Vima la Vidan (歪みなき生命)とは、新日暮里のガチムチバンド・COLTPLAYの楽曲およびアルバム名である。
概要
「歪みなき生命」(ゆがみなきせいめい 原題: Vima la Vidan ヴィマァ・ラ・ヴィダン)は、新日暮里のホモセクシャル・ロックバンド COLTPLAYが2008年に発表した4作目のスタジオ・アルバム『歪みなき生命」のために、メンバー全員によって製作された楽曲である。
本楽曲では、ストリングスや打楽器(ケツドラム)にのせて史実や宗教的な内容を含んだ内容の歌詞が歌われている。
アルバムからのセカンド・シングルとしてリリースされたこの楽曲は性的また商業的に成功を収めている。
「歪みなき生命」は、新日暮里シングル・チャートとアメリカ合衆国の総合シングルチャートBillyboard Hot 100にて第1位を獲得した。Billyboard Hot 100での第1位はバンドにとって初の出来事となった。また、2009年7月14日に行われる第44回マラミー賞にて、この楽曲が最優秀レコード賞、最優秀楽曲賞、最優秀ケツドラム入りポップパフォーマンス(デュオもしくはグループ)賞の3部門にノミネートされ、最優秀レコード賞を除く2部門を受賞した。(←もう決定している。)
原題の「Vima la Vidan or Death and All His Friends」を直訳すると、「男根万歳、もしくは、死と彼の全ての友人」となり、このアルバムのテーマ、「精と子」を表している。
ジャケット
アルバムジャケットには晩杯あきら氏の『民衆を導く自由の裸神』が使用されている。「Vima la Vidan」(スペイン語で「男根万歳!」を意味する)はメキシコの画家、フリーナ・カーリの作品にちなんでいる。
「民衆を導く自由の裸神」
作品詳細
■世界的ガチムチバンド・COLTPLAYの新曲は、遙か昔、帝政末期の新日暮里で市民革命を成し遂げた伝説の英雄達に捧げられた生命賛歌である。
■賢帝、キング石井亡き後の動乱で権力を握り、暴虐の限りを尽くした宰相TDNコスギ。 その彼のパンツを引きずり下ろすため民衆を率いて勃ちあがったのが、後の新日暮里共和国・初代大統領ビリー・ヘリントンである。 ビリー氏とその仲間達の活躍をモチーフにしたゲイ術作品は数多いが、最も有名なのが、絵画『民衆を導く自由の裸神』であろう。 今、COLTPLAYの曲と共に、一枚の絵画が漢たちの英雄譚を語り出す…
(以上、公式作者コメントより引用)
考察
(※この考察は、秀逸なコメントの数々を見て感激した編集者による、この楽曲に対する独自解釈であり、自己満足の塊ですので、この楽曲をより楽しく聴き、見るためのひとつの参考としていただければ幸いです。)
ビリー氏とその仲間達の活躍をモチーフにしたゲイ術作品は数多いが、最も有名なのが、絵画『民衆を導く自由の裸神』である。
他にも、数々の小説・絵画・オペラ等の題材となっているが、古典的な英雄譚が近代の世界的ガチムチバンドの題材となったことは注目すべき点であろう。世界が今再び大きな変革の渦に飲み込まれようとしているなか、ビリー氏とその仲間たちの活躍は人々の荒んだ心に何をもたらすのだろうか。
あらすじ
現代から遡ること数百年前、新日暮里帝国では賢帝と呼ばれたキング石井が王政を敷いていた。
花は歌い、草木は踊り、世界はひとつだった。王宮はゲイパレスとよばれ、そこには男たちの楽園があった。
キング石井亡き後、跡目争いが勃発し国は乱れた。はじめ水面下で行われていた政争は次第に激化していき、ゲイパレスの中で白昼堂々と殺人が行われ、井戸は毒に満たされ、淀んだ空気が辺り一面を覆った。
事態を重くみた帝国議会は、キング石井の実子たちの継承権を剥奪し、まだ幼い分家の赤さんを王に奉り、実権を帝国議会に一時的に移した。仕方ないね。このとき幼い赤さんのかわりに帝国を治めるため、宰相に選ばれたのが当時帝国議会議長を務めていたTDNコスギである。
人々はこの時まだ知らなかった。ここからはじまる暗黒の時代を・・・。
帝国議会議長時代のTDNコスギは笑顔が素敵なスポーツマンで、球を肉の棒で打ち返す球技が得意な好青年だった。市民たちは彼の就任に安堵し、ゲイパレスの復活を夢見ていた。
そんな彼らの儚い幻想を打ち破ったのが、TDNの宰相就任演説であった。
そ し て TDN は 、暴 虐 の 限 り を 尽 く し た。
刃向かうもの達はことごとく殺され、王宮は魔宮と化し、人心は乱れ、国は荒廃した。
草木はことごとく枯れ、花は消え去り、妖精たちは姿を消した。
それからの新日暮里について、私はここで述べることをためらってしまう。
それほどまでにおぞましく、陰惨で、凄惨で、悲惨な時代だった。
ただ、恐怖だけが人々を支配していた。もう終わりだぁ。
人々は待ち望んだ・・・英雄を・・・。
そして時は満ちた。
残虐非道な宰相TDNのパンツを引きずり下ろすため、民衆を率いて勃ちあがった男がいた。
彼こそが後の新日暮里共和国大統領・ビリー・へリントンである。
登場人物
主な登場人物へのリンク
ビリー・ヘリントン氏
「歪みなき生命」
新日暮里共和国初代大統領。
新日暮里の地において反乱軍「ゲイ国過激団」を結成しマランス革命(1788~1792)を主導して成し遂げ、革命達成後に人類の歴史上で初めて実施された普通選挙によって大統領となった。
奴隷解放・身分制度撤廃・義務教育の実施・信仰の自由・表現の自由・森林の保護などの環境問題への取り組みなどに多大な功績をあげた。
また一方で哲学者としての業績も高く、今日へ伝わる妖精哲学の基本理念は彼によって体系化され完成した。
「 だらしねぇという 戒めの心
歪みねぇという 賛美の心
仕方ないという 許容の心 」
いわゆるペニスコートの誓いと言われるこの言葉は妖精哲学の三信と呼ばれ、現在の新日暮里共和国の議事堂にあるビリー・ヘリントン氏の銅像にも記されている。
代々大工の家系に生まれたビリー氏は13歳から大工となり仕事を始める。彼の一族は森林の神を祀る一族であり、本来なら貴族として国政に携わるべき立場であるが「森の妖精」を自称する彼ら一族は森林から恵みを受け森林と共に生きることを望み、大工という職業を選んだ。
そのため大工としての腕は非常に高く、ゲイパレスやバイサイユ宮殿、さらには隣国のなんば国のなんばパークス城などの建設に従事し、一分の歪みもない美しい建物を作り上げた。
しかしキング石井が崩御し世継争いの混乱から宰相TDNが政権を掌握すると状況は一変する。
過酷な重税により普請される展望台や離宮などの奢侈な建造物や要塞などの軍事施設。さらには残酷な拷問施設を備えた監獄などの建設が増え、そのような施設の建築に係わることに嫌気がさすようになっていった。
彼にはひとつの趣味があった。釣りである。
その日も宰相TDNの命令でダーク男の子牧場の造成の仕事を行っていたが午前で抜け出し、近くの海岸の岩場で釣竿を垂らしていた。
しかしそこで彼は運命を一変させる出会いを果たす。
「僕の漁場を荒らさないでください!」
蟹漁師の鎌田吾作氏であった。
気が立っていたビリー氏は彼を砂浜へ引きずり出すとレスリングを挑む。しかし戦いの中で二人は意気投合し、ビリー氏は吾作氏の自宅へ招かれ蟹料理を振る舞われた。
そこで彼より決して後退しない蟹の歪みなさ、生命をいただくということの尊さ、私欲のために必要以上の命を奪う浅ましさを聞かされ、趣味として釣りを行い他者を弄んでいた己を恥じた。
「歪みなき生命」
生涯をかけて彼が追い求めた言葉を意識し始めるきっかけとなる。
ビリー氏が吾作氏の家に泊まったその晩事件は起きる。
「献上物が少ない」それだけの理由で帝国軍がこの漁村を襲い、火を放ち見境なく虐殺を行った。
吾作氏の家族も皆殺しにされ、ビリー氏は吾作氏と二人逃げ伸びるだけで精一杯であった。
帝国への復讐を誓った二人はゲイパレスに忍び込むも発見され、反逆罪で投獄された。
薄暗い牢の中ビリー氏と吾作氏、ビエリ関根氏の三者が顔を合わせる。
しかしまだ気付いた者はいない。この出会いが、やがて新日暮里を激動の渦に飲み込んでいくことを。
近年の研究で、彼自身の一人の人間としての幸福、英雄であるが故の孤独がクローズアップされてきている。
今回のCOLTPLAYの楽曲は単なる英雄譚にとどまるだけでなく、革命を成し遂げ英雄として気丈に振舞うも、内心では常に孤独を感じているビリー氏の悲痛な叫びをも内包した哲学的な内容が非常に評価されている。歪みねえな。
*革命後のビリー氏については、下記の「その後のビリー・ヘリントン氏」へ
キヨシ・カズヤ卿
新日暮里の隣国、なんば国の下位ながら皇位継承権を持つ貴族。鉄の馬(今日のモーターサイクルの原型となった)の製造会社である有限会社ツヨシ工業の代表取締役でもある。
ビリー・ヘリントン氏の片腕としてマランス革命を成功に導いた最大の功労者である。また同時に宗教家でもあり、彼が立ち上げた宗派「性欲実現党」により性狂徒革命(ドピュー♂リタン革命)を成し遂げた。
性欲実現党の教義は自らが望む理想を性欲に例え、それを彼自身が示した三つの言葉によって実現してゆくというものである。
一、救いは無い、という辛い世の中に対する心構え
一、全てはチャンス、常に前向きに何でも挑戦する
一、未知のエリアへ、未来への高い志を持って
「正しい現状認識」「諦めない実行力」「強い意志」の三箇条をカズヤの教えまたはカズヤ哲学の三信と呼び性欲実現党の教義とした。
長い間唯一の宗教として地域を支配し腐敗しきったカリ♂スカ教カリ♂イック派の信徒たちは神に絶望し、考えることをやめ全てが受動的になっていた。しかしこのカズヤ卿の三つの言葉とそれを彼自身が実践して見せたことで性欲実現党は一気に大衆の支持を得、カリ♂イック派を圧倒するようになっていった。
あらゆる宗派闘争に勝利し続け最大派閥を維持していた伝統あるカリ♂イックを押しのけたことに加え、カリスマ的な指導者によるトップダウンではなく民衆の横の繋がりによるボトムアップ式に勢力を拡大した点がこれまでの派閥闘争の枠組みを超越し、宗教「革命」と呼ばれる所以となった。
新日暮里やなんば国をはじめ周辺国がTDN時代~マランス革命期の混乱から速やかな復興を成し遂げられた要因の一つに自力本願を旨とする性欲実現党の「カズヤの教え」があったからであるという説は、現在では歴史家の間で定説となっている。
帝国軍が起死回生をかけた1792年8月10日事件(いわゆるハッテン事件)。予め情報を掴んでいたカズヤはそれに合わせて新日暮里及び周辺国の全土に檄文を飛ばす。
この檄文に触発され、民衆はTDNに対して一斉蜂起を起こす。
民衆に限らず、帝国に動員された帝国兵や将たちもことごとく離反。新日暮里帝国の衛星国は全て独立を宣言し、帝都を除く全ての地方都市も反TDNで結束し中立宣言を行った。彼らはカズヤ同盟またはカズヤの翼を名乗り、ゲイ国過激団を全面的に支持するという共同声明を発表した。
この日の出来事をもって性狂徒革命(ドピュー♂リタン革命)は達成したとされる。
なんば国は春には新芽が顔を出し秋には大地が金色に染まる豊かな土地であり、カズヤ卿は㈲ツヨシ工業を経営し、趣味のダンスを磨きながら家族と穏やかに過ごしていた。
しかし隣国を覆った黒い雲は、やがてなんば国の大地をも暗黒に染め上げていった。
新日暮里帝国宰相TDNによる領土拡大政策の魔手に絡めとられ、遂にはなんばパークス城の戦いにおいてひとり善戦したものの、圧倒的な新日暮里帝国軍の物量の前になすすべなく敗北し領土を奪われた。
民・家族・自然・・・愛するものを次々失った。
「救いはないんですか!?」
廃墟となったなんばパークス城に一人佇み、変わり果てた姿となった家族を胸に抱いて彼が叫んだ言葉である。
絶望の中で自暴自棄になっていたカズヤ卿は新日暮里帝国を恨み、新日暮里の帝都のメインストリートにある真良川(まらかわ)にかかる巨大な橋「ヒップブリッヂ」において目に映る全ての男のパンツを剥ぎ取る行為を繰り返し、剥ぎ取りダニー(ダニー・ザ・ストリッパー)と呼ばれ恐れられるようになる。
ある日脱獄直後にここを通りかかったビリー・ヘリントン氏と鎌田吾作氏に襲いかかるが、激しい戦いの後にビリー氏に敗れる。しかし宰相TDN率いる帝国軍に大切なものを奪われた者同士であると分かり、三人は打倒TDNを誓い義兄弟の契りを結びここに「ゲイ国過激団」が誕生した。
ヒップブリッヂにほど近いその公園の名前から「桃尻園の誓い」と呼ばれる。
