運命の出会いが導くのは、
恐怖か救いか―
水木しげる生誕100周年記念作品。2023年11月17日公開。PG-12。
概要
本作は2021年3月7日に開催された「生誕99年 水木しげる生誕祭」で発表されたタイトルであり、テレビアニメ版6期の設定を引き継いだ、いわば「6期鬼太郎」の劇場映画である。メインキャストとして関俊彦が鬼太郎の父、そして木内秀信が鬼太郎父のバディ的な存在となるサラリーマン「水木」にキャスティングされた。
2021年11月29日の「ゲゲゲ忌2021」ではメインスタッフが発表されており監督に古賀豪、脚本に吉野弘幸と6期14話に携わった主要スタッフが再集結しており、キャラクターデザインは新たに谷田部透湖が起用させた。なお古賀は5期鬼太郎の劇場版でも監督として携わった経験があり、鬼太郎映画への登板は二度目となる。
「大人向けの怖い鬼太郎」、「まだ誰も観たことのない、怖くて美しい物語」と広告されており、今まで公開されてきた鬼太郎映画とは違う雰囲気をもつ。人が惨殺されるシーンや性的な醜行を示唆する台詞などもあり、PG-12にレイティングされている。
「血液銀行に勤めるサラリーマン水木が主人公」である点などは、貸本漫画時代の「幽霊一家」の回が元になっている[1]。スタッフロール中に漫画風の絵柄で示される後日談シーンは断片的なこともあってどういった流れなのか少しわかりづらいが、この「幽霊一家」を読むと理解しやすい。KADOKAWAから発売されている復刻版文庫がこの「幽霊一家」から始まっており、KADOKAWA公式ウェブサイト上での試し読みでも途中まで読めるためおすすめ。
スタッフロール後に重要なシーンがある(スタッフロール中にもある)タイプの作品である。映画のスタッフロールで観るのを止めるタイプの人は少なからずいるようだが、本作ではスタッフロールが始まっても最後まで観続けることを強くお勧めする。
公開後、観覧した者たちからの高評価が広まってさらに観覧者が集まるという好循環に入ったようで、2023年11月17日の初公開後一週間以上経過してから上映スクリーンや上映回数を増やす映画館が出てきたり、公開から3週連続で観客動員数・興行収入が増加する[2]など、口コミにより観客動員数が高まるタイプの作品となった。最終的な興行収入は27億円(後述の「真生版」含まず)。
第47回日本アカデミー賞において、「優秀アニメーション作品賞」5作品の1つに選出された。
真生版
Blu-rayなどのソフト化にあたってシーンのリテイクやブラッシュアップなどが行われていたが、このバージョンについてイベント上映などをやりたいと古賀監督らが東映に打診したところ東映側から劇場公開が提案され、2024年10月4日から『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎 真生版』として全国の劇場で公開された。
新たなシーンが追加されているわけではないが、327カットがリテイクされたブラッシュアップバージョンとなっている。なお出血表現などの鮮烈さが増しているため、レーティングは元のPG-12からR-15に引き上げられている。
ストーリー
廃墟となっているかつての哭倉村に足を踏み入れた鬼太郎と目玉おやじ。
目玉おやじは、70年前にこの村で起こった出来事を想い出していた。あの男との出会い、そして2人が立ち向かった運命について。昭和31年、日本の政財界を裏で牛耳る龍賀一族によって支配されていた哭倉村。
血液銀行に勤める水木は当主・時貞の死の弔いを建前に野心と密命を背負い、また鬼太郎の父は妻を探すために、それぞれ村へと足を踏み入れた。龍賀一族では、時貞の跡継ぎについて醜い争いが始まっていた。
そんな中、村の神社にて一族の一人が惨殺される。それは恐ろしい怪奇の連鎖の本当の始まりだった。鬼太郎の父たちの出会いと運命、圧倒的絶望の中で2人が見たものとは……。
登場人物
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https://twitter.com/kitaroanime50th/status/1728209418968576061
現代
- 鬼太郎
- CV:沢城みゆき
- ご存じ「ゲゲゲの鬼太郎」。人間と妖怪が仲良く暮らす世の中を求める幽霊族の少年。哭倉村に足を踏み入れようとした雑誌記者「山田」の前に現れ、警告する。
- ねこ娘
- CV:庄司宇芽香
- 鬼太郎の仲間の猫の妖怪。鬼太郎と共に山田の前に現れる。テレビアニメ各期でデザインが大きく異なるキャラクターだが、本作ではテレビアニメ第6期版準拠のデザインである。
- 目玉おやじ
- CV:野沢雅子
- 鬼太郎の父親。
- 既に本来の肉体は失っており「目玉に小さな体が生えている」ような異形の姿となっている。
- 鬼太郎とともに哭倉村を訪れ、70年前に起きた出来事について思いを馳せる。
- 山田
- CV:松風雅也
- 廃刊の近い雑誌の記者。
- 都市伝説「ゲゲゲの鬼太郎」の謎のカギを握る土地とされる場所を訪れた。
- その入り口で鬼太郎やねこ娘に警告されるが、その忠告に従うことなく哭倉村の廃墟に足を踏み入れる。
昭和31年
- 水木
- CV:木内秀信
- 東京で「帝国血液銀行」に勤めるサラリーマンの男性。
- 自社の取引先である製薬会社「龍賀製薬」の社長「龍賀克典」から信頼を得ている。
- 龍賀克典が龍賀家の当主となるはずの場に自分が立ち会うことによって自社に利益を誘導するため、そして会社から命じられた密命を果たすため、つまりは社内での自分の立場を確固たるものにするために哭倉村を訪れた。
- かつて兵士として戦った太平洋戦争の戦場(描写から、南方戦線と思われる)にて上官によって玉砕突撃をさせられた経験を持ち、九死に一生を得たものの胸や左瞼に傷跡が残っており、左耳が一部欠けている。
- そのためか自らが所属する会社や龍賀克典に忠誠心を示すような言動をしつつも、内心では「権力を持つ者は下の者を捨て駒として使い潰そうとする、だから自分は権力を持つためにのし上がらなければいけない」といった屈折した思いを抱いている。
- 鬼太郎の父
- CV:関俊彦
- 本来の肉体を持っていた頃の、目玉おやじのかつての姿。
- 妖怪種族「幽霊族」の最後の生き残り二人のうちの一人。同じく幽霊族の最後の生き残りである妻と生き別れとなっており、彼女の手がかりを探して哭倉村を訪れる。
- 目が隠れるくらいの長さの灰色の髪の、すらりとした体形の男性。
- リモコン下駄や体内電気や髪の毛など、『ゲゲゲの鬼太郎』で鬼太郎が用いる武器・妖術を駆使して戦い、血のつながりを感じさせる。先祖の幽霊族たちの霊毛を束ねたお守りの腕輪を身に着けている。
- 名前は作中で出ないが、とある登場人物が彼の顔を見て「ゲゲッ!」と悲鳴を漏らしたことから、水木からは「ゲゲ郎」というあだ名で呼ばれることになる。
- 龍賀時貞
- CV:白鳥哲
- 日本の政財界を裏で牛耳る「龍賀家」の当主で、太平洋戦争で大きく業績を伸ばした「龍賀製薬」の立役者。哭倉村にある自宅にて遺体で発見された。
- 一族が集まる中で彼が後継者を指名した遺書が弁護士によって公開されるが、その内容は予想外のものであった。
- 吐き気を催す邪悪。
- 詳細は「龍賀時貞」の記事を参照。
- 龍賀克典
- CV:山路和弘
- 龍賀時貞の長女「龍賀乙米」の夫で、入り婿として龍賀家に入った人物。
- 精力的な実業家といった風体で、「龍賀製薬」の社長。取引先の担当者である水木のことを気に入っている。
- 入り婿ではあるが、水木の見立てでは時貞の没後に龍賀家当主となるのは彼だと目されており、彼自身も時貞からその言質を得ていた。
- だが、気味の悪い土着の神を祀ったりしている龍賀家や哭倉村のことを内心では快く思っていない。
- 「龍賀製薬」の躍進の理由となった血液製剤「M」の原液製造工程に関する詳細は社長の彼に対してすらも秘密とされていた。それを不服としていた彼は水木にある提案を持ちかける。
- 龍賀沙代
- CV:種﨑敦美
- 克典と乙米の娘。黒髪ロングの美少女。
- 哭倉村から出たことが無いが、「女性も自由に生きられる」「銀座にパーラーがある」などといったことを伝え聞いた東京に憧れている。
- 東京の話をしてくれた水木のことを慕い、一緒に村から連れ出してもらうことを条件として水木に協力する。
- 長田時弥
- CV:小林由美子
- 龍賀時貞の三女「長田(龍賀)庚子」の息子。
- まだ幼く無邪気な少年であり、東京やプロ野球に憧れていることもあって、その話をしてくれる水木に懐く。
- 年齢が比較的近い事もあってか、沙代とも親しいようだ。
- 時貞が亡くなったころから、熱や咳が出るなど体調を崩すようになってきている。
- 龍賀時麿[3]
- CV:飛田展男
- 龍賀時貞の長男。
- 平安貴族のような装いをしており、虚ろな目で力なく歩く、父の死について人前で泣きじゃくるなど、不安定さが目立つ。
- 何年も表舞台に出ておらず、健康状態に問題があるという噂が立っていて、克典が後継者だと目される原因となっていた。
- 父である時貞の薫陶の元、妻帯も許されぬままに何らかの儀式について長く修行をしていたらしい。
- 龍賀孝三
- CV:中井和哉
- 龍賀時貞の次男。
- 眼鏡をかけた痩せ型の男性。
- 「禁」を犯したことで正常な心や記憶を亡くしてしまっており、ただ絵を描くことに没頭するだけの日々を送っている。
- 龍賀乙米
- CV:沢海陽子
- 龍賀時貞の長女で、龍賀克典の妻にして龍賀沙代の母親。きつめの顔。
- 夫である克典との仲は険悪となっており、克典が狼狽する様を見ると嘲笑するほど。
- 龍賀丙江
- CV:皆口裕子
- 龍賀時貞の次女。
- 若い頃の写真では快活そうな美人だったが、今では化粧が濃いめでぽっちゃり体形、享楽的な雰囲気を醸し出している。
- 肌着姿で酒に酔いつぶれているシーンや姉の乙米に金を無心しているシーンがあったりして、自堕落な人物であるようだ。
- 「若い頃に駆け落ちしたが連れ戻された」という過去があるらしく、変貌にはそういった事情も関連しているのかもしれないが、作中では詳細は語られない。
- 長田(龍賀)庚子
- CV:釘宮理恵
- 龍賀時貞の三女。
- 哭倉村の村長「長田幻治」の妻で、時弥の母。幸が薄そうな顔。
- 息子である時弥のことを大事に思っているが、彼に関することで姉の乙米から寄せられるプレッシャーに精神が追い詰められていく。
- 長田幻治
- CV:石田彰
- 哭倉村の村長で、庚子の夫。糸目キャラで、外見的には若々しい。
- 「にこやかな顔立ちで、村人からの信頼も厚い」と公式サイトキャラクター紹介文にはある。
- どうやらこの紹介文は嘘というわけでもないようなのだが、「にこやかな糸目キャラで声が石田彰」であるこいつが普通の村長なわけがない。
- ある謎の少年
- CV:古川登志夫
- 龍賀家で下働きのようなことをしている。
- 鬼太郎の父と旧知の仲であり、村の者たちに捕まえられた彼を見て「ゲゲッ!」と思わず慌てた声を挙げた。
作中用語
- 血液銀行
- 水木が勤める企業。看板や水木の台詞によれば、正確には「帝国血液銀行」。
- 龍賀製薬と取引している一方で、血液製剤「M」の秘密を探るべく水木以前にも人を派遣している(そして誰も帰還していない)と示唆するような社長らの台詞がある。
- 史実では、「血液銀行」は当時の日本に複数存在した企業形態であり、「輸血用の血液を供血者から買い取る」といういわゆる「売血」制度を担う営利企業であった(問題があった売血制度の終焉に伴い、その多くは製薬会社へと転身した)。作中でもこの「売血」が行われていると思われるシーンがチラリと映る。
- 血液製剤「M」
- 作中では「日清戦争、日露戦争で国力が劣る日本が勝利できた陰には、すさまじい力を持ち、何日も飲まず食わず眠らずでも活動できる、不死身の部隊があった」と噂されており、その噂の元になったのがこの薬剤。さすがに不死身にはならないが、何日も眠らなくても戦えるようになるアンプル剤。ヒロポンじゃねえのかそれ?
