ノーベル生理学・医学賞単語

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ノーベル生理学・医学賞スウェーデン語Nobelpriset i fysiologi eller medicin)とは、生理学・医学の分野で最も重要な発見をした人に授与される賞である。

概要

ノーベル賞は、スウェーデン化学アルフレッド・ノーベルの遺志によって設立された、際的な賞である。今日では、世界最高の権威性を備えた賞と見做されている。年に一度、物理学化学生理学・医学文学平和、そして経済学の6つの部門において、最も人類に貢献した人物・団体に贈られる。

このうち、ノーベル生理学・医学賞[1]は、生理学または医学の分野において最も重要な発見をした人に授与される。12分野の研究について、存命の人物13名が対となる。選考は、スウェーデンストックホルムにあるカロリンスカ研究所(カロリンスカ医科大学)の選考委員会による。受賞者の発表は10月上旬、授賞式はアルフレッド・ノーベル命日である12月10日

ノーベル賞メダルの表側には、各賞共通でアルフレッド・ノーベル横顔名前、生年が彫刻されている。ノーベル生理学・医学賞のメダルの裏側には、本を広げた医者が、病気少女の喉の渇きを癒やそうとんでいる様子がデザインされている。メダルは重さ約200g、直径66mm。1980年以前は純金製のメダルだったが、現在は傷つきにくい18金を基材として24金でメッキが施されたメダルが授与されている。

1901年から2024年までの124年間に、229名(うち女性13名)が受賞した。受賞回数を籍別にみると、アメリカ合衆国が最も多く113回、次いでイギリス34回、ドイツ16回、フランス11回である(二重籍者含む)。

日本国籍の受賞者は、利根川進(1987年)、山中伸弥2012年)、大村智(2015年)、大隅良典(2016年)、本庶2018年)の5名。近年は日本人の受賞が増えたが、2000年代までは、ただ一人の例外である利根川進を除いて、すべて欧研究者が受賞していた。受賞には至らなかったものの、補として挙がっていた日本人として、北里三郎(血清療法の開発)、野口英世黄熱梅毒研究)、鈴木太郎ビタミンB1の単離)、山極勝三郎(発がんメカニズムの研究)、建(副交感神経系に関する発見)などが知られている。

一覧

歴代のノーベル生理学・医学賞受賞者の一覧

日本国籍のノーベル生理学・医学賞受賞者は「日本」節に再掲する。

1900年代

名前 受賞理由
1901年 エミール・アドルフ・フォン・ベーリング
Emil Adolf von Behring
ドイツ帝国 ジフテリアに対する血清療法の研究
ジフテリア菌に感染した動物の血清を投与することで、ジフテリアなどの感染症を予防・治療する方法を開発した。血清療法は北里三郎との共同研究だったが、北里には授与されなかった。
1902年 ロナルドロス
Ronald Ross
イギリス マラリアに関する研究
マラリアの原因であるマラリアが、ハマダラカの唾液腺に存在することを突き止め、マラリア生活環を明らかにした。
1903年 ニールス・フィンセン
Niels Ryberg Finsen
デンマーク 尋常性瘡の線治療法の研究
皮膚結核の一種である尋常性瘡を、炭素アークを用いて治療する方法を考案した。ただし、現在抗生物質による治療が流。
1904年 イワンパブロ
Ivan Petrovich Pavlov
ロシア帝国 消化生理研究
消化作用について研究し、消化液の分泌が中枢神経系に支配されていることなどを示した。
イヌに餌を与える際にベルを鳴らすことを繰り返すと、ベルを鳴らすだけで唾液を出すようになるという条件反射の実験パブロフの犬」が一般に知られている。
1905年 ロベルト・コッホ
Robert Koch
ドイツ帝国 結核に関する研究
結核菌を発見し、治療用ワクチンとしての「ツベルクリン」を精製した。ツベルクリン現在、治療ではなく結核菌感染の診断に利用されている。
彼の名は、病原微生物特定針「コッホの原則」に残っている。
1906年 カミッロ・ゴルジ
Camillo Golgi
イタリア 神経系の構造研究
ゴルジは、を用いて神経組織を染色する「ゴルジ染色」という手法を開発した。
ハールは、ゴルジ染色を用いて神経組織を研究し、神経系は個々のニューロンが互いに接合して構成されているとする「ニューロン説」を提唱した。
サンティアゴ・ラモン・イ・カハール
Santiago Ramón y Cajal
スペイン
1907年 シャルル・ルイ・アルフォンスラヴラン
Charles Louis Alphonse Laveran
フランス共和国 疾病発生における原類の役割に関する研究
マラリア患者の赤血球内部に存在するい粒を観察し、それがマラリアを引き起こす原生動物であることを発見した。
1908年 イリヤ・メチニコ
Ilya Ilyich Mechnikov
ロシア帝国 免疫系研究
メチニコフは、免疫細胞が異物を細胞内に取り込む食作用をもつことを発見した。
エールリヒは、多くの異物を認識し、それぞれに抗体を産生する血球が存在するという「側鎖説」を提唱した。これは天然には存在しない抗原にも抗体が産生される理由を説明づけられなかったため、のちに否定されたが、抗体に関する研究の起点となった。
ウルエールリヒ
Paul Ehrlich
ドイツ帝国
1909年 エミール・テオドール・コッハー
Emil Theodor Kocher
スイス 甲状腺生理学・病理学および外科学に関する研究
甲状腺の切除術を考案した。また、甲状腺の機低下によって引き起こされるクレチン症に関する研究を行った。

1910年代

名前 受賞理由
1910年 アルブレヒト・コッセル
Albrecht Kossel
ドイツ帝国 タンパク質と核に関する研究
DNAおよびRNA)とその分解産物について研究したほか、タンパク質の同定法を開発して細胞内での役割を研究した。
1911年 アルヴァル・グルトランド
Allvar Gullstrand
スウェーデン王国 眼の屈折に関する研究
眼球での屈折について研究し、網膜で像を結ぶ仕組みについて明らかにした。
1912年 アレクシス・カレル
Alexis Carrel
フランス共和国 血管縫合および臓器移植に関する研究
血管同士を接続する血管吻合技術を開発した。また、イヌの臓器移植にも成功した。
1913年 シャルル・ロベールリシェ
Charles Robert Richet
フランス共和国 アナフィラキシーに関する研究
致死量に満たない少量のタンパク質動物に投与したあと、一定期間後に再投与すると、しいショックを引き起こすことを実験で示した。この現象は「アナフィラキシー」と命名された。
1914年 ローベルトバーラー
Robert Bárány
オーストリアハンガリー帝国 系の生理学および病理学に関する研究
の前庭と三半規管の温度変化が、めまいや不随意眼球運動を誘発することを発見し、内の機衡感覚との関連について研究した。
1915年 受賞者なし。第一次世界大戦(1914年1918年)のによる。
1916年
1917年
1918年
1919 ジュール・ボルデ
Jules Bordet
ベルギー王国 免疫に関する発見
血清中の体液性免疫には、特定の微生物に対し反応する抗体と、多様な微生物に対し反応する補体が存在していることを確認した。そして、抗体が抗原と複合体を形成するとさらに補体が結合する「補体結合反応」を発見した。

1920年代

名前 受賞理由
1920年 アウグスト・クロー
Schack August Steenberg Krogh
デンマーク 毛細血管運動に関する制御機構の発見
格筋の毛細血管は筋の活動の程度によって開閉し、血液の循環を調節していることを発見した。
1921年 受賞者なし。
1922年 アーチボルドヒル
Archibald Vivian Hill
イギリス 筋肉中の熱生成に関する発見
筋肉での熱の生成について研究し、筋肉中の酸素運動時ではなく回復時に消費されていることを発見した。
オットー・マイヤーホフ
Otto Fritz Meyerhof
ドイツ 筋肉中の代謝と酸素消費の一定の関係の発見
炭水化物の量、酸素の消費量を測定し、筋肉における代謝過程について研究した。なお、彼はこの研究から「学説」を提唱したが、この学説は誤りであることが判明し、のちに撤回している。
1923年 フレデリック・バンティング
Frederick Grant Banting
カナダ インスリンの発見
膵臓から、血糖値を下げるホルモンインスリン」を抽出することに成功した。さらに、インスリンを大量に精製する方法を開発し、1糖尿病患者に投与してその血糖降下作用を確認した。
詳細は「インスリン百」の記事を参照。
ジョンジェームズリチャードマクラウド
John James Rickard Macleod
イギリス
1924年 ウィレムアイントホーフェン
Willem Einthoven
オランダ 心電図の機構の発見
心臓の活動によって発生する微弱な電流を測定する「心電図」を考案した。現在でも、心疾患の診断・治療に広く利用されている。
1925年 受賞者なし。
1926年 ヨハネス・フィビゲル
Johannes Andreas Grib Fibiger
デンマーク 寄生虫発がん説に関する研究
ネズミに線が寄生したゴキブリを摂取させるとがんが発生したことから、悪性腫瘍寄生虫によって発生するという「寄生虫発がん説」を提唱した。ただし、この学説は非常に限定的なものであるため現在では誤りと考えられている。
1927年 ユリウス・ワーグナー=ヤウレック
Julius Wagner-Jauregg
オーストリア共和国 麻痺性痴呆に対するマラリア接種の治療効果の発見
マラリアを感染させた患者は高熱を発するが、梅毒によって認知症をきたした患者に対しては治療効果があることを発見した。ただし、危険を伴う方法であるため現在では行われていない。
1928年 シャルルジュールアンリニコル
Charles Jules Henri Nicolle
フランス共和国 チフスに関する研究
感染症の発チフスがシラミによって媒介されていることを、動物実験によって明らかにした。なお、発チフスを引き起こす直接の原因はリケッチア属の微生物である。
1929年 クリスティアーン・エイクマ
Christiaan Eijkman
オランダ 神経ビタミンの発見
ぬかの中には脚気の治療に有効な成分が含まれていることを示した。ただし、実際にぬかから有効成分の「ビタミンB1チアミン)」を抽出したのは、日本鈴木太郎である。
フレデリック・ホプキン
Sir Frederick Gowland Hopkins
イギリス 成長促進ビタミンの発見
牛乳の中には成長を促進させる成分が含まれていることを示した。この成分は、のちに「ビタミンA」と呼称される。

