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ノーベル生理学・医学賞(スウェーデン語:Nobelpriset i fysiologi eller medicin)とは、生理学・医学の分野で最も重要な発見をした人に授与される賞である。
概要
ノーベル賞は、スウェーデンの化学者アルフレッド・ノーベルの遺志によって設立された、国際的な賞である。今日では、世界最高の権威性を備えた賞と見做されている。年に一度、物理学、化学、生理学・医学、文学、平和、そして経済学の6つの部門において、最も人類に貢献した人物・団体に贈られる。
このうち、ノーベル生理学・医学賞[1]は、生理学または医学の分野において最も重要な発見をした人に授与される。1~2分野の研究について、存命の人物1~3名が対象となる。選考は、スウェーデンのストックホルムにあるカロリンスカ研究所(カロリンスカ医科大学)の選考委員会による。受賞者の発表は10月上旬、授賞式はアルフレッド・ノーベルの命日である12月10日。
ノーベル賞のメダルの表側には、各賞共通でアルフレッド・ノーベルの横顔、名前、生没年が彫刻されている。ノーベル生理学・医学賞のメダルの裏側には、本を広げた医者が、病気の少女の喉の渇きを癒やそうと水を汲んでいる様子がデザインされている。メダルは重さ約200g、直径66mm。1980年以前は純金製のメダルだったが、現在は傷つきにくい18金を基材として24金でメッキが施されたメダルが授与されている。
1901年から2024年までの124年間に、229名(うち女性13名)が受賞した。受賞回数を国籍別にみると、アメリカ合衆国が最も多く113回、次いでイギリス34回、ドイツ16回、フランス11回である(二重国籍者含む)。
日本国籍の受賞者は、利根川進(1987年)、山中伸弥(2012年)、大村智(2015年)、大隅良典(2016年)、本庶佑(2018年)の5名。近年は日本人の受賞が増えたが、2000年代までは、ただ一人の例外である利根川進を除いて、すべて欧米の研究者が受賞していた。受賞には至らなかったものの、候補として挙がっていた日本人として、北里柴三郎(血清療法の開発)、野口英世(黄熱や梅毒の研究)、鈴木梅太郎(ビタミンB1の単離)、山極勝三郎(発がんメカニズムの研究)、呉建(副交感神経系に関する発見)などが知られている。
一覧
歴代のノーベル生理学・医学賞受賞者の一覧。
日本国籍のノーベル生理学・医学賞受賞者は「日本」節に再掲する。
1900年代
年 | 名前 | 国籍 | 受賞理由 |
---|---|---|---|
1901年 | エミール・アドルフ・フォン・ベーリング Emil Adolf von Behring |
ドイツ帝国 | 「ジフテリアに対する血清療法の研究」 ジフテリア菌に感染した動物の血清を投与することで、ジフテリアなどの感染症を予防・治療する方法を開発した。血清療法は北里柴三郎との共同研究だったが、北里には授与されなかった。 |
1902年 | ロナルド・ロス Ronald Ross |
イギリス | 「マラリアに関する研究」 マラリアの原因であるマラリア原虫が、ハマダラカの唾液腺に存在することを突き止め、マラリア原虫の生活環を明らかにした。 |
1903年 | ニールス・フィンセン Niels Ryberg Finsen |
デンマーク | 「尋常性狼瘡の光線治療法の研究」 皮膚結核の一種である尋常性狼瘡を、炭素アーク灯の光を用いて治療する方法を考案した。ただし、現在は抗生物質による治療が主流。 |
1904年 | イワン・パブロフ Ivan Petrovich Pavlov |
ロシア帝国 | 「消化生理の研究」 消化作用について研究し、消化液の分泌が中枢神経系に支配されていることなどを示した。 イヌに餌を与える際にベルを鳴らすことを繰り返すと、ベルを鳴らすだけで唾液を出すようになるという条件反射の実験「パブロフの犬」が一般に知られている。 |
1905年 | ロベルト・コッホ Robert Koch |
ドイツ帝国 | 「結核に関する研究」 結核菌を発見し、治療用ワクチンとしての「ツベルクリン」を精製した。ツベルクリンは現在、治療ではなく結核菌感染の診断に利用されている。 彼の名は、病原微生物特定の指針「コッホの原則」に残っている。 |
1906年 | カミッロ・ゴルジ Camillo Golgi |
イタリア王国 | 「神経系の構造研究」 ゴルジは、銀を用いて神経組織を染色する「ゴルジ染色」という手法を開発した。 カハールは、ゴルジ染色を用いて神経組織を研究し、神経系は個々のニューロンが互いに接合して構成されているとする「ニューロン説」を提唱した。 |
サンティアゴ・ラモン・イ・カハール Santiago Ramón y Cajal |
スペイン | ||
1907年 | シャルル・ルイ・アルフォンス・ラヴラン Charles Louis Alphonse Laveran |
フランス共和国 | 「疾病発生における原虫類の役割に関する研究」 マラリア患者の赤血球内部に存在する黒い粒を観察し、それがマラリアを引き起こす原生動物であることを発見した。 |
1908年 | イリヤ・メチニコフ Ilya Ilyich Mechnikov |
ロシア帝国 | 「免疫系の研究」 メチニコフは、免疫細胞が異物を細胞内に取り込む食作用をもつことを発見した。 エールリヒは、多くの異物を認識し、それぞれに抗体を産生する白血球が存在するという「側鎖説」を提唱した。これは天然には存在しない抗原にも抗体が産生される理由を説明づけられなかったため、のちに否定されたが、抗体に関する研究の起点となった。 |
パウル・エールリヒ Paul Ehrlich |
ドイツ帝国 | ||
1909年 | エミール・テオドール・コッハー Emil Theodor Kocher |
スイス | 「甲状腺の生理学・病理学および外科学に関する研究」 甲状腺の切除術を考案した。また、甲状腺の機能低下によって引き起こされるクレチン症に関する研究を行った。 |
1910年代
年 | 名前 | 国籍 | 受賞理由 |
---|---|---|---|
1910年 | アルブレヒト・コッセル Albrecht Kossel |
ドイツ帝国 | 「タンパク質と核酸に関する研究」 核酸(DNAおよびRNA)とその分解産物について研究したほか、タンパク質の同定法を開発して細胞内での役割を研究した。 |
1911年 | アルヴァル・グルストランド Allvar Gullstrand |
スウェーデン王国 | 「眼の屈折に関する研究」 眼球での光の屈折について研究し、網膜で像を結ぶ仕組みについて明らかにした。 |
1912年 | アレクシス・カレル Alexis Carrel |
フランス共和国 | 「血管縫合および臓器移植に関する研究」 血管同士を接続する血管吻合技術を開発した。また、イヌの臓器移植にも成功した。 |
1913年 | シャルル・ロベール・リシェ Charles Robert Richet |
フランス共和国 | 「アナフィラキシーに関する研究」 致死量に満たない少量のタンパク質を動物に投与したあと、一定期間後に再投与すると、激しいショックを引き起こすことを実験で示した。この現象は「アナフィラキシー」と命名された。 |
1914年 | ローベルト・バーラーニ Robert Bárány |
オーストリア=ハンガリー帝国 | 「内耳系の生理学および病理学に関する研究」 内耳の前庭と三半規管の温度変化が、めまいや不随意眼球運動を誘発することを発見し、内耳の機能、平衡感覚との関連について研究した。 |
1915年 | 受賞者なし。第一次世界大戦(1914年~1918年)の影響による。 | ||
1916年 | |||
1917年 | |||
1918年 | |||
1919年 | ジュール・ボルデ Jules Bordet |
ベルギー王国 | 「免疫に関する発見」 血清中の体液性免疫には、特定の微生物に対し反応する抗体と、多様な微生物に対し反応する補体が存在していることを確認した。そして、抗体が抗原と複合体を形成するとさらに補体が結合する「補体結合反応」を発見した。 |
1920年代
年 | 名前 | 国籍 | 受賞理由 |
---|---|---|---|
1920年 | アウグスト・クローグ Schack August Steenberg Krogh |
デンマーク | 「毛細血管運動に関する制御機構の発見」 骨格筋の毛細血管は筋の活動の程度によって開閉し、血液の循環を調節していることを発見した。 |
1921年 | 受賞者なし。 | ||
1922年 | アーチボルド・ヒル Archibald Vivian Hill |
イギリス | 「筋肉中の熱生成に関する発見」 筋肉での熱の生成について研究し、筋肉中の酸素は運動時ではなく回復時に消費されていることを発見した。 |
オットー・マイヤーホフ Otto Fritz Meyerhof |
ドイツ国 | 「筋肉中の乳酸代謝と酸素消費の一定の関係の発見」 炭水化物と乳酸の量、酸素の消費量を測定し、筋肉における乳酸代謝過程について研究した。なお、彼はこの研究から「乳酸学説」を提唱したが、この学説は誤りであることが判明し、のちに撤回している。 |
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1923年 | フレデリック・バンティング Frederick Grant Banting |
カナダ | 「インスリンの発見」 膵臓から、血糖値を下げるホルモン「インスリン」を抽出することに成功した。さらに、インスリンを大量に精製する方法を開発し、1型糖尿病患者に投与してその血糖降下作用を確認した。 詳細は「インスリン」の記事を参照。 |
ジョン・ジェームズ・リチャード・マクラウド John James Rickard Macleod |
イギリス | ||
