北陸新幹線とは、群馬県の高崎駅から大阪府の新大阪駅までを、長野県や石川県を経由して日本海側周りで結ぶ予定の整備新幹線である。
1997年、高崎駅~長野駅間が「長野新幹線」と言う愛称で開業した(詳細は該当記事参照)。2015年3月14日の長野~金沢間開業によって、ようやく「北陸新幹線」に名を変えて正式名称通りとなった。2024年3月16日には金沢〜敦賀間が開業し、北陸地方を掌握している。
概要
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群馬県高崎駅から、長野県長野市、新潟県西部、富山県、石川県、福井県と、日本海側を通って、大阪府大阪市まで接続する新幹線。なお、東京駅~大宮駅間は東北新幹線、大宮駅~高崎駅間は上越新幹線と共用となる。
最終的には、東海道新幹線に次いで、東京・大阪間を結ぶ第二の新幹線となる計画。東海道新幹線のバックアップもかねている。
東京駅~金沢駅間の所要時間は速達型「かがやき」で2時間25分程度になる(東海道新幹線東京駅~新大阪駅間の最短所要時間とほぼ同じくらい)。東京駅~福井駅間の所要時間は速達型「かがやき」で2時間51分程度になる(米原周りよりも30分以上速く、料金も1000円安い。)
他にも速達駅+数駅の停車タイプ「はくたか」、JR西日本管内で完結する運用の富山駅~敦賀駅間シャトルタイプ「つるぎ」、東京~長野の「あさま」の計4タイプで運行される。
2012年8月19日より金沢駅~福井県敦賀駅間が着工し、2024年3月16日に開通。敦賀駅延伸時の大阪駅〜金沢駅間の所要時間は、特急サンダーバードの乗り継ぎで2時間9分と、22分の短縮が実現した。
なお、敦賀駅~新大阪駅間については2031年度着工、2046年度開通予定となっているが、反対運動もあり予定通り着工できるか見通しは立っていない(後述)。
並行在来線となる信越本線(軽井沢駅〜篠ノ井駅・長野駅~妙高高原駅)は「しなの鉄道」に、信越本線(妙高高原駅~直江津駅間)と北陸本線(直江津駅~市振駅間)は「えちごトキめき鉄道」に引き継がれた。
北陸本線(市振駅~金沢駅間)についても、「あいの風とやま鉄道」(市振駅~倶利伽羅駅)及び「IRいしかわ鉄道」(倶利伽羅駅~金沢駅)に経営分離された(ちなみに金沢駅は、新幹線開業を機に駅舎のみIRいしかわ鉄道の管理に変更され、JRから使用料が入っている)。
敦賀延伸後は北陸本線(金沢駅〜敦賀駅)が「IRいしかわ鉄道」(金沢駅〜大聖寺駅)、「ハピラインふくい」(大聖寺駅〜敦賀駅)に経営分離された。
なお、長野駅の一つ先の駅である飯山駅は飯山線と接続しているが、飯山線は並行在来線に指定されなかったため、引き続きJR東日本が営業を続ける。
北陸には「サンダーバード・しらさぎ・はくたか・北越」というJR西日本が自社の在来線特急としては珍しく力を注ぎまくっている稼ぎ頭達がいるが、2015年の金沢延伸開業時に在来線特急「はくたか」が廃止になった他、「サンダーバード・しらさぎ」も和倉温泉発着の「サンダーバード」1往復を除き金沢以東の運転が取りやめられた。「北越」もJR西日本区間が廃止されて、JR東日本区間のみ運行する「しらゆき」に置き換えとなった。
既に高速・高頻度なサンダーバードがあるから金沢以西の新幹線は不要と思われがちだが、大雪等悪天候になる度に福井県が陸の孤島と化していた北陸新幹線敦賀開業前までは、雪に強い北陸新幹線が頼みの綱とされていた(敦賀から南はどうすんのと言う話はあるが)。大雪でダイヤが麻痺している時にサンダーバードの乗務員を送り込む際のルートが「東海道新幹線・北陸新幹線」である事からもその事が分かる。
そして2024年の敦賀延伸により、「サンダーバード・しらさぎ」は全列車が敦賀駅発着となった。敦賀駅では新幹線ホームの真下に設けられた31番〜34番のりばへ入線し、移動距離は長く不便だが北陸新幹線への乗り継ぎを可能にしている。なお、福井駅〜金沢駅間の特急「ダイナスター」、敦賀駅〜金沢駅間の「おはよう/おやすみエクスプレス」は廃止された。
