![]() |
この記事は第75回今週のオススメ記事に選ばれました! よりニコニコできるような記事に編集していきましょう。 |
第二外国語とは、母語を除いて二つ目に学習する外国語。日本の大学教育では必修科目とされているケースが多い。
日本人の外国語学習は、中学校で英語を習い始め、大学でもう一つの言語を勉強し始める場合がほとんどである。つまり、多くの日本人にとって英語が第一外国語となり、第二外国語とは英語以外の外国語ということになる。二外(にがい)、などと略して呼ぶこともある。更に学習外国語を増やしていくと、順に第三外国語、第四外国語、…となる。
理系・文系など学術分野を問わず多くの大学で一般教養における必修科目として存在する。今も昔も語学の苦手な学生たちの浅はかな頭を悩ませてきた罪深い教科である。
本記事では諸外国語を以下の二段階の難易度に分類して解説する。(下のリンクは記事内へのリンクです)
感じる難易度には個人差がありあくまで参考程度であるが、最高学府へ足を踏み入れてこの記事を読む者が、自らの分を超えた言語を選択して後悔して欲しくないので私的な見解をあえて述べることにする(不十分な点は編集を切に望む)。
対象とする言語は、第二外国語として開講している大学がそれなりにあるものである。大学によっては他の言語も第二外国語として認めている所や、講義としては開講するものの第二外国語単位の充当分としては認めない所などがあるため、履修の際には所属する大学の便覧等を確認されたい。
「第二外国語、何選ぼう?」という迷いは、入試に合格した者だけに許される嬉しい悩みである。春になると、決まってYahoo!知恵袋やおしえて!goo、はたまた2chの大学板・外国語板などに「何を選んだらいいか」「どれが簡単か、役に立つか」という同じような質問が雨後のタケノコのごとく乱立する。
各言語の概要は後の項目に譲るとして、ここでは、そんな言語選択の総合的なTipsを与えることを目的とする。
言語選択とは関係ないが、〜和辞典だけでなく和〜辞典(日本語からその言語をひく辞書)もケチらずに買っておかないと、使用頻度は低いものの地味に不便な思いをする。
ここでは、英語にも一部焦点を当てながら近代の我が国における外国語教育の変遷を俯瞰する。
外国語の学習が始まるのは旧制中学校からであった。英語が主に学ばれたが、ドイツ語・フランス語の授業もあり、場合によっては独仏語を第一外国語とすることもあったようである。旧学制において外国語が学ばれたのは、旧制中学以上の主に進学を目的とした中等・後期中等教育機関や商業学校であった。つまり外国語を学ぶことはエリートのみに許された特権だったと言える。
旧制高等学校に進学すると、学生は文科・理科に分かれたうえで更に、重きを置く外国語を英語・ドイツ語・フランス語の内から選ぶこととなった。すなわち文科理科ともに甲類は英語を主とするクラス、乙類はドイツ語を主とするクラス、丙類はフランス語を主とするクラスであった。しかし丙類を設置する旧制高校は少なく、多くの学生は高等学校進学にあたって英語かドイツ語のどちらかを自身の主力外国語として選ぶこととなった。
全体として、現在ほど極端な英語偏重ではなかったと概括できるものの、戦前期もやはり英語が最も重視された外国語であったことは間違いない。
アメリカを実質母体とする連合国総司令部の占領を被った日本は、自然と英語が外国語として重んじられることとなった。またこのとき、範とする国がイギリスから米国にシフトしたことにより、わが国ではアメリカ英語が学校教育で教えられるようになった。
新学制が整い、中学校で「外国語」が選択科目として採用され、英語・ドイツ語・フランス語から一つを選択して学ぶことになったが、多くの場合は英語が選ばれた。後に導入された大学入試共通一次試験(センター試験の前身)も、英語・ドイツ語・フランス語からのみの選択であった。
大学における第二外国語も、1980年代初頭ぐらいまではフランス語とドイツ語くらいしか選択肢が無かった。