- 戦後においても、企業戦士たちにこれを打つことで日本の経済的発展が成せると期待されていた。
- 龍賀製薬が製造しているが、その原液は哭倉村でのみ製造されており、詳細は社長である龍賀克典にすら秘されている。
- 幽霊族
- 人類の歴史自体よりも古くから存在していた、いわば地球の先住民族的な存在の妖怪種族。
- だが後から発生した人類に追いやられて潜み暮らすようになり、鬼太郎の父が知る限りでは彼自身と彼の妻の2人しか生き残りがいない状態になっていた。
- 鬼太郎の父が哭倉村の土着の妖怪と協力関係を築いているのを見たある謎の少年は「さすが幽霊族、顔が広い」と評しており、妖怪の中でも一目置かれる種族であったようだ。
ちなみに「幽霊族」という名前だが別に実体のない霊魂のみの存在と言うわけではなくしっかり肉体がある。 - 原作漫画では、食料調達のために人の寝静まった夜にひっそり地下の潜伏場所から地上に出ていたところを、人々が見て幽霊だと誤認したとのことで、これが「幽霊族」という名称の由来であるようだ。
- 裏鬼道
- 本作中での鬼太郎の父の台詞によれば、陰陽師の一派「鬼道衆」の中から、外法を使う事で追放された外道の者たち。幽霊族を長年狩ってきた。
- その割に陰陽師というより修験者のような格好をしているが、おそらく『ゲゲゲの鬼太郎』の原作に登場する「鬼道衆」が元ネタであり、その元ネタの彼らが修験者の恰好をしていることを踏襲したものかと思われる。
- 本作と設定を共通させているはずのアニメ6期では追放元と思われる「鬼道衆」が登場している。
- 外法
- 作中で、裏鬼道が鬼道衆から追放された理由であるとされる術。
- 「外法」とは「仏教本来の教法(内法)から外れているもの全般」を仏教から見て言う用語で、前述の陰陽道や修験道も指すことがある。ただし、特に「私利私欲を満たすために、他人を犠牲にすることをも恐れない法術」[4]、要するに邪術を指す場合もあり、本作で裏鬼道や全ての黒幕が用いた術はまさにこの類である。
- 作中では髑髏が術に用いられているが、実在の歴史物語などでも「外法では髑髏を呪術に用いることがあった」と伝えられており、特に外法に適した形状の頭部は「外法頭」と呼ばれ、死後に墓から盗まれたりしたという[5]。水木しげるも自作の中でこの「呪術に用いられる外法頭」について記しており、本作でこの呪術が登場した直接の出典はこれかもしれない[6]。
- 狂骨
- 作中でカギとなる妖怪。骸骨の顔・上半身をしており、幽霊のように足が無く宙に浮いている。本作中での鬼太郎の父の台詞によれば、本来は「殺されて井戸に打ち捨てられた者の怨念が妖怪となったもの」であるらしい。だが、本作において哭倉村に登場する狂骨はやや異なる由来を持つ。
- 初出は鳥山石燕による江戸時代の妖怪画集『今昔百鬼拾遺』で、井戸の上に浮いている狂骨の絵とともに「井戸の中の白骨である」「世の中で(程度が)甚だしいことを「きょうこつ」と言うが、これは(この狂骨の)怨みが甚だしい事からきている」と言った意味のことが記されている。
- また、水木しげるの書籍には「狂骨に取り憑かれると、人を激しく恨むようになる」といった話が記されたものが複数ある。[7]
スタッフ
- 原作:水木しげる
- 監督:古賀豪
- 脚本:吉野弘幸
- キャラクターデザイン:谷田部透湖
- 音楽:川井憲次
- 美術監督:市岡茉衣
- 色彩設定:横山さよ子
- 撮影監督:石山智之
- アニメーション制作:東映アニメーション
- 配給:東映
- 製作:映画「鬼太郎誕生ゲゲゲの謎」製作委員会
余談・トリビア・ファンの考察など
※以下の記述のうち、一部については
- 鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎:関俊彦×木内秀信 初めて語られる“鬼太郎の父たちの物語” 昭和の映画のように - MANTANWEB(まんたんウェブ)
- 2023.11.18ゲゲゲ忌presents『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』スペシャルトークショーレポ【映画本編ネタバレあり】 - Privatter
などのページや、本作のパンフレット、日本語字幕版上映を観覧した方々のレポート、スマートフォン・スマートグラス向けアプリ『HELLO! MOVIE』(ハロームービー)による劇場での音声ガイドを情報元として参考としている。
- 映画館の売店などで販売されるパンフレットはキャストのインタビュー、プロップ、美術、原作資料などが掲載されているもの。これが人気を集め、公開後早期のうちに映画館によっては品切れのタイミングが多く手に入りにくいという状況となった。東映ONLINE STOREでの公式通販でも販売されたが、東映 ONLINE STOREの販売ページ曰く「大変多くのご注文を頂い」たとのことでやはり入手困難に。そのため2023年11月27日に内容は同じだが色違いの表紙となっている「あい色版」という追加作成版が予約販売された[8]が、こちらもその日のうちに完売となった。このためさらに増刷による対応がなされた。
- 本作のファンの間では本映画を観覧することを「入村」と表現することがある。哭倉村に入ることを指していると思われる。
- 『ゲゲゲの鬼太郎』テレビアニメ版第6期の第14話では目玉の親父の生前の姿が登場していた。灰色の髪のすらりとした男性で本作でのデザインに近いものだったが顔はキリッとしたイケメン風であり、本作における「鬼太郎とよく似た顔つき」とは少し異なるものだった。
- 同じく、テレビアニメ版6期の1話や最終話では赤子の鬼太郎を助けた「水木という青年」の姿がワンカット登場しているが、左瞼の傷が無いなどやはり本作の水木とは外見が異なるものだった。
- 作中での龍賀丙江の発言によれば、水木は「佐田啓二みたい」な印象らしい。佐田啓二は当時人気の美形俳優で、要するに水木は割とイケメンのようだ。
- 水木役の木内秀信がインタビューにて語っているが「オーディションに受かってから、作品をイメージするために「佐田啓二さん主演の『あなた買います』」という映画を見てほしい」という話がありました」とのことで、制作側の意図としても佐田啓二は水木のオマージュ先の一つなのかもしれない。
- キャラクターデザイン設定画によれば、水木の目の下の線はシワやクマではなく涙袋である[9]。
- 水木の髪形のデザインは変遷があり、初期案には、映画で正式採用された髪型とは異なるもの(オールバックなど)もあった[10]。2023年12月4日にキャラクターデザインの谷田部透湖氏が「こぼれ話」としてこの話を再現イラストともに自らのX(旧Twitter)に投稿したところ、既に本作がかなりの人気を得ていた時期であったため大きな反響を呼び、その日のXのトレンドに「オールバック水木」というフレーズが入った。
- 同じくキャラクターデザイン設定画によれば、鬼太郎の父の歯の一部は牙のようにとがっている[11]。パンフレット内では「八重歯」と記されている。
- 瞳が小さい絵柄で描かれているのでわかりにくいが、水木の瞳の中の瞳孔回りの色は青で描かれている。
- 一方、鬼太郎の父の瞳は黒い点で描かれていることが多いが、一部のシーンでは赤く光っているほか、制作中の期間に公開されていた第2弾ポスタービジュアルでは赤い虹彩が描かれている(これまでの漫画版やアニメ版での「目玉の親父」姿でも虹彩は赤く描かれてきた)。
- パンフレットの通常版が赤い表紙(後に「えんじ色版」と呼称)で、上記の追加でネット販売されたのが「あい色版」という青い表紙だったため、二人の瞳の色に合わせたのか?とも深読みするファンもいた。
- 「ゲゲ郎」という呼称は、映画が公開されるまで公式サイトや予告編などで出てくることが無かった。だが、公開前の2023年10月からの一時期にマクドナルドのハッピーセットに付いていたミニ図鑑『水木しげるの妖怪ずかん クイズつき』という意外なルートから公開前に一部のファンの間には漏れていた。このミニ図鑑内に掲載されていた小さな映画紹介欄内で「在りし日の目玉おやじ・ゲゲ郎は」などと書かれていたためである。ただし、この記載では「水木が勝手につけたあだ名」だということはわからなかったため、当時は「これが目玉おやじの本名」だと誤解されていた節もある。
- ちなみに、この「ゲゲ郎」という呼称の由来は、作中では「ゲゲッ!」という叫びから来ているが制作経緯的には『ゲゲゲの鬼太郎』の作品タイトルから来ていると思われる。そして『ゲゲゲの鬼太郎』の「ゲゲゲ」は水木しげる(本名:武良茂)が幼い頃に自分の名前「茂」(しげる)をうまく発音できず「げげる」と言っていたために「ゲゲ」というあだ名を付けられていたことに由来するらしい。つまり、水木とゲゲ郎の二人の名前を一つにすると概ね「水木しげる」という意味になる。
- 「水木」という苗字の読みは、一般的には「み」にアクセントがくることも多いが、作中の「水木」の読み方は平板になっている(「水着」と同じイントネーション)。水木しげるの長女で「水木プロダクション」取締役である原口尚子氏がX(旧Twitter)で語ったことによれば、「水木しげる本人が自分の名前をそう呼んでいたからで、アフレコの時、声優さん達にそのようにお願いしました。[13]」とのこと。
- 本作での鬼太郎の母のキャラクターデザインについて、「どことなくねこ娘に似ている」と感じるファンも多い。鬼太郎役の沢城みゆき氏やねこ娘役の庄司宇芽香氏もそう感じていたそう。
- ファンの間では鬼太郎の母について「岩子」と呼んでいる例が少なくない。本作中では名前は出てこないが、漫画『ゲゲゲの鬼太郎』にてこの名前が明かされた回があったため。ただし、本作でも同じ設定なのか否かは不明である。
- 台詞が早口気味である。昭和の白黒映画の役者の台詞はちょっと早口で、そのテイストを狙ったものとのこと。
- 本作の台本は3冊構成になっている。これは鬼太郎の父役の関俊彦氏のようなベテラン声優からしても一本の映画の台本としては多いらしく、インタビューにて「そんなにあるの!?」という感想を持ったことを明かしている。さらに厚みもあるらしく、鬼太郎役の沢城みゆき氏も「辞典のような厚さの台本が3冊も届いたので最初はビックリしました」と語っている。
- 横溝正史による推理小説『犬神家の一族』のオマージュが多い。亡くなった名家の当主が「製薬企業の大物」とされている点は、原作小説版ではなく1976年の映画版(あるいはそのリメイクの2006年の映画版)に近いとも言える。
- 龍賀家の「乙米」「丙江」「庚子」の三姉妹の名前にはいずれにも「乙」「丙」「庚」と「十干」の一部が入っている。
- 上記の『犬神家の一族』で亡くなった当主の娘ら三姉妹の名前が「松子」「竹子」「梅子」と「松竹梅」の一部が入っていることへのオマージュか。
- 「生まれ年の十干を名前に入れたのではないか」と深読みして、彼女たちの生まれ年と年齢を当てようと試みるファンもいる。
- あるいは、十干は「甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸」の順なので「単純に娘が生まれた順に番号的に付けた名前ではないか。だとすれば乙米の前に一人、そして丙江と庚子の間にも三人娘が居て、何らかの理由で居なくなったのではないか」と深読みするファンもいる。
- 単に「甲・丁・戊は女性の名前に組み込みにくかった、己は乙と音が似るので避けたかった」などの創作上の都合からの理由だとも考えられるが。
- 谷田部透湖氏は自らのXアカウントにて、彼女たち三姉妹のキャラクターデザイン公開に際して「龍賀家は美形という設定のもとデザインしております」とコメントしている[14]。一応、美人三姉妹ではあるらしい。
- 2023年4月27日に本作の公開日決定のアナウンスがなされたとき、「原点にして最恐―」というキャッチコピーが使用されていたが、このキャッチコピーはその後、公式による宣伝において使用されなくなった。キャラクターデザインの谷田部透湖氏によれば「制作陣の思う映画コンセプトと異なった」とのことで、対話、対応して認識をすり合わせた結果であるとのこと[15]。
- 2023年8月11日~27日に開催されたイベント「鬼太郎EXPO」に、谷田部透湖氏は「鬼太郎の頭をだれかが撫でている。鬼太郎は嬉しそうに微笑んでいる」という光景のイラスト(タイトルは『幽霊族最後の』)を本作のものとして提供している。本作公開前であったため、ネタバレ最小限のものとして描かれたものであったとのこと。複製作品がEXPO会場内ショップで受注販売されていたほか、「東映アニメーションオフィシャルストア」でもこのイラストのグッズを販売している。本作の公開後に谷田部氏が語ったところによると、この鬼太郎の頭を撫でている手はゲゲ郎と水木の「父達の手」であるとのこと[16]。
- 2回目以後観覧して初めて気づくような、細かい仕込みも多い作品である。2023年11月18日に行われたスペシャルトークショーに出演していた、前述の水木しげるの長女原口尚子氏も「三度目で初めて気づいたところもあった」と語っていたという。それらの仕込みについては本記事でも、以下の「ネタバレ情報」の欄で触れる。
- その原口尚子氏がXで語ったことによると、本作については「成功しない」「大きく宣伝せず口コミで広がるなんてあるわけない」と言われていて悲しかったとのこと。
