NASCARとは、アメリカにおけるストックカーレースの統括団体の名称である。また、単に同団体の主催するレースやストックカーを指す事も多い。
NASCARの名称は"National Association for Stock Car Auto Racing"の略称である。日本語に直すと「全米自動車競争協会」である。トップカテゴリーであるモンスターエナジーカップを頂点として、下位カテゴリーのXfinityシリーズ(メジャーリーグの3Aに相当)、ピックアップボディを採用したキャンピングワールドトラックシリーズが知られている。その他、様々な下位カテゴリーがあり、非常に壮大かつ明確なピラミッド構造になっている。
本部はノースカロライナ州のシャーロットに存在する。この地はNASCAR殿堂があったり、有力チームが多く存在し、「NASCARの聖地」と言われる。この他、重要な場所として発祥の地である「デイトナビーチ」がある。
その源流は禁酒法時代の1920年代にまで遡り、密造酒の運び屋が誰が目的地へ一番早く酒を運べるかを競ったところから始まった。運び屋の車は警察からの追手を振り切る為、エンジンには手を加えられていたと言われた。禁酒法自体は1933年に廃止となり、運び屋稼業は失業、チューンナップされた愛車が残った。しかし彼らが運び屋時代に経験したスピードへの情熱はやがてライバルより早く走る事、すなわちレースという形に変化した。
こうして自らの車を持ち込み、レースがあちこちで開催された。そうした中で大きな大会ともなると各地の名うてのドライバーが多数参戦したが、これらのレースの成長には統一された、明確な組織(つまり法人)が必要となり、1948年にNASCARが誕生した。その後、人気を着実に呼んではいたが1980年代まではアメリカ南部のローカルな人気レースというイメージであった。そこにテレビ放映が始まると、全米レベルでの人気が広がり、その人気を不動のものとした。
日本においては知名度はあまり高くはないが、アメリカにおいては自動車レースでも人気・知名度とも1位2位を争うほどであり、アメリカ4大スポーツに匹敵すると言われる事がある。近年はアメリカ人以外のドライバーも増え、国際化が進んでいる。
NASCARを語る上で欠かす事のできない人物にビル・フランス親子がいる。共にNASCARの最高責任者であり、またNASCARを全米でも1位2位を争う人気モータースポーツにのし上げた敏腕の経営者である。
父親のビル・フランスSr.はNASCARを起こした人物であり、またかつては自身もレーサーであった。NASCARは前述の通り、運び屋がレーサーへと転向した草レースを源流としているが、それ故にルールもレースによってバラバラであり、また主催者が賞金をピンはねすると言った事もしばしば起きていた。彼自身はこの現状を憂え、統一化されたルールに明確に組織化されたレース体制なしに今後のレースの成長はないと考えていた。そこで彼は有力なドライバーと主催者と折衝を重ねて、NASCARの設立へつなげて行った。その後、デイトナスーパースピードウェイを建設し、南部における人気を不動のものとした。
その息子、ビル・フランスJr.は父親よりNASCARの経営を受け継ぎ、それまでは部分的にしか採用していなかったテレビ放映を本格的に開始させ、南部のローカルモータースポーツから全米レベルのモータースポーツへと発展させた中興の祖として知られている。親子で名前が一緒なので、通常Sr.は「ビッグビル」、Jr.は「リトルビル」と言われる事が多い。
NASCARはモンスターエナジーカップを頂点にメジャーリーグの3Aに当たるXfinityシリーズやキャンピングワールドシリーズが非常によく知られている。これら3つがトップカテゴリーになり、そこから多くのシリーズが派生している。海外シリーズもあり、メキシコにおけるNASCARレースであるNASCARコロナシリーズ、カナダにおけるNASCARレースのNASCARカナディアンタイヤシリーズ、ヨーロッパにおけるNASCARウィレンユーロシリーズがある。これらは下位カテゴリーながらも人気を集めるカテゴリーであり、スプリントカップレーサーを狙うドライバーが日々レースをしている。
この他にも地域リーグとしていくつかのカテゴリーが存在する。NASCARの公認を得ているのでこれを足掛かりにしてキャリアステップを図る事が出来る。以下にそれを記す。
パトカーのサイレンなどを生産するウィレン社がスポンサーとなったシリーズで全米の他、カナダでも開催されている。使用されるコースはトップカテゴリーでは使用されないような地元密着系の超ショートオーバルやダートトラックが使用される。使用されるストックカーは一般的にはトップカテゴリーの型落ち車を使用する。
アメリカ北部と東部を担当するカテゴリーである。自動車部品メーカーであるK&N社がスポンサーとなっている。序列的にはウィレンオールアメリカンシリーズより上の扱いとなっており、コースもダートトラックが存在せず、トップカテゴリーで使用されるレーストラックが使用されるなどよりトップカテゴリーに近い構成となっている。使用されるストックカーは型落ち車である。
アメリカ西部を担当するシリーズ。車両規格や序列がXfinityより下で、ウィレンオールアメリカンシリーズの上位であるなど、イーストシリーズと同じになっている。かつて日本へ来日した際に行われたカテゴリーはこのシリーズ(当時はウィンストンウエスト名義)
NASCARのカテゴリーの一つであり、超ショートオーバルやダートトラックを使用する。NASCAR創生期より存在する伝統あるカテゴリーであり、南部に特化したウィレン・サザン・モデファイドツアーもある。その車体は一般的に知られるストックカーとは大きく異なり、ボディシェルはストックカーよりも面積が少なく、「車名」もあるが実質名ばかりである。パイプフレームとホイールがむき出しで、ストックカーと言うよりはミジェットカーに近く、扱いも「オープンホイール」となっている。
カナダで行われているNASCARのシリーズで本国のシリーズでは行われていない市街地コースでの走行も行われるなど、独自色を打ち出している。
2009年より開始されたシリーズでヨーロッパ大陸初上陸となった。当然と言えば当然であるが、全日程がロードコースであり、使用される車種は本国のシリーズと一緒である。ドイツやフランス、イタリアやスペインで開催されている。
NASCARにおいて使用される車はストックカーと言われる。その意味はツルシの車(ショールームストック)であるが、今日的な意味合いではレース用、特にNASCARに使用される専用の車と、真逆になっている。
NASCARが開催され、1970年代までは文字通りのストックカーであった。
