ドナルド・ジョン・トランプ(Donald John Trump, 1946年6月14日 - )とは、アメリカ合衆国の不動産王であり、アメリカ合衆国第45代大統領である。
日本では「ドナルド・トランプ」、あるいは「トランプ大統領」「トランプ氏」の方が通っている。
概要
ドナルド・ジョン・トランプ Donald John Trump |
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基本情報 | |
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国籍 | アメリカ合衆国 |
生誕地 | ニューヨーク |
出身地 | ニューヨーク |
生年月日 | 1946年6月14日 |
没年月日 | -- |
死没地 | -- |
別名 | -- |
職業・肩書 |
実業家 第45代米国大統領 |
備考・その他 | |
人物テンプレートボックス |
1946年ニューヨーク生まれ。ペンシルベニア大学卒業。父親の流れを組み実業界へ踏み入れ、1980年代に不動産投資で成功、アメリカンドリームを果たした「不動産王」として名を馳せる。
トランプは成功と失敗を繰り返し、総資産540億ドル(6兆円)、個人資産45億ドル(5000億円)の資産を築いた[1]。 トランプは、ペンシルベニア大学を卒業後、不動産会社に入社したが、アッパーサイドで1番安いアパートに住んでいた。「玄関の呼び鈴」を押すと、「いきなり銃で発砲してくる様な人たち」が住む街で仕事をする事により、度胸を身に付けていった[2]。
トランプは、自治体公社「マーク」が取り組んでいた「ニューヨーク市の財政立て直しプログラム」に挑戦し、ニューヨーク市の財政再建に貢献。ニューヨーク市の都市開発事業に参加した。ここで築いた人脈により、自前で資金調達が可能となった[3] 。トランプは、自分で調達した資金を元手に資産を増やし、38歳の時には不動産王と呼ばれる様になった[4]。
トランプは、経営危機を迎える事はあったが、「ニューヨーク市の財政立て直しプログラム」に参加した経験を生かし、状況を打開し続けた。2007年の「サブプライムローン問題」「リーマンショック」という不況においては、社員を解雇せずに乗り切る事に成功する。トランプは、厳しい状況に置かれても、従業員のクビを切らずに面倒を見た[5]。
テレビ番組などにも積極的に進出し、特に自らが主演とプロデューサーを兼任して企画したテレビ番組『アプレンティス』で一躍知名度を高める。「You're fired(お前はクビだ)」の決め台詞で有名。ビンス「それ俺の台詞…」日本でも有名なものでは、映画『ホーム・アローン2』の撮影をプラザホテルで行ったため、その交換条件としてオーナーであったトランプが1コマ出演している。
過激な発言のほか、積極的なメディア露出も彼の知名度を広げる手段となった。
大統領選挙の経緯
2015年6月に共和党候補として、2016年のアメリカ大統領選挙への参加を表明(副大統領候補には元インディアナ州知事 マイク・ペンスを指名)。主流派と呼ばれている既存の勢力とは違った姿勢で有権者にアピールして支持を集め、ついには予備選挙を勝ち抜いて共和党の大統領候補として指名を受けるに至った。
トランプ氏が共和党候補に指名され、民主党候補として「ヒラリー・クリントン」が登場した際も、開票直前まで「ヒラリー優勢」を報道し続けた。
こうした逆風を物ともせず、2016年11月8日に実施された大統領選挙では、民主党のヒラリー・クリントン氏を破って勝利。2017年1月20日(日本時間:21日)に就任宣誓式を経て、正式に第45代アメリカ合衆国大統領に就任した。大統領就任時70歳という年齢は、当時の最高齢である(現在の最高齢は78歳で就任したジョー・バイデン)。また政治家としての活動も、軍人経験もない人物の大統領就任も史上初である。
一期目
実績
- トランプ大統領は、規制撤廃と大減税により、アメリカの景気を大きく回復させた。トランプ大統領は、所得税を大幅に下げ、法人税を実質的に40%減税した[7]。その結果、トランプ大統領が大減税を行った事で、多くの企業が雇用者を増やし、失業率が3.7%まで大きく改善された[8]。
- 平均、世帯収入の過去最高を達成した。平均世帯収入は6.8%上昇を実現。1967年以来で最高の増加。特に、低所得世帯の所得がトランプ大統領が就任してから3年間増加(10%)し続けていた。人種別だと、アジア系、黒人、ヒスパニック系の増加率が高かった[9]。
- トランプ大統領の就任後、500万人以上の人々が「経営者が保険料を払う医療保険」に加入できた。保険料が法外な価格のオバマケアから人々が多くの人が救済された[10]。
- 女性の雇用も増加させた。3年間で300万人の女性が就職に成功。賃金も増加した[11]。
- 2019年には貧困率も1959年以来で過去最良の10.5%まで低下[12]。生活困窮者を700万人以上減少させることに成功した[13]
- 2020年に発生した武漢肺炎(COVID-19)渦においても、1939年以降では、過去最高の雇用増加数を実現。合計で1140万人の雇用を生み出す。約半年で、武漢肺炎で失われた雇用の55%以上を取り戻し、ロックダウン中の都市があって、過去最高の雇用情勢の復活させることに成功した[14]。
ISISを打倒
ISISを打倒した。ISISの活動が活発だったイランやイラクなどからの入国を90日間禁止した。中国の習近平がアメリカを訪問し、首脳会談を行った。この時、トランプ大統領は、ISISの活発な地域にミサイルを59発撃ち込み、滅ぼした。その事を会談の席で、習近平に伝えた[15]。
チョコレートケーキを食べていた習近平は、その時、持っていたスプーンを落としたという。
アメリカによるミサイル攻撃から逃れたISISの指導者アブバクル・バグダディも、2019年10月に掃討[16]。
熱狂的な「低支持率」
各種世論調査では一瞬他の候補に抜かれることはありつつも、共和党内ではほぼ常時トップの支持率を維持してきた。普通ならば一発アウトであるはずのこれらの過激な発言であるが、彼の支持率は落ちていない。実はこれにはトランプ大統領の支持層に理由があるのである。
トランプ大統領は就任当初から任期中、ずっと支持率は低かった。大統領就任当初の支持率は46%で歴代大統領の就任当初としては低支持率で、就任2ヶ月の2017年3月の支持率は36%と前任のオバマ大統領の任期中の最低支持率38%すら下回った。(ギャラップ世論調査)その後は失業率の低下や株式高騰など経済は好調になったが支持率は伸びず常に40%前後で不支持率が50%前後という状態が続き、大統領選挙前でも支持は伸びず、常に民主党のバイデン候補より低かった。
大統領在任中は政敵に対して口汚く罵る品の無さが目立ち、バイデン候補には『ゴミ溜めから拾われてきた』、下院議長のペロシ議長には『狂っている』、自分を批判したCNNには『三流の酷い放送局』と、到底アメリカ大統領が公式に言うとは思えない下品な中傷を名指しで行って来たのである。本来は激しい批判を受けて撤回して謝罪するものであるが、トランプ大統領は一度も謝罪することは無かった。
