、敵性兵器を破壊する程の高出力レーザーを照射するものは実験段階であった。それさえも艦船や大型航空機、車輛に搭載する規模のものであり、とくにエネルギー供給源の小型化が困難であったことから、兵士個人で携帯可能な「レーザーライフル」の実用化には至っていなかった。
　その点では――誤解や非難を恐れずに言えば――フォーリナーの襲来は、純粋な科学の僕（しもべ）達にとっては、まさに“天から降って沸いた幸運”であった。なぜならヘクトルやガンシップの残骸を研究し、その超技術を研究、あるいは模倣することで人類の兵器技術は短期間で飛躍的に進歩することになったからである。
　顕著だったのはプラズマ兵器である。
　ヘクトルが有する武器の中でもプラズマ砲は耐久性が高く、シンプルかつ安全性に優れた構造であった（チャージング……プラズマの収束中に砲口内を狙撃して誘爆を試みた兵士は少なくなかったが、砲口内に発生している強力な電磁フィールドによって弾丸の進入が阻まれた上、心臓部である装置は砲身の底……つまり濃密な超高温プラズマガスの奥に位置しており、破壊は極めて困難であった）ことから、激戦を経てもほぼ原形を留めて回収できる場合が多く、大戦中期にはEDF製プラズマランチャーが実戦に投入された。
　反面、同じヘクトルの武装でもパルスビームマシンガンの細い銃身やビームブラスターの収束照射機構は、ヘクトル破壊時に発生するエネルギーのブラストバックに耐えられず、本体とともに砕け散ってしまうのが常であった。ガンシップのパルスビーム照射ユニットも同様であり、内部からの爆発（疑似重力発生装置の暴走によって僅か数万分の1秒の間に構造体が機体の中心部へと引き込まれ、同様の時間で急激に復元する。この際に発生する運動エネルギーが熱量となって一気に開放されるため、崩壊でありながら爆発を伴う）によって四散を免れなかった。以上から、光学兵器は回収したサンプルが相当数にのぼるにも関わらず、再現や詳細な構造の調査が困難を極めたため、多くはフォーリニウム資材として利用されるに留まり、プラズマ兵器に比べて研究開発は遅々として進まなかった。
　ましてや技術面に限った話であり、たとえ開発に成功しても現実に……戦士達が生命を賭して闘う戦場でフォーリナーに通用しなければ「失敗作」の烙印を押される運命にあった。
　そこに再び“天からの贈り物”がもたらされた。日本国の総人口の約20%……2500万を越える生命と、それに倍する人々の絶望の慟哭を代償として。
マザーシップの巨大砲台、ジェノサイドキャノンである。
・・・[▼スキップ]
　太平洋を渡って人類最大の軍事拠点――北米へ侵攻するかと思われたマザーシップは日本近海で転進して再上陸、四足要塞を投下し、その後も日本近辺に留まり続けた。フォーリナーがいかなる戦略思想を有しているのかは不明であるが、EDF 日本支部が圧倒的に不利な戦況を覆して巣穴を攻略し、さらに陸戦隊の攻撃だけでは不可能と言われた“木馬狩り”を成し遂げたことを鑑みれば、この極東の小さな島国の戦いを観察していたと考えられる。そして戦果に相応しく“脅威”と判断したらしく、白銀の空中要塞は自ら死神の大鎌を振るうべく関東平野に降臨し、ガンシップによる圧倒的な航空優勢の下で都市部を蹂躙し始めたのである。
　マザーシップ下部から現れた巨砲の威力は凄まじく、薙ぎ払うように放たれた僅か1秒足らずの照射で市街地は爆炎に包まれた。四足要塞の大型プラズマ砲を遥かに凌ぐ破壊力から、当初は原子爆発を伴う重粒子ビーム兵器と考えられていたが、被災地の状態と、そして後に回収された残骸によって規格外のレーザー兵器であることが判明した。
