今年の新語とは、今年から辞書に載せてもいいだろうとされた言葉たちである。
※ユーキャンの新語・流行語大賞ではなく、三省堂が主催する別のイベントである。
概要
言葉の一般公募ののち、三省堂が辞書編纂者を集めて、「今年の新語」を決定する。
掲載・ランク付けの基準
ユーキャンの新語・流行語大賞と異なる点として、「今後も使われ続けるかどうか、辞書に載るかどうか」が重要視される。そのため、お笑い芸人の一発ネタなどはランクインしにくい。一方で、その年にその言葉が生まれていなくても、その年の前後にじわじわと多くの人の間に広まっていた、あるいは意味が付け加えられたり変化したりした言葉であればランクインの対象となる。
じわじわと広まっていった言葉の例として、2016年に今年の新語の1位を獲得した「ほぼほぼ」が挙げられる。「ほぼ」という言葉は大昔からあるものの、「ほぼほぼ」と2回重ねる事例は2010年代に入ってから急増したものである。
また、意味が付け加えられた言葉としては2015年8位の「爆音」がある。もともとは爆発やエンジンの大きな音を指す言葉だったが、単に大きな音を指す用例が増加したためランクインした。このように、流行語とはまた別の観点からその年を振り返ることができる。
2017年5位の「フェイクニュース」のように、掲載基準やランク付けには「社会的影響」も考慮されるが、2021年1位の「チルい」のように「言語的な変遷の興味深さ」も考慮されている。そのため、必ずしも社会での広がりが大きいほど言葉が上位に来るわけではない(「流行語」ランキングではない)。
攻撃的な語の扱い
他者への攻撃を単に正当化するような新語は「中立性が重要な国語辞典には載せにくい」という理由で選ばれにくい。しかし、何らかのきっかけで攻撃を抑える意味でも使われるようになった場合、その前後の年に掲載されることがある。
例えば「にわか」は2000年代から一時的なファンを指す貶し言葉として使われていたが、ラグビーワールドカップ2019での「本当のファンが今後増えてくれるならにわかでも構わない」等の肯定的使用法を受け、2019年の今年の新語の2位にランクインした。
また、同年6位の「電凸」はかつてはネット社会の隠語だったが、表現の不自由展をめぐる迷惑行為としての報道も増え、立場を問わず使われるようになったためランクインした。
ざっくりとした掲載基準まとめ
あくまでこの基準は非公式であり、これが絶対というわけではないので注意。
今年の新語一覧
意味・選定理由は各ページからの要約。関連記事はニコニコ大百科に記事があるもの。
関連記事の括弧内の数字は記事の作成年。いつごろニコニコ大百科にこの言葉があったかを知る目安として作成年を追加した。あくまで参考であり、言葉が生まれた年や流行り始めた年ではないので注意。
2014年(今年からの新語)
辞書編纂者である飯間浩明個人によってTwitterで候補語を募集して行われた。このヒットを受け、翌年から三省堂が主催して行うようになった。
順位 | 言葉 | 意味・選定理由 | 関連記事 |
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1位 | ワンチャン | 「可能性」を表す「ワンチャンス」の略。2010年から使用されていたが、「ひょっとすると」という副詞用法も広まってきた。 | ワンチャンス(2011) ワンチャンアレバカテルゥー(2013) |
2位 | それな | 同意を表す語。Googleで「それな 意味」が検索され始めたのが2010年。2014年は「『それな』の年」ともいえる。 | それな。(2015) |
3位 | あーね | 同意を表す語。「それな」と比較すると積極的に使う場合が共通するが、「そういうものかな」と消極的に使う場合もある。もとは方言。 | あーねー(2008) ※方言として作成 |
4位 | 安定の | 「定番」などと同じ意味。「安定の」の新しい用法。 | 安定の放送事故(2010) 安定のさやか(2011) 他多数 |
5位 | 自撮り | 携帯電話で自分自身を撮影すること。新語の募集時点で複数の人から挙げられていた。 | 自撮り棒(2016) 自撮り(2018) |
6位 | プロジェクションマッピング | 建物の壁などに映像を投影して、建物が変化しているかのように見せること。2013年の時点で使用を把握していた。 | プロジェクション・マッピング(2016) |
7位 | NISA | 少額投資非課税制度。2014年から実施され、銀行や証券など金融商品取引の分野でよく聞かれるようになった。 | |
8位 | 危険ドラッグ | 違法薬物。2014年7月に「脱法ドラッグ」に代わって使われるようになった表現。 | 危険ドラッグ(2015) |