創成期におけるNASCARは外側は必要最小限の改造であり、中には戦前の骨とう品では?と思える車種も9存在する。
開催以来アメリカ車を中心に様々なメーカーが投入されていったが、年を追うごとにに車の高性能化が進んでいった。NASCARにまつわる諺(?)として、「レースデーに勝利した車は月曜日に売り上げがあがる」と言うものがある。こういった逸話が出来る程にレースと自動車の販売が無視できない関係になってのでメーカー側としてもホモロゲを満たすためだけとも思えるような車(ex:プリマス・ロードランナースーパーバード、フォードトリノ・タラデガ等)を用意したが、行き過ぎたメーカー同士の競争は本来の姿や理念とかけ離れ、また高速化によって、もはや市販車の構造では安全を確保できないレベルにまで差し掛かってきたのである。さらに真偽は不明であるが、車体を酸を浸して少しでも車体を軽くすると言う過激な手法に出る者もいた。その為、今日まで続くパイプフレームに市販車に似せた鉄のガワを着せるスタイルへと変わっていった。
車両の規則は厳格に決められており、ハイテクの類はほとんど見られないのが特徴である。これはNASCARが草レース由来である為、コスト高騰を非常に嫌うためである。無論、それだけではなくいんちきが横行しないようにする意味合いもある。例として車両は最初にテンプレートと言われるものを車体にあてがい、空力面における違反がないかをチェックしている。これはスモーキー・ヤニックと言われるNASCAR界でも殿堂入りを果たしたエンジニアがグレーゾーン突きまくりの空力セッティング(一説によると1回り小さいボディを製作していた)をした事から始まった。
車体はドアが存在せず、ドライバーは窓から入るのだが、運転台側には窓ガラスが存在せず、その部分はネット状の物を使用する。パイプフレーム化が進んで以降も90年代頃まではオリジナルのデザインに準じた物であったが、高速レースが多いNASCARでは空力が物を言う為、ヤニックのように一回り小さくなるように加工したりするものが多く、それ故に車種が偏ったり、加工によって大きくチームごとに差がついてしまう事が存在した。端的な例では1990年代におけるフォード・トーラスは元々のデザインが曲線的であり、そのデザインをベースとした場合は空力面で優位となる為、従来のフォード・サンダーバードから切り替えを行った。またベース車は通常、2ドア車を使うのが慣例のようなものであるが、トーラスは4ドアである。このように空力面における差異は長い事悩みのタネであったが、後述するCoTの導入などを通じて、車両のデザインはほぼ統一化された。現在ではメーカーごとにシール類などの外装やエンジンに細かい差はあるがサイズやデザインは同一である。
全長は208インチ(約5.2m)、全幅76.5インチ(約1.94m)、全高53.5インチ(約1.35m)に決められており、パワステは装備されている。Xfinityシリーズはこのサイズよりも少々小さいもの(0.1m程度であるが)となっており、それ故モンスターエナジーカップとは違い車種の選定がされる傾向がある。なお、大きさからお察しできるようにオリジナルの車種の大きさよりも大分大きい。
エンジンは5.8リッターのV8・OHVであり、ホイールも一般的なアルミ製・センターロックではなく、市販車と同じスチール製・5穴ロックタイプである。ちなみにホイールには予めナットが接着されている。これだけ見れば、ローテクであるが10000回転・840馬力と凄まじいモンスターマシンであり、ホイールも当然、市販品より軽いものとなっている。近年までは燃料供給にキャブレターを使用していたが、2012年より電子制御インジェクションに変更となった。これは近年叫ばれる環境保護に配慮した関係である。エンジンは各メーカーの物を使用しており、特にトヨタは排気量的に近いエンジンはあったものの、DOHCであった為にあえてOHVにした上で準備をしている。燃料タンクは67リットルと定められている。
タイヤはグッドイヤーのワンメイクであり、かつてはフージア製のタイヤも供給されていた。タイヤ関係の不正を防ぐために厳重に管理されている。そしてコスト削減の意味合いもあり、スペシャルタイヤも許可されていない。基本的に雨天時はオーバルトラックでのレースは行われないが、ロードコースに限ってはレインタイヤが用意されている。なお、オーバルトラックのみ、左右のタイヤの大きさが異なっている。
ギアは4速のマニュアルと規定されており、オートマチックは禁止されている。ギア比はトラックに合わせたセッティングが可能であるが、オーバードライブ(ギア比1以下)の設定は禁止されている。
なお、最高出力は900馬力近いものであるが、全長2.5マイルバンク31度を誇るデイトナ、それ以上の全長2.66マイルバンク34度を持つタラデガの2トラックでは、リストラクタープレートの取り付けが義務付けられている。これによって出力を450馬力と半分近くに抑えられている。合わせて回転数にも制限が出ている。これは1987年にタラテガで行われた予選でビル・エリオットがストックカー史上最速となる342キロを記録した事、その後のレースでボビー・アリソンのマシンがエンジンブローの後にマシンが浮き上がりフェンスに衝突、ボビー自身は無傷であったが飛んだ部品で死者こそ出なかったが多数の怪我人が発生し1人が失明をしてしまった。これらを教訓に行き過ぎたスピードを抑制し、それに伴うクラッシュの二次被害を抑制する事と、エンジンの消耗を抑えてエンジンの寿命を延ばすことでコスト削減を狙い、スーパースピードウェイにおいてはリストラクタープレートの装着が義務付けられた。また近年は環境保護の声もあり、燃料がエタノール15%含有のものとなった。
車両の重量はレース用のマシンとしては極めて重い部類に入り、その重量はおおよそ1.8トンである。参考までにスーパーGTのマシンが大体1.1トンで、市販車ではクラウンマジェスタとほぼ同等なのでその重さが窺い知れよう。前述の通り、コスト高騰を嫌うので主材料が安価なスチール製に限定されてしまうためである。パイプフレームでなおかつ運転席周辺は安全確保の為に非常に頑丈な作りとなっている。その為、ちょっとしたクラッシュでは手直ししてレースに再開する場面も多くみられる。なお、車両一台の価格は約1500万円であり、これはトップカテゴリーレースの中でも非常に安価な部類に入る。理由は前記の通り高級素材を使用しないためであるが、これによってトップチームともなれば、1人のドライバーに対して、同じ車を何台も宛がう事ができる。というか年間4~5台はクラッシュで廃車になる。