　本来は広大な宇宙空間で使われる兵器なのか、その出力は人類の常識を遥かに越えており、被照射地点のあらゆる物質は瞬時に蒸発、有り余る熱量は猛烈な爆炎となって周囲を焼き尽くすため、二次被害も甚大であった。簡素なシェルター（フォーリナー襲来前の2015年頃から民間企業によって企画販売されたものであり「駐車場よりも堅実な投資」「設置費用は必ず回収できる」「地下バブル」を謳い文句に、法人個人を問わずフランチャイズ方式の“賃貸”地下シェルターの設置を提案した。実際は耐震性を始めとする基本設計が“ずさん”であり、高齢者に「放射能“低減”装置」といった実効性の疑わしい高額のオプションを強引に売りつけるなどして社会問題と化した。以後も同様の商売は後を絶たず、友好歓迎を口にしながらも内心では異星人に怯えている人々がこぞって購入したが、大戦においては巨大生物に容易くドアを食い破られるなど全く有効性を示せなかった）や地下鉄などは莫大な熱量に曝されて地獄の釜と化したのである。
　とくに、山梨、埼玉、茨城の県境で構成された関東防衛線（神奈川、東京、千葉の二県一都を犠牲にして巨大生物と四足要塞を封じ込めるために設けられた絶対防衛線であり、EDF 日本支部陸戦隊と日本国自衛隊の多大な犠牲によって維持されていた）が崩壊し、疎開の行われていない地域まで被害が拡大したことで人々は大混乱に陥り、犠牲者の数は加速度的に増していった。
　これにはマザーシップの巨砲の威力もさることながら、その侵攻に昼夜の区別がなかったことも大きく影響していた。
　深夜に、人々はあの光景を直に目にしたのである。
　停電して久しい市街の影を、自らの体を、まるで鮮血で染めるかのように赤々と照らし出した、あの巨大な炎の壁を。
　その高さは暗雲を焦がす程であり、長さは数キロから、時には十数キロにも及んだ。地平に沿って燃え盛る様子は「焔（ほむら）の津波」という伝聞の通り、大地の亀裂から噴き出す地獄の業火を思わせた。
　そして上空には月が浮かんでいた。二つの満月が。
　遥か虚空で淡く光る金色の月と、直下から紅蓮の光を受けてもなお白く輝く銀色の月。
　全長300 メートルを超える巨砲の駆動音は低く、深海から響くかのように、炎と闇に呑まれた世界を鳴動させた。
――死滅セヨ。
　悪意が、一片の慈悲もない憎悪が、巨大な実体と質量を有して存在していた。
　大多数の人々は我知らずに涙し、全身を震わせた。
　今夜、自らの人生が強大な暴力によって押し潰されてしまうと、かけがえのない想い出も希望も何もかもが塵のように掻き消されてしまうと、それが逃れようのない運命であると、本能的に悟ったからであった。
　愛する者を持つ人々は、たとえそれが自分自身だけであったとしても、言葉にならない声で叫んだ。
　こんなことが、なぜ、起こり得るのかと。
　なぜ、フォーリナーなる害悪に、我々は苦しめられ、苦痛の果てに命を奪われるのかと。
　神は答えなかった。
　人類とフォーリナーを含む、万物を内包する宇宙は、ただ、そこに存在するのみであった。
　神に、世界に意思はない。
　ただ広く、深く、因果の大網が横たわるのみ（……理不尽と思える死を前にして、それを認めることは、ヒトという個体形式の種族には酷く困難であったが）。
　疑う余地のない死の直感を得て理性が沈黙しようとも、感情が悲鳴を上げ、恐怖と哀しみに心を引き裂かれるのは人類の不幸なのだろうか。集団的な心理恐慌の中、人々は我を忘れて逃げ惑った。唯々、助かりたい一心で……。多くの人々は大戦初期にマスコミが無責任に流布した「安全策」を藁にもすがる思いで信じ、家族とともにシェルターや地下街に逃げ込み、熱傷、あるいは酸欠によって凄惨な死を遂げていった。
　関東防衛線の崩壊から17時間後。ユーラシアから（おそらくは北京のEDF極東方面軍司令部に続き、シベリア方面軍司令部を壊滅させた軍勢から）数十隻の空母型円盤が日本列島に飛来。東北および北陸、そして中国地方に大量の巨大生物を投下した。