従来、北陸から首都圏へ鉄道で移動する場合は、「はくたか」で新潟県越後湯沢駅まで行き、そこから上越新幹線に乗り換える、というルートが使用されていたのだが、金沢までの開通以後はもちろんこのルートが使用されることは殆どなくなった。したがって、上越新幹線・ほくほく線の旅客減少、沿線への経済的打撃は避けられない。速達タイプの「かがやき」に至っては、新潟県内に停車しない。
これを、当該地域の経済団体や自治体は「2014年問題」と呼んでいる(結果的に開業は2015年になったが)。後述するとおり、新潟県が公費負担を拒否したのは、これが原因である。
現在は上越妙高駅と上越新幹線長岡駅を羽越新幹線の先行案としてミニ新幹線で結ぶ構想も近年新潟県内で出ている→「羽越新幹線」を参照。
ちなみに、JR東日本管内では一部(主に首都圏)に「北陸新幹線(長野経由)」と長野の名称が残っている(後述)。
敦賀で接続するサンダーバードは湖西線が強風等で不通になった場合は米原経由となり到着が遅れる。この時接続するつるぎはこれに合わせて出発時刻を遅らせる事が前提のダイヤになっている(状況によっては特発を設定)。この際、越前たけふ駅でかがやきに抜かれるダイヤになっている。
車両
JR東日本のE7系とJR西日本のW7系が使用されている。両者とも共通設計。
長野新幹線時代はE2系が主力だったが、老朽化の為2017年3月31日をもって運用を終了した。
列車名
金沢開業までは「あさま」のみとなっていた。
金沢開業に伴う新列車名については2013年5月31日10時から6月30日24時まで公募が行われ、発表は2013年10月10日に行われた。応募方法はホームページまたは郵便はがきで行われた。
JR西日本は2013年5月14日に「たてやま」「つるぎ」を、8月16日に「かがやき」を商標出願していたが、列車名は「かがやき」「はくたか」「つるぎ」「あさま」となることが発表された。「たてやま」とはなんだったのか
そして、2015年3月14日の金沢開業に伴い、「あさま」に加え「かがやき」「はくたか」「つるぎ」の運行も開始された。
運行体系
2013年10月2日ならびに2023年8月30日に発表された運行体系は以下の通り。停車駅については駅一覧を参照。
- 「かがやき」(東京駅~敦賀駅間)
- 「はくたか」(東京駅~敦賀駅間)
- 「つるぎ」(富山駅~敦賀駅間)
- シャトルタイプ。北陸新幹線の延伸で発着駅が変更された「サンダーバード」「しらさぎ」の代替。運転本数は25往復。
- 1号車から7号車までの普通車と11号車のグリーン車が利用可能(普通車3両(8・9・10号車)とグランクラスは「し~め~(ry」もとい非営業)。 (※つるぎ706/708/710/723/725号の8号車は指定席で営業)敦賀延伸開業により全車利用可能に。
- 4号車は列車によって席種設定が違うので注意しなければならない。
- 敦賀延伸後はJR西日本完結列車と言う性格に変更された。25往復が富山・金沢駅〜敦賀駅間を運行し、うち9往復は金沢駅〜敦賀駅間は福井駅のみ停車する、速達タイプとなる。早朝深夜便を除き大体の列車が敦賀駅で「サンダーバード」「しらさぎ」に接続する。
ただし、湖西線(比良おろし)の遅延が発生した場合は1)敦賀発は接続待ちで遅れる、2)所定列車は定発し遅延列車には特発での対応のいずれかとなり、JR東日本管内に遅延を持ち込まないようにしている。 - 上記の通り特急に接続しないものが5本設定される。(接続しない便はおはようエクスプレス・おやすみエクスプレスの代替列車も兼ねている)
- 「あさま」(東京駅~長野駅間)
料金体系
JR東日本・JR西日本が申請した料金(リンク)を基に計算すると、普通車指定席で、東京駅~富山駅間は12,730円、東京駅~金沢駅間は14,120円となる。現行では越後湯沢駅乗り換えで、東京駅~富山駅間は11,600円、東京駅~金沢駅間は12,710円となるため、1,000円以上高くなることになる。
これは特急料金が現行の東北・上越・長野新幹線の料金体系に加えて、JR西日本区間(上越妙高以西)に対しての加算料金が加わるためである。
駅一覧
既開通区間
便宜上、東北新幹線の東京駅~大宮駅間と上越新幹線の大宮駅~高崎駅間も含めている。
