この記事は第743回の今週のオススメ記事に選ばれました! より最長となるようなニコニコできるような記事に編集していきましょう。 |
最長片道切符とは、鉄道における最長距離ルートの片道切符(片道乗車券)である。
主にJRの路線で構成され、日本で発券できる最長距離で作られた片道切符のことを指す。
概要
JRについては原則として好きなルートで乗車券を買うことができ、「ルートの途中で同じ駅を2度通らない(※)」「折り返しをしない」の2つを満たしていればいくらでもルートを伸ばすことができる。
※より正確には「環状線1周となる駅で運賃計算を打ち切る」。そのため、2度目に通った駅で旅行を終了する「O字型切符」「6の字型切符」は発売可能。同じ駅を2度通ってさらに旅行を続ける「9の字型切符」「呂の字型切符」は不可。細かい点だがこれにより発駅と着駅の制約が生じ、数々の影響を及ぼす(後述)。
ここで北海道と九州の間を遠回りを繰り返すことでルートを伸ばしていった場合、どの駅からどの駅までが最長になるのかと考え出す者が出てきた。当初は机上で考えるだけであったが、いつしかその切符を実際に買って旅行する者が出るようになり、今日まで鉄道趣味の1つとして最長片道切符は題材にされている。
過去には宮脇俊三や種村直樹が実際に最長片道切符で旅行している。記録にある限りでは1961年に東京大学旅行研究会が最初の旅行と考えられている。
長らくは鉄道ファンだけに知られた趣味であったが、宮脇俊三が1978年に最長片道切符で旅行した際の過程を纏めた『最長片道切符の旅』が発売されたことや、NHKが2004年に『列島縦断 鉄道12000キロの旅 〜最長片道切符でゆく42日〜』を制作・放送したこともあって広く知られるようになった。
ただ金額が後述のように高い上に移動にかなり時間がかかるため、金銭的にも時間的にも余裕がないと旅行するのは難しい。乗車券の有効日数が54日~56日(2024年4月現在)とあまりにも長いことから、中には一旦途中で打ち切って自宅に帰り、後日再開する者もいる。
(有効日数が複数存在するのはルートの解釈の問題。後述)
2024年4月現在、長崎県の竹松駅を起点として北海道の長万部駅を終点とするルートが最長となる。なお「最長」に関する流儀の違いによっては北海道の稚内駅を起点として長崎県の新大村駅を終点とするルートが最長である場合がある。
1995年9月4日から2022年9月22日までの33年間、北海道の稚内駅を起点として佐賀県の肥前山口駅(現:江北駅)を終点とするルートが広く知られていた。上述のNHKの番組もこのルートである。
最長片道切符のルート
2024年4月1日現在。色を変更している部分は解釈問題によるため別に補足する。
下線を引いている部分は不通区間を含むため迂回ルートを記載する(代行バスが運行されている場合は開通済み扱い)。
※長いのでスクロールとしています。
運賃計算キロ派・JRのみの場合(基本)
運賃計算キロ派の場合は、北海道側が一本道、九州側が環状一周の6の字ルートとなる。前述の通り「6の字型」は可能、「9の字型」は不可のため、最長片道切符のルートは北から南となる。
- 新青森駅→奥羽本線→川部駅
(※奥羽本線・川部駅〜弘前駅間、川部駅を通過する列車に乗車する場合は区間外乗車可能) - 川部駅→五能線→東能代駅
- 東能代駅→奥羽本線→秋田駅
- 秋田駅→羽越本線→坂町駅
- 坂町駅→米坂線→米沢駅
(※2022年8月22日から、坂町駅→今泉駅・米沢駅は代行バス) - 米沢駅→奥羽本線→大曲駅
(※米沢駅→新庄駅は山形新幹線乗車可能) - 大曲駅→田沢湖線(秋田新幹線)→盛岡駅
- 盛岡駅→東北本線→花巻駅