9位 | ~み | 形容詞の語尾。「ヤバみ」「つらみ」など。前から使われていたが2014年から特に増えた。 | バブみ(2016) ※形容詞ではない派生語 ○○み(2019) |
10位 | ぽんこつ | 本来の意味は「役立たず」という悪口だが、「うっかり者」「変わり者」といった肯定的意味でも使われるようになった。AKB48の島崎遥香から。 | ぽんこつ(2008) ポンコツかわいい(2012) |
次点 | 壁ドン | 壁を叩くこと。派生して、男性が向かい合った女性の後ろの壁にどんと手をつくこと。男女関係の意味が派生して2014年に流行したものの、この用法が日常生活で使われているわけではないので次点となった。 | 壁ドン(2010) ※抗議 壁にドン(2010) ※男女関係 |
2015年
順位 | 言葉 | 意味・選定理由 | 関連記事 |
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1位 | じわる | 面白みなどがじわじわと感じられるという意味。選考委員全員が高得点を付けた。 | じわじわくる(2011) |
2位 | マイナンバー | 日本の個人番号。2015年10月から開始。 | マイナンバー制度(2015) |
3位 | LGBT | 「レズビアン・ゲイ・バイセクシャル・トランスジェンダー」の略。渋谷区の同性カップル公認など報道が相次いだ。 | LGBT(2016) |
4位 | インバウンド | 観光客として招かれる外国人。外国人観光客が増加し、「爆買い」などが話題となった。 | 外国人観光客(2016) インバウンド(2020) |
5位 | ドローン | 小型無人飛行機。2015年4月、首相官邸にドローンが落下しているのが発見されて以降話題となった。 | 首相官邸ドローン事件(2015) ドローン(2015) |
6位 | 着圧 | 女性用肌着・ストッキングで肌に加えられる適度な圧力。当時辞書未掲載。2008年から検索データがあり、辞書掲載が遅れてしまった。 | |
7位 | 言(ゆ)うて | 「そうはいっても」の関西弁。2014年の「それな」「あーね」と同時期に流行。2015年の下位打線として入れた。 | |
8位 | 爆音 | 爆発音やエンジンの大きな音。新しい意味として、とても大きな音。1999年から新しい意味での使用例があるが、気づいたら多くの人が使っていた。 | 爆音P(2009) バクオング(2009) ※バクオングの登場は2002年 など |
9位 | 刺さる | 深く納得・共感できること。「心に刺さる」という意味なのだが、「刺さる」単体で使用されることが2011年から見られ、2015年から目だった。 | |
10位 | 斜め上 | それまでの流れから考えられないこと。1990年代の漫画『レベルE』が発祥と言われるが一般化したのは近年。 | 斜め上P(2008) 予想の斜め上(2009) など |
選外 | とりま | 「とりあえずまあ」の略。2006年に『現代用語の基礎知識』掲載、2008年以降毎年掲載されている。高校生デモで話題となった(注:とりま廃案)が、すでによく使われているため選外となった。ちなみに、まだ広まっているとは言えないが、「こマ?」も選考委員に認知されている。 | SEALDs(2015) これマジ?(2013) |
選外 | エンブレム | 記章・紋章など。新しい意味として「シンボルマーク」。五輪エンブレムの話題からだが、「大会ロゴ」などの使用例もあり、「シンボルマーク」の意味の広がりがはっきりしないため選外となった。 | 佐野研二郎(2015) |
2016年
順位 | 言葉 | 意味・選定理由 | 関連記事 |
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1位 | ほぼほぼ | 「ほぼ」を強調した表現。選考委員の間でも「今年よく耳にした」という意見が多く高得点を獲得。1949年の国会会議録が確認できる初出で、1990年代から使用が増加し、2010年代に顕著になった。2016年4月のテレビ東京の番組『ほぼほぼ』、6月の朝日新聞の記事「新語?「ほぼほぼ」気になりますか」、8月の新書『「ほぼほぼ」「いまいま」?!』などを受け、受賞のタイミングが2016年しかないと判断された。 | ほぼほぼ(2016) 水曜日のダウンタウン(2016) ※番組のフレーズ「ほぼほぼ○○説」が流行の一因とする説あり |
2位 | エモい | 感情が高まった状態。2006年の『みんなで国語辞典!』、2010年の『現代用語の基礎知識』に掲載、2012年からは初期のこの言葉の意味である「パンクロックの一種、エモーショナル・ハードコアの略称」として「エモ」が『基礎知識』に掲載。その後2015年から再び「エモい」が『基礎知識』に掲載されるようになった。 | A.E.V.P(アンチエモいボカロP)(2011) エモい(2017) |