運営は高崎駅から上越妙高駅までがJR東日本、上越妙高駅以西はJR西日本が受け持つ形となるが、乗務員交代は長野駅で行われる予定。
駅名の背景が白背景区間は1997年10月1日開通区間(長野新幹線)、黄色背景区間は2015年3月14日開通区間である。
乗り換え路線のうち、太字は北陸新幹線開通時に転換された後の第3セクター路線である(並行在来線)。
以下の駅一覧は、乗り換え路線を2024年3月16日時点のものとしている。従来の乗り換え路線は「長野新幹線」を参照のこと。
2024年3月16日開通区間
運行事業者 | 正式路線名 | 駅名 | 停車駅 | 乗り換え路線 | 所在地 | |||
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つ る ぎ |
は く た か |
か が や き |
||||||
西日本旅客鉄道 | 北陸新幹線 | 金沢駅 かなざわ |
● | ● | ● | IRいしかわ鉄道 | IRいしかわ鉄道線 (JR七尾線直通) |
石川県 金沢市 |
北陸鉄道 | 浅野川線(北鉄金沢駅) | |||||||
IRいしかわ鉄道線 | ||||||||
小松駅 こまつ |
▲ | ● | ▲ | IRいしかわ鉄道 | 石川県 小松市 |
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加賀温泉駅 かがおんせん |
▲ | ● | ▲ | IRいしかわ鉄道 | IRいしかわ鉄道線 | 石川県 加賀市 |
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芦原温泉駅 あわらおんせん |
▲ | ● | ▲ | ハピラインふくい | ハピラインふくい線 | 福井県 あわら市 |
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福井駅 ふくい |
● | ● | ● | ハピラインふくい | ハピラインふくい線 (越美北線直通) |
福井県 福井市 |
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えちぜん鉄道 | 勝山永平寺線 | |||||||
福井鉄道 | 福武線(福井駅前駅) | |||||||
越前たけふ駅 えちぜんたけふ |
▲ | ● | ▲ | 接続路線無し | 福井県 越前市 |
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敦賀駅 つるが |
● | ● | ● | ハピラインふくい線 | 福井県 敦賀市 |
|||
西日本旅客鉄道(JR西日本) | 北陸本線(湖西線直通) | |||||||
小浜線 |
2046年度開通予定区間
※仮称は公式発表されたものではないため、便宜上の名称を使用。
運行事業者 | 正式路線名 | 駅名 | 乗り換え路線 | 所在地 | |
---|---|---|---|---|---|
西日本旅客鉄道 | 北陸新幹線 | 敦賀駅 つるが |
ハピラインふくい | ハピラインふくい線 | 福井県 敦賀市 |
西日本旅客鉄道(JR西日本) | 北陸本線(湖西線直通) | ||||
小浜線 | |||||
東小浜駅(仮称) ひがしおばま |
西日本旅客鉄道(JR西日本) | 小浜線 | 福井県 小浜市 |
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京都駅 きょうと |
西日本旅客鉄道(JR西日本) | 東海道本線(琵琶湖線) (湖西線直通) |
京都府 京都市 下京区 |
||
東海道本線(JR京都線) | |||||
山陰本線(嵯峨野線) | |||||
奈良線 | |||||
東海旅客鉄道(JR東海) | 東海道新幹線 | ||||
近畿日本鉄道 | 京都線 | ||||
京都市交通局 (京都市営地下鉄) |
烏丸線 | ||||
松井山手駅(仮称) まついやまて |