1930年代

名前 受賞理由
1930年 カール・ラントシタイナー
Karl Landsteiner
オーストリア共和国 ヒト血液型の発見
数人の血液を混合すると赤血球が凝集する場合があることから、ヒト血液型を3つに分類した。翌年に別の研究者によって4番血液型が追加された。現在の「ABO血液型」である。
1931年 オットー・ワールブル
Otto Heinrich Warburg
ドイツ 呼吸酵素の性質および作用機構の発見
細胞、とくにがん細胞の呼吸について研究し、呼吸に関与する化酵素を発見した。
1932年 チャールズ・シェリントン
Sir Charles Scott Sherrington
イギリス 神経細胞の機に関する発見
シェリントンは、筋の収縮および弛緩が神経組織に支配されていることを発見した。
エイドリアンは、神経電気的な信号について研究し、一定の刺継続すると信号が弱まることを発見した。
エドガーエイドリアン
Edgar Douglas Adrian
イギリス
1933年 トーマスハント・モーガン
Thomas Hunt Morgan
アメリカ合衆国 遺伝における染色体の果たす役割に関する研究
遺伝子とはどういうものかまだよく分かっていなかった時代において、ショウジョウバエの突然変異体を用いて「染色体地図」を作製し、遺伝子が染色体上に存在することを示した。
1934年 ジョージ・H・ウィップ
George Hoyt Whipple
アメリカ合衆国 貧血症例に対する肝臓療法に関する発見
ウィップルは、貧血について研究しており、貧血イヌレバー肝臓)を与えると赤血球が増加し貧血が改善することを示した。
イノットとマーフィは、レバーの摂取が悪性貧血の改善に有効であることを示した。また、貧血の改善に有効な成分として「ビタミンB12」を単離した。
ジョージ・リチャーズ・マイノット
George Richards Minot
アメリカ合衆国
ウィリアム・P・マーフィ
William Parry Murphy
アメリカ合衆国
1935年 ハンス・シュペーマン
Hans Spemann
ドイツ 胚発生におけるオーガナイザー効果の発見
イモリの胚移植実験から原口背唇部は分化を誘導する力をもつことを実し、原口背唇部を「オーガナイザー(形成体)」と呼んだ。ヒルデ・マンゴルトと共同で行われた実験だったが、彼女1924年に死去しており、ノーベル賞を授与されなかった。
1936年 ヘンリー・ハレット・デール
Sir Henry Hallett Dale
イギリス 神経化学的伝達に関する発見
レーヴィは、刺を受けた神経細胞から化学物質が放出されること、化学物質によって情報が伝達されていることを明らかにした。
デールは、この化学物質「アセチルコリン」を同定し、アセチルコリンによる神経伝達について研究した。
オットー・レーヴィ
Otto Loewi
オーストリア連邦
1937年 セント=ジェルジ・アルベルト
Albert von Szent-Györgyi Nagyrápolt
ハンガリー 生物学的燃焼過程とりわけビタミンCとフマルの触媒作用に関する発見
アスコルビンが壊血病を防ぐ因子であることを突き止め、「ビタミンC」と命名した。また、生物学的燃焼過程におけるフマルの役割などを研究した。この燃焼過程は、のちに「クエン酸回路(TCAサイクル)」と呼ばれるようになる。
1938年 コルネイユ・ハイマンス
Corneille Jean François Heymans
ベルギー王国 呼吸制御における洞と大動脈機構の役割の発見
頸動脈や大動脈に存在する化学受容器が血液中の酸素濃度などを検知することで、呼吸や血圧が調節されていることを明らかにした。
1939年 ゲルハルト・ドーマク
Gerhard Domagk
ドイツ プロントジルの抗菌効果の発見
赤色の染料「プロントジル」の抗菌作用を発見した。プロントジルは生体内で代謝を受けスルファニルアミドとなり、これが抗菌作用を示す。

1940年代

名前 受賞理由
1940年 受賞者なし。第二次世界大戦1939年1945年)のによる。
1941年
1942年
1943年 カールピーター・ヘンリクダム
Henrik Carl Peter Dam
デンマーク ビタミンKの発見
ニワトリコレステロールを除いた餌と、純コレステロールを与えると出血が止まらなくなる。このことから、コレステロールを除去する過程で血液凝固に関与する物質が一緒に除去されていると考え、「ビタミンK」を発見した。
エドワード・アダルバート・ドイジー
Edward Adelbert Doisy
アメリカ合衆国 ビタミンK化学的性質の発見
ビタミンK」はビタミンK1ビタミンK2の2種類存在することを発見し、その化学構造を解明した。また、ビタミンK1合成することにも成功した。
1944年 ジョセフ・アーランガー
Joseph Erlanger
アメリカ合衆国 単一の神経線維の高度に分化した機に関する発見
オシロスコープを用いて神経の活動電位を測定し、神経線維によってその電気的な信号の伝導速度が異なることを発見、神経線維を分類した。
ハーバート・ガッサ
Herbert Spencer Gasser
アメリカ合衆国
1945年 アレクサンダー・フレミング
Sir Alexander Fleming
イギリス ペニシリンと種々の感染症に対するその治療効果の発見
レミングは、実験中に偶然、アオカビが抗菌作用のある物質を生合成していることを発見し「ペニシリン」を抽出した。
チェーンフローリーは、ペニシリンを精製し、その治療効果を再発見すると医薬品として実用化した。
詳細は「ペニシリン百」の記事を参照。
エルンスト・ボリスチェーン
Ernst Boris Chain
イギリス
ワードフローリー
Sir Howard Walter Florey
オーストラリア
1946年 ハーマン・J・マラ
Hermann Joseph Muller
アメリカ合衆国 X線照射法による突然変異発生の発見
ショウジョウバエにX線を照射すると、突然変異体が発生することを発見した。人為的に変異を起こすことが可となり、遺伝子研究の発展に寄与した。
1947年 カール・コリ
Carl Ferdinand Cori
アメリカ合衆国 グリコーゲンの触媒的変換経路の発見
エネルギー貯蔵物質であるグリコーゲンの合成分解について研究し、その過程を解明した。
しい運動などで短時間に多量のエネルギーを必要とした際、グルコースに変換しATPを生み出す「コリ回路」を発見したことでも知られる。
ゲルティー・コリ
Gerty Theresa Cori
アメリカ合衆国
バーナード・ウッセイ
Bernardo Alberto Houssay
アルゼンチン 糖代謝における下垂体前葉ホルモンの果たす役割に関する発見
下垂体を切除するとインスリンに過剰に反応し低血糖に陥ることから、インスリンと拮抗するホルモン下垂体より分泌されていることを発見した。
たとえば、下垂体前葉より分泌される成長ホルモンなどが、インスリンとは逆に血糖を上昇させる作用をもつ。
1948年 ウルヘルマンミュラー
Paul Hermann Müller
スイス いくつかの節足動物に対する接触としてのDDTの強力な効果の発見
有機塩素系の農DDT(ジクロロジフェニルトリクロロエタン)」の殺効果を確認し、マラリアや発チフスなどの感染症の蔓延を抑制した。
DDTは難分解性・高蓄積性でありヒトへの慢性性も懸念されるため、現在ストックホルム条約や化審法によって規制されている。
1949年 ヴァルター・ヘス
Walter Rudolf Hess
スイス 内臓活動を統合する間の機的組織の発見
動物に電極を挿入して電気的な刺を与える実験から間の機地図化し、間内臓の機を制御していることを明らかにした。
ガス・モニス
Antonio Caetano de Abreu Freire Egas Moniz
ポルトガル ある種の精神病に対する前頭白質切断の治療的価値の発見
前頭葉の神経を切断する「ロボトミー」を施術すると、統合失調症の改善が認められることを示した。
ただし、患者の人格変化・知低下などの不可逆的な障害をきたすため現在は行われていない。近年は抗精神病薬による治療が流。