3位 | ゲスい | 「下品だ」「あくどい」という意味。以前から用例が多くないものの使われていたが、「ゲス不倫」などの話題からリバイバルを起こした。 | 真ゲス(2013) ゲスの極み乙女。(2015) など |
4位 | レガシー | 過去の遺産のこと。東京五輪計画について述べる際、小池百合子都知事が多用した。当時の国語辞典に未掲載。 | レガシー(2014) ※MTGとコンピュータ用語として |
5位 | ヘイト | 「憎悪」の意味。近年「ヘイトスピーチ」の略としても使われる。2016年5月にヘイトスピーチ対策法が成立。 | ヘイトスピーチ(2013) ヘイト記事(2015) など多数 |
6位 | スカーチョ | 見た目がスカートに似たガウチョのこと。2016年に流行した。流行としては今後落ち着くものの、普通のファッションとして存続すると考えられたため選ばれた。「スカンツ」というスカートのようなパンツ(ズボン)もある。 | ガウチョパンツ(2015) ※ガウチョブームに触れている |
7位 | VR | 「バーチャルリアリティ(仮想現実)」の略。1990年代から言葉があったが、2016年が「VR元年」と呼ばれるほどVRが普及した。 | VR(2014) PlayStation VR(2015) など多数 |
8位 | 食レポ | もとはテレビ番組でレポーターが料理の味の感想を伝えること。「食リポ」とも。国語辞典に載っている用例がまだ少ない。 | YouTuber(2014) ※食レポ動画が多い |
9位 | エゴサ | 「エゴサーチ」の略。自分の名前を検索してみること。2010年代から用例が多い。 | エゴサーチ(2010) |
10位 | パリピ | 「パーティピープル」の略。パーティで騒ぐ人たちのこと。新語2014でも「パーティピーポー」が候補にあったが、さらに略された用法が広まった。 | パリピ孔明(2022) パリピ(2023) |
選外 | 神ってる | 「神がかっている」こと。大修館書店の新語キャンペーンで2009~2011年に掲載。広島カープの緒方孝市監督の発言から流行したが、あくまで一時的な流行ということで選外となった。 | 神ってる(2016) |
選外 | チャレンジ | 挑戦すること。新しく認知された意味として、抗議すること。リオデジャネイロ五輪のスポーツでのルールからこの意味が広まった。 | |
選外 | IoT | Internet of Thingsの略。家電などをインターネットにつないで使うこと。まだ言葉だけが先行している印象があるため選外となった。 | IoT(2014) ※ゲームMODパックの略称として初版が作成 |
2017年
順位 | 言葉 | 意味・選定理由 | 関連記事 |
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1位 | 忖度 | 他人の心情を推し量ること。新しい意味として、有力者の意向を推し量ること。一般からの投稿も多く選考者からの得点も高かった。1994年の朝日新聞の記事に新しい意味での使用例が見られ、国有地払い下げ問題から盛んにこの言葉が使われるようになった。文法的にも、本来の用法である「忖度する」に加え、「忖度が働く」「忖度が入っている」など新しいものが増え、語として華麗な変貌を遂げた。 | 忖度(2017) 森友・加計問題(2017) |
2位 | インフルエンサー | SNS上で発言力があり、他人の行動や購買に影響を与える人物。2016年に急速に一般化した。主因として乃木坂46の楽曲「インフルエンサー」が挙げられる。 | インフルエンサー(2019) |
3位 | パワーワード | 力強い言葉。転じて、表現が異様で強烈な印象を残す言葉。今年の新語2015からすでに候補として挙がっていたが2016・2017に著しく増加した。 | パワーワード(2016) |
4位 | ○○ロス | あるものが無くなり、喪失感に陥ること。2013年のドラマ『あまちゃん』の「あまロス」に始まり、2017年には安室奈美恵の引退に伴う「アムロス」などが見られた。 | タモロス(2014) けもフレロス(2017) 〇〇ロス (2019) |
5位 | フェイクニュース | 故意に流された虚偽情報。アメリカのトランプ大統領が2016年に多用したため流行語となった。今後のネット社会で無視できない危険因子として上位に入れた。 | ドナルド・トランプ(2016) フェイクニュース(2017) |