西日本旅客鉄道(JR西日本) | 片町線(学研都市線) | 京都府 京田辺市 |
||
新大阪駅 しんおおさか |
西日本旅客鉄道(JR西日本) | 山陽新幹線 | 大阪府 大阪市 淀川区 |
||
東海道本線(JR京都線) (JR神戸線・JR宝塚線直通) (関西空港・和歌山方面直通) |
|||||
おおさか東線 | |||||
東海旅客鉄道(JR東海) | 東海道新幹線 | ||||
西日本旅客鉄道(JR西日本) 南海電気鉄道 |
なにわ筋線 (2031年度末開業予定) |
||||
大阪市高速電気軌道 (Osaka Metro) |
御堂筋線 |
発車メロディ
駅名 | 発車メロディ | 作曲者 | 備考 |
---|---|---|---|
東北新幹線・上越新幹線(東京駅~高崎駅間)は、発車ベル使用 | |||
安中榛名駅 | 近郊地域17番 | - | |
軽井沢駅 | JR-SH1-1 | 塩塚博 | 接近メロディは「海の駅(作曲者:福嶋尚哉)」 |
佐久平駅 | |||
上田駅 | |||
長野駅 | 信濃の国 | 北村季晴(原曲) | 長野県の県歌 |
飯山駅 | ふるさと | 岡野貞一(原曲) | 作詞者の高野辰之が長野県出身 |
上越妙高駅 | 夏は来ぬ | 小山作之助(原曲) | 作曲者が上越市出身 |
糸魚川駅 | 春よ来い | 弘田龍太郎(原曲) | 作詞者の相馬御風が糸魚川市出身 在来線メロディとして使用中 |
黒部宇奈月温泉駅 | 煌~水の都から~ | 高原兄(原曲) | 作曲者が富山県出身 |
富山駅 | オリジナル曲 | 須藤晃 | 作曲者が富山県出身 |
新高岡駅 | オリジナル曲 | 太田豊 | 作曲者が富山県出身 |
金沢駅 | オリジナル曲 | 中田ヤスタカ | 作曲者が金沢市出身 |
小松駅 | オリジナル曲 | 松任谷由実 松任谷正隆 |
|
加賀温泉駅 | オリジナル曲 | ||
芦原温泉駅 | オリジナル曲 | 堀田庸元 | 作曲者があわら市出身 |
福井駅 | Symphonic 「悠久の一乗谷」 |
葉加瀬太郎 | |
越前たけふ駅 | オリジナル曲 | 細川俊夫 | |
敦賀駅 | 来い来い敦賀 (オリジナル曲) |
佐淡豊 |
沿革
1972年6月に基本計画が決定。
しかしオイルショックの煽りを受けて整備はめっきり遅延し、本格的に計画が固まったのは80年代も末のことであった。
またこの間に、運行費削減などを理由に、一部区間のスーパー特急方式での整備が決められた。
なお、当初ルート案は軽井沢は通過し、小諸を通るルートであったが、小諸市の反対で、小諸から佐久を通ることになった後に、国鉄側から「観光地である軽井沢を通過するのはおかしい」との意見で軽井沢を経由する現在のルートに変更されている(北陸新幹線に最急勾配30‰と言う急勾配が生まれたのはこのため)。
また、基本計画では経由先は高崎・長野・富山・金沢とだけ書かれていたため、経由地が明記されていない長野~富山間は北アルプスの直下をトンネルで貫通し、最短経路を経由する案も浮上した。しかし、最急勾配を12‰とした時、トンネルの長さが約70km(青函トンネルが約53kmであることを考えればどれだけ長いかがおかわりだろう)となってしまうことや火山地域を通過することによる高い地熱、土被り(最大2,000m)で発生する湧水や強い地圧、土はね(岩盤崩壊)などと言った問題点が浮上し、難工事になることが予想されたため、こちらも上越・糸魚川を経由する現在のルートに決定した。
1988年、運輸省から建設費の削減を理由に高崎駅~軽井沢駅間をフル規格、軽井沢駅~長野駅間をミニ新幹線に計画変更が発表され、1989年にとりあえず高崎駅~軽井沢駅間だけが着工された。しかし、1991年に長野オリンピックの開催が決定すると結局軽井沢駅~長野駅間もフル規格で整備されることになった。このフル規格への計画変更で、新幹線が通るはずだった小諸市が怒ることになるのだが、そのあたりは「佐久平駅」を参照。
1997年10月、先行する形で、高崎駅~長野駅間が部分開通。