自分に厳しい男であるが、仲間達には危険を察すれば「いかん、危ない危ない危ない…」とかばったり「おっほっほっほ~元気だ
また、酒の席ではカズヤダンスと言われる得意のダンスを披露したりと仲間想いの男である。
だがそんな彼にも弱点がある。
エビの臭いが非常に苦手であり、磯の香りがする海辺や海上では全く能力が発揮できない。
義兄弟の吾作氏を失ったトラファックガアッー!の海戦の大敗北に、足を引っ張った己の弱さが敗因として自分
を責めた。
「強くなりたい・・・」そう言い残し、しばらくゲイ国過激団を離れた。
怪しむ皆の前でその男は体の海苔を少しずつ毟っていく。
「この世に救いがないならば、俺が救いになればいい」
己の弱さを乗り越えた歪みないその姿を皆は「スーパーカズヤ」と呼んだ。
ビリー氏に勝るとも劣らない最強クラスの戦士の誕生の瞬間であった。
大切なものを守れなかったことから「強くなりたい」と切に願い、「この世に救いがないのなら、俺が救いになればいい」という達観したモノの見方を持ち、「全てはチャンス」と常に前向きに何にでも挑戦する心構え、そして自らを「未知のエリアへ」もって行こうとする歪みねぇ精神はビリー氏も賞賛しており、その強さもあいまって彼にも全世界規模で多くのファンがいる。
鎌田吾作氏
「蟹になりたいね!」
元漁師。
桃尻園の誓い(桃園尻義とも)によってビリー・ヘリントン氏、木吉カズヤ氏と義兄弟の契りを結び、ゲイ国過激団結成時の初期メンバーとなる。
しかし「同年、同月、同日に死せん事を」という願い空しくトラファックガアッー!の海戦の敗戦時に仲間を逃がすために囮となり帰らぬ人となる。
代々漁師の家系に生まれ、彼もごく自然に漁師の道へ進む。
性格は弱気で控えめだが正義感が強く、時に驚くほどの勇気と実行力を見せることがある。
幼い頃より蟹が大好物であった彼はやがて蟹の生態に興味を持ち研究するようになる。
敵に決して背中を見せず後退せず毅然と立ち向かうその姿に感動を覚え、一つの食材と言う認識を超えて蟹というひとつの生命を愛するようになっていった。それは同時に生きる糧を得るために命を頂くということの発見でもあり、生命が生きてゆくことの罪深さと尊さを若くして悟っていた。
この死生観はゲイ国過激団の組織理念の形成に大いに影響を与え、妖精哲学やドピュー♂リタン革命の原型になったというのが近年の研究によって明らかとなっている。
海辺で突然レスリングを挑まれたビリー・ヘリントン氏との出会いから平凡な漁師であった彼の運命は歴史の渦に飲み込まれていく。
当初はゲイ国過激団の戦力として活躍した。
とりわけゲイ国過激団を一躍有名にした真良川中流で行われた初の水軍戦、性癖の戦いにおいて元漁師の彼が指揮を執り、数に勝る帝国軍を大破するという大功を打ち立てた。
しかし次第に激化する戦闘の中で、軍人としてまたは武人としての土台のない自らの実力不足を感じ始めるようになる。
吾作氏はいつしか過激団の足を引っ張るようになった自分の存在価値についてひとり悩むようになっていた。そんななか、ゲイ国過激団がTDN軍によって大敗北を喫したトラファックガアッー!の海戦がおきる。
仲間達の船が次々落とされていくのを目の当たりにした吾作氏は、ゲイ国過激団の皆を逃がすため決死の覚悟で囮となり見事役目を果たすもTDN軍の捕虜となってしまう。
その後、TDNのダーク潮干狩りによる洗礼をうけ変わり果てた姿となりカブレラ小隊を襲う。(※1)
しかし化け物の姿となっても彼の心は残っており、なんとかカブレラ小隊を逃がそうと試みていることが伺える。カブレラ氏の曇りない眼は一瞬でそれに気付き、その化け物の真の正体を見抜いた。
やがてゲイパレスの戦いでスーパーカズヤとなったカズヤ卿と対峙する。
それはカズヤ卿と半漁人の戦いではなく、彼の意識を支配せんとする闇と、吾作本来の人格を取り戻さんとするカズヤ卿と吾作氏の間の戦いであった。
カズヤ卿の剣がその体を貫いた時、滴り落ちる緑色の血はやがて赤い暖かいものへと変わり、吾作氏は慕い・尊敬していた親友の腕の中で最期の言葉をつぶやいたのであった。
「蟹になりたいね・・・」
異形の姿をしながらもその表情は救いを受けた者のように穏やかであった。
近年の研究で、多くの文献に残されている「蟹になりたい」という言葉はそのまま直訳するのではなく、「蟹(のような決して後退しない勇敢な人間)になりたい」という魂の叫びであったという説が提唱されている。
サム(KANI)
蟹。
出会いは父と共に初めての漁に出た若き日の鎌田吾作が初めて得た獲物であった。
しかしサムは子蟹で体が小さく売り物にならなかったため、吾作のペットとして生活を共にするようになる。
吾作の蟹への愛情や敬意はサムから生まれ出たものである。
「生きるって辛いな・・・サム・・・」
不漁の年に不本意ながら小さな蟹をも出荷した晩に吾作がふと漏らした一言である。
吾作の漁村が帝国軍に襲撃され、旅立つ吾作の手によって海に放されたのが両者の永遠の別れとなる。
フリーナ・カーリによって描かれた『民衆を導く自由の裸神』で鎌田吾作の左手にサムの姿が確認できる。
マルチ☆ゲイ☆パンツ539章「愛の理由」において、誰かを愛することに理由が必要なのであろうか。人種・民族・宗教・性別そして種族でさえ、愛を妨げうる動機にはならないのだ。というくだりに吾作とサムの物語は引用されているためその名は後世にまで伝わっている。
いかりやビオランテ卿
元宮廷護衛騎士団団長。通称勇者ビオランテ。
卑女から後宮に入ったキング石井の側室の子として生まれる。父は不明とされる。
低位ながら爵位を与えられた。またその出生から男ながら後宮への自由な出入りを許された数少ない人間のひとりでもある。
感情の起伏が激しく、己の力を発揮できなかったり、逆に恐ろしいまでに残酷な一面を見せることもある。
最初期にゲイ国過激団に参加した彼は勇者の名に恥じぬ実力で過激団第一級の戦功をあげ多くの敵将を討った。しかしゲイパレスの戦いにおいて宰相TDNに敗れ戦死した。
彼が勇者と呼ばれる所以はゲイパレスで3年に一度行われる武芸大会で三連覇を成し遂げているためである。
この時準優勝は常に野薔薇ひろしであった。
また宰相TDNとは幼少時より面識があり、本人いわく「理想の国家像を語り合った仲」。
TDNのことを非常に良く知っていたが、ビオランテがその話を誰かに伝えたことはついに無かった。
TDNに対しては同情的な姿勢であり、彼の暴走を止めることが自分の役目であると考えており、TDNを倒すという過激団との間には僅かに考え方の違いがあった。
慈愛の神ゆきぽの69代目の巫女、ゆきぽとは将来を誓い合った仲であった。
不安定な彼の精神はゆきぽと共にいることで穏やかになっていった。ゆきぽが次の誕生日を迎え祭祀の巫女の任を解かれると、自分も武人の職を辞し猫の額ほどの所領に去り穏やかに生きていこうと考えていた。
しかし幸せな日々は長くは続かず、暴君TDNの誕生により数奇な運命を辿ることとなる。
ゆきぽに逮捕命令を出した親友TDNを説得しようと試みるが、王の間にて立ち会った際に目の前のTDNの禍々しい気迫に恐れを抱きその場から逃げ去った。
そのみじめさとTDNへの恐怖から剣を捨てゲイパレスを飛び出し、婚約者であったゆきぽを連れて自分の所領へ逃げうだつのあがらない商人になり、わずかな年貢と共にゆきぽと貧しくつつましいながらも幸せに暮らしていた。
しかしそんなある日、ビオランテが家を開けている隙に野薔薇ひろしの命を受けた海老原海老蔵によりゆきぽは逮捕され、どこかへと連れ去られていった。
「生きる意味を・・・失う・・・」
帰宅すると家が荒らされ、ゆきぽを失ったことを知ったビオランテが吐いた絶望のセリフである。
各地をさまよい手掛かりを探すも生死すら掴めず、悲観にくれるビオランテはいつしか死に場所を求めるようになる。気がついた時は帝都新日暮里のゆきぽ像の前にいた。
TDNにより解体されるために広場に集められた神々の像の中にゆきぽの姿を見つけると、ビオランテはナイフを取り出し自決を試みようとした。
「何をしているのですか!」
桃園尻義を終えたビリー、カズヤと共に歩く吾作がその姿を見つけるとビオランテに駆け寄りナイフを奪った。
「人間は自分の力で生きているのではない。他の生命より与えられた力で生きているのだ」
吾作の言葉にかつて勇者と呼ばれた男はとめどない涙を流す。
ビオランテがゲイ国過激団の一員となった瞬間であった。
この四人で歩いた第一歩がマランス革命の始まりを告げる。
初めはゲリラ戦や小競り合いにすぎなかったゲイ国過激団の戦いも性癖の戦いを転機としてどんどん人が増え、オーウェン定岡卿の加入と共に支援者も増え軍隊としての姿に変わってゆく。
そして1年後の1789年7月14日。
帝国軍の最重要拠点のひとつであるバスティンユ監獄においてバスティンユの戦いが起こる。
強力な帝国軍の抵抗をかいくぐり過激団の最精鋭部隊は監獄内に突入する。太守のスカルチクビ兄弟と対峙したビオランテは驚愕の事実を知らされる。
怒り狂うビオランテはスカルチクビ兄弟を見るも無残に惨殺すると監獄最奥部へと急ぐ。
「ゆきぽ・・・」
暗い地下牢の中で変わり果てたゆきぽと出会うことになったのだった。
壮絶な拷問の果てに視力を失い、自らの足で立つこともできないゆきぽ。
自分の腕の中で息をひきとり、だんだんと冷たくなっていくゆきぽの体を抱きながらビオランテ卿はつぶやいた。
「もう最悪・・・」
それはかつてTDNを前に逃げ出した愚かで臆病な自分に向けた言葉であった。
何が「勇者」か。何が「愛している」か。
怒りに己を失ったビオランテは、その場にいた負傷兵や少年兵を含む全ての帝国軍兵捕虜を皆殺しにしてしまった。ビリーとカズヤ二人がかりでもその暴走は抑えることができなかった。
正気に戻ったビオランテは自分の心の弱さに絶望し、ゆきぽの体を抱きかかえて無言で過激団の元を去った。
その背中に声をかけることのできる者は誰もいなかった。
余談であるが、このバスティンユの虐殺事件は帝国軍を一時的に反ゲイ国過激団で団結させ大いに士気を高めた。これが後のトラファックガアッー!の海戦における過激団の大敗北につながった一因となるというのが現在の戦史研究家の間での定説である。
失意のビオランテはゆきぽを葬るべく自分の所領に戻る。荒れ果てた自宅はそれでも自分を慕ってくれる領民の手によって美しく建て直されていた。
そこでビオランテは宿命の出会いを果たす。
「あなた様と、ゆきぽ様のお子様です」
バスティンユに監禁されて間もなく、ゆきぽは女の子を出産していた。
ここからゆきぽを連れ去った海老原海老蔵が涙を流し土下座しながら決死の思いで連れて来たのだと言う。
ビオランテはバスティンユで犯した罪の重さを知り、声を上げて泣いた。
それから3年。
ゆきぽの名を与えた娘と共に再び一から人生を歩き始めたビオランテ。
そんなビオランテの元にもカズヤの檄文が届く。
「自分にはやり残したことがある」
幼少時から共に歩き、共に語り合った親友を救うため。
ビオランテは言葉を理解するようになった娘に「行って来る」と伝え、再び剣を取った。
その背中を見せることが、彼の父としての最後の使命となった。
やがて迎えた運命の1792年9月21日。
前日のマァラミーの戦いで壊滅しもはや抵抗の術の残されていない帝国軍。
戦意を喪失し散発的な抵抗しか見せない守備陣を単騎突破するとビオランテは王の間(ロッカールーム)へ急ぐ。
それは憶病者であったかつての自分との決別のため。そして何より最愛の友を救うため。
道中、かつて友と呼んだ男と対峙する。
しかし今のビオランテにとってその男は敵と呼ぶにはあまりに小さく、哀れであった。
憎しみの連鎖。ビオランテは悟っていた。それこそが自分を苦しめていたモノの正体であると。
そして、ついにビオランテは親友の元へ辿り着く。
そこで彼はTDNに恐怖する自分を感じながらも、壮絶なる覚悟で互角以上の戦いをみせる。TDNの必殺技・死の宣告や超スピード攻撃すらしのぐ。
「ダブル・・・ゆきぽ!」
恐れるものはもはや何もなかった。彼はもう、ひとりではないのだ。
それは彼の愛する女性と慈愛と豊穣の女神の加護。
またはビオランテとゆきぽ二人分の覚悟と想い。
或いはゆきぽとゆきぽの名を継いだ新しい生命。
人を殺める剣ではなく悪を斬る剣、活人剣の悟りを開いたビオランテの「ダブルゆきぽ」がTDNを追い詰める。
しかし戦いは予定調和に終息し、TDNの奥義・超スピード攻撃→秘儀エアパイズリ→ウマウマ固めの連携技(TDNコンボ)の前に敗北し倒れるビオランテ。