　マザーシップの侵攻を陽動とする形で行われたこの攻勢により、仙台、名古屋、広島の三県に分かれて置かれていた日本国臨時政府機関はいずれも攻撃に曝され、日本列島戦線は半ば崩壊することとなった（マザーシップの砲撃に加えて、多数の避難民が疎開していた後方地域を巨大生物……赤蟻の大群に集中的に襲われたため、この時点で犠牲者の数は1800万人に達したと言われている。僅か1日の間で、それまでの日本列島戦線における累計死亡者数を遥かに越えていたが、巨大生物の食害によって遺体の大半が残らなかったことや直後の欧州決戦の犠牲者数が1億人を越えていたことから、当時は死者の数を聞いても実感を持てなかったと生存者は語った）。
　そしてマザーシップの巨砲が最初に放たれてから31時間後。最後まで抵抗していた東海地方が陥落。事実上、日本国政府は機能を停止したのである。
「我、落日を見ようとも、また、日が昇ると信じ――」
　最後の通信を受け取ったEDF 日本支部では、司令官がマザーシップへの直接攻撃を命じた。
　指令内容は、単純にして明快である。
「マザーシップを倒さなければ、我々に明日はない」
　数週間前に四足要塞を撃破したとは言え、誰の目にも無謀なのは明らかであった。
　各地で孤立していた自衛隊残存部隊と指揮系統を築くことには成功しつつあったが、彼らは民衆の安全を守ることで精一杯であり、戦力の不足は如何ともし難く、既に二日間に及ぶ不眠不休の戦闘でEDF陸戦隊の疲労は限界に達していた。
　四足要塞を撃破してから数週間続いた、戦況が好転していた日々が……戦いの中にあっても、どこか平穏であった日々を、誰もが遠く感じていた。山岳地帯で巨大生物を掃討した後の野営など、特別配給として本物の肉が入ったカレーが振舞われ、まるでキャンプのような気楽さを感じたものだ。
　時折、もう何年間も続いているかのような錯覚を起こし、死への恐怖と強大な重圧の中で発狂しそうになるこの異常な戦争の中で、まるで夏休みのような日々だった。思い返せば懐かしくさえある。
――いや、わかっていたことだ。
　フォーリナーを殲滅しない限り、平穏などありえない。
　戦い、そして勝利するのが、唯一の道なのだ。
　ブリーフィングルームの静寂は、戦士達の苦笑いで溢れた。
「まぁ、やるしかないでしょうな」
「確かに、このままでは死を待つだけだ」
「無謀な作戦には部下ともども慣れている」
　赤いヘルメットを抱えた、各レンジャーチームの隊長達が同意する。後ろからも、四足要塞攻略戦を生き残った古参兵らが威勢のいい声をあげた。
「お待ちかねのミッションです、サー！」
「いい加減、あのミラーボールに蹴りの一発でもブチ込んでやりたかったところですぜ」
「せめて巨大砲台だけでも潰せば、流れを変えられるかもしれませんね」
「うむ……」
　司令官は全員の顔を見渡した。
　部屋の片隅で壁に背を預けているストームチームの陸戦兵と目が合う。日本支部の誰もがその名を聞いている、寡黙さで知られている彼は、微かに口許を緩めた。司令官は強く頷く。
「――諸君、決戦の時だ」
「サー！　イエッサー！」
　そのまま具体的な作戦会議を始めた彼らの目は、連戦を重ねて赤く充血していたが、時折、純朴な大型犬のそれに似た優しい眼差しを見せた。記録によれば、彼らの多くが開戦以来、家族の安否を掴めないでいた。
　数時間後、EDF 日本支部陸戦隊は対四足要塞攻略戦と同じく、待ち伏せを行った。
　それ以外に方策はなかったが、全くの賭けという訳でもなかった。
　マザーシップは数隻の空母型円盤を従え、進路上にヘクトルや巨大生物を先行させてはいるものの、非戦闘時はガンシップを放出せず、星間侵略を行う軍団の中枢体としては無防備とさえ言えたのである。都市火災の黒煙が混じる暗雲を押し広げながら飛行する姿は、愚鈍に見える程に悠然としており、微酔した帝王のごとく世界を睥睨していた。