1924年 | ウィレム・アイントホーフェン Willem Einthoven |
オランダ | 「心電図の機構の発見」 心臓の活動によって発生する微弱な電流を測定する「心電図」を考案した。現在でも、心疾患の診断・治療に広く利用されている。 |
1925年 | 受賞者なし。 | ||
1926年 | ヨハネス・フィビゲル Johannes Andreas Grib Fibiger |
デンマーク | 「寄生虫発がん説に関する研究」 ネズミに線虫が寄生したゴキブリを摂取させると胃がんが発生したことから、悪性腫瘍は寄生虫によって発生するという「寄生虫発がん説」を提唱した。ただし、この学説は非常に限定的なものであるため現在では誤りと考えられている。 |
1927年 | ユリウス・ワーグナー=ヤウレック Julius Wagner-Jauregg |
オーストリア共和国 | 「麻痺性痴呆に対するマラリア接種の治療効果の発見」 マラリア原虫を感染させた患者は高熱を発するが、梅毒によって認知症をきたした患者に対しては治療効果があることを発見した。ただし、危険を伴う方法であるため現在では行われていない。 |
1928年 | シャルル・ジュール・アンリ・ニコル Charles Jules Henri Nicolle |
フランス共和国 | 「発疹チフスに関する研究」 感染症の発疹チフスがシラミによって媒介されていることを、動物実験によって明らかにした。なお、発疹チフスを引き起こす直接の原因はリケッチア属の微生物である。 |
1929年 | クリスティアーン・エイクマン Christiaan Eijkman |
オランダ | 「抗神経炎ビタミンの発見」 米ぬかの中には脚気の治療に有効な成分が含まれていることを示した。ただし、実際に米ぬかから有効成分の「ビタミンB1(チアミン)」を抽出したのは、日本の鈴木梅太郎である。 |
フレデリック・ホプキンズ Sir Frederick Gowland Hopkins |
イギリス | 「成長促進ビタミンの発見」 牛乳の中には成長を促進させる成分が含まれていることを示した。この成分は、のちに「ビタミンA」と呼称される。 |
1930年代
年 | 名前 | 国籍 | 受賞理由 |
---|---|---|---|
1930年 | カール・ラントシュタイナー Karl Landsteiner |
オーストリア共和国 | 「ヒトの血液型の発見」 数人の血液を混合すると赤血球が凝集する場合があることから、ヒトの血液型を3つに分類した。翌年に別の研究者によって4番目の血液型が追加された。現在の「ABO式血液型」である。 |
1931年 | オットー・ワールブルク Otto Heinrich Warburg |
ドイツ国 | 「呼吸酵素の性質および作用機構の発見」 細胞、とくにがん細胞の呼吸について研究し、呼吸に関与する酸化酵素を発見した。 |
1932年 | チャールズ・シェリントン Sir Charles Scott Sherrington |
イギリス | 「神経細胞の機能に関する発見」 シェリントンは、筋の収縮および弛緩が神経組織に支配されていることを発見した。 エイドリアンは、神経の電気的な信号について研究し、一定の刺激が継続すると信号が弱まることを発見した。 |
エドガー・エイドリアン Edgar Douglas Adrian |
イギリス | ||
1933年 | トーマス・ハント・モーガン Thomas Hunt Morgan |
アメリカ合衆国 | 「遺伝における染色体の果たす役割に関する研究」 遺伝子とはどういうものかまだよく分かっていなかった時代において、ショウジョウバエの突然変異体を用いて「染色体地図」を作製し、遺伝子が染色体上に存在することを示した。 |
1934年 | ジョージ・H・ウィップル George Hoyt Whipple |
アメリカ合衆国 | 「貧血症例に対する肝臓療法に関する発見」 ウィップルは、貧血について研究しており、貧血のイヌにレバー(肝臓)を与えると赤血球が増加し貧血が改善することを示した。 マイノットとマーフィは、レバーの摂取が悪性貧血の改善に有効であることを示した。また、貧血の改善に有効な成分として「ビタミンB12」を単離した。 |
ジョージ・リチャーズ・マイノット George Richards Minot |
アメリカ合衆国 | ||
ウィリアム・P・マーフィ William Parry Murphy |
アメリカ合衆国 | ||
1935年 | ハンス・シュペーマン Hans Spemann |
ドイツ国 | 「胚発生におけるオーガナイザー効果の発見」 イモリの胚移植実験から原口背唇部は分化を誘導する能力をもつことを実証し、原口背唇部を「オーガナイザー(形成体)」と呼んだ。ヒルデ・マンゴルトと共同で行われた実験だったが、彼女は1924年に死去しており、ノーベル賞を授与されなかった。 |
1936年 | ヘンリー・ハレット・デール Sir Henry Hallett Dale |
イギリス | 「神経刺激の化学的伝達に関する発見」 レーヴィは、刺激を受けた神経細胞から化学物質が放出されること、化学物質によって情報が伝達されていることを明らかにした。 デールは、この化学物質「アセチルコリン」を同定し、アセチルコリンによる神経伝達について研究した。 |
オットー・レーヴィ Otto Loewi |
オーストリア連邦国 | ||
1937年 | セント=ジェルジ・アルベルト Albert von Szent-Györgyi Nagyrápolt |
ハンガリー王国 | 「生物学的燃焼過程とりわけビタミンCとフマル酸の触媒作用に関する発見」 アスコルビン酸が壊血病を防ぐ因子であることを突き止め、「ビタミンC」と命名した。また、生物学的燃焼過程におけるフマル酸の役割などを研究した。この燃焼過程は、のちに「クエン酸回路(TCAサイクル)」と呼ばれるようになる。 |
1938年 | コルネイユ・ハイマンス Corneille Jean François Heymans |
ベルギー王国 | 「呼吸制御における洞と大動脈機構の役割の発見」 頸動脈や大動脈に存在する化学受容器が血液中の酸素濃度などを検知することで、呼吸や血圧が調節されていることを明らかにした。 |
1939年 | ゲルハルト・ドーマク Gerhard Domagk |
ドイツ国 | 「プロントジルの抗菌効果の発見」 赤色の染料「プロントジル」の抗菌作用を発見した。プロントジルは生体内で代謝を受けスルファニルアミドとなり、これが抗菌作用を示す。 |
1940年代
年 | 名前 | 国籍 | 受賞理由 |
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1940年 | 受賞者なし。第二次世界大戦(1939年~1945年)の影響による。 | ||
1941年 | |||
1942年 | |||
1943年 | カール・ピーター・ヘンリク・ダム Henrik Carl Peter Dam |
デンマーク | 「ビタミンKの発見」 ニワトリにコレステロールを除いた餌と、純粋なコレステロールを与えると出血が止まらなくなる。このことから、コレステロールを除去する過程で血液凝固に関与する物質が一緒に除去されていると考え、「ビタミンK」を発見した。 |
エドワード・アダルバート・ドイジー Edward Adelbert Doisy |
アメリカ合衆国 | 「ビタミンKの化学的性質の発見」 「ビタミンK」はビタミンK1とビタミンK2の2種類存在することを発見し、その化学構造を解明した。また、ビタミンK1を合成することにも成功した。 |
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1944年 | ジョセフ・アーランガー Joseph Erlanger |
アメリカ合衆国 | 「単一の神経線維の高度に分化した機能に関する発見」 オシロスコープを用いて神経の活動電位を測定し、神経線維によってその電気的な信号の伝導速度が異なることを発見、神経線維を分類した。 |
ハーバート・ガッサー Herbert Spencer Gasser |
アメリカ合衆国 | ||
1945年 | アレクサンダー・フレミング Sir Alexander Fleming |
イギリス | 「ペニシリンと種々の感染症に対するその治療効果の発見」 フレミングは、実験中に偶然、アオカビが抗菌作用のある物質を生合成していることを発見し「ペニシリン」を抽出した。 チェーンとフローリーは、ペニシリンを精製し、その治療効果を再発見すると医薬品として実用化した。 詳細は「ペニシリン」の記事を参照。 |
エルンスト・ボリス・チェーン Ernst Boris Chain |
イギリス | ||
ハワード・フローリー Sir Howard Walter Florey |
オーストラリア | ||
1946年 | ハーマン・J・マラー Hermann Joseph Muller |
アメリカ合衆国 | 「X線照射法による突然変異発生の発見」 ショウジョウバエにX線を照射すると、突然変異体が発生することを発見した。人為的に変異を起こすことが可能となり、遺伝子研究の発展に寄与した。 |
1947年 | カール・コリ Carl Ferdinand Cori |
アメリカ合衆国 | 「グリコーゲンの触媒的変換経路の発見」 エネルギー貯蔵物質であるグリコーゲンの合成や分解について研究し、その過程を解明した。 激しい運動などで短時間に多量のエネルギーを必要とした際、グルコースを乳酸に変換しATPを生み出す「コリ回路」を発見したことでも知られる。 |
ゲルティー・コリ ♀ Gerty Theresa Cori |
アメリカ合衆国 | ||
バーナード・ウッセイ Bernardo Alberto Houssay |