しかし横たわる自分を見つめるTDNの瞳がまぎれもなく最愛の友のそれであった時、遂にビオランテは真の勇気と真の安息を手に入れたのであった。
人は自分の力で生きているのではない。自分以外の全ての生命によって生かされているのだ。
生きてゆくこと。罪を犯すこと。人を許すこと。
ビオランテの歪みなき生命がその全てを乗り越えた時、人は口々にこう伝えた。
「ビオランテは、まさしく勇者であった」と。
ゆきぽ69世
慈愛の神ゆきぽを祀る氏族の娘。
代々この家系に生まれた長女が神と同じ名を授けられ巫女を務める。この物語のゆきぽは正確に言うとゆきぽ69世。慈愛と豊穣の女神ゆきぽは大地の女神でもあり、その加護を受けるゆきぽは念じただけで地面に穴を掘ることができる能力を持っていた。
高貴な家系に生まれ、また生まれながらにして祭祀の巫女と言う重責を与えられ新日暮里の人々のアイドル的存在であった。
周囲の人間は皆「ゆきぽ」という一人の人間ではなく「慈愛の神ゆきぽ」の化身として接してくるため常に孤独に苛まれていた。その上ひんそーでひんにゅーでちんちくりんな自分にコンプレックスを抱いていたが、そんな自分に分け隔てなく接し全てを受け止めてくれた勇者ビオランテと恋に落ちる。
本来の彼女は非常にネガティブで心配性で後ろ向きな性格であったが、衆目の前では神の化身として凛とした立ち居振る舞いをせねばならず、本来の姿を理解してくれたビオランテ卿は彼女のかけがえのない存在となる。
しかし幸せな日々は長くは続かず、暴君TDNの誕生により数奇な運命を辿ることとなる。
全ての宗教を否定するTDNは新日暮里の全ての偶像を破壊し、またアイドル的な存在であったゆきぽを人心を荒廃させると断罪し逮捕命令を出した。
TDNを説得しようと王の間(ロッカールーム)に向かったビオランテ卿であったがTDNの邪悪なオーラに気圧されして話を切り出せず、ゆきぽは彼とゲイパレスを離れた。
臆病な自分を責めるビオランテ卿であったが彼女はそんな彼の全てを受け入れ、貧しくもつつましやかな幸せな日々を送った。
しかしある日警察官の海老原海老蔵に発見され逮捕された後、バスティンユ監獄に監禁され拷問を受ける。
1年後の夏の日、バスティンユを陥落させたゲイ国過激団によって発見されビオランテ卿と再会するが、彼女の生命の灯火は尽き果てようとしており、彼の腕の中でその短い生涯を終えた。
革命達成後、新日暮里には寄り添うビオランテ卿とゆきぽの像が立てられた。恋人たちの永遠の愛を見守るかのように、数百年後の現在でも変わらぬその姿を見せてくれる。この像の下で誓った愛は永遠に破れることがないのだと言われている。
井上カブレラ氏
暗殺者。代々暗殺者の家系に生まれる。
山岳に囲まれた彼の生まれ故郷は季節を問わず日照時間が極めて短い。そのため土地は痩せ産業も発達せず非常に貧しい土地である。ゆえにこの土地の住人は影の一族と呼ばれている。
新日暮里帝国で810年以上続く身分制度は氏族伝来の土地を離れることを許しておらず、彼ら影の一族はこの土地で生きる糧を得なければならなかった。
その答えの一つが、暗殺者。彼もまた先祖代々の運命を受け継いだ。
ビリーたちとの出会いは暗殺者とそのターゲットであった。
ビリーたちゲイ国過激団が新日暮里帝国の役所や刑務所を次々と襲撃していることに恐れをなした地方官吏が雇った暗殺者たち。その一人がカブレラ氏であった。
彼は影の動きから相手の動きを三手先まで読める力量の持ち主であった。
またフェアリークロックと呼ばれる正確な体内時計を持ち、それにより太陽や月の正確な位置を常に把握しており、太陽の逆光や月光の届かぬ闇を最大限に生かす戦いを得意としていた。
この当時第一級の実力者であった彼にビリー・ヘリントン暗殺の白羽の矢が立ったのだった。
性格は誰とも馴れ合うことの無い孤高。
決して笑顔を見せることなく、彼は感情を持たないのではないかと思われている。
一方で知らないものはこの目で見てみたいという旺盛な探究心を持ち合わせている。
心優しき彼は暗殺者と言う自分の立場を嫌悪していた。しかし家族や部下、さらにその家族たちの生活は己の双肩にかかっており選択の余地はなかった。その結果彼が取った選択は全ての感情を放棄することであった。
武芸と鍛錬以外の一切に興味を持たず、食事すら彼にとってはエネルギーの補給以外の意味を持たない。
しかしビリー氏に敗れ心の奥の孤独を見破られて以来、カブレラ氏の人生の歯車は大きく動き出す。
彼の哀しみはビリー氏に身分制度や奴隷制度を考えさせるきっかけとなり、ビリー氏はこの戦いに必ず勝利しなければならないと決意を新たにし、自身の大統領就任後の身分制度撤廃へとつながっていくのであった。
ゲイ国過激団において彼はもっぱら4人からなる隠密部隊を率いていた。
新日暮里全裸騎士団、通称カブレラ小隊のリーダー。
少人数によるゲリラ戦やスパイ・侵入作戦等を得意とし、敵地に溶け込むため武具は現地調達を基本とするため出陣時は基本的に全裸であることからこの名がついた。
華々しい活躍は少ないものの、彼らの縁の下の働きなくしてゲイ国過激団の勝利はあり得なかった。
特にケツホルデス城への潜入作戦は彼らの最大の見せ場となる。
他国の貴族プリンセス*ケツホルデスがTDNの圧制に加担しているとの情報を得て、新日暮里国内のデビルレイク湖畔にそびえるケツホルデスの居城に潜入した際にもまた、侵入が困難と判断しあえて捕まって城内に潜入を果たした。しかしそこで謎の半漁人(デビルレイクバーマ)に襲われるという失態を犯す。
だが、半漁人は彼らにとどめを刺すことなく4人を逃がした。無事に逃げ延びたカブレラ小隊はその後も城内の探索を続け、TDNとケツホルデスとの結びつきを示す証拠を手に入れることに成功した。これが後のファレンヌ事件へとつながり、TDN政権の崩壊は決定的となっていくのであった。
しかし、革命達成後も彼の戦いは終わることがなかった。
影の一族は新しい人生を求めて新日暮里各地に散っていった。だが幼少時より命を奪うこと以外の一切の教育を受けておらず、また多くの命を奪いすぎたトラウマから彼は他のメンバーのように普通の社会生活を送ることができなかった。赤さんの護衛と言う日蔭の閑職を引き受けたカブレラはしかし生きる意味を見失いそうになっていた。
「私を新日暮里から引き離して欲しい」
赤さんの提案は彼を驚かせるには充分であったが、同時に非常に魅力的でもあった。
「自分がここにいてはいつかまた誰かが自分を利用するだろう」
新日暮里を誰よりも愛する赤さんは愛するが故に新日暮里を離れることを願った。
「では、東方へ行きましょう」
カブレラは暴君TDNの生まれた大地をこの目で見たかった。本当に悪魔の棲む地獄であるのかどうか。
こうして彼は赤さんを連れてゲイパレスを抜け出し、果てしない大地の旅人となったのであった。
その後の彼らの消息を知る者は新日暮里にはいない。
一説によるとはるか東方の最果ての地でスポーツ選手となり、彼は己を照らす太陽を手に入れたとも言われている。
自分と言う存在を大切に想う人がいること。自分が大切に想う人がいること。自分と言う存在が誰かに笑顔を与えられること。最果ての地で心の底から純粋で自然な笑顔を見せた時、彼は悟った。
「私も、影を照らす光となれることを」
それが井上カブレラ氏の見つけた歪みなき生命の答えであった。
平田元帥
カブレラ小隊の一員。4人からなるカブレラ小隊最年少。
元帥という大げさなあだ名をつけられている。カブレラ小隊のいじられ役でムードメーカー。ケツホルデス城における薄井リーブスとの戦いで、戦士として一剥け、ゲイパレスの戦いでは挑んできたリーブスと戦い、敬意とともにこれを討った。
ホーリー軍曹
カブレラ小隊の一員。別名シューマッハ軍曹。
馬の早駆けという特技を持つ。この能力で仲間たちを何度も救ってきた。
バッファロー平岡氏
カブレラ小隊の一員。ちんこちっちゃい。
縄や手錠で捕縛されても自力で外すことができる。この能力で仲間たちを何度も救ってきた。
オーウェン定岡氏
「理由・・・?お前たちがいるからだ・・・」
新日暮里帝国消防庁の元幹部の一人。水の神を祀る高貴な氏族の出。口数が少ない寡黙な男であるが誰からも信頼され多くの親友に恵まれていた。また舞踊の達人であり平安なキング石井帝時代には国賓に踊りを披露し、後にゲイ国過激団参加後も宴席で木吉カズヤ卿と共に場を盛り上げた。
キング石井崩御後、TDNによる圧政がいよいよ過酷を極め彼は己の身の置き場に迷いが生じた。親友のトータス藤岡氏は「このような悪魔の所業に手を貸してはならない」と共にゲイパレスを去ることを提案し、いま一人の親友であるくりぃむしちゅー池田卿は「我々は当事者であるのだから責任を持って歪みない道に戻さねばならない」と説得した。
定岡氏は結局トータスを選びゲイパレスを去ることを選択した。この決断には、従来のTDNが水利権をも独占しゲイパレス内ですらシャワーを満足に浴びられなくなった為とする説に加え、警察官であった親友のプチ・プーチン氏の殉職に際しTDNの重大な秘密を知ってしまったからであるという説が後の研究で浮上している。
トータス氏と世を捨てた定岡氏であったがしかし迷いまでも捨て切れたわけではなかった。己を保身に走った俗物であると自虐し、いつしか新日暮里帝国が破滅したのは自分の責任であるとまで考えるようになっていった。
そんな折、ビリー・ヘリントンなる一庶民がゲイ国過激団という組織を率い反TDNの旗を掲げ勢力を広げているとの情報を得る。彼はトータス氏に過激団への参加を提案するが不動のトータスは首を縦に振らなかった。結局彼はトータス氏の許を離れ、ひとり過激団に参加する。
それまで庶民・下級貴族・他国の貴族しかいなかったゲイ国過激団に賢帝時代の上級貴族が参加したというニュースは瞬く間に全土に知れ渡り、定岡氏の仁徳を慕って多くの人間が過激団への参加や支援の申し出を行った。
それはゲイ国過激団が荒くれ者の集団から組織化された反乱軍へと変貌する転機となり、TDNは彼の影響力に恐怖を覚えた。
後にゲイ国過激団が一大敗地にまみれるトラファックガアッー!の海戦の開戦前夜にTDNの策略により毒入りのシャワーを浴びてしまい帰らぬ人となった。この暗殺も敗戦もゲイ国過激団内部にいたTDNの内通者によるものであったという。
やがてゲイ国過激団に参加したトータス氏の水の力を操るスタンド「サダ・ファントム」として死後も歪みない新日暮里の復活のために身を捧げ、革命達成後に親友たちに見届けられながら天へと召されていった。
彼の参加がゲイ国過激団の革命を成功させるターニングポイントとなったと、彼の決断は後世の歴史家から絶賛されている。
トータス藤岡氏
「我知無知」
戦いの最中においてもただひたすら傍観を続けた男。別名不動のトータス。学者の家系に生まれながらも文武両道の教育方針により育てられる。
海軍の指揮能力を持ち武人としての能力も高かったのだが、学者という血筋と文官という職業だけを見て接してくる周囲の人間に呆れ、もう一つの能力は無二の親友であるオーウェン定岡氏以外の人間には隠していた。
青年時代に火災に巻き込まれ危うく命を落としかねなかった過去があり、そのせいで火を異常に恐れるようになってしまった。その時に彼が一命を取り留めたのは燃え盛る炎の中に飛び込んで彼を助けた青年がいたからである。以後、名も知らぬその青年は心の想い人として彼の中で生き続けている。
成人し、ゲイパレスに登城後は史学者として父と共に史記の編纂にあたっていた。
「観測者は観測の対象に干渉してはならない」
それが代々史学者を務めているトータス氏の一族の家訓であり、彼自身の信念でもあった。後世に現在綴られている歴史を歪みなく伝えることこそが人類のハッテンであると信じていた。
しかし皮肉にも歴史はそんな彼に牙を剥く。
暴君TDNが専制をふるい、彼の一族はTDNの振る舞いを美談に仕立て後世に残すよう命令を受ける。
しかしそれは彼の信念に反する行為であり、「我々が内部から改革を行わなくては庶民は救われない」と主張するくりぃむしちゅー池田と袂を分かち、「悪魔の所業に手を貸すわけにはいかない」と彼は定岡氏と共にゲイパレスを出奔し海辺の辺境に庵を結んだ。
しかし、ふたりでひとつになれちゃうことを気持ちいいと思ううちに定岡氏との間に生じていた歪みに気付かないセコイ人間になってしまっていた。
「我知無知・・・私は全てを知っているつもりであった。だが私は、己が何も知らないことを知らなかったのだ」