6位 | 草 | 笑いを表す表現。「(笑)」→「(wara」→「(w」→「w」→「wwwww」→「草」(見た目が草に見える)と変化して生まれた。2009年のWikipediaに掲載されたが当初は「気持ち悪い」とする意見が多かった。しかし、ここ2、3年で多くの人に使われるようになった。 | 草(2008) ※初版から「wwwwのこと」として説明 草不可避(2013) 若干ゃ草(2017) など多数 |
7位 | 仮想通貨 | インターネットを通じて送金等ができる、現実の通貨とも交換可能な通貨。『資金決済に関する法律』の2020年改正で「暗号資産」とされるものが、2016年改正時に商品券と同様のものとして扱われ、2017年からは消費税がかからなくなった。将来性を見据えてランクインさせた。 | 仮想通貨(2014) 暗号資産(2014) ビットコイン(2014) など |
8位 | オフショル | 「オフショルダー」の略。肩までを露出した服。以前から夜会服に見られたが、2017年から女性の普段着としてみられるようになり、一時の流行にとどまらないとして判断された。 | |
9位 | イキる | 調子に乗り大きな態度をとること。元は関西弁だが「イキりオタク」などの用法で全国区となった。 | いきがる(2008) イキリオタク(2017) など |
10位 | きゅんきゅん | 寂しさや懐かしさで胸が締め付けられること。新しい意味として、恋愛感情による動悸。1983年のYMOの楽曲「君に胸キュン」などで新しい意味が見られるがまだ辞書未掲載だった。 | キュンキュンメガネ(2008) 君に、胸キュン。(2009) など多数 |
選外 | 卍 | 正確な意味は不明だが「マジ卍」などの用例が見られる。最後まで議論となったが、「意味・用法が固まりきっていない」ということで惜しくも選外となった。 | 卍(2011) マジ卍(2018) |
選外 | プレミアムフライデー | 月末の金曜日に仕事を早く終えるキャンペーン。実施する会社が少なく「実態が伴わない言葉」になる可能性が濃くなったため選外となった。 | プレミアムフライデー(2017) |
選外 | 熱盛 | 熱く盛り上がっているシーンのこと。テレビ番組『報道ステーション』のスポーツコーナーで使用される。放送事故により流行したが、まだ流行語の色合いが強いということで選外となった。 | 熱盛(2017) |
2018年
順位 | 言葉 | 意味・選定理由 | 関連記事 |
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1位 | 映(ば)える | SNS上で写真などがきれいで目立つこと。新語2017では「インスタ映え」が最も応募数が多かったものの、「インスタ」「映え」の言葉で説明が可能、かつ「SNS映え」という総称的な言葉もあるため掲載は見送られた。しかし、2018年には「ばえる」という読みのまま「映える」単体でも使われるようになり、新たな展開を見せた。 | Instagram(2015) インスタ映え(2017) |
2位 | モヤる | 「もやもやする」の短縮形。気持ちがすっきりしないこと。新しい意味として、不満や不愉快を漠然と感じること。新語2016ですでに応募があったが、2018年の辞典『現新国』の「もやもや」には「釈然としない・納得できない」という意味が加わっている。Twitterでも「モヤる」は100倍程度に使用頻度が増加しており、「メモる」などの他の略語と比べても際立っている。同義語の「もやっとする」「モニョる」等も代表する形でランクインした。 | もにょる(2011) モヤッとボール(2015) ※IQサプリの放送開始は2004年 |
3位 | わかりみ | 理解できること、またはその度合い。新語2014で「~み」が選ばれているが、形容詞以外のものにも使用するようになった。 | バブみ(2016) ○○み(2019) |
4位 | 尊い | とても美しくいとおしいこと。2014年頃から増加傾向にあったが、2018年の書籍『推しが尊すぎてしんどいのに語彙力がなさすぎてしんどい』等を受けてランクインした。 | 尊い(2018) てぇてぇ(2018) |
5位 | VTuber | YouTubeで生身の人間に代わって出演するCGキャラクター。ネット検索数を見ると2018年から急増している。 | バーチャルYouTuber(2017) VTuberマンシリーズ(2018) など多数 |
6位 | 肉肉しい | 見るからに肉のうまみや食感が好ましく感じられる様子。2018年に検索数が増加した。原因はGoogleのCMで「肉肉しい料理食べたい」「そしたらさ、『肉肉しい料理の店』で検索してみる?」というフレーズが使われたため。 | |