マシンのセッティングはロードコース用とオーバルトラック用では大きく異なる。具体的にはオーバルトラック用のセッティングはハンドルが中立の状態にあっても、左側に進むようなセッティングとなっている。オーバルトラックは基本的に左周りの為、右側のタイヤを太くして敢えてデフォルトの状態で左に進むセッティングを施す事でドライバーの負担を軽減している。ハイテクはないので一見すれば大雑把に思えるが、細かいセッティングをしなければまっすぐにさえまともに走る事ももままならないし、人間も体が持たないのでこの辺りはまさに経験とデータが物を言う。
また、ドライバーへの安全対策を非常に重視している。説明するより動画のほうが早いのでまずはこれを見て欲しい。
300キロ近い速度で衝突しているが、ドライバーはほとんど無傷である。最初にあげてある事故と併せてみて頂く事をお勧めする。
こうした安全も過去の悲しい事故から学び取っているのである。過去、多くの事故が発生し、都度安全対策を講じてきたが、「脅迫者」のあだ名で知られた人気No.1ドライバーのデイル・アーンハートSr.が2001年のデイトナ500において壁への衝突が原因の死亡事故は大きな悲しみと衝撃をNASCAR界に与えた。彼の死因は頭蓋骨骨折によるものであり、首周りを保護するHANSというものがあれば助かったという声(もっとも、生前本人はHANSを嫌がっていたが)があり、それ以降のNASCARでは普及が進んだ。また、トラックのウォールも衝撃を吸収できるSAFERバリアーを採用、衝突におけるドライバーへの衝撃を低減させている。
車両面でもカー・オブ・トゥモロー(CoT)と言われる新規格のストックカーはコスト削減の一方で、彼の死を教訓として、運転台の位置を右寄りにして衝撃吸収空間の設置など、よりいっそうの安全面の強化をした目的もある。他にもかつてクラッシュ時やスピンした際においては空気の流れの関係で車が浮き上がる事が頻繁に発生した。こうなった場合には最悪観客席に飛び込む可能性が高く、非常に危険であった。その為、ストックカーの屋根にはルーフフラップと言われるプレートが取り付けられている。スピンした際にはこのプレートが起立し、車体が浮き上がらないように空気の流れを調整する。無論、これをつけていても絶対に浮き上がらないという事ではないが、かつてに比べれば大幅にその数は減った。そしてポストCoTとして、「ジェネレーション6」が登場した。ストックカーとしては第6世代となり、外観を市販に近付けた上でグリップが出来るように設計された。これによりベース車両に変更が見られた。
NASCARで思い出されることの一つに派手なクラッシュがあるが、前述の通り、安全性に対してはこれでもかと言うぐらいに配慮してるからこそのものであり、クラッシュを安心して見られるのは悲惨な事故から得た教訓の上に成り立っていることを忘れないで欲しい。
このようにストックカーは独自の規格と派手な色使いと相まって、非常に独特の仕様のレースカーではあるが、あくまでストックカーはレースをするための道具の一つに過ぎない。例えば、NASCARの解説では「ゼッケン24番のデュポン・シボレーインパラ」とスポンサー名と車名ではいわず、「ジェフ・ゴードン」とドライバー名で呼んでいる。車名が出てくる機会はレースに関係する所ではあまり見られない。メーカーの過剰な介入を出来るだけ排除してるためではあるが、後述するようにあくまで人間主体のレースであるので、マシンにばかり注目がいく事はない。もっと言えばストックカーはドライバーそのものであり、ドライバー以上に車がでしゃばるようなことがない。日本などでは「車名>ドライバー」となっているので、NASCARは全く真逆のものと言える。
とはいえ昔同様、車の売り上げにかかわるのは事実で、各メーカーの車は売れ筋の車を投入する傾向が強い。
使われる車種はモンスターエナジーカップとXfinityシリーズは4ドアセダン、もしくは2ドアクーペである。キャンピングワールドシリーズはピックアップを使用している。各メーカーの売れ筋の車が採用されているが、前述の通りそれは名ばかりで実際は純然たるレースカーである。本来ならFF駆動のカムリもストックカーではFRである。
創設初期にはアメリカ系以外にもフォルクスワーゲンやポルシェなどの海外製が参戦していたが、現在の所はトヨタのみである。なお、近年では基準の違いなどによりXfinityシリーズとモンスターエナジーカップで採用する車両が違ってきている傾向がある。近年では2012年度をもってダッジが撤退した。
現在モンスターエナジーカップではトヨタがカムリ、シボレーがカマロ、フォードがフュージョンでそれぞれ参戦している。フォードは2019年度より2ドアクーペのマスタングに切り替え予定である。
日本やヨーロッパのレースカテゴリーとは明らかに異なる部分が多く見られる。なお、これらの項目はアメリカンモータースポーツ全般に共通することが多い。
まず、サーキットは基本オーバルトラックである。オーバルとは楕円という意味であり、競輪やオートレースのイメージが近いと思われる。無論、ヨーロッパスタイルのロードコースもあるが、40試合近い中でわずか2試合しかスケジュールに組み込まれていない。オーバルトラックはコースの幅が非常に広く、また高速レースとなるのちょっとしたミスや戦略如何でトップがビリになったり、逆にビリがトップになったりと展開が見えない事に定評がある。
そして徹底したエンターテイメント性の追及である。モータースポーツは人と高度な車の織り成す競技であり、第一にスポーツであり、エンターテイメントとなる事は「結果的に」というのが多いが、NASCARは基本的にまったく逆で、「必然的」にエンターテイメントとなっている。その例としてポイント制度が1位を筆頭に最下位までにポイントが付与される。先述の通り、基本的にストックカーはイコールコンディションなのでその為、腕次第では誰がチャンピオンになってもおかしくなく、またドライバー側も高いモチベーションを維持できる。その他にも上位争いをより白熱させるために採用されたラッキードッグパス(コーション発動時に、周回遅れの1位がトップと同周回の最下位に繰り上がる制度)など、観客を興奮させる様々な指向が凝らされている。
なお、ラスト10戦になった時点でプレーオフ制度に相当するチェイスが発動する。1~12位までが適用となる。この場合、ポイントランキング1位~10位まではそれまでの手持ちの点数が規定に従ってリセットされる。11・12位はワイルドカード的な意味で11~26位の中で勝利数が多いレーサーが選ばれる。こうすることでより多くのレーサーにチャンスを与え、優勝争いを白熱させる意味もあるが導入前年にマット・ケンセスが勝利数が1勝にも関わらず、チャンピオンとなったことでレースの不均衡さを払しょくする意味も込めている。