定岡氏が彼の許を去り、ゲイ国過激団に参加した時に彼が漏らした言葉である。
知っていながら現実には反映させることができない。力を持ちながら行使しない。正義を謳いながら道を誤っている。それでは何もしなかった事と同じである。この事件が彼の意識を動かし始めていた。
やがて、トラファックガアッー!の海戦でゲイ国過激団が敗れ定岡氏が帰らぬ人となったらしいことを知った彼は、海軍の知識がありながら過激団に参加しなかったせいであるとついにゲイ国過激団に合流すべく庵を引き払った。
かつての同僚であったくりぃむしちゅー池田卿が手負いのビリー氏たちを追い詰めているところでついに合流を果たし、トータス氏はビリー氏をかばい剣を取り池田と一騎討ちを行う。余談であるが、この時ビリー氏とトータス氏の二人はいつか見た逆の立場の姿をデジャヴとして感じていたが、二人がそれを口にすることは生涯なかった。
閑話休題。
かつての自分の過ちを。そして今も道を誤っている池田卿を。過去は変えられずとも、未来は変えることができるのだと必死の説得を行う。その時、二人の共通の親友であったオーウェン定岡氏の霊魂である「サダ・ファントム」が現れ、ついに二人は和解、くりぃむしちゅー池田卿もゲイ国過激団の一員となる。
彼のスタンドとなったオーウェン定岡氏の「サダ・ファントム」を操り彼はゲイ国過激団屈指の戦力となる。
また、くりーむしちゅー池田卿とは生涯を通じ唯一無二の親友となった。
革命後にいままでの戦いを記した「マルチ☆ゲイ☆パンツ」をパンツに著し、後年の研究家たちに貴重な情報を与えた。
くりぃむしちゅー池田卿
新日暮里帝国医療厚生大臣。極めて高位の貴族であり資産家。庶民を慈しむ愛情に満ち、また民衆からの支持も非常に高い。彼の財団が運営する池田クリニックは新日暮里全土に点在し、全ての国民に無償で医療を提供している。
一方で軍人としての側面も持ち、彼の特徴である顎のように鋭い槍「SNAKE EATER(スネークイーター)」を得物に国内でも屈指の武芸を誇っている。人はその姿を「SNAKE EKEDER(スネークイケダー)」と呼ぶ。
TDN政権に疑問を持ちながらも動乱が起こっては民衆が傷付き倒れると危惧し、政権内において高位のポストを持つ己の責任として内部からの改革を志した。しかし考え方の違いから親友のオーウェン定岡氏、部下のいかりやビオランテ卿、信念の違いから良い感情は抱いてはいなかったが能力は認めていたトータス藤岡氏と次々に仲間を失っていく。
それでも彼は己の信念を貫くべく、TDN政権の幹部ながらTDNの専横を食い止めんと奔走する。
赤さんが廃されず、またその身を全うできたことは池田卿の陰日向の行動によるところが大きかったとされている。
しかし、彼の願い空しくTDNの毒牙はゲイパレス内に留まらずいよいよ庶民たちにまでも向けられるようになった。
だが貫くべき正義を見失いつつあり、池田の顎が歪み始めた事に気付かぬTDNではなかった。
「オーウェン定岡、誅殺!」
親友の非業な死に絶望する池田卿にTDNが囁く。
「お前が愛する庶民は貴族を嫌っているのだ。庶民が定岡を殺したのだ」と。
貴族がゲイ国過激団にいることに不満を唱え、ビリー氏に反旗を翻しゲイパレスに参列していた城之内悠二氏の存在がその言葉に重みを与え、ついに彼はゲイ国過激団を刺し貫くべく出陣した。
トラファックガアッー!の海戦に敗れ多くの将兵を失い仲間ともはぐれた傷だらけのビリー氏を発見すると、スネークイケダーはそのだらしねぇ状態の氏を貫かんと攻撃を仕掛ける。防戦一方のビリー氏がまさに討ち取られんとしたその時、トータス藤岡氏が現れ彼をかばい、池田卿と一騎討ちになりながら説得を行った。
変節は男の恥。貫くことが男という信念を抱き戦う池田卿と、道を間違えた正義は正義ではない。過ちを自覚し認める勇気が男という信念を抱き戦うトータス氏の死闘はいつ果てるともなく続いた。オーウェン定岡氏の霊魂「サダ・ファントム」が現れるまでは。
定岡氏より語られるTDNの過去。彼が狂っていった全ての真相。そして何より新日暮里を愛する定岡氏の想い。
池田卿とトータス氏は遂に和解し、手を取り合ったのであった。
全てを知ったくりぃむしちゅー池田卿はTDNにいいように利用された自らの愚行を悔い改め、オーウェン定岡氏の敵をとるべく立ち上がり、仲間となったのだった。
彼の参加によりゲイ国過激団の医療水準が飛躍的に向上し、兵卒の生存率が劇的に高まったことがトラファックガアッー!の敗戦後の軍の速やかな建て直しを可能にした。また彼の私兵であるランスを装備した騎兵軍団の突撃は戦場を深く貫き大いに戦功をあげた。
城之内悠二氏
元農家。
ユガミザワという村のキャベツやじゃがいもを栽培する農家の息子に生まれた。梨花ちゃんという幼馴染がいる。
革命家を志し身分制度の撤廃を求めて奔走した。
初めはゲイ国過激団に所属するが誤解から決別し、続いて帝国軍に属するが冷遇され離反。
その後、各地の農民を集め歪兵隊(わいへいたい)を結成。第三の勢力として頭角を現す。
初めは帝国軍、ゲイ国過激団共に敵対していたが後にビリー・ヘリントンと和解し、マァラミーの戦いにおいてゲイ国過激団(革命軍)の傘下に入ることを宣言し勝利に導いた。
革命後は大統領選挙に続き行われた代議員選挙に出馬し議員となり、農業改革に尽力した。
議員引退後は故郷に戻り小さなレストランを開いた。
彼には得意のブタカツやおさかな料理のレストランを開きたいという夢があったが農民の身分の自分には叶わぬ夢であった。
相手を挑発し心を乱す術が異様にうまい。また剣の二刀流の使い手であり、2本の剣をXに交差させてブスリと放つ一撃「VIX」を必殺技とする。
ゲイ国過激団の中でも血気盛んな若手タカ派の急先鋒。たびたび独断専行しては「イタズラなんてやるのはクズがやる模様です」とたしなめられていた。
彼にとってこの革命は王政を討ち貴族社会を打倒し身分による階級を無くすことが目的であり、新日暮里を素晴らしい国に戻すというゲイ国過激団上層部との考え方の間には微妙なズレがあった。
幹部の幾人かに貴族や他国の人間が入っていることに不満をっていたが、オーウェン定岡氏の参加と共に反TDNの貴族が多数過激団に加わったことで彼にはこの革命が貴族同志の内輪もめになってしまったとしか見えなくなり、ビリー氏は我々庶民を利用しているのではないかと猜疑心を抱くようになった。
そしてバイサイユ行進事件が起こり、市民に多くの犠牲が出る。
これはゲイ国過激団の活躍に触発された庶民たちの完全に自発的な行動であったが、ビリー氏に不信感を抱いていた城之内は過激団の貴族たちが庶民を煽動したのだと思い込み過激団に反旗を翻した。
その後、戦功をあげれば貴族に取り立てるとのTDNの甘言に乗せられて帝国軍の末席に加わり過激団と戦う。
しかし迷いのある剣では過激団に敵うはずもなく連戦連敗。正規軍から外されチャベス・オバマの下に転属される。
やがてマァラミーの戦いにおいてビリー氏達に危機が迫ったとき、どこからともなく颯爽と現れそのピンチを救った。革命軍の勝利後、「Yes I was bitch. すみましぇ~ん、ごめんなしゃ~い」と軽いノリで反省して戻ってくるが、ビリー氏もすんなりと彼を受け入れる心の広さを見せるのだった。
革命達成後、彼は戦乱で散った同じ庶民の出の吾作をいたみ、蟹料理専門のレストラン「GOSAKU」のオーナーとなり夢を叶えたのであった。
野薔薇ひろし准将
「生きたい・・・」
元宮廷護衛騎士団副団長。後宮の下女を母に生まれ、剣闘士として育つ。
新日暮里でビオランテと並び称される実力者であったが、ビオランテにはついに一度も勝利することができなかった。ゲイパレスの武芸大会で目下三大会連続準優勝中である。
ビオランテの下に配属され、彼の右腕としてゲイパレスの治安維持にあたり名刀ドラゴォンを相棒にキング石井崩御前後の政情不安定期に多くの暗殺者を葬り武功を打ち立てた。
ビオランテは彼を親友と呼んでいたがひろしは仮面の下で赤い舌を伸ばしていた。
似たような境遇ながら片や爵位と所領を与えられた貴族。自分は剣闘士と聞こえはいいが奴隷階級。
キング石井より下賜されたドラゴォンのみが彼のプライドを支えていた。
TDNが政権を奪った後、彼はひろしの能力に目を付ける。TDNは野薔薇ひろしに准将という破格の待遇を与えTDN親衛隊を編成させた。
意気に感じたひろしはTDNに絶対の忠誠を誓い、TDNの側近として彼の行動をサポートした。
またボー・ヘリントンやスカルチクビ兄弟、チャック松本などの実力者を集め強力な精鋭部隊の結成に成功する。
TDN親衛隊は正規軍と別の命令系統を持つTDNの私兵として大いに武を発揮し、ゲイ国過激団に立ち塞がる最大の壁として活躍した。
TDNの側近として絶大な権力を手に入れた彼は、ついに剣で勝てなかったビオランテへの復讐を開始する。
宗教の否定。偶像の破壊は野薔薇ひろしの発案であった。
それは崇高な理念があったわけでも高尚な思想があったわけでもない。
「いかりやビオランテの大切なものを全て破壊する」
ただ、その一点のみが目的であった。
魔人狩り・魔女狩りと称して宗教関係者を次々逮捕して拷問し虐殺する。およそ人の所業ではない地獄が新日暮里帝国そして帝国に屈した周辺国で繰り広げられた。
バスティンユ監獄で真実を知り、愛する者と大切な親友を同時に失ったビオランテを失意のどん底に叩き落とした。
後のゲイパレス行進にて、正門が突破され単騎王の間へ駆けるビオランテ卿に立ちはだかったのは彼であった。男と男の意地と信念をかけた最後の戦いは、やがて戦いの中で編み出されたビオランテ卿の、恨み・憎しみ・殺意・功名心などの全て邪な心を捨てた無我の境地により放たれる究極奥義「アンインストール」によって決着を見た。
力尽き倒れるひろし。死を覚悟した彼を待ち構えていた運命は意外なものであった。
「生きるの?」
大切な人を奪った自分に対する問いかけに理解できず戸惑うひろしであったが、立て続けに
「はっきり言えや!」「別にいいし!」「生きる!?」「はっきりYes?!」「行けそうか!!?」
繰り返される問いかけに、ひろしははっきりとこう答えた。
「生きたい・・・」と
それは、本当に立ち向かわねばならない戦いから逃げた者だけが分かり合える叫びであった。
罪を憎み人を赦す域に達したかつての親友ビオランテに剣も心も敗れ、ひろしは己の罪の深さを悟ったのであった。
革命達成後30年の刑期を終え恩赦を受けた彼は10年の修行の後聖職者となり、この動乱で散った供養を受けていない魂を神の下へ返すべく各地を行脚したという。
ボー・ヘリントン氏
「ちょろ~ん!」
ビリー・ヘリントン氏の弟。しかし兄とは似ても似つかぬ男。
放蕩癖が激しく酒や薬物・賭博に溺れ、犯罪という犯罪は一通り全て経験している。
ビリー氏が大工時代には度々兄の下へ金を無心していたが、氏がゲイ国過激団を立ち上げ革命運動に没頭していくと、高額の報酬につられてTDNの傭兵となる。腕っぷしは兄にも後れを取らなかったため、ほどなく傭兵たちの中で抜きんでた存在となり部隊を任されるようになる。
火責めを得意とし、戦場で相まみえる度に過激団を苦しめた。トラファックガアッー!の海戦では得意の火責めで帝国軍で第一等の勲功を揚げ勲章を受けた。
「人生なんてちょろ~んさ」
が口癖であり、まじめで誠実な兄を常に蔑んでいた。
ビリー氏はそんな弟を真っ当な道に戻そうと腐心したが、その想いはついに届くことなくマァラミーの戦いにて一騎討の末、戦場に散った。
どうしようもない男だった。だがそれでも家族だった。仕方ないね。革命達成後ビリー氏はつつましやかな墓を建て、毎年命日には人目を忍んで訪れたという。
ケツホルデス・フェラセン姫
隣国の貴族。通称プリンセス*ケツホルデス。名の通り女性である。
仮面舞踏会でTDNと出会い緊密な仲となる。やがて祖国からその国益のためTDNを利用せよと命を受ける。
しかしカブレラ小隊に本性を暴かれTDNからもゲイ国過激団からも敵視され、やむなく赤さんを拉致して祖国に逃げ帰ろうとしたところを辺境の町ファレンヌで発見され逮捕される。これをファレンヌ事件と呼ぶ。
赤さんを保護下に置いたゲイ国過激団は錦の御旗をかざす皇軍となり、逆にTDNは賊軍へと一夜にして立場が入れ替わり、両者の力関係が決定的に変化した歴史的な事件となる。
チャベス・オバマ大尉
「Ass we can」
井上カブレラと同郷の影の一族。彼はその首領であった。