定期的に学習指導要領が改正される中で、ドイツ語・フランス語以外にも中国語や朝鮮語を学んでもよいこととなった。大学入試センター試験においても、「外国語」の科目名で英語・フランス語・ドイツ語・中国語・韓国語の内から一言語を選んで受験する形になっている。現在、一部の中・高等学校や伝統ある有名私立校などで英語以外の外国語が学ばれている。
…が、実際には後期中等教育までの段階で英語以外の外国語、すなわち第二外国語が学ばれることは極めて稀である。これには、英語重視の社会的風潮や教員の確保、受験対策など数々の問題があり、状況はすぐに変えられるものではない。
従って現在のわが国の第二外国語の学習は、ほとんどの場合は大学入学時、18・19歳以降から始まることになる。以前と比べると選択できる言語の数は全体的に増えたと言えるが、大学によっては、依然選択肢が2・3言語しかないこともある。
言語によっては「第二外国語」として履修することを認めず、別の言語を履修していることを条件とするものもあるのでシラバスをよく確認しておきたい。また、ここに載っている数字は2014年現在のデータを英語版Wikipediaから引用したものだが、容易に変動しうるので注意。
以下の言語は、比較的オーソドックスで履修可能な大学も多く、また取り組みやすいものである。各言語の特徴をよく比べ、自分に合った言語を選びたい。
ドイツ語 | |
総話者数 | 1億2000万人 (方言含む) |
話者数の順位 | 10-11 |
言語系統 | インド・ヨーロッパ語族 ゲルマン語派 西ゲルマン語群 |
通用地域 | 大陸ヨーロッパ、アフリカ南部の一部など |
欧州系言語の中では比較的多くの日本人が第二外国語として学んできた。かつてドイツは哲学、文学、法律学、医学、科学に優れたヨーロッパの学問の中心であり、明治期の日本も諸学問の範を多くドイツに取っていた。
発音に例外が少なく、誤解を憚らずに言えばローマ字式に読むことができる。ほんの少し学習すれば、たとえ意味は分からずともドイツ語文をスラスラ読むことはできよう。
英語と同じくゲルマン系の言語であり、言語学的には英語に近いといえる[1]。その一方、主格・属格・与格・対格という「格」に応じて冠詞を使い分けたり、名詞が男性名詞・女性名詞・中性名詞という3つの「性」に分けられていたりと、英語では消滅した要素が残っているため、これを習得するまでが大変である。
文頭以外でも名詞の頭文字を大文字にするのだが、慣れないうちはうっかり忘れてしまいがちである。
かつては、著名な医学書や化学書の多くがドイツ語で書かれていたために、「理系学生の第二外国語といえばドイツ語」という風潮もあった。伝統ある国立大学には現在もなお、その名残をとどめているところもある。かつて医者の多くはカルテをドイツ語で書いていたが (そもそも「カルテ」という言葉自体、ドイツ語の Karte (英語の card に相当)に由来する外来語である。) 、最近では英語や日本語で書かれることも多い。現在の主要な科学論文は英語で書かれており、カルテも日本語での記載が推奨されているので、期待はしない方がよいと思われる。
ドイツ、
オーストリア、
スイス、
リヒテンシュタイン、
ベルギー、
ルクセンブルク、
欧州連合(EU)
フランス語 | |
総話者数 | 7500万人 3億3800万人(非母語話者含む) |
話者数の順位 | 18 5-6(非母語話者) |
言語系統 | インド・ヨーロッパ語族 イタリック語派 ロマンス語群 |
通用地域 |
欧州系言語の中では比較的多くの日本人が第二外国語として学んできた。フランスは比較的早くから民主主義をモットーにし、法律に関しても平等思想など現代法の根本となる概念もある。明治以降の日本の法律学にはフランス派とドイツ派の派閥があった。
母語話者の数は決して多くはないが、かつて国際共通語として用いられていたことやアフリカなどで広く公用語として使われていることから、学習者は非常に多い。
ノルマン・コンクエストによりフランスの支配を受けたイングランドには、支配者言語としてフランス語が流入した。庶民の日常生活に用いられる単語では古英語から由来する語が現代まで多く残ったが、特に抽象語などでは現代英語にはフランス語由来の語彙がかなり多くみられる。