アルゼンチン | 「糖代謝における脳下垂体前葉ホルモンの果たす役割に関する発見」 脳下垂体を切除するとインスリンに過剰に反応し低血糖に陥ることから、インスリンと拮抗するホルモンが脳下垂体より分泌されていることを発見した。 たとえば、下垂体前葉より分泌される成長ホルモンなどが、インスリンとは逆に血糖を上昇させる作用をもつ。 |
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1948年 | パウル・ヘルマン・ミュラー Paul Hermann Müller |
スイス | 「いくつかの節足動物に対する接触毒としてのDDTの強力な効果の発見」 有機塩素系の農薬「DDT(ジクロロジフェニルトリクロロエタン)」の殺虫効果を確認し、マラリアや発疹チフスなどの感染症の蔓延を抑制した。 DDTは難分解性・高蓄積性でありヒトへの慢性毒性も懸念されるため、現在はストックホルム条約や化審法によって規制されている。 |
1949年 | ヴァルター・ヘス Walter Rudolf Hess |
スイス | 「内臓活動を統合する間脳の機能的組織の発見」 動物の脳に電極を挿入して電気的な刺激を与える実験から間脳の機能を地図化し、間脳が内臓の機能を制御していることを明らかにした。 |
エガス・モニス Antonio Caetano de Abreu Freire Egas Moniz |
ポルトガル | 「ある種の精神病に対する前頭葉白質切断の治療的価値の発見」 脳の前頭葉の神経を切断する「ロボトミー」を施術すると、統合失調症の改善が認められることを示した。 ただし、患者の人格変化・知能低下などの不可逆的な障害をきたすため現在は行われていない。近年は抗精神病薬による治療が主流。 |
1950年代
年 | 名前 | 国籍 | 受賞理由 |
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1950年 | エドワード・カルビン・ケンダル Edward Calvin Kendall |
アメリカ合衆国 | 「副腎皮質ホルモンおよびその構造と生物学的作用に関する発見」 ケンダルは、副腎皮質からホルモンを抽出し構造を研究した。また、合成に成功した。 ライヒスタインもまた独立にホルモンを抽出、それがステロイドであることを示した。合成にも成功し、副腎皮質ステロイドの工業的生産に貢献した。 ヘンチは、副腎皮質ホルモンが関節リウマチなどの炎症性の疾患に対して高い治療効果をもつことを発見した。 |
タデウシュ・ライヒスタイン Tadeus Reichstein |
スイス | ||
フィリップ・ショウォルター・ヘンチ Philip Showalter Hench |
アメリカ合衆国 | ||
1951年 | マックス・タイラー Max Theiler |
南アフリカ連邦 | 「黄熱およびその治療法に関する発見」 黄熱(黄熱病)は、細菌ではなくウイルスによる感染症であることを明らかにした。また、ワクチンを開発し予防法を確立した。 |
1952年 | セルマン・ワクスマン Selman Abraham Waksman |
アメリカ合衆国 | 「結核に有効な最初の抗生物質ストレプトマイシンの発見」 放線菌から「ストレプトマイシン」などの抗生物質を発見し、結核治療に有効であることを示した。ストレプトマイシンの直接の発見者はアルバート・シャッツだったが、シャッツはワクスマンの指導のもとストレプトマイシンについて研究していた研究生に過ぎなかったためノーベル賞を授与されなかった。 |
1953年 | ハンス・クレブス Hans Adolf Krebs |
イギリス | 「クエン酸回路の発見」 エネルギーを生成する最も重要な代謝経路「クエン酸回路(TCAサイクル)」を提唱した。クエン酸回路は解糖系、脂肪酸のβ酸化、アミノ酸の生合成などと密接に関係している。提唱者にちなみ「クレブス回路」とも呼ばれる。 |
フリッツ・アルベルト・リップマン Fritz Albert Lipmann |
アメリカ合衆国 | 「補酵素Aと中間代謝におけるその重要性の発見」 酵素反応を補助する「補酵素A(コエンザイムA)」を発見した。クレブスの提唱したクエン酸回路には仮想の物質が存在していたが、それが補酵素Aであることも示した。補酵素Aはクエン酸回路、脂肪酸のβ酸化、コレステロール生合成などに関与している。 |
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1954年 | ジョン・フランクリン・エンダース John Franklin Enders |
アメリカ合衆国 | 「種々の組織培地中で増殖する急性灰白髄炎ウイルスの能力の発見」 急性灰白髄炎(ポリオ)を引き起こすポリオウイルスを、ヒト胎児培養細胞を用いて試験管内で培養することに成功した。それまで、動物の脳や脊髄を使用しなければ培養できなかったポリオウイルスを大量に培養することが可能となり、ワクチンの開発やウイルス学の発展に貢献した。 |
トーマス・ハックル・ウェーラー Thomas Huckle Weller |
アメリカ合衆国 | ||
フレデリック・チャップマン・ロビンス Frederick Chapman Robbins |
アメリカ合衆国 | ||
1955年 | ヒューゴ・テオレル Axel Hugo Theodor Theorell |
スウェーデン王国 | 「酸化酵素の作用機序および性質に関する発見」 シトクロムやペルオキシダーゼなど、鉄原子を含み酸化還元反応に関与する酵素について研究した。また、彼の研究はアルコールを代謝する酵素であるアルコールデヒドロゲナーゼの研究の先駆けとなった。 |
1956年 | アンドレ・フレデリック・クルナン André Frédéric Cournand |
アメリカ合衆国 | 「心臓カテーテル法および循環器系の病理学的変化に関する発見」 フォルスマンは、自身の腕の静脈から心臓までカテーテルを挿入・撮影し、心疾患の新たな検査法や治療法の可能性を見出した。ただし、彼はこの一件で病院を解雇されている。 クルナンとリチャーズは、循環器系について病理学的な調査を行った。また、カテーテル法を改良して心疾患の診断法を開発した。現在、カテーテル法は狭心症や心筋梗塞、不整脈などの診断・治療に応用されている。 |
ヴェルナー・フォルスマン Werner Forssmann |
西ドイツ | ||
ディキソン・W・リチャーズ Dickinson W. Richards |
アメリカ合衆国 | ||
1957年 | ダニエル・ボベット Daniel Bovet |
イタリア | 「特定の体内物質の作用とりわけ血管系と骨格筋の活動を抑制する合成化合物に関する発見」 「抗ヒスタミン薬」を合成した。また、アルカロイドの作用について研究した。抗ヒスタミン薬はアレルギーに関与する生理活性物質「ヒスタミン」の作用を抑制する薬物で、アレルギー疾患の治療に用いられる。ただし、副作用として眠気や倦怠感などの中枢抑制作用がある。 |
1958年 | ジョージ・ウェルズ・ビードル George Wells Beadle |
アメリカ合衆国 | 「厳密に化学的事象を制御する遺伝子のふるまいの発見」 遺伝子に変異が生じると産生される酵素にも変異が生じ、物質の生合成や代謝に影響することを実験によって示した。ここから、「一遺伝子一酵素説」を提唱した。 |
エドワード・ローリー・タータム Edward Lawrie Tatum |
アメリカ合衆国 | ||
ジョシュア・レーダーバーグ Joshua Lederberg |
アメリカ合衆国 | 「遺伝子組換えおよび細菌の遺伝物質に関する発見」 細菌の接合(細胞が融合して核が融合すること)による「遺伝子組換え」を発見した。また、バクテリオファージというウイルスが細菌の遺伝子をほかの細菌に導入する現象「形質導入」を発見した。 |
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1959年 | セベロ・オチョア Severo Ochoa |
アメリカ合衆国 | 「リボ核酸とデオキシリボ核酸の生物学的合成機構の発見」 オチョアは、リボ核酸(RNA)の生合成に係わる酵素「RNAポリメラーゼ」を発見した。 コーンバーグは、デオキシリボ核酸(DNA)の生合成に係わる酵素「DNAポリメラーゼ」を発見した。 |
アーサー・コーンバーグ Arthur Kornberg |
アメリカ合衆国 |
1960年代
年 | 名前 | 国籍 | 受賞理由 |
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1960年 | フランク・マクファーレン・バーネット Sir Frank Macfarlane Burnet |
オーストラリア | 「後天的免疫寛容の発見」 胎児が獲得する「免疫寛容」について研究した。免疫寛容とは、免疫細胞が自己の細胞やタンパク質に対して免疫応答を示さない仕組みのこと。彼らの研究は、臓器移植による拒絶反応を抑制する研究の基盤となった。 |
ピーター・メダワー Peter Brian Medawar |
イギリス | ||
1961年 | ゲオルク・フォン・ベーケーシ Georg von Békésy |
アメリカ合衆国 | 「蝸牛における刺激の物理的機構の発見」 内耳の蝸牛において音を感知するメカニズムについて研究し、進行波モデルを考案した。実際には、蝸牛のコルチ器において音の振動を感知している。 |
1962年 | フランシス・クリック Francis Harry Compton Crick |
イギリス | 「核酸の分子構造および生体内の情報伝達におけるその重要性に関する発見」 ワトソンとクリックは、DNAのX線回析像をもとにDNAの二重らせん構造を発見した。 ウィルキンスは、DNAについて研究し、そのX線回析像をワトソンらに提供した。これを実際に撮影したのはロザリンド・フランクリンだったが、彼女は1958年に死去しており、ノーベル賞を授与されなかった。 |