なぜならトランプ大統領は中西部から南部にかけての白人労働者層から熱狂的な支持を受けており、彼らの盤石な支持がトランプ大統領を支えているという構図が出来ているのである。彼らは白人のなかでは貧困層で、未だにアメリカ南部では黒人をはじめとする有色人種への差別がくすぶっている。トランプ大統領が黒人やヒスパニックなどの移民層を口汚く罵ることで、彼らは大喜びして支持するのである。トランプ大統領はこうした自分を支持する層を煽ることで盤石な支持が固まり、支持してくれる白人労働者層のために自分を批判する者に徹底的な中傷をするのである。このヘイトの共依存状態があることから、民主党や北部の白人層、黒人、ヒスパニックから忌み嫌われても数字上の支持は落ちない。そのため「あいつの支持者は貧乏人で低俗な人間」「トランプを支持する奴は人間として恥ずかしい」と言った誹謗中傷は、かえってトランプ支持者達の団結力を強めるだけの結果になってしまっている。そして南部の白人層や軍人・警察官などから支持を得てトランプ大統領は自信を深めるのである。(朝日新聞2019年11月3日アメリカ大統領選2020特集より抜粋)
こういう方法でトランプ大統領は自身の支持層を盤石なものにした。しかし、こういう敵を作ることで反動で支持を集める方法はひとつ間違えれば敵の怒りに本格的に火をつけるか、味方の支持層の不満が爆発するという取り返しのつかない事態に発展する非常に危険な支持の集め方である。現に敵の怒りを散々に煽ったトランプ大統領は支持層以外すべてを敵に回し、2期目の大統領選では自分が煽った炎に巻かれて炎上し、大統領選ではバイデンに敗れて大統領の座を失った。
政策
共和党に所属して大統領に就任したドナルド・トランプは数々の政策を推進している。その政策には、従来の共和党の路線から大きく離れたものと、従来の共和党の政策を引き継ぐものが存在する。
孤児の救済
孤児の生活環境を整える為に、予算を使う。現行の制度は、「MS-13」や「18th street gang」といったギャングに所属する様な不法移民に、数千億$の税金が支払われてしまっている。だから、こうした不法移民に悪用されている制度を改め、費用を捻出する[17]。
税負担の軽減
今の制度を改革し、税負担を軽減する。現在、申請さえすれば、所得税の支払い義務の無い人たち(生活困窮者など)が3000万人以上いる。そこで、申請に必要な手続きを、書類一枚で完了する様に、簡略化する。この政策を実現すると、1000$(約10万円)が簡単に手に入る。複雑で面倒なことをする手間が省ける[18]。
米軍の再建
ビル・クリントンからバラク・オバマまで続いていた米軍の弱体化に歯止めをかける為に、米軍の再建計画を発表[19]。
トランプ大統領は2019年12月に2020会計年度の国防予算の大枠を定める国防権限法に署名し、宇宙軍を発足させた。陸海空軍、海兵隊、沿岸警備隊に並ぶ6番目の軍となる[20] 。2019年2月、トランプ大統領は、中距離核戦力(INF)全廃条約について、ロシアのプーチン政権が条約に違反しているとして条約の破棄を通告、6ヶ月後の同年8月2日、条約が失効した[21]。
対北朝鮮
非核化、経済制裁、拉致などが議題になり体制の保証などで共同声明も出したが諸問題の進展はなかった。
新型コロナウイルス対策
- 2020年1月29日にCOVID-19対策本部を設置。専門家と各省庁の責任者、医療系企業のトップを集めた。ワクチンの早期開発、感染多発国からの入国禁止、国民に対する緊急経済支援策などを策定[22]。
- 2020年7月に、薬価引き下げにつながる大統領令を発令。コンウェイ顧問は、この発令を評価し、「トランプ氏は医療保険の大統領だ」と語った。[23]
- 2020年10月7日、トランプ大統領は、自らの治療で効果が確認された新型コロナウイルスの治療薬を、米国民全員に無料で提供する考えを示した[24]。
- サプライ・サイダー理論に基づき、国民の借金を肩代わりする経済政策を実施。民主党の反対を押し切って、アメリカ国民に対する2兆3000億ドルの支援法案を成立させ、国民の失業を抑制した[25]。
しかしこういった政策を掲げつつも、トランプ大統領の新型コロナウイルス対策への評価は低い。恐らく下記の発言等が原因と思われる。
- 新型コロナウイルスのパンデミックが最初に発生した中国河北省武漢市を理由に中国が発生させたウイルスであるとみなし、2020年5月に発生源を中国河北省武漢市にあるウイルス研究所であると断定した。
- トランプ政権の一方的な断定に基づく中国への追及に対し、中国政府側は猛反発して中国外務省の華報道官は「証拠があるのなら示して欲しい。それを出せないのはそもそも証拠がないからだ」と反論した。
- トランプ大統領側は「強力な報告書が来る」ポンぺオ国務長官は「多くの証拠がある」と再反論したのに対し、中国政府側は「発生源は科学的に研究されるべきであり、世界の著名な科学者がウイルスは自然界によるものだと説明している。研究所から漏れた証拠は何もない」と冷静な反論を行った。(朝日新聞2020年5月7日)しかし米中間の発生源を巡るやり取りは半年たった2020年11月現在、全くの平行線である。現に多くの証拠と報告書があると断じたトランプ大統領側は証拠を一切出せていない。
- トランプ氏はマスクが嫌いで、感染拡大初期にホワイトハウスにやって来た側近がマスクをつけているのに対し「そんなものは外せ」と要求した。その理由は見栄えが悪いからなのだとか(ブルームバーグ2020年11月2日)
- トランプ大統領はマスク着用をはじめとするWHOが提唱する新型コロナウイルスの感染防止策をことごとく却下し、アメリカ国内での新型コロナウイルス対策を怠り、感染防止策を示さなかった。2020年4月に大規模な感染拡大が発生し、5月に一旦は感染拡大が落ち着くが6月に入ると再びアメリカ国内で感染拡大が始まったときも公式の場でマスク着用を拒み続けた。そして2020年7月11日のワシントン米軍医療施設を訪問したときにトランプ氏がマスク姿で登場し、初めて公の場でマスクをつけた。(朝日新聞2020年7月13日)
- トランプ大統領はWHOの提唱した感染防止策どころか、医療機関の科学的な感染症対策にも当初から採用しなかった。2020年4月23日のホワイトハウスでの公式会見では、まず国家安全保障省の幹部が新型コロナウイルスが太陽光や漂白剤などの消毒薬で短時間で消失する実験結果を紹介した。直後にトランプ大統領が演壇に立ち「体に紫外線やとても強い光を当てたらどうなるのか、あるいは光を体内に持ち込めないか」と言い、「消毒薬は1分でウイルスをやっつける。体内に注入して同じことは出来ないか」と発言した。この発言は波紋を広げて全米中に一斉に拡散され、消毒液を注射すれば新型コロナウイルスが死ぬという誤解が一斉に広がり、「新型コロナウイルスに消毒液が効くのか」という質問がメリーランド州の保健当局だけで100件以上も入り、消毒薬メーカーは「どんな状況でも消毒液を飲んだり注入したりしないように」と注意を呼び掛けた。ジョージタウン大学のローレンス・ゴスチン教授は「人の命と健康にかかわることで、根拠のない主張を二度と宣伝するべきではない」と話した(朝日新聞2020年4月27日)