　人々は、その白銀の巨球に不遜な気配を感じずにはいられなかった。小さな花々を踏み潰すかのように街を焼く殺戮の様子は、効率を重視した機械的なものでありながら、人類に対する憎悪に満ち、嬲り殺しを好む嗜虐者の悦びさえ感じさせたのである。
「悪魔め……っ！」
　戦士達は一斉に欺瞞幕や巨大生物のハリボテ（甲殻皮を使用した本格的なものである）を脱ぎ棄て、それぞれの武器を直上に向けた。待ち構えていたかのように星船の各所で赤い光が明るさを増し、幾つもの小さなハッチが開く。
「マザーシップからガンシップが飛び立つぞ！」
「好機だ！　ハッチを狙うんだ！　撃てぇ！」
　数十基のランチャーから次々とロケット弾が放たれる。僅かに排煙を残して飛翔したロケット弾の先陣が発進したばかりのガンシップを捉え、粉砕した。コンマ数秒後に後続の一群がハッチに殺到する。炸裂。降り注ぐような大爆発に、誰もが奇襲の成功を信じた。
「いい当たりだ！　もう一撃――」
「待て！　手応えがない！」
　少なくとも十数発のロケット弾が開放中のガンシップ発進口に当たった筈だ。空母型円盤も四足要塞も、搭載兵器の発進口が弱点だったが……。
「レンジャー7からスカウト2へ！　狙撃を要請する！　ハッチを狙ってくれ！」
　離れること数キロ後方に待機するスカウトチームが「了解」と応じる。普段は情報収集に徹する偵察専門部隊だが、今回は狙撃班として参戦していた。
「取って置きの玩具を試してやる」
　スナイパーの独り言から3秒後、ストリンガーJ2から放たれた斥力場発生式特殊徹甲弾――弾頭部分にフォースフィールドを発生させる恐ろしく高価な特殊弾が音速で飛来した。1発の弾丸に、ハッチ周辺にいた4機のガンシップが撃ち貫かれて一斉に爆発する。
「……っ」
　遅れて届いた発砲音に混じって、通信回線からスナイパーの舌打ちが漏れた。開放されている筈のハッチに命中したにも関わらず、またも表面で火花が散っただけだったのだ。
「こちらスカウト2……おかしい、当たった筈だ。もう一撃」
　再び、何も遮蔽物がない筈の発進口の前で弾丸が砕け散る。四足要塞のフォースフィールドさえ貫いた弾が、効かなかった（この時の戦闘記録から推察するに、四足要塞のものとは異なるフィールドに阻まれていたと現在では考えられている。それは斥力による物理作用ではなく、いわゆるフォーリナー超物理学によって装甲表面の空間そのものを異相時空化したものであり、弾丸が着弾したように見えても、無限遠的数値の極小の時間単位で常にマザーシップ側から時空基幹情報が“上書き”されているため、現実は幻影と化し、あらゆる攻撃は真の意味で無効化されてしまうのである）。
「くそ！　どうすりゃいいんだ！」
　あの眩い白銀の装甲……未知の素粒子で構成された特殊物理甲殻を破壊する手段がないことは、空母型円盤や四足要塞で確認済みだ。
　己の無力に歯噛みする戦士達を見下ろし、嘲笑うかのように、マザーシップが鳴動する。
「なんだ……」
「本部、応答願います！　マザーシップの下から何か出てきます！」
　星船の底辺部がスライドした次の瞬間、まるで天から巨大な塔が落下してくるがごとく、300 メートルを越えるだろう巨砲が一気に伸び、姿を現した。
「でかい！　これが、巨大砲台……！」
「ボサっとするな！　攻撃しろ！」
　全員が武器を構え直した時だった。
　鋭い耳鳴りのような音が世界を貫き、そして全ての音を掻き消す轟音が高まるとともに、巨大砲台に灯っていた赤い光が急速に明るさを増していき、白く輝く。
「まずい！　全員退避し――」
　通信回線はホワイトノイズに溢れていた。
　武器やアーマースーツの電子回路がショートする。
　巨大砲台を見詰めていた者の視力は永久に失われ、その痛みや異常を知覚するよりも早く、彼らの肉体は跡形もなく蒸発した。