1950年代

名前 受賞理由
1950年 エドワードカルビン・ケンダル
Edward Calvin Kendall
アメリカ合衆国 副腎皮質ホルモンおよびその構造と生物学的作用に関する発見
ケンダルは、副腎皮質からホルモンを抽出し構造を研究した。また、合成に成功した。
ライヒスタインもまた独立ホルモンを抽出、それがステロイドであることを示した。合成にも成功し、副腎皮質ステロイドの工業的生産に貢献した。
ヘンチは、副腎皮質ホルモンが関節リウマチなどの炎症性の疾患に対して高い治療効果をもつことを発見した。
タデウシュ・ライヒスタイ
Tadeus Reichstein
スイス
フィリップショウォルター・ヘンチ
Philip Showalter Hench
アメリカ合衆国
1951年 マックスタイラー
Max Theiler
南アフリカ連邦 黄熱およびその治療法に関する発見
黄熱黄熱病)は、細菌ではなくウイルスによる感染症であることを明らかにした。また、ワクチン開発し予防法を確立した。
1952年 セルマン・ワクスマン
Selman Abraham Waksman
アメリカ合衆国 結核に有効な最初の抗生物質ストレプトマシンの発見
放線菌から「ストレプトマシン」などの抗生物質を発見し、結核治療に有効であることを示した。ストレプトマシンの直接の発見者はアルバート・シャッツだったが、シャッツはワクスマンの導のもとストレプトマシンについて研究していた研究生に過ぎなかったためノーベル賞を授与されなかった。
1953年 ハンス・クレブス
Hans Adolf Krebs
イギリス クエン酸回路の発見
エネルギーを生成する最も重要な代謝経路「クエン酸回路(TCAサイクル)」を提唱した。クエン酸回路は解糖系、脂肪酸β化、アミノ酸の生合成などと密接に関係している。提唱者にちなみ「クレブス回路」とも呼ばれる。
リッツアルベルトリップマン
Fritz Albert Lipmann
アメリカ合衆国 補酵素Aと中間代謝におけるその重要性の発見
酵素反応を補助する「補酵素A(コエンザイムA)」を発見した。クレブスの提唱したクエン酸回路には仮想の物質が存在していたが、それが補酵素Aであることも示した。補酵素Aはクエン酸回路、脂肪β酸化、コレステロー生合成などに関与している。
1954年 ジョンフランクリン・エンダース
John Franklin Enders
アメリカ合衆国 種々の組織培地中で増殖する急性灰白髄炎ウイルス力の発見
急性灰白髄炎ポリオ)を引き起こすポリオウイルスを、ヒト胎児培養細胞を用いて試験管内で培養することに成功した。それまで、動物脊髄を使用しなければ培養できなかったポリオウイルスを大量に培養することが可となり、ワクチン開発ウイルス学の発展に貢献した。
トーマス・ハックル・ウェーラー
Thomas Huckle Weller
アメリカ合衆国
フレデリックチャップマンロビン
Frederick Chapman Robbins
アメリカ合衆国
1955年 ヒューゴ・テオレル
Axel Hugo Theodor Theorell
スウェーデン王国 化酵素の作用機序および性質に関する発見
シトクロムペルオキシダーゼなど、原子を含み酸化還元反応に関与する酵素について研究した。また、彼の研究アルコールを代謝する酵素であるアルコールデヒドロゲナーゼの研究の先駆けとなった。
1956年 アンドレフレデリック・クルナ
André Frédéric Cournand
アメリカ合衆国 心臓カテーテル法および循環器系の病理学的変化に関する発見
フォルスマンは、自身の腕の静脈から心臓までカテーテルを挿入・撮し、心疾患の新たな検法や治療法の可性を見出した。ただし、彼はこの一件で病院解雇されている。
ルナンとリチャーズは、循環器系について病理学的な調を行った。また、カテーテル法を改良して心疾患の診断法を開発した。現在、カテーテル法は狭心症心筋梗塞、不整脈などの診断・治療に応用されている。
ヴェルナー・フォルスマン
Werner Forssmann
西ドイツ
ディキソン・W・リチャーズ
Dickinson W. Richards
アメリカ合衆国
1957年 ダニエル・ボベット
Daniel Bovet
イタリア 特定の体内物質の作用とりわけ血管系と格筋の活動を抑制する合成化合物に関する発見
抗ヒスタミン薬」を合成した。また、アルカロイドの作用について研究した。抗ヒスタミン薬アレルギーに関与する生理活性物質「ヒスタミン」の作用を抑制する物で、アレルギー疾患の治療に用いられる。ただし、副作用として眠気や倦怠感などの中枢抑制作用がある。
1958年 ジョージ・ウェルズ・ビードル
George Wells Beadle
アメリカ合衆国 厳密に化学的事を制御する遺伝子ふるまいの発見
遺伝子に変異が生じると産生される酵素にも変異が生じ、物質の生合成や代謝にすることを実験によって示した。ここから、「一遺伝子一酵素説」を提唱した。
エドワードローリー・タータム
Edward Lawrie Tatum
アメリカ合衆国
ジョシュアレーダーバー
Joshua Lederberg
アメリカ合衆国 遺伝子組換えおよび細菌の遺伝物質に関する発見
細菌の接合(細胞融合して核が融合すること)による「遺伝子組換え」を発見した。また、バクテリオファージというウイルス細菌遺伝子をほかの細菌に導入する現象「形質導入」を発見した。
1959年 ベロオチョア
Severo Ochoa
アメリカ合衆国 リボ核デオキシリボ核酸生物学的合成機構の発見
オチョアは、リボ核(RNA)の生合成に係わる酵素「RNAポリメラーゼ」を発見した。
コーンバーグは、デオキシリボ核酸DNA)の生合成に係わる酵素「DNAポリメラーゼ」を発見した。
アーサーコーンバー
Arthur Kornberg
アメリカ合衆国