- トランプ大統領自身がフェイスブックに「子供は(新型コロナウイルスに)ほぼ免疫がある」と発言をした画像を投稿したが、2020年8月5日に運営により削除された。フェイスブックが削除したのはフォックス・ニュースのインタビューで「この病気に対して子供は殆どに免疫がある」と語った動画であるが、実際にはアメリカ国内でも子供の入院患者も死亡者も出ており、全く事実ではない。(朝日新聞2020年8月7日)
- WHO世界保健機関に対し、トランプ大統領はアメリカの脱退を表明、本当に脱退通知を出してしまった。トランプ大統領は脱退の理由に「WHOは中国に支配されている」と5月末に挙げて脱退を表明したが、WHOは1948年の設立以来、天然痘の撲滅に成功するなど大きな成果を上げており、現在はポリオ(小児まひ)を2020年現在、99%撲滅に成功しており撲滅まであと一歩のところに来ている。WHOの予算は加盟国の負担金で支えられているが、アメリカは全予算56億ドルのうち15%を拠出しており、2020年~2021年の予算も11%をアメリカに頼っている状態で、脱退となれば運営は大きな影響を受けて活動縮小せざるを得なくなる。最も懸念されているのがポリオワクチンの普及が鈍ることであり、国際的な感染症防止対策への取組も鈍ってしまうことになる。トランプ大統領のWHO脱退表明はアメリカ国内でも多くの批判があり、上記のワクチン普及問題や肝心の新型コロナウイルス対策が鈍ることを挙げてアメリカ医師会は「脱退はアメリカ人の健康を重大な危険にさらす」と警告、与党共和党のアレクサンダー上院議員も「WHOの誤りは検証が必要だが、危機の最中ではなく後にすべきだ。脱退がワクチン開発に必要な臨床試験の妨げになったり、他国との協力を困難にしたりする可能性がある」と声明を発表した。なおWHOの脱退は通知の1年後に正式脱退になるため、1年以内に再加盟をすることが出来る。民主党の大統領候補であるジョー・バイデン氏は2020年7月7日、「アメリカが世界の健康増進に関わってこそ、アメリカ人はより安全になれる」とツイッターに投稿し、大統領に当選すれば就任当初に再加盟することを表明した。2020年11月のアメリカ大統領選はバイデン氏がトランプ氏を破って当選が確定し、大統領就任後のWHO再加盟が期待されている。(朝日新聞2020年7月7日)
- トランプ大統領は2020年1月の中国河北省武漢市での新型コロナウイルス感染爆発以来、新型コロナウイルスの発生源となった中国を徹底的に批判し、新型コロナウイルスの世界的感染拡大の原因を中国のせいだとして中国への賠償請求などを公言したり、新型コロナウイルスを中国が作成した人工ウイルスなどと中傷を浴びせるなど中国に対して容赦ない攻撃を行い、アメリカ国内の感染爆発の責任を中国に押し付けていた。しかし2020年10月2日、トランプ大統領自身が新型コロナウイルスに陽性を示して感染してしまう。すると中国国内は大爆笑、中国版ツイッターの微博(ウェイボー)ではトランプ大統領に対し「なぜだか分からないが、私の周囲の人全員が大爆笑している」「トランプ大統領先生、頑張れ!」と皮肉が埋め尽くし、すっかり笑い者になってしまった。(レコードチャイナ2020年10月2日)
- トランプ大統領の新型コロナウイルス感染の報道は瞬く間に世界中に広がり、多くの国々から回復を願う声明が発表された。自身も新型コロナウイルスに感染して集中治療室に入ったイギリスのジョンソン首相は「早く良くなることを願う」とツイートし、WHOのテドロス事務局長も短文の回復を願う声明を出した。しかし中国共産党機関紙で人民日報系の環球時報の胡錫進編集長は10月2日にツイッターに投稿し、「トランプ氏は新型コロナウイルスがアメリカに与える影響を軽視してきた。その代償を支払うことになった」と痛烈に批判した。(東京新聞2020年10月3日)実際に中国では2020年の中国河北省武漢市から重慶市での感染爆発後は徹底的な患者の治療とPCR検査で感染者の隔離を行った結果、2020年4月以降は新規感染者はほぼ抑えられて感染者数は9万人以下で感染拡大防止に成功しているのに対し、アメリカは2020年 11月9日で感染者数は1000万人を突破して現在も急速に感染拡大が進んでいる。(あの中国のことだから感染者を隠蔽している可能性も否定できないが)(ジョンズ・ホプキンス大学発表)
保護貿易
環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)からの離脱を就任直後に表明した。北米自由貿易協定(NAFTA)についても就任直後から見直しをすることを表明し、2018年末にNAFTA見直しに成功した。
2016年の選挙戦の際に「中国製品に対して関税を掛ける」と公約していて、その公約通りに中国からの輸入品に対して高率の関税を掛けた。
従来の共和党政権は、自由貿易と関税撤廃を旗印に掲げていた。NAFTAを導入するように交渉したのは、1990年代初頭のブッシュ(父)共和党政権である。NAFTAが発効してから、メキシコを通じて世界中から安価な外国製品が流入し、アメリカの製造業が大打撃を受け、五大湖周辺の工業地帯がラストベルト(錆び付いた一帯)になってしまった。
トランプは、「ラストベルトの廃れた工場を見てショックを受けた」と2016年選挙戦のときに語っており、自由貿易を敵視する姿勢を崩していない。
また、トヨタ自動車やアップルなどといった製造業企業に対して「アメリカ合衆国に工場を建てろ」と強く要求し、労働者の雇用維持に懸命である。
自由貿易を敵視して保護主義と関税の維持を主張し、低価格の外国製品を排除して、労働者の雇用を維持しようとするのは、1980年代までの民主党が主張してきた政策といえる。トランプ大統領は、共和党のなかでは、明らかに異端の存在といえる。
自国産業を保護しようという姿勢は日本の政治家も見習うべきである。
壁の建設
メキシコ国境沿いに総延長450マイル(724km)の壁を建設するというもので(画像)、トランプ政権の2016年大統領選での公約の目玉となっている。2019年時点では、既存構造物の置き換えも含めて93マイル(150km)が完成したという[26]。
本来なら、壁を建設するに当たって上院と下院の両院の決議を得て予算を付けてもらうべきなのだが、2018年11月の中間選挙で民主党が下院の多数派になったため、議会の支援を得るのが難しくなった。このため、トランプ大統領は、メキシコとの国境に不法移民が押し寄せているとして、2019年2月に国家非常事態宣言を発令した[27]。これにより、軍隊の予算をメキシコ国境との壁建設に転用できるようになり、2019年8月には軍予算を転用した[28]。
歴代共和党政権は、不法移民に対して厳しい態度をとる傾向があったが、国境沿いに壁を建設しようという発想を持っていなかった。壁を建てるのは、トランプ大統領独自の発想である。