- とはいえ制作陣としてもここまでヒットするとは思っていなかったらしく、パンフレットの古賀監督インタビューでは「大人向けホラーということで決して万人向けではありませんが、今の世の中に生きづらさを感じている方には刺さるものになっているのではないかと思っています」と語られている。「多数の人に受け入れられることはなさそうだが、刺さる人には刺さる」という想定だったことが伺える(監督は、舞台挨拶にても「ひっそり公開してひっそり終わる予定の映画だった」などとも語っている。後述)。
- 鬼太郎の父役の関俊彦氏はベテラン声優だが、意外にもこれまで複数存在していた鬼太郎のアニメシリーズに関わったことがなかったとのこと。そのため「この作品に出るために私は今までご縁がなかったのかな」という思いも抱いたという。
- キャラクターデザインの谷田部透湖氏は、本職はアニメーター、アニメ演出家であってイラストレーターやキャラクターデザイナーというわけではなく、パンフレットに曰くキャラクターデザインの仕事は本作が初とのこと。
ネタバレ情報
以下の記述には、ネタバレが含まれます。 |
- 公開日初日の2023年11月17日からしばらく(品切れとなるまで)は、来場者特典としてキャラクターデザインの谷田部透湖氏による描き下ろしビジュアルカード(A6サイズ)がプレゼントされた。メタル色の外装に包まれており、中身は2種ランダムで選べない。外装には「ご鑑賞後に開封してください」と記されている。2種のうち、片方は水木が幼い鬼太郎を肩車してあやすシーンが描かれており、もう片方は鬼太郎の父が幼い鬼太郎を抱っこして嬉し泣きしているシーンが描かれていた。このうち一方は作中の展開からすると残念ながらあり得ない、「どうしてこうならなかった」的な情景である。
- その後、12月8日からは第2弾の来場者特典として、同じく谷田部透湖氏による描き下ろしビジュアルカード(A6サイズ)1種が配布。こちらは「鬼太郎の父(目玉の姿ではなく本来の姿)が視線の低いこちらに向けて手を差し伸べており、その後ろには水木もいる」という、おそらく幼い鬼太郎の視点からのもの。こちらもやはり「どうしてこうならなかった」的な情景である。
- さらに、12月23日からは第3弾の来場特典として同じく谷田部透湖氏による描き下ろしビジュアルカード(A6サイズ)1種が配布。第1弾と同じくメタル色の外装に包まれており、外装には「ご鑑賞後に開封してください」と記されたシールが貼られていた。こちらはの絵柄は「鬼太郎の母(血桜に血を吸われて変わり果てた姿ではなく、鬼太郎の父の回想にあった姿)が涙ぐみながら幼い鬼太郎に頬ずりしている」というもの。こちらもやはり「どうしてこうならなかった」的な情景である。
- 2024年1月13日からは第4弾の来場特典として、「キャラクターデザイン谷田部透湖描き下ろし第1弾~第3弾特典ビジュアルステッカー」が配布。上記第1弾2種・第2弾・第3弾の特典の絵柄の4枚のステッカー(それぞれ横約5.5cm、縦約8cmサイズ)がセットになったもの。
- 2024年1月27日からは第5弾の来場特典として第1~3弾と同じく谷田部透湖氏による描き下ろしビジュアルカード(A6サイズ)1種が配布された。第1弾や第3弾と同じくメタル色の外装に包まれており、外装には注意の記載がないが「ご鑑賞後に開封してください」とアナウンスされた。「安心したように楽しそうに笑っている、幼い鬼太郎」が描かれていた。
- 2024年2月10日からは第6弾の来場特典(「最後の御礼」)として、同じく谷田部透湖氏による「描き下ろしイラスト ミニ色紙」が配布された。絵柄は「鬼太郎の父と水木が背中合わせに立っている、窖の底の戦いの後のようで両者とも血塗れになっているが、何かを喜ぶように笑い合っている」というものだった。
- 「真生版」が2024年10月4日から劇場公開された際の第1弾来場特典としては、これまでと同じく谷田部透湖氏による描き下ろしビジュアルカード1種が配布された。やはり「ご鑑賞後に開封してください」と記されたメタル色の外装に包まれていた。
- 2023年12月8日に開始された字幕版にて、公開開始以来漢字表記が不確定だった台詞の漢字表記がいくつか確定した。「ナグラサマ」は「哭倉様」、「マブイウツシ」は「魂移し(まぶいうつし)」。また、鬼太郎の父が「時弥」を呼ぶときの「ときちゃん」は「時ちゃん」ではなく「トキちゃん」と表記されていたという。
- 冒頭付近の、昭和31年(1956年)から70年経ったという(つまり2026年前後?)廃墟となった哭倉村のシーンで目玉おやじが「あの男も今日ここに来ておるかもしれんのう」などと話しているが、この「あの男」が誰なのかは明言されない。
- 山田がトンネルを抜けた後、崩れかけた木製ベンチが映るが、「龍賀製薬」と書いてあるようだ。このベンチは水木が同様に村に入って歩いているシーンや、水木がねずみから渡された冊子を読んで引き破いたシーンなどでも登場している。
- 山田の探索中に「無数のお札が貼られた家屋」が映る。本作終盤の哭倉村の滅びのシーンにおいて、家に無数のお札を貼ることで難を逃れようとする女性の村人が映っており、その家屋かと思われる。ちなみにその女性は狂骨から逃れることはできなかったようだ。
- 地下に落ちた山田の前に転がっていた球は、本作終盤で龍賀時貞が変貌したものである。山田が気づかずに蹴とばしたようで、「痛い痛い」「助けて」などと助けを求める声を発しつつも、転がって悲鳴を上げながら谷底に落ちていく。わずかに身じろぎする程度はできるようなので70年かけて窖(あなぐら)の下の空洞からここまで移動していたのかもしれないが、また奈落の底に戻ることになった。ざまぁ。
- 血液銀行のシーン、階段などに並んでいる人々は血液銀行に自らの血を売りに来た人々(音声ガイドでその旨の説明が入っていた)。また、付近の道路でふらふら歩いて車に接触しそうになっている人や道端に座り込んでいる人々は売血しすぎて貧血となっている人か。この「売血」は主に貧しい人々が行っていたとされ、血を売りすぎて貧血に陥る者がいたり、あるいは感染症に感染している人々までもが血を売ってそれが輸血を受けた患者に感染したりと、社会問題にもなっていった。後半に「東京も理想の場所などではない」という趣旨の言葉が出てくるがその伏線となるようなシーンである。また終盤に登場する「血を啜って咲く桜」とも通じるところがある。
- 血液銀行の社長室にて飼われていた金魚は、頂天眼(チョウテンガン)という、目玉が上を向くように人間に無理やり作り変えられたといった伝承がある金魚。虐げられた犠牲者や搾取される者たちの暗喩か。
- 声優の宝亀克寿氏は自らのTwitterで本作について「実は主人公の上司役で出てます。」「部下には島田敏さんも」と投稿している[17]。本作のスタッフロールでは主要キャラクター以外の声優は担当キャラクターが明記されていないが、声から判断すると血液銀行の社長が宝亀克寿氏、その部下で水木の上司らしい人物(「望ましいのは龍賀製薬の龍賀克典社長ですが、彼は入り婿ですから」「水木くん! 無礼じゃないかね」などと話す人物)が島田敏氏のようだ。
- 水木が列車に乗っているシーンで咳き込む幼い少女が持っている人形。この人形は冒頭の廃墟となった哭倉村では山田が落ちた地下で映っており、そして本作後半での地下のシーンにおいても打ち捨てられた様子で映っている。
- 列車のシーンにおいてこの少女とは通路を挟んで反対側の席に座っている男たちは、にやつきながら少女の方を見ている。彼らは長田幻治の配下の男たち(裏鬼道)であるよう。
- さらに、地下でベッドに拘束された屍人(しびと)が多数映るシーンにおいては、小さな屍人が咳き込み(字幕では「女の子の」咳と明記されていたとのこと)、それを横の屍人が(音声ガイドによれば「心配そうに」)見つめている。つまり、電車内で咳き込んでいた少女やその横にいた母親と思われる女性もさらわれて地下に捕らわれ、屍人に変貌されられたものと思われる
- ちなみにこの「女の子の咳」を担当した声優はテレビアニメ6期のオリジナルレギュラーキャラクター「犬山まな」を担当していた「藤井ゆきよ」らしい[18]。
- 水木が吸っているタバコの銘柄は「Peace」(電車内で箱のアップが映る)。フィルターの無い両切りタバコ(というか当時国産のフィルター付きタバコは未発売)。
- 電車内で水木が「トントン」とタバコを軽く叩くようにしているのは、ファンの考察に曰くタバコの中の草を吸う側とは逆の端に偏らせるための仕草。こうしてから吸う(あるいはさらに吸う側を押しつぶしたりひねってから吸う)ことで、フィルターが無くても吸っている最中に草が口の中に入ってくることを防ぐことができるらしい。
- 時貞翁に関する新聞記事のスクラップが画面に映るシーンがあるが、ここの新聞記事は目を凝らせば実際に読むことができ、[19]、彼の政財界への影響力が巨大なものであったことが伺える。詳細な内容は「龍賀時貞」の記事を参照。
- そのスクラップブックには龍賀家の人々が写った写真も載っている。時貞翁は赤ん坊を抱いており、明記はされていないがこの赤ん坊は時弥か。
- その写真には長男であり龍賀家の重要人物であるはずの時麿が写っていない。それに関する疑問の念を記したものか、「時磨?」という書き込みも写真の枠外に記してある。
- 水木がタバコを吸おうとして擦ったマッチの箱には、ランプ(『アラジンと魔法のランプ』に出てくるような形のもの)の絵と「ともしび」という文字が描かれている。
- 電車内で水木が「死相が出ておるぞ」と鬼太郎の父に指摘されたときに後ろに出るシルエットは、帽垂布を付けていることから死んだ戦友らの姿のようである。ちなみに水木しげるも「戦死した戦友たちが夢に出てくる」と幾度か書き残している。
- このシーンでは水木のつけたマッチの炎が、鬼太郎の父が声をかけるあたりから赤から青く変わる。ここ以外でも本作では「この世ならざる炎」、たとえば狂骨による炎、釣瓶火、などは一貫して青く描写されているようだ。
- 村まで水木が乗ったタクシーはなぜか哭倉トンネルの手前までしか行かず、そこで水木は降りてしまう(トンネルはタクシーが通る程度の幅はあり、また後のシーンで村内に車が出てくる)。「トンネルを徒歩でくぐる水木を見せたいという演出の都合」「タクシー運転手が排他的な村に入るのを嫌がった」「タクシーで乗り付けて「生意気で偉そうな態度」と思われることを水木が危惧した」など、理由はいろいろ考えられるが。
- 水木が村に入ってすぐの、村の光景が流れるシーン。農地の中で作業をしていた村人二名(音声ガイドによれば夫婦)は、水木を見てかびくりと跳ねるように身を震わせ、水木がそちらの方を見やると姿を消している。「よそ者には姿を見せず、隠れて監視する」という村人の振舞いを示している。
- 龍賀沙代や龍賀乙米の喪服の胸元、肘、背中には小さく家紋が描かれておりそのサイズでは家紋としては例の多い「下り藤」のようにも見える。だが、映画後半に登場する龍賀時麿の部屋には龍賀家の家紋が大きく飾られており、その大きなサイズで見ると「藤の花」ではなく「龍の鱗」や「龍の爪」が意匠化された特殊なもののようである。
- 長田時弥が「村の人がよそ者が入ってきたって言ってた」と水木に伝えた次のカットでは、画面手前にいいた水木から、水木の後ろに映っていた背景の家にフォーカスが移っていく。窓の中は暗闇であるが、「その中から水木を監視している」ことの表現か。
- 水木が時弥に語った村外の話題の中に出てきた「川上の2000本安打」の「川上」とは野球チーム「東京読売巨人軍」(読売ジャイアンツ)に所属していた野球選手「川上哲治」。昭和31年5月31日に、日本プロ野球史上初の2000本安打を達成した。
- 水木が沙代や時弥と別れるシーンで、水木は少し悪い笑顔(音声ガイド曰く「野心的な笑み」)を浮かべており、龍賀一族の好感を得たことを「しめしめ」と思う描写か。一方、それを見送る沙代は見惚れたような笑みを浮かべているが、最後に笑みを消す。ここで水木に頼ることを思いついた、決心したものか。
- 山の手にある神社のシーンでは、「兎の串刺」らしきものがちらりと映る。これは長野県にある諏訪大社の上社の神事「御頭祭」(おんとうさい)においてかつて奉納されていた「神饌」(しんせん)の一種とされるもので、かつて諏訪大社上社の神職のひとつ「神長官」(じんちょうかん)を務めていた「守矢」(もりや)家にまつわる文物を展示する「茅野市神長官守矢史料館」で再現展示もされている。
- 諏訪大社上社の主祭神は建御名方神(タケミナカタノカミ)や八坂刀売神(ヤサカトメノカミ)であるが、この守矢史料館のしおりによると「ミシャグチ」(ミシャグジとも)という神も信仰しており、守矢家が務めた「神長官」はこのミシャグチ神の祭祀の秘法を伝えていたという(ちなみに、既に失伝)。ミシャグジは祟り神として語られることもあるため、この神社で祭っている祟り神(村民の台詞にあった「哭倉様」?)のモチーフとして選ばれたのかもしれない。
- ちなみにこの守矢史料館で再現展示されている神饌の中には「耳裂鹿」(みみさけしか)という「耳が裂けている鹿」の首もある。神様の矛にかかって耳が裂けたものと信じられて特別な生贄とされていたそう[20]。水木の耳が裂けていることに何らかの関連があるのではないかと深読みするファンもいる。