性格はカブレラとは真逆で気さくで陽気。またナルシストでもあり、金属プレートや水面などに自分の姿が映るとポージングを取って魅入ってしまうこともある。
人の良い兄貴分で部下や弟子の悩みを聞くと、「Ass we can. 明日にはできるようになるさ」と励ますなど非常に慕われており、リーダーとしての主導力がとても高い男であった。
TDNに雇われ親衛隊となり、プリンセス*ケツホルデスの居城を守る部隊長。
一族の未来を憂いており、ケツホルデス城でカブレラと対峙した時にビリー・ヘリントンの哲学や人となりを知り、雇われの身としてカブレラと戦うが一族の未来をカブレラに託す事を決意し、カブレラにヒントを与え逃がす。
ゲイパレスの戦いで一人の武人として井上カブレラ氏に挑み、討たれ戦死する。
後に子孫が海を越えた大陸国で大統領になったとかならなかったとか。
井口ヒロミ氏
チャベス・オバマの部下。影の一族出身。TDN親衛隊の中でも屈指の肉体美と実力を誇り、井上カブレラのケツホルデス城潜入の際は、要注意人物リストの筆頭に挙げられていた。
しかし、ケツホルデス城の戦いの数日前、暴れ馬を押さえ込んだ際、足に怪我を負い、負傷を押して戦うも、実力を発揮できずに終わった。後年、カブレラ氏は「奴の負傷は最初に対峙したときに気が付いていた。世間では井口をだらしないと評する声が大きいが、俺はむしろ歪み無い男だと思う。」と、その高い使命感に賛辞を贈っている。
その後、傷の療養のため帰郷していたためゲイパレスの戦いには参加せず、帝国側に雇われた影の一族では唯一戦死を免れている。その後はスポーツを振興することにより郷里のハッテンに尽力した。帝国軍下の影の一族についての事跡が詳細に残っているのは、彼の述懐によるところが大きい。
薄井リーブス氏
チャベス・オバマの部下。影の一族出身。一族の中でも隠密行動に長け、また拷問の名手として知られた。その拷問術は相手を殺さずに最大限の苦痛を与える方法から、外傷をまったく作らずに致命傷を与える方法にまで通じていたといい、TDN政権下で行われた拷問にも多数関わっていたとされる。
しかしケツホルデス城の戦いでは、カブレラ小隊を密かに脱出させんとするオバマの意図を汲み、外見こそ痛々しいが肉体的ダメージを殆どあたえない方法で彼らを拷問、ケツホルデスの目を欺いた。また、若い平田元帥を襲撃すると見せかけ、戦うことにより己の持てる技を彼に盗ませた。ゲイパレスの戦いチャべス・オバマとともに戦死。
生前薄毛で悩んでいた事から、同じ悩みを抱える人々の手で墓はリーブ明神と呼ばれ、信仰の対象となっている。
和泉ディカプリオ陸軍大将
新日暮里帝国陸軍元帥。
キング石井崩御後いち早くTDNの支持を表明する。軍の後ろ盾を得たTDNはその力を背景に世継ぎ争いの騒乱に終止符を打った。
戦場にはただ一度マァラミーの戦いにおいて出陣し、木吉カズヤ卿に討たれた。>
フェルドム三笠海軍大将
新日暮里帝国海軍元帥。
キング石井崩御後いち早くTDNの支持を表明する。軍の後ろ盾を得たTDNはその力を背景に世継ぎ争いの騒乱に終止符を打った。
巨大な三笠砲を搭載した旗艦三笠に乗船しタクトを揮う。トラファックガアッー!の海戦では勝利したが、後のアルマラの海戦にてトータス藤岡氏の編成したゲイ国過激団海軍に敗れ、旗艦三笠と運命を共にした。
チャック松本氏
新日暮里のダウンタウン出身の乱暴者。傭兵からやがては部隊を任されるまでになる。
マァラミーの戦いで農家の納屋でくりぃむしちゅー池田卿と一騎討ちとなり戦死する。
マーティン・ワナメイカー氏
新日暮里全土に販売網を持つ全国紙「ホル♂モンド」の新聞記者。オーウェン定岡氏の加入後注目度が増したゲイ国過激団に取材したいと申し出、従軍する。しかし、彼はTDNによって送り込まれたスパイであった。
トラファックガアッー!の海戦前夜に定岡氏を暗殺し、さらには過激団の船に細工を仕掛け未明のうちに姿を消した。
マァラミーの戦いでトータス藤岡氏と一騎討ちとなり、戦死。
金閣・スカルチクビ
銀閣・スカルチクビ
スカルチクビ兄弟。バスチンユ監獄の太守。
力の金閣技の銀閣と呼ばれ、一糸まとわぬ二人のコンビプレイは非常に強力である。バスチンユの戦いで二対一で勇者ビオランテと戦い彼を苦しめた。
しかしゆきぽを奪われた怒りに我を失ったビオランテの前に敗れ、壮絶な最期を遂げる。
海老原海老蔵氏
「私は殺されても仕方のない罪を犯した」
新日暮里の警察官。まじめで誠実であり職務に非常に忠実。妻と二人の子がいる。
脱走直後のビリー・ヘリントン氏と鎌田吾作氏を発見するが、彼の人の良さが災いし「米倉でーす」と名を騙ったビリー氏の嘘を嘘と見抜けず取り逃がす。
また野薔薇ひろしの命により逃走中のゆきぽを逮捕し連行する。この功績により一警官からTDN親衛隊へと取り立てられ身分と待遇が引き上げられた。
しかし彼には迷いがあった。
家族を幸せにするための労働とその対価を求める立場であるが、そのために他者を不幸にして良いものか。
バスティンユ監獄に配属されゆきぽへの拷問を担当する一人となるが、彼はフリだけで一切手を出すことは無かった。
やがて彼はゆきぽに命が宿っていたことに気付き、せめて出産まではと直接の上司であるスカルチクビ兄弟に掛け合い三カ月の間ゆきぽへの拷問を止めさせ、無事出産まで見届けた。
その後、彼は己の危険も顧みずその子をゆきぽを連行した集落に送り届けた。
後にバスティンユ陥落時に捕縛され、怒り狂ったビオランテに惨殺される。
「私は殺されても仕方のない罪を犯した」
一切の抵抗を放棄し、彼はビオランテの手にかかって最期を迎えたのだった。
須藤さん氏
「毎日が辛い!」
井上カブレラと同郷の影の一族。072代目「ホル♂セルク」、また「妖精狩り」としても有名。
下の名前は資料によって「プー」、「家康」などかなりの違いがあり、また後述するビリー・ヘリントンとのレスリングの際、ビリーが「須藤さん」と称したこと、革命の彼の歪みねえ生き様を称えるため等の理由から現在では「さん」を付けるのが一般的である。
なお彼は帝国側の影の一族出身者であるが、他の影の一族の仲間と共に過ごした期間が短く資料もあまり無いため、影の一族と数えられない資料も多い。
彼の苦難は彼がまだ笑顔が眩しい赤さんであった頃、彼の父親が仲間と共に影の一族からの逃亡を図ったものの失敗し、処刑された日から始まる。
前述の通り新日暮里帝国では810年以上続く身分制度により庶民が勝手に土地を離れることを許しておらず、またその制度が長く続いた結果、当時の庶民に「弱い子(脱走者とその家族)は・・・抹殺!」というだらしねぇ考えが広く根付いてしまった。その考えは当時赤さんだった須藤さんにすら適用され、母や他の兄弟諸共殺されそうになるが、当時の影の一族が信仰していた神、ほむら神を祀る氏族長の提案により影の一族に伝わる戦闘狂の兵士「ホル♂セルク」として育てられることになり一命を取り留めた。
「ホル♂セルク」とは、「陽動目的などで戦場で多数の兵士を相手に互角以上に戦い、他の仲間の任務遂行の援護を行う」特殊戦士のことである。任務が任務なため極めて高い戦闘能力と相手の技を瞬時に習得するラーニング能力が必要とされ、基本一世代に一人しか育成できなかったと言われている。そのため戦闘訓練は正に過酷であった。さらに精神面の強化のために毎日のように罵倒され、食事も「ねるねる」と呼ばれる必要な栄養素しか配合されてないまずい食べ物しか与えられず、例え近所の住民から暴行を受けても何一つ抵抗を許されなかったという。
しかし彼は「毎日が辛い!」とほむら神に救いを求めながらも、処刑された家族の名誉回復のため生きて戦い続けなければならないと教えられたため訓練を耐え抜き、見事072代目「ホル♂セルク」の称号を得てチャベス・オバマや井口ヒロミ氏と共にTDN親衛隊に所属する。
しかし、親衛隊所属後もチャベス・オバマ以外から日陰者扱いされ、さらには同じ部隊に属する小兄貴達からも、事前の通告無しに2対1のレスリングを強いられ、負けたらリンチを受けるという陰湿ないじめを受けていた。そのため彼は戦場での成果に救いを求めるようになる。これが後に「妖精狩り」と呼ばれるほどの残酷性を生じたとされている。
初陣となった性癖の戦いでは味方が混乱する中ただ一人奮戦し、ビリー・ヘリントン氏すら追い詰められた程の実力からゲイ国過激団に「妖精狩り」と呼ばれ、その名は特徴的な笑い声と共に後世にまで畏怖されるようになった。しかし戦いの中、ビオランテの挑発に乗ってしまいビリー・ヘリントンや当時指揮官だった吾作を無視してビオランテと戦ってしまう。圧倒的な実力差からビオランテを追い詰めるもののビオランテの粘り強さが功を奏し、ゲイ国過激団艦隊の勝利が確実となるまでの時間を稼がれてしまう。そのため退路が塞がれる前に撤退せざるを得なくなった。この時の戦いで彼はいかりやビオランテへの復讐心と、愛する者のために戦うビオランテとは対照にただ覚えてすらいない死人のために戦う自分への生き方に疑問を抱いたという。
性癖の戦い後はチャベス・オバマの下を離れ、ボー・ヘリントンが指揮する傭兵隊に入り様々な戦闘に従軍する。そして多くの戦果を挙げたことで家族の名誉回復に成功するが、ビオランテへの復讐心と「ホル♂セルク」としての生き方、つまり戦場でしか己の存在を見いだせないという不安から従軍し続けた。そんな中、彼の下にニュースが飛び込んできた。バスティンユ監獄陥落とそれに伴う虐殺、そして虐殺の首謀者であるいかりやビオランテのゲイ国過激団からの脱退である。彼にとっては前2つはどうでも良かったのかもしれない。ただ、彼はこのニュースを聞くとこう叫んだという。
「生きるよ君に!」
ビオランテと相まみえる機会を失ったがためか、それ以降の須藤さんの残酷性はますます酷くなり、数々の血生臭い戦場を目の当たりにしてきた平家♂ボーイ(TDNに戦況を報告するため派遣されていた)すらドン引きする程だったという。そしてトラファックガアッー!の戦いで遂にビリー・ヘリントンに手傷を負わせる大戦果を挙げた。しかしこの時彼は戦いの中でビリー・ヘリントンから妖精哲学を学び、以前から抱いていた自身の生き方への疑問をますます強める。
トラファックガアッー!の戦い以降も須藤さんは悩みから逃れるため戦い続けた。しかし一旦は優勢になった戦局は、すぐにゲイ国過激団側に大きく傾き、帝国軍の陣地からは脱走兵が絶えなくなる。影の一族出身でしかも脱走者の子供でもある須藤さんは脱走兵を処刑する汚れ仕事を任されるようになる。処刑の中で脱走兵達が死の間際、口々に自分の母、妻、恋人、子供などの生者の名を叫ぶ光景は、ますます生き方に悩む須藤さんを苦しめた。
悩む苦しみから胃に穴が開き、「諦めずに生きろ!」と自分で自分を励ますようになった頃、またしても彼の下にニュースが飛び込む。カズヤの檄とピュー♂リタン革命の勃発、そして数日後にはビオランテが戦場に舞い戻った事である。これらニュースから須藤さんは再び「ホル♂セルク」として、そして自身の死者のための正義を賭けて戦う事を決意する。
そしてマァラミーの戦いで「妖精狩り」の渾名すら生温い程の戦いぶりを見せた。その戦いぶりは言葉では表現できないと言わしめる程であったが、須藤さん本人にはどうでも良い事だった。ただ、ビオランテを倒し、生者よりも死者のために戦う自身の正義を証明したかっただけであった。そのため帝国軍は須藤さんという最強の戦士を持っていながら命令を無視する須藤さんを使うことが出来ず、寧ろ須藤さんの身勝手な行動のせいで指揮が麻痺するという事態に陥ってしまった。
そして帝国軍が壊滅する中、遂に彼はビオランテとの一騎打ちに挑む。戦いは終始ビオランテの技をラーニングした須藤さんが圧倒し、遂に剣先がビオランテの急所♂を突こうとしたその時、駆けつけてきたビリー・ヘリントンが乱入する。だが須藤さんは二度もビリーと戦っていたおかげでビリーの技を完全にラーニングしており、どんどんビリーを追い詰める。そして須藤さんが剣と盾さえ捨てビリー・ヘリントンを両手で抱き上げた時、誰もが予想し得ない事が起こる。
なんとビリー・ヘリントンは持っていた剣と盾を捨て、腕を広げたのである。後の世に「性♂使の飛✞翔」と呼ばれる出来事である。
予想外の出来事に困惑する須藤さんにビリー・ヘリントンはこう言ったという。
「歪み不明?構わん、構わん!!諦めんでええんや」
つまり「悩むな、ただ自分の正義を大切なものに捧げて貫き通せ」と言ったのである。当時須藤さんは「妖精狩り」として有名すぎたが故、彼が生き方に悩んでいるという噂は両陣営に広く伝わっていたのである。この言葉を聞いた須藤さんは涙しながら「ほむらあああああああ」と叫んでほむら神に祈りを捧げ、ビリー・ヘリントンとレスリングを挑む。