　マザーシップの下部で小さな太陽が輝き、その光を凝縮したかのような一筋の、しかし驚くほど太く、肉眼では直視できない熱線が市街地を走った。
　大地が震え、大気が唸り、人が、街が、全てが瞬く間に燃え尽きた。
　瞬間的かつ爆発的に発生した熱エネルギーは大半の物質を気化させ、燃やし、あるいは溶かしながら、直上のマザーシップのフィールドに押し広げられる形で全周域に渡って広がっていく。
　痛みもなく蒸発した最初の犠牲者に比べて、二次被害に曝された者達は悲惨だった。放置された乗用車の塗装が燃え上がり、窓ガラスが飴のように溶け、外路の木々が黒く炭化して消し飛んでいく横で、数秒前まで人間であっただろう有機物の塊が燃え崩れていく。
「こ、こちらスカウト2！」
　ノイズ混じりの通信回線に悲鳴に近い声がこだました。
「マザーシップの攻撃で攻撃隊は全滅！　繰り返す、レンジャー7、8、9が全滅した！　こっちもスナイパーが目をやられた！　本部、指示を！」
「なんということだ……！」
　事前の情報では、巨大砲台の展開から発射まで2分近くの時間があるとされていたが、今回は数秒とかからなかった。
「……罠に気付いていたのか」
　陸戦隊を誘き寄せ、巨大砲台の速射で一気に殲滅したのだ。
　後に多くの戦場で“ジェノサイドキャノン”と呼ばれることになる巨砲が、その身を再び震わせ始めた。今度は速射ではなく、限界までエネルギーを貯めた全力照射を行うつもりらしい。
「いかん！　本部から全部隊へ！　一時離脱しろっ！」
　巨大砲台の各所で紫電が散り、再び通信回線が乱れ始めた。耳朶を突き刺すノイズの氾濫が、悪魔の哄笑となって響き渡る。
「駄目ですっ！　間に合いません！」
　望みが、絶たれようとしていた。
　それを繋ぎ止める術は、神に祈ることだけなのだろうか。
――違う。
　あるビルの上で、1艇のスナイパーライフルが構えられる。
――人が、自らの手で、繋ぎ止めるのだ。
　安全装置解除、ボルトアクション、初弾装填。
――神は、宇宙は、ただそこに“ある”ものだ。
　スコープの中で、裁きを下す漆黒の十字架が巨大砲台に重なる。
――人を救うのは、常に、人だ。
　トリガーに指がかけられる。
――人類は、決して諦めない。
　そう世界に宣言する一撃が空を走り、巨大砲台の中心部に突き刺さった。
「この音……」
　負傷した戦友に肩を貸している陸戦兵が立ち止まり、発砲音に耳を澄ませた、
「ライサンダー……にしちゃ、ちと重いな」
　背中に火傷を負ったレンジャー隊員が、苦痛に顔を歪めながらも笑う。
「あの野郎、いつもいいところを持っていきやがる……」
　笑みは苦く、戦士としての羨望と、男としての嫉妬が混じっていた。
　そんな思いも、続いて響く発砲音を聞いていると霧散していった。
　あの男は、ただ義務を果たしているだけなのだ。
　金のためでもなく、名誉のためでもなく。自分にできることを、すべきことをしているだけなのだ。彼は……。
「……頼むぜ、ストーム1」
　戦友の信頼に、一定間隔で続く銃撃音が応える。
　ライサンダー2（一般的にセカンドと呼ばれ、汎用型のMMF シリーズとは全く異なる設計思想で作られた高性能狙撃銃ライサンダーを、対四足要塞戦用に開発されたストリンガーの技術と教訓を踏まえて改良した強化モデルである）の試作型から放たれた高速徹甲弾が、第一撃で巨大砲台の表面に穿たれた穴に、まるで吸い寄せられるかのように、次々と飛び込んでいく。
　カタログスペック上は最高クラスの射撃精度を誇っているとは言え、ライサンダー2の試作型は反動が大きく、また先の砲撃で発生した火災の上昇気流などを考慮すれば、ピンホールショットの成功率は……。
「7発目……！」
　だが、それは成功した。一点に集中した徹甲弾による破壊の牙は、最後の一撃で巨大砲台の心臓部へと届いたのだった。