ドライバーは上位下位カテゴリーを掛け持ちしたり、もしくは引退したドライバーがスポット参戦したりする事も多い特徴もある。通常は下位カテゴリーに参戦しながら、デイトナ500などのレースだけに参戦するレーサーもおり、実際、2011年のデイトナ500のウィナーのトレバー・ベインはメインが下位カテゴリーのネイションワイドがメインのドライバーであった。なお、この場合はポイント制度の関係で主戦場としてるシリーズにはドライバーポイントの加点がされない。
またソーシャルメディアに関する見解も面白い。近年の例にもれず、公式もfacebookやtwitterを設けており、選手自身も自身のページを持っているが、そんな中で2012年のデイトナ500でブラッド・ケセロウスキーは同僚であるファン・モントーヤが起こしたドライヤーカーへのクラッシュと言う珍事の写真をレース中にツイートしたのである。無論、赤旗中断の時であり走行中ではないのだが、試合中に何やってるのだと言うお叱りの言葉が出てくるのが通常のリアクション。しかし、そこはエンターテイメントの大家であるNASCAR。それを咎めることなく、奨励ともとれるリアクションである。あろうことか、チーム側もこのツイートに対する称賛を述べている。なお、ケセロウスキーはフォロワーがこのツイートをきっかけに漸増したと言われる。これには他のスポーツがこの手のツイート関係にピリピリしていると言う背景もあり、差別化をより一層図りたいというNASCAR側の狙いもあるとされる。
レースをするには1にも2にも資金が必要であり、言うまでもなくスポンサーがお金を出せば経費ねん出などの面でチームの運営は楽となる。スポンサーもまた、10万人以上の集客と言うおそらく北米のレースカテゴリーの中では1位2位を争う人気や高い視聴率を誇るテレビ放映は絶好のCMとなる。このようにチームとスポンサーの関係はレースをする上では切っても切れないものである。NASCARのチームにつくスポンサーはその人気の高さを証明するように自動車関連以外にも生活に密着したものが多い。IndyCarやNHRAでも似たような傾向がある。日本でもスーパーGTの人気を受けて、この数年で日常生活に密着するスポンサーが登場しつつあるが、以前は自動車関連が殆どであった。
中でも面白いのは、ドライバーが勝利者インタビューで必ずといっていいほどスポンサーを立てる発言を行う事。
途中で3回のコーションがあったり、マシンの調子が今一つだったけど、今回のレースで優勝できたのも、ファンを始めとしてスポンサーのニワンゴのおかげです。
―優勝者インタビューの一例―
こうする事でスポンサーはドライバーと言う強力な広告塔によって消費者にアピールが出来ると言う事で、レース後のインタビューとしては半ば慣例化しているわけだが、有名どころではペプシがスポンサーをしているレースで優勝したドライバーが、コカコーラのスポンサーを受けていたため、レーススポンサーが勝手に車に置いたペプシの山を全部蹴散らし、スタッフに貰ったコカコーラで喉を潤すというシーンがあるほどチーム/個人スポンサーは重要視される。またスポンサーの要請でその会社の従業員と触れ合ったりと、スポンサー関係も重要な仕事の一つである。NASCARの特徴的な側面のシールも貼る位置が規定により厳密に定められている。
以下にスポンサーの一例を記す(リンクのあるものは公式ページにいきます。)
この中には現在はスポンサーを行っていない所も存在するが、これだけ見てもスポンサーが生活と直結している業種が多い事がお分かりになろう。また、日本でもおなじみの企業がスポンサーとして名を連ねている。それだけNASCARが注目を浴びていることの証左であろう。なお、同業他社のスポンサーも多い事も特徴である。これを日本風に例えれば、「ビバホームSC400」とか「キリン一番絞りスカイライン」とか「陸上自衛隊NSX」とかであろう。なお、この傾向は同じくアメリカのモータースポーツであるIRLやNHRAでも同様である。
ちなみにスポンサーはF1などと違い「チームごと」ではなく「ドライバー」ごとの契約。そのため同じジョー・ギブス・レーシング所属のカイル・ブッシュ(M&Ms)、デニー・ハムリン(Fedex)、ジョーイ・ロガーノ(ホームデポ)とカラーが全く違うのもお約束。1台の車を何社もの車がスポンサーするため、レースによってM&Msだったりスニッカーズだったりインターステイトバッテリーだったりするのもお約束。
NASCARにおける現行の冠スポンサーはトップカテゴリーでは飲料メーカーのモンスターエナジーである。
2016年までのタイトルスポンサーは携帯事業会社のスプリント・ネクステル社。規模としてはアメリカで三番目であり、日本のKDDIとつながりを持つ会社であった。2004年からスポンサーをしているが、当初はネクステルカップシリーズと名乗っていた。元々はネクステル社とスプリント社という2つの会社があり、合併後にスプリント・ネクステル社と改称した後に2008年からカップ名を現行の物に変更した。そのスプリント社はソフトバンクに買収された後、2016年を持って撤退。2017年からはモンスターエナジーがタイトルスポンサーとなった。
それ以前においてはウインストンカップと言われた。1972年から2003年の実に29年間の長きにわたりスポンサーを務めたR・J・レイノルズ社は自社の発売するたばこの主力銘柄であるウインストンを冠に添えた。しばしばレース経営に助言を行い、ダートレース廃止などのNASCAR近代化にはこの会社の意向が反映されたとされている。ウィンストンは日本においては洋モクの一つとされ、自販機ではボチボチ見かける銘柄であるが、世界でも売り上げが2位である。近年のモータースポーツにおけるたばこ広告の規制のあおりを受けた為か、2003年を持ってスポンサーを降りている。
下位シリーズであるネイションワイドシリーズはネイションワイドインシュアランス社と言う保険会社が2008年よりスポンサーを務める。それ以前はブッシュシリーズと言う名称で知られた。アンハイザー・ブッシュ社というビール会社がスポンサーを務めたためで、この会社で一番有名なビールはバドワイザーである。
そのネイションワイドは2014年に撤退し、2015年以降はそれまでデイル・アーンハートJr.のスポンサーだった、通信事業会社のXfinityがタイトルスポンサーとなった。
用語もまた、独特の言い方で使われる事が多い。これらはIRL等のカテゴリーと共通するものも多い