1960年代

名前 受賞理由
1960年 フランク・マクファーレンバーネット
Sir Frank Macfarlane Burnet
オーストラリア 免疫寛容の発見
胎児が獲得する「免疫寛容」について研究した。免疫寛容とは、免疫細胞が自己の細胞タンパク質に対して免疫応答を示さない仕組みのこと。彼らの研究は、臓器移植による拒絶反応を抑制する研究の基盤となった。
ピーター・メダワー
Peter Brian Medawar
イギリス
1961年 ゲオルク・フォン・ベーケーシ
Georg von Békésy
アメリカ合衆国 蝸牛における刺物理的機構の発見
蝸牛において音を感知するメカニズムについて研究し、進行波モデルを考案した。実際には、蝸牛のコルチ器において音の振動を感知している。
1962年 フランシスクリック
Francis Harry Compton Crick
イギリス の分子構造および生体内の情報伝達におけるその重要性に関する発見
ワトソンクリックは、DNAのX線回析像をもとにDNAの二重らせん構造を発見した。
ウィルキンスは、DNAについて研究し、そのX線回析像をワトソンらに提供した。これを実際に撮したのはロザリンドフランクリンだったが、彼女1958年に死去しており、ノーベル賞を授与されなかった。
ジェームズワトソン
James Dewey Watson
アメリカ合衆国
モーリスウィルキン
Maurice Hugh Frederick Wilkins
ニュージーランド
イギリス
1963年 ジョン・C・エックルス
Sir John Carew Eccles
オーストラリア 神経細胞膜の周縁部と中心部において奮と抑制に関与するイオン機構に関する発見
エックルスは、シナプス奮と抑制について研究し、抑制性物質の作用によって過分極する(奮しにくくなる)ことを発見した。
ホジキンハクスリーは、神経細胞の内外に存在するイオンが流入ないし流出することで、活動電位が生じることを発見した。
アランロイド・ホジキン
Alan Lloyd Hodgkin
イギリス
アンドリューフィールディング・ハクスリー
Andrew Fielding Huxley
イギリス
1964年 コンラート・ブロッホ
Konrad Bloch
アメリカ合衆国 コレステロール脂肪酸の代謝機構および制御に関する発見
リュネンは、と補酵素Aからなる「アセチルCoA」を発見した。また、脂肪酸β化のメカニズムを解明した。
ブロッホは、アセチルCoAからのコレステロール合成過程を明らかにし、コレステロールからホルモンや胆汁合成されることを示した。
フェオドル・リュネン
Feodor Lynen
西ドイツ
1965年 フランソワ・ジャコブ
François Jacob
フランス共和国 酵素およびウイルス合成の遺伝的制御に関する発見
ルヴォフは、バクテリオファージというウイルスに感染しゲノムを保持している溶原菌について研究し、紫外線照射などの外的因子によってファージ合成が誘発されることを示した。
ジャコブとモノーは、DNAにはタンパク質アミノ酸配列コードしている領域だけでなく、タンパク質の発現を調節している転写調節領域があると考え「オペロン説」を提唱した。
アンドレ・ルヴォフ
André Lwoff
フランス共和国
ジャック・モノー
Jacques Monod
フランス共和国
1966年 ペイトン・ラウス
Peyton Rous
アメリカ合衆国 腫瘍を誘発するウイルスの発見
腫(筋肉などに発生するがん)の移植だけでなく、腫から抽出・ろ過した液体の注入であってもがんが発生することから、発がん性のウイルスを発見した。研究から半世紀経過しての受賞だった。
チャールズ・ハギン
Charles Brenton Huggins
アメリカ合衆国 前立腺がんのホルモン療法に関する発見
前立腺がんは男性ホルモンによって増悪する一方で、女性ホルモンによって進行が抑制されることから、女性ホルモン投与による前立腺がん治療を考案した。
1967年 ラグナー・グラニト
Ragnar Granit
スウェーデン王国 眼の生理学的・化学的な基礎視覚過程に関する発見
グラニトは、色を感知する錐体細胞タンパク質が3種類あること、それぞれ異なる波長のを吸収することを突き止めた。
ハートラインは、個々の受容細胞が連携しており、刺を受けた細胞が周囲の細胞の活動を低下させるために対の形が認識されることを示した。
ワルドは、網膜の細胞にはビタミンAを含むタンパク質が存在しており、による分子構造の変化が視覚に関与していることを明らかにした。
ハルダン・ケファー・ハートライン
Haldan Keffer Hartline
アメリカ合衆国
ジョージ・ワルド
George Wald
アメリカ合衆国
1968年 ロバート・W・ホリ
Robert W. Holley
アメリカ合衆国 遺伝暗号およびタンパク質合成におけるその機の解明
ニーレンバーグは、単一の基が並ぶRNAからは単一のアミノ酸で構成されるタンパク質を得られることを発見。遺伝暗号解読の基礎を築いた。
コラナは、的の配列をもつRNAの合成法を考案し遺伝暗号解読した。
ホリーは、アラニンの転移RNAの構造を解析しタンパク質合成への関与を示した。
ハー・ゴビンド・コラ
Har Gobind Khorana
アメリカ合衆国
マーシャル・ニーレンバー
Marshall W. Nirenberg
アメリカ合衆国
1969年 マックス・デルブリュック
Max Delbrück
アメリカ合衆国 ウイルスの複製機構および遺伝的構造に関する発見
バクテリオファージが細菌に感染すると内包したDNAを宿細胞内に注入、遺伝子を複製しタンパク質合成する。このメカニズムについて研究した。また、細菌突然変異を起こし自然選択(自然淘汰)されること、ウイルス化学物質への耐性を獲得しうることを示した。
アルフレッド・ハーシー
Alfred D. Hershey
アメリカ合衆国
サルドールエドワードルリア
Salvador E. Luria
アメリカ合衆国

1970年代

名前 受賞理由
1970年 ベルハルト・カッツ
Sir Bernard Katz
イギリス 神経終末における液性伝達物質およびその貯蔵、放出、不活性化の機構に関する発見
カッツは、神経伝達について研究し、神経伝達物質「アセチルコリン」が神経細胞内部のシナプス小胞に貯蔵されていること、その放出にCa2+が関与することを突き止めた。
オイラーは、交感神経系の神経伝達物質「ノルアドレナリン」を発見した。神経終末に貯蔵されており、神経奮によって放出されることを示した。
アクセルロッドは、アドレナリンなどの「カテコールアミン」の代謝経路について研究神経系において放出されたカテコールアミンは、放出した神経細胞に再取り込みされることを発見した。
ウルフ・スファンテ・フォン・オイラー
Ulf von Euler
スウェーデン王国
ジュリアスアクセルロッド
Julius Axelrod
アメリカ合衆国
1971年 エールサザランド
Earl W. Sutherland, Jr.
アメリカ合衆国 ホルモンの作用機序に関する発見
セカンドメッセンジャーの「環状アデノシン一リン(cAMP)」を発見した。セカンドメッセンジャーとは、細胞が受容体を介して情報を受け取ったあと、その情報二次的に伝達する物質のこと。cAMPは、たとえば糖や脂質の代謝の調節に関与している。
1972年 ジェラルドモーリス・エデルマン
Gerald M. Edelman
アメリカ合衆国 抗体の化学構造に関する発見
エデルマンは、抗体のジスルフィド結合を切断して抗体の構造を調べ、そのアミノ酸配列によって抗原特異性が決定づけられることを示した。
ポーターは、パパインという酵素を用いて抗体を切断し、抗体がH鎖とL鎖それぞれ2本ずつからなるY字タンパク質であることを示した。
ロドニーロバート・ポーター
Rodney R. Porter
イギリス
1973年 カール・フォン・フリッシュ
Karl von Frisch
西ドイツ 個体的および社会的な行動様式の組織化と誘発に関する発見
フリッシュは、ミツバチが8の字に飛ぶ「ミツバチダンス」によって仲間情報を伝達していることを発見、動物行動学(エソロジー)を開拓した。
ローレンツは、の本的な学習現象「刷り込み」について研究した。動物行動学の創始者の一人。
ティンバーゲンは、海鳥行動メカニズムを解明。動物行動学の発展に寄与した。
コンラートローレン
Konrad Lorenz
オーストリア共和国
ニコティンバーゲン
Nikolaas Tinbergen
イギリス
1974年 アルベルトクラウ
Albert Claude
ベルギー王国 細胞の構造的および機的組織に関する発見
クラウデは、電子顕微を用いて細胞の微細構造を研究。がん細胞と正常細胞それぞれからミクロソームを分画し、構造を調べた。
デューブは、ラットの肝細胞から「リソソーム」を発見。その機や性質について研究した。
ラーデは、電子顕微を用いて「リボソーム」を発見し、機について研究した。
クリスチャン・ド・デューブ
Christian de Duve
ベルギー王国
ジョージエミール・パラー
George E. Palade
アメリカ合衆国
1975年 デビッドボルテモア
David Baltimore
アメリカ合衆国 腫瘍ウイルス細胞の遺伝物質との相互作用に関する発見
ドゥルベッコは、腫瘍ウイルス遺伝子により正常な細胞が形質転換、すなわちウイルス遺伝子が宿遺伝子に組み込まれてがん化することを示した。
ボルテモアとテミンは、RNAウイルスについて研究し、それぞれ独立に「逆転写酵素(RNA依存DNAポリメラーゼ)」を発見、セントラドグマを修正した。
レナートドゥルベッコ
Renato Dulbecco
アメリカ合衆国
ワードマーティン・テミン
Howard Martin Temin
アメリカ合衆国
1976年 バルーク・サミュエルブランバー
Baruch S. Blumberg
アメリカ合衆国 感染性疾患の起と伝播の新たな機構に関する発見
ブランバーグは、オーストラリア先住民の血清に多量に存在し、感染性肝炎と関連のあるタンパク質オーストラリア抗原」を発見した。今日では「HBs抗原」と呼ばれる。B型肝炎感染の標である。
ガジュセックは、パプアニューギニア土病「クールー病」の感染要因を明らかにした。パプアニューギニアの一部では、死者を弔うため遺体を食す習があり、感染者遺体を食べることで感染が広がっていた。
ダニエルカールトン・ガジュセック
D. Carleton Gajdusek
アメリカ合衆国
1977年 ロジェ・ギルマン
Roger Guillemin
アメリカ合衆国 のペプチホルモン産生に関する発見
それぞれ独立に、の視床下部から分泌されているホルモンを抽出し、下垂体からのホルモン分泌を調節していることを発見した。また、そのホルモンの構造を解明した。下垂体がホルモンの調節を担っていることは知られていたが、下垂体もまた視床下部からのホルモン調節を受けることが示された。
アンドルー・ウィクター・シャリー
Andrew V. Schally
アメリカ合衆国
サリンヤロー
Rosalyn Yalow
アメリカ合衆国 プチホルモンラジオイムノアッセイの開発
放射性同位体標識したインスリンを用いて、血中に微量に含まれているインスリン濃度を測定する方法「ラジオイムノアッセイ(放射免疫測定)」を開発した。インスリン以外のホルモンや酵素の濃度測定にも応用されている。ソロモンバーソンとの共同研究だったが、彼は1972年に死去しており、ノーベル賞を授与されなかった。
1978年 ヴェルナー・アーバー
Werner Arber
スイス 制限酵素の発見と分子遺伝学の問題への応用
アーバーは、ウイルス細菌DNAについて研究し、DNAを切断する「I制限酵素」を発見した。
スミスは、「II制限酵素」を発見し、DNA特定配列を識別して切断していることを示した。
ネイサンズは、制限酵素を用いて発がん性ウイルスDNA研究し、その遺伝構造を明らかにした。特定遺伝子のみを分離する手法も確立され遺伝子工学の発展に貢献した。
ダニエル・ネイサンズ
Daniel Nathans
アメリカ合衆国
ハミルトンスミス
Hamilton O. Smith
アメリカ合衆国
1979年 アラン・コーマック
Allan M. Cormack
アメリカ合衆国 コンピュータ支援断層撮法の開発
コーマックは、X線を用いて生体の組織の違いを数学的に解析する理論を構築した。
ハウンズフィールドは、コーマック理論をもとにコンピュータを用いてデータを処理し、の断層の撮に成功。「コンピュータ断層撮CT)」を開発した。
ゴッドフリー・ハウンズフィールド
Godfrey N. Hounsfield
イギリス