　臨界まであと僅かというところで、巨大砲台の光が消えた。
「やりやがったぜ……！」
　耳が痛くなる程の静寂が降り、そして破られる。轟音とともに巨砲が脱落し始めたのだ。
「……こりゃ、まずいな」
「確かに……」
　徐々に落下速度を増す“投棄物”を見上げて、二人のレンジャー隊員が顔を見合わせる。
「お前のことは忘れないよ」
「詰まらねぇ冗談を……」
　男は言いかけて、この物腰の柔らかい戦友が冗談を言わないことを思い出し、思い当たる節について言及せざるを得なくなった。
「くそ、この前のポーカーでイカサマした分は返してやるよ」
「よし」
　二人は銃を捨て、一人が負傷した戦友を背負って走り出した。
「おいおいおい！　ヤバい、ヤバい、ヤバいぞ！　走れ！　走れーッ！」
「わかってるから！　黙ってろ！」
　彼らは、競走馬に鞭を入れるがごとく喚き、それに怒鳴り返しながら走った。
　その背後数百メートルの地点に、巨大砲台は落着した。マザーシップから切り離された時点で重力に捉われた大質量体は、接触した大地からの反作用と自らの重量に挟まれて歪み、押し潰れ、圧壊した。蓄積されていたエネルギーが開放されて爆発が起こったが、マザーシップが急速に上昇していたため、爆炎は天高く火柱となってそびえ立ち、代わりに黒煙と土砂の混ざった煙が周囲に広がった。
　上昇していくマザーシップへ向けて、あるいはその各所から発進するガンシップを狙って、ライサンダー2から高速徹甲弾が撃ち上げられる。
　銃撃の音は力強く、何者にも臆することなく、この惑星の全ての生命の敵に対して、厳然たる決意を宣言していた。
　雲海に隠れる寸前、マザーシップは狙撃者の姿を記録、あるいは記憶したことだろう。
　彼らが再び相対するのは、大戦末期、最後の決戦においてであった。
・・・・
　後日、投棄された巨大砲台の残骸は回収され、多くのオーバーテクノロジーと驚愕を人類に与えた。
　中央部にある3本の柱状の物体はフォーリニウムのエネルギー吸蔵機能を利用した超大容量コンデンサであり、それを取り巻く環状の物体がフォーリニウムの分子回路の活性化とエネルギーの安定を司る制御装置だと判明したことは、大戦後にエネルギー革命を起こす遠因となった。
　レーザーの照射制御技術については、基部から延びる4本の触覚のようなパーツが限定的な重力レンズを発生させ、レーザーを湾曲させていたのである。この照射システムは極めて柔軟な照準機能を有し、市街地や陸戦兵器に対しては薙ぎ払うことで広範囲を制圧することが可能であり、無論、一点に集中照射させることも可能であった（これによって後の北米決戦で決戦要塞X3の対光学鏡面装甲は熔解し、船体を貫通された）。
　これらの解析データを基に、来るべき決戦を前に、人類の手による「巨大砲台」の復元と量産を目的とする「ジェノサイドガン計画」が発案された（計画立案の時点で欧州戦線は陥落寸前であり、既に移動司令船X3の要塞化においても艦首搭載装備は対光学兵器用の展開式鏡面装甲とすることが決定していた。それにも関わらず計画自体には――数字上は――多大な予算が組まれており、一説にはEDF内の親米勢力と北米軍需産業共同体が“戦後戦略”のために計画していたと言われている）。
　完成の暁には、広大な宇宙空間での超長距離砲撃戦すらも可能とする星間戦術兵器が実用化され、地球からフォーリナーを一掃することはもちろん、太陽系、そして外宇宙における戦いにおいても人類に勝利を約束すると考えられていた。
　北米決戦の間際、巨大砲台の構造をそのままに小型化した試作品が完成した。
　大部分のフォーリナーテクノロジーを解明することができなかったため、出力を下げ、ダウンサイズすることしか叶わなかったが、それでも起動に必要なエネルギーを確保することができず（決戦要塞に生まれ変わったX3の強化反応炉ですら全くの力不足であった）、一度も起動することなく終戦を迎えた。