前述したが、NASCARのレースはほとんどがオーバルコースである。一口にオーバルといっても形状が色々とあるので、よく言われるような「単純でつまらん」とか「同じ所をぐるぐる回るだけのレース」と決め付けるのは早計の極みである。ちなみにアメリカのレースにおいては日本国内とは逆の左回りとなっているが、これは元々オーバルトラックが競馬場からの転用が多く、その際にアメリカの競馬が左回りであった事に由来する。なお、かつてはダートトラックでのレースもあったが、ダートトラック自体が舗装をされていき、1972年に冠スポンサーであるRJレイノルズ社がNASCARに対して100マイル以下のレースとダートトラックでのレースをスケジュールから外す提案をし、それ以降はダートトラックでのレースはなくなっている。但し、地域リーグにおいてはいまだにダートを使用するレースもある。
なお、アメリカのレースシーンにおいてはサーキットという名称は一般的ではなく、通常は特にオーバルの場合はトラック、もしくはスピードウェイと呼ばれる事が多い。特に2.5マイル程度のオーバルトラックはスーパースピードウェイと呼ばれる事もある。一般的に想像される「サーキット」はロードコースと言われる。また、コーナーもアメリカではターンと呼ばれ、通常はターン1という具合に数字が入る。
一口にオーバルと言っても色々な形状が存在している。長方形の楕円の様なものや、水滴の様にターンの大きさが違っているもの、デイトナに代表されるストレートに緩やかなカーブがあり、三角形の様になっているトライオーバルタイプ、Dシェイプ型と言われるメインストレートが湾曲して上空からだとDの字に見えるものやインディアナポリスに代表される長方形、ポコノの不等辺直角三角形とあり、さらにバンク角もトラックごとに異なっているので、セッティングやピット戦略にも綿密な計算が必要となる。
トラックの長さも全長ハーフマイルといわれる全長1キロに満たないショートトラックもあれば、2.5マイル(4キロ以上)のスーパースピードウェイも存在する。そして、トラックごとにそのレースの性格が異なり、ショートトラックの場合は時速120マイル(キロ換算200km/h前後)でありながら、自動車を使ったプロレスのようなぶつけ合い上等の雰囲気となるのに対して、スーパースピードウェイでは時速200マイル(キロ換算320km/h前後)のハイスピードレースの様相を見せて、長さの違いで雰囲気が一変してしまうのも大きな特徴である。
(例)ショートトラックにおけるレースシーン。 (例)スーパースピードウェイにおけるレースシーン
動画だけ見ればなかなか魅力は伝わりにくいかもしれないが、オーバルトラックは生で見に行く事が一番良いと思われる。我々がスーパーGTで見慣れたような意識で見るではなく、全く別次元のものとしてみればこれほどまでに激しいレースも世界ではあまりないかと思われる。車を使ったプロレスとはよく言ったもの。
近年では増加するスピードに対して、バンク角30度+全長2.5マイルを超えるデイトナ・タラデガの2トラックではエンジン出力の制限を設け、安全性の確保に努めている。これによって900馬力近い出力は450馬力近くまで抑えられるが、それでも簡単に1.8トンもある車がぶっ飛ぶ。
前述した通り、ロードコースは全スケジュールの中で2つしか存在せず、またコース取りもインディカーで使われるレイアウトよりも単純化されている。通常は左にしかハンドルを切らないNASCARにおいてはロードコースのみにおいてのみ右にハンドルを切る事が多いので「年に2回はハンドルを右に切る」と言うジョークがある。また、市街地コースはカナダで行われるNASCARレースであるカナディアンタイヤシリーズで行われているが、スプリントカップのような本国のシリーズにおいては行われていない。
よく知られるトラックは下記の通り。
NASCARのポイント制度はドライバーズポイントとオーナーズポイントで総合順位を決める。特徴はビリであってもドライバーズポイントが付与される事である。43台が参戦し、1位は43ポイント+ボーナス3ポイント、2位は42ポイント、以降は1ポイントづつ減らされてビリは1ポイントである。また、1周でもリードラップを記録すれば1ポイント、最多リードラップで1ポイントのボーナスポイントがあり、特にハイスピードオーバルでは見どころを演出する制度になっている。
2010年に改定されるまではその桁が大きい事で有名であり、他のカテゴリーと比べてもまるで何処かの漫画雑誌並みのインフレであったが現在では割合に他のカテゴリーと同等程度になっている。この他、リードラップなどでボーナスがもらえる。
また、ドライバーはモンスターエナジーカップ・Xfinityシリーズ・キャンピングワールドシリーズから自分のメインのステージを選択する必要があり、例えばキャンピングワールドシリーズのドライバーがデイトナ500に参戦してもドライバーズポイントは貰えない。但し、オーナーズポイントは付与される。前述した通り、2011年のデイトナ500で優勝したトレバー・ベインはネイションワイドシリーズがメインだったのでドライバーズポイントは付与されず、オーナーズポイントのみ付与された。
前述したとおり、NASCARは人間メインであり、単純にレースのみならずピットワークや駆け引きも観戦の見どころとなる。
そしてドライバーのみならず手腕を買われたクルーチーフやピットクルーには相応のサラリーが出るし、マスコミにも名も知れる。無論、ドライバーはスター級ともなれば、市井の人々に名が知れ、長者番付にも記載されたりするなど、立派なセレブリティである。NASCARのドライバーになるには例えばダートコースのミジェットカーからはじまり、下位カテゴリーであるXfinityシリーズを経験し、2軍から1軍に上がるようにモンスターエナジーカップのチームに抜擢されたり、さらにそこから上位チームにヘッドハンティングされたりなどのステップアップを果たしていくのが良くあるが、近年はIRLやF1などからの転向も多い。面白い事にそれぞれのキャラ付けが確立されており、プロレスのようにヒール的なドライバーもいたり、地方開催の場合は都会育ちはブーイングになるお約束もある。
NASCARのハイテク排除はピットワークにも表れている。まずピットクルーは7人の制限があり、ジャッキを担当するジャッキマンが1人、給油を担当するガスマンが1人、空の燃料タンクを受け止めるガスキャッチマン1人、タイヤ交換を担当するタイヤマンが4人である。給油に当たっては加圧はなく、重力まかせであり、小さなオイル缶に給油口の付いたものを使ったり、ジャッキも手動の油圧ジャッキを使用するなど、ピットワークにも大きな特徴がある。それだけに作業にも綿密な計算が求められるのである。ちなみにジャッキは専用品であり、市販のものよりもずっと軽量に作られている。その為、1レースでダメになるといわれている。またホイールにはあらかじめナットが接着されている。