- ミシャグチ様に「おこう」と呼ばれる紅の着物を着せられた生贄の子供が桧(ヒノキ)の木の柱「御贄柱」(おにえはしら)にくくりつけられ捧げられ(殺され)る儀式があった[21]とも伝えられている。「桜の木の根に絡めとられて生贄のように扱われている」幽霊族や、「一族の為と称して犠牲を強いられた子供」である沙代や時弥とも重なるところがあるかもしれない。
- 龍賀家の欄間には龍賀家の先祖の人々と思われる写真がいくつか飾ってある。沢山の勲章を胸に付けた肩章のついた服を着ている人物が複数いるようで、時貞以外にも有力者を輩出している名家だったことがわかる。
- 大広間では、使用人の女性が水木の横に座布団を運んでくる。だが水木が正座して乙米に頭を下げるシーンでは水木は座布団に座っておらず、近くに誰も座っていない空の座布団が置いてあるようである。つまり、水木はあえて座布団に座らず正座したようだ。
- 長田家の3名は、龍賀の姓を持つ乙米・丙江・沙代とは離れて向かい側に、上座から順に「時弥」「庚子」「幻治」の順に並んでいる。この並び方について「上座から「龍賀の血を引く、当主の座が回ってくる可能性もある男児」「龍賀の血を引く女性」「龍賀の血を引かない者」の順で並んでおり、龍賀家の「男尊女卑」かつ「龍賀家の血筋優先」の価値観を示している」などと考察するファンもいた。
- 「龍賀時弥が成人したら龍賀時麿の次の当主となる」ことが告げられた時、時弥の母の庚子は感激して時弥を抱きしめているが、父であるはずの長田は特に何の感情を示していない。本作を通して、長田は家族であるはずの庚子や時弥と同席するシーンはこの遺言公開のときのみなのであるが、このシーン中で長田は庚子や時弥と言葉を交わさないどころか一切視線すら送っておらず、逆に庚子や時弥からも長田に対して視線も言葉も送られない。不仲であったのか、それともある程度の仲はあったのかすら不明。パンフレットによれば庚子にとって長田は「親に決められた許嫁」であったとのことだが。
- 「ある謎の少年」は外見や声優からして後の「ねずみ男」の若い頃の姿なのであろうが、本作では音声ガイドでも字幕版でもパンフレット内でも「ねずみ」と表現されており、「ねずみ男」ではない。まだ「男」とは言えない「少年」だということか。
- 水木が龍賀家で最初の夜を過ごすシーンで着ている浴衣は、その翌日以後に長田家で泊まる時に着る浴衣とデザインが異なり、前者の方がちょっと良いものっぽく描かれているとのこと[22]。
- 時麿の遺体が発見されたのは作中の台詞では「お籠もりのお社」だが、パンフレットを見る限りこれは山の手にある神社のことであり、殺害現場でもある。パンフレットにある哭倉村のラフスケッチ地図によれば、神社の向かって左側の通路は龍賀の屋敷と繋がっている。なおこのラフスケッチ内ではこの神社には「龍賀神社」と付記されているが、パンフレット本文では「哭倉神社」と記されている。
- 時麿の遺体が発見されて騒ぎになるところのシーンで、村人の一人が「祟りじゃ……! 哭倉様の……!」と口走って周囲から咎めるように肩を掴まれる。この時、後ろ姿しか見えない乙米が振り向かないながらもわずかにその声に反応して身じろぎしており、それを見てかその村人は狼狽えて隠れるように他の村人の後ろに下がる。「哭倉様」の名をみだりに出すことがタブーだと示す演出か。この「哭倉様」についてはこのシーン以外で一切語られず不明。
- 「龍哭がなんだったのか」についても劇中で明確には示されないが、龍哭について心配した乙米に対して時麿が「父のもとで修業をしていた私に任せろ(意訳)」的なことを語っていること、地下に降りていたらしき乙米が憔悴して「やはり私では無理(意訳)」とつぶやいていたことなどから考えると、「術者の時貞が死亡し肉体を失ったことによって制御が弱まってしまった、窖の下にいる巨大狂骨(哭倉様?)があげている声」と解釈すべきか。
- 「龍哭」という呼称、「龍賀」という苗字、屋敷内に飾られている鎧の胴や広間の上座の襖に龍が描かれていること、前述のように龍賀家の家紋に龍の意匠が含まれているようであることなどから、村人らには社で祀っている神(哭倉様?)は「祟り神である龍神」であると広められているのかもしれない。龍賀時貞が巨大な狂骨を制御するのに使用している髑髏の額には「龍」の文字があるようであり、また巨大な狂骨について音声ガイドでは「龍のように長い体」と描写しているため、長い体を持つこの狂骨を「龍」になぞらえているものか。血桜から「M」の原液と思われる液体が排出される管も、龍の口を模したものになっている。
- 龍賀時麿を龍賀乙米は「時麿兄さん」「兄さん」と呼び、龍賀丙江は時麿の死体が見つかったシーンで「時麿にい」と呼んでいるようであり、総じて妹らから「お兄様」等ではなく割と気安い呼び方をされている。そのためこの三人の兄妹仲は意外と悪くなかった(少なくとも呼び方が定まる子供の頃は)のではないかと想像するファンもいる。
- きょうだいの生まれ順が「時麿、乙米、丙江、庚子」であることは間違いないようだが、孝三がこの順のどこに入るのかは不明。彼については「次男」という情報しかなく「長男である時麿よりは下」であることしかわからない。
- 時麿遺体発見後の社に、鬼太郎の父は縄で縛られた姿で登場する。本作では鬼太郎の父が3回(カウントの仕方によっては4回)も拘束されるが、その1回目である。2回目は長田の狂骨に負けたあとに鎖で縛られたとき、3回目は血桜の枝に拘束されたとき。2回目と3回目の間にはベッドに拘束されなおしているので、それを別カウントすれば計4回。
- 鬼太郎の父が断頭されそうになったのを水木が思わず止めるシーンでは、一瞬だけ水木の戦場での記憶がフラッシュバックしている。戦場での体験のせいで、人命がむやみに奪われることを忌避するようになっているという描写か。
- ここで水木が止めるために社の外に飛び出たとき、水木は靴を履いていない(上記の通り、社は龍賀の屋敷と接続しており、縁側のような場所を通って社に来ているようであるため)。つまり、雨で地面が濡れている中に靴下で飛び出たことになり、靴下がべちょべちょになったと思われる。そのためか、次の座敷牢前のシーンでは水木は裸足になっている。
- 龍賀乙米が憔悴して地下から出てきたシーンでは、遠景なので見えづらいが長田幻治がふらつく乙米を抱きとめているようだ。また3回目の龍哭の際、やはり長田が乙米を支え、乙米も長田にすがっているようなシーンがある。さらに、乙米が「龍賀の女の栄えある使命(当主に身を捧げること)」について語った時、横に控えていた長田がわずかに肩を落とす。そして、乙米は地下の工場で狂骨らに追い詰められたときに「助けなさい長田!」と声を挙げており、そんな乙米に長田は「奥様! 乙米様!」と名前を呼んで焦っている。
- これらの描写から、作中で明示されているわけではないが乙米と長田には単なる主従以上の何か心に通い合うものがあったのではないかと感じるファンも少なくない。長田が最後の力を振り絞って沙代の胸を貫いたのも、乙米を殺された復讐心からと取れなくもない。この場合、夫である長田との会話シーンが無いどころか目を合わせるシーンすらない庚子さんがさらに不憫になってしまうが。
- パンフレットでは古賀豪監督が「長田は乙米と主従関係にありながら実は互いに想い合っていたりと」とも語っている。
- 2023年11月18日に行われたスペシャルトークショーでは、古賀豪監督や脚本の吉野弘幸氏から二人の関係について「谷崎潤一郎の世界」(※「春琴抄」などか?)「長田が10代、乙米が20代の頃からそういう関係」「主従関係で絶対に越えられない」「長田が「乙米様」と呼んだのはあれが最初で最後、それまでは「お嬢様」「奥様」としか呼べていなかった」などの設定が明かされたという。
- 三姉妹が話すシーンで丙江が「無駄遣いしませんから♪」とか言いつつ乙米から受け取っていた札束は、その図柄からして昭和25年から発行されていた千円札(B千円券)の束であるよう。五千円札の発行は昭和32年から、一万円札の発行は昭和33年からなので、昭和31年時点ではこの千円札が最高額面の紙幣である。同年の大卒銀行員初任給が5,600円という時代なので、当時の千円札は本作が公開された2023年時点の一万円札よりも価値があった。
- 庚子の髪を飾っている櫛には猪と萩の柄があり、さらに帯には萩の柄があるようだ。丙江の服の襟には鹿の角のような模様がある。乙米の髪を飾っている櫛には蝶の柄があり、さらに帯には蝶と牡丹の柄があるようだ。つまり花札の「萩(猪)」・「紅葉(鹿)」・「牡丹(蝶)」、合わせて「猪鹿蝶」の役の組み合わせになっている。
- 「猪と萩」は「儚く繊細な萩と、荒々しい猪の対比」として花札以外でも日本画の題材にされることがあり、劇中で見せた庚子の二面性とも通じるところがあるかもしれない。
- 「鹿と紅葉」の組み合わせで、花札以外で有名なところとしては小倉百人一首の五番の歌「奥山に 紅葉踏みわけ 鳴く鹿の 声きく時ぞ 秋は悲しき」。この鹿の鳴き声は「恋しい相手を求めて鳴く声」であると解釈されることが多い。駆け落ちするほどの情熱的な恋愛をしたらしき丙江の過去と(あるいは劇中にあったように男遊びをしている現状とも)繋がるところはあるか。
- 「牡丹」は高貴さや美しさを表すモチーフとされ、高貴で美しいお嬢様(長田視点)であったであろう乙米にぴったりと言えなくもない。一方「蝶」は「夫婦円満」「長寿」を意味するとされ、うん……。
- 鬼太郎の父が入れられた座敷牢がある建物は、音声ガイドによると長田の屋敷。
- 座敷牢のある部屋での時弥との会話で、水木が時弥に「まだ秘密だが、これから立つ」と教えてあげた「世界一の電波塔」は東京タワーのこと。
- 自分を座敷牢から出そうとせずに寝始める水木に「騙したのか」と怒ったらしい鬼太郎の父は、翌朝までに座敷牢の錠前を外して自分は抜け出し、代わりに水木を布団ごと座敷牢に入れた(しかも眠っている水木を起こさずに)ようである。朝に起きた水木は「どうやったんだあいつ!?」と驚いているが、その回答となる「どうやったのか」の種明かしは作中でなされないので、「どうやったのか」について不思議がるファンもいる。戦闘シーンで見せたような怪力があれば錠前を壊したり布団ごと水木を運んだりできるとしても、それで「水木を起こさない」のは割と難しいのではなかろうか。
- 座敷牢の中で水木が目覚めるシーンの前には、「夜道を歩く何者かが長田の部下らに捕まって斧で殺される?」シーンが入るが、この「何者か」は後の屋敷の地下のシーンで出てくる「屍人」のようだ。水木の夢かともとれる描写になっているが、「何とか脱出して地上に出た屍人が、結局捕まって処刑された」というエピソードが実際にこの夜に起きていたともとれる。一回目の観覧では「地下の屍人」について観客は知らないので、二回目以後の観覧で初めて意味が分かるシーンである。
- 鬼太郎の父と温泉で会話していた妖怪は、湯気でぼかされているが、字幕によると河童であるらしい。後のシーンで水面から顔を出して挨拶する数名の河童のうち、髭を生やしている河童の長老らしきキャラクターか。
- 鬼太郎の父は温泉のそばに着流しと帯を畳んでその上に組み紐を乗せて置いているようだが、下着(ふんどし、パンツ、猿股など)らしきものが見て取れない。ここから鬼太郎父ノーパン疑惑を提唱するファンもいる。
- めざといファン曰く、鬼太郎父が湯から上がるときに二回乳首が見える。湯から立ち上がった瞬間の正面の姿と、湯の中を着物の方に歩いていくときの横からの姿。
- 龍賀沙代が水木に龍賀孝三について教えつつ話しかけ、その後も談笑するシーン。この時に沙代が着ていた美しい着物について、着物クラスタからはおそらく「銘仙」のようだとの意見がある。昭和31年頃は銘仙の生産量最盛期であるが、その後は洋装が主流となった時代の変化により衰退する。
- 沙代が話した内容によれば、孝三が禁を犯して心を失ったのは十年程前。後に長田が語ったことによればそのときに鬼太郎の母を救出しようとしたが、裏鬼道の術(おそらく狂骨)に襲われて心を失った模様。
- 飲んだくれていた龍賀丙江が旅館の窓から水木と歩く沙代を見つけるシーン付近、丙江が居た室内には宝石が入ったケースや寿司桶や酒瓶が映っているようで、寝ている男らしきすね毛の足も映っている(音声ガイドによれば「宝石商」)。これらの描写について「無駄使いしませんから♪とか言ってたのに、さっそく馴染みの宝石商の男を呼んで商品を買い込んで無駄遣い。さらにその男と酒盛りし、そのまま性交した」という丙江の堕落した生活の描写なのではないかと想像するファンもいる。
- 龍賀克典が水木や沙代に声をかけるシーンの直前、克典が乗っていたと思われる車が水木と沙代の後ろを通り過ぎている(窓から彼らを見る克典の顔も一瞬映ったように思えた、さすがにディスク化や配信開始などされた際に一時停止などしない限り確認困難か)。また声をかけた克典の後ろには車と、運転手らしき人物が映っている。つまり「車に乗っていたら、目をかけている若者と娘がいい感じだったのでわざわざ車を止めさせて声をかけた」というムーブである。そっとしとけおっさん。
- 水木との関係をからかうような克典の言葉に、恥ずかしがった/ふてくされたように沙代は去っていくが、逆に言えば沙代は克典に萎縮したりしておらず、一般的な親子の会話にも見える。このシーンから、克典と沙代の関係はそれなりに悪くないものだったのではないかと推測するファンもいる。