ドナルド・トランプは、廃れたホテルを安価で買い取って、そのホテルでイベントを開いて、ホテルの集客力を高めて、それで利益を出すという商売を長年続けてきた。そういう商売は、治安の悪化が最大の敵であり、治安が悪くなったら商売あがったりとなる。治安の悪化を恐れる心理は、共和党の職業政治家たちよりもずっと強いといえる。
万国郵便連合
トランプ政権は万国郵便連合(UPU)からの脱退をちらつかせることで、中国などからの郵便料金が格安となっている現行制度の改革を主張していた。2019年9月に開かれた臨時総会において、中国を含む途上国からの小型郵便料金の値上げ、2021年から5年間各国が独自に料金を設定できる制度の導入で合意したため、アメリカの脱退は回避された[29]。
中東和平
アメリカ合衆国ではシェールオイルの開発が進んでいて、石油産出量がどんどん増えている。2019年11月には、アメリカ合衆国が70年振りに石油の純輸出国になったと発表された。
そのおかげで、中東の石油産出国に媚を売らずに済むようになり、石油産出国たちが嫌がる政策をゴリ押しすることができるようになった。そういう政策の筆頭は、イスラエルへの支援である。イスラエルが首都をエルサレムに移転することを承認したり、イスラエルがパレスチナ自治区に対して強い態度に出ることを承認した。 第二次世界大戦以降から続いてたイスラエルと中東諸国との対立関係を、和平へと導いた。トランプ大統領は、イスラエルからの技術供与による利益とイランによる脅威の軽減といったメリットを提示する事で、平和協定を締結。経済関係の正常化を実現させた[30]。
従来の共和党政権の傾向を引き継ぐ政策
米国第一主義
大統領就任演説では、アメリカの国益を最優先する「米国第一主義(アメリカファースト)」の政策を推進すると強調した。
もともと共和党政権は国際協調を嫌って米国の単独行動を好む傾向がある。2003年のブッシュ(息子)政権のイラク戦争、2005年のブッシュ(息子)政権の京都議定書脱退が典型例である。
パリ協定の離脱
パリ協定は、地球温暖化を阻止するという名目で、世界各国が拠出金を出し合って、発展途上国を支援する国連気候変動枠組条約である。しかし、この途上国には、北朝鮮やイランだけでは無く、中国も含まれている。つまり、アメリカが拠出している30億ドルが中国に渡る条約である。この条約に基づき、アメリカはCO2排出量を50億tまで削減した。だが、中国は、パリ協定上、途上国なのでCO2排出量を94億tまで増加させている。トランプ大統領は、パリ協定をアンフェアな条約と判断した[31]
2019年11月には地球温暖化対策の枠組みである「パリ協定」からの離脱を正式に通告した。翌年11月に離脱が完了する[32]。
イランに対する対決姿勢を強める
民主党のオバマ政権はイランとの核合意を結び、イランに対して宥和の姿勢を取っていた。それに対し、共和党のトランプ政権は核合意から離脱し、イランに対する経済制裁を復活させている。
イランは、サウジアラビアの宿敵なのだが、サウジアラビアは伝統的にアメリカ合衆国と蜜月の関係にある。特に、共和党政権だとサウジアラビアとの友好関係が深まる。サウジアラビアを強く支援するのは共和党伝統の外交姿勢である。
イランは、サウジアラビアの隣国イエメンの反政府勢力フーシ派に対して資金援助をしていると見られている。そのフーシ派がイエメン領内からサウジアラビアの空港に向けてロケット攻撃したこともある。イランに経済制裁を科すことで、イエメンの反政府勢力を弱体化させることができ、サウジアラビアを助けることができる。
人種差別主義者
トランプ大統領は大統領就任前から人種差別主義者という批判があり、実際に大統領就任式では20人余りの民主党議員が出席を拒否し、アメリカ国民の間でもトランプ大統領を『人種差別主義者でありファシスト、偏狭だ』といった声明を発して13万人が非難署名を出すなど、異例の事態となった。
トランプ大統領は遡れば1970年代で既に黒人への人種差別で問題を起こしていた。もっともこの時代はアメリカでは公民権運動によって白人と黒人の人種間差別の法律が廃止されて法の下の平等が社会的に認められて間もない時代で、実際にモハメッド・アリやブルース・リーといった有色人種のヒーローたちも人種差別が根強く残る社会に苦しんでいた時代背景はある。しかし1980年代に入るとマイク・タイソンやマイケル・ジャクソンなど黒人のヒーローがアメリカで持てはやされて黒人をはじめとした有色人種は勇気づけられ、白人は有色人種への差別を恥ずかしいことだと認識するようになり、時代は変わって行った。しかし、トランプ大統領は以下の経緯により依然として白人至上主義で有色人への差別を続けてきていたようである。
KKK(クー・クラックス・クラン)が絶賛
2017年8月12日、バージニア州シャーロッツビルで白人至上主義者の極右団体の集会が行われ、それに抗議した地元の市民団体と衝突が発生、小競り合いから乱闘騒ぎに発展し、極右団体の白人の一人が自動車で市民団体に突っ込んで数人を轢き、一人の女性が死亡する大惨事となった。
この事件に対してトランプ大統領は白人至上主義者に対する明白な非難をしようとせず『極右団体と極左団体の抗争であり、双方に問題がある』として白人至上主義に対する批判を避けるような声明を出した。トランプタワーで行われた記者会見では白人至上主義者の極右団体への批判をしない態度に記者たちが質問すると『だったら極右に向かって言った極左はどうなんだ?あいつらに罪悪感はあるのか?棍棒を持って向かって来たのはどうなんだ?!』と声に荒げて報道記者たちに怒鳴ったために記者会見の場は騒然となり、険悪なムードが漂う事態が起きた。
この記者会見は全米をはじめ海外メディアでも放送され、アメリカでは非合法極右テロ組織と指定されているKKK(クー・クラックス・クラン)の元指導者デイビット・デュークは声明を発表、『トランプ大統領ありがとう。あなたの勇気ある発言でBLM(黒人人権保護団体)とアンティファ(反ファシズム団体)という極左のテロを非難してくれたことに感謝します』とトランプ大統領を絶賛した。(BBCニュース日本語版 2017年8月16日)
便所のような国々
2018年1月11日、ホワイトハウスで行われた議会で民主党議員が移民問題について質問し、ハイチ人住民のことに触れた際、トランプ大統領は『なぜハイチ人がもっと必要なのだ?追い出せ!』と言い、続いてハイチをはじめとする中南米、アフリカ諸国を『屋外便所のような国々だ』と表現した。
この発言は世界中に報道され、エルサルバドルとボツワナの両政府は外務省がアメリカ大使館に出向いて抗議し、発言の真意を求めて追及する国際問題に発展し、AU(アフリカ諸国連合)の報道担当者は『率直に言って驚いている。多くのアフリカ人がアメリカに奴隷として売られてやって来た歴史的事実を見ても、この発言は許容されてきた振る舞いや行動に真っ向から対立するものだ』と激しく非難した。