7位 | マイクロプラスチック | 大きさが5mm以下の微細なプラスチック。環境汚染の原因として知られ、2018年6月に米ハンバーガーチェーンがプラスチックストローの使用を廃止し話題となった。 | |
8位 | 寄せる | 距離を近づける。新しい意味として、似せる。2011年から使用例があるが、長い間「近づける」で解釈できると考えていた。しかし、今回は「近づける」とは別の意味での用例が多いと考えたため、2018での掲載となった。 | 寄せてる(2019) |
9位 | スーパー台風 | 最大風速が60m/sを超える台風。2018年の台風21号、24号の被害が大きく、報道で使われた。 | |
10位 | ブラックアウト | 大規模な停電、それに伴う混乱のこと。2018年9月の北海道地震の影響で北海道全域が停電した。 | ブラックアウト(2010) 平成30年北海道胆振東部地震(2018) |
選外 | 半端ないって | ワールドカップロシア大会での大迫勇也選手の活躍を称えた言葉。「半端ない」自体は辞書にすでに掲載済みで、「って」が強調の終助詞としての用法であると話題には上ったが選外となった。 | 大迫半端ないって(2009) 2018FIFAワールドカップ(2018) |
選外 | そだねー | 北海道での「そうだね」の方言。平昌五輪のカーリング選手から有名になったが、単純な連語で辞書の掲載対象にならないため選外となった。 | そだねー(2018) 平昌オリンピック(2013) ※開催は2018年 |
2019年
順位 | 言葉 | 意味・選定理由 | 関連記事 |
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1位 | ―ペイ | スマホ決済サービスを表す言葉。「セブンペイ」など他の言葉の後ろにつく(造語成分)。―Payは従前からQUICPayとUnionPay(銀聯)が存在していたが、AlipayやAmazonPayなどに従い、スマホ決済サービスを表す言葉となった。 | Paypay(2019) セブンペイ(2019) など |
2位 | にわか | そのときだけ関心を持つ人、にわかファンのこと。遅くとも2003年には「にわか」だけでにわかファンのことを指すようになるが、もとは蔑称である。しかし、ラグビーワールドカップ2019では「どんどんどんどん、にわかが増えて、そこから本当のファンになってもらえればいいかなあって思います」といったラグビーファンからの声もあり、初心者を歓迎する文脈でもこの言葉が見られるようになった。 | 俄組曲(2009) ※初心者歓迎的文脈の「俄」 にわか(2009) ラグビーワールドカップ2019(2019) など |
3位 | あおり運転 | 相手を威嚇し恐怖を与える悪質・危険な運転のこと。2017年から重大なあおり運転の事件が発生しており、2019年8月には常磐道であおり運転をめぐる暴力事件が発生した。 | 危険運転(2010) 東名高速夫婦死亡事故(2017) 煽り運転(2019) など |
4位 | 反社 | 「反社会的勢力」の略。暴力や詐欺といった手口で利益を得ようとする集団。2010年代から使用が始まり、2015年の『現代用語の基礎知識』に「反社会的勢力(反社勢力)」が掲載される。2019年にはお笑い芸人の闇営業の事件や桜を見る会についての疑惑報道により話題となった。 | 反社会的勢力(2015) 闇営業(2015) |
5位 | サブスク | 「サブスクリプション」の略。定額制のこと。もともとは新聞など読み物の「定期購読」を指す言葉だったが、サービス内容が衣服や自動車など多様化し、2019年に検索数が急増している。 | サブスクリプション(2019) |
6位 | 電凸 | 「電話突撃」のこと。団体等に電話して暴力的に非難したり問い詰めたりする迷惑行為。長らくネット社会の隠語であったが、表現の不自由展・その後について批判派の一部が運営団体に電凸をしたためニュースで報道された。知名度が上がり、立場を問わず使われるようになったため掲載された。 | 電凸(2008) スマイリーキクチ中傷被害事件(2013) 表現の不自由展・その後(2019) |
7位 | カスハラ | 「カスタマーハラスメント」の略。客が接客担当などに理不尽な要求や過度のクレーム等を行う迷惑行為。従来は「悪質クレーム」と言っていたが2018年末の厚生労働省審議会で「いわゆるカスタマーハラスメント」という用語が使われ一般化した。 | クレーム(2011) カスタマーハラスメント(2018) |
8位 | 垂直避難 | 災害時に建物の上階に行くことで避難する方法。台風19号(東日本台風)の被害により多くの河川が氾濫した際、メディアによって垂直避難が呼びかけられた。 | 令和元年東日本台風(2019) 垂直避難(2020) |