このレスリングは歴史に残る名試合だったが、最初こそはTDN激しいレスリングであったとされる。しかし、ビリーの叫んだ言葉が未だ悩みを持つ須藤さんを奮い立たせた。
「ちゃんとやれ!須藤さん!」
この言葉によって悩みが吹っ切れた須藤さんは「ホル♂セルク」でもなく、「妖精狩り」でもなく、ただ一人の漢として、ビリー氏にレスリングを繰り広げた。それからの戦いは「神♂と神♂」同士の戦いであったと記録されている。そして激戦の末、なんと須藤さんが勝利した。これは確認される限りではビリー氏が負けた唯一のレスリングである。ゲイ国過激団の誰しもがビリーの死を覚悟した時、須藤さんはビリーに手を差し伸べ、笑顔でこう呟いたという。
「諦めずに生きる・・・」
革命後はスポーツ選手として活躍し自身のスポーツ選手としての名誉と誇りを、死んだ家族と信者数が激減していたほむら神に捧げた。スポーツ選手を引退後、自身の主食であり好物とすら化していた「ねるねる」をお菓子として商品化し、死んだビオランテとゆきぽ69世のためにゆきぽ神の再興にも協力したとされる。
小兄貴
須藤さんと同じ部隊に所属していた兵士。影の一族出身であると考えられる。
名前に偶然ビリー・ヘリントン氏の愛称である兄貴が入っていること、顔が少しだけビリー氏に似ているためたまに勘違いされるが、ビリー氏とは血縁的な関係はない。
まだ配属したての頃の須藤さんを同僚の坂本クライシスと共にいじめていた。しかし実力は高いスタミナ以外はせいぜい訓練された兵士に毛の生えた程度であり、須藤さんと真正面からレスリングしたら殆どの場合負けたという記録が残っている。須藤さんが影の一族の部隊から離れた後も戦場を生き延びたらしいが、革命後の消息は不明。
最近になって、実は同名の人物が同じ部隊に配属されていた事が判明。これにより以前から議論の的になっていた須藤さんとの勝敗数の矛盾が解決されるのではないかと期待されている。
ゲイ・マカーイ氏
「Thank You Sir!!」「Ah~、FUCK♂!!」
平和な時代は球を蹴り上げるスポーツの一流選手であった。
TDNに囚われ人体実験の検体にされ、吾作氏と共にダーク潮干狩りを受ける。
彼は世界中の期待を背負うボーラーだった。マラックス♂の10番として、庶民も貴族も分け隔てなく、ただの子供の様に目を輝かせては、彼の放つボールと、応援してくれるファンを全て差別なく愛するという意味で始めたゴール後の「Thank You Sir!」という美しい雄叫びに酔いしれていた。そう、あの日までは・・・。
賢帝キング石井の崩御後間もなく訪れた、だらしない跡目争いはスポーツの場さえも戦場に塗り替えた。
その日彼は当時の最高の名誉とされる、インター男根チネンタルカップ、通称ωカップ(ふぐりかっぷ)出場のため、新日暮里帝国国立競技場のピッチに立っていた。カップ奪取へ3度目の挑戦・・他の選手の誰よりも気合いを入れ、早くから一人ランニングに勤しんでいた。 そ し て 、
突如轟音と共に、スタジアムは業火と無惨な穴の繁る、地獄の門前にその身を変えた。キング石井の第二子派は強硬派として恐れられており、一向に自分に傾かない政情に業を煮やし、ついには陸軍を発動して首都制圧に乗り出した。首都議事堂付近のランドマークは全て攻撃対象であり、ωカップ開催まっただ中の競技場も例外ではなかった。マカーイ氏はそんなくだらない事情の為に、両足の自由を、選手としての威厳を、何よりもスポーツは世界中のどんな権力にも屈しないという、静かな、そして歪みないプライドをも奪われた。
奇跡的に一命は取り留めた。しかしながらもう、往年のプレー♂はままならない。壮絶なリハビリの日々。当時は最先端とされた、足部への刺激治療に悶絶し、刺激に対するショック状態で全裸し、日々嗤い絶叫する日々。主治医やリハビリ技師達でさえ、直視する事をためらった。それでもマカーイ氏は、あの日マラックス♂で一命を取り留めた唯一の戦士として、仲間達の無念を払うべく復帰を諦める訳にはいかなかった。そしてスポーツマンは戦争にも政治にも屈しない、ただファンの為にある。という信念だけが、彼を突き動かした。
やがてその壮絶な、かつ崇高なマカーイ氏の生き様は、新日暮里の各メディアでも大きく取り上げられ、間もなく新日暮里を掌握した宰相TDNコスギの耳にも届く事になる。
(国民はこの男の生き方や背景に、深く同情すると共に、内紛を起こした者達への怒りをいたずらに増幅さ せ、ひいては圧政を敷く俺への反感も強く呼び起こすのだろう)
宰相TDNの、自己への危険を察知する能力はずば抜けていた。恐怖感と徹底的な暴挙。この超越した精神と実行力故に、彼はここまでのし上がった。まだ世の中では悲劇のヒーロー扱いであったマカーイ氏は、いちはやくTDNの恐怖の思想により、粛正の対象となってしまった。 また、あの日マカーイ氏の選手生命を奪った、通称「国立の悲劇」発端には、後世の歴史家により、あのTDNが一枚噛んでいたという、衝撃的な事実が発見された。まだ確定された事実ではないが、余りにも悲しく怒りが体を包むエピソードである。
リハビリに耐えに耐えるある日、新日暮里先端スポーツ医学センターを名乗る者がマカーイ氏の元を訪れる。「TDN宰相の計らいにより、これから国民への豊かな娯楽としてスポーツを大いにハッテンさせたい。ひいてはあなたを最先端医療で復帰させ、また国民にたくさんの夢を見せて欲しい。 私 た ち の 元 へ い ら っ し ゃ い ま せ ん か 」
既に宰相TDNの圧政は、時事に疎くなっていたマカーイ氏も知るところにお呼ぶ程であった。政治の人形にスポーツマンが使用される訳にはいかない・・。そんな思いと同時に、選手として一日でも早く復帰したい、そしてTDNの計算が外れる位、ただ民衆へスポーツの素晴らしさを伝えたい。己を信じ、人を愛し、競技への希望が押さえられなかった彼はついに決断した。
そして彼は、宰相TDNの送り込んだ秘密警察の甘言を信じ、付いて行く事となる。重要政治犯のファイナル・ディスティネーション(最終目的地)、新日暮里中央強制収容所、キリング・フィールド、ダーク♂築地市場と数々の悪名を今もなお轟かせる、人間の創りだした最悪の地獄へ。
収容所内での見せしめの為に残された、ダーク潮干狩りを受ける映像、画像の記録が、今もなお新日暮里のジェノサイド♂記念館に残る。地獄の沙汰に正気を奪われ、快感すら浮かべる彼の映像に、来館者は涙を隠す事なく彼を悼む。そしてマカーイ氏が今もなお、伝説のスポーツヒーロー、悲劇と希望の英雄として後世に語られるのは、皮肉にもその見せしめ映像に込められた一言であった。
「AHhhhー、FUCK!」
世界史上最も卑劣な拷問の中、正気の歪む精神の中、なおも圧政に、暴力に、己を襲う理不尽な暴威に、なおも立ち向かっていた彼の意地の一言が、見せしめ映像に込められた彼のこの世での最後のメッセージだった。
この見せしめ映像が、皮肉にもどれだけ収容所内の人々を勇気づけた事だろう。ダーク築地市場から奇跡的に生き残った人々は口を揃える。「マカーイは選手生命を奪われてもなお、世界一のストライカーだった」と。
新日暮里ジェノサイド記念館横に、マカーイ氏の終焉の記念碑が立つ。ワールドカップ代表や、新日暮里共和国オリンピック代表は、大会出発前に必ずここに哀悼の意を捧げた後、開催地に旅立つのが慣例となっている。また世界中のプロリーグにおいては、彼の命日に必ず喪章を付けて試合に臨む。
歪みない世界を望みながら、理不尽でだらしない世界に奪われたある英雄の命に、心を馳せて欲しい。
プチ・プーチン氏
警察官であり、オーウェン定岡氏の親友であった。
ある事件の捜査中に凶弾に倒れ殉職。
テリーマン氏
新日暮里消防庁所属の下級貴族。桜色の綺麗な乳頭を持っていたことから「桜の騎士」という異名を持つ。
貴族であり屈強な肉体を持ちながらも反乱軍との戦いには消極的であり、そのために宰相に拷問と人体実験を受けたこともあるという。
最期はゲイパレスのロッカールームにて公開処刑される。
なお、彼との直接の関係は不明だが、トータス藤岡氏の著に興味深い記載があるので併記する。
TDNによる圧政の中、暴虐の限りを尽くす役人や軍に、特にゲイ都・ゲイパレスの民衆は絶えず怯えながら暮らしていた。
そんな絶望的な状況のなかでも、民衆は最後まで希望を失わなかった。ゲイ国過激団がゲイ都に到達するその日まで。
・・・役人や兵隊が民衆を苦しめるとき、彼らはどこからともなく現れる。
それは、目元を仮面で隠し、鮮やかな原色に包まれた戦士たち。民衆を庇い、暴虐を尽くす者たちを次々と倒し、またどこかへと去っていく。
人々は彼を、畏敬と感謝の念を込めて、「絶倫団」と呼んだ。そしてその筆頭に立って彼らを率いる鮮やかな金色の戦士を、「最後の戦士」―オメガ(ω)と呼び親しんだ。
しかし、やがて彼らもまた追い詰められていく。あるとき仲間を逃すために、最後の戦士だけが囮となり、ついに捕まってしまう。
公開処刑のその日、兵士たちの下卑た笑いだけが響くロッカールームには、宰相TDNの姿もあった。
ゲイ都で堂々と反旗を翻していた賊軍の処刑。宰相自らが手にかけようとする。
「ビッチどもよく見よ。これが余を脅かす賊軍の最期である。」
冷酷な言葉の後、目元を隠す仮面に手をかける。そのとき、最後の戦士の口元は、僅かに歪んだ。
憤った宰相は、仮面を乱暴に剥ぎ取る。・・・直後、全ての人が言葉を失った。
誰かが、静かに口を開ける。
「桜の騎士、お前もか・・・」
ゲイ都陥落まで、半年ほどの頃のことである。
~以上 トータス藤岡著 マルチ☆ゲイ☆パンツ 第45章 45節 「最後の戦士」 より引用~
エドモンド西郷氏
新日暮里南西端の田舎町出身のゲイ国過激団の新兵。
寝坊癖があり、指導に当たったビリー氏から「パチュリー・ウッ!」と厳しく指導される。
リッカー山野軍医大尉
くりぃむしちゅー池田卿の部下。池田と共にゲイ国過激団に参加する。医者であり、過激団では軍医を務める。
彼の手厚い治療はいかなる傷をも癒し、過激団の士気は大いに高まった。
ビエリ関根氏
ビリー氏、吾作氏と同じ牢に捕らわれていた囚人。
3人で脱走を企てるが危うく失敗しそうになるところを彼が己を犠牲にし、二人を逃がした。
TDNのダーク潮干狩りの最初の犠牲者となるが、彼への実験は失敗し不完全に終わった。
乳首コリーナ先生
「歪みなき生命・・・」
キング石井・宰相TDN・ビリー大統領と3世代に渡り新日暮里の最高裁判長を務めた。法に極めて厳格であり、彼が間違った判決を出した時は法が間違っているのだと言われた。
TDN時代には悪法に則った判決を出していたため処罰すべきだという意見が多数あったが、「彼は司法の独立を全うしたにすぎない。三信分立は国家の根幹である」というビリー大統領の判断によりそのまま最高裁判長の地位に据え置かれた。
後世にはTDNにギロチンチンの判決を下した判事として有名。
同じく彼の興味深いエピソードとして、「歪みなき生命」の提唱があげられる。歪みなき生命といえばビリー氏が一生を懸けて求め続けたものとして有名であるが、残された資料によるとどうやら別の意として偶然用いられたようだ――それは、実に皮肉な形として。
かのTDNの演説後、複数の有力議員達は彼の国外追放を訴え議会裁判を招集する。議会裁判とは法の判断によって帝国の利益に反する行為を裁くものであり、その権限は過去に権力闘争の延長として使われたすえ宰相が処刑されるほど強かった。勿論裁判長としてコリーナ氏が推され、その恐れを知らぬ厳格さに来るべき圧政の恐怖は塵となり消える……そう予想されていた。
しかし、宰相TDN。彼はまたもや恐ろしい魔力を揮う。
議会裁判が開かれた議会前広場、押し重なり集まった国民達の注意はたった一人に向けられる。彼は毅然としていた。被告人としてながら全くの気後れ、物怖じ無しに皆の前に姿を見せるとさっそく言葉を口にする。「SMALL ASS!!」耳にした全員が息をのみ、その微かな音が波となって都市を身震いさせる。彼は続ける、"……他国の横暴、役人による汚職、太りきった衛兵、堕落した人民、これらは明確なる国家への反逆であり、全悪を逆さ釣りのうえ日干しにしようが何の気兼ねがあろうか!!……"叫び、目の前のコリーナ氏を睨み付けた。"現代にまでそれらを野放しにしてきた皇帝、貴族、司法を私が名づけ呼ぼう……へたくそビッチめ!!"