ジェームズ・ワトソン James Dewey Watson |
アメリカ合衆国 | ||
モーリス・ウィルキンス Maurice Hugh Frederick Wilkins |
ニュージーランド イギリス |
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1963年 | ジョン・C・エックルス Sir John Carew Eccles |
オーストラリア | 「神経細胞膜の周縁部と中心部において興奮と抑制に関与するイオン機構に関する発見」 エックルスは、シナプスの興奮と抑制について研究し、抑制性物質の作用によって過分極する(興奮しにくくなる)ことを発見した。 ホジキンとハクスリーは、神経細胞の内外に存在するイオンが流入ないし流出することで、活動電位が生じることを発見した。 |
アラン・ロイド・ホジキン Alan Lloyd Hodgkin |
イギリス | ||
アンドリュー・フィールディング・ハクスリー Andrew Fielding Huxley |
イギリス | ||
1964年 | コンラート・ブロッホ Konrad Bloch |
アメリカ合衆国 | 「コレステロールと脂肪酸の代謝機構および制御に関する発見」 リュネンは、酢酸と補酵素Aからなる「アセチルCoA」を発見した。また、脂肪酸のβ酸化のメカニズムを解明した。 ブロッホは、アセチルCoAからのコレステロール生合成過程を明らかにし、コレステロールからホルモンや胆汁酸が合成されることを示した。 |
フェオドル・リュネン Feodor Lynen |
西ドイツ | ||
1965年 | フランソワ・ジャコブ François Jacob |
フランス共和国 | 「酵素およびウイルス合成の遺伝的制御に関する発見」 ルヴォフは、バクテリオファージというウイルスに感染しゲノムを保持している溶原菌について研究し、紫外線照射などの外的因子によってファージ合成が誘発されることを示した。 ジャコブとモノーは、DNAにはタンパク質のアミノ酸配列をコードしている領域だけでなく、タンパク質の発現を調節している転写調節領域があると考え「オペロン説」を提唱した。 |
アンドレ・ルヴォフ André Lwoff |
フランス共和国 | ||
ジャック・モノー Jacques Monod |
フランス共和国 | ||
1966年 | ペイトン・ラウス Peyton Rous |
アメリカ合衆国 | 「腫瘍を誘発するウイルスの発見」 肉腫(骨や筋肉などに発生するがん)の移植だけでなく、肉腫から抽出・ろ過した液体の注入であってもがんが発生することから、発がん性のウイルスを発見した。研究から半世紀経過しての受賞だった。 |
チャールズ・ハギンズ Charles Brenton Huggins |
アメリカ合衆国 | 「前立腺がんのホルモン療法に関する発見」 前立腺がんは男性ホルモンによって増悪する一方で、女性ホルモンによって進行が抑制されることから、女性ホルモン投与による前立腺がん治療を考案した。 |
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1967年 | ラグナー・グラニト Ragnar Granit |
スウェーデン王国 | 「眼の生理学的・化学的な基礎視覚過程に関する発見」 グラニトは、色を感知する錐体細胞のタンパク質が3種類あること、それぞれ異なる波長の光を吸収することを突き止めた。 ハートラインは、個々の光受容細胞が連携しており、刺激を受けた細胞が周囲の細胞の活動を低下させるために対象の形が認識されることを示した。 ワルドは、網膜の細胞にはビタミンAを含むタンパク質が存在しており、光による分子構造の変化が視覚に関与していることを明らかにした。 |
ハルダン・ケファー・ハートライン Haldan Keffer Hartline |
アメリカ合衆国 | ||
ジョージ・ワルド George Wald |
アメリカ合衆国 | ||
1968年 | ロバート・W・ホリー Robert W. Holley |
アメリカ合衆国 | 「遺伝暗号およびタンパク質合成におけるその機能の解明」 ニーレンバーグは、単一の塩基が並ぶRNAからは単一のアミノ酸で構成されるタンパク質を得られることを発見。遺伝暗号解読の基礎を築いた。 コラナは、目的の塩基配列をもつRNAの合成法を考案し遺伝暗号を解読した。 ホリーは、アラニンの転移RNAの構造を解析しタンパク質合成への関与を示した。 |
ハー・ゴビンド・コラナ Har Gobind Khorana |
アメリカ合衆国 | ||
マーシャル・ニーレンバーグ Marshall W. Nirenberg |
アメリカ合衆国 | ||
1969年 | マックス・デルブリュック Max Delbrück |
アメリカ合衆国 | 「ウイルスの複製機構および遺伝的構造に関する発見」 バクテリオファージが細菌に感染すると内包したDNAを宿主細胞内に注入、遺伝子を複製しタンパク質を合成する。このメカニズムについて研究した。また、細菌も突然変異を起こし自然選択(自然淘汰)されること、ウイルスや化学物質への耐性を獲得しうることを示した。 |
アルフレッド・ハーシー Alfred D. Hershey |
アメリカ合衆国 | ||
サルバドール・エドワード・ルリア Salvador E. Luria |
アメリカ合衆国 |
1970年代
年 | 名前 | 国籍 | 受賞理由 |
---|---|---|---|
1970年 | ベルンハルト・カッツ Sir Bernard Katz |
イギリス | 「神経終末における液性伝達物質およびその貯蔵、放出、不活性化の機構に関する発見」 カッツは、神経伝達について研究し、神経伝達物質「アセチルコリン」が神経細胞内部のシナプス小胞に貯蔵されていること、その放出にCa2+が関与することを突き止めた。 オイラーは、交感神経系の神経伝達物質「ノルアドレナリン」を発見した。神経終末に貯蔵されており、神経の興奮によって放出されることを示した。 アクセルロッドは、アドレナリンなどの「カテコールアミン」の代謝経路について研究。神経系において放出されたカテコールアミンは、放出した神経細胞に再取り込みされることを発見した。 |
ウルフ・スファンテ・フォン・オイラー Ulf von Euler |
スウェーデン王国 | ||
ジュリアス・アクセルロッド Julius Axelrod |
アメリカ合衆国 | ||
1971年 | エール・サザランド Earl W. Sutherland, Jr. |
アメリカ合衆国 | 「ホルモンの作用機序に関する発見」 セカンドメッセンジャーの「環状アデノシン一リン酸(cAMP)」を発見した。セカンドメッセンジャーとは、細胞が受容体を介して情報を受け取ったあと、その情報を二次的に伝達する物質のこと。cAMPは、たとえば糖や脂質の代謝の調節に関与している。 |
1972年 | ジェラルド・モーリス・エデルマン Gerald M. Edelman |
アメリカ合衆国 | 「抗体の化学構造に関する発見」 エデルマンは、抗体のジスルフィド結合を切断して抗体の構造を調べ、そのアミノ酸配列によって抗原特異性が決定づけられることを示した。 ポーターは、パパインという酵素を用いて抗体を切断し、抗体がH鎖とL鎖それぞれ2本ずつからなるY字型のタンパク質であることを示した。 |
ロドニー・ロバート・ポーター Rodney R. Porter |
イギリス | ||
1973年 | カール・フォン・フリッシュ Karl von Frisch |
西ドイツ | 「個体的および社会的な行動様式の組織化と誘発に関する発見」 フリッシュは、ミツバチが8の字に飛ぶ「ミツバチのダンス」によって仲間に情報を伝達していることを発見、動物行動学(エソロジー)を開拓した。 ローレンツは、雛の本能的な学習現象「刷り込み」について研究した。動物行動学の創始者の一人。 ティンバーゲンは、海鳥の求愛行動のメカニズムを解明。動物行動学の発展に寄与した。 |
コンラート・ローレンツ Konrad Lorenz |
オーストリア共和国 | ||
ニコ・ティンバーゲン Nikolaas Tinbergen |
イギリス | ||
1974年 | アルベルト・クラウデ Albert Claude |
ベルギー王国 | 「細胞の構造的および機能的組織に関する発見」 クラウデは、電子顕微鏡を用いて細胞の微細構造を研究。がん細胞と正常細胞それぞれからミクロソームを分画し、構造を調べた。 デューブは、ラットの肝細胞から「リソソーム」を発見。その機能や性質について研究した。 パラーデは、電子顕微鏡を用いて「リボソーム」を発見し、機能について研究した。 |
クリスチャン・ド・デューブ Christian de Duve |
ベルギー王国 | ||
ジョージ・エミール・パラーデ George E. Palade |
アメリカ合衆国 | ||
1975年 | デビッド・ボルティモア David Baltimore |
アメリカ合衆国 | 「腫瘍ウイルスと細胞の遺伝物質との相互作用に関する発見」 ドゥルベッコは、腫瘍ウイルスの遺伝子により正常な細胞が形質転換、すなわちウイルスの遺伝子が宿主の遺伝子に組み込まれてがん化することを示した。 ボルティモアとテミンは、RNAウイルスについて研究し、それぞれ独立に「逆転写酵素(RNA依存性DNAポリメラーゼ)」を発見、セントラルドグマを修正した。 |
レナート・ドゥルベッコ Renato Dulbecco |
アメリカ合衆国 | ||
ハワード・マーティン・テミン Howard Martin Temin |
アメリカ合衆国 | ||
1976年 | バルーク・サミュエル・ブランバーグ Baruch S. Blumberg |