　模倣品が眠りに就いた一方で、新たなレーザー発振技術は従来の光学兵器の欠点を克服し、低出力ながら対フォーリナー兵器として実用に耐えうる威力を持つ零式レーザーライフルが完成、人類の勝利に少なからず貢献した（フォーリナーテクノロジーが多く使われているため、エネルギーの再充電に専用の施設が必要であり、戦場では瞬間火力を活かして初期制圧に用いられる特化装備として扱われた。なお日本列島戦線では同地域のEDF陸戦隊のオメガチームがリロード可能なレーザーライフルを有し、まだALレーザー銃なる非公式装備が存在したと言われている。以上は大戦末期の未確認情報であるが、仮に事実だとすれば、戦後のアメリカやロシアでさえ実現に時間と資金を費やした技術を、大戦末期の疲弊した一支部がどのようにして獲得したのか……この問いに対しては、EDF 日本支部は後述の「小箱」をマザーシップの巨大砲台を破壊した際に密に回収していたのではないかと言われており、またEDF 日本支部に配備された零式レーザーライフルは先行量産型であるが、当時ライサンダーZ開発のために来日していたEDF先技研の開発チームによって手を加えられた可能性が、幾つかの内部資料から示唆されている）。
　そして大戦終結時、人類は三度目の“贈り物”を受け取った。
　「小箱」の暗号名で呼ばれるその物体は、大気の吸収によって莫大なエネルギーを生み出す……フォーリナーテクノロジーの中でも極めつけのブラックボックスであり、マザーシップの残骸から回収された。
　回収された小箱は全てが徹底的に破壊されたと言われていたが、近年、新設されたEDF 北米総司令部への電子的および物理的ハッキング（公式にはサイバー犯罪として断じられた事件であったが、政府の情報開示の例外条項追加に反対する自由分離主義勢力の関与と、EDF関係者の手引き――でなければ、ハッキング中に発覚したにも関わらず、どのようにして“英雄的犯罪者”は脱出したのだろうか？――が噂されているが、あのような禍々しい真実の公表が人類にとって益となるか害となるかは、後世の歴史家に判断を委ねざるをえない）によって、極秘裏に研究が続けられていたことが明らかとなった。
　その情報によれば、小箱はマザーシップの心臓と言える装置であり、恒星間航行が可能な直径500 メートルの船体の全てを維持するジェネレーターとしてはあまりにも小さく（最大で一辺が4.8メートル、最小で一辺3.5センチメートルの立方体である）、また回収された大小の装置18基のうち、無傷のものは稼動状態のままの2基、しかも最小のものしかなかった（中枢ジェネレーターの役割を担っていたと思われる最大のものは、マザーシップ底辺部の大気吸気口付近で発見されたが、ライサンダーZから撃ちこまれた超高速超高硬度徹甲弾とエネルギーの逆流に曝され、原型を留めないまでに破壊されており、他の部位から回収された小箱も墜落時に著しく損傷していた）ため、長らくの間、多くの科学者たちに眠れぬ夜を強いたと言われている。
　慎重な研究の結果、この小箱は吸収した大気を化学反応によってエネルギー化するのではなく、この宇宙の空間と、よりエネルギー順位の高い別の宇宙のそれとを相互に転移させ、エネルギー準位差を制御することでエネルギーを取り出す装置だと報告された（ただし始動時に莫大なエネルギーが必要であり、稼働している小箱と地球文明のエネルギー生産の総力を投入しても、他の小箱の再起動は不可能である）。