強烈な罵りと同じくして、広場に幾つもの萎んだビニール袋が吊るされ掲げられる。袋の中、人が封じられていた。まだ微かに息が残る者もおり、小さく声が漏れる。TDNはサディスティックな笑みを顔全面に浮かべた。
広場は騒然とし、誰もが処刑のおぞましさに打ち震えてドン引きした。処刑人さえもだ。だが、ただ一人コリーナ氏だけはTDNのダークな魅力に瞬時にとり憑かれほぼイキかけてさえいた。裁判長は一声「歪みなき生命」と唱えていた。それはTDNに対する賛美の言葉であり、判決であった。
「彼こそが歪みなき生命。全ての生命の正しき道を示す者であり、国家、人民、法の全ては彼の行いにこそ真の正義を見出さなければならない」
後にコリーナ氏は自伝でこの時ことを振り返り"見えない手で両乳首を攻められているような、そんな熱さに私はとり憑かれていた"と語っている。実際TDNによる何らかの策であるとも言われているが、真偽の程は判らない。
確かな事は、この判決がTDN独裁に大義名分を与えたという事。
時代はそれより、かの暗黒時代へと急速な変化を見せることとなる。
キング石井帝
マラボン朝141(イシイ)代皇帝。賢帝と呼ばれ、国内に広く善政を布いていた。
しかし後継ぎが決まらぬ間に若くして急死する。
赤さん
マラボン朝のラストエンペラー。傀儡の王ながらTDNの圧政に心を痛めている歪みねぇ赤さん。
ナニ物をも包み込むその笑顔は赤SUNとも太陽王とも言われた。ゲイ国過激団へはその急所の鉄壁ガードという形で影ながらも非常に重要な面で協力している。
デビルレイクバーマ
おぞましい異形の姿をした半漁人。両腕が蟹の爪の形をしたタイプと、4つ足で脚力に優れる股間が光るタイプの2匹いる。帝国軍内では蟹タイプは「タイラー」四足タイプは「ゲンジー」と呼ばれている。
タイラーは平家シュトローム。ゲンジーは源氏フラッシュという強力無比な必殺技を有している。
ケツホルデス城にてカブレラ小隊が初めて遭遇する。この時チャベス・オバマの部下だった城之内氏は彼の村に伝わる伝説の悪魔「雄夜尻様」だと驚き失神した。
蟹タイプは木吉カズヤ卿に、四足タイプはビリー・ヘリントン氏によって倒される。
今際の際の彼らの表情は穏やかであったと伝えられている。
ヴァン・ダークホーム少年
謎の少年。
東洋系の顔立ちをしており異国から来たであろうと憶測されるが一切は不明。ある日突然キング石井の後宮に迎えられ寵愛され、毎夜夜伽の相手を務めた。
無口で多くを語らず後宮から出ることも決して無かったため、貴族でも彼を知らないものがほとんどであった。
キング石井崩御後の消息は不明。一説にはキングの墓前で彼に殉じたと言われている。
宰相TDNコスギ
暴君TDNとして有名。先代キング石井の代から虎視眈々と権力の座を狙い、ついにその座を手に入れた男。
宰相就任演説における、「FUCK YOU」からはじまる、「チンはコックなり」という一連の流れは、お祝いムードに沸くゲイパレスの住民を恐怖の底に叩き落した。
彼は、資本主義・共産主義を排除するのみならず、一切の自由恋愛、異性恋愛、同性恋愛すらも排撃し、内にあっては極端な国粋主義による暴力的独裁、外にあっては公然たる侵略主義をとる体制をとった。
逆らったものは魔宮と化したゲイパレスに連れ込み、拘束具に繋げ様々な生体実験の道具とした。後の研究家らによって、これらの行いを称して”ファ”シズムと名づけられた。彼の権力への執念はすさまじいものがあり、賢帝キング石井・勇者ビオランテをもってしても彼の本性を見抜くことが出来なかった。
キング石井亡き後の騒乱も実は彼のものであったらしいことが、トータス藤岡氏らの著書によって明らかとなっている。あくまで伝聞であるのは明確な証拠が残っていないからであり、ここでもTDNの狡猾さがみてとれる。彼の振る舞いは明らかに常軌を逸しており、そこかしこからあふれんばかりの人間への憎悪が垣間見れる。
なぜ彼はそこまで人を憎んだのだろうか。初対面の人間に「FUCK YOU」と言い放つ彼の心はどのような闇が渦巻いていたのか、今となってはうかがい知ることは難しい。
革命実行後、宰相はバスティンユに幽閉された。
判決の3ヵ月後の1793年1月21日、ギロチンチンの刑により処刑される。
彼が処刑台に現れたとき、それまで呪いの言葉を口にしていた多くの民衆がいっせいに口をつぐんだ。
幽閉されていた間わずかな水・食物しかあたえられなかったにも関わらず、彼の眼光は衰えず、その威風堂々とした見るもの全てを圧倒するオーラは健在であり、私達もみなその見事な姿に驚きを禁じえなかった。
処刑直前、ビリー氏による問いかけが合った。
「TDNよ。お前はなぜあのような振る舞いをしたのだ。なにか特別な理由が、悲しき過去があったのだろう?
お前にも人を愛することがあったはずだ。愛する人がいたはずだ。それなのになぜ混沌を好むようになったのだ?」
それを聞いたTDNは不敵に笑い、ただ一言こういった。
「別に好きじゃねえよFUCK♂YOU」
それが、この国を恐怖の底に突き落とした男の最後の言葉となった。
~以上 トータス藤岡著 マルチ☆ゲイ☆パンツ 第69章 14節 「TDN最後の日」 より引用~
近年では、宰相TDNの今際の言葉についていくつかの解釈がなされているが、彼の言葉について明確な答えは出されていない。(人間など好きではない、という解釈と、混沌を好きではないという解釈、さらにその他である)それほどまでに、TDNという人物には謎が多く、いまだ多くの人々の研究の対象となっている。
また、妖精哲学・許容の心を通して、彼の知られざる心の叫びを聞こうとする試みがいくつかの研究所で行われている。
※1:今回の記事では、井上カブレラ潜入編における半魚人=ダークサイドに落ちた吾作=デビルレイクバーマ説を採用しております。これはまだ検討段階ではありますが今回はこの説を使わせていただきました。ご了承ください。
年表
年 | 月日 | 出来事 |
---|---|---|
・ ・ ・ |
・ ・ ・ |
・ ・ ・ |
不明 | 賢帝キング石井崩御 | |
1787年 | 10月24日 | 新宰相TDNの就任演説 |
1788年 | 初頭 | 反逆罪で牢獄に囚われていたビリー・ヘリントン氏が鎌田吾作氏と脱獄 |
ヒップブリッヂにてビリー・ヘリントン氏と木吉カズヤ卿が出会う | ||
打倒TDNを誓いゲイ国過激団が結成される いかりやビオランテ卿がゲイ国過激団に参加 |
||
性癖の戦い 鎌田吾作氏が指揮するゲイ国過激団水軍が帝国軍を大破 過激団が一躍有名になる | ||
宰相TDNが男・女・ゲイからなる全国三部会を招集 | ||
オーウェン定岡氏がゲイ国過激団に参加 | ||
1789年 | 7月14日 | バスティンユの戦い バスティンユ監獄陥落 スカルチクビ兄弟戦死 ゆきぽ逝去 いかりやビオランテ離脱 |
10月5日 | バイサイユ行進 帝国軍の無慈悲な攻撃により市民に多くの犠牲者が出る | |
城之内悠二氏がゲイ国過激団を裏切り帝国軍へ | ||
1790年 | オーウェン定岡氏が毒入りシャワーにより暗殺される | |
トラファックガアッー!の戦い ゲイ国過激団が帝国軍に惨敗 鎌田吾作が帝国軍の捕虜に 木吉カズヤ離脱 |
||
トータス藤岡氏とくりぃむしちゅー池田卿両名がゲイ国過激団に参加 | ||
1791年 | カブレラ小隊がデビルレイク城に潜入 謎の半漁人軍団に襲撃される | |
6月20日 | ファレンヌ事件 プリンセス*ケツホルデス失脚 赤さんがゲイ国過激団の保護下に この日をもってゲイ国過激団は革命軍となる |
|
城之内悠二氏歪兵隊を結成 | ||
1792年 | 8月10日 | 8月10日事件 帝国軍がなんばパークス国をはじめ傘下にある周囲の衛星国から軍の派遣を試みる |
同日 | ピュー♂リタン革命 カズヤの檄により民衆が一斉蜂起 衛星国及び地方都市が帝国の支配下を離れる 帝国が一気に弱体化 |
|
9月 | アルマラの戦い 帝国海軍崩壊 フェルドム三笠海軍大将戦死 | |
9月20日 | マァラミーの戦い 帝国軍が最後の抵抗を見せるも歪兵隊が帝国軍に宣戦布告 革命軍・歪兵隊連合軍が勝利する 帝国軍が壊滅的な打撃を被る 和泉ディカプリオ陸軍大将はじめ多数の帝国軍将校が戦死 |
|
9月21日 | ゲイパレス陥落 いかりやビオランテ卿戦死 宰相TDN逮捕される | |
10月24日 | TDN裁判結審 ギロチンチンの刑が言い渡される | |
1793年 | 1月21日 | TDNギロチンチンの刑により処刑される |
7月14日 | 人類史上初の普通選挙が実施される ビリー・ヘリントン氏が新日暮里共和国初代大統領に選ばれる | |
1797年 | 7月14日 | 第二回大統領選挙が行われる 現職のビリー・ヘリントン氏が100%の得票で当選 |
1801年 | 7月14日 | ビリー・ヘリントン氏の人間宣言 |
その後のビリー・ヘリントン氏
ビリー氏は革命後、新日暮里共和国初代大統領に任命された。
TDNの圧制によって疲弊し、国力は著しく低下していたが、彼の行った数々の政策によって新日暮里共和国は超スピードで復興しかつて以上の繁栄を誇ることとなった。
皮肉にもTDNの存在によって新日暮里のハッテン・近代化が促されたという事実は、歴史学的にみても注目すべき点である。
この奇跡のような復活をたった8年で成し遂げた(新日暮里大統領の任期は4年で、ビリー氏は連続2期で就任した)ことは、彼の類まれなる政治力、そして新日暮里国民の歪みねぇ精神力を物語っている。
彼の任期8年目の最後の日、この日は7月14日であり、ゲイパレスでは華やかな誕生記念&3選記念セレモニーが行われていた。
全ての国民が貧富の差無くゲイパレスの宮殿に招かれ、喜びに満ちた宴が催された。
隣国なんばパークスからもカズヤ卿が招かれ、国民に伝説のカズヤダンスを披露していた。
宴も終焉に近づいたころ、ビリー氏による最後の演説が行われた。これこそが、後の世まで語られる「人間宣言」である。
彼は宣言の後、呆然とする国民を前に言葉を続けた。
「もう終わりだあ!」
そして突如壇上を駆け下り、ゲイパレスを飛び出した。
カズヤ卿もそれに続き、用意されていた馬に跨り新日暮里を後にした。
そして彼は新興国家であるなんばパークス国に入り、2度と新日暮里に立ち入ることは無かったという。伝えるところによれば、なんばパークス国にてGAY♂BAR「オナハウス」の経営に携わったとも、革命を戦い抜いた高い戦闘能力を買われ、なんばパークス国軍に入隊したとも言われているが、第二次世界大戦の戦災により殆どの資料が失われてしまった為、本当のところは不明である。
国民は彼の行動に驚き悲しみにくれたが、誰も彼を責めたりはしなかった。「人間宣言」に彼の思いの全てが込められていたからだった。
TDNを倒した日から、人々のビリー氏に対する感謝や尊敬のまなざしは日増しに高まっていった。4年もたつと、もはや同じ人間に向けられるものではなく人智を超越した存在、すなわち神に向けられるそれと同じものであった。
この事実はビリー氏を悩ませた。TDNの悲劇の原因の一端がこの国の政治機構そのものにあることは事実であり、一刻も早く完全な民主主義を取り入れる必要があった。そしてその最大の障害は己自身であることに気づいたのだった。また多くの人間が自分を神格化していることに孤独を感じていた。
妖精哲学でさえも救いにはならず、日増しに彼の心は暗く沈んでいった。
そんなビリー氏の様子をトータス氏から聞いたカズヤ卿は友の様子に心を痛め、ある決意を秘め新日暮里にやって来た。
カズヤ卿は、十数年前に二人が初めて出会った場所、「ヒップブリッヂ」にビリー氏を呼び出し、彼に「パンツレスリング」の死合いを挑んだ。
はじめその気の無かったビリー氏はカズヤ卿に一方的に攻められるが、カズヤ卿の発した一言がビリー氏を覚醒させた。
「最近だらしねぇな?」
これは初めて出会ったとき、ビリー氏がカズヤ卿に発した言葉であった。
それからの二人の戦いは、まさに神々の戦いと呼べるものだった。
スーパーカズヤ卿となったカズヤ卿と、妖精哲学を究めたビリー氏の戦い。空間さえ歪ませるほどの彼らの戦いは、後に「ヒップブリッヂの死闘」と呼ばれた。
二人の間に、もはや言葉は要らなかった。
何かを伝えるのに、言葉はいつも心に足りない。
戦いの中でビリー氏は、カズヤ卿の思いが、言葉ではなく心で理解できたのだった。
彼は一人ではないことを。そして紛れも無くちっぽけな、ただ一人の人間であることを。
なんばバークス国の要請によりカズヤ卿とトータス氏が編纂した『なんばパークス国復興史』によれば、その後、ビリー氏はなんばパークス国でカズヤ卿の補佐をしながら復興を助け、さらに一介のレスラーとして各国を放浪しながら各地でパンツレスリングを行い、生涯を通して妖精哲学の普及に努めたという。
但し、『復興史』の該当箇所には明らかな誤記が含まれていることがわかっており、何らかの理由によって両氏がビリー氏の消息を捏造したのではないかという疑惑が指摘されている。尤も、『復興史』以外の有力な資料は現存しておらず、ビリー氏が人間宣言以後どのように生き、どのような最期を遂げたのかは誰も知らない。
彼は一生を懸けて求め続けたのだ、「歪みなき生命」を。
いや、ビリー氏自身の生き様こそが、「歪みなき生命」であるといえるのかもしれない。
歌詞
vima la vidan は抽象的な歌詞が用いられており、非常に多岐に渡る解釈が可能であると言われている。