- 花巻駅→釜石線→新花巻駅
- 新花巻駅→東北新幹線→北上駅
(※盛岡駅→東北新幹線→新花巻駅→釜石線→花巻駅→東北本線→北上駅としても、営業キロ・運賃計算キロ上は同一である。物理的な距離は短くなる)
- 福島駅→東北本線→岩沼駅
- 岩沼駅→常磐線→いわき駅
- いわき駅→磐越東線→郡山駅
- 郡山駅→磐越西線→新津駅
- 新津駅→信越本線→長岡駅
- 長岡駅→上越新幹線→新潟駅
- 新潟駅→越後線→柏崎駅
- 柏崎駅→信越本線→宮内駅
(※信越本線・宮内駅〜長岡駅間、宮内駅を通過する列車に乗車する場合は区間外乗車可能) - 宮内駅→上越線→越後川口駅
- 越後川口駅→飯山線→飯山駅
- 飯山駅→北陸新幹線→糸魚川駅
- 糸魚川駅→大糸線→松本駅
- 松本駅→篠ノ井線→篠ノ井駅
- 篠ノ井駅→信越本線→長野駅
- 長野駅→北陸新幹線→高崎駅
- 高崎駅→上越新幹線→越後湯沢駅
- 越後湯沢駅→上越線→新前橋駅
- 新前橋駅→両毛線→小山駅
- 小山駅→東北本線→安積永盛駅
- 安積永盛駅→水郡線→水戸駅
(※東北本線・安積永盛駅〜郡山駅間、安積永盛駅を通過する列車に乗車する場合は区間外乗車可能。要するに東北新幹線・小山駅→郡山駅に乗車可能である)
- 大宮駅→高崎線→倉賀野駅
(※高崎線・倉賀野駅〜高崎駅間、倉賀野駅を通過する列車に乗車する場合は区間外乗車可能。上越新幹線は大宮駅→熊谷駅は乗車可能、熊谷駅→高崎駅は乗車不可[1]) - 倉賀野駅→八高線→拝島駅
- 拝島駅→青梅線→立川駅
- 立川駅→南武線→武蔵小杉駅
- 武蔵小杉駅→東海道本線(品鶴線・横須賀線)→品川駅
- 品川駅→東海道本線→川崎駅
- 川崎駅→南武線→尻手駅
- 尻手駅→南武線(南武支線)→浜川崎駅
- 浜川崎駅→鶴見線→鶴見駅
- 鶴見線→東海道本線(京浜東北線)→横浜駅
- 横浜駅→根岸線→大船駅
- 大船駅→東海道本線→国府津駅
- 国府津駅→御殿場線→沼津駅
- 沼津駅→東海道本線→富士駅
- 富士駅→身延線→甲府駅
- 甲府駅→中央本線(中央東線)→八王子駅
- 八王子駅→横浜線→新横浜駅
- 新横浜駅→東海道新幹線→豊橋駅
(※小田原駅→三島駅、静岡駅→豊橋駅は東海道本線乗車可能) - 豊橋駅→飯田線→辰野駅
- 辰野駅→中央本線(辰野支線)→岡谷駅
- 岡谷駅→中央本線(中央東線)→塩尻駅
(※篠ノ井線・塩尻駅〜松本駅間、塩尻駅を通過する列車に乗車する場合は区間外乗車可能……であるが、定期列車で岡谷駅停車・塩尻駅通過・松本駅停車は存在しない) - 塩尻駅→中央本線(中央西線)→名古屋駅
- 名古屋駅→関西本線→亀山駅
- 亀山駅→紀勢本線→和歌山駅
- 和歌山駅→和歌山線→高田駅
- 高田駅→桜井線(万葉まほろば線)→奈良駅
- 奈良駅→関西本線(大和路線)→天王寺駅
- 天王寺駅→大阪環状線(※西九条駅経由)→京橋駅
- 京橋駅→片町線(学研都市線)→木津駅
- 木津駅→関西本線→柘植駅
- 柘植駅→草津線→草津駅
- 草津駅→東海道本線(琵琶湖線)→山科駅
(※東海道本線・山科駅〜京都駅間、山科駅を通過する列車に乗車する場合は区間外乗車可能) - 山科駅→湖西線→近江塩津駅
(※北陸本線・近江塩津駅〜敦賀駅間、近江塩津駅を通過する列車に乗車する場合は区間外乗車可能) - 近江塩津駅→北陸本線→米原駅
- 米原駅→東海道本線→岐阜駅
- 岐阜駅→高山本線→富山駅
- 富山駅→北陸新幹線→敦賀駅
- 敦賀駅→小浜線→東舞鶴駅
- 東舞鶴駅→舞鶴線→綾部駅
- 綾部駅→山陰本線→京都駅
- 京都駅→東海道本線(JR京都線)/東海道新幹線→新大阪駅