1980年代

名前 受賞理由
1980年 バルフ・ベナセラフ
Baruj Benacerraf
アメリカ合衆国 免疫反応を調節する細胞表面上の遺伝的に決定された構造に関する発見
ベナセラフは、今日では「要組織適合遺伝子合体MHC)」と呼ばれている遺伝子合体によって免疫応答が調節されていることを見出した。
ネルは、特定遺伝子領域だけが異なるマウスを作製、そのマウス間で移植を行いマウスMHCである「H-2」を発見した。
ドーセは、何度も輸血を受けた患者の血液を調べ、ヒトMHCである「ヒト血球抗原(HLA)」の存在を示した。
ジャン・ドーセ
Jean Dausset
フランス共和国
ジョージ・スネル
George D. Snell
アメリカ合衆国
1981年 ロジャー・スペリー
Roger W. Sperry
アメリカ合衆国 半球の機分化に関する発見
左右の大半球を接続している梁が離断された「分離」の研究を行い、左と右がそれぞれ特有の機独立した意識をもつことを明らかにした。この研究は、左と右に単純に優劣がつけられないことも示唆している。
デイヴィッド・ヒューベル
David H. Hubel
アメリカ合衆国 視覚系における情報処理に関する発見
の視覚野で情報が処理されるメカニズムについて共同で研究した。ネコの視覚野に電極を挿入し、どのような視覚的情報で反応(発火)するかを調べ、個々の細胞がそれぞれ特定情報の処理を請け負うことなどを発見した。
トルステン・ウィーセル
Torsten N. Wiesel
スウェーデン王国
1982年 スネ・ベリストロー
Sune K. Bergström
スウェーデン王国 プロタグランジン類および関連した生物活性物質に関する発見
リストロームは、血圧低下や発熱などに係わる「プロタグランジン」を精製した。さらに、その構造を決定し不飽和脂肪酸から合成されることを示した。
サミュエルソンは、ベリストロームと共同でプロタグランジンを精製、その代謝メカニズムを明らかにした。また、血液凝固に係わる「トロンボキサン」、炎症に係わる「ロイコトリエン」などを発見した。
ベーンは、「プロスタサイクリン」を発見した。また、鎮痛薬アスピリンプロタグランジンの生合成を阻することで抗炎症作用を示すことを解明した。
ベンクト・サミュエルソン
Bengt I. Samuelsson
スウェーデン王国
ジョン・ベーン
John R. Vane
イギリス
1983年 バーバラ・マクリトック
Barbara McClintock
アメリカ合衆国 可動性の遺伝因子の発見
トウモロコシの実の色や葉の模様と遺伝との関連性について研究し、ゲノム上を移動する「トランスポゾン(動く遺伝子)」の概念を提唱した。この理論は、DNA遺伝子そのものだと明らかになる以前に発表された先駆的な研究だったため、受け入れられるまで四半世紀を要した。
1984年 ニールス・イェルネ
Niels K. Jerne
デンマーク 免疫系の発達と制御における特異性に関する理論モノクローナル抗体の生産原理の発見
イェルネは、抗体は互いに反応しあいながら一つのネットワークを形成しているという「ネットワーク説」など、免疫系に関する理論を提唱した。
ケーラーミルスタインは、がん細胞と抗体産生細胞融合させることで単一の抗原決定基のみと反応する「モノクローナル抗体」の作製に成功。作製法の確立によって抗体の研究や医療に貢献した。
ジョルジュ・J・F・ケーラー
Georges J.F. Köhler
西ドイツ
セーサルミルスタイ
sar Milstein
アルゼンチン
イギリス
1985年 マイケルブラウン
Michael S. Brown
アメリカ合衆国 コレステロール代謝の調節に関する発見
細胞表面のLDLコレステロール受容体を発見し、この受容体の機不全が家族性高コレステロール血症に関係していることを明らかにした。動脈硬化心筋梗塞脳梗塞などの循環器系疾患の研究に寄与した。
ジョーゼフ・ゴールドスタイ
Joseph L. Goldstein
アメリカ合衆国
1986年 スタンリー・コーエン
Stanley Cohen
アメリカ合衆国 成長因子の発見
ニワトリの胚にマウスの腫瘍を移植すると神経が急に成長したことから、神経細胞の分化・増殖を促す「神経成長因子(NGF)」を発見した。さらに、皮膚や膜などの上皮細胞の分化・増殖を促す「上皮成長因子(EGF)」も発見し、これらがタンパク質であることを明らかにした。
リータ・レーヴィ=モンタルチー
Rita Levi-Montalcini
イタリア
アメリカ合衆国
1987年 利根川
とねがわ すすむ
Susumu Tonegawa
日本 多様な抗体を生成する遺伝的原理の解明
天然・人工問わず数に存在する抗原(細菌ウイルスなど)それぞれに対し、特異的に結合できる抗体が生み出される仕組みを解明した。抗体をコードしている遺伝子が再構成されるため、限られた遺伝子断片をもとに多様な抗体を産生することができ、さまざまな抗原に対応できる。
1988年 ジェームスブラック
Sir James W. Black
イギリス 物治療における重要な原理の発見
ブラックは、受容体を阻する物の治療への応用を着想し、βロッカープロプラノロール」、H2ロッカー「シメチジン」を開発した。前者は狭心症など、後者・十二腸潰瘍などの治療に用いられる。
エリオンとヒッチングスは、がん細胞細菌ウイルス増殖メカニズムについて研究し、増殖を阻する物の臨床応用を着想。DNA合成を阻する「メルカプトプリン」「アザチオプリン」「アシクロビル」などを開発した。
ガートルードエリオ
Gertrude B. Elion
アメリカ合衆国
ジョージヒッチングス
George H. Hitchings
アメリカ合衆国
1989年 J・マイケル・ビショップ
J. Michael Bishop
アメリカ合衆国 レトロウイルスのがん遺伝子細胞であることの発見
ラウスウイルスという発がん性のレトロウイルスがもつ、細胞をがん化させる遺伝子Src」の近縁遺伝子を、ニワトリの正常細胞の中から発見した。これにより、がんは必ずしもウイルスなどの外的要因によって引き起こされるものではなく、正常細胞遺伝子変異による可性が示された。
ハロルドヴァーマス
Harold E. Varmus
アメリカ合衆国