9位 | 置き配 | 指定された場所に置くことで配達を済ませること。2019年3月に日本郵便が開始した。 | 再配達(2017) 置き配(2020) |
10位 | ASMR | 視覚や聴覚への刺激によって脳に快感を覚える反応・感覚。ここ数年で関心が高まりつつある。 | 音フェチ(2011) ASMR(2013) など多数 |
選外 | タピる | タピオカドリンクを飲むこと、またはタピオカパールを食べること。タピオカブームがいつまで続くかわからず、今後使われるかどうか判断できないため選外となった。 | タピオカミルクティー(2018) タピオカ(2019) など |
選外 | ワンチーム | 一丸となって戦うチームのこと。ラグビーワールドカップ2019の日本代表から。流行語的な色合いが強いため選外となった。 | ラグビーワールドカップ2019(2019) |
特別賞 | 令和 | 2019年5月からの新元号。「令和元年の新語」に令和を選ぶのは自己言及的であり、元号を固有名詞として扱って記載しない辞書もあるため、今後の時代を期待して特別賞扱いとなった。 | 令和(2019) 令和最初の○○(2019) など多数 |
2020年
順位 | 言葉 | 意味・選定理由 | 関連記事 |
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1位 | ぴえん | 小さく1回、泣き声をたてるオノマトペ。2019年では4通だったが、2020年の投稿数では70通と大躍進した。これより上位投稿数の語は「経年美化」とコロナ関連だったが、それよりも汎用性は高い。さらに、今までは「大声で泣く」「すすり泣く」オノマトペしか存在しなかった中で、「ぴえん」がその穴を埋める言葉となったことが評価された。 | ぴえん(2020) PIEN-ぴえん-(2020) |
2位 | ○○警察 | 権限がないのにもかかわらず、個人で警察の真似事をしている人。コロナ禍の中で「自粛警察」「マスク警察」などが出現した。以前からインターネット上では「日本語警察」「マナー警察」「道徳警察」「着物警察」などの語があったが、コロナ禍をきっかけに広く知られるようになった。 | 東方警察(2013) 弓道警察(2016) 着物警察(2018) 自粛警察(2020) ○○警察(2020) |
3位 | 密 | ぎっしりとつまっていること。新しい意味として、人同士の間隔が狭いこと。文章語だったが、コロナ禍をきっかけに口頭でも使われるようになり、「避けるべきもの」というニュアンスでも使われるようになった。 | 密(2011) 3つの「密」(2020) 密です(2020) など |
4位 | リモート | 「遠隔」の意味。「リモートワーク」「リモート飲み会」などの普及により、「リモート」単体でも名詞として使われるようになった。 | テレワーク(2017) リモート(2019) |
5位 | マンスプレイニング | 男性が女性・年少者に対して、見下した態度で説明すること。特にインターネット上でこの語が広まった。 | |
6位 | 優勝 | 決勝戦で勝つこと。新しい意味として、大満足すること。21世紀から意味の変遷が見られ、2000年代には「○○した奴が優勝」などの大喜利があった。2010年代には大満足の意味で使われるようになった。 | 優勝(2020) 大蛇丸の人(2020) ※2020年に多用した人物 |
7位 | ごりごり | 「堅いものをこする音」「凝り固まった」の意味。新しい意味として、「徹底した」「根っからの」の意味。もともとは批判を含んだ意味だが、近年は批判的な意味がない用法も増えつつある。 | |
8位 | まである | 予想や基準を超えたことをする、またはそのような様子であること。「好きすぎてDVD買ったまである」等。10年以上前からネットでじわじわと広まりつつある。 | 惚れるまである(2011) 有利まである(2014) |
9位 | グランピング | 高級感のある施設で過ごす、贅沢なキャンプ。コロナ禍の中でソロキャンプなどの野外活動の関心が高まり、今回のランクインとなった。 | グランピング(2022) |
10位 | チバニアン | 更新世中期の地質時代の名称。千葉県市原市の地層が由来となって2020年に名づけられた。専門用語ではあるが、大型辞典の「大辞林」には掲載可能であるためランクインした。 | チバニアン(2020) |
選外 (コロナ枠) |
ソーシャルディスタンス | 社会的距離。ウイルス感染防止のために必要な距離のこと。「今後辞書に載るほどには必要とならないように(感染拡大が収まるように)」という意味合いで選外となっている。以下のコロナ枠も同じ理由。 | 社会的距離(2020) |