(※東海道本線・新大阪駅〜大阪駅間、新大阪駅を通過する列車に乗車する場合は区間外乗車可能……であるが、定期列車で京都駅停車・新大阪駅通過・大阪駅停車は存在しない) - 新大阪駅→山陽新幹線→西明石駅
- 西明石駅→山陽本線(JR神戸線)→神戸駅
- 神戸駅→東海道本線(JR神戸線)→尼崎駅
(※東海道本線・尼崎駅〜大阪駅間、尼崎駅を通過する列車に乗車する場合は区間外乗車可能) - 尼崎駅→福知山線→福知山駅
- 福知山線→山陰本線→鳥取駅
- 鳥取駅→因美線→東津山駅
- 東津山駅→姫新線→姫路駅
- 姫路駅→山陽本線/山陽新幹線→相生駅
- 相生駅→赤穂線→東岡山駅
- 東岡山駅→山陽本線→岡山駅
(※営業キロ派・実乗可能キロ派の場合は東岡山駅→相生駅は山陽本線を通ることになり、山陽新幹線・岡山駅→相生駅に乗車可能。選択乗車区間なのでどちらを通っても特に問題は無い) - 岡山駅→津山線→津山駅
- 津山駅→姫新線→新見駅
- 新見駅→伯備線→倉敷駅
- 倉敷駅→山陽本線→広島駅
(※山陽本線・倉敷駅〜岡山駅間、倉敷駅を通過する列車に乗車する場合は区間外乗車可能。要するに山陽新幹線・岡山駅→広島駅に乗車可能である) - 広島駅→芸備線→備中神代駅
(※伯備線・備中神代駅〜新見駅間、備中神代駅を通過する列車に乗車する場合は区間外乗車可能) - 備中神代駅→伯備線→伯耆大山駅
- 伯耆大山駅→山陰本線→益田駅
- 益田駅→山口線→新山口駅
- 新山口駅→山陽本線→宇部駅
- 宇部駅→宇部線→居能駅
- 居能駅→小野田線→小野田駅
- 小野田駅→山陽本線→厚狭駅
- 厚狭駅→美祢線→長門市駅
(※2023年7月4日から代行バス) - 長門市駅→山陰本線→幡生駅
(※2023年7月4日から代行バス) - 幡生駅→山陽本線→門司駅
- 都城駅→吉都線→吉松駅
- 吉松駅→肥薩線→隼人駅
- 隼人駅→日豊本線→鹿児島駅
- 鹿児島駅→鹿児島本線→川内駅
(※鹿児島中央駅→川内駅は九州新幹線乗車可能) - 川内駅→九州新幹線→久留米駅
(※新八代駅→久留米駅は鹿児島本線乗車可能)
営業キロ派・実乗キロ派の場合の北海道・九州のルート
営業キロ・実乗キロ派の場合、北海道側・九州側とも環状一周となるが、前述のように「呂の字型」は不可のためどちらかの閉路を切り離して6の字型ルートにする必要がある。
九州側の新大村駅~竹松駅間を切り離すのが一番有利となるため、最長片道切符のルートは南から北となり、水色地と桃地のルートが下記に変わる。
(この間、逆ルート)
以下は逆回りでも問題無し。
IGRいわて銀河鉄道経由
IGRいわて銀河鉄道を経由する場合は赤地のルートが下記に変わる。
気仙沼線BRT経由
実乗キロ派の場合の関東のルート
分岐駅通過特例や特定分岐区間特例を用いると実乗キロ派は黄地のルートが下記の逆ルートに変わる。
- 水戸駅→常磐線→我孫子駅
- 我孫子駅→成田線(我孫子支線)→成田駅
- 成田線→成田駅→松岸駅
- 松岸駅→総武本線→成東駅
- 成東駅→東金線→大網駅
- 大網駅→外房線→安房鴨川駅
- 安房鴨川駅→内房線→蘇我駅
- 蘇我駅→外房線→千葉駅
- 千葉駅→総武本線(中央・総武線各駅停車)→西船橋駅
- 西船橋駅→京葉線(二俣支線)→南船橋駅
- 南船橋駅→京葉線→東京駅
- 東京駅→総武本線(総武線快速)→錦糸町駅
- 錦糸町駅→総武本線(中央・総武線各駅停車)→秋葉原駅
- 秋葉原駅→東北本線(山手線・京浜東北線)→東京駅
- 東京駅→中央本線(中央線快速)→西国分寺駅
(※東京駅〜神田駅間は分岐駅通過特例があるため、適用するために少なくとも東京駅〜新宿駅間で中央本線の特急に乗る必要がある) - 西国分寺駅→武蔵野線→武蔵浦和駅