トランプ大統領は発言が騒ぎになっていることから『私の発言はきつかったが、この言葉ではなかった』などと弁明したが、国連人権高等弁務官事務所のコルビル報道官は『申し訳ないがトランプ大統領は人種差別主義者としか言いようがない。人種差別や外国人嫌悪に正当性を与えてそそのかすことは、人間が抱える最悪の側面へのドアを開くものだ』と極めて強い非難を行った。(朝日新聞2018年1月13日)
キング牧師記念日にゴルフ
アメリカの1月15日はキング牧師記念日として祝日になっており、各地でキング牧師や公民権運動のイベントや集会が行われ、人種差別問題を考えるアメリカ国民の大切な日になっている。この日には歴代大統領は奉仕活動を行うことがレーガン大統領時代から続けられている。
2018年1月15日のキング牧師記念日はトランプ大統領はビデオ演説で『キング牧師の夢はアメリカの夢だ』と声明を発表したが、歴代大統領がやって来た奉仕活動を行わずに朝からゴルフ場に一番乗りしてゴルフを楽しんだ。この年はキング牧師が暗殺されて50年という節目の年であるにもかかわらずトランプ大統領が奉仕活動をサボったことで全米各地で批判が巻き起こった。先週にはトランプ大統領は便所のような国々発言で全米を巻き込んで人種差別主義者という非難の声が広がっており、トランプ大統領は前日の14日に記者会見で報道陣に『私は人種差別主義者ではない!』と発言した翌日のことである。(朝日新聞2018年1月16日)
元いた国に帰ってはどうか
2019年7月14日、トランプ大統領はツイッターで自身の移民政策を批判する有色人種の下院女性議員4人を念頭に『元いた国に帰ってはどうか?』とツイートした。
対象の下院女性議員はプエルトリコ系のオカシオコルテス氏、ソマリア系のオマール氏、パレスチナ系のトレイブ氏、アフリカ系のプレスリー氏で、いずれも民主党議員であり、トランプ大統領の白人至上主義と排外主義を批判していた。トランプ氏はこの4人に対してツイッターで『もともといた国に帰り、完全に壊れた犯罪まみれの国を立て直すのを手伝ったらどうか』と主張した。オマール氏はアメリカに亡命した元ソマリア難民で、他3名はアメリカ生まれである。
トランプ大統領の発言はメディアや民主党の猛反発を招き、民主党のペロシ下院議長は『トランプ氏のアメリカを再び偉大にすると言う政策は、アメリカを再び白人の国にすることだ』と激しく非難し、共和党議員からも『発言は不適切だ』と非難が出た。
アメリカ下院ではトランプ氏の発言を人種差別発言とする非難決議が取りまとめられ、決議では
『新たなアメリカ国民や有色人種に対する恐れや憎しみにお墨付きを与え、拡散させたトランプ大統領の人種差別的な発言を強く非難する』
『暴力や圧政から合法的に避難や亡命を求める人々に対し、アメリカは開かれ続けるよう約束する』
と明記したトランプ大統領への非難決議が採択され、賛成240票、反対187票で決議は可決した。なお一部の共和党議員や独立系議員が賛成に回っている。(朝日新聞2019年7月18日)
白人至上主義『素晴らしい』
2020年6月28日、トランプ大統領は白人男性が『ホワイトパワー!!』と絶叫する動画が載っているツイートに対し、『素晴らしい人たち、ありがとう!』というコメントをつけてツイッターに投稿した。『ホワイトパワー』とは白人至上主義の極右団体がよく掲げるスローガンである。
動画が撮影されたのはトランプ支持者が多いフロリダ州の退職者コミュニティーであるザ・ビレッジス。トランプ支持者の白人たちがゴルフカートに乗ってトランプ支持を掲げて行進しているところに市民団体が抗議に来て、人種差別主義者と批判の声をあげたのに対し、ゴルフカートに乗った男性が拳を挙げて『ホワイトパワー!!』と2回叫んでいるシーンが動画になっている。トランプ大統領はこの動画に『ザ・ビレッジズの素晴らしい人たち、ありがとう。極左の民主党は秋にはダメになる。』とコメントをつけて投稿した。
ホワイトパワーはアメリカでは有名な人種差別発言であることから投稿直後から非難が殺到する大騒ぎになり、共和党の黒人上院議員ティム・スコット氏はCNNの取材に答え『間違いなく投稿すべきではなかったし、削除すべきだ。弁明の余地はない』と厳しく非難した。まもなくトランプ大統領はツイートを削除し『あの動画は発言が聞こえなかった』とホワイトハウスの報道官を通じて釈明した。もちろんこんな言い訳は通用することなく、トランプ大統領への不信をより強める結果になった(朝日新聞2020年6月29日)
発言録
After Secretary Clinton`s failed intervention in Libya,Islamic terrorists in Benghazi took down our consulate and killed our ambassador and three brave Americans.
クリントン長官がリビア介入に失敗した後、アメリカ大使館をイスラム・テロリストが破壊し、アメリカ大使と三人の勇敢なアメリカ人を殺害した。
Then, instead of taking charge that night, Hillary Clinton decided to go home and sleep!Incredible.
しかし、(アメリカ大使がテロリストに襲われている)その夜、ヒラリー・クリントンは、(何も手を打たずに)家に帰って寝ることを決定したのです! 信じられません。
she was not awake to take that call at 3 o’clock in the morning.
お前はクビだ!
Donald J. Trump is calling for a total and complete shutdown of Muslims entering the United States until our country's representatives can figure out what is going on.
I will build a great, great wall on our southern border, and I will have Mexico pay for that wall.
We cannot afford to be so politically correct anymore.
我々はもうポリティカル・コレクトネスに構っている余裕はない。
I think the big problem this country has is being politically correct.
この国の大きな問題は、ポリティカル・コレクトネスだと思う。
They have put political correctness above common sense above your safety and above and all else.
彼らは常識よりも、あなたの安全よりも、他の全てのことよりもポリティカル・コレクトネスを上に置いている。
I refuse to be politically correct.