- 克典が水木に、沙代について「くれてやってもいい」と話したとき、「龍賀の名とともにな」とも言い添えており、つまり自分と同じように水木を「入り婿」として迎えるつもりであることがわかる。
- 克典が水木に飲ませ、水木が一口飲んで「オッ」とした顔でグラスを眺め、克典が「東京でもこんな酒はなかなか飲めないだろう」と話した高級酒。その酒瓶のラベルは、画面端で見切れているが「Grand Old B…」「Scotch Wh…」まで見て取れる。パンフレットのプロップ設定画では「Grand Old Bar」「Scotch Whisky」「LEITHSCOTLAND」と記されている。このモデルは「オールドパー」(かつてはラベルに「Grand Old Parr」「Scotch Whisky」「LEITH・SCOTLAND」と記されていた)ではないかとのファンの意見がある。輸入関税や酒税の変化で現在ではそこまで敷居が高い酒ではないが、当時はサラリーマンの憧れの高級酒のひとつだったそう。
- 水木が克典から受け取った葉巻を吸って水木はむせる。葉巻は肺まで吸い込むのではなく口の中で「くゆらす」喫煙が正しい吸い方であるため、「水木は葉巻のように高級なものは喫煙しなれない」ことの表現か。
- 「バカにしやがって!」と憤りつつ水木がその葉巻を湖に投げようとするがやっぱりやめたシーンの直後、水木は手にした葉巻の香りを嗅いでいる。
- 水木は島で鬼太郎の父に救われた際、目を閉じてぐったりしたまま鬼太郎の父に背負われており、気絶しているように見える。さらにその後、妖怪について鬼太郎の父に語られたときも気絶してしまう。水木は本作中で5回(あるいは6回)も気絶・昏倒しており、これがその1回目と2回目。後の3回は、長田に殴られた時が3回目、窖の下の大空洞で鬼太郎の母を探すもいったん力尽きた時が4回目、鬼太郎の母を背負って逃げた後に消防団に発見されるまでが5回目(もし戦時中に爆弾で負傷したときも昏倒していたならばプラス1回)。
- 水木が妖怪について聞かされたとき、「子守の婆さん」から妖怪の話は聞かされていた、と語るシーンがある。これは、少年時代の水木しげるが、家にお手伝いさんとして来ていた「のんのんばあ」という老婆にお化けや妖怪の話をよく聞かされていたというエピソードが元だと思われる(水木しげるの自伝的エッセイ『のんのんばあとオレ』やその漫画版などで詳しく語られている)。
- その夜、鬼太郎の父はざるそば(もりそば?)を食べているようだが、よく見るとその膳の横には前日と同じく質素な食事の膳も置いてあるようにも見える。ここから「水木が鬼太郎の父に自分の分の食事を譲ってあげたのだろう」と推測するファンもいる。
- 作中で語られた「日清戦争や日露戦争には不死身の兵隊が出征していた」という噂は、実際にも語られていた噂話であり、著名な民俗学者「柳田国男」の書籍『遠野物語』の増補版にも収集されている(曰く「白服の兵隊はいくら射つても倒れなかつた」)。その類話が発展して「軍隊狸」という妖怪譚に変化したという説もあり、妖怪とも縁がある。
- 鬼太郎の父は「ワシの妻の行方と、不死の妙薬」と自分の妻と血液製剤「M」に関して関連付ける様に口に出しており、この時点で既に「M」の陰に自分の妻の存在があるのではないかという疑念を持ったようだ。
- 鬼太郎の父が水木と協力することを約束した後、「何を見ても逃げるでないぞ」と告げ、水木も笑顔で応じている。この何気ない台詞について、スタッフロールで描かれた「水木が鬼太郎の父を恐れて逃げる様子」と対比して二度目以後の観覧時に気持ちを曇らせるファンもいる。
- 村での散策中、鬼太郎の父が水木に「ほころびはあるが結界があるから狂骨が何かできると思えない、村に憑代でも居ない限り」といった意味のことを話しているが、この「憑代」が沙代であったと思われる。
- 水木と鬼太郎の父がアイスを食べているシーンでは、背景にそのアイスを売ったであろう駄菓子屋が映っている。そこの引き戸のガラス窓には「ロロナミン B ドリンク」と書いてあるらしき少しかすれたステッカーが貼ってあり、元ネタは「オロナミンC」であろう。ただしオロナミンCドリンクは昭和40年発売。置いてあるアイスのショーケースも昭和31年に村にあるのは不自然な型であるよう。つまりこの駄菓子屋は舞台設定よりやや下った時代の資料を元に作画されているようだ。
- 水木はアイスを食べた後に、アイスの棒を少し動かして見ているようである。「当たり付きアイスで、裏がえして当たりかハズレか確認したのではないか」と推測するファンもいる。ちなみに、日本初の当たり付きアイスは昭和35年発売の「ホームランバー」とのことなので、史実ではこの時代にはまだ当たり付きアイスはない。
- バルコニーのある洋風の建物(パンフレットによれば「展望台」)に水木が沙代を呼び出して協力を依頼するシーンで沙代が着ていた洋装のワンピース。「彼女にとって「ここぞというときに着るべきとっておきのおしゃれ」だったのであって水木に会えるからうきうきしつつ着てきたのではないか」とか、「克典が買ってきてやったプレゼントなのではないか」などと妄想するファンもいる。
- 鬼太郎の父が墓場にたたずむ水木にかけた声「墓場で考え事とは趣味がよい」と、そのすぐ後に水木が鬼太郎の父を評した「盗み聞きとは趣味悪い」は対になっているようだ。
- この墓場で水木と鬼太郎の父が天狗の酒で酒盛りするシーンで、水木が吸いかけのタバコを一本鬼太郎の父に分けてやる。音声ガイドによるとこれが「最後の一本」とのことで、よく見ると水木はタバコの箱をしまうときに握りつぶしている。
- 鬼太郎の父と妻がデート?でクリームソーダを喫していた回想シーンの場所は、音声ガイドによると「屋上遊園地」。街並みを見下ろす高い場所であることから百貨店の屋上遊園地などかと思われるが、遊具「飛行塔」などがある光景から戦前からあった「松屋浅草支店」の屋上がモデルではないかと想像するファンらもいる。
ポストを読み込み中です
見下ろす街並みに流れる大きな川が隅田川、その向こう岸にわずかに描かれている周囲より大きめの建造物が「アサヒビール 吾妻橋工場」だとすれば位置関係も合うようだ[23]。
https://twitter.com/kitaroanime50th/status/1730527162812465230- このクリームソーダには赤いさくらんぼが乗っているが、本作以前から目玉のおやじは「さくらんぼが大好物」と設定されている。
- 回想シーン内で、鬼太郎の父が幼い頃の姿が1カットだけ登場する。木のうろで膝を抱えて座っており、人間社会から離れて独りぼっちで暮らしていた描写と思われる。
- 回想シーンで鬼太郎の母が人間社会で働いているが、音声ガイドによればこれは「タイピスト」として働いているらしい。タイプライターを用いて文章を打ち込む仕事であり、この当時(1980年代にワードプロセッサーが普及するまでの時代)では女性労働者の代表的な職の一つだった。
- 墓場での酒盛りの翌朝、二日酔いの水木が縁側で手を差し伸べている「吊るしてある何か」は「吊り手水」などと呼ばれる手洗い器具。水が中に入っている容器で、下の突起を手で押すとその間だけ水が流れ出てくる。
- 水木にねずみが沙代の伝言(「孝三と面会する手はずを整えたこと」かと思われる)を伝えるシーンで、最後に障子の影からの視点となり、そして障子が閉じられる。「誰かが障子の影からこのやりとりを覗いていた」という描写のようで、長田家の何者かであると思われる。この後のシーンに長田やその配下らが現れたことの伏線になっている。
- バルコニーの建物に孝三を呼んで話を聞くシーンで、発生した龍哭に孝三が恐れおののくが、このとき島が光っており、龍哭は島(島にある窖が通じる地下空洞)から起きていることがわかる。
- 孝三が落とした鬼太郎の母の絵は、いずれも憂いを含めたような表情であり、笑顔の絵は一つもない。孝三は彼女が龍賀に捕まったところを目にしているためだろうか。
- この建物での戦闘シーンにて、鬼太郎の父は島の妖怪には使っていたリモコン下駄などの妖術を人間である裏鬼道との戦闘では一切使わず、怪力と体術のみで戦っている。一族の仇である裏鬼道相手ですら、人間に手加減している?
- 長田は「嬉しい驚きです」と笑って鬼の面を付けるまでは紺色の服を着ているのに、鬼太郎の父が裏鬼道らと戦った後に登場したときには他の裏鬼道と同じ白い修験者装束を着ている。気づいたファンの間では「わざわざ早着替えしたのね」とネタにする声も挙がっていた。
- 長田が持っている髑髏の額に書いてある文字は音声ガイド曰く「鬼」であり、この髑髏が操る狂骨の額にもこの文字がある。
- この狂骨には鬼太郎の父が操る「先祖の霊毛で編んだ組み紐」やリモコン下駄が無効化されてしまう(リモコン下駄に至っては制御を奪われてしまう)。このことについて作中で理由は明言されていないが、この狂骨が「幽霊族の怨念から生まれた狂骨」であるため、幽霊族の力が無効化されているものか。この狂骨に飲み込まれた鬼太郎の父が、周囲に朧げに浮かぶ無数の顔に向かって驚いたような声を挙げているが、彼らが幽霊族の怨念であることを察したものか。
- この狂骨について、長田が「ただの狂骨ではありません」と話す台詞がある。本来は「通常の狂骨よりもずっと強力な特別な狂骨である」ことを告げる前の特に何という事もない台詞なのだが、公開時期より少し前に週刊少年ジャンプ連載の漫画『ドリトライ』の「でも ただのリトライじゃねぇぞ」「ド級のリトライ ドリトライだ!」という台詞がネットミームとして流行っていたため、ネット上では「ただの狂骨じゃねぇぞ ド級の狂骨 ド狂骨だ!」という謎の台詞改変が流布。「劇場で観るとき、この台詞で笑っちゃうじゃねえか」という苦情も挙がっていた。
- この狂骨は、目隠しをされており、封印するような注連縄が巻かれており、体に釘を打たれており、さらに手枷まで嵌められている。「術によって自由を奪われ、隷属させられている」という事を示すデザインか。
- 長田が髑髏から狂骨を出すときに「オン」、しまうときに「ウン」と言っている。これは字幕版にて「オン」は「唵」と、「ウン」は「吽」と表記することが判明した(それまでファンの間では「怨」などと表記されていた)。「唵」「吽」どちらも梵語(サンスクリット)由来で、仏教の呪文(真言や陀羅尼)に用いられるフレーズ。陰陽師の一派の癖に仏教系の術を使うあたり、確かに外法。
- 鬼太郎の父が囲んで棒で叩かれて痛めつけられるシーンの直前に乙米が言った「少し躾が必要なようね」という台詞は、後のシーンで時貞もほとんど同じ「少し躾が必要なようじゃな」といった台詞を言っている。他にも乙米の台詞には時貞の語る内容と呼応するものが多く、「父から思想的影響を受けている」といった描写であろうが……かつて乙米が時貞から「躾が必要だな」と言われつつ折檻/虐待を受けた経験があったのではないか、と考察するファンもいる。
- 乙米が、「沙代が時貞にされていたこと」を語るシーンでは、当主に身を捧げて強い霊力を持つ跡取りを産むことについて、「沙代個人の義務」と言うより「一族の女の義務」といった風に表現している。そのため、「他の龍賀家の女性キャラクターらもこの義務を強いられていたのではないか」、「公式のキャラクター相関図で紫色で描かれている線は、偽りの親子関係を示しているのではないか」と深読みするファンもいる。後の時貞が時弥について「そのために作った子じゃわい」と言っており「作らせた子じゃわい」でないということもその深読みの材料になるようだ。
- 時麿の部屋で沙代が時麿による資料冊子(「龍賀洞日誌」?)をねずみに渡すシーンや、後にでてくるその部屋での庚子殺害の回想シーンでは、この部屋に時貞の写真が置いてあることが確認できる。この写真は傾いて床に無造作に置かれており、また大きく×字型に傷らしきものが入っているようだ。これがもし沙代がつけた傷ならば沙代が時貞に怨み・憎しみを持っているのは当然なので自然だが、もし時麿が付けた傷ならば、「とと様」と号泣していた振舞いとは裏腹に彼もまた時貞に何らかの怨みや憎しみを抱いていた可能性が浮上する。
- 水木と沙代が手を握り合って村の出口のトンネルに向かうシーン、前を歩いて(手を引いて)いるのは沙代である。「村を早く出たい」沙代と、「鬼太郎の父について諦めきれない」水木の表現か。
- 乙米の指示で長田の部下に腕を斬り落とされそうになった鬼太郎の父は「やめろ」と焦っているが、時麿の遺体発見後に首を斬り落とされそうになっても焦っていなかったのとは対照的である。鬼太郎シリーズのファンからは「原作漫画の描写では鬼太郎など幽霊族は断頭されても生きていられるほどタフなので首を落とされそうになっても動じていなかった。だが地下工場のシーンでは胸に貼ってあるお札で能力を封じられていたために腕を斬り落とされると再生できなかった」のではないか、という考察も出ている。
- 水木が地下の工場に鬼太郎の父を助けに来たシーンあたりで後ろに倒れているキャラは、少し前のシーンでエレベーターの横で銃を持って警備していたキャラ。すなわち「水木がこのキャラを襲い昏倒させて銃を奪った」という表現であると思われる。振り下ろされる斧をピンポイントに撃ち抜いてるし、別のところで自身より大柄な大男を背負い投げするシーンもあるし、冊子を束のまま素手で引き裂くシーンもあるし、強えなこのサラリーマン……。
- ちなみにその後に銃を捨てて、沙代を人質に取る振りをするが、音声ガイドによれば「残弾が無い」ことを確認したために銃を捨てたらしい。