ステイホーム | ウイルス感染を避け家にいること。イギリスのジョンソン首相や小池百合子都知事によって呼びかけられた。 | Stay home(2020) | |
クラスター | 感染者の集団、または集団感染のこと。もとは疫学用語だが一般的に使われるようになった。 | クラスタ(2012) | |
アマビエ | 肥後国の海中に棲む妖怪。疫病の流行を抑える可能性からマスコット的扱いを受けた。 | アマビエ(2020) | |
ロックダウン | 都市封鎖。世界各地で行われた。日本では小池百合子都知事が「ロックダウン」の語を使ったことで広まった。 | ロックダウン(2020) | |
手指 | 手や指のこと。医学的には読みは「しゅし」で、意味は「手全体」を指す。感染拡大を抑えるため、手指の消毒が呼びかけられた。 | 手洗い(2020) | |
その他委員選出語 | オンデマンド/コロナ/Zoom/フラッシュモブ/○○んご/世界線/新しい生活様式/三密/濃厚接触/エッセンシャルワーカー/ギフテッド/新型コロナウイルス感染症(COVID-19)/HSP/Black Lives Matter |
2021年
順位 | 言葉 | 意味・選定理由 | 関連記事 |
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1位 | チルい | リラックスした様子、落ち着いた様子のこと。もとは音楽用語の「チルアウト」であり、2010年代後半から広まった。2021年には広告コピーやTikTokの流行で「チル」が見られ、ストレスフルな今の状況を反映する語だと考える。また、「外来語+い」には「エモい」「グロい」などがあるが、形容詞の語全体で見れば少数である。語形の珍しさから「チルい」を大賞とした。 | チル(2009) ※「チルってる」「チルる」追記が2019年 チルアウト(2009) |
2位 | ○○ガチャ | 結果の良しあしが自分で選べず、偶然に左右されること。本来は駄菓子店などのカプセル入りおもちゃの自動販売機を指すが、2010年代からソーシャルゲームのガチャが登場し、さらに2021年9月の「親ガチャ」のSNS投稿をきっかけに他の用法も見られるようになった。 | ガシャポン(2020) ガチャ(2012) 親ガチャ(2021) |
3位 | マリトッツォ | パンをカスタネット状に開き、中にクリームを詰めた菓子。流行から定番となった「ティラミス」「ナタデココ」と同様に定着すると判断し掲載した。 | マリトッツォ(2021) |
4位 | 投げ銭 | インターネット上で面白いと思ったものに対して贈る金銭やポイント。もとは大道芸人等に対して使ったが、1999年にはホームページに対しての投げ銭システムが存在しており、2017年にYouTubeの「スーパーチャット」、2021年にTwitterの「Tip Jar」が登場している。 | 投げ銭(2018) スーパーチャット(2020) |
5位 | 人流 | 物流に対する、人の流れのこと。1989年で既に使用例があり、2021年にはコロナ禍で使用例が増えた。 | |
6位 | ウェビナー | インターネットを介して行われる講演会や研修会。コロナ禍で普及した。 | |
7位 | ギグワーク | インターネット経由で直接個人で請け負う単発の仕事。宅配業務の依頼などが例。コロナ禍以前から話題になっており、宅配サービスのニーズが急速に高まってさらに注目された。 | Uber Eats(2019) |
8位 | 更問い | 記者会見で記者側がさらに質問すること。役所側の隠語であり、2021年には菅義偉首相の記者会見に対する批判として使われた。 | |
9位 | おうち○○ | 「自宅での」という意味。もとは「家」の美化語で、21世紀から造語成分としての使い方に変化しコロナ禍を経て日常語となった。 | よゐこのおうちでマリオカートライブ生活(2021) |
10位 | Z世代 | 1990年代後半から2000年代以降に生まれた世代。デジタルネイティブの世代と重なる。「団塊の世代」「氷河期世代」と同様に辞書に掲載できる語と考えた。 | Z世代(2021) |
選外 | じゃないほう | 「主要でない方」という意味。漫才コンビで目立たない人の方を指す例があり、2021年にはテレビ東京のドラマで『じゃない方の彼女』が放送されている。 | じゃない方の日常(2011) じゃない方芸人(2017) |
鼻マスク | マスクをしているが、鼻が出ている状態。マスクをずらして顎だけを覆う「顎マスク」とは意味が異なる。 | マスク(2008) | |