このように体力勝負の側面も多い。掛かる時間は状況にもよるがタイヤ交換と給油などのフルセットで15~20秒で同じ条件でF1の場合は8秒台と比べると時間が大分かかってはいるが、エアジャッキなし、5穴ホイール、加圧なしの給油などハイテクを排してる事を考えるとこの数字は驚異的である。ドライバーと同等な活躍をする彼らにスポットライトが当たる事も多く、彼らのピットワークを取り上げた番組もある。なお、毎年彼らの腕を競うイベントも行われており、こちらも注目されている。
また、スポッターと言われる縁の下…ではなく天井の上の力持ちにも注目したい。レース中においてはストックカー内のドライバーの視界は前しか見えないと言われる。無論、鏡が無いわけではないがサイドミラーなんて存在せず、ルームミラーとて凄まじい振動でせいぜい後ろに車らしきものが見える程度と思われる。常時時速300km/hオーバーのオーバルトラックではちょっと脇見しようものならすぐに不運と踊ってしまう為、ドライバーは自分の周囲を認識することが事実上できない。そこでドライバーにトラック上の展開などを伝達するのがスポッターである。彼らは通常は全周囲を見渡せるホームストレートの観客席の上にいて、ピット内にいるクルーチーフと綿密に連携を取りながら、ドライバーに指示を与えている。なお、この交信に使われる無線はオープンなので観客はひいきのドライバーの戦略を手持ちのレシーバーで聞く事も可能である。
このようにレースの主役はドライバーだけではなく、多くのレースクルーも含まれているのである。
余談ではあるが、レースシーズンにかかる経費の中で多く占めているのは人件費である。そもそもマシンの価格も各種のレースに比べれば非常に廉価である事やスポンサー収益が大きいなどを考えれば、ドライバーのみならず、ピットクルーらも、NASCARで飯を食えるようなサラリーを確保できる構造にもなっており、それゆえに相対的に人件費の比率が高くなっている。
レース中は言うまでもなくドライバー同士の抜きつ抜かれつのドッグファイトであるが、ピット側でもチームオーナーやクルーチーフがレース展開やピットイン時期の駆け引きを巡らせる。その意向や展開をスポッターがドライバーに伝え、そしてピットクルーの職人技とも言うべき給油・タイヤ交換技術と注目すべき点が非常に多い。
さて、先述したとおりストックカーと言うものはイコールコンディションであるので、開発中の秘密のデバイスと言った、見られては困るようなものはほとんどない。なので、パドックに入る事の敷居も低いのである。また、ドライバーもサインに応じてくれる事も多く、ファンとの距離が非常に近い。なお、もし彼らにサインをいただく場合は「サイン、プリーズ」と言っても(゜Д゜) ハァ?となるので「オートグラフ、プリーズ」と言うのが正しい。
普段野球を見ていると、デッドボールしたら時々乱闘となることがあるが、NASCARにおいても特に巻き添えクラッシュにおいては発生する事がある。そうなると殴り合いになる事があるが、ヘルメットをしてるので怪我はしないけどね。片方が走れる状態の場合、怒りやる方なしになりヘルメットを相手方のマシンに投げつける事もある。北斗の拳の時の名台詞「命は投げ捨てるものではない」を捩って「ヘルメットは投げつけるもの」と言うとか言わないとか。
乱闘とNASCARには面白い話があり、1979年のデイトナ500でケール・ヤーボローとドニー・アリソンがファイナルラップ時にクラッシュの後に乱闘、そこにドニーの兄のボビー・アリソンが加わり大乱闘となった。この様子は全米ネットで放映され、NASCARの持つドラマ性を引き出すことに成功、人気爆発のきっかけとなった。このレースデーの日は東海岸が大雪であった事やワシントン記念日と重なった事もあり、テレビ視聴者が多かった好条件もあったが、ともあれNASCARがテレビ放映の重要性に注目したターニングポイントとなり、NASCARの歴史には欠かす事の出来事である。
NASCARは2月初頭にデイトナでの開幕戦から11月後半までレースが行われる。概ね毎週末どこかで行われているが、レーストラックは市街地からやや離れた所に存在する事が多い。予選・決勝などを泊りがけで見る事も多く、観戦に当たってはキャンピングカーで来る事も多い。会場には各々のチームのグッズが多数販売されており、また子供向けのアトラクションもあったりと、各年齢が楽しめる嗜好が凝らされている。そしてプラチナチケットになる事もあるパドックパスを購入し、”漢”の職場を見学する。
なお日本ではおなじみのキャンギャルはNASCARではあまり見る事がない。単純にレースがメインと言う事もあるが、キャンギャルの存在そのものがフェミニストの標的になりうる事もあるからであろう。ただ、ちょっと前に元彼だかとの同衾や裸の写真が流出したNASCARのイメージガールがいたようにまったくキャンギャルがいないわけではない。
さて、キャンピングカーで観戦した観客に多いが、バーベキュー道具を持ち寄って家族、もしくはファン同士でひいきのチーム談話に話がはずむシーンが随所で見られる。ワトキンスグレンやシアーズポイントのようなロードコースではコース横のスペースに横付けしてそこからキャンピングカーにいながらして観戦も出来る。
いざレース本番ともなると多い時は10万人以上がレーストラックの観客席に集う。オーバルの場合は全コースを見渡せる部分が多く存在する。また、昼間以外にもナイターで行われるレースが存在する事も特徴である。
開始前には国歌斉唱が行われ、歌い手も日本でも知られるような人達が歌う事もある。レースになると熱気であふれるレーストラックもこの時ばかりは厳かな雰囲気に包まれる。そして、開始前のアトラクションの後に地元の名士などがエンジン始動の号令をかける。
各車一斉にエンジンを始動し、ペースカーの先導のもとにローリングスタートが開始される。グリーンフラッグの後にレースが開始され、観客は歓声と拍手で迎える。レース中はスポッターの無線を聞く為に観客はレシーバーを持って戦略を聞きながら、観戦する楽しみ方もある。
そしてクラッシュが起きれば、その度に会場を揺るがさんばかりの声が響き渡る。そしてドライバーが無事であれば拍手で迎えるのが流儀。その他場外乱闘と人間ドラマが目の前で発生する。そしてファイナルラップが近くなればそのボルテージはどんどんヒートアップし、ホワイトフラッグへ。最後の一周まで分からないのがNASCAR。大どんでん返しが起きても不思議ではない。
そしてゴールと共にボルテージは最高潮に達する…と言いたいところだけど、ウィナーが都会っ子だったり、ヒールだったりするとブーイングの雨嵐になる事も。そして、そのボルテージにこたえるがごとく、ウィナーがドーナッツを決め、白煙をもってその喜びを表す。