アメリカ合衆国 | 「感染性疾患の起源と伝播の新たな機構に関する発見」 ブランバーグは、オーストラリア先住民の血清に多量に存在し、感染性肝炎と関連のあるタンパク質「オーストラリア抗原」を発見した。今日では「HBs抗原」と呼ばれる。B型肝炎感染の指標である。 ガジュセックは、パプアニューギニアの風土病「クールー病」の感染要因を明らかにした。パプアニューギニアの一部では、死者を弔うため遺体を食す風習があり、感染者の遺体を食べることで感染が広がっていた。 |
ダニエル・カールトン・ガジュセック D. Carleton Gajdusek |
アメリカ合衆国 | ||
1977年 | ロジェ・ギルマン Roger Guillemin |
アメリカ合衆国 | 「脳のペプチドホルモン産生に関する発見」 それぞれ独立に、脳の視床下部から分泌されているホルモンを抽出し、下垂体からのホルモン分泌を調節していることを発見した。また、そのホルモンの構造を解明した。下垂体がホルモンの調節を担っていることは知られていたが、下垂体もまた視床下部からのホルモン調節を受けることが示された。 |
アンドルー・ウィクター・シャリー Andrew V. Schally |
アメリカ合衆国 | ||
ロサリン・ヤロー ♀ Rosalyn Yalow |
アメリカ合衆国 | 「ペプチドホルモンのラジオイムノアッセイの開発」 放射性同位体で標識したインスリンを用いて、血中に微量に含まれているインスリン濃度を測定する方法「ラジオイムノアッセイ(放射免疫測定)」を開発した。インスリン以外のホルモンや酵素の濃度測定にも応用されている。ソロモン・バーソンとの共同研究だったが、彼は1972年に死去しており、ノーベル賞を授与されなかった。 |
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1978年 | ヴェルナー・アーバー Werner Arber |
スイス | 「制限酵素の発見と分子遺伝学の問題への応用」 アーバーは、ウイルスや細菌のDNAについて研究し、DNAを切断する「I型制限酵素」を発見した。 スミスは、「II型制限酵素」を発見し、DNAの特定の塩基配列を識別して切断していることを示した。 ネイサンズは、制限酵素を用いて発がん性ウイルスのDNAを研究し、その遺伝構造を明らかにした。特定の遺伝子のみを分離する手法も確立され遺伝子工学の発展に貢献した。 |
ダニエル・ネイサンズ Daniel Nathans |
アメリカ合衆国 | ||
ハミルトン・スミス Hamilton O. Smith |
アメリカ合衆国 | ||
1979年 | アラン・コーマック Allan M. Cormack |
アメリカ合衆国 | 「コンピュータ支援断層撮影法の開発」 コーマックは、X線を用いて生体の組織の違いを数学的に解析する理論を構築した。 ハウンズフィールドは、コーマックの理論をもとにコンピュータを用いてデータを処理し、脳の断層の撮影に成功。「コンピュータ断層撮影(CT)」を開発した。 |
ゴッドフリー・ハウンズフィールド Godfrey N. Hounsfield |
イギリス |
1980年代
年 | 名前 | 国籍 | 受賞理由 |
---|---|---|---|
1980年 | バルフ・ベナセラフ Baruj Benacerraf |
アメリカ合衆国 | 「免疫反応を調節する細胞表面上の遺伝的に決定された構造に関する発見」 ベナセラフは、今日では「主要組織適合遺伝子複合体(MHC)」と呼ばれている遺伝子複合体によって免疫応答が調節されていることを見出した。 スネルは、特定の遺伝子領域だけが異なるマウスを作製、そのマウス間で移植を行いマウスのMHCである「H-2」を発見した。 ドーセは、何度も輸血を受けた患者の血液を調べ、ヒトのMHCである「ヒト白血球型抗原(HLA)」の存在を示した。 |
ジャン・ドーセ Jean Dausset |
フランス共和国 | ||
ジョージ・スネル George D. Snell |
アメリカ合衆国 | ||
1981年 | ロジャー・スペリー Roger W. Sperry |
アメリカ合衆国 | 「大脳半球の機能分化に関する発見」 左右の大脳半球を接続している脳梁が離断された「分離脳」の研究を行い、左脳と右脳がそれぞれ特有の機能や独立した意識をもつことを明らかにした。この研究は、左脳と右脳に単純に優劣がつけられないことも示唆している。 |
デイヴィッド・ヒューベル David H. Hubel |
アメリカ合衆国 | 「視覚系における情報処理に関する発見」 脳の視覚野で情報が処理されるメカニズムについて共同で研究した。ネコの視覚野に電極を挿入し、どのような視覚的情報で反応(発火)するかを調べ、個々の細胞がそれぞれ特定の情報の処理を請け負うことなどを発見した。 |
|
トルステン・ウィーセル Torsten N. Wiesel |
スウェーデン王国 | ||
1982年 | スネ・ベリストローム Sune K. Bergström |
スウェーデン王国 | 「プロスタグランジン類および関連した生物活性物質に関する発見」 ベリストロームは、血圧低下や発熱などに係わる「プロスタグランジン」を精製した。さらに、その構造を決定し不飽和脂肪酸から合成されることを示した。 サミュエルソンは、ベリストロームと共同でプロスタグランジンを精製、その代謝メカニズムを明らかにした。また、血液凝固に係わる「トロンボキサン」、炎症に係わる「ロイコトリエン」などを発見した。 ベーンは、「プロスタサイクリン」を発見した。また、鎮痛薬のアスピリンがプロスタグランジンの生合成を阻害することで抗炎症作用を示すことを解明した。 |
ベンクト・サミュエルソン Bengt I. Samuelsson |
スウェーデン王国 | ||
ジョン・ベーン John R. Vane |
イギリス | ||
1983年 | バーバラ・マクリントック ♀ Barbara McClintock |
アメリカ合衆国 | 「可動性の遺伝因子の発見」 トウモロコシの実の色や葉の模様と遺伝との関連性について研究し、ゲノム上を移動する「トランスポゾン(動く遺伝子)」の概念を提唱した。この理論は、DNAが遺伝子そのものだと明らかになる以前に発表された先駆的な研究だったため、受け入れられるまで四半世紀を要した。 |
1984年 | ニールス・イェルネ Niels K. Jerne |
デンマーク | 「免疫系の発達と制御における特異性に関する理論とモノクローナル抗体の生産原理の発見」 イェルネは、抗体は互いに反応しあいながら一つのネットワークを形成しているという「ネットワーク説」など、免疫系に関する理論を提唱した。 ケーラーとミルスタインは、がん細胞と抗体産生細胞を融合させることで単一の抗原決定基のみと反応する「モノクローナル抗体」の作製に成功。作製法の確立によって抗体の研究や医療に貢献した。 |
ジョルジュ・J・F・ケーラー Georges J.F. Köhler |
西ドイツ | ||
セーサル・ミルスタイン César Milstein |
アルゼンチン イギリス |
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1985年 | マイケル・ブラウン Michael S. Brown |
アメリカ合衆国 | 「コレステロール代謝の調節に関する発見」 細胞表面のLDLコレステロール受容体を発見し、この受容体の機能不全が家族性高コレステロール血症に関係していることを明らかにした。動脈硬化や心筋梗塞・脳梗塞などの循環器系疾患の研究に寄与した。 |
ジョーゼフ・ゴールドスタイン Joseph L. Goldstein |
アメリカ合衆国 | ||
1986年 | スタンリー・コーエン Stanley Cohen |
アメリカ合衆国 | 「成長因子の発見」 ニワトリの胚にマウスの腫瘍を移植すると神経が急激に成長したことから、神経細胞の分化・増殖を促す「神経成長因子(NGF)」を発見した。さらに、皮膚や粘膜などの上皮細胞の分化・増殖を促す「上皮成長因子(EGF)」も発見し、これらがタンパク質であることを明らかにした。 |
リータ・レーヴィ=モンタルチーニ ♀ Rita Levi-Montalcini |
イタリア アメリカ合衆国 |
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1987年 | 利根川進 とねがわ すすむ Susumu Tonegawa |
日本 | 「多様な抗体を生成する遺伝的原理の解明」 天然・人工問わず無数に存在する抗原(細菌やウイルスなど)それぞれに対し、特異的に結合できる抗体が生み出される仕組みを解明した。抗体をコードしている遺伝子が再構成されるため、限られた遺伝子断片をもとに多様な抗体を産生することができ、さまざまな抗原に対応できる。 |
1988年 | ジェームス・ブラック Sir James W. Black |
イギリス | 「薬物治療における重要な原理の発見」 ブラックは、受容体を阻害する薬物の治療への応用を着想し、βブロッカー「プロプラノロール」、H2ブロッカー「シメチジン」を開発した。前者は狭心症など、後者は胃・十二指腸潰瘍などの治療に用いられる。 エリオンとヒッチングスは、がん細胞や細菌・ウイルスの増殖メカニズムについて研究し、増殖を阻害する薬物の臨床応用を着想。DNAの合成を阻害する「メルカプトプリン」「アザチオプリン」「アシクロビル」などを開発した。 |
ガートルード・エリオン ♀ Gertrude B. Elion |
アメリカ合衆国 | ||
ジョージ・ヒッチングス George H. Hitchings |
アメリカ合衆国 | ||
1989年 | J・マイケル・ビショップ J. Michael Bishop |
アメリカ合衆国 | 「レトロウイルスのがん遺伝子が細胞起源であることの発見」 ラウス肉腫ウイルスという発がん性のレトロウイルスがもつ、細胞をがん化させる遺伝子「Src」の近縁遺伝子を、ニワトリの正常細胞の中から発見した。これにより、がんは必ずしもウイルスなどの外的要因によって引き起こされるものではなく、正常細胞の遺伝子変異による可能性が示された。 |