1990年代

名前 受賞理由
1990年 ジョセフマレー
Joseph E. Murray
アメリカ合衆国 ヒトの疾患治療における臓器および細胞移植に関する発見
マレーは、アザチオプリンなどの免疫抑制が臓器移植による拒絶反応を抑えることを応用して、世界で初めて腎移植を成功させた。
トーマスは、白血病患者への移植による治療法を確立した。HLA(血球の血液型)が適合するを選び免疫抑制を投与することで、移植片対宿病(移植された臓器の免疫細胞レシピエントの臓器を攻撃する反応)を抑える。
エドワード・ドナル・トーマス
E. Donnall Thomas
アメリカ合衆国
1991年 エルヴィン・ネーアー
Erwin Neher
ドイツ 細胞内の単一イオンチャネルの機に関する発見
細胞膜には、細胞内外のイオンの通りとなるタンパク質イオンチャネル」が存在する。このイオンチャネル内をイオン通過した際に発生する電位を検出する「パッチクランプ法」を開発した。イオンチャネルと疾患の関連や細胞間の情報伝達に関する研究に寄与した。
ベルトザクマン
Bert Sakmann
ドイツ
1992年 ドモンド・フィッシャー
Edmond H. Fischer
スイス
アメリカ合衆国
生物学的制御機構としての可逆的なタンパク質リン化に関する発見
ATPからタンパク質リン基を移す酵素「プロテインキナーゼ」と、リン化されたタンパク質からリン基を取り除く酵素「ホスファターゼ」を発見した。リン化・脱リン化によって酵素や受容体の構造が変化することで活性が制御されている。
エドヴィン・クレープ
Edwin G. Krebs
アメリカ合衆国
1993年 リチャードロバーツ
Richard J. Roberts
イギリス 分断遺伝子の発見
それぞれ独立に、遺伝子DNAの複数の領域に分断された状態で存在することを発見した。それまでDNA上に連続的に存在していると考えられていた遺伝子が、実際には「イントロン」というタンパク質に反映されない配列を含んでおり、DNAからmRNA(伝RNA)を合成する過程において必要な遺伝子断片だけを繋げる「スプライシング」が起こることを見出した。
フィリップシャープ
Phillip A. Sharp
アメリカ合衆国
1994年 アルフレッドギルマン
Alfred G. Gilman
アメリカ合衆国 Gタンパク質および細胞情報伝達におけるこれらのタンパク質の役割の発見
細胞内の情報伝達に関わる「グアニンヌレオチド結合タンパク質(Gタンパク質)」を発見した。細胞表面の受容体に情報伝達物質やホルモンが結合すると、受容体に共役しているGタンパク質がGαサブユニットおよびGβγ合体に分離し、それぞれが酵素やイオンチャネルなどに作用する。
マーティンロッドベル
Martin Rodbell
アメリカ合衆国
1995年 エドワードルイス
Edward B. Lewis
アメリカ合衆国 初期胚発生における遺伝的制御に関する発見
ルイスは、ショウジョウバエを用いて遺伝子と器官発生について研究ハエの器官の位置と染色体上の遺伝子の位置が一致することを発見した。
ニュスライン=フォルハルトヴィーシャウスは、突然変異を起こしたショウジョウバエの交配実験から胚の発生を制御する遺伝子を同定した。
彼らの研究は、受精という一つの細胞が分裂・分化して多様かつ複雑な器官を形成する一連の過程が、正確に行われることの究明に寄与した。
クリスティアーネ・ニュスライン=フォルハルト
Christiane Nüsslein-Volhard
ドイツ
エリックヴィーシャウス
Eric F. Wieschaus
アメリカ合衆国
1996年 ピーター・ドハーティー
Peter C. Doherty
オーストラリア 細胞免疫防御の特異性に関する発見
ウイルスに感染した細胞免疫細胞が認識し排除するメカニズムを解明した。細胞の表面には「要組織適合遺伝子合体MHC)」という物質が存在しており、T細胞はこれを介してウイルスなどを認識する。ウイルスだけでなく、がん細胞に対する免疫応答、自己免疫疾患や糖尿病研究に貢献した。
ロルフ・ツィンカーナーゲル
Rolf M. Zinkernagel
スイス
1997年 スタンリー・B・プルシナー
Stanley B. Prusiner
アメリカ合衆国 リオン(感染の新しい生物学的原理)の発見
伝達性綿状症について研究し、感染因子である病原性タンパク質を精製し「プリオン」と命名した。プリオンは生体内にもともと存在しているタンパク質だが、感染性プリオン異常な構造をとっており、正常プリオンを感染性プリオンに変化させ神経細胞を破壊する。ヒトクロイツフェルト・ヤコブ病、クールー病ウシ狂牛病などの感染因子である。
1998年 ロバート・ファーチゴット
Robert F. Furchgott
アメリカ合衆国 血管系における情報伝達分子としての一窒素に関する発見
ファーチゴットは、血管内皮細胞血管滑筋を弛緩させる因子の存在を見出し「内皮由来弛緩因子(EDRF)」と命名。のちに、これが「一窒素(NO)」であることを発見した。
イグナロもまた、EDRFの実体が気体の一窒素であることを突き止めた。
ムラドは、ニトログリセリンなどの血管血管内で一窒素を遊離することで血管を弛緩させることを明らかにした。
ルイ・イグナロ
Louis J. Ignarro
アメリカ合衆国
フェリド・ムラ
Ferid Murad
アメリカ合衆国
1999年 ギュンター・ブローベル
nter Blobel
アメリカ合衆国 タンパク質がその細胞内の輸送と局在化をる内因性の信号を有することの発見
リボソームによって合成されたタンパク質が小胞体へと正確に輸送され局在化するメカニズムを解明した。タンパク質に内在する「シグナルペプチド」の配列が、タンパク質の各細胞小器官への輸送・局在化を決定づけている。

2000年代

名前 受賞理由
2000年 アルビド・カールソン
Arvid Carlsson
スウェーデン王国 神経系における情報伝達に関する発見
カールソンは、「ドーパミン」の神経伝達物質としての作用を解明した。また、ドーパミンの作用が十分でないとパーキンソン病を発症すること、ドーパミン合成材料となる「L-ドパ」が治療に有効であることを明らかにした。
グリーンガードは、受容体を起点とした細胞情報伝達について解明した。受容体が情報を受け取ると、細胞タンパク質リン化や脱リン化を介して情報が伝達される。
カンデルは、アメフラシを用いて神経について研究を行い、神経シグナル伝達効率の変化が記憶の形成に関与することを明らかにした。
ポールグリーンガード
Paul Greengard
アメリカ合衆国
エリックカンデル
Eric R. Kandel
アメリカ合衆国
2001年 リーランドハートウェル
Leland H. Hartwell
アメリカ合衆国 細胞周期の要な制御因子の発見
ハートウェルは、出芽酵母を用いて細胞周期について研究し、細胞周期の制御遺伝子cdc28」などを同定した。また、細胞周期チェックポイントDNA損傷や複製エラーの監視機構)を見出した。
ハントは、ウニの受精中には細胞分裂と同期して増減するタンパク質が存在することを発見し、これを「サイクリン」と命名した。サイクリンは、Cdcタンパク質と協働して、細胞周期を制御している。
ナースは、分裂酵母を用いて研究を行い細胞周期の制御遺伝子cdc2」などを同定した。彼らの研究は、がん細胞研究などにを与えた。
ティシーハン
Tim Hunt
イギリス
ポールナース
Sir Paul M. Nurse
イギリス
2002年 シドニー・ブレナ
Sydney Brenner
イギリス 器官発生とプログラム細胞死の遺伝的制御に関する発見
レナーは、Caenorhabditis elegansという線を用いて多細胞生物の器官発生を解析。ゲノム・遺伝子研究の嚆矢となった。
サルトンは、C. elegansの器官発生の研究から不必要になった細胞が死に至ることを発見。プログラムされた細胞死「アポトーシス」を見出した。
ホロビッツは、C. elegans研究を通して、アポトーシスに必要不可欠遺伝子アポトーシスした細胞の除去を制御する遺伝子を同定した。
ロバートホロビッツ
H. Robert Horvitz
アメリカ合衆国
ジョンサルトン
John E. Sulston
イギリス
2003年 ポール・ラウタバー
Paul C. Lauterbur
アメリカ合衆国 核磁気共鳴画像法に関する発見
ウタバーは、磁場中の原子核が特定の周波数の電磁波と共鳴する「核磁気共鳴(NMR)」現象を利用して、生体内のの分布を検出・断層画像化した。
マンスフィールドは、ラウタバーの手法を改良。得られたデータ数学的に処理し高速で画像化できるようにして「核磁気共鳴画像法(MRI)」の臨床応用を可とした。
ピーターマンスフィールド
Sir Peter Mansfield
イギリス
2004年 リチャードアクセル
Richard Axel
アメリカ合衆国 嗅覚受容体および嗅覚系の組織の発見
ラット遺伝子を解析し、匂い物質を受け取る嗅覚受容体が1,000種類ほど存在すること、それらがGタンパク質共役受容体であること、一つの嗅神経には1種類の嗅覚受容体しか発現しないことを示した。なお、ヒト嗅覚受容体は400種類ほど存在する。一つの匂い物質は複数の嗅覚受容体を刺するため、刺を受けた受容体のパターン記憶・照合することで匂いを嗅ぎ分けている。
リンダバック
Linda B. Buck
アメリカ合衆国
2005年 バリー・マーシャル
Barry J. Marshall
オーストラリア 細菌ヘリコバクター・ピロリおよび炎と消化性潰瘍疾患におけるその役割の発見
炎や・十二腸潰瘍について共同研究し、原因細菌Helicobacter pyloriを発見した。それまで、の強環境下では細菌生存できないと考えられていたが、マーシャルは自らH. pyloriの培養液を飲んで炎を発症することで実した。H. pyloriはウレアーゼという酵素を産生しアンモニア合成できるため、周囲のを中和し生存できる。
ロビン・ウォレン
J. Robin Warren
オーストラリア
2006年 アンドリューファイア
Andrew Z. Fire
アメリカ合衆国 RNA干渉(二本鎖RNAによる遺伝子サイレンシング)の発見
Caenorhabditis elegansを用いた実験を行い「RNAi(RNA干渉)」を発見した。2本鎖DNAは、2種類の1本鎖RNA(センス鎖およびアンチセンス鎖)に変換されるが、この2種類のRNAは結合して2本鎖RNAdsRNA)となり、相補的な配列をもつmRNAを分解し、遺伝子を抑制する。
レイグ・メロ
Craig C. Mello
アメリカ合衆国
2007年 マリオ・カペッキ
Mario R. Capecchi
アメリカ合衆国 胚性幹細胞の使用によりマウス特定遺伝子改変を導入する原理の発見
カペッキとスミティーズは、相同組換えを利用した遺伝子導入法「遺伝子ターゲティング」を確立した。
エヴァンズは、マウスの「ES細胞(胚性幹細胞)」の培養に成功した。
彼らの研究は「遺伝子改変マウス」の作製を可とした。たとえば、特定遺伝子効化された「ノックアウトマウス」は、その遺伝子の機の究明、遺伝子疾患のメカニズムの研究、治療開発などに利用される。
マーティンエヴァンズ
Sir Martin J. Evans
イギリス
オリヴァー・スミティー
Oliver Smithies
アメリカ合衆国
2008年 ハラルド・ツア・ハウゼン
Harald zur Hausen
ドイツ 子宮頸がんを引き起こすヒトパピローマウイルスの発見
子宮頸がんリスク因子としての「ヒトパピローマウイルスHPV)」を発見した。また、100種類以上のがあるHPVのうち、高リスクの「HPV16」「HPV18」を同定した。現在子宮頸がん予防のためのワクチンが利用されている。
フランソワーズ・バレ=シヌシ
Françoise Barré-Sinoussi
フランス共和国 ヒト免疫不全ウイルスの発見
後天性免疫不全症候群AIDS)を引き起こすレトロウイルスを発見した。このウイルスは、のちに「ヒト免疫不全ウイルスHIV)」と命名された。この発見は、AIDSの予防および治療の研究に貢献した。
リュック・モンタニエ
Luc Montagnier
フランス共和国
2009年 エリザベス・H・ブラックバーン
Elizabeth H. Blackburn
オーストラリア
アメリカ合衆国
テロメアと酵素テロメラーゼによる染色体の保護の発見
染色体の末端にある「テロメア」について研究特定配列が繰り返し存在しており染色体の保護を担うことを発見した。さらに、「テロメラーゼ」というDNAポリメラーゼによってテロメアが伸長することを示した。がんや老化に関与しており、治療法の研究に活かされている。
キャロル・W・グライダー
Carol W. Greider
アメリカ合衆国
ジャック・W・ショスタク
Jack W. Szostak
アメリカ合衆国