このようにNASCARの観戦はそれ自体が一種のお祭りの様なものであるが、100人いれば100通りの楽しみ方がある懐の深さがある。
TV観戦ももちろん可能、放送権料が高いために数社の持ち回りになっており、序盤はFOX、中盤はTNT、後半は以前はabcだったが最近はESPNが担当。特に中盤はTNTサマーシリーズとどっかのプロレス団体かと突っ込みそうになるキャッチが付けられている。レース自体がプロレスだから仕方ないね。と言うか、NASCAR界の悪ガキがゲストで出ちゃってるし。ついでに、乱闘的な意味でWWEとしばしば絡められる事もあるとか。日本からはCS放送のG+で非常にやる気はないが放映中。全編入れると長すぎるので、コーションラップや長いグリーン区間を一部カットしております。
NASCARのレースチームはチーム内にオーナーやチーフクルーが複数いると言う面白い構造となっている。言ってみれば、同じチームにあって全く別個のチームが複数あるみたいな事である。他にもドライバー自身がオーナーを務める事もあり、我々の感覚で一口に語るのはやや難しい。
プロ野球に巨人や阪神と言った名門球団があるように、NASCARのチームにも歴史ある名門チームが存在する。
著名なチーム(一部)
交代なしの耐久レースの意味合いも強く、時速300キロオーバーのドッグファイトと相まって心身ともに負担がかかる競技ではあるが、ドライバーの現役生活が比較的長く、他の競技では一線を退く年齢であっても、第一線のアスリートで活躍してるドライバーも多い。カテゴリー兼任や兄弟でドライバーやセミリタイアの後にスポット参戦するケースが多いのも特徴である。
アメリカのセレブリティの例に漏れず、慈善活動などに熱心なドライバーが多い。
既に設立から60年以上経過し、NASCARのドライバーも女性や父子鷹ドライバーや3世ドライバーが出てきている。さらに近年は海外より参戦したり、他カテゴリーからの転入も増え、ますます国際化やハイレベル化が予想される。赤文字は引退済み、もしくはセミリタイア。斜め文字の人物はXfinityシリーズメイン、下線はキャンピングワールドシリーズメイン。
全米でも有名なNASCARは映画にもなっている。その中でも有名なのはトム・クルーズ主演の「デイズ・オブ・サンダー」であろう。彼をスターダムに押し上げた「トップガン」のNASCAR版の趣きが強く、元夫人のニコール・キッドマンも出演している。
日本においてモータースポーツが映画の題材になった作品は極めて少ない(筆者が知る限りは「栄光への5000キロ」ぐらいか)が、一流のスターが映画に出演するあたり、NASCAR文化が根付いてる証左であろう。他にもピクサー制作の「カーズ」というアニメ映画があるが、ストーリーや登場人物、バックグラウンドはNASCARを下敷きとしている部分が多い。
どちらもNASCARを知るにはうってつけではあるが、やはり広い年齢層を対象とした「カーズ」の方が非常に分かりやすいと思う。多少の違いはあれど、雰囲気はNASCARそのものであり、キングやジュニアなどのキャラクターが担当する声優はNASCARで有名な人達ばかりである。ちなみにこれは英語版のお話である。余談ながら、F1で有名なミハエル・シューマッハやミカ・ハッキネンもこの作品で声を当てている。残念ながら日本人レーサーは日本語版でも英語版でも声を当ててない。
最近ではウィル・フェレル主演の「タラデガ・ナイト オーバルの狼」と言うコメディ映画があるが、これも舞台はNASCARとなっている。
この他、トランスフォーマーの実写版の第3作目である「ダークサイド・オブ・ザ・ムーン」に登場するオートボット部隊(サイバトロン軍)のレッカーズはNASCARのストックカーベースとなっている。なお、若干1名程メタボな赤いサイバトロンがいるが、気にしない。
そしてディズニーでは、NASCARのマシンを主人公にした「カーズ」が公開され、3まで続いている。こちらは車同士が会話したり、F1マシンとダートのあるコースで戦ったりとディズニーらしいファンタジーになっているが、1と3ではきちんとしたオーバルサーキットが舞台となっている。
NASCARと日本の関係は実は古く、1960年代にNASCARの開催等に関する権利を獲得しており、その為のコースとして富士スピードウェイが出来た。富士スピードウェイの旧社名は日本ナスカーであり、30度バンクも元々はオーバルにおけるターンの一つになる予定であった。この角度は現在のNASCARにおいてもデイトナぐらいしか存在せず、非常に急な部類に入る。構想段階におけるデザインも、デイトナインターナショナルスピードウェイと非常に酷似したものとなっていた(参考リンク)しかし土木技術の未熟さや地形の問題から、オーバルコースとならず、ヨーロピアンスタイルのサーキットとなった。
それでもいくつかのコースではダートコースのオーバルトラックが存在した。現在はオートレースで森且行らが日々走っている川口オートもかつてはストックカーレースが行われていた。この他、静岡県の日本平や東京の八王子、伊豆半島にもオーバルトラックの計画がされていたと言われ、この時代のモータースポーツにNASCARの影響が非常に強かった事が伺える。いずれもいい所までいって頓挫してしまったが、八王子は同じ場所に「東京サマーランド」が、伊豆はその後「サイクルスポーツセンター」となり、競輪選手の聖地となった。
当時は105マイルクラブ(→NAC)と言われるプロモーターが主催したナショナルストックカーレースといわれるアメリカのNASCARを模したストックカーレースが開催されており、東名自動車で有名な鈴木誠一がアメリカに参戦したり、当時のNASCARのスター選手の来訪など人的な交流もあった。この当時はまだ日本のモータースポーツの誕生から日が浅く、あちこちでレースが行われていたが、まだまだ運営が手探りの状態であった中で、興行的にも成熟していたNASCARのシステムを取り入れたNACはたちまち大人気となり、日本のモータースポーツ黎明期の華やかな1シーンとなった。
使用車種はクラウンやセドリックなどである。高級車である車が中身カリカリチューン―というか何故か日産のエンジンにトヨタ・クラウンと言うトンデモマシーンであるが―なおかつガチンコでカチあう姿は良くも悪くも洗練されたこれらの車の今の姿からは想像できないド迫力であった事は想像に難くはない。こうした雰囲気は場所や人、車種は違えど本場の雰囲気と勝るとも劣らないものであった。そしてその賞金も他のカテゴリーとは比べ物にならないほどの額であった。また、まだまだ浸透していなかったレース時の保険体制にもいち早く着手するなど、他のカテゴリーの一歩先を行く万全な体制を構築していた。