ハロルド・ヴァーマス Harold E. Varmus |
アメリカ合衆国 |
1990年代
年 | 名前 | 国籍 | 受賞理由 |
---|---|---|---|
1990年 | ジョセフ・マレー Joseph E. Murray |
アメリカ合衆国 | 「ヒトの疾患治療における臓器および細胞の移植に関する発見」 マレーは、アザチオプリンなどの免疫抑制薬が臓器移植による拒絶反応を抑えることを応用して、世界で初めて腎移植を成功させた。 トーマスは、白血病患者への骨髄移植による治療法を確立した。HLA(白血球の血液型)が適合する肉親を選び免疫抑制薬を投与することで、移植片対宿主病(移植された臓器の免疫細胞がレシピエントの臓器を攻撃する反応)を抑える。 |
エドワード・ドナル・トーマス E. Donnall Thomas |
アメリカ合衆国 | ||
1991年 | エルヴィン・ネーアー Erwin Neher |
ドイツ | 「細胞内の単一イオンチャネルの機能に関する発見」 細胞膜には、細胞内外のイオンの通り道となるタンパク質「イオンチャネル」が存在する。このイオンチャネル内をイオンが通過した際に発生する電位を検出する「パッチクランプ法」を開発した。イオンチャネルと疾患の関連や細胞間の情報伝達に関する研究に寄与した。 |
ベルト・ザクマン Bert Sakmann |
ドイツ | ||
1992年 | エドモンド・フィッシャー Edmond H. Fischer |
スイス アメリカ合衆国 |
「生物学的制御機構としての可逆的なタンパク質リン酸化に関する発見」 ATPからタンパク質にリン酸基を移す酵素「プロテインキナーゼ」と、リン酸化されたタンパク質からリン酸基を取り除く酵素「ホスファターゼ」を発見した。リン酸化・脱リン酸化によって酵素や受容体の構造が変化することで活性が制御されている。 |
エドヴィン・クレープス Edwin G. Krebs |
アメリカ合衆国 | ||
1993年 | リチャード・ロバーツ Richard J. Roberts |
イギリス | 「分断遺伝子の発見」 それぞれ独立に、遺伝子がDNAの複数の領域に分断された状態で存在することを発見した。それまでDNA上に連続的に存在していると考えられていた遺伝子が、実際には「イントロン」というタンパク質に反映されない塩基配列を含んでおり、DNAからmRNA(伝令RNA)を合成する過程において必要な遺伝子断片だけを繋げる「スプライシング」が起こることを見出した。 |
フィリップ・シャープ Phillip A. Sharp |
アメリカ合衆国 | ||
1994年 | アルフレッド・ギルマン Alfred G. Gilman |
アメリカ合衆国 | 「Gタンパク質および細胞内情報伝達におけるこれらのタンパク質の役割の発見」 細胞内の情報伝達に関わる「グアニンヌクレオチド結合タンパク質(Gタンパク質)」を発見した。細胞表面の受容体に情報伝達物質やホルモンが結合すると、受容体に共役しているGタンパク質がGαサブユニットおよびGβγ複合体に分離し、それぞれが酵素やイオンチャネルなどに作用する。 |
マーティン・ロッドベル Martin Rodbell |
アメリカ合衆国 | ||
1995年 | エドワード・ルイス Edward B. Lewis |
アメリカ合衆国 | 「初期胚発生における遺伝的制御に関する発見」 ルイスは、ショウジョウバエを用いて遺伝子と器官発生について研究。ハエの器官の位置と染色体上の遺伝子の位置が一致することを発見した。 ニュスライン=フォルハルトとヴィーシャウスは、突然変異を起こしたショウジョウバエの交配実験から胚の発生を制御する遺伝子を同定した。 彼らの研究は、受精卵という一つの細胞が分裂・分化して多様かつ複雑な器官を形成する一連の過程が、正確に行われることの究明に寄与した。 |
クリスティアーネ・ニュスライン=フォルハルト ♀ Christiane Nüsslein-Volhard |
ドイツ | ||
エリック・ヴィーシャウス Eric F. Wieschaus |
アメリカ合衆国 | ||
1996年 | ピーター・ドハーティー Peter C. Doherty |
オーストラリア | 「細胞性免疫防御の特異性に関する発見」 ウイルスに感染した細胞を免疫細胞が認識し排除するメカニズムを解明した。細胞の表面には「主要組織適合遺伝子複合体(MHC)」という物質が存在しており、T細胞はこれを介してウイルスなどを認識する。ウイルスだけでなく、がん細胞に対する免疫応答、自己免疫疾患や糖尿病の研究に貢献した。 |
ロルフ・ツィンカーナーゲル Rolf M. Zinkernagel |
スイス | ||
1997年 | スタンリー・B・プルシナー Stanley B. Prusiner |
アメリカ合衆国 | 「プリオン(感染の新しい生物学的原理)の発見」 伝達性海綿状脳症について研究し、感染因子である病原性タンパク質を精製し「プリオン」と命名した。プリオンは生体内にもともと存在しているタンパク質だが、感染性プリオンは異常な構造をとっており、正常プリオンを感染性プリオンに変化させ脳の神経細胞を破壊する。ヒトのクロイツフェルト・ヤコブ病、クールー病、ウシの狂牛病などの感染因子である。 |
1998年 | ロバート・ファーチゴット Robert F. Furchgott |
アメリカ合衆国 | 「心血管系における情報伝達分子としての一酸化窒素に関する発見」 ファーチゴットは、血管内皮細胞に血管平滑筋を弛緩させる因子の存在を見出し「内皮由来弛緩因子(EDRF)」と命名。のちに、これが「一酸化窒素(NO)」であることを発見した。 イグナロもまた、EDRFの実体が気体の一酸化窒素であることを突き止めた。 ムラドは、ニトログリセリンなどの血管拡張薬が血管内で一酸化窒素を遊離することで血管を弛緩させることを明らかにした。 |
ルイ・イグナロ Louis J. Ignarro |
アメリカ合衆国 | ||
フェリド・ムラド Ferid Murad |
アメリカ合衆国 | ||
1999年 | ギュンター・ブローベル Günter Blobel |
アメリカ合衆国 | 「タンパク質がその細胞内の輸送と局在化を司る内因性の信号を有することの発見」 リボソームによって合成されたタンパク質が小胞体へと正確に輸送され局在化するメカニズムを解明した。タンパク質に内在する「シグナルペプチド」の配列が、タンパク質の各細胞小器官への輸送・局在化を決定づけている。 |
2000年代
年 | 名前 | 国籍 | 受賞理由 |
---|---|---|---|
2000年 | アルビド・カールソン Arvid Carlsson |
スウェーデン王国 | 「神経系における情報伝達に関する発見」 カールソンは、「ドーパミン」の神経伝達物質としての作用を解明した。また、ドーパミンの作用が十分でないとパーキンソン病を発症すること、ドーパミン合成の材料となる「L-ドパ」が治療に有効であることを明らかにした。 グリーンガードは、受容体を起点とした細胞内情報伝達について解明した。受容体が情報を受け取ると、細胞内タンパク質のリン酸化や脱リン酸化を介して情報が伝達される。 カンデルは、アメフラシを用いて神経機能について研究を行い、神経のシグナル伝達効率の変化が記憶の形成に関与することを明らかにした。 |
ポール・グリーンガード Paul Greengard |
アメリカ合衆国 | ||
エリック・カンデル Eric R. Kandel |
アメリカ合衆国 | ||
2001年 | リーランド・ハートウェル Leland H. Hartwell |
アメリカ合衆国 | 「細胞周期の主要な制御因子の発見」 ハートウェルは、出芽酵母を用いて細胞周期について研究し、細胞周期の制御遺伝子「cdc28」などを同定した。また、細胞周期チェックポイント(DNA損傷や複製エラーの監視機構)を見出した。 ハントは、ウニの受精卵中には細胞分裂と同期して増減するタンパク質が存在することを発見し、これを「サイクリン」と命名した。サイクリンは、Cdcタンパク質と協働して、細胞周期を制御している。 ナースは、分裂酵母を用いて研究を行い細胞周期の制御遺伝子「cdc2」などを同定した。彼らの研究は、がん細胞の研究などに影響を与えた。 |
ティモシー・ハント Tim Hunt |
イギリス | ||
ポール・ナース Sir Paul M. Nurse |
イギリス | ||
2002年 | シドニー・ブレナー Sydney Brenner |
イギリス | 「器官発生とプログラム細胞死の遺伝的制御に関する発見」 ブレナーは、Caenorhabditis elegansという線虫を用いて多細胞生物の器官発生を解析。ゲノム・遺伝子研究の嚆矢となった。 サルストンは、C. elegansの器官発生の研究から不必要になった細胞が死に至ることを発見。プログラムされた細胞死「アポトーシス」を見出した。 ホロビッツは、C. elegansの研究を通して、アポトーシスに必要不可欠な遺伝子やアポトーシスした細胞の除去を制御する遺伝子を同定した。 |
ロバート・ホロビッツ H. Robert Horvitz |
アメリカ合衆国 | ||
ジョン・サルストン John E. Sulston |
イギリス | ||
2003年 | ポール・ラウターバー Paul C. Lauterbur |
アメリカ合衆国 | 「核磁気共鳴画像法に関する発見」 ラウターバーは、磁場中の原子核が特定の周波数の電磁波と共鳴する「核磁気共鳴(NMR)」現象を利用して、生体内の水の分布を検出・断層画像化した。 マンスフィールドは、ラウターバーの手法を改良。得られたデータを数学的に処理し高速で画像化できるようにして「核磁気共鳴画像法(MRI)」の臨床応用を可能とした。 |