- 武蔵浦和駅→東北本線(埼京線)→赤羽駅
- 赤羽駅→東北本線・山手線(湘南新宿ライン)→池袋駅
(※実乗としては田端駅経由になる。運賃計算上は赤羽線(埼京線)経由) - 池袋駅→山手線→田端駅
- 田端駅→東北本線(山手線・京浜東北線)→東京駅
- 東京駅→東北本線(上野東京ライン・常磐線)→日暮里駅
(※東北本線・日暮里駅〜東京駅間には特定分岐区間特例があり、乗った列車が途中駅に止まる止まらない関係無しに合法的に東京駅まで折り返し乗車ができる(参考)) - 日暮里駅→常磐線→新松戸駅
- 新松戸駅→武蔵野線→南浦和駅
- 南浦和駅→東北本線(京浜東北線)→大宮駅
小倉駅〜博多駅新在別線
小倉駅〜博多駅間を鹿児島本線と山陽新幹線で別線とみなす場合は緑地のルートが下記に変わる。
- (中略)
ルートの計算
最長片道切符の経路は当初は手計算だった。最長距離だと判断するためには総当たりをする必要があり膨大な時間と手間がかかることから(組合せ爆発)、本当に正しいかどうかを検証するのは困難であった。このため、東京大学旅行研究会が旅行に使った最長片道切符は実は最長片道切符では無かったことが後年判明することになる。
ただ、1970年に光畑茂が計算した最長ルート(宮脇が実際に旅行したルート)は結果として正しかったようであり、間違いが長年続いたと言うことは無かったようである。
その後、コンピュータの性能が向上すると2000年には当時の東京大学大学院生だった葛西隆也が整数計画法によって稚内駅を起点として肥前山口駅を終点とするルート(その後ルートは変わっているが、2022年9月まで起点と終点は同じ)を発表し、実際に旅行をしている。
今では更にコンピュータの性能が良くなったこともあって、知識さえあれば誰でもルートの探索・検証が可能となっている。
なお日本初の最長片道切符は理論上1872年(明治5年)に発売されたことになる。日本初の鉄道路線である新橋駅~横浜駅間の切符が当然その時点での最長だったという話で、これに乗車した客は日本初の鉄道全線完乗も成し遂げたことになるが、その当時は誰も気にしなかったことだろう。ちなみに運賃は上等が1円12銭5厘、中等が75銭、下等が37銭5厘。現在の価値だとそれぞれ約10,872円、約7,250円、約3,620円[2]となる。
ルートの変化
当然ながら鉄道は新しく開業することもあれば、廃止されることもある。よって開業・廃止がある限りはルートは変化し続けることになる。
最も大きな変化は鉄道路線の廃止である。国鉄時代からJR初期にかけて赤字83線や特定地方交通線指定による廃止または他社への転換が行われていた。これによる廃止は2箇所以上他線と接続している路線や長大路線が多かったため、ルート自体やルートの起点・終点について変化することになった。最も大きな廃止による変化は、鉄道連絡船の1つであった仁堀航路(広島県呉市・仁方〜愛媛県松山市・堀江)の廃止である。これ以後は本州と四国を結ぶ鉄道連絡船が宇高航路(岡山県宇野市〜香川県高松市。後に瀬戸大橋線(本四備讃線)が開業したため廃止)しか無くなったため、本州から四国に行って本州に戻るルートが作れなくなり、四国は最長片道切符のルートから外れている。
今日でも鉄道路線の存廃が議論されている路線はあり、最長片道切符のルートに影響を及ぼす路線は複数ある。
鉄道路線の開業については長大路線の開業自体が近年少なくなってきているため、ルートへの影響は少ない。新幹線については国鉄民営化以降、並行在来線がJRから分離(または廃止)されていることから、在来線経由が新幹線経由に変化するだけといった小規模なものとなることが多いが、その影響により従来のルートが短縮すると別のルートが最長となるケースもある。