しかし北陸まで開通していないのに「北陸新幹線」と名乗るわけにもいかず、当初は便宜上長野方面行き列車を「長野行新幹線」と名付けたが(反対に東京方面行き列車は単に「新幹線」としていた)、これも定着しなかった。結果的に「行」が取れて、現在の長野新幹線になった(なお、東京駅のJR東海・東海道新幹線ホームでは最初から長野新幹線と表記していた。マスメディアも当初よりこの名称を用いていた)。
このときには、同年3月より東北新幹線に導入されていたE2系新幹線車両が導入された。オリンピック開催時には、200系が臨時導入されていたこともあった。
その後も、主に金沢駅~富山県石動駅間などを中心に徐々に整備は進められた。
2000年頃には、富山までの区間の着工が決定。
2004年には、結局、石川県白山市の白山総合車両所に至るまでの区間全てをフル規格で着工することになり、鉄道・運輸機構による本格的な工事がスタートした(この裏では政府・与党内部でいろいろと揉め事があり、その末の出来事であった)。金沢駅や富山駅など、通過する駅の大規模な改装や、新駅の建設なども進められはじめた。
2009年頃に、他県の知事達の説得にもかかわらず新潟県知事が建設費用の負担増に難色を示し、予定通りの開業が可能かどうかがかなり微妙になって、JRと他県が困惑するという事態が発生した。このため、開業時期の前倒しが不可能となった。
2014年8月、長野駅~金沢駅間の開業日が正式に決定した。
試運転を経て、2015年3月14日に長野駅~金沢駅間が開業した。
2012年には、上述の通り金沢駅~敦賀駅間の工事が着工。当初は2023年春に開業する予定であったが、トンネル工事の遅れにより延期され2024年3月16日に金沢駅〜敦賀駅間が開業した。金沢開業から10年足らずで開業することになる。
名称について
上述の通り、長野県としては、思わぬ形で県名を冠した新幹線が誕生することになったが、金沢開業後の名称に関してはJR東日本及びJR西日本ともに「北陸新幹線」となっている。
もちろん長野県としては、この変更は痛手である。そのため、経済団体や自治体を中心に、「北陸長野新幹線」などといった形での「長野」の名称維持を求める声が上がった。これにより、日本海側の県と長野県との喧々諤々の議論がしばらく続くことになった。
結局、2013年、JR東日本が長野県側の声にこたえて、「北陸新幹線(長野経由)」という形での表記を首都圏などの一部区間で採用することを発表。これに長野県側も納得し、名称に関する議論は終結することになった。
敦賀以西について(2015年8月以前)
北陸新幹線は最終的に大阪まで開通する予定だが、敦賀駅までは順調に整備が進んでいるにも関わらず、それより先の区間に至っては、繰り返すが、2024年まで詳細なルートすら決まっていない状態であった。
- 米原ルート:敦賀→米原→東海道新幹線→新大阪(→山陽新幹線乗り入れ可)
- 若狭(小浜)ルート:敦賀→小浜→西京都(仮称/現:亀岡)→新大阪
- 湖西線ルートa:湖西線・JR京都線をミニ新幹線化
- 湖西線ルートb:敦賀駅で改軌設備設置、フリーゲージを導入
現在、この3ルート4パターンが想定されており、自治体間での協議も行われていた。
どのルートにも長所・短所があるものの、現在のところ、京都駅や(スイッチバックで)名古屋駅に直接向かう事が出来る米原ルートが有力視されている模様(但し、米原で接続するとJR東海の収益となり、運営主体のJR西日本にとっては不都合が生じる可能性がある)。
しかし、2014年時点でも議論は固まっておらず、むしろ工費の面で実現可能性すら怪しくなってきたことから、国土交通省が、サンダーバード区間である大阪~富山間及びしらさぎ区間の名古屋~富山間へのフリーゲージトレイン導入による、在来路線活用を提案する事態にまで至っている。JR西日本などはフリーゲージトレインの導入には消極的とされるが、サンダーバード区間に関してはJR西日本及び関係6府県が「暫定措置」として導入を容認している。なお、敦賀開業時はフリーゲージトレインの開発が間に合わない事から敦賀駅での乗り換えとなる。但し、JR西日本は九州での開発が遅延する場合はフリーゲージトレインの導入費用と大阪延伸までの期間との兼ね合いから導入を見送り大阪延伸まで敦賀乗り換えを継続する。