必須語彙が比較的少なく、よく用いられる語を一通り学習すると、文章に現れる単語のかなりの割合を押さえられ、他のロマンス語より取り組みやすいと感じる人も少なくない。
難点は、豊かな語尾変化と発音、そして多義語と同音異字語の多さである。
さながら花畑に色とりどりの花が千々に咲き乱れるが如く、主語の「人称」や「数」、それから「時制」などに応じて動詞は様々に形を変え(これを「活用」という。)、また形容詞や名詞も「性」や「数」に応じて色々な姿を見せる(これを「曲用」という。)。
rの発音(有声口蓋垂摩擦音)やin, un, on, an等の鼻母音の発音が日本人には特に難しい。
よく使われる語は限られているものの、そうした出現頻度の高い基本語彙の多くは多義語であり、そうは問屋が卸さない。
音は同じでも綴りが異なる語(同音異字語)が多く、聞き取りには文脈判断と慣れが要求される。一方で綴り→読みは規則性が高く、規則さえ押さえればいろんな言語由来の綴りが混じり合っている英語より読みやすいかもしれない。
フランス、
スイス、
ベルギー、
ルクセンブルク、
モナコ、
欧州連合(EU)
ガボン、
カメルーン、
ギニア、
コート・ジボワール、
コモロ連合、
コンゴ共和国、
コンゴ民主共和国、
ジブチ、
セーシェル、
セネガル、
チャド、
トーゴ、
ニジェール、
ブルキナ・ファソ、
ブルンジ、
ベナン、
マダガスカル、
マリ、
モーリシャス、
ルワンダ、
中央アフリカ共和国、
赤道ギニア共和国
(ただし第二公用語としてや、支配的言語ではないものの公用語として採用している国も含んでいる)
ベトナム、
ラオス、
カンボジア、
シリア、
レバノン、
イラン、
バヌアツ共和国
中国語 | |
総話者数 | 6億6千万人(普通話) |
話者数の順位 | 1(普通話) |
言語系統 | シナ・チベット語族 |
通用地域 | 東アジア、東南アジア、世界各地に点在する華僑コミュニティ |
一口に「中国語」と言っても、実は方言によってかなりの差異がある。日本の教育機関で学ぶのは、中華人民共和国における標準語である普通話(北京語のアレンジ)がほとんどであるが、他にも呉語、上海語、客家語、香港や広東省などで使われている広東語(粤語)、台湾島や福建省を中心に使われる閩語、湘語、贛語などがあり、7つの方言に大別される。
困ったことに、文法のみならず発音や語彙、あいさつまで方言間で顕著に異なり、方言が違うと会話によるお互いの意思疎通は事実上不可能である。しかし、皆漢字の知識はあるため、紙に字を書いて筆談すればコミュニケーションをはかることができる。(日中台で差異のある単語もいくつか存在するので、それには注意されたい。)
また中華人民共和国の漢字は、日本の漢字よりも極端に簡略化した「簡体字」と言われる字体を使っているために、同じ意味でも日本の漢字と字形が異なることがある。だが単語や新たな漢字を知ると言う面では同じ漢字圏なのであまり問題ではない。むしろ、漢字を使う日本人には中国語習得の大きなアドバンテージがある[2]と言える。「繁体字」と呼ばれる、日本の旧字体にほぼ相当する字体を用いる地域(台湾・香港など)もある。
例:日本語の「経済戦争」は簡体字で書くと「经济战争」、繁体字で書くと「經濟戰爭」となる。
文字よりも発音の方が圧倒的に難しい。北京語には四声という独特の四種類の発音があり、それが一漢字ごとによって全部違うのが特徴である。ただし大部分は一種類、多くても二、三種類に収まる。少数の例外を除き、日本のような多数の読みは存在しない。覚えてしまえば楽である。詳細は中国語の項目を参考に。
大学によるが、恐らくほぼ北京語ベースの普通話を習う。C-POPファンなど台湾文化の愛好家は、注意すべきである。会話にはほぼ支障がないが(中華民国は中国語を公用語にしているため)、台湾の表記である繁体字で学習することはないかもしれない。
スペイン語 | |
総話者数 | 4億1000万人 |
話者数の順位 | 2 |
言語系統 | インド・ヨーロッパ語族 イタリック語派 ロマンス語群 |
通用地域 | スペイン、中南米、カリブなど |
スペインのほか、ブラジルを除く中南米諸国で共通語として使用されている、世界の主要国際言語の一つ。1位の中国語に次いで話者数が多い。ポルトガル語と同様、ラテンアメリカの各種文化を知る上では欠かせない言語である。