ピーター・マンスフィールド Sir Peter Mansfield |
イギリス | ||
2004年 | リチャード・アクセル Richard Axel |
アメリカ合衆国 | 「嗅覚受容体および嗅覚系の組織の発見」 ラットの遺伝子を解析し、匂い物質を受け取る嗅覚受容体が1,000種類ほど存在すること、それらがGタンパク質共役受容体であること、一つの嗅神経には1種類の嗅覚受容体しか発現しないことを示した。なお、ヒトの嗅覚受容体は400種類ほど存在する。一つの匂い物質は複数の嗅覚受容体を刺激するため、刺激を受けた受容体のパターンを記憶・照合することで匂いを嗅ぎ分けている。 |
リンダ・バック ♀ Linda B. Buck |
アメリカ合衆国 | ||
2005年 | バリー・マーシャル Barry J. Marshall |
オーストラリア | 「細菌ヘリコバクター・ピロリおよび胃炎と消化性潰瘍疾患におけるその役割の発見」 胃炎や胃・十二指腸潰瘍について共同研究し、原因細菌Helicobacter pyloriを発見した。それまで、胃の強酸性環境下では細菌は生存できないと考えられていたが、マーシャルは自らH. pyloriの培養液を飲んで胃炎を発症することで実証した。H. pyloriはウレアーゼという酵素を産生しアンモニアを合成できるため、周囲の胃酸を中和し生存できる。 |
ロビン・ウォレン J. Robin Warren |
オーストラリア | ||
2006年 | アンドリュー・ファイアー Andrew Z. Fire |
アメリカ合衆国 | 「RNA干渉(二本鎖RNAによる遺伝子サイレンシング)の発見」 線虫Caenorhabditis elegansを用いた実験を行い「RNAi |
クレイグ・メロー Craig C. Mello |
アメリカ合衆国 | ||
2007年 | マリオ・カペッキ Mario R. Capecchi |
アメリカ合衆国 | 「胚性幹細胞の使用によりマウスに特定の遺伝子改変を導入する原理の発見」 カペッキとスミティーズは、相同組換えを利用した遺伝子導入法「遺伝子ターゲティング」を確立した。 エヴァンズは、マウスの「ES細胞(胚性幹細胞)」の培養に成功した。 彼らの研究は「遺伝子改変マウス」の作製を可能とした。たとえば、特定の遺伝子が無効化された「ノックアウトマウス」は、その遺伝子の機能の究明、遺伝子疾患のメカニズムの研究、治療薬の開発などに利用される。 |
マーティン・エヴァンズ Sir Martin J. Evans |
イギリス | ||
オリヴァー・スミティーズ Oliver Smithies |
アメリカ合衆国 | ||
2008年 | ハラルド・ツア・ハウゼン Harald zur Hausen |
ドイツ | 「子宮頸がんを引き起こすヒトパピローマウイルスの発見」 子宮頸がんリスク因子としての「ヒトパピローマウイルス(HPV)」を発見した。また、100種類以上の型があるHPVのうち、高リスク型の「HPV16」「HPV18」を同定した。現在、子宮頸がん予防のためのワクチンが利用されている。 |
フランソワーズ・バレ=シヌシ ♀ Françoise Barré-Sinoussi |
フランス共和国 | 「ヒト免疫不全ウイルスの発見」 後天性免疫不全症候群(AIDS)を引き起こすレトロウイルスを発見した。このウイルスは、のちに「ヒト免疫不全ウイルス(HIV)」と命名された。この発見は、AIDSの予防および治療の研究に貢献した。 |
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リュック・モンタニエ Luc Montagnier |
フランス共和国 | ||
2009年 | エリザベス・H・ブラックバーン ♀ Elizabeth H. Blackburn |
オーストラリア アメリカ合衆国 |
「テロメアと酵素テロメラーゼによる染色体の保護の発見」 染色体の末端にある「テロメア」について研究。特定の塩基配列が繰り返し存在しており染色体の保護を担うことを発見した。さらに、「テロメラーゼ」というDNAポリメラーゼによってテロメアが伸長することを示した。がんや老化に関与しており、治療法の研究に活かされている。 |
キャロル・W・グライダー ♀ Carol W. Greider |
アメリカ合衆国 | ||
ジャック・W・ショスタク Jack W. Szostak |
アメリカ合衆国 |
2010年代
年 | 名前 | 国籍 | 受賞理由 |
---|---|---|---|
2010年 | ロバート・G・エドワーズ Robert G. Edwards |
イギリス | 「体外受精の開発」 体外受精技術を確立し、通常の子どもと同様に健康な試験管ベビーを誕生させた。体外受精とは不妊治療の一つで、採取した精子と卵子をシャーレの中で培養して受精卵にしてから女性の子宮に戻すというもの。倫理的問題も伴うが、不妊症の治療は大きく進歩した。 |
2011年 | ブルース・ボイトラー Bruce A. Beutler |
アメリカ合衆国 | 「自然免疫の活性化に関する発見」 ボイトラーは、突然変異マウスの研究から、免疫細胞表面にある「Toll様受容体(TLR)」が細菌のもつリポ多糖(LPS)を認識すること、これにより免疫系が活性化することを発見した。 ホフマンは、突然変異ショウジョウバエの研究から、「Toll遺伝子」によって自然免疫(生まれながらに備わっている免疫)が活性化されることを実証した。 |
ジュール・ホフマン Jules A. Hoffmann |
フランス共和国 | ||
ラルフ・スタインマン Ralph M. Steinman |
カナダ | 「樹状細胞および適応免疫におけるその役割の発見」 免疫細胞の一種「樹状細胞」を発見した。T細胞に抗原を提示・活性化させることで、免疫応答に寄与する。 スタインマンは、授賞が発表される3日前に死去していた。ノーベル賞は存命の人物を対象とする原則があるが、存命と認識のうえで選考が行われたため、授賞決定後に死去した場合は取り消さないという規定に準じ決定通り授与された。 |
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2012年 | ジョン・ガードン Sir John B. Gurdon |
イギリス | 「成熟細胞が初期化され多能性を得ることの発見」 ガードンは、カエルの細胞核を未受精卵へ移植することによりクローンの作製に成功、「ES細胞(胚性幹細胞)」をはじめとする再生医療の研究の礎を築いた。 山中は、成熟した細胞に特定の遺伝子を導入するとリプログラミングされ、多様な細胞に分化する能力を備えた「iPS細胞(人工多能性幹細胞)」となることを発見した。再生医療への応用が見込まれる。 詳細は「iPS細胞」の記事を参照。 |
山中伸弥 やまなか しんや Shinya Yamanaka |
日本 | ||
2013年 | ジェームズ・ロスマン James E. Rothman |
アメリカ合衆国 | 「細胞内の主要な輸送系である小胞輸送を制御する機構の発見」 ロスマンは、小胞(ホルモンなどの貯蔵や運搬を担う袋のような構造)が物質を正しい場所まで輸送し、適切に放出するメカニズムを示した。 シェクマンは、小胞輸送のシステムに異常をきたした酵母を用いて研究を行い、小胞輸送に関与する遺伝子を同定した。 スードフは、マウスの脳細胞を用いた研究から、小胞に内包された神経伝達物質が適切なタイミングで放出されることを明らかにした。 |
ランディ・シェクマン Randy W. Schekman |
アメリカ合衆国 | ||
トーマス・スードフ Thomas C. Südhof |
アメリカ合衆国 | ||
2014年 | ジョン・オキーフ John O'Keefe |
アメリカ合衆国 イギリス |
「脳における空間認知システムを構成する細胞の発見」 オキーフは、ラットを用いた実験から、動物自身がどこにいるかを認識する「場所細胞」を発見した。また、場所細胞の発火タイミングがθ波の位相と関連していることも明らかにした。 モーセル夫妻は、受容野が格子状に配置され場所細胞に空間情報を伝える「格子細胞」を発見した。これらの細胞の連携により動物は自分の周囲を空間的に認識することができる。 |
マイブリット・モーセル ♀ May-Britt Moser |
ノルウェー | ||
エドバルド・モーセル Edvard I. Moser |
ノルウェー | ||
2015年 | ウィリアム・C・キャンベル William C. Campbell |
アイルランド アメリカ合衆国 |
「線虫の寄生によって引き起こされる感染症に対する新たな治療法に関する発見」 土壌中の放線菌Streptomyces avermitilisから、マクロライド系の抗寄生虫薬「アベルメクチン」を発見した。また、研究をもとに開発された抗寄生虫薬「イベルメクチン」はオンコセルカ症(糸状虫症)などの治療に用いられており、患者を失明の危機から救っている。 |
大村智 おおむら さとし Satoshi Ōmura |
日本 | ||
屠呦呦 ♀ と ゆうゆう Youyou Tu |
中国 | 「マラリアに対する新たな治療法に関する発見」 キク科植物のクソニンジンから、抗マラリア薬「アルテミシニン」を発見した。天然物としては珍しいペルオキシド(R-O-O-R')構造を有し、これが薬理作用に関与すると考えられている。 |
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2016年 | 大隅良典 おおすみ よしのり Yoshinori Ohsumi |