ちなみに、京都府などは3ルートの比較検討の際は湖西ルートもミニ新幹線やフリーゲージではなくフル規格として計算している(湖西ルートをフル規格とした場合は京都駅付近で東海道新幹線に合流する)。
米原ルート
米原ルートが支持されているのは、主に、東京~北陸の運輸ではなく、「しらさぎ」が開拓した名古屋~北陸の運輸という視点からである。米原駅を経由すれば、現行の「しらさぎ」同様、乗り換えなしで名古屋と北陸を結べるわけである。
大阪府の橋下徹前知事が米原ルートを推進していたのもこれが理由であり、仮に米原ルートに決定した場合は受益者負担の観点から北陸新幹線の終着となる大阪府も建設費の一部負担を行う模様である(※なお、米原ルートになると東海道新幹線への乗り入れが必要となるが、JR東海は「リニアが開業すれば乗り入れは可能」としている)。
関西広域連合も米原ルートを推進しており、乗り入れ先となる東海道新幹線が、リニアの新大阪駅到達までは過密ダイヤである事もあり米原駅乗り換え案を公表している。2013年には政府に対して米原ルートでの着工認可を正式に提案した。ちなみに、広域連合案での米原ルートの建設費は最も安い場合で約3,600億円(若狭ルートが約9,500億円、湖西ルートが約7,700億円)(下記表も参照)。
石川県の首長らも米原ルートを要望する決議を2015年7月21日に採択している。
なお、このルートは東海道新幹線(や山陽新幹線)に乗り入れることは可能ではあるが、東海道新幹線の1号車は新大阪駅・博多駅寄りであるのに対し、北陸新幹線の1号車は東京駅寄りであるため、そのまま乗り入れすると東海道新幹線内で1号車の位置が逆になった車両が走行することになる(両数は違うのでこれは問題では無いとも言えるが)。また、この米原ルートは基本計画にある北陸・中京新幹線(敦賀駅~愛知県名古屋市)とも一部が重複しており、米原ルートで決定した場合は実質的に北陸・中京新幹線の一部区間が建設される事となる。
このルートだとJR西日本は米原~新大阪間がJR東海の取り分になり旨味が少ない事、JR東海はこれ以上列車を入れられない事とシステムの都合上嫌がられており、作るとしても複々線化ないしは東海道新幹線より南側のルートとなるが、これも中央新幹線と被るので嫌がられている。
若狭(小浜)ルート
当初の整備計画案で想定されていたのは若狭ルートであった。
これに伴い、敦賀~名古屋間に現行の特急「しらさぎ」とほぼ同じルートを走る「北陸・中京新幹線」が計画されたのだが、米原ルートとなった場合は大半の区間(敦賀~米原間)で重複する為「北陸・中京新幹線」が別途建設される事は無くなると考えられる。
このルートは、「田中角栄が鉛筆を引いて決めただけ」とさえ呼ばれている通り、旅客流動に配慮していないと言われる。
しかし実は、大阪側終着駅として基本的に設定されている新大阪駅には、若狭ルートが採用された場合の北陸新幹線専用ホームのスペースが、東海道本線(JR京都線)と地下鉄御堂筋線の間に既に確保されている。(実際には新大阪駅の南側に作ることに決定した。)米原ルート・湖西ルートの場合はこの限りではなく、米原ルートの場合は現行の東海道・山陽新幹線ホームが、湖西ルートの場合は東海道本線(JR京都線)ホームが共用されるものと思われている(湖西ルートをフル規格とした場合は米原ルートと同じく東海道・山陽新幹線ホームを共用する予定)。
このルートで建設した場合、別件の近江今津~小浜間の快速鉄道を建設せずに済むのでJR西日本も推している。名古屋方面への連絡は敦賀乗り換えか京都駅で行う事を前提としていると思われる。
湖西ルート
湖西ルートの場合は、現在も湖西線を苦しめる冬季の比良おろし(比良山系から吹き降ろす強風)や、フリーゲージトレインの乗り入れ問題などもあって、若狭ルート程ではないにしても実現の可能性が低いと言われている(冷蔵庫さんは地下に断層があり不可とも言っている)。
湖西ルートの場合もフル規格となった場合は、前述の通り京都で東海道新幹線に合流する。