駅の開業・廃止はほとんどの場合ルートに影響しないが、路線の交差地点に新たな結節点が誕生するとそれまでのルートが「同じ駅を2度通らない」に抵触してしまうケースがある(実例:2013年の横須賀線(品鶴線)武蔵小杉駅開業)。また新幹線に単独で途中駅が開業した場合、それまで同一視されていた新幹線と在来線が別線扱いになり、新幹線と在来線の両方に乗車する新たなルートが生まれる可能性がある。
なお、路線の交差地点に新たな結節点が誕生した場合であっても、それまでの経路が交差する路線の片方のみを通過していた場合、結節点で乗り換えた方が距離が長くなるルートが生まれる可能性があるため、理論上は距離が長くなることもあり得なくはないが、立体交差できていたものができなくなることで不利になる可能性の方が高いため、そのような事例が今後発生する可能性は非常に低いと考えられる。
対象路線に関する流儀の違い
日本国内で「鉄路最長」を目指す場合、当然のことながら国鉄→JRを中心とするルートを考えることになる。しかし、JRグループの片道乗車券にはバス路線や私鉄路線を組み込むことが可能であり、これらを含むか否かは人それぞれ異なる。
私鉄路線の扱い
近年、全国のJRと通過連絡が可能な会社の路線を挟めば距離を伸ばせるのではと考えられるようになり、IGRいわて銀河鉄道(盛岡駅〜好摩駅間)、えちごトキめき鉄道(直江津駅〜糸魚川駅間または直江津駅〜上越妙高駅間)、伊勢鉄道、WILLER TRAINS(京都丹後鉄道)、智頭急行、土佐くろしお鉄道(窪川駅〜若井駅間)などを含むルートが考慮されるようになった。かつて手計算で求めていた時代は考慮されていなかったようで、コンピュータの性能向上により考慮されるようになったルートである。
通過連絡に私鉄路線を2社以上含むのは内規で不可とされている模様で、私鉄路線を1社のみ含むルートを計算すると、IGRいわて銀河鉄道を含むルートが最長となる。これを最長片道切符に含むかは人それぞれである。
BRT路線の扱い
JR東日本が運営する気仙沼線は東日本大震災の被災後、一部区間の線路を道路として舗装し2012年よりバス(BRT=バス高速輸送システム)での運行が行われている。当初は鉄道の仮復旧としての扱いだったものの、2019年に鉄道路線としては廃止されたため、現在はただのバス路線である。
しかし、BRTの運賃が全国の他の鉄道路線と通算できることもあり、これをJRの片道切符に組み込むことができる(大船渡線も同様に2013年にBRT化されたが、盲腸線なので最長片道切符には影響しない)。
2021年時点では通過連絡1社とBRT利用の併用は可能だったようであり、BRTを含む最長片道切符やIGR通過連絡とBRTを組み合わた最長片道切符が発売されることもあったが、2022年に入ってからはBRTを含む切符の発売を断られる場合がある模様(マルス券と言われる一般的な紙の切符ではBRT経由は発売できるが、最長片道切符では薄っぺらい補充券となり、補充券ではBRT経由は発売しないことがあるらしい)。
その他バスの扱い
かつては国鉄バス→JRバスが全国の鉄道路線と運賃を通算できたが、この頃は計算の手間を省くためかあまり考慮されていなかったらしい。ただし、種村は1985年に国鉄バスを含めた最長片道切符で旅行している。
なお、バスはバスでも鉄道代行バスについては、鉄道路線に乗ったものとして扱う(鉄道路線としては廃止されていないため)[3]。
「最長」に関する流儀の違い
営業キロ or 運賃計算キロ