黙食 | 黙って食事をすること。2021年に福岡市のカレー店がSNS上にポスターを公開したことで広まった。 | 黙食(2021) | |
その他委員選出語 | SDGs/なんなら/ブースター接種/副反応/やつ/インクルーシブ/ギルトフリー/○○してもろて/ライバー/レベチ/エコーチェンバー/GIGAスクール/キャンセル/○○テック/ハウる/BAN/ラグい/オリパラ/フェムテック/ヤングケアラー |
2022年
順位 | 言葉 | 意味・選定理由 | 関連記事 |
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1位 | タイパ | かけた時間に対しての効果。「タイムパフォーマンス」の略。2019年にビジネス情報誌『ダイヤモンド・チェーンストア』に掲載され、2022年には動画の倍速視聴やファスト映画などの話題とともに頻繁に使われるようになった。活字文化から動画文化への移行を示す語として時代を反映しているとして1位とした。 | ファスト映画(2021) 倍速視聴(2022) タイムパフォーマンス(2022) |
2位 | ○○構文 | 文法的な決まりに従って並べたもの。新しい意味として、文章のひとまとまりを、ある方式によって作り上げたもの。後者の用例は2010年の「エルシャダイ構文」があり、2010年代後半以降に「おじさん構文」「ちいかわ構文」「進次郎構文」「メフィラス構文」など多数が登場した。 | エルシャダイ構文の一覧(2010) 万丈構文(2018) ダークライ構文(2019) おじさん文章(2019) 構文(2022) 他多数 |
3位 | きまず | 「とまどうなあ」という意味。それほど気まずくはない場合にも使う。若い世代を中心に使うようになった。関連語として2021年の「きまZ」があるが、こちらはあまり聞かないとする声もある。 | |
4位 | メタバース | ネットワーク上に構築される、三次元グラフィックの仮想空間。メタ社(旧フェイスブック社)が参入したことで2021~2022年に知名度が上がった。 | SecondLife(2009) メタバース(2017) |
5位 | ○○くない | 同意を示す俗語。「~くないか」。「誰でもできるくない?」等。21世紀のゼロ年代で関西や福岡市などでこの表現がみられるようになり、2010年代には全国区となった。さらには「できるくなった」など新しい言い方の発展を見せている。 | |
6位 | ガクチカ | 学生時代に力を入れたこと。面接やエントリーシートなど就職活動で話題となる。2010年の日本テレビ『news every.』で既に登場している。それ以降毎年3月に使われており、成長株のことばとして選出した。 | 就職活動(2008) |
7位 | 一生 | 生まれてから死ぬまでの間。新しい意味として、長い間。「尊すぎて一生見てる」など。現在や過去のことに対しても使う点が従来の「一生やってろ」などの用例とは異なる。 | |
8位 | 酷暑日 | 1日の最高気温が40℃を超える日のこと。2022年に日本気象協会によって制定。 | 猛暑(2013) |
9位 | 闇落ち | 今まで善良な心を持っていた人が、邪悪な、または怖い行動をとるようになること。2005年に『同人用語の基礎知識』に掲載された。2022年の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』で主人公の北条義時が闇堕ちしたことが話題となった。なお、表記は常用漢字の「落」としている。 | 闇堕ち(2010) 闇落ちエビフライ(2020) 鎌倉殿の13人(2020) |
10位 | リスキリング | 社会人がスキルを再び習得すること。近年では別の職種に就く場合や同じ職種でも新たな技能が必要な場合に使う。岸田文雄首相がリスキリングの支援のため5年間で1兆円を投じると発言した。 | リスキリング(2023) |
選外 | 平成レトロ | 平成を懐かしむ言葉。近年の平成リバイバルブームから選外として掲載した。 | 平成(2008) レトロ(2011) |
Y2K | 西暦2000年ごろのこと。「Y2Kファッション」として近年若者の間でルーズソックスなどが流行している。 | Y2K(2010) | |
その他委員選出語 | 塩味/クィア/知らんけど/線状降水帯/はにゃ?/気になる/コンカフェ/罪悪感/ライバー/インボイス/NFT/ガチ○○/ソバーキュリアス/ノンバイナリー/マイクロアグレッション/ロジハラ/推し活/GX/フェムテック |
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関連項目
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