但し、JR西日本の真鍋精志社長は2015年7月10日に都内で行った会見で湖西フル規格を有力候補の1つと位置づけている。
※余談だが、若狭ルートが外れ米原ルートもしくは湖西ルートが採用された場合には湖西線近江今津駅~小浜線上中駅間を結ぶ若江線が代替路線として湖西線並みの高規格で建設されるとも言われている。同線(若江線)は鉄道省時代より地元が建設を要望している路線でもある。
ルート | 距離 | 建設費 | 所要時間 (敦賀~新大阪) |
若狭 | 123km | 9,500億円 | 33分 |
米原 |
44km |
3,600億円 ~ 5,100億円 |
45分 |
湖西 | 81km | 7,700億円 | 35分 |
敦賀以西について(2015年8月以降)
2015年8月29日、JR西日本は北陸新幹線の第4の案となる「小浜・京都ルート」を検討していることを発表した。
福井県小浜市を通ることは従来の小浜ルートと同様だが、新たに京都駅を経由して新大阪駅に接続する案となっている(京都~新大阪間は大深度地下を想定)。
同年12月18日、自民党の西田昌司参議院議員が突如として第5の案となる「小浜市-舞鶴市-京都市-大阪・天王寺-関西空港」ルートをぶち上げた。
2016年1月26日、JR西日本の真鍋精志社長は北陸新幹線の未着工区間に関する与党検討委員会で、同社が検討する福井県小浜市と京都駅を経由する新案が望ましいとの考えを示し、「米原ルート」について「(乗り入れる東海道新幹線の)ダイヤの問題やシステム統合など技術的課題がある」として否定的な見解を述べた。
真鍋社長と同席したJR東海幹部も「乗り入れは困難」との見解を示し、JR東海が公式に北陸新幹線の東海道新幹線への乗り入れを否定する機会となった。
2016年3月10日、自民党と公明党の検討委員会は「米原」「小浜」「小浜と舞鶴」を通る3案の検討を進めることを確認した。京都駅を通らない「小浜ルート」と、京都駅を通るが支持が広がっていない「湖西ルート」は検討をやめる。さらに終点とする駅などを決めた上で来年度、国土交通省に建設費や採算性などの調査を求める方針。「小浜と舞鶴」案については、関西空港までの延伸は検討しないことにした。
2016年11月17日、自民党と公明党の検討委員会は「小浜・京都ルート」とする方針を固め、12月14日に敦賀駅~京都駅間は小浜(東小浜駅)経由とすることで決定した。残る京都駅~新大阪駅間は北回り案と南回り案(南回り案はさらに3ルート)が存在していたが、2017年3月7日に松井山手駅を経由する方針となり、3月15日に正式決定した。当時の国土交通省の想定では2031年に着工し、2046年に開通予定としていた。
車両基地はいずれの場合も久御山町に作ることが決定している。
今後は並行在来線の経営分離が行われるか、地元の着工の同意が得られるかどうかが争点となる。
前者については湖西線が主な並行在来線になるが新幹線の恩恵を受けない滋賀県は経営分離を認めていない。
後者については京都府北部(南丹市美山地区)の一部からトンネル工事による影響などで反対の声が出ている状況であり、南丹市長も「新幹線は迷惑だ」と反対姿勢。大深度地下で経由予定の京都市内でも過去の地下鉄工事などで地下水に影響が出たことから一部市民や酒蔵のある伏見地区で反対が出ている状況で、2024年3月時点では同意が得られていない状況である(ついでに大阪府でも交野市が地下水への影響を検討するよう要請している)。このため、京都府知事は新幹線延伸には理解を示しつつ地元への丁寧な説明を国に要望している(一方、京都市長は賛否を明らかにしていない)。なお、南丹市については山陰新幹線との分岐が可能な駅設置も見返り案として国土交通省が検討する方向である。
京都駅の位置については、前述の地下水問題もあり従来の京都駅地下案以外に東海道本線(JR京都線)桂川駅付近案も検討されている。
※小浜新駅についても、従来の東小浜駅ではなく小浜インターチェンジ付近へ変更された。
着工予定は令和7年以降を目標としており、大阪開業までは25年程度かかる予定。