日本 | 「オートファジーの仕組みの解明」 細胞のオートファジーの機構を解明した。「オートファジー(Autophagy)」とは、自分自身(auto-)を食べること(phagy)。細胞は、細胞内にあるタンパク質を自ら分解し再利用する機構を備えている。細胞内に膜が形成され分解対象のタンパク質を包み込むと、液胞に取り込まれ液胞内の分解酵素によってタンパク質が分解される。 |
2017年 | ジェフリー・ホール Jeffrey C. Hall |
アメリカ合衆国 | 「概日リズムを制御する分子機構の発見」 一般に「体内時計」と呼ばれる「概日リズム(サーカディアンリズム)」について研究。ショウジョウバエの突然変異体を用いた研究から約24時間周期の分子メカニズムを発見し、これを制御する「時計遺伝子」を同定した。概日リズムは植物の就眠運動、ヒトのホルモン分泌リズム、自律神経系のバランス、時差ぼけなどに影響を及ぼす。また、ずれた概日リズムは光刺激によって補正される。 |
マイケル・ロスバッシュ Michael Rosbash |
アメリカ合衆国 | ||
マイケル・ヤング Michael W. Young |
アメリカ合衆国 | ||
2018年 | ジェームズ・P・アリソン James P. Allison |
アメリカ合衆国 | 「負の免疫制御の阻害によるがん治療法の発見」 アリソンは、免疫や腫瘍について研究し、T細胞の活性化抑制に関与する受容体「CTLA-4」を発見した。また、抗CTLA-4抗体のがん治療への有効性を示し、抗がん薬「イピリムマブ」の開発に貢献した。 本庶もまた、免疫系について研究し、T細胞表面に発現している受容体「PD-1」の発見に携わった。また、がん細胞表面のタンパク質「PD-L1」と結合すると免疫応答が抑制されることを明らかにした。この研究をもとに、抗PD-1抗体「ニボルマブ」、抗PD-L1抗体「デュルバルマブ」などの抗がん薬が開発された。 |
本庶佑 ほんじょ たすく Tasuku Honjo |
日本 | ||
2019年 | ウィリアム・ケリン William G. Kaelin Jr |
アメリカ合衆国 | 「細胞の酸素利用可能性の感知と適応の発見」 動物が酸素の少ない環境にも適応できる仕組みを明らかにした。細胞内ではタンパク質「低酸素誘導因子(HIF)」が合成されているが、酸素が十分に存在する環境においては酸素と結合し、別のタンパク質「VHL」によってユビキチン化を受け分解される。しかし、酸素の少ない環境においては分解されず蓄積、「エリスロポエチン」というホルモンの合成を亢進させ、酸素を運搬する赤血球の産生を促す。 |
ピーター・ラトクリフ Sir Peter J. Ratcliffe |
イギリス | ||
グレッグ・セメンザ Gregg L. Semenza |
アメリカ合衆国 |
2020年代
年 | 名前 | 国籍 | 受賞理由 |
---|---|---|---|
2020年 | ハーヴィー・オルター Harvey J. Alter |
アメリカ合衆国 | 「C型肝炎ウイルスの発見」 輸血や針刺し事故など、主に血液を介して感染して慢性肝炎を引き起こす「C型肝炎ウイルス」を発見した。C型肝炎ウイルスによる肝炎は70%ほどが慢性化し、肝硬変や肝細胞がんに進展するおそれがある。C型肝炎ウイルスの発見により血液検査や抗ウイルス薬の開発が可能となった。 |
マイケル・ホートン Michael Houghton |
イギリス | ||
チャールズ・ライス Charles M. Rice |
アメリカ合衆国 | ||
2021年 | デヴィッド・ジュリアス David Julius |
アメリカ合衆国 | 「温度と触覚の受容体の発見」 ジュリアスは、トウガラシの辛味成分カプサイシンを用いて、皮膚の感覚神経にある熱を感知する受容体「TRPV1」を発見した。 パタプティアンは、物理的な刺激を感知する受容体「PIEZO1」「PIEZO2」を発見した。 両者はそれぞれ、冷たさを感知する受容体「TRPM8」も発見している。 温度や触覚のメカニズムの解明は、慢性疼痛などの痛みを和らげる治療法の開発に繋がる。 |
アーデム・パタプティアン Ardem Patapoutian |
アメリカ合衆国 | ||
2022年 | スバンテ・ペーボ Svante Pääbo |
スウェーデン | 「絶滅したヒト族のゲノムと人類の進化に関する発見」 旧人類のネアンデルタール人の骨からDNAを抽出して解析した。また、シベリアの洞窟から旧人類のデニソワ人を発見した。DNA解析による研究手法が導入されたため、パレオゲノミクス(古遺伝学)が切り拓かれた。 |
2023年 | カリコー・カタリン ♀ Katalin Karikó |
ハンガリー アメリカ合衆国 |
「COVID-19に対する効果的なmRNAワクチンの開発を可能にしたヌクレオシド塩基修飾に関する発見」 酵素や抗体などタンパク質を作る設計図となる「mRNA(伝令RNA)」は不安定で壊れやすく、炎症反応を誘発する欠点がある。しかし、mRNAを構成するヌクレオシドの構造を部分的に変えると壊れにくくなり、炎症反応も軽減されることを発見した。SARS-CoV-2による感染症(COVID-19)によるパンデミックに際してmRNAワクチンの開発に応用された。 |
ドリュー・ワイスマン Drew Weissman |
アメリカ合衆国 | ||
2024年 | ヴィクター・アンブロス Victor Ambros |
アメリカ合衆国 | 「miRNAと転写後の遺伝子発現の調節におけるその役割の発見」 線虫Caenorhabditis elegansから、のちに「miRNA(マイクロRNA)」と呼ばれるようになる低分子RNA(lin-4およびlet-7)を発見した。miRNAはタンパク質への翻訳を経ずmiRNAのまま多数のmRNA(伝令RNA)の遺伝子発現を抑制する。がん化の抑制にも関与している。 |
ゲイリー・ラブカン Gary Ruvkun |
アメリカ合衆国 |
日本
年 | 名前 | 出身 | 受賞理由 |
---|---|---|---|
1987年 | 利根川進 とねがわ すすむ |
愛知県 | 「多様な抗体を生成する遺伝的原理の解明」 天然・人工問わず無数に存在する抗原(細菌やウイルスなど)それぞれに対し、特異的に結合できる抗体が生み出される仕組みを解明した。抗体をコードしている遺伝子が再構成されるため、限られた遺伝子断片をもとに多様な抗体を産生することができ、さまざまな抗原に対応できる。 |
2012年 | 山中伸弥 やまなか しんや |
大阪府 | 「成熟細胞が初期化され多能性を得ることの発見」 成熟した細胞に特定の遺伝子を導入するとリプログラミングされ、多様な細胞に分化する能力を備えた「iPS細胞(人工多能性幹細胞)」となることを発見した。再生医療への応用が見込まれる。詳細は「iPS細胞」の記事を参照。 |
2015年 | 大村智 おおむら さとし |
山梨県 | 「線虫の寄生によって引き起こされる感染症に対する新たな治療法に関する発見」 土壌中の放線菌Streptomyces avermitilisから、マクロライド系の抗寄生虫薬「アベルメクチン」を発見した。また、研究をもとに開発された抗寄生虫薬「イベルメクチン」はオンコセルカ症(糸状虫症)などの治療に用いられており、患者を失明の危機から救っている。 |
2016年 | 大隅良典 おおすみ よしのり |
福岡県 | 「オートファジーの仕組みの解明」 細胞のオートファジーの機構を解明した。「オートファジー(Autophagy)」とは、自分自身(auto-)を食べること(phagy)。細胞は、細胞内にあるタンパク質を自ら分解し再利用する機構を備えている。細胞内に膜が形成され分解対象のタンパク質を包み込むと、液胞に取り込まれ液胞内の分解酵素によってタンパク質が分解される。 |
2018年 | 本庶佑 ほんじょ たすく |
京都府 | 「負の免疫制御の阻害によるがん治療法の発見」 免疫系について研究し、T細胞表面に発現している受容体「PD-1」の発見に携わった。また、がん細胞表面のタンパク質「PD-L1」と結合すると免疫応答が抑制されることを明らかにした。この研究をもとに、抗PD-1抗体「ニボルマブ」、抗PD-L1抗体「デュルバルマブ」などの抗がん薬が開発された。 |
記録
夫婦・血縁関係
- 1947年に共同受賞したカール・コリとゲルティー・コリ、2014年に共同受賞したエドバルド・モーセルとマイブリット・モーセルは、それぞれ夫婦である。
- 1959年に受賞したアーサー・コーンバーグの長男ロジャー・コーンバーグは、2006年にノーベル化学賞を受賞した。
- 1970年に受賞したウルフ・スファンテ・フォン・オイラーの父ハンス・フォン・オイラー=ケルピンは、1929年にノーベル化学賞を受賞した。
- 1973年に受賞したニコ・ティンバーゲンの兄ヤン・ティンバーゲンは、1969年にノーベル経済学賞を受賞した。
最年少・最年長
- ノーベル生理学・医学賞の最年少受賞者は、1923年受賞のフレデリック・バンティング(32歳0か月)。
- 受賞理由であるインスリンの発見から約2年後の受賞。
- ノーベル生理学・医学賞の最年長受賞者は、1966年受賞のペイトン・ラウス(87歳2か月)。
- 受賞理由である発がん性ウイルスの発見から約55年後の受賞。
特記事項
- ノーベル物理学賞を2度受賞した人物は1名、ノーベル化学賞を2度受賞した人物は2名いるが、ノーベル生理学・医学賞を2度受賞した人物はいない。
- ノーベル物理学賞を受賞した女性は5名、ノーベル化学賞を受賞した女性は8名いるが、ノーベル生理学・医学賞を受賞した女性は13名と比較的多い。
関連動画
関連生放送
2015年
2016年
2018年
関連リンク
- The Nobel Prize in Physiology or Medicine - ノーベル生理学・医学賞公式サイト。
- All Nobel Prizes in Physiology or Medicine - ノーベル生理学・医学賞受賞者一覧。
関連項目
脚注
親記事
子記事
- なし
兄弟記事
- 12
- 0pt