ロマンス語系言語の一つであり、フランス語等と同様ラテン語の文法・語彙を多く受け継いでいるが、語彙については、8世紀にスペインがイスラム圏の侵略を受けたことから、アラビア語の影響が受け継がれたものもある。ポルトガル語とは共通点が多く、片方を習得すればもう片方の理解も比較的容易である。
文法については癖があるものの、スペル・発音はほぼ規則どおりで、その点では比較的救われていると言える。本格的に習得する気はないが簡単なところだけ試しに覚えてみたいという人は、辞書やネットでの翻訳サービスで名詞を覚えるだけにとどめておき、文法には足を踏み入れないのがおすすめ。
メキシコ、
コスタリカ、
グアテマラ、
エルサルバドル、
ホンジュラス、
ニカラグア
コロンビア、
ベネズエラ、
エクアドル、
ペルー、
ボリビア、
チリ、
アルゼンチン、
ウルグアイ、
パラグアイ
ポルトガル語 | |
総話者数 | 2億2000万人 |
話者数の順位 | 6 |
言語系統 | インド・ヨーロッパ語族 イタリック語派 ロマンス語群 |
通用地域 | ポルトガル、ブラジルなど |
第二外国語の選択肢としては比較的マイナーだが、話者数は2億人を超える世界から見れば非常に影響力の大きい言語である。
もともとはスペイン北西部のガリシア州で話されるガリシア語と同じ言語だったが、政治的に別の国になったことによって別の言語としての道を歩むことになった。その後標準ポルトガル語が定められる際に、ガリシアから遠い南部の発音が採用されたためガリシア語と標準ポルトガルは発音がかなり異なる。正書法も違うが、文法・語彙はほとんど変わらないため片方を理解できるならばもう片方も読んで9割方理解できる。スペイン語とだと多少理解度は下がるが、おおかた理解できるといわれる。
上述のようにポルトガル語はイベリア半島西部発祥の言語だが、現在最も多く話されている国はポルトガルではない。かつてポルトガルが多く移民を送り込んだブラジルである。ブラジルの人口は1億人を超えており、ポルトガル語話者全体のなんと8割も占めている。
ブラジルは本国と地理的に遠いことなどもあり、同国で話されるポルトガル語は文法.発音など様々な面でポルトガル本国のものと大きく異なっているが、現在圧倒的な話者人口と影響力によってブラジルのポルトガル語が本国に逆に影響を与えるという事態になっている。イギリスとアメリカの英語でも同様の現象は起こっているが、現在ポルトガルは国際社会における影響力がかなり小さいこともあり、力関係の逆転がより顕著となっている。見出しにわざわざブラジルの国旗をつけたのはこのためである。
そんなわけで、ヨーロッパの外で「ポルトガル語」といえばだいたいこのブラジルのポルトガル語を指すし、日本で学習できるポルトガル語もだいたいブラジルポルトガル語である。日本には出稼ぎのブラジル人移民がたくさんおり(だいたい国別統計で3-4位)、彼らとのコミュニケーションが喫緊の課題となっているため需要は大きい。にもかかわらず学習者はあまりいない。駅などでポルトガル語の案内表示をみたことがある人もいるかもしれない。また、日本語にもパンやカステラなどポルトガルから戦国時代に輸入された言葉も数多い。実はかなり身近な言語なのである。
文法・語彙などの特徴はほぼスペイン語と同じで、上述のようにガリシア語ほどではないもののネイティブ同士ならなんとかお互いに意思疎通もできなくはないと言われるほどなのでそちらの項目を参照されたい。発音はスペイン語とはかなり違い、特にブラジルのものは癖がある。しかし他のロマンス語の例に漏れず規則性は高いのでそこは安心できる。
やはり多くはポルトガルよりも圧倒的な話者数を誇るブラジルに関わるものであり、ブラジルポルトガル語を学んだ方が実用的な面でのメリットは大きい。
ポルトガル以外は人口(≠話者数)の多い順。
ポルトガル、
ブラジル、
モザンビーク、
アンゴラ、
ギニアビサウ、
東ティモール、(
マカオ)、
カーボヴェルデ、
サントメ・プリンシペ
イタリア語 | |
総話者数 | 6400万人 |