なお、ルート決定時よりも諸々の費用が高騰しているため、事業費は2倍の4兆円程度に膨らむ見込みで、B/C比は着工条件となる1を割り込む見込み(同様に、米原ルートで計算した場合でもギリギリ1を満たす程度)。このため、着工条件を満たすために計算方法の変更が検討されている。
ちなみに、北陸新幹線新大阪駅は東海道新幹線南側の地下ホームの予定であるが、霞ヶ関では西九州新幹線開業で本数増加が見込まれる山陽新幹線を新大阪駅手前で分岐させ北陸新幹線ホームに乗り入れさせて直通させる構想がある。しかし、こちらも米原ルート同様にシステム上の問題をはらんでいるため、実現する可能性は低い。(精々北陸新幹線と同じホームに発着させて乗り換えさせる位であろう。)
北陸新幹線2024年問題
2024年3月16日に敦賀駅まで延伸された北陸新幹線だが、計画当初はとある問題に直面していた。
今回も並行在来線は第三セクターによる鉄道会社に経営分離されるのだが、石川県の全区間はIRいしかわ鉄道に、福井県の区間は新会社に移管されることが確定している。問題となっているのは関西方面から北陸方面、または北陸方面から関西方面に向かう際、在来特急「サンダーバード」の路線をどう扱うのかという点である。
もともとサンダーバードの前身、特急「雷鳥」は大阪と新潟を結ぶ特急列車であり、大阪と北陸、または北陸の中心都市同士を結ぶ大切な交通網であった。しかし、首都圏と関西圏のバランスが崩れ、北陸新幹線延伸が実現化したことにより、特急という貴重な収入源を失う地方路線は第三セクターに切り離されてしまい、現在新潟県は「えちごトキめき鉄道」、富山県は「あいの風とやま鉄道」、石川県は「IRいしかわ鉄道」と分断されてしまっている。また、富山県まで延伸されていた特急「サンダーバード」が、前述の理由により金沢市以北への相互乗り入れを許可しなかったために、金沢止まりとなった。
しかし、言い方は悪いが、現在も関西と密接な関係を持っているのは金沢市までであり、富山県も現在もなお関西との関係は強いものの、逆に関西から富山に出向くという人はそこまで多くない(それが富山県経済界が関東へなびこうとしている遠因でもある)。だが、これが大阪や名古屋から金沢まで特急一本で行けないとなれば話は別である。それどころか、敦賀までしか「サンダーバード」が延伸されない場合、福井までも特急一本で行けなくなれば、大幅に「サンダーバード」利用者は減ることは必至で、関西経済界からの反発も予想され、JR西日本としてもドル箱路線をみすみす失うことになる。
そうなれば、現在特急乗り入れを頑なに拒否しているIRいしかわ鉄道も軟化の姿勢を示す可能性はあるが、同時に福井県に新たに誕生する「福井県の三セク鉄道」(→「ハピラインふくい」)にも共同で働きかける必要がある。また、宙ぶらりんとなっている金沢以北への乗り入れが復活するかどうかも不透明のままであった。
尤も、北陸新幹線自体の乗車率も決して良くはなく、首都圏とを結ぶ「はくたか」より金沢と富山を結ぶ「つるぎ」の方が混雑していることが多く、長野以北は金沢~富山間以外閑散としている(首都圏財界も、信州以北はそこまで経済的関係は持っていないため)。もし、特急区間が重複した場合、速いが高い上に、停車駅が市街地へのアクセスが悪い北陸新幹線と比較的遅いが安い上、市街地へのアクセスに優れた在来特急とのパイの奪い合いになり、現状関西からの方が交流人口が多いため、北陸新幹線の経営状況を更に圧迫させる恐れもある。
最終的にハピラインふくいは収支悪化を理由に特急乗り入れを断念したこともあり、「サンダーバード」や米原駅・名古屋駅に乗り入れる「しらさぎ」については敦賀駅の乗り換えを余儀なくされた。
さらに普通列車も従前敦賀駅を跨いで運転されていた列車もあったのが全て敦賀駅折り返しになり、当駅を直通するのは検査で吹田まで回送する列車か貨物列車だけになっている。
関連動画
北陸新幹線金沢開業以前のやつ
関連項目
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東北・北海道・上越・北陸新幹線及び山形・秋田新幹線の列車 |
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