- 乙米の台詞「知っているのですよ。お前がお父様のお気に入りだったということも」という台詞。多くの観客は「(そこにいる水木は)知っているのですよ、お前(沙代)がお父様(時貞)のお気に入りだった(時貞からの性的虐待を受けていた)ことも」という意味だと解釈したようであり、おそらくこの解釈で合っていると思われる。
- 沙代の回想する時麿殺害シーンでは、時麿に迫られる沙代は目を見張りつつも仮面のような無表情となっている。狂骨に憑依された描写とも解釈できるが、時貞から性被害を受けたトラウマが蘇ったため防衛反応として心を凍らせた描写と解釈するファンもいる。
- 沙代は丙江を殺した動機について「時貞にされていたことを水木に言われたくなければ」と脅迫されていたと語るが、丙江が何を要求したのかまでは語っておらず不明。
- 沙代の殺人の動機について、最初が「性行為を強いられそうになったことに対する防衛」と現代でも正当防衛が認められそうな範囲のものだったが、次が「秘密をばらすと脅迫されたため」となり、三件目は「時麿の部屋で探し物をしていたことを黙っていると約束してくれず、高圧的にふるまわれたため」と、どんどん殺人を犯すハードルが下がってしまっている。このためファンの間では「もし水木とともに東京に行けたとしても、結局は破綻していたのではないか」という声も挙がった。
- 龍賀の三姉妹が沙代に殺された経緯について「自分がされてきた嫌なことを沙代にしようとした、という図式になっているのではないか」というファンの深読みもある。丙江は駆け落ちから連れ戻されてしまった過去があるらしいが、丙江も沙代の駆け落ちの邪魔になるようなことをしたことで殺された。庚子は乙米から強権的に接されていたが、庚子も沙代に高圧的に当たったことで殺された。そこから、「乙米が殺された理由『沙代の秘密を好きな相手にばらした』あるいは『沙代に一族の義務を強制しようとした』なども、過去に「乙米自身がされたこと」なのではないか」と言う推測に繋げたもの。
- 沙代は水木の首を絞める。他の者たちのように「狂骨に殺させる」のではなく自分の手で首を絞めて殺そうとしている点について、沙代の水木に対する愛憎を示しているのではないか、と語るファンもいる。
- その首絞めの際、水木はその沙代の腕に爪を立てたり、沙代の胴体を蹴ろうとするなどの抵抗らしい抵抗を見せておらず、一旦は腕を掴んだ手も離してしまっている。単に沙代が狂骨の力を得て振るう怪力に抵抗の力が及ばなかったのみかもしれないが、「沙代に対する罪悪感や憐れみから抵抗しなかった/できなかったのではないか」と考えるファンもいる。
- パンフレットに掲載されている龍賀沙代役の種﨑敦美氏のインタビューによれば、沙代の最期の瞬間のト書きには、「実は悲惨な最期を水木に見せつけて水木の記憶に残ろうとする沙代の復讐であった」ことが記されていたという。
- 同じくパンフレットに掲載されている原口尚子氏のインタビューに曰く、龍賀沙代については豹変するキャラクターなので「演技のお上手な種﨑敦美さんにやっていただけたらいいなぁ」と思っていたところ、それが本当になって嬉しかったとのこと。
- 地下の工場のシーンにいるモブキャラの一人である「頭に三角巾を巻いて作業員的な手袋をした老婆」(笑みを浮かべつつ屍人らのベッドの間を歩いている。また狂骨に襲われる寸前には「お許しくだされ」と拝んでいる)は、もっと以前の、水木が窓から顔を覗かせている孝三を見つける直前あたりのシーンで水木とすれ違う村人としてさりげなく登場している。さらには、かなりわかりにくいが冒頭現代パートで山田が廃墟と化した村を探索するシーンでも、「無数のお札が貼られた家」(後述)内に懐中電灯の光が射しこんだ一瞬だけ、この老婆の霊らしきものが映りこんでいる[24]。
- 沙代の死について伏して泣いて謝罪の言葉を呟いていた水木は、鬼太郎の父が近寄ると「遅くなった」と詫びつつすっくと立ちあがる。これについて「切り替えが早い」と感じるファンもいる。ただ、この台詞や「この扉の先が窖の下へと続いている」と語る台詞はわずかに涙声となっており、また扉を開けて「行こうぜ!」と言うシーンでは目の下がまだ赤らんでいるなど、嘆きの余韻を残しているようだ。
- 映画終盤の舞台である村の地下の大空洞において、根で幽霊族らの血を啜って桜のような花を咲かせる大樹「妖樹 血桜」が登場する。桜は日本の象徴であるため、これは作中で黒幕らが言及している「弱者を犠牲にして発展してきた日本」の暗喩なのではないかと考察する人もいる。
- 時貞翁は名乗りの時に「昭和の天下人」「薬学の天才」「稀代の大術者」と自らのことを賞賛しており、高い自尊心が感じ取れる。
- 音声ガイドによると、時貞翁が座っていた場所は「ござしょ」。おそらく「御座所」か。天皇などの貴人の座する場所を指す。
- 時貞翁が時弥の魂を奪ったことについて「魂移し(まぶいうつし)の外法」を使ったと発言している。「マブイ」とは沖縄の民間伝承で魂のこと。
- ここであえてこの「マブイ」という言葉が選ばれた理由については、水木しげるの複数の著書で「マブイウトシ(魂落とし)」「マブイコメ(魂込め)」について語られているためか[26]
- その中では、「石垣島に行った時に泊まった宿の子供がマブイウトシにあったそうだ。転んだ拍子にマブイを落としてしまったようだという。ユタ(巫女)にマブイコメをしてもらい、子供のマブイが戻ったそうだ」といった、水木しげる本人が直接耳にした話が記されている[27]。「子供の魂」を操作する話であり、時貞が行った外法と共通点がある。「子供が落とした魂を、子供に込めなおす」と、「子供の魂を落として、自分の魂を子供に込める」で、方向性は真逆だが。
- なお、「死後、日の浅い死にマブイは危険な存在とされている」とも記されており、これも時貞のマブイと合致する点でもある。
- 血桜の根には多数の幽霊族の亡骸が絡めとられている。これは梶井基次郎の短編小説『櫻の樹の下には』[28]の一節「桜の樹の下には屍体が埋まっている!」「桜の根は貪婪な蛸のように、それを抱きかかえ、いそぎんちゃくの食糸のような毛根を聚めて、その液体を吸っている。」などのオマージュか。
- 水木はこの場にいるだけでも体調を崩しているよう(時弥の声で話す時貞曰く、「ここは人間には危険なところだよ」)だが、血桜の根を斧で伐ってあがった血しぶきを受けていった後に、その体調不良が進んで吐血し、ついにはふらついて倒れてしまう。単に長く居すぎただけとも取れるが、この血桜から上がる血しぶきは注射されると屍人になってしまう「M」の原液と同じ成分と思われ、それが悪影響したのかもしれない。
- 時貞翁が鬼太郎の母を引き上げてきたとき、血桜の花びらは白く変わる。その前に「その桜の紅(べに)は、お前の女房の血じゃわい」などと話しているので、「血を吸い上げていたが、ここで一時的に止めた」という描写か。その後、鬼太郎の父を捕えた後にはまた赤くなる。
- 鬼太郎の母の声優は鬼太郎と同じく沢城みゆき。鬼太郎は外見は概ね父親似、声は母親似ということになる。
- 鬼太郎の母の手には小さな傷がいくつかある。血桜の根に血を吸われていた痕か。
- 時貞翁が鬼太郎の母の妊娠を知って「日本の未来は明るいわ!」と歓喜した際、倒れて意識を失っていた水木が再度画面に映り、ピントが彼に合う。ここで鬼太郎の父が「お前のような奴が未来を語るな!」と怒るが、このとき水木も「犠牲を強いて繫栄する日本」の未来を語った時貞に怒りを感じつつ意識を取り戻したのではないかと考察したファンもいる。
- 鬼太郎の父が時貞翁に「諦めろ」と言われたときに「イヤだね」と返すが、この台詞について「長田の屋敷の座敷牢に鬼太郎の父が閉じ込められていたとき、水木にタバコを「一本くれんか」とねだって「やだね」と返されたときの言葉」との類似点を見出して、「鬼太郎の父が水木の言い方を真似たのではないか」と考えるファンもいる。
- 水木が時貞翁の元に斧を持って階段を登って姿を現すシーンで斧が階段の段に当たってカンカンと音を立てているのは、時麿の死体発見の後に鬼太郎の父が登場するシーンで階段を上がるカランコロンというゲタの音が聞こえているのと対になっているのではないかと指摘するファンもいる。
- 水木によって斧で髑髏が断ち割られた時、時貞翁は失禁してしまっているようだ。描写が目立たないため「言われて初めて気づいた」「何度目かの観覧でやっと気づいた」といったファンも。
- 制御を失った時貞が巨大狂骨に襲われるシーンで、水木は口からつまみ出した何かを捨てている。これは音声ガイドによれば「抜けた奥歯を捨てている」らしい。
- 時貞が巨大狂骨に嚙みつかれる瞬間そのものは画面に映らない。だが、噛みつかれる直前に時貞がすがっていた、彼自身を映した巨大な写真が破損している光景が少し後のシーンの背景に映る。自分の写真もろともに噛みつかれたようだ。
- 多数の幽霊族らの黄金色の霊毛が集まって黄金の球となり、幽霊族の怨念から生まれた巨大な狂骨を包み込むと、黄金の球に黒い縞が入り、そして「黄色に黒の横縞が入ったちゃんちゃんこ」という、『ゲゲゲの鬼太郎』でよく知られた姿となる。これは、後付けながら「鬼太郎のちゃんちゃんこがなぜ黄色と黒の縞々なのか」について本作で一つの説明を与えたともいえる。
- この「囚われていた多数の幽霊族が叫ぶようにして黄金の霊毛を飛ばし集める」シーンは、沙代が「怨みを持つ者よ」と呼びかけて「囚われていた屍人たちが叫ぶようにして怨念の青いオーラを飛ばし集める」シーンと描写が類似している。「怨念を集める」シーンと「希望を集める」シーンの対比か?
- 結界が破綻して噴き出した狂骨らによって村が滅んでいくシーンにて、村人らが狂骨の群れに襲われて殺されていく中、龍賀孝三は「龍賀克典の運転する車に跳ねられて」、龍賀克典は「車で木にぶつかるという事故で」という、「狂骨に襲われない」かたちで退場している。この二名は比較的、幽霊族たちからの怨みを買っていなかったためか。
- この結界が破れて狂骨が噴き出したことについて、鬼太郎の父は「結局、狂骨たちの思い通りになってしまった」といった意味のことを言っている。狂骨が何らかの意図をもってこの結末に導いていたとしたら、前述の「憑代でもおらぬかぎり」という発言を踏まえるとその方法は憑代を通じて行うしかなかったはずであり、つまり狂骨は憑代である沙代を操ってこの結末(龍賀家や哭賀村の破綻)へと誘導していたのかもしれない。
- 鬼太郎の父は水木に「これを着ていれば狂骨に襲われても心を失わずに済む」という趣旨の説明をしつつちゃんちゃんこを着せてやる。だが、その後にシーンで谷の横の道を逃げる水木はちゃんちゃんこを着ておらず、水木に運ばれている鬼太郎の母の方がちゃんちゃんこを羽織っている。「水木が自分より鬼太郎の母やそのお腹の中の赤ん坊を優先することにして、鬼太郎の母に着せてあげたのだろう」と考察するファンもいる。
- 鬼太郎の父は水木に脱出を促す際、「はよ行け」と優しく語る。哭倉村での最初の宿泊の後、温泉近くで鬼太郎の父が水木を送り出す際にも「はよ行け」と同じ台詞を言っているのだが籠もっている気持ちや言い方が大きく変化しており、短い日数での二人の関係性の変化の演出かと想像するファンもいる。
- 公開数日前の2023年11月15日に公開された「ファイナル予告」と銘打たれた予告編映像では、鬼太郎の父による「わが子が産まれる世界を、この目で見てみとうなった!」という台詞があった[29]が、その後の予告編ではこれが「友よ! お主が生きる未来を、この目で見てみとうなった!」と変更されていた[30]。なお、本編では別のシーンで「わが子が産まれる世界じゃ」ともちゃんと言っている。
- ラスト付近のシーンで登場した「儀式の中心となっていたと思しき髑髏の塔」の頂点にある髑髏の左眼窩に棒(パンフレット内のプロップ設定画によれば「御神槍」)が突き立てられていた。また、作中では、左眼を損傷する形で殺された(あるいは死後に遺体の左眼が損傷した)者が複数出る。そのため「この髑髏の怨念が左眼を損傷させたのではないか」と考察するファンらもいる。
- 鬼太郎が産まれたシーンでは音声ガイドで「左目は潰れている」旨が語られている。原作である漫画版には複数のバージョンがあるため、鬼太郎の左目が潰れている理由について「生まれつき元々潰れていた」という設定と「墓から出てきた赤ん坊の鬼太郎を恐れた水木が投げ捨てたとき、墓石の角にぶつけて潰れた」設定の二種類が存在するが、前者の設定であっても「なぜ元から潰れていたのか」についての理由の明確な説明は無かった。この「語られていなかった、元から潰れていた理由」について、本作では「怨念が害を及ぼした」という説明が付けられると言えなくもない。
- また、冒頭付近の山田が懐中電灯で照らした鎧の兜部分に付いている髑髏の絵の左眼部分もかすれて消えている[31]。村が滅ぶ前の龍賀邸内で映る時(長田が鎧の鼻を操作して隠し扉を開けるシーンなど)ではまだ欠けていないようだ。
- さらに、その鎧のシーンのすぐ後にでてくる日本人形の左眼部分にも亀裂が入っている。こちらも、村が滅ぶ前の地下に打ち捨てられている時点ではまだ亀裂が入っていない。
- 鬼太郎の父がこの棒を掴んで引き抜いたあとに怨念を引き受ける際、「全ての怨みあるものよ、次の憑代はここじゃ!」と言っている。沙代が屍人から怨念を集めるときの台詞に類似していることから、前の憑代」は沙代のことか?