話者数の順位 | 24 |
言語系統 | インド・ヨーロッパ語族 イタリック語派 ロマンス語群 |
通用地域 | 南ヨーロッパ |
フランス語とおなじく、ラテン語を母とするロマンス語群の言語だが、母上と比べると文法は簡略化されている。
発音はドイツ語同様、割と楽であり、日本人にはなじみやすい。文法は他のロマンス語とよく似ているが、時制の用法等ラテン語から引き継いでいる要素も多く、イタリア語独特の難しさがあるといわれる。また、文法用語も「遠過去」「先立未来」といったイタリア語特有の用語に慣れる必要がある。
また、「屈折」をマスターするのは楽ではない。冠詞の「曲用」は、フランス語よりも少々厄介な点もある。一見複雑で不規則も多い動詞の「活用」は、母であるラテン語を引き継ぐ要素である。
朝鮮語 (韓国語) | |
総話者数 | 約7700万 |
話者数の順位 | 17位 |
言語系統 | 孤立した言語 |
通用地域 | 朝鮮半島 |
文法上は日本語に近く、SOVの語順、膠着語(※)であること、前置詞ではなく後置詞を使うことなどが共通している。また、漢字熟語の大半(「電話」「改札」など)が日本語に由来するので、単語の類推ができるのも覚える上ではメリットである。一方、それ以外の語彙については、共通点が少ない。また、子音は中国語と同様有気音・無気音で使い分けるなどの特徴があり、正しく発音するのは難しい。ハングルをいちいち覚えないといけないのも大変だが、ハングルの原則を覚えること自体は難しくない。
朝鮮民主主義人民共和国及び大韓民国の公用語である。基本的には両国で話されている言語は同一であり、「朝鮮族の言語」という意味で「朝鮮語」の呼称が言語学界では整合的かつ一般的である。しかし朝鮮半島の分断に関係して、北朝鮮を想起させる「朝鮮」の語が忌避される傾向から、日本国内において一般向けに販売されている語学参考書のほとんどすべてが「韓国語」の呼称を用いている。大学教育においては、講義名や学科名が「朝鮮語」となっていたり「韓国語」となっていたり、あるいは「韓国朝鮮語」「コリア語」「ハングル語」などとしている場合もある。
※膠着語…接頭辞・接尾辞の付加によって単語に文法上の特徴を与える言語の総称。日本語も含まれる。cf:屈折語、孤立語
以下の言語は、語学に不得手な人が予備知識も無しに安易に取ることは感心できない言語である。つまり英語にさえ躓いているような人間が生半可な気持ちで履修申請してしまうと、ヘタすりゃ単位が取れずに留年する可能性があることを述べておく。その反面、学術を追求し刺激がほしい方には是非オススメである。なお、この節の最初に述べた通り大学によってはこのような難しい言語は第二外国語としての履修を認めていない場合があるので注意。
ロシア語 | |
総話者数 | 1億5000万人 |
話者数の順位 | 8 |
言語系統 | インド・ヨーロッパ語族 スラヴ語派 東スラヴ語群 |
通用地域 | 東ヨーロッパ、アジアの一部 |
ここで紹介する唯一のスラブ系言語である。1991年のソ連崩壊後から第二外国語として選択できる大学が増えた。隣国ゆえ、それなりに需要はあると思われるが、それなりに覚悟すべき言語でもある。
学習はキリル文字(33個)を覚えるところから始めなければならない。しかも「р」、「н」、「с」、「и」、「я」、「в」 (それぞれラテン文字の「r」「n」「s」「h」「ia」「b」に相当するが、発音は「r」「n」「s」「i」「ya」「v」に相当する) のようにラテン文字の見た目・読みに惑わされてしまいそうになる文字もある上、印刷文字と手書き文字が形がかなり異なるため(後者はラテン文字の筆記体に近い)両方覚えなければいけないので初学者はのっけから難関にぶち当たる。
ただし、英語などに比べて、綴りと読みの関係に例外が少ないので、読み方はわかりやすい。 ただし、発音が楽ということでは決して無く、スラブ語特有の子音の連続や硬音/軟音の区別など厄介な点が多い。正確な発音を目指そうとすると、特に日本人にとっては「р」、「ш」、「щ」、「ы」の発音が難しい。