そして近年の妖精哲学の研究家らによって、いくつかの詩が解明されている。
ここでは2010年1月の時点で解明された10の歌詞を紹介する。
解釈一覧
私が釣りとして扱われていた頃
私の一言で群集が湧いた
今はあの頃の情熱も遠く色褪せ
鉄の馬に跨る日々になった
昔はよくレスリングをしたものだ
いつも遠くから熱い視線を感じていた
群衆が高らかに歌っている
「だらしねぇTDNは去った」
「兄貴に栄光あれ」
あと少しで世界を変えることができたのに
新たな時代の壁が私の前の前に立ちはだかる
そして気付いたのだ我がゲイパレスを支えていたのは
他ならぬ妖精さんたちであったことに
猛々しいドラムの音が大地に轟く
妖精さんたちの雄叫びのなんと勇ましいことよ
地位や権威、保身すら求めず
異国のものたちも我々に敬意を払うだろう
何とも表現しがたいのだが
私達の行動言葉全てが
歪みねぇものであったと感じている
今は遠い過去の話である
兄貴という名誉ある称号と引き換えに
誰も私の名前を呼んでくれない
だがもはや何も言うまい
全ては過ぎ去った過去の話
私の故郷なんばパークスは自然に恵まれ
春には新芽が顔を出し秋には大地が金色に染まる
だがあの日人も大地も焼き尽くされ
そこには一切の救いはなかった
それから私はただ強くなりたいがために
闇雲にパンツを引きずり下ろし回っていた
そんな折あの男が現れ私達は対峙した
「救いはないね」
「あぁん?だらしねえな!」
その男の歪みなき精神を前に
私は為す術も無く敗北した
その時既に確信していたのだこの男が
世界を照らす英雄となることを
戦いのドラムが鳴り響き
戦士達が雄叫びを上げる
私はお前の剣となり盾となり
迫り来る敵を討ち果たそう
お前と出会ったあの日以来
たとえどんな絶望が我々に襲い掛かっても
全ては好機に思えるのだ
私が誇り高き戦士であった頃の話である
私はあの豊かな大地を再生するため
今再び故郷の大地に立っていた
あの男は英雄の地位も名誉も捨て
一介のレスラーとして私を支えてくれている
本当に良いのか尋ねると彼は言った
「仲間と共に在ることこそ私の誉れなのだ」
世界がお前の名を忘れようとも
永遠に心に刻もう歪みなき英雄の名を
vima la vidan Kamata Gosaku version
私は蟹を愛していた
父の教えでもあり 私自身そう思っていた
今はそんな記憶も遠く消え去り
苦痛の日々を送っている
例年違わず大漁であったあの日
忌まわしき彼等が現れたあの日
私は彼等に叫んだ
「私の命も財産も差し上げます」
「家族と蟹だけはご容赦を!」
だが彼等には蟹味噌ほどの慈悲もなく
私の愛するすべてを奪っていった
ゲイパレスに連行された後のことは記憶に無く
気がつけばただの魚となっていた
混沌なる世界が広がる
人々の泣き叫ぶ声が聞こえる
私の理性も愛も奪われ
ただ眼前の敵にとびかかっていった
こんな事をしたかったわけじゃない
なりたかったのはこんな私ではない
だが何も言葉が浮かばない
私が魚だったころの話である
新日暮里に革命の鐘が鳴り響き
英雄の剣が私を貫く
全身を駆け巡る痛みと共に
失っていた何かを取り戻すことが出来た
一歩も引くことのなかった男を見て
自然と言葉が紡ぎ出された
「蟹になりたいな」
私は蟹を愛していた
私が今まで海の底で暮らしていたころ
私の周りは暗く深い闇と孤独が辺りを包むだけだった
いつもただひたすら悲しかった
自分が蟹であることを悔やんでいたころである
しかしある日そんな私にもある希望が芽生えた
蟹である私を愛してくれたある男がいたのだ
永遠に忘れることはないだろう
私の初めての友である彼の名は「吾作」といった・・・
それからだった、私が幸せに満ちた生活を送れたのは
毎日のように共に遊び・・・学び・・・哲学をする
あぁ、これが私の望み続けていた幸せなのか、と思えてならない
しかし・・・運命という物は本当に酷な物である
永遠の友情を誓った「吾作」が戦場に行くことになった
もはや生きては帰ってこれぬという目の前の友
私は彼の無事を心から祈る
そして身代わりになれない蟹である己を恨んだ、でも彼は言ってくれた
「君が蟹だったから、私は君を愛することができたんだ」
私はこの言葉で自分が蟹であることを初めて誇りに思えたのだ・・・
そして、今は生きている「吾作」の暖かい手が私の手から離れた
いつも「吾作」が帰ってくると儚い思いを抱いていた
そして・・・私は耳にする、唯一無二である私の最高の友がもうこの世にはいないことを
でも私は信じられない、信じることなどできやしない
私が信じるのは彼がまたこの地に戻ってくるということだけである
深く考えると心身共に痛むので考えることはしない、祈るだけである
彼が別れ際、私に向かっていったこの言葉を胸に今日も待つ・・・
「蟹に・・・なりたいな・・・」
毎日が温かかった、あの過ぎし日々が懐かしい
vima la vidan Coward Biollante version
彼が世界を変えようとしていたころ
私は彼の野心を恐れ見限った
今私は再び彼の元に舞い戻り
全てに決着をつけようとしている
私が王の間に着いたとき
そこにいたのはかつての友ではなかった
恐怖に支配されるなか私は祈った
「慈愛の神ゆきぽよ」
「私に力をお与えください」
震える体を必死に奮い立たせ
私は暴君に立ち向かった
だが私は知っていた 全てを憎む魔王に
臆病者ごとき勝てるはずはないと
眼前の敵に背を向け逃げ出し
眠りに付くこともままならず
イケメン戦士カズヤからは怒号を浴びせられ
挙句は戦いを恐れ商人となった時期もあった
どうして良いかわからないのだ
私が君の元を去ってから
全てが恐ろしくて仕方なかった
私が臆病者であった頃の話である
戦いは予定調和に収束し
私は魔王にひれ伏した
だが既に恐怖など無く
心地よい何かが私を満たしていた
私を見下ろす暴君の瞳が
紛れも無く友のものであったとき
真の勇気を手に入れた気がした
もう臆病者ではないのだ
私が彼と愛し合っていた頃
世界は幸せに満ちていた
慈愛の神ゆきぽを祀る私は次の12月24日の役目を終えて
普通の女の子に戻り彼と結ばれるはずだった
ひんそーでひんにゅーでちんちくりんな私を
ぎゅ~~~っとしながら
確かめるように何度もくれた言葉
「真っ白な雪のように綺麗だよ、ゆきぽ」
「誰よりも君を愛している」
私のモノクロの世界に色を付け
世界の美しさを教えてくれた人だった
彼が私のすべてだった
冬が待ち遠しくて仕方なかった
しかし暴君TDNがゆきぽ像を破壊し
私たちは手を取り合って遠くの町へ逃げた
貧しいけれど幸せな日々だった
彼がいればそれで良かった
だけどある街で兵士に追われた私は彼と離れ離れになった
不安で不安で仕方なくて穴を掘って隠れていたのだけれど
私はあっけなく捕まってしまい
根性も気合も通用しない恐ろしい牢獄に連れて行かれた
冷たい牢獄の中で手に息を吹きかけると
ぎゅ~~~っとしてくれた彼を思い出し涙がこぼれた
幾度目かの冬が過ぎ私の生命の灯火が尽き果て
長い苦しみがやっと終わろうとしていた時 私の前に奇跡が訪れた
遠くなっていく意識の中で彼が必死に呼びかける
どうか泣かないで愛しいあなた
この雪のような白い心はいつまでもあなたとともに
私は生きた 最期まで あなたと共に
vima la vidan Assassin I.Cabrera version
「影と共に生きる」
これは暗殺者であった父の、そのまた父の言葉であり
私自身もこれを心に
黙々と鍛錬を続けてきた
フェアリークロックはいつでも正確な時を刻み
一族秘伝の剣技で迫る敵を打ち果たしたものだ
ある時は怪物と戦い、またある時は裸で戦った
「かあさん・・・ごめん・・・」
「息子よ・・・先に逝っているぞ・・・」
だが何だ?この空しい感情は
人を傷つけるだけの人生は、私の心を黒く蝕んでいった
血を血で洗う戦いが凄惨を極める
多くの好敵手を斃し、多くの同胞が倒れていった
これが私の生きる道なのか?
横たわる「友」は何も答えない
一つの生命の終幕は
一つの悲劇の幕を開ける
全ての戦いが終わり初めて
悟ったのだ
私は遺伝子に刻まれた殺し合いの螺旋に捕らわれていた
私が修羅であった頃の話である
何があの男をそうさせたのか 真実に触れたかった私は
気がつけば遥か東方の地に流れ着いていた
異国の民である私を彼らは温かく受け入れてくれた
剣をバットに持ち替えた私は
気付いたのだ
こんな私でも人に夢や笑顔を与えられることに
悟ったのだ
私も 影を照らす光になれることを
私が王宮で踊りと水浴びに勤しんでいた頃
全ては幸福に包まれていた
しかし賢帝が崩御した瞬間から
全ての歯車が狂い始めた
王宮には親友と呼べる男達がいた
寡黙な私にも真摯に接してくれていた
何故そんなに楽しく踊れるのかと問われてこう答えた
「・・・理由・・・か?」
「・・・お前達がいるからだ」
そんな幸せな生活であったが
突如運命が我々に牙を剥いた
我々が絶対の忠誠を誓った賢帝が倒れ
暴君による恐怖の圧政が始まったのだ
逃げれば殺されると警告する池田と
どこかに身を隠そうというトータス
シャワーを満足に浴びられない苦悩の中
結局私はトータスと共に逃げ出した
今でもどれが最善の選択だったか分からない
ただ私が保身に走ったという結果だけが残っている
後から後悔してもしきれなかった
私が友と国を失った頃の話である
友と共に革命に参加した私は
常に暗殺の恐怖と隣り合わせであった
魔王の多くを知りすぎた私は
すぐに消されることはわかりきっていた
友の制止を振り切りシャワーを浴びた時
私はこれが最期の時だと悟った
今際の際に見た夢の中の私は
親友達と祖国の地に立っていた
vima la vidan Jonouchi version
私がイケメ~ン?と呼ばれた頃
農民は虐げられ、家畜以下の扱いだった
楽園が地獄に変わった時
弱き民は立ち上がり、一斉に牙をむいた
友たちと幾夜も理想を語り明かし
やがて戦場を駆け巡るようになった私は
幾多もの闇を二つの剣で切り裂いたのだった
「魔王を倒せ!新日暮里に革命を!」
「身分を無くせ!農民に自由を!」
時には無茶な作戦を独断で決行したり
相手を挑発し過ぎて仲間に戒められることもあった
それは私が信じていたからだ
私の中の、細いけど揺るぎない“正義”を
レザーの覇者が市民を虐殺し、私が憤慨のあまり震えた時
別の友は病気の母のために菊花の紋章の銃を手に取った
“誰も間違っていないし、誰もが間違っている”
それに気付いた時、私の中の細い正義は折れた
正義?理想?結局は貴族同士の勢力争いではないのか?
自暴自棄で岩の上で背徳に溺れたり、女とだらしなく過ごした
私を捕らえた魔王は、私に甘い言葉を囁いた
Yes,I was bitch. ― 私が愚か者だった頃の話である
それでも私の二つの剣は正義を忘れることはなかった
「もう、決まっていることなのです...」
帝国軍として戦う度に、悲しそうにつぶやく梨花ちゃんを思い出した
それは違うと君に言いたかったけど、もう遅いかな
ゲイ国過激団壊滅必至の知らせを受けたとき
無我夢中で戦場へと走り、帝国軍の菊花をブスリ♂と刺した
「すみましぇ~ん、ごめんなしゃ~い」
私の刀はもう折れることはない。正義はその言葉に笑顔で頷いたのだから
vima la vidan TYLANT TDN version
私が世界を支配していた頃
私の一言に人々が恐怖した
今はその言葉も空しく響き渡り
最期の時を迎えるのみとなった
私にだって志はあった
世界をまとめ争いを無くしたかった
だが私たちの衝突は避けられなかった
「この国には力が必要なのだ!」
「やっぱり怖えぇ!」
我が唯一の友はゲイパレスを去り
ふたりは道を違えてしまった
残ったのは私の顔さえ見られない家臣ばかり
歪んだ思惑と恐怖だけがこの城を支えていた
力ですべてをまとめあげても
人々の心が一つになることはなかった
富や領地やボンテージを手に入れるほど
真に求めるものは遠ざかっていった
いつの間にか志さえ見失い
全てを呪う事しか頭になかった
大切なものさえ分からなくなった
それが暴君であった頃の愚かな私
新日暮里に革命の鐘が鳴り響く
英雄たちを讃え群衆が歌っている
私はそれを暗い地下室から聞き
後悔と共に安堵すら感じていた
皮肉にも最後に私が呪ったのは
自らが犯した過ちであった
だが最後まで暴君であろうと思う
それが私の役目なのだから
最後に
人間愛・生命讃歌を叫び続けたビリー氏たちと、処刑台の上でさえも人間を呪い続けた暴君TDNコスギ。
どちらも同じ人間がみせる光と影の表情である。
革命を成し遂げたビリー氏だったが、彼の目指した理想の世界は遠く、ともに戦った仲間達も散り散りとなり、世界から争いが消え去ることは無かった。
ビリー氏達の戦いから数百年たつが、我々の世界は何も変わってはいない。
いつか言えるだろうか
戦争も飢餓も疫病も無い世界に、
世界中の子供達が皆笑顔に、
世界中が自由に、平等に、
人々が手を取り合い生きる世界に 、
と。
になるだろうか。
これらを実現することは、ビリー氏から我々へ下された使命であり、彼が果たせなかった悲願でもある。
もし人生に疲れ、誰かを憎み、悲しみで心が満たされそうになったら、この言葉を思い出して欲しい。
そして忘れないで欲しい、あの絶望の時代を力強く生き抜いた男達がいたことを・・・。
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