- 鬼太郎の父が棒を引き抜いて噴出した怨念に晒されたときに皮膚が崩れているが、音声ガイド曰くこれは焼け落ちたりしているのではなく「腐っていく」光景であるらしい。
- 倒れていた水木は、記憶を失っており髪が白くなっていた(龍賀孝三ほどひどくはないが、それに似た状態になっている)。その原因が「ちゃんちゃんこをしっかり身に着けずに狂骨に襲われたからであってちゃんちゃんこを自分が着ていればそうならなかった」とすれば、水木は「友人の妻子を守るための行動によって友人の記憶を失った」ことになる。
- だが、「髪が白くなって記憶を失ってはいるが、なぜか命は助かっており心も失っていない」とも言える。長田は孝三について「龍賀一族でなければ命も落としていたでしょう」と語っていたにも関わらず。この理由については「幽霊族に恩を与えているから、幽霊族の怨念由来の狂骨も手心を加えた」とか「ちゃんちゃんこを着た鬼太郎の母と一緒にいたので、直接着ていないとはいえ守られた」などとも説明できるが、列車内で水木の背後にいた「戦友たち」が守った結果ではないかと考察するファンもいる。
- というのは、消防団に発見されて介抱された水木の顔が映るシーンで、左上に一瞬だけ何かが映り、すぐに薄れて消えるため。かなり視認が難しいが、どうやら「丸い縁のある」「格子模様が付いた」もののようだ。おそらく水木の戦場の回想シーン(玉砕突撃するシーンや、その直前に参謀が自分だけ生き残ろうとする会話シーン)などで水木や戦友たちや参謀が被っていた丸い鉄帽(ヘルメット)で、格子模様は鉄帽に被っていた擬装網か。
- ただし「これが何を意味するのか」については制作側からの明言は無く、実際に「戦友の霊が守った」ことを示す描写なのか否かはまったくもって不明。例えば、「水木のトラウマとなりまた上昇志向の源泉にもなっていた、戦場の記憶もこのとき薄れて消えたという描写」などの別の解釈もできる。
- 「孝三のような状態になった」わけだが、孝三は「鬼太郎の母」について「知らない人だが、僕の夢に出てくる人」と説明していた。ここから、「水木も、鬼太郎の父について思い出せないのに夢の中に出てくるようになるのではないか」と推測するファンもいる。
- 時弥狂骨のセリフ「ワスレナイデ」や、それを受けて鬼太郎が「忘れない」「受け継いでいくよ」と答えているシーンについて、前述の『総員玉砕せよ!』で主人公の丸山二等兵が敵弾に斃れる際に涙を流しながら思い浮かべたモノローグ(ああ みんなこんな気持ちで死んで行ったんだなあ 誰にみられることもなく 誰に語ることもできず……ただわすれ去られるだけ……)という言葉と対になっているのではないか、と考察するファンもいる。
- 前述のように、スタッフロール後に重要なシーン、タイトルに関わる大切な感動シーンがある。そのためここで泣く観客もいるわけだが……映画館での上映ではこのシーンが終わったらすぐに上映終了となって照明が点くため「涙でグズグズになってる顔を周りの客に見られて恥ずかしかった」とか「もうちょっと余韻に浸らせて」などといった声も複数挙がっていた。
- 上映時間が「105分はダメ」と言われて104分59秒に収めた、という監督の発言(舞台挨拶で明かされた。後述)から考えると、涙を拭かせたり余韻に浸らせたりする時間を挟む余裕がなかったのかもしれない。
- このスタッフロール後のシーンで、水木は鬼太郎を殺してしまおうかと考えたが、鬼太郎の父の記憶が一瞬フラッシュバックすることで思いとどまる。「記憶が戻ってはいないが、わずかな記憶のかけらが水木の心情に影響したのだ」と解釈するファンが多いようだが、「ここで記憶が戻った」と解釈する人もいたようだ。
- 同じくスタッフロール後に水木が鬼太郎の母の墓穴から鬼太郎が這い出てくるのを目撃する「墓穴から赤ん坊が生まれた!?」という台詞のシーンの水木の顔のアップのカットでそれまで描かれていなかった鋭い八重歯が存在しており、「血桜の根を斧で切りつけた時に浴びた幽霊族の血によって水木に何かしら影響与えた(人外化した)」、「時貞の呪具を破壊した後歯を抜いていたのは鋭い歯に生え変わってグラついた歯を抜いたのでは?」という考察がある。
- 公開前にプロモーションに使用されていた第4弾ポスタービジュアルは、「水面の下に木の根が絡まっている水面に体を丸めて寝そべっている鬼太郎に、桜の花びらが散りそそいでいる」といったものだった。このビジュアルを描いたキャラクターデザインの谷田部透湖氏によれば「胎児のポーズ」とのこと[32]で、血桜の大樹に捉えられていた鬼太郎の母の胎内で育っていた鬼太郎を表現していたものか。
- 同じく第5弾ポスタービジュアルも、「立ち並ぶ多くの地蔵の中に立つ鬼太郎の父と水木。鬼太郎も座っている。地蔵らや鬼太郎の父と水木は血まみれだが、鬼太郎は血に汚れていない」というものだが、桜の花びらが散っていた。
- 鬼太郎の父の一人称は「ワシ」で統一されているようだが、水木の一人称は「私」「俺」「僕」の3種類が入り混じっている。
- 「血液製剤「M」」の「M」の部分について、何の頭文字なのかは作中で明かされず、スタッフらからのコメントでも明かされていないよう(2023年12月3日現在)。ファンらが以下のように様々に想像しているが、どれが正解なのかは不明。どれも正解ではないかもしれない。
- 水木しげる(Mizuki Shigeru)原作。
- 人間ではない幽霊族から作られている薬。もののけ(mononoke)、あるいはモンスター(monster)。
- 幽霊族について「モグラ」(Mogura)に例えた台詞がある。なお原作漫画「幽霊一家」でも幽霊族を「人間モグラ」と表現するシーンがある。
- 昭和の、軍も関わった怪しい話と言えば「M資金」。
- 戦後に出回って悲劇の元になったものといえば「バクダン」と呼ばれる密造酒。燃料用/工業用の、飲用すると危険なメチルアルコール(methyl alcohol)、別名メタノール(methanol)が混じっており、失明者や死亡者を出した。
- 最初の民間血液銀行「日本ブラッドバンク」は後に「株式会社ミドリ十字」(MIDORI JUJI KK)に社名を変更。原作漫画「幽霊一家」では鬼太郎の母の血液を輸血された患者が亡者となる薬害が起きるが、ミドリ十字も薬害エイズ事件を起こしている。
- 日本ブラッドバンクの設立者内藤良一は「731部隊」関係者。また設立に関わった北野政次や二木秀雄は元731部隊員だった。731部隊は囚人を人体実験に用いており、囚人らは「マルタ」(Maruta)」と呼ばれていたという。
- ヒロポンっぽい使われ方の薬。ヒロポンの有効成分はメタンフェタミン(methamphetamine)。アンプル剤なのもそれっぽい(ヒロポンにはアンプル剤の他に錠剤や粉末もあるが)。
- 眠気を覚まして仕事を頑張るヤツといえばモンスターエナジー(Monster Energy)。
- この「M」のアンプル瓶の、くびれた部分より上には丸いマークが付いている。これは2023年現在のアンプル薬においては一般的なもので、アンプルのくびれた部分を折り割って開封するときに目印とするもの。「このマークのあたりに親指を位置させて、マークのある側とは反対側へと折る」ことで開封できる。上記の「ロロナミン B」と同じように、「このようなマークは昭和31年にはまだなかったはずではないだろうか」と指摘する声もある。ただし「では、こういったアンプルに付けるマークはいつから登場したのか」については判然としないようだ。
- 本作オリジナルキャラクターらの名の由来は、前述のように三姉妹の名前が十干に基づいているらしい事以外は情報や推測材料に乏しい。ただ、「龍賀時貞」の「時貞」の名を持つ人物としては「天草四郎時貞」が有名。そこから、上記の「731部隊」の創設者・初代部隊長の「石井四郎」から「四郎→天草四郎時貞→時貞」と連想してのネーミングではないかとの発想を語るファンもいる。
- 「哭倉村」の「哭倉」の名の由来も作中では明言されない。禁足地の島にあった縦穴「窖」(あなぐら)から「なぐら」で、「な」の部分に「龍哭」の「哭」をあてたものか、と推測するファンもいる。
- 本作の公開開始より8日前の2023年11月9日からNetflixで全話独占配信が開始されたアニメ『悪魔くん』。本作も『悪魔くん』もどちらも「水木しげる生誕100周年記念4大プロジェクト」の一環である。その『悪魔くん』の10話「祝事」で悪魔くんとメフィスト3世は近所に出来た店「アミーゴパンケーキ」を訪れてホットケーキを喫するのだが、その店のオーナーの老人が「水木」。左瞼や左耳の傷が本作の「水木」と同じであることから、同一人物の可能性がある。「私にも息子がいるんだ。と言っても、親友の息子なんだが」と語るなどしており、これが鬼太郎のことならば「親友」、つまりゲゲ郎に関する記憶が戻ったのかもしれない。「アミーゴ」とはスペイン語・ポルトガル語で「友人」を意味する。ちなみにホットケーキは水木しげるの好物。同作の時代設定は「1989年のテレビアニメ版から30数年後の世界が舞台[33]」とされており、水木の年齢を最大限若く見積もっても90歳代ということになるが、それにしてはやや若々しい。
舞台挨拶で明かされた情報
ネタバレというわけではない内容も多いが、情報量が多めのためスクロール。
2023年11月19日 新宿バルト9 公開記念舞台挨拶
(情報元:【トークノーカット】関俊彦、木内秀信、沢城みゆき、古川登志夫、古賀豪監督が登壇『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』公開記念舞台あいさつ - YouTube)
- この舞台挨拶で古賀豪監督が語ったことによれば、本作が水木を描いたものになった経緯としては「6期のシリーズの中で水木という男の話が何回か出てきておりまして。6期のシリーズではちょっと触れるだけで描いていないので、それはいつかちゃんと描きましょうということになっておりまして、今回のこの映画につながったということなんですけれど」といったものであったとのこと。
- また「1年ぐらいは、シナリオにはかかったかなと思っております」と語っており、シナリオはかなり練っていたようだ。「最終的に100分に収めなきゃいけないっていうのが、シナリオの段階で120分くらいありまして。それをコンテ切りながら削っていく、収めていく。かなり苦しい作業でした。100分に収めなきゃいけないんですけど、収まんないからもうちょっと尺をくれって言って、「じゃああと4分。5分はダメ」って言われたので、これ104分59秒なんです。」とも語っている。
- さらに「つい先週まで作ってました」とも語っており、ギリギリまで作りこんでいたことが伺える。
- 鬼太郎役の沢城みゆき氏は「台本を読み終わってすぐ、ねこ娘役の庄司宇芽香ちゃんに「もう私あの霊毛ちゃんちゃんこ、おいそれと投げられないんだけど」って連絡をして……これ観てもらうとおんなじ気持ちになってもらえると思うんですけど」と語った。
- ある謎の少年を演じた古川登志夫は、台本について「読み物を読んでいるような、小説を読むような気分でずっと最後まで引き付けられて読んでいましたね」と語った。
2023年11月19日 イオンシネマアクタス調布 公開記念舞台挨拶
- 上記の新宿バルト9の公開記念舞台挨拶と同日。バルト9では上映前の舞台挨拶で、こちらは上映後の舞台挨拶であった。そのため、内容についても具体的に触れている。
- マスコミの入らない、また録音もNGの舞台挨拶であった。そのためこちらの情報は、以下のように参加した熱心なファンの方々がメモを取ってウェブサイトやSNSで伝えた内容に基づいている。伝えて頂けたことに感謝したい。
- 「木内秀信が社内試写会で観覧しながら泣いてしまい、駅まで15分間泣き続けた」という話が暴露され、木内氏は恥ずかしがっていたという。
- 沢城みゆき氏が印象に残ったシーンのひとつは「石田一派」(石田彰が演じる長田幻治率いる「裏鬼道」らのこと)との戦闘シーン。このアクションシーンの作画は、あるアニメーター[34]が手で描いたもの。「自分でアクションして動画撮影して絵に描く」という手法を撮っていたそうで、大きな音がすると見に行ったらモップを振り回していたという。
- 主演の二名、水木が木内秀信に、鬼太郎の父が関俊彦に決まったのはオーディションの結果。木内はまさか受かるとは思っていなかったとのこと。
- 沢城みゆきは、作品終盤で「引き継いでいくよ」と言うはずだったシーンを「受け継いでいくよ」と言い間違えた。だが録った後に「こちらでいこう」ということになり、言い間違いだったはずの方が採用された。
- 目立たない形で妖怪が画面内に描かれているところがあるという。水木が妖怪が見えるようになって妖怪が明確な形で画面に出てくるよりも前から、そういった「隠れ妖怪」が描かれているとのこと。
- また、現代の目玉おやじを演じた野沢雅子氏は、実は別の役柄でも一言演じているとのこと。
- 古賀監督は「売れセンは意識していない。好きに作った」と語っていたという。
2023年11月30日 イオンシネマアクタス調布 大ヒット御礼舞台挨拶
(情報元:【トークノーカット】関俊彦、木内秀信、古賀豪監督が登壇『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』大ヒット御礼舞台あいさつ - YouTube)
- 公開後、予想外の大ヒットとなったことを受けての御礼として開催された舞台挨拶。
- 壇上で木内秀信氏が語ったところによれば、最初に水木しげるが実体験を基にして描いた戦記漫画『総員玉砕せよ!』を渡され、それを読んでから現場に入ったとのことだった。
- 古賀豪監督は「哭倉村はもちろん架空の村だが、「どの辺にある村」というイメージはあり、映画をよく見るとどこをイメージしていたのかわかるようにはなっている」と語った。
- 同じく古賀豪監督は「この映画は、実はひっそり公開して、ひっそり終わるはずの映画でした」とも話しており、大ヒットとなったのは予想外のことであったらしい。前述の「売れセンは意識していない。好きに作った」に通じるところがある。
- 11月19日のイオンシネマアクタス調布の方の舞台挨拶で明かされていた「隠れ妖怪」や「野沢雅子さんのもう一つの役」について知った関俊彦や木内秀信は本作を改めて見に行って集中して観て聴いたが、「全くわからなかった」「1体も見つけられず」とのこと。