文法は、インド・ヨーロッパ語族特有の「屈折」、すなわち「曲用」と「活用」をマスターすることが基本となる。まず、名詞・代名詞の「曲用」については、「性・数」が4種類、「格」が6種類あるので、単純計算で4×6=24通りに曲用する。ただし、「性・数」(男性単数・女性単数・中性単数・複数)は、その語尾から見分けがつき、形容詞も語尾が決まっているので、単語の品詞で迷うことは少ない。また、英語と違い冠詞は存在しない。一方、動詞の「活用」については、主語の「数」と「人称」、それから「時制」に応じて10通り+命令形2通りを覚える必要がある。
これでも、難易度としてはラテン語よりは低めだろう。ラテン語よりは不規則な面もあるが、英語に比べて文法面での不規則性は少ないため、一度基本をたたきこめばかなり応用がきく。もっとも、慣れるまでは活用表を横に置かないと、辞書もまともに引くことすらできないこともある。
アラビア語 | |
総話者数 | 2億9000万 |
話者数の順位 | 5 |
言語系統 | アフロ・アジア語族 セム語派 |
通用地域 | 中東 |
現代に対応させるための手直しを施してはいるが、言語自体の根幹は4世紀頃から変わってない、言わば「言語界のシーラカンス」。
文語(正則アラビア語=フスハー)と口語(地域方言=アーンミーヤ)に分かれており、教育機関で学ぶことになるのは間違いなくフスハーの方になる。二つのスタイルを状況に合わせて使い分けていく必要がある珍しい言語でもある。
習得難易度はラテン語と同じく最難関。NHKで語学講座が放送されているが、日本語で引けるまともな辞書がほぼない。英語が不得手なら、亜↔英と英↔和の二冊の辞書を併用する羽目になる。
アラビア語といえば、うねうねとした独特の文字を思い浮かべる人が多いだろう。表音文字なので書いてあるとおりに読めばいいのだが、初心者の第一の関門がまともに文字を読むことである。文字は右から左に(通常とは逆)読むが、数字はその逆(左から右)の上にアラビア仕様(よくアラビア数字といわれるがそれと別物。向こうではインド数字と言ったりする)となる。また、続け書きを前提としているため、一つの文字が独立・語頭・語中・語尾で違う形になる。
基本的に文脈で母音がわかるという特徴があるため、子音+長母音のみを表記する(アブジャドという文字種。kwskとかwktkとかを想像してもらえれば理解しやすいだろうか)。
ただし、テキストや子供の読み物については、文字の上に母音記号が振られる。簡単に言うと母音はa,i,uの3つ。しかし子音は日本人にとって発音が難しいものも多い。中でも「ض(ダード)」の発音はアラビア語特有のものとして知られており、アラビア語を「ダードの言語」と言ったりする。
be動詞にあたるものが基本的にないので、二語以上の名詞を活用させることによって文章を作ることも出来る。
単語の性別は男女の2つ、格変化は主対属の3つ、数詞変化も単数・双数・複数と3つに分かれる。さらに動詞であれば完了・未完了の活用形と10通りの派生形が加わる。辞書で動詞を引く際には、完了・第一形・三人称・男性・単数の基本形(語根)を割り出す必要があるため、接頭・接尾語も含めて、文法をきっちり理解してないと辞書すら引けない事になる。逆に言えば、語根から単語の意味を類推することも可能ということでもある。
イスラム社会が世界の最先端を行った時期がある影響で、アラビア語が元となった言葉は非常に多い。
枚挙にいとまがないので有名所を簡単に紹介すると、アルコール、アルケミー、アベレージにベガもアラビア語由来である。そうそう、マリクもアラビア語で「王」と言う意味になる。しかし魚は「サマク」で全部一緒くた、砂漠も「サハラ」で一緒くたである。サハラ砂漠をちゃんと言おうとすると「砂漠砂漠」になるのはその筋では有名な話。
アラブ首長国連邦、
アルジェリア、
イエメン、
イスラエル、
イラク、
エジプト、
エリトリア、
オマーン、
カタール、
クウェート、
サウジアラビア、
シリア、
スーダン、
チャド、
チュニジア、
パレスチナ自治政府、
バーレーン、
モーリタニア、
モロッコ、
ヨルダン、
リビア、
レバノン、
国際連合、アラブ連盟、
イスラム諸国会議機構、
アフリカ連合
ラテン語 | |
総話者数 | (母語話者はいない) |