こうした一流の興行手腕をいかんなく発揮し、高い人気を誇ったNACであったが暗雲が立ち込める。1970年代に入るとNACがJAFと燃料タンクを巡る問題からを、公認をはく奪されると言う憂き目にあう。その当時のJAFからすれば、大人気であったストックカーレースを収めたいと思ったかもしれないが、プロモーターたるNACは独立した存在であり、天下りの多いJAFからすれば目の上のたんこぶのような存在に見えたのかもしれない。はく奪に至るまで何度となく折衝を重ねていったが、結局折り合わなかった為に公認はく奪となった。公認を外れるとレーサーはライセンスのはく奪から参戦への敬遠、サーキット側でもNACのレースを開催すれば資格のはく奪という恐怖からNACのレースを排除する姿勢になってしまった。こうなるとレース運営の運営もままならず、半ば兵糧攻めのような中で二進も三進もいかなくなるのは自明であった。しかしそんな中でも青森県にむつ湾インターナショナル・スピードウェイが建設され、最後の大博打と言われたストックカーレースが開催されると9万人という地理や規模を考えると非常にすさまじい数の観客が押し寄せた。この際、ドライバーもライセンスはく奪のリスクを負いながらも参戦したという武勇伝があるとか。こうした関係者の激しい情熱を持ってしても、オイルショックと言う未曽有の危機が襲うとついにカテゴリー自体が消滅してしまい、日本のストックカーレースはほぼ途絶えてしまう。
この顛末には前述したような天下りや利権と行った非常に生臭い政治的な絡みがあったと言われる。いずれにしてもせっかく一流の興行手腕やレース体勢を持っていたプロモーターが政治的な動きにその芽をつぶされた事は日本のモータースポーツ界の損失となったと言っても過言ではない。特に興行としてのレースの手腕を持つ者がいなくなった事で日本におけるモータースポーツの認知や商業ベースの体制作りは大幅に遅れたとも言える。
その後、日本のレースシーン自体が下火になったり、モータースポーツがヨーロッパ志向になるとその存在さえも歴史のあだ花と消えていった。少なくとも書籍やインターネットが一般化される以前はサーキットの資格はく奪やライセンス没収といった四面楚歌にあっても物ともしないような激しい情熱や多くの観客を魅了した華やかなレースシーンがあった事さえ綺麗さっぱり消え去っていたとも言える。実際に日本でストックカーと言えば後述するように鈴鹿サーキットやもてぎで行われたエキシビジョンを思い浮かべるケースが多いからだ。
翻って本場のNASCARは1996年にエキシビジョンではあるが、NASCARの初の海外遠征が行われ、NASCARサンダースペシャルと銘打って鈴鹿サーキットでレースが行われた。東コースを使用した短いものであるが、NASCARの歴史としては1960年代以来のアメリカ人のNASCARレーサーによるレースとなった。続く1997年にも開催され、1998年と1999年はツインリンクもてぎでついにオーバルコースでの開催となった。しかし、それ以降は日本での開催はない。そんな中でも2002年ウィンストンカップ(当時)に福山英朗が参戦、最近では長らくアメリカのレースシーンで活躍している服部茂章がキャンピングワールドシリーズに参戦するなど、NASCARに参戦する日本人もおり、今後が期待される。
なお、JTCCが消滅した際に後継のカテゴリーとしてSSCC(スーパーシルエットカー選手権)という新カテゴリーが提案された。ロードコース中心ではあるが、ツインリンクもてぎのオーバルトラック使用やパイプフレーム使用などNASCARに影響を受けたと思われる試みを取り入れていたが、メーカー介入の規制などで参加者が集まらず、結局うやむやになってしまった。
つべなどでその黎明期の日本のストックカーレースの動画がちらほら見受けられる。
https://www.youtube.com/watch?v=3pJxpCskpKU
https://www.youtube.com/watch?v=jZCdqMVApkw
https://www.youtube.com/watch?v=BvFrEc8CqT8
現在、360本近い動画があげられている。モータースポーツとしてはF1の9000本以上の動画と比べればずっと少ないが、それでもゲーム動画を含めて色々とうpされている。傾向としてはやはりクラッシュ画像が多いが、中には黎明期における貴重なレース画像などがあり、非常に興味深い。
日本で開催されたNASCAR
ま た レ ッ ド ブ ル か
モリゾウさん、NASCARを運転する。カムリは日本ではおっさん車でも、アメリカでは1位2位を争う人気車種。日本とアメリカにおけるカムリの立ち位置の差が良くわかる動画。
もしもNASCAR実施中に雨が降ったら?(ロードコース、ストリートコース限定)
NASCAR黎明期。途中、アメリカ連合国旗が見える部分に注目。NASCARの出自が良く分かる。
1.8トンある車が空を飛ぶ不思議な光景。ちなみにドライバーは怪我人0だが観客に怪我人が出てしまっている。
ちなみに踏まれたライアン・ニューマンはこの年の秋開催で自分が一回転するハメに(参考→http://www.youtube.com/watch?v=LvTMNGgC76s)
ゲームではあるが、NASCARの魅力がなんとなくわかる。誰がここまでやれと言った。
掲示板
58 ななしのよっしん
2023/06/17(土) 06:19:31 ID: 3hk1+Cg81Z
NASCARカマロ、ル・マン完走おめでとう!まさかLM-GTEとガチでヤり合える程速いとは……
59 ななしのよっしん
2023/06/17(土) 06:27:00 ID: HJF+vLPulT
ガレージ56枠で出走したカマロ、前後ライトとエアロパーツが追加されててカッコよかったなぁ。元からル・マン優勝経験のあるフォードやトヨタも来てくれないかな
元々NASCARもピット戦略ありの長距離レースとはいえ、ドライバーの保護を優先した重いスチールシャーシはどうだろうとか思ってたが杞憂だったようだ。ようつべの公式動画に北米ニキが「欧州の兄弟たちへのプレゼント(意訳)」とコメントしてたが、これもう黒船なんよ
60 ななしのよっしん
2023/09/30(土) 08:47:07 ID: mwzwYxGRHs
最近じゃアメリカ本国でもNASCARの人気低迷が激しいぞ
安全性重視で単純に抜きつ抜かれつ、クラッシュが減った事が原因らしい
急上昇ワード改
最終更新:2024/12/12(木) 20:00
最終更新:2024/12/12(木) 19:00
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