- 関俊彦からヒントを求められた古賀豪監督によると、「隠れ妖怪は1体や2体ではなくいっぱいいる、見切れて画面の手前を通過したりとか」とのこと。その場では1体だけ教えてくれたが「水木が屋敷に入ってくるところ」「アオリで捉えてる屋根の上に1体います」「水木が画面をふさいで、水木が振り向くと居なくなってます」(前述の「カシャボ」のことか)とのことだった。
- 「隠れ雅子さん」についてのヒントは「やっぱり、野沢さんがやるならこの役だな」「ちょっとエフェクトがかかってます」「セリフではない。声」とのこと。
- ファンの間では、これらのヒントから「墓場から這い出てきた、赤ちゃんの鬼太郎」の鳴き声ではないかと推測する声が多いようだ。野沢雅子氏はアニメ第1作および第2作では鬼太郎の声を担当していたため。
- 関俊彦氏は「「人間というものには愛すべき部分がある」と信じているのが幽霊族の鬼太郎の父の方で、「人間なんて信用できないよ」って人間に愛想を尽かしているのが人間の方の水木だっていう、このちょっとおかしな、皮肉な相関関係が面白いポイントだと思いました」と語り、さらに「お互い心の中にすごい傷を抱えている、すごい痛みを抱えている。でもその痛みに対して二人とも「絶対に負けないよ」という強い信念も同時に持っていて、そういうところが二人の共通点だなと思える」とも熱弁。つまり鬼太郎の父と水木の二人は「全くの両極端のようで実は似た者同士」だ、という感慨を演じながら抱いていたことを明かした。
2023年12月14日 T・ジョイPRINCE品川 監督・スタッフ舞台挨拶
- 鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎:“鬼太郎の父たちの物語”誕生秘話 古賀豪監督、吉野弘幸、谷田部透湖が語る - MANTANWEB(まんたんウェブ)
- 古賀豪監督ら登壇『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』イベント公式レポート | アニメイトタイムズ
参加した熱心なファンの方々[35]がメモを取ってXで伝えたレポートの内容に基づいている。伝えて頂けたことに感謝したい。)
- 古賀豪監督、脚本の吉野弘幸、キャラクターデザインの矢田部透湖が登壇し、制作秘話などを明かした。
- この舞台挨拶の時点で興行収入12億超えであり、東映の偉いおじさんたちが監督に「何が起こってるんだ?」と聞いてきたという。
- 冒頭近くの帝国血液銀行のオフィスのシーンで時貞翁の死の知らせを受けて水木が立ち上がって社長室に直談判に行く。この立ち上がるかどうかが分岐点で、立ち上がらなかったら『墓場鬼太郎』につながるルート、立ち上がったのでアニメ6期につながる本作のルート。
- 水木が列車に乗っているシーンはもっと長く、太陽族(作中の前年、昭和30年に発表された石原慎太郎の小説『太陽の季節』に出てくるような不良の若者)に絡まれるシーン案などもあったがカット。
- 列車で駅に着いてから村に着くまでのシーンも構想ではもっと長く、愛知県の定光寺駅をモデルにした駅のシーンや、温泉街を通るシーン、行方不明者の尋ね人の張り紙が多数貼ってあるシーン、タクシーでいくつかの廃村を通り抜けるシーン、運転手から「この辺は神隠しが多い」と注意を促されるシーンなどがあった。
- 龍賀の人々にはサイドストーリーが作れるような愛憎劇が裏の設定としてある。長田少年と乙米など(「長田少年」のワードで会場がざわめく)。古賀監督は乙米と長田推し。ファンの考察は結構当たっている。
- 龍賀一族のキャラクターデザインは昭和の映画スターのイメージ元があるが長田はない。水木しげる先生の絵を元に谷田部氏が「目の細いキャラクター」のデザインを出した。「声優が石田彰氏だから糸目にした」のではなく声優さんは後から決まった。
- 古賀監督と吉野氏がシナリオ検討を重ねていた初期には「テレビアニメ第6期14話で出てきたイケおじの鬼太郎の父と、ワトソンのような水木の組み合わせ」で書こうとしていたが迷走。その後、古賀監督からのオファーでキャラクターデザインとして入った谷田部氏が希望してシナリオ会議に参加、その場でキャラクターデザイン案を描き、キャラクターの性格などのアイディアも提案。それをきっかけに徐々に作品の方向性が決まっていった。
- 水木や鬼太郎の父のキャラクターデザインは、昭和の俳優みたいなオーラと色気を出したかった。
- 水木は復員兵で心に傷を負っているがPTSDをケアされるような時代でもなく、金を稼いで出世して過去を忘れるためにめちゃくちゃ働くモーレツサラリーマン。その心の傷を絵としても表現したいので顔に傷を追加したところ、初期案のオールバックの髪形だと傷が目立つので前髪を下ろしたデザインに変更になった。
- 龍賀家の屋敷のイメージは、いくつかの場所を合成している。その一つは岡山県にある『八つ墓村』のロケ地(※ちなみにこの条件に合う邸宅は複数ある)で、他にもある(「聞き取れなかった」というレポート、「江戸東京たてもの園」とするレポート、「昭和のくらし博物館」とするレポートなどあり)。
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関連項目
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メディアによる紹介・レビュー記事など
※赤字のリンク先は作品の重要部分に触れている、いわゆるネタバレありの記事であるため、鑑賞後の閲覧を推奨。
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- 【前編】宇多丸『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』を語る!【映画評書き起こし 2023. 11.30放送】 | TBSラジオ
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- 谷田部透湖が語る 『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎 真生版』のキャラクターデザイン① | Febri
脚注
- *『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』大ヒット記念!古賀豪監督単独インタビュー!「鬼太郎_目玉おやじアイマスク」を抽選でプレゼント!
- *鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎:興収11.5億円記録 81万人動員 3週連続で前週比アップ 初めて語られる“鬼太郎の父たちの物語” - MANTANWEB(まんたんウェブ)
- *公式表記が「時麿」と「時磨」の2種類あった(後述)。ここでは公式サイト表記であり真生版で統一された「時麿」を採用する。
- *株式会社平凡社『改訂新版 世界大百科事典』、「外法」(執筆者:小松和彦)
- *『増鏡』に、「御わざの夜、御棺に入れ給へる御頭を、人の盗みとりけるぞめづらかなる。御顔のしもみじかにて、なかばほどに御目のおはしましければ、外法とかやまつるに、かかるなまかうべの入る事にて、なにがしのひじりとかや、東山のほとりなりける人とりてけるとて、後に沙汰がましく聞えき。」とある。
- *『続・日本妖怪大全』『妖怪・土俗神 喪われた世界』『水木しげる 妖怪画集「妖鬼化(ムジャラ)」 第3巻 近畿』など
- *『水木しげる 妖怪画集「妖鬼化(ムジャラ)」 第4巻 中部』には、「というのも、狂骨に取り憑かれると、人に対して激しく恨むようになるからである。」とある。また『妖怪ビジュアル大図鑑』には「狂骨に取り憑かれると、他人をものすごくうらむようになってしまうという。」とある。
- *ちなみにこの「あい色版」の作成に伴ってか、元々のパンフレットは映画館からの入荷告知などで「えんじ色版」と呼称されるようになった
- *キャラクターデザインの谷田部透湖氏のX投稿より
- *Xユーザーのtocoさん: 「第5弾ビジュアル、特に水木青年のデザインは第3弾ビジュアル↓の半分以上隠れた姿しか出ていなかったため、「水木の顔見せ」的な役割りも大きかったビジュアルです…! 水木青年の髪型デザインは変遷があるのですが、ビジュアル③の時はオールバックで描いてました。全然見えないけど…!」 / X
- *キャラクターデザインの谷田部透湖氏のX投稿より
- *“おまえは、ナニモノだ︖”『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』新ティザービジュアルが到着!|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
- *Xユーザーの原口(水木)なおこさん: 「私も映画鬼太郎のこぼれ話してみるか…😁 気づいた人いるかもですが、映画では「水木(みずき)」の読みは平板です。 これは水木しげる本人が自分の名前をそう呼んでいたからで、アフレコの時、声優さん達にそのようにお願いしました。 一般的には「み」にアクセントがくることが多いですね。」 / X
- *Xユーザーのtocoさん: 「映画「 #鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」キャラクターデザイン設定画の一部が追加公開されました!乙米(おとめ)と丙江(ひのえ)! 庚子(としこ)も加えて三姉妹です。 龍賀家は美形という設定のもとデザインしております✍️ >RP」 / X
- *Xユーザーのtocoさん: 「こちらのビジュアル初出時使用されていたキャッチコピーですが、制作陣の思う映画コンセプトと異なったため、その後改めてプロデューサーさんと認識をすり合わせて頂きました。宣伝の仕方も再構築して頂いてってます! こちらのポストはプロデューサーさんと宣伝担当さんに了承を得て投稿しています。」 / X、Xユーザーのtocoさん: 「キャッチコピーこれと知った時からずっと、な、何故…どうして…と亡霊のようだったから、そのすれ違い原因究明のために色々対話、対応して下さった方々ありがとうございます🙏 時間かかってしまったけどでも公開前までにそれができて良かった… 原点は先生ただ一人ですよ…」 / X
- *Xユーザーのtocoさん: 「鬼太郎EXPOの絵を知り合いがわざわざ買ってくれていた!嬉しい☺️ 撫でているのは誰の手?と聞かれたのですが、この手は、ゲゲ郎と水木の「父達の手」です🖐️ 組紐も腕時計も描いてないのはそういう理由です🪢⌚️」 / X
- *Xユーザーの宝亀克寿さん: 「「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」 略してゲ謎‼️ 実は主人公の上司役で出てます。 部下には島田敏さんも パラガスとプロリー再び共演🔥 まだ観てない方はぜひ‼️ 今日もゲ謎、パンフレットの件でトレンド入りしてたみたいだね👀」 / X
- *2023年11月26日に行われたイベント「ゲゲゲ忌2023 映画公開記念『ゲゲゲの鬼太郎』第6期デー」に参加した方のレポートより。
- *公式動画「映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』本編映像(鬼太郎の父たちの運命の出会い) - YouTube」の再生時間0:17~0:21で確認できる。
- *シカやウサギを生贄に!? 神秘的な古来の儀式「神長官守矢史料館」【長野】 | 日本珍スポット100景
- *同上
- *キャラクターデザインの谷田部透湖氏のX投稿、および2023年11月17日~30日に行われていたイベント「ゲゲゲ忌2023 「アニメ鬼太郎&悪魔くん展」」で展示されていた資料より。
- *tac750-Asakusa Matsuya Tokyo 隅田川畔浅草松屋付近 大東京 | 絵葉書資料館、8:「隅田川」を渡る東武線 「吾妻橋」そばに「隅田公園」誕生 ~ 上野・浅草 | このまちアーカイブス | 不動産購入・不動産売却なら三井住友トラスト不動産
- *公式動画「映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』本編映像(冒頭シーン) - YouTube」の、再生時間1:42時点で確認できる。
- *古典雛と御殿 | 高崎市
- *『水木しげる 妖怪画集「妖鬼化(ムジャラ)」 第1巻 沖縄・九州』『水木しげるの妖怪百物語 日本篇』『憑物百怪』など。
- *Googleブックスで、『水木しげる 妖怪画集「妖鬼化(ムジャラ)」 第1巻 沖縄・九州』の該当ページが閲覧できる。
- *ウェブサイト『青空文庫』にて全文が読める
- *映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』ファイナル予告 - YouTube (当該台詞は、再生時間1分12秒時点から)
- *映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』 予告[鬼太郎の父たち 絆篇] - YouTube (当該台詞は、再生時間1分時点から)
- *公式動画「映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』本編映像(冒頭シーン) - YouTube」の、再生時間1:51時点で確認できる。
- *Xユーザーのtocoさん: 「2022年に描かせて頂いたビジュアルです! 鬼太郎を描くぞという気合いによりアイディアスケッチを大量に描いてしまい、どれを選ぶか迷うことに…! 最終的にこの胎児のポーズ案になりました。」 / X
- *『悪魔くん』新作、Netflixで2023年配信 主演は梶裕貴 TVアニメ版から30数年後の世界が舞台 | ORICON NEWS
- *TBSラジオ『アフター6ジャンクション』のコーナー「週刊映画時評ムービーウォッチメン」においてラッパー・映画評論家「宇多丸」が語った情報によれば、そのアニメーターは「太田晃博」氏であるとのこと。
- *「ヨケ」氏、「かわ」氏、「ただの🧸くまお」氏、「K」氏、「まいこ」氏、他多数
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