2010年代

名前 受賞理由
2010年 ロバート・G・エドワーズ
Robert G. Edwards
イギリス 体外受精の開発
体外受精技術を確立し、通常の子どもと同様に健康試験ベビーを誕生させた。体外受精とは不妊治療の一つで、採取した精子卵子シャーレの中で培養して受精にしてから女性子宮に戻すというもの。倫理的問題も伴うが、不妊症の治療は大きく進歩した。
2011年 ブルース・ボイトラ
Bruce A. Beutler
アメリカ合衆国 自然免疫の活性化に関する発見
ボイトラーは、突然変異マウス研究から、免疫細胞表面にある「Toll様受容体(TLR)」が細菌のもつリポ多糖(LPS)を認識すること、これにより免疫系が活性化することを発見した。
ホフマンは、突然変異ショウジョウバエの研究から、「Toll遺伝子」によって自然免疫(生まれながらに備わっている免疫)が活性化されることを実した。
ジュールホフマン
Jules A. Hoffmann
フランス共和国
ラルフスタインマン
Ralph M. Steinman
カナダ 細胞および適応免疫におけるその役割の発見
免疫細胞の一種「細胞」を発見した。T細胞に抗原を提示・活性化させることで、免疫応答に寄与する。
スタインマンは、授賞が発表される3日前に死去していた。ノーベル賞は存命の人物を対とする原則があるが、存命と認識のうえで選考が行われたため、授賞決定後に死去した場合は取り消さないという規定に準じ決定通り授与された。
2012年 ジョンガード
Sir John B. Gurdon
イギリス 成熟細胞が初期化され多性を得ることの発見
ガードンは、カエル細胞核を未受精移植することによりクローンの作製に成功、「ES細胞(胚性幹細胞)」をはじめとする再生医療の研究の礎を築いた。
山中は、成熟した細胞特定遺伝子を導入するとリプログラミングされ、多様な細胞に分化する力を備えた「iPS細胞(人工多性幹細胞)」となることを発見した。再生医療への応用が見込まれる。
詳細は「iPS細胞百」の記事を参照。
山中伸弥百
まなか しんや
Shinya Yamanaka
日本
2013年 ジェームズロスマン
James E. Rothman
アメリカ合衆国 細胞内の要な輸送系である小胞輸送を制御する機構の発見
ロスマンは、小胞(ホルモンなどの貯蔵や運搬を担う袋のような構造)が物質を正しい場所まで輸送し、適切に放出するメカニズムを示した。
シェクマンは、小胞輸送のシステム異常をきたした酵母を用いて研究を行い、小胞輸送に関与する遺伝子を同定した。
スードフは、マウス細胞を用いた研究から、小胞に内包された神経伝達物質が適切なタイミング放出されることを明らかにした。
ランディ・シェクマ
Randy W. Schekman
アメリカ合衆国
トーマススードフ
Thomas C. Südhof
アメリカ合衆国
2014年 ジョンオキーフ
John O'Keefe
アメリカ合衆国
イギリス
における間認知システムを構成する細胞の発見
オキーフは、ラットを用いた実験から、動物自身がどこにいるかを認識する「場所細胞」を発見した。また、場所細胞の発火タイミングθ波の位相と関連していることも明らかにした。
モーセル夫妻は、受容野が格子状に配置され場所細胞情報を伝える「格子細胞」を発見した。これらの細胞の連携により動物は自分の周囲を間的に認識することができる。
イブリット・モーセ
May-Britt Moser
ノルウェー
エドバルド・モーセ
Edvard I. Moser
ノルウェー
2015年 ウィリアム・C・キャンベル
William C. Campbell
アイルランド
アメリカ合衆国
の寄生によって引き起こされる感染症に対する新たな治療法に関する発見
土壌中の放線菌Streptomyces avermitilisから、マクロライド系の抗寄生虫アベルメクチン」を発見した。また、研究をもとに開発された抗寄生虫イベルメクチン」はオンセルカ症(糸状症)などの治療に用いられており、患者を失明の危機から救っている。
大村
おおむら さとし
Satoshi Ōmura
日本

ゆうゆう
Youyou Tu
中国 マラリアに対する新たな治療法に関する発見
キク科植物クソニンジンから、抗マラリアアルテミシニン」を発見した。天然物としてはしいペルオキシド(R-O-O-R')構造を有し、これが理作用に関与すると考えられている。
2016年 大隅良典
おおすみ よしのり
Yoshinori Ohsumi
日本 オートファジーの仕組みの解明
細胞オートファジーの機構を解明した。「オートファジー(Autophagy)」とは、自分自身(auto-)を食べること(phagy)。細胞は、細胞内にあるタンパク質を自ら分解し再利用する機構を備えている。細胞内に膜が形成され分解タンパク質を包み込むと、液胞に取り込まれ液胞内の分解酵素によってタンパク質分解される。
2017年 ジェフリーホール
Jeffrey C. Hall
アメリカ合衆国 概日リズムを制御する分子機構の発見
一般に「体内時計」と呼ばれる「概日リズムサーカディアリズム)」について研究ショウジョウバエの突然変異体を用いた研究から約24時間周期の分子メカニズムを発見し、これを制御する「時計遺伝子」を同定した。概日リズム植物の就眠運動ヒトホルモン分泌リズム、自神経系のバランス、時差ぼけなどにを及ぼす。また、ずれた概日リズムによって補正される。
マイケルロスバッシュ
Michael Rosbash
アメリカ合衆国
マイケルヤング
Michael W. Young
アメリカ合衆国
2018年 ジェームズ・P・アリソン
James P. Allison
アメリカ合衆国 負の免疫制御の阻によるがん治療法の発見
アリソンは、免疫や腫瘍について研究し、T細胞の活性化抑制に関与する受容体「CTLA-4」を発見した。また、抗CTLA-4抗体のがん治療への有効性を示し、抗がん薬「イピリムマブ」の開発に貢献した。
本庶もまた、免疫系について研究し、T細胞表面に発現している受容体「PD-1」の発見に携わった。また、がん細胞表面のタンパク質PD-L1」と結合すると免疫応答が抑制されることを明らかにした。この研究をもとに、抗PD-1抗体「ニボルマブ」、抗PD-L1抗体「デュルバルマブ」などの抗がん薬開発された。
本庶
ほんじょ たすく
Tasuku Honjo
日本
2019年 ウィリアムケリン
William G. Kaelin Jr
アメリカ合衆国 細胞酸素利用可性の感知と適応の発見
動物酸素の少ない環境にも適応できる仕組みを明らかにした。細胞内ではタンパク質「低酸素誘導因子(HIF)」が合成されているが、酸素が十分に存在する環境においては酸素と結合し、別のタンパク質「VHL」によってユビキチン化を受け分解される。しかし、酸素の少ない環境においては分解されず蓄積、「エリスロポエチン」というホルモン合成進させ、酸素を運搬する赤血球の産生を促す。
ピーター・ラトクリフ
Sir Peter J. Ratcliffe
イギリス
グレッグセメンザ
Gregg L. Semenza
アメリカ合衆国