　この結果はマザーシップが“呼吸”していたという情報……停泊していたマザーシップの近辺で二酸化炭素濃度が上昇していたという「マザーシップ機械生命説」との矛盾を指摘されているが、あの星船の全貌は現在も謎のベールに包まれており、マザーシップが相転移ジェネレーターである小箱とは別に超生命体的な性質を合わせ持っていた可能性もあり、つまるところマザーシップ級星間戦略機能体のサンプルを新たに獲得しない限り、この議論には決着を期待できない。
　稼動状態のままエネルギーを貯え続ける2つの小箱と、エネルギー不足により起動することが叶わなかった試作レーザー兵器を組み合わせること……悪魔の心臓の欠片を用いて、悪魔の槍の模造品を目覚めさせる。科学者たちにとって、それは何事よりも優先されるべき必然であったのだろう（もっとも、それを最初に発案した研究者は発狂しており、研究所内では「小箱の毒気にやられた」「マザーシップの怨念に祟られた」と噂されていた。科学者が口にするには冗談としても性質が悪い話であったが、発狂した研究者は小箱が相転移する別の宇宙の空間、そこに満ちたエネルギー体こそがフォーリナーの意思であり、フォーリナーそのものだと唱えていた。つまり小箱とはジェネレーターではなく、別の宇宙に巣食う邪悪な想念を媒介する装置であり、マザーシップの船体などは付属物に過ぎないと語っていたのである。完全にオカルトの域であるが、現在の私達と同じくフォーリナーの主体的意思を確認できなかった当時の研究者たちも、小箱から滲み出す不吉な影を感じずにはいられなかったと思われる）。
　ここに悪魔の兵器、ジェノサイドガンは完成した。
　その威力は超兵器の名に相応しく、まさに圧倒的だったと言われており、秘密裏に行われた試射実験の数値を信じるのならば、現存する如何なる兵器よりも強力である。エネルギー源は無尽蔵であり、また単発火力評価値1000000という桁違いの出力（ライサンダーZの同数値は5500である）ですら小箱とっては取るに足らないものなのか、再発射までに必要な時間は僅か3秒という短さである。
　照射時に発生する膨大な熱量さえも、逆にエネルギー順位の低い宇宙との相転移によって解消している（このため銃本体は驚くほど冷たかった）が、使用する度にこの宇宙のエントロピーを狂わせる武器として危険視され、幾度かの試射実験の後に封印された。
　大量破壊兵器故にその存在を隠蔽され、厳重に管理されたのは当然であったが、封印の最たる理由は、小箱を組み込んだことでジェノサイドガンが“活性化”したためだと言われている（マザーシップの巨大砲台な緻密なコピーであるジェノサイドガンは、小箱を組み込んだ直後からフォーリニウムの分子回路が活性化して“独自”に機能構造を“改良”し始め、開発チームが気付いた時には小箱を取り外せなくなっていた。また関係者が次々と精神異常をきたす、他のフォーリニウム使用機器が誤作動するといった未知の影響もあったと、機密文書の枠外に走り書きが残されていた。記録上、この悪魔の銃に関わり、正気を保つことができたのはテストシューターとして協力したEDF陸戦兵、ただ1人だけである）。
　2基のジェノサイドガンは十数年に渡り各地の兵器保管庫を渡り歩いた挙句、2030年代に異相概念化によって非事象体（存在はするが“Fの絶対性”によって何人も触れることができない状態）に固定され、太陽に向けて投棄されたと記録されている。
　……誰が、信じられるだろうか。
　情報自体が信憑性に乏しいこともあるが、我々人類があのような超兵器を簡単に手放せないことは、戦後に起こった核兵器復活の是非を巡る果てしない議論の応酬を思い起こせば、考えるまでもない。
　おそらく悪魔の銃は、今もこの地球上に“いる”だろう。
　言語ではない、思考ですらない、兵器として生まれ持った純然たる暴力の意思を宿して、再び力が解放される時を、静かに待っているに違いない。
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