話者数の順位 | ランク外(ただし学習者はそれなりに存在する) |
言語系統 | インド・ヨーロッパ語族 イタリック語派 |
通用地域・場面 | 西洋古典学界、西洋史学界、哲学界、西洋美術学界、キリスト教関係など |
古代ローマの言語。西ローマ帝国滅亡後も西欧諸国で教養言語として多く使われた。現在では共通語としての地位は無いが、歌唱言語としてや一部が学術用語などとして生き残っている。ラテン語のネイティブというのは存在しないので、その意味では殆ど死語に近い。
文法は、暗記すべき事項が多く、難易度が高い。インド・ヨーロッパ語族の特徴として「屈折」、すなわち「曲用」と「活用」をマスターしないといけないのだが、その種類が上述の諸言語と比べても多い。まず、「曲用」については、「格」が主格・属格・与格・対格・奪格・呼格の6種類、「数」が単数と複数の2種類、「性」が男性・女性・中性の3つ存在するので、単純計算で36通りのバリエーションを考慮しなければならない。しかも、名詞の曲用にかけては、大雑把に5種類の曲用のタイプが存在する。そして、動詞の「活用」は、さらにその上を行く。3~4種類の「法」、6種類の「時制」、2種類の「態」、そして主語の「人称」と「数」に応じて活用していくので、60以上のバリエーションを暗記していく必要がある。しかも、大雑把に4種類の活用のタイプが存在する。
だがその反面、文法的な不規則と言えるものがほとんど無く、見方によれば合理的とも言える。要するに、熟練者にとっては簡単だが、初心者にとっては辞書や曲用・活用の一覧表を常に持参し、それらにかぶりつかないと単語の意味すら理解できないという両極端な言語である。
現代ギリシア語 | |
総話者数 | 1200万人 |
話者数の順位 | 75 |
言語系統 | インド・ヨーロッパ語族 ギリシア語派 |
通用地域 | バルカン半島、地中海島嶼の一部 |
日本の大学においては、主に哲学、西洋古典学及び古代西洋史学研究のため、現代ギリシア語よりも古典ギリシア語の講座が置かれているケースが多い(だが両者に大して差は無い 結構違う)。西洋史系では古典ギリシア語に加えて現代ギリシア語を習うこともある。
チンプンカンプンだ、の意である。ギリシア語の難しさ、推して量るべし。
古典ギリシア語は、インド・ヨーロッパ語族の中でも「屈折」の著しい言語である。屈折とは、名詞・代名詞・形容詞などが姿を変える「曲用」と、動詞が姿を変える「活用」との総称である。
動詞は相、法、人称、数、及び時制に従って「活用」する。
名詞は性、数、格に従って「曲用」する。
もっともこのような活用が多いことそのものは他のヨーロッパ言語を少しでも学習したことがあればさして苦にはならない。面倒なのが不規則活用・曲用(第三変化)の多さと分詞の多用である。ただでさえ変化形が多いのに不規則が多いことで元の語を推測するのが大変である上、分詞を多用することで主語や文章のつながりを推測しながら読んでいかなければいけないので慣れないと非常に大変である。
古代のギリシア語には方言が多いのが特徴である。一般的にはアテナイ古典期(B.C. 5~4世紀)のアテネにおける方言である「アッティカ方言」が学ばれる。このアッティカ方言を指して「古典ギリシア語」と呼ばれる。プラトンやトゥキディデスはアッティカ方言を用いた。ほかに、ヘロドトスはイオニア方言を用い、女流詩人サッポーはまた別の方言で著述した。その後アッティカ方言は次第に共通語としての性格を増し、聖書ギリシア語 (コイネー)の基幹となった。
次の文章はプラトンの有名な著作『ソクラテスの弁明』冒頭の原文である。古典ギリシア語とはどんなものなのか、実際に見てほしい。
Ὅτι μὲν ὑμεῖς, ὦ ἄνδρες Άθηναῖοι, πεπόνθατε ὑπὸ τῶν ἐμῶν κατηγόρων, οὐκ οἶδα· ἐγὼ δ᾽ οὖν καὶ αὐτὸς ὑπ᾽ αὐτῶν ὀλίγου ἐμαυτοῦ ἐπελαθόμην, οὕτω πιθανῶς ἔλεγον. Καίτοι ἀληθές γε ὡς ἔπος εἰπεῖν οὐδὲν εἰρήκασιν.