2020年代

名前 受賞理由
2020年 ハーヴィーオルタ
Harvey J. Alter
アメリカ合衆国 C型肝炎ウイルスの発見
輸血や針刺し事故など、血液を介して感染して慢性肝炎を引き起こす「C型肝炎ウイルス」を発見した。C型肝炎ウイルスによる肝炎は70%ほどが慢性化し、肝硬変や肝細胞がんに進展するおそれがある。C型肝炎ウイルスの発見により血液検査抗ウイルス薬開発が可となった。
マイケル・ホートン
Michael Houghton
イギリス
チャールズライス
Charles M. Rice
アメリカ合衆国
2021年 デヴィッドジュリアス
David Julius
アメリカ合衆国 温度と触覚の受容体の発見
ジュリアスは、トウガラシの辛味成分カプサイシンを用いて、皮膚の感覚神経にある熱を感知する受容体「TRPV1」を発見した。
パタプティアンは、物理的な刺を感知する受容体「PIEZO1」「PIEZO2」を発見した。
両者はそれぞれ、冷たさを感知する受容体「TRPM8」も発見している。
温度や触覚のメカニズムの解明は、慢性疼痛などの痛みを和らげる治療法の開発に繋がる。
アーデム・パタプティアン
Ardem Patapoutian
アメリカ合衆国
2022年 スバンテ・ペーボ
Svante Pääbo
スウェーデン 絶滅したヒト族のゲノムと人類の進化に関する発見
旧人類のネアンデルタール人のからDNAを抽出して解析した。また、シベリア洞窟から旧人類のデニソワ人を発見した。DNA解析による研究手法が導入されたため、パレオゲノミクス(古遺伝学)が切り拓かれた。
2023年 リコー・カタリン
Katalin Karikó
ハンガリー
アメリカ合衆国
COVID-19に対する効果的なmRNAワクチン開発を可にしたヌクレオシド基修飾に関する発見
酵素や抗体などタンパク質を作る設計図となる「mRNA(伝RNA)」は不安定で壊れやすく、炎症反応を誘発する欠点がある。しかし、mRNAを構成するヌクレオシドの構造を部分的に変えると壊れにくくなり、炎症反応も軽減されることを発見した。SARS-CoV-2による感染症COVID-19)によるパンデミックに際してmRNAワクチン開発に応用された。
ドリュー・ワイスマン
Drew Weissman
アメリカ合衆国
2024年 ヴィクター・アンブロス
Victor Ambros
アメリカ合衆国 miRNAと転写後の遺伝子発現の調節におけるその役割の発見
Caenorhabditis elegansから、のちに「miRNA(マイクロRNA)」と呼ばれるようになる低分子RNA(lin-4およびlet-7)を発見した。miRNAはタンパク質への翻訳を経ずmiRNAのまま多数のmRNA(伝RNA)の遺伝子発現を抑制する。がん化の抑制にも関与している。
ゲイリーラブカ
Gary Ruvkun
アメリカ合衆国

日本

名前 出身 受賞理由
1987年 利根川
とねがわ すすむ
愛知県 多様な抗体を生成する遺伝的原理の解明
天然・人工問わず数に存在する抗原(細菌ウイルスなど)それぞれに対し、特異的に結合できる抗体が生み出される仕組みを解明した。抗体をコードしている遺伝子が再構成されるため、限られた遺伝子断片をもとに多様な抗体を産生することができ、さまざまな抗原に対応できる。
2012年 山中伸弥百
まなか しんや
大阪府 成熟細胞が初期化され多性を得ることの発見
成熟した細胞特定遺伝子を導入するとリプログラミングされ、多様な細胞に分化する力を備えた「iPS細胞(人工多性幹細胞)」となることを発見した。再生医療への応用が見込まれる。詳細は「iPS細胞百」の記事を参照。
2015年 大村
おおむら さとし
山梨県 の寄生によって引き起こされる感染症に対する新たな治療法に関する発見
土壌中の放線菌Streptomyces avermitilisから、マクロライド系の抗寄生虫アベルメクチン」を発見した。また、研究をもとに開発された抗寄生虫イベルメクチン」はオンセルカ症(糸状症)などの治療に用いられており、患者を失明の危機から救っている。
2016年 大隅良典
おおすみ よしのり
福岡県 オートファジーの仕組みの解明
細胞オートファジーの機構を解明した。「オートファジー(Autophagy)」とは、自分自身(auto-)を食べること(phagy)。細胞は、細胞内にあるタンパク質を自ら分解し再利用する機構を備えている。細胞内に膜が形成され分解タンパク質を包み込むと、液胞に取り込まれ液胞内の分解酵素によってタンパク質分解される。
2018年 本庶
ほんじょ たすく
京都府 負の免疫制御の阻によるがん治療法の発見
免疫系について研究し、T細胞表面に発現している受容体「PD-1」の発見に携わった。また、がん細胞表面のタンパク質PD-L1」と結合すると免疫応答が抑制されることを明らかにした。この研究をもとに、抗PD-1抗体「ニボルマブ」、抗PD-L1抗体「デュルバルマブ」などの抗がん薬開発された。

記録

夫婦・血縁関係

最年少・最年長

  • ノーベル生理学・医学賞の最年少受賞者は、1923年受賞のフレデリック・バンティング(32歳0か)。
    • 受賞理由であるインスリンの発見から約2年後の受賞。
  • ノーベル生理学・医学賞の最年長受賞者は、1966年受賞のペイトン・ラウス(87歳2か)。
    • 受賞理由である発がん性ウイルスの発見から約55年後の受賞。

特記事項

関連動画

関連生放送

2015年

2016年

2018年

関連リンク

関連項目

脚注

  1. *「ノーベル生理学・医学賞」のほか、「ノーベル医学・生理学賞」「ノーベル生理学医学賞」「ノーベル医学生理学賞」「ノーベル生理学賞」「ノーベル医学賞」などの表記ゆれがある。
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ノーベル生理学・医学賞

1 ななしのよっしん
2018/10/01(月) 20:26:18 ID: rMZzS5O4Uw
完成してから記事を作成するつもりでしたが、2018年に本庶先生が受賞されたということで
掲示板に書き込めるようにと記事を作成いたしました。
欄については順次埋めていきますので、ご容赦ください。
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2 ななしのよっしん
2018/10/02(火) 21:10:50 ID: XDChd+iTmF
読み応えがあって、内容がWikiより詳しいね。
完成を楽しみにしてるよ!
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3 ななしのよっしん
2018/10/09(火) 12:07:19 ID: KK7BaQw7Kt
めっちゃ詳しくて素敵・・・!!
良記事感謝です
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4 ななしのよっしん
2018/11/04(日) 12:43:15 ID: rMZzS5O4Uw
おかげさまで完成させることができました。ありがとうございます
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5 ななしのよっしん
2022/10/03(月) 23:24:20 ID: BWlEZRWRfO
今年の受賞者はネアンデルタール人とサピエンスのDNAの一部を同定した人か。
考古学の範疇だと思ってたけど医学的にも重視されていたのね。
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6 ななしのよっしん
2022/10/04(火) 07:58:56 ID: wu9b9OUOqx
>>5
考古学ヒトの営みが研究生物面は考古学の範疇じゃないのよ
だから生物的に古代人類を研究したい人は考古学ではなく古人類学を選ぼう
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7 ななしのよっしん
2023/10/02(月) 19:13:31 ID: GmrHwtGWdk
全人類納得の内容よな。

ノーベル生理学・医学賞にカリコ氏ら コロナワクチン開発 貢献
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231002/k10014211101000.htmlexit

>ことしのノーベル生理学・医学賞の受賞者に新型コロナウイルスmRNAワクチン開発で大きな貢献をした、ハンガリー出身でアメリカ大学研究者カタリン・カリコ氏ら2人が選ばれました。
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8 ななしのよっしん
2023/10/06(金) 14:43:17 ID: fDNFdukKt7
研究から発見まで相当かかったそうな
当時は反なかったが、その後も研究を重ねて人工mRNAワクチンとしてめどが立った
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9 ななしのよっしん
2023/10/06(金) 14:44:49 ID: fDNFdukKt7
まあ副反応のもあるから今後も改良へ
応用できれば様々なにも適用できる
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