私はポリティカル・コレクトネスを拒絶する。
Twitterでの政敵攻撃
ドナルド・トランプは大統領に就任した後もTwitterに張り付いており、連日、ツイートをしている。そうしたツイートの中には、政敵にあだ名を付けておちょくるものが多い。英語版Wikipediaで記事が作られている。
ヒラリー・クリントンに付けたあだ名。crookはねじ曲げるという意味。ヒラリーの名字がClintonなので、それと同じ頭文字のCrookedを選んだのだろう。
ジョー・バイデンに付けたあだ名。ジョー・バイデンは女性に対してセクハラに近い感じの行動をする悪癖があり、女性たちから「セクハラだ」と非難されたことがある。それを聞きつけたトランプはSleepyCreepy Joe(寝ぼけている上に身の毛がよだつほど気持ちが悪いジョー)とのあだ名を与えた。creepはカタツムリやナメクジが這い回る、すり寄る、という意味。
バーニー・サンダースに付けたあだ名。
ちなみに、アメリカの有名なマフィアにクレージー・ジョー(Crazy Joe)というのがいて、映画や音楽の題材になっている。「Sleepy Joe」「Crazy Bernie」とトランプがツイートするときに「Crazy Joe」を連想するアメリカ人は多いはずである。
エリザベス・ウォーレンに付けたあだ名。ウォーレンは「先祖に先住民族がいる」と語ったことがあり、それをトランプは「先住民族の血を引いていると主張して、『有色人種にも優しい自分』をアピールしている」と批判して、ポカホンタスというあだ名を付けた。ちなみにポカホンタスは、アメリカ合衆国において、先住民族の姫様のようなものとして扱われ、映画などの題材にもなっている。蔑称という感じの言葉ではない。
ピート・ブティジェッジに付けたあだ名。似ているから付けたのだろう。ピートはサラッと流している(動画)。
マイケル・ブルームバーグ に付けたあだ名。「小型集音器」という意味と、「小柄なマイク(マイケルの愛称)」の2つの意味がある。マイケル・ブルームバーグは身長173cmで、ドナルド・トランプは身長190cm。
マイケル・ブルームバーグは共和党に所属したり共和党から支持されたりしつつ、2002年から2013年までニューヨーク市長を12年間務めた。ドナルド・トランプとは知り合いで、一緒にゴルフをする写真も多い。2020年大統領選挙に民主党から立候補するので、Twitterであだ名を付けられた。
ジェブ・ブッシュに付けたあだ名。ジェブは2016年大統領選挙で共和党から立候補し、ドナルドと首位を争っていた。ジェブはフロリダ州知事を務めて経験があり、政策通で知性があるのだが、顔つきを見てもわかるようにちょっと迫力が欠けるタイプの政治家だった。そのためこう呼ばれた。ちなみに、ジェブ・ブッシュは名門ブッシュ家の一員で、ブッシュ家は石油企業(エネルギー産業)との関係が深い。
民主党を露骨に支持し、トランプ政権の長所を報道しようとしない大手メディアに付けたあだ名。Fake News Media(フェイクニュースメディア)とも言う。
ミサイル実験を繰り返していたときの北朝鮮最高指導者・金正恩に付けたあだ名。
脱税疑惑
トランプ大統領をはじめとする一家は家族ぐるみでの脱税疑惑が巻き起こっている。
両親からの不正贈与
2018年10月2日、ニューヨーク・タイムズはトランプ大統領がニューヨークで不動産業を営んでいた両親から資産を受け継ぐ際、家族ぐるみで不透明な手続きを取り、現在の価値で少なくとも4億1300万ドル、日本円にして約470億円を得たとして脱税の可能性を指摘した。
ニューヨーク・タイムズはトランプ一族の納税申告書や財務記録を独自調査し、それによると1代にして不動産業で巨万の富を得た父フレッド・トランプ氏が資産を息子のドナルド・トランプ氏に与え始めた結果、トランプ氏の年収は3歳で20万ドル、以後は学生時代に年収100万ドル、40代以降は年収500万ドルと増えて行った。大統領選前から不動産王と呼ばれたトランプ氏は「父から金を少し借りて自力で財を成した」と主張してきたが、報道事実とは異なることになる。
ニューヨーク・タイムズの調べではドナルド・トランプ氏は兄弟と結託してダミー会社を作って父からの贈与を誤魔化し、両親の不動産価値も低く見積もって脱税に関与。最終的に税率にして55%、金額にして5億ドルが課税されるはずが、実際には5220万ドルしか納付しなかったといわれている。
これは既に刑事事件としては時効であるが民事制裁金を科される可能性があり、実際にニューヨーク税務当局が事実関係の調査に乗り出した。なおトランプ氏は「ニューヨーク・タイムズの調査および報道は全くの間違いで、間違いなく名誉棄損に当たる」と全面的に否定している。(朝日新聞2018年10月3日)
トランプ氏の脱税スキャンダル
2020年9月27日、ニューヨーク・タイムズはトランプ大統領の脱税スキャンダルをスクープで報じた。
- ドナルド・トランプ氏は過去18年間にわたり9500万ドルを納税したが、その後に企業損益を理由に7210万ドルの還付を受けた。州税、市税でも同様に2100万ドルの還付を受けている。所得税還付金7210万ドルについては疑わしき方策によって還付を受けた可能性があるとして内国歳入庁(以下IRS)の監査対象になっており、結果次第では莫大な罰金を科せられる可能性がある。
- ドナルド・トランプ氏は2016年、2017年の両年は連邦所得税を750ドルしか納税していない。
- 過去15年のうち10年は損失が収益を上回ったとして所得税を全く納めなかった。
- 一方でドナルド・トランプ氏は豪華絢爛な生活のために自家用旅客機、数多くの別邸、ゴルフ場を次々に購入したが、購入費や維持費を経費として税処理をしてきた。
- ドナルド・トランプ氏は2000年以来、複数のゴルフ場経営で3億1500万ドルの損失を計上したほか、大統領就任後に新設オープンしたばかりの首都ワシントンのトランプ・インターナショナル・ホテルの経営でも5500万ドルの損失を申告した。
この内2017年の納税記録は米下院歳入委員会により公開され事実であったことが確認されている。
納税記録の公開拒否
アメリカでは大統領や大統領候補は、過去の納税記録を公表するのが慣例になっている(義務ではない)。しかしトランプ大統領は歴代大統領や大統領候補がやってきた納税記録の公開をしていない。大統領就任直後にはトランプ氏は「国民はもう関心がない」などと主張した。
アメリカ国内の主要メディアはトランプ大統領が脱税行為や外国企業との不適切な繋がりを隠そうとしている可能性を指摘しており、民主党は「大統領は法案に署名して法律にできる唯一の人物。アメリカ国民は大統領の決定が個人の利益に関連していないか知る権利がある」として公開を迫った。そして2019年4月3日、アメリカ議会下院歳入委員会のニール委員長(民主党)は内国歳入庁(IRS)にトランプ大統領の2013年以降の6年分の納税記録の提出を要請した(朝日新聞2019年4月4日)
しかし2019年5月6日、ムニューシンアメリカ財務長官は下院から求められていたトランプ大統領の過去6年分の納税記録の提出を拒否した。下院の過半数を占めている民主党はトランプ大統領の疑惑への追及を強めた。提出が拒否された理由は内国歳入庁(IRS)の監査中であるためという従来のトランプ大統領の拒否理由と同じであったが、トランプ大統領は監査後も納税記録の公開は拒否する意向を示した。民主党は法廷闘争も辞さない構えで、ニール氏は「法律顧問と相談して今後の対応を決める」としている(朝日新聞2019年5月7日)
ジョー・バイデンへと大統領が交代しトランプの圧力が消えたことから進展、2022年米下院歳入委員会は2015年から2020年までの納税記録を公開した。