JRの運賃は基本的に移動距離に応じた距離に基づいて運賃を計算することとなっている。しかし、線路配置によっては上り線と下り線の距離が大きく異なる区間があったり、線形改良により線路の距離の増減が生じることもある。もっと言えば、列車が到着するホームが変わると分岐器のぶんだけ距離が違ってしまう。
こうした細々した差異を運賃に反映するのは現実的に無理なので、線路の物理的な距離(建設キロ)とは別に書類上の「営業キロ」が設定されている。例えば東海道新幹線の実キロは515.4kmであるが、「東海道本線の線増」という経緯で建設されたことから、営業キロは東海道本線と同じ552.6kmが設定された。1975年には東海道新幹線の実キロと営業キロの差に起因する200円の返金を求める訴訟まで起こされ(結果は原告敗訴)、これを機に時刻表における「キロ数」という表現が「営業キロ」に改められた。
さらに、採算の見込めない地方交通線においては、営業キロのほかに運賃計算キロ(擬制キロ、換算キロ)[4]が設定されており、おおむね営業キロの1割増しの距離となっている。運賃の算出にはこの運賃計算キロが用いられている一方、乗車券の有効期間の算出などには営業キロが用いられている。
実乗経路のキロ数
ここまで述べたのは乗車券の発売時に考慮されるキロ数だが、JRの乗車券は一部区間で券面に記載されていない区間に乗車することもできる(選択乗車、特定の分岐区間に対する区間外乗車、列車特定区間、経路特定区間など)。これを加味すれば、実際に乗車する経路における営業キロの合計は運賃計算に使用する営業キロとも異なるものになる。
これらのキロ数の違いから、営業キロの最長ルート派と運賃計算キロの最長ルート派、ならびに実際の乗車キロの最長ルート派が存在する(主流は営業キロ派)。現在はどれであっても起点と終点が変わらないので話題に上がることは少ないが、今後の路線の開業・廃止によっては流儀によって起点・終点が異なる可能性が考えられている。
規則の解釈の問題
流儀の違いとは別に、規則の解釈の違いでルートが異なることもある。
山陽新幹線(新下関~博多)の扱い
前述の東海道新幹線と同様、山陽新幹線も並行する在来線(東海道本線・山陽本線・鹿児島本線)と同一の営業キロが設定されている。この場合、途中に新幹線単独駅がある場合は新幹線と在来線を別線として扱い、新幹線単独駅がない場合は新幹線と在来線を同一路線扱いで乗車券を発売するよう規則で決まっている(新在同一視の原則)。
ところが、国鉄分割民営化によって在来線は下関駅を境にJR西日本とJR九州に分割され、山陽新幹線は全線JR西日本に引き継がれたことにより、新下関駅〜博多駅間は新在同一視でありながら運賃が異なる区間となってしまった。この区間には「乗車券の購入時に乗車経路の指定が必要だが、行きと帰りで経路が異なっていても往復乗車券は発売可能」など、他の区間にはない特例が設けられている。
こうした規則の解釈によっては新幹線と在来線を同一視せず、新在の両方に乗れるルートが存在する可能性が指摘されている。葛西が計算したルートは別線扱いとして両方乗れるルートで計算されたが、そのルートで発売できないこともあることから、同一路線扱いとして旅行する者の方が多い(NHKも同一路線扱いであった)。なお、この規則の正しい解釈についてJR各社で統一見解は無い模様。
このほか、首都圏の込み入った路線網にかかわる数々の特例に起因する問題として「尾久問題(日暮里問題)」「田端問題」「鶴見問題」などが挙げられるが、ここでは省略する。
今後のルートの大きな変化予定
函館本線の一部廃止(2030年度までの間)