あなたがたが、アテーナイの諸氏よ、私の告発者らによっていかなる心証を持つに至ったかは わたしは存じません。私自身はと言うと、もう少しで自分が誰なのかわからなくなるところでした。それほどの説得力ある話を彼ら(告発者ら)はしました。けれども本当のことは何一つといっていいほど語りませんでした。
Wikipediaよりコピペ。これくらいの文章なら、一年も勉強すれば辞書と文法書を片手に読むことができよう。だが古典ギリシア語を始める前に、まずは日本語で「ソクラテスの弁明」を読もう。話はそれからである。
掲示板
369 ななしのよっしん
2023/01/29(日) 16:36:18 ID: HoHSvgU0g6
>英語と親戚関係のような言語
おおかた、言語学を少しかじって「英語とドイツ語は同じゲルマン語族」「英語の単語の多くはラテン系言語からの借り物」みたいな知識を得てそう考えてるんだろうけど
実際、そんなジェネリック英語みたいな存在ではないからね、ドイツ語もスペイン語も
例えば英語では24をtwentyfour(20+4)と表現するが
ドイツ語ではこれがvierundzwanzig(4+20)となる
数字という日常会話の範疇でさえこういう大きな食い違いがある
そしてこういう英語とドイツ語の間に存在する(日本人は意外と知らない)差異みたいなものに注目する中で
我々がついつい「欧米」と一まとめにしてしまいがちな人々の中にも色々な人間、色々な考え方があることが実感としてわかる
ネットで調べただけではわからない世界の本質に触れる、そういう大事な機会になってると思うよ第二外国語は
370 ななしのよっしん
2023/05/08(月) 17:53:45 ID: UZJ6uEkZ13
いやさすがに第二やって世界の本質に触れる! みたいな壮大なモンじゃないと思うよw
ワイは第二にドイツ語やって以来趣味が高じて100数十言語つまみ食いした重度言語オタやが、じっさいこれだけやっても世界の本質なんかなーんもわからん
ていうかやればやるほど知らないことや分からんことが出てくるからむしろ前より知的に謙虚になったかもしれん…
己の無知と勉強不足は痛感すれども何かを知った気なんて1ミリもならんよ
ついでに言うと多言語やるとこれはあれと同じや、これってあれでやったやつやんけってなってむしろ各言語の差異より共通点に敏感になるやで(まあワイは言オタの中でも正書法・文法オタだから解釈違いと言われたらそれまでやが)
独語の真鍋先生や仏語の松尾先生、田島先生も常々はしがきに書いてるように言語なんてコーヒー飲みながら肩肘張らずにやるのがコツで、つまり意識低く素直に(この素直さってのが言語学習では重要)楽しむ気持ちが大事やで>これから第二取る各位
371 ななしのよっしん
2024/02/12(月) 17:44:56 ID: N89KPv98Bv
何歳でも習得可能? 第3、第4言語を学ぶ脳の部位は、母語と同じ
https://
多言語話者になるための脳科学的条件――新たな言語の文法習得を司る脳部位を特定――
https://
・英語やスペイン語等の習得経験のある日本語母語話者が、新たにカザフ語の文に音声で触れた時、その文法習得を司る脳部位を特定しました。
・この新たな言語習得を司る脳部位は、これまで母語や第2言語の文法処理に関わる「文法中枢」として研究チームが特定してきた「左下前頭回の背側部」と完全に一致しました。
・多言語の習得効果が累積することで、より深い獲得を可能にするという仮説「言語獲得の累積増進モデル」が、脳科学によって明確に裏付けられました。
いいね!
急上昇ワード改
最終更新:2025/02/11(火) 00:00
最終更新:2025/02/11(火) 00:00
ウォッチリストに追加しました!
すでにウォッチリストに
入っています。
追加に失敗しました。
ほめた!
ほめるを取消しました。
ほめるに失敗しました。
ほめるの取消しに失敗しました。