事業の事業の損失を理由に2017年は750ドル、2020年の支払いはゼロであった。
家族
祖父フレデリック
祖父のフレデリックはドイツ西部のカルシュタット出身で、生まれた時の名前はドイツ風のフリードリッヒである。1885年にアメリカ東海岸のニューヨークに移住し、理容師として6年働く。
その後、西海岸のシアトルに移住し、ホテルの経営で金を稼いだ。その後、鉱山都市モンテクリストへ移ってそこで鉱山労働者向けのホテルを経営してお金を稼ぎ、そしてシアトルに戻ってレストランを経営しまた儲け、そしてカナダのベネットやホワイトホースで鉱山労働者向けのホテルとレストランを経営した。こうして、フレデリックは裕福になった。
豊かになったフレデリックはドイツに戻りエリザベスという女性と結婚して、またアメリカのニューヨークに渡って理髪店とホテルとレストランの経営をした。仕事は順調だったが、妻のエリザベスがホームシックにかかり、仕方なくドイツに戻ったが、ドイツ政府から「兵役忌避をしており、国外追放に値する人物」と扱われてしまい、またニューヨークに渡った。
ニューヨークに渡ってから、フレッドとジョンという2人の息子が生まれた。
1918年に49歳の若さで他界した。当時世界的に大流行していたスペイン風邪が原因だった。
父フレッド
フレッドは、フレデリックの作った資産を受け継ぎ、ニューヨークの不動産会社の経営者として長く活躍した。低所得者向けに、手頃な値段のアパート・共同住宅を販売することを得意としていた。
フレッドは1909年生まれなのだが、1914年に第一次世界大戦が起こってアメリカとドイツが戦争し、1939年に第二次世界大戦が起こってアメリカとドイツがまた戦争した。ニューヨークはドイツを憎むユダヤ系住民が多いので、ドイツ系だとばれるとマズいと思い、「自分の家系はスウェーデン出身」と偽ることが多かったという。
「白人に部屋を貸すが黒人には部屋を貸さない差別主義者だ」と黒人に告発されたことがある。
奥さんのマリーはスコットランドからの貧乏な移民で、メイドとして家内労働をこなす人だった。貴族でもないし金持ちでもなかった。フレッドとマリーの間には3人の息子と2人の娘が生まれており、長女マリアンは裁判官、次男のドナルドはアメリカ合衆国大統領、次女のエリザベスは銀行の重役の秘書、三男のロバートは一族の財産管理を担当している。
1999年に93歳で他界した。画像検索すると、次男のドナルドとの写真が見つかる。
兄フレッド・トランプ・Jr
ドナルド・トランプの兄はフレッド・トランプ・Jrという。1938年生まれで、ドナルドよりも8歳年上である。この記事の画像の中央に立っている(右から2番目がドナルド)。
ニューヨークのセントポールズ高校に通い、ペンシルヴェニア州の名門私立大学であるリーハイ大学へ進んだ。口調が優しく、冗談を好み、楽天的な性格で、服装はいつもきちんとして礼儀正しく、背が高くてハンサムなので、リーハイ大学では人気者となっており、様々な友好団体から誘いを受けたほどだった。リーハイ大学時代の友人は、「フレッドジュニアが過度に酒を飲んでいることを見たことがない」と語っている。
リーハイ大学時代は、シボレー・コルベットの新車を毎年のように乗り回していた。要するに、典型的な「お金持ちの家からやってきた裕福な坊ちゃん」といった存在だった。
1960年にリーハイ大学を卒業した。1962年にはリンダ・リー・クラップ(Linda Lee Clapp)という航空機の客室乗務員と結婚した。このころから航空機のパイロットを志望するようになった。TWA(トランス・ワールド航空)のパイロットになりたいと思い、1964年に、厳しい試験に合格してTWAの航空学校に入学した。
しかし、フレッドジュニアは長男なので、家業を継ぐことを父親や弟のドナルドから期待されていた。ドナルドは「時間の無駄だ、さっさと家業に戻れ」と厳しく非難し、父フレッドは「航空機パイロットなんてものは、空のお抱え運転手にすぎない」とまで言って叱責した。
2人からの圧力を受け続けたので、フレッドジュニアは酒に溺れてしまい、アルコール依存症になった。航空学校の同窓生3人が、「航空学校時代のフレッドジュニアは、酒に溺れる兆候を示していた」と証言している。
フレッドジュニアは、TWAに入社することができたが、飲酒癖が身に染みついてしまっており、入社して1年で解雇されてしまった。
家業の不動車産業に参加したが、アルコール依存症のため健康がどんどん悪化していき、1981年9月26日に42歳でアルコール中毒の合併症で亡くなった。
ドナルドはこのことを非常に後悔していて、「自分と父が兄を追い詰めてしまった」と語っている。ドナルドが決して酒を飲まず、コーラばかり飲むのは、このことが原因とされる[33]。
最初の妻イヴァナ
ドナルドは1946年に生まれ、1968年に大学を卒業し、すぐ父親の経営する不動産企業に入った。1977年、31歳の時に、チェコスロバキア出身のモデルのイヴァナと結婚した。
イヴァナはチェコスロバキアにいたときはスキーの選手だった。ドナルドと結婚してからはトランプ家の家業の不動産業に参画し、なかなかの経営手腕を発揮している。
1990年にドナルドが浮気をしたので1992年に離婚。巨額の慰謝料を受け取った後は、芸能活動をしたり、自分の名前を冠した家具や宝石を売り出したりして、またしても成功を収める。
長男のドナルド・トランプ・Jr、娘のイヴァンカ、次男のエリックを1977年~1984年の間に出産した。彼ら3人は、多忙な両親にかわってイヴァナの両親が子育てをしていた。イヴァナの両親の影響もあり、皆、チェコ語が上手である。
ドナルド・トランプ・Jrとエリックは、トランプ家の家業を継いで不動産経営をしている。また、2人とも結婚して子宝に恵まれている。基本的に、アメリカ政府には関わっていない。たまに父親の支持者の集会に出て演説する(動画1、動画2)。
イヴァンカは、大学を優秀な成績で卒業した後に家業に参画したり、それらと平行してモデル業をやったり、大統領補佐官としてトランプ政権の一員に加わったりと忙しい。ユダヤ人の秀才ジャレッド・クシュナーと結婚して、3人の子どもを産んでいる。
ジャレッド・クシュナーは、2016年11月頃の政権移行期に、ロシアの高官と会っており、ロシア疑惑を招いたことで有名である。
イヴァンカとジャレッド・クシュナーは、2人揃ってアメリカ政府の中枢に近いところで働き、ドナルド・トランプ大統領を支える役目を果たしている。
2番目の妻マーラ
マーラはアメリカ生まれの女優で、1993年にドナルドと結婚した。1999年には離婚してしまった。
1993年に娘のティファニーを出産した。ティファニーは父親と同じ名門ペンシルヴェニア大学に通い、卒業した。大学在学中から音楽を発表したりモデル活動をしたりしている。
3番目の妻メラニア
3番目の妻メラニアは、旧ユーゴスラビア(現在のスロヴェニア)出身。1970年にノヴォ・メストの中流家庭に生まれ、モデルとして活動し、1996年にアメリカに渡ってモデルの仕事を続けた。
2005年にドナルド・トランプと結婚したが、その結婚式の主賓はビル・クリントンとヒラリー・クリントン夫妻だった。
2006年に長男のバロンを出産した。夫は2017年1月にアメリカ合衆国大統領に就任したが、メラニア夫人は息子の教育のため、ワシントンD.C.のホワイトハウスに引っ越さず、そこから330km離れたニューヨークのトランプタワーに住み続けていた。6月になって息子の学校の学期が終わったので(欧米は9月~翌年6月の学期が多い)、2017年6月になってやっとホワイトハウスに引っ越した。
バロンはサッカー好きで、ワシントンD.C.のクラブに所属するウェイン・ルーニーと会うなどしている。
ドナルド・トランプのしつけ
ドナルド・トランプは子どもに対するしつけをしっかり行うことができる人物とみられている。