函館本線のうち函館駅〜長万部駅〜小樽駅間は北海道新幹線札幌延伸による並行在来線にあたるため、経営分離が検討されていたが、長万部駅〜小樽駅間は廃止することで2022年3月までに地元方針が決まっている。本来であれば2030年度の北海道新幹線札幌延伸と同時に廃止されることになるが、元々特急も走らないローカル線であることもあって地元の一部自治体が廃止の前倒しを要望しており、北海道新幹線が延伸開業する前にルートが変わる可能性がある。
これによるルート修正が反映されると、ルートはどの流儀でも北から南となり、下記に変更される予定。なお、北海道新幹線の営業キロは函館本線よりも短くなるため、札幌延伸後もルートは変わらない。
- 稚内駅→(中略)→東釧路駅
- 東釧路駅→根室本線→新得駅
- 新得駅→石勝線→追分駅
- 追分駅→室蘭本線→岩見沢駅
- 岩見沢駅→函館本線→白石駅
(※函館本線・白石駅〜札幌駅間は、白石駅を通過する列車に乗車する場合は区間外乗車可能) - 白石駅→千歳線→沼ノ端駅
- 沼ノ端駅→室蘭本線→長万部駅
- 長万部駅→函館本線→新函館北斗駅(※北海道新幹線開業後は北海道新幹線経由)
- (後略)
中央新幹線の開業(2027年以降)
リニア中央新幹線・品川駅〜名古屋駅間が2027年以降に開業する予定となっているが、現時点では山梨県駅と長野県駅は独立した駅となることが想定されている。中央新幹線が現在の運賃体系を適用すれば、品川駅〜神奈川県駅(橋本駅)〜岐阜県駅(美乃坂本駅)間は長距離の独立した新線が設定される可能性がある(岐阜県駅〜名古屋駅間は中央本線(中央西線)が完全に並行するため、在来線の営業キロが適用されると見られる)。
中央新幹線は独立した運賃体系をもった路線となって他のJR線とは運賃を通算しない可能性が高いとみられ、中央本線の第3セクター化などは予定されていないことから、最長片道切符の経路には影響しないと考えられる。
仮に最長片道切符に組み込める場合、本州内のルートが大きく変わる可能性があるが、前述の理由からルートを確認した人はおそらくいないと思われる。
亜種
関連動画
関連リンク
- 最長片道きっぷの経路を求める(葛西隆也によるホームページ)
- 最長片道切符ルートの変遷(デスクトップ鉄によるホームページ)
- 最長片道切符の流儀とバリエーション(鵺によるホームページ)
- Graphillionで最長片道切符の経路を算出する(想像地図研究所によるホームページ)
関連項目
脚注
- *熊谷駅〜高崎駅間は高崎線と上越新幹線で別線扱いであり、かつ選択乗車のルールには該当しないため。
- *ジョルダン「乗換案内1872」より
- *ただし、鉄道路線としては廃止されていなくても道路事情等により代行バスが運行されない場合は乗車することが不可能であるため、運行再開しない限りは実質的に廃止路線と同様の扱いになる。2022年6月時点で該当するのは肥薩線(八代駅〜吉松駅間)のみであり、元々最長片道切符のルートには含まれないため、特に問題とはなっていなかったが、肥前山口駅が終着駅として役目を終える1ヶ月前の2022年8月に東北地方・福井県で豪雨が発生したことから、不通区間が多発することになり、最長片道切符での旅行客に大きく影響を及ぼすことになった(発売済みの場合は不乗証明を受けて迂回、発売前の場合は不通区間は発売不可とされることになる)。
- *JR北海道・JR東日本・JR東海・JR西日本が採用する「換算キロ」とJR四国・JR九州が採用する「擬制キロ」では運賃の算出方法が異なるほか、「運賃計算キロ」は幹線の営業キロと地方交通線の換算キロ・擬制キロの和に用いられる用語であるが、本項ではこれらを一括して「運賃計算キロ」と呼ぶこととする。
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