2016年10月の大統領選挙で、ドナルド・トランプとヒラリー・クリントンのテレビ討論会が行われた。その締めくくりで聴衆から「ドナルド・トランプの尊敬できる点を挙げてみてくれませんか」と言われたヒラリーは、「私は彼の子供たちを尊敬します 彼の子供たちは素晴らしく熱意にあふれ それはドナルドの人柄を映していると思います」(この動画の20分14秒頃)と答えている。
日本人ながらアメリカ投資銀行に勤めていた山口正洋は、1980年代の後半にドナルド・トランプと会っている。彼はドナルドのことを緻密で優秀なビジネスマンと褒めているのだが、それと同時にドナルドの子供も褒めている。
長女のイヴァンカ・トランプ氏の評価の高さも、トランプ氏の賢さを象徴しているように思われる。私は仕事柄、アメリカの大富豪と呼ばれる人たちの2世たちにもたくさん会ってきたが、そのほとんどが、甘やかされたどうしようもないワガママ息子・娘ばかりだった。しかしトランプ氏の娘はそれには当てはまらず、聡明でしっかりした女性という印象を受けた。父親としてのトランプ氏は、子弟をかなり厳しく教育しているようで、それが娘の性格や立ち居振る舞いに表れていたように感じていた。 ※PRESIDENT Online 2016年7月20日
某手術ゲームに関して
海外製の手術ゲーム「Surgeon_Simulator」のアップデートである「Anniversary Edition」において、彼そっくりのキャラクターの手術が出来るようになったが全くの別人である。ゲーム内に出てくる彼は
など、手術一つにお金がかかっているが、実在するトランプ氏とはあくまでも全くの別人である。
ただ、このトランプ氏に似たキャラの手術は、リリース後わずか半日ほどで2万3000件のうち1万7000件の失敗が発生した模様。本当の失敗なのか、それとも・・・ [34]
2020年大統領選挙
2期目を目指す2020年の大統領選挙で民主党のジョー・バイデンと争い落選。
トランプは選挙の敗北を認めずその姿勢は一部の支持者によるアメリカ合衆国議会議事堂占拠事件へとつながった。
関連動画
関連静画
コラ
関連リンク
関連項目
- アメリカ合衆国
- アメリカ合衆国大統領
- 共和党(アメリカ)
- 問題発言
- 陰謀論
- ヒラリー・クリントン(2016年アメリカ大統領選挙で競争相手となった、民主党の大統領指名候補)
- ビンス・マクマホン(「You're fired」のオリジナル。2007年にWWEで抗争)
- ジョー・バイデン(2020年アメリカ大統領選挙で競争相手となった、民主党の大統領指名候補)
- 2020年アメリカ合衆国大統領選挙不正投票疑惑
- アメリカ合衆国議会議事堂占拠事件
- ポピュリズム
- 政治家の一覧
- デカグース
- Qanon
- Jアノン
- ファクトチェック
- Truth Social
第44代 | 第45代 | 第46代 |
バラク・オバマ(民主党) 2009~2017 |
ドナルド・トランプ(共和党) 2017~2021 |
ジョー・バイデン(民主党) 2021~ |
脚注
- *トランプ大統領とアメリカの真実(著者)副島隆彦(出版)日本文芸社 P114〜118
- *トランプ大統領とアメリカの真実(著者)副島隆彦(出版)日本文芸社 P124
- *トランプ大統領とアメリカの真実(著者)副島隆彦(出版)日本文芸社 P126〜127
- *トランプ大統領とアメリカの真実(著者)副島隆彦(出版)日本文芸社 P128
- *トランプ大統領とアメリカの真実(著者)副島隆彦(出版)日本文芸社 P127 、P152
- *COURRiER Japon2020年7月20日【世界を見渡すニュース・ペリスコープ】 ド派手なリーダーの”裏”の顔─トランプは「大統領としての給料」を全額寄付していた!
- *日本人の知らないトランプのアメリカ(著者)日高義樹(出版社)海竜社 P131
- *トランプは再選する!日本とアメリカの未来(著者)ケント・ギルバート(出版)宝島社 P31〜33
- *Issue&Insights 2020年9月15日 It’s Official: Trump Unleashed A Middle-Class Boom That Benefited Women, Minorities Most
- *Issue&Insights 2020年9月15日 It’s Official: Trump Unleashed A Middle-Class Boom That Benefited Women, Minorities Most
- *Issue&Insights 2020年9月15日 It’s Official: Trump Unleashed A Middle-Class Boom That Benefited Women, Minorities Most
- *Issue&Insights 2020年9月15日 It’s Official: Trump Unleashed A Middle-Class Boom That Benefited Women, Minorities Most
- *トランプは再選する!日本とアメリカの未来(著者)ケント・ギルバート(出版)宝島社 P35〜37
- *FOXBusiness2020年10月2日 September jobs numbers best since Reagan-era, don't panic America: Andy Puzder
- *隠れトランプのアメリカ (著者)横江公美(出版)扶桑社 P107
- *隠れトランプのアメリカ (著者)横江公美(出版)扶桑社 P108
- *ドナルド・トランプ演説集(The Speeches of Donald Trump) P211~221
- *ドナルド・トランプ演説集(The Speeches of Donald Trump) P195~197
- *日本人の知らないトランプのアメリカ (著者)日高義樹(出版)海竜社 P76
- *トランプ大統領「宇宙軍」発足、陸海空軍と同格の大規模軍隊)
- *INF条約が失効 トランプ政権、21世紀型の軍備管理体制確立目指す 2019.8.2
- *米中激突と日本 (著者)古森義久(出版)ビジネス社 P70〜72
- *Newsweek 2020年7月23日 トランプ氏、医療保険巡る大統領令発動へ 顧問「効力持つ」
- *Newsweek2020年10月8日トランプ、大統領執務室に復帰し動画投稿「コロナ治療薬を米国民に無料提供」
- *世界ウィルス戦争の真実 米中の熱い戦いが始まる(著者)日高義樹(出版)徳間書店 P33〜35
- *トランプ米政権、メキシコ国境の壁建設は目標未達成も=高官 2019.12.18
- *トランプ氏、非常事態を宣言へ 国境の壁建設費用の確保のため
- *米国防総省、「国境の壁」建設へ3800億円を転用 与野党から批判の声
- *米、郵便連合脱退を回避=途上国からの料金改革で合意 2019.9.26
- *隠れトランプのアメリカ (著者)横江公美(出版)扶桑社 P96〜102
- *トランプは再選する!日本とアメリカの未来(著者)ケント・ギルバート(出版)宝島社 P40~49。
- *米、パリ協定離脱を通告=温暖化対策が骨抜きに 2019.11.5
- *ドナルド・トランプは兄に圧力をかけた事を後悔している ワシントンポスト
- *手術ゲーム『Surgeon Simulator』にドナルド・トランプが登場。半日強で1万7000回以上の手術が失敗する (ファミ通.com 2016-06-